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第二五章 (りう)(たま)〔九四〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第33巻 海洋万里 申の巻 篇:第4篇 理智と愛情 よみ(新仮名遣い):りちとあいじょう
章:第25章 琉の玉 よみ(新仮名遣い):りゅうのたま 通し章番号:940
口述日:1922(大正11)年09月19日(旧07月28日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年11月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
東助は道中、秋彦とともに生田の森の館に夜明け頃立ち寄った。国玉別夫婦は水ごり中で不在であったが、東助は急ぐたびだからと留守役の駒彦に告げて、さっさと行ってしまった。
水ごりから戻ってきた国玉別夫婦は、駒彦をやって東助に一言お詫びを伝えに追いかけさせた。
日暮れのころ、高姫が佐田彦とともに慌ただしくやってきた。高姫は用向きを伝えると、玉能姫に東助がここに来たかと尋ねた。玉能姫は、東助は朝早くに自分たちが不在のうちに出立してしまったと答えた。
高姫は自分の昔の夫であった東助に一言恨み言を言いたいがために、玉能姫に舟を出すようにとごねだした。そこへ駒彦が返ってきて、すでに東助は淡路島へ帰って支度を整え、フサの国に向かって船出してしまったと伝えた。
高姫はそれを聞いて、もう東助のことは思うまいとあきらめた。翌日、国玉別は琉の玉を高姫に渡して、生田の森の館を引き継いだ。そして自分たち夫婦は球の玉を奉じて紀の国に祀る神業の仕えるのだと伝えた。
高姫は生田の森で琉の玉を守護することとなり、国玉別、玉能姫、駒彦は紀の国の若の浦を指して進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-15 03:13:15 OBC :rm3325
愛善世界社版:277頁 八幡書店版:第6輯 351頁 修補版: 校定版:290頁 普及版:109頁 初版: ページ備考:
001 東助(とうすけ)秋彦(あきひこ)(とも)生田(いくた)(もり)若彦(わかひこ)(いま)国玉別(くにたまわけ))の(やかた)翌日(あくるひ)夜明(よあ)(ごろ)002一寸(ちよつと)立寄(たちよ)つて()た。003(むかし)(ひと)一夜(いちや)(うち)五十(ごじふ)()八十(はちじふ)()平気(へいき)跋渉(ばつせふ)したものである。
004東助(とうすけ)国玉別(くにたまわけ)さまは()られますかなア』
005(おとな)(こゑ)駒彦(こまひこ)はあわてて()()し、
006駒彦(こまひこ)『コレハコレハ総務(そうむ)さまで御座(ござ)いますか。007……ヤアお(まへ)秋彦(あきひこ)008久振(ひさしぶ)りだつたなあ』
009秋彦(あきひこ)『ウン』
010東助(とうすけ)夫婦(ふうふ)()られるかなア』
011(かさ)ねて()へば駒彦(こまひこ)は、
012駒彦(こまひこ)『ハイ、013今朝(けさ)のお(れい)()ませ、014夫婦(ふうふ)()れにて(やが)東助(とうすけ)(さま)()えるだらうから、015それ(まで)布引(ぬのびき)(たき)水垢離(みづごり)()りに()つて()るから、016一寸(ちよつと)()つてゐて(もら)へとの命令(めいれい)御座(ござ)いました。017どうぞ(しばら)()休息(きうそく)(くだ)さいませ。018やがてお(かへ)りになるでせうから……』
019東助(とうすけ)(べつ)(よう)もないのだから、020夫婦(ふうふ)(かへ)られたら、021東助(とうすけ)がフサの(くに)斎苑(いそ)(やかた)()神務(しんむ)()びて()途中(とちう)022一寸(ちよつと)訪問(はうもん)したと(つた)へておいてくれ。023(かみ)(さま)御用(ごよう)一刻(いつこく)猶予(いうよ)出来(でき)ないから………』
024()ひすて、025(はや)くも(この)()をスタスタと立去(たちさ)りにける。026秋彦(あきひこ)(あに)駒彦(こまひこ)折角(せつかく)()(なが)ら、027碌々(ろくろく)(ことば)(かは)()ざる本意(ほんい)なさに、028(あと)ふり(かへ)りふり(かへ)名残(なごり)()しみつつ、029東助(とうすけ)(あと)(したが)つて明石(あかし)(みなと)()して(すす)()く。
030 (あと)駒彦(こまひこ)双手(もろて)()み、
031駒彦(こまひこ)『あゝ(なん)としたすげない(ひと)だらう。032いつも朴訥(ぼくとつ)東助(とうすけ)さまだと()いて()つたが、033コリヤ(また)(あま)愛想(あいさう)がなさすぎる。034国玉別(くにたまわけ)夫婦(ふうふ)夫婦(ふうふ)だ、035何故(なぜ)こんな(とき)布引(ぬのびき)(たき)なんかへ()くのだらう。036()きたけりやモ(すこ)(はや)()つて、037(はや)(かへ)つて()れば()いのに、038(この)(ごろ)玉能姫(たまのひめ)(ふく)れたとか、039ふくれぬとか、040(なん)とか(かん)とか()つて、041小言(こごと)ばかり仰有(おつしや)るものだから、042女房(にようばう)(あま)国公(くにこう)も、043夜分(やぶん)碌々(ろくろく)によう()ないと()えて、044朝寝(あさね)をするのだ。045それだから()んなことが出来(でき)()るのだ。046エヽまあまあなんでこれ(ほど)(おそ)いのだろ。047これから一走(ひとはし)()()せば、048秋彦(あきひこ)()はれぬ(こと)はないが、049(また)不在(るす)にしておいては、050おれの(やく)がすまぬなり、051(こま)つた(こと)出来(でき)()た。052これだから若夫婦(わかふうふ)世話(せわ)はするものぢやないと(ひと)()ふのだ。053東助(とうすけ)さまも大方(おほかた)(はや)淡路島(あはぢしま)立寄(たちよ)つて女房(にようばう)のお百合(ゆり)()ひ、054(いつ)分間(ぷんかん)でもいちやつかうと(おも)うて、055倉皇(さうくわう)として()()したのだらう。056ヤツパリ夫婦(ふうふ)といふものは(たがひ)(こひ)しいものと()えるワイ。057おれも(はや)修行(しうぎやう)をして結構(けつこう)女房(にようばう)()ち、058家庭(かてい)(つく)つて、059……コレ駒彦(こまひこ)……イヤ女房(にようばう)……と意茶(いちや)ついて()たいものだ。060あゝ辛気(しんき)(くさ)い、061男同志(をとこどうし)兄弟(きやうだい)にさへ碌々(ろくろく)(はなし)出来(でき)ぬやうな(つま)らぬことがあるものか』
062(つぶや)いてゐる。063そこへ(かへ)つて()たのは国玉別(くにたまわけ)064玉能姫(たまのひめ)両人(りやうにん)であつた。
065駒彦(こまひこ)『コレ(くに)さま、066(たま)さま、067(なに)をグヅグヅしてゐるのだ。068とうとう東助(とうすけ)愛想(あいさう)をつかして(かへ)つて(しま)ひました。069秋彦(あきひこ)までが……』
070国玉別(くにたまわけ)東助(とうすけ)(かへ)つたとは、071(たれ)(こと)だ』
072駒彦(こまひこ)(たれ)のこともあつたものか。073国玉別(くにたまわけ)さま、074玉能姫(たまのひめ)さま、075よい加減(かげん)にしておきなさい。076聖地(せいち)総務(そうむ)東助(とうすけ)さまがここへ一寸(ちよつと)()りになり、077(まへ)さま()夫婦(ふうふ)不在(ふざい)()て、078(なん)とマア(なか)()夫婦(ふうふ)ぢやなア……と(おも)はれたか、079(おも)はれぬか、080そりや()らぬが、081どうぞ(よろ)しうと()つて、082トツトと(かへ)つて()かれました。083秋彦(あきひこ)までが、084折角(せつかく)兄弟(きやうだい)対面(たいめん)(なが)ら、085ロクに(わたし)(ことば)(かは)さず、086明石(あかし)(みなと)まで()つて(しま)つたのですよ。087まだ半時(はんとき)(ばか)(さき)だから、088(わたし)はこれから()つかけて、089(おとうと)にモウ一目(ひとめ)()うて()ます。090どうぞお(まへ)さま()夫婦(ふうふ)此処(ここ)仲好(なかよ)うしてゐて(くだ)さい。091(なに)伝言(ことづけ)があるなら申上(まをしあ)げますから……』
092玉能姫(たまのひめ)『それはそれは(まこと)不都合(ふつがふ)(こと)御座(ござ)いましたなア……国玉別(くにたまわけ)さま如何(どう)(いた)しませうか』
093国玉別(くにたまわけ)(あと)()つかけてでも()かうものなら、094東助(とうすけ)(さま)気性(きしやう)としてどんなに(おこ)られるか()れたものぢやない。095いつそ駒彦(こまひこ)()つて(もら)はう。096……コレ駒彦(こまひこ)097国玉別(くにたまわけ)夫婦(ふうふ)(まこと)にすまぬことで御座(ござ)いましたとお(わび)をしてゐたと、098(これ)だけ()つてくれ。099(その)(ほか)のことは(なん)にも()はぬが(よろ)しいぞ』
100駒彦(こまひこ)『ヨシ合点(がつてん)だ!』
101といひ(なが)(しり)ひつからげ、102生田(いくた)(もり)(なか)姿(すがた)をかくした()()()(すぎ)まで(かへ)つて()なかつた。
103 (その)()(くれ)(ごろ)104高姫(たかひめ)佐田彦(さだひこ)(とも)(あわ)ただしくやつて()た。
105高姫(たかひめ)『モシモシ国玉別(くにたまわけ)さま、106(わたし)高姫(たかひめ)御座(ござ)います。107(かみ)(さま)()命令(めいれい)()つて、108生田(いくた)(もり)守護職(しゆごしよく)となり、109はるばると()()ました。110(まへ)さまは(この)(こと)()つくに御存(ごぞん)じでせうなア』
111門口(かどぐち)から()しぬけに(わめ)いてゐる。112玉能姫(たまのひめ)(この)(こゑ)()くよりあわただしく(おもて)()()し、
113玉能姫(たまのひめ)『これはこれは高姫(たかひめ)(さま)114()うこそいらせられました。115サアお這入(はい)(くだ)さいませ。116貴女(あなた)此所(ここ)へお()しになることは、117二三(にさん)(にち)以前(いぜん)より、118(にしき)(みや)から通知(つうち)御座(ござ)いまして、119(その)用意(ようい)(ため)にいろいろ道具(だうぐ)取片付(とりかたづけ)(いた)し、120今日(けふ)名残(なごり)布引(ぬのびき)(たき)(みそぎ)()つて(まゐ)りました。121サア今日(けふ)からは貴女(あなた)(この)(やかた)主人(あるじ)122どうぞ()遠慮(ゑんりよ)なく(おく)へお(とほ)(くだ)さいませ』
123高姫(たかひめ)『ハイ有難(ありがた)う』
124()(なが)ら、125(なん)となくそはそはしい様子(やうす)で、126そこらあたりをキヨロキヨロと()まはしつつ、127()(にく)さうに、128モヂモヂし(なが)ら、
129高姫『あの……東助(とうすけ)さまはここへ()立寄(たちよ)りにはなりませなんだかなア』
130玉能姫(たまのひめ)『ハイ、131今朝(けさ)早々(さうさう)(たづ)(くだ)さつた(さう)御座(ござ)いますが、132(をり)あしく布引(ぬのびき)(たき)夫婦(ふうふ)(もの)水行(すいぎやう)(まゐ)り、133不在中(ふざいちゆう)だつたものですから、134(かど)(しきゐ)(また)げずに、135秋彦(あきひこ)一緒(いつしよ)にお(かへ)りなつたといふことです。136大方(おほかた)今頃(いまごろ)淡路島(あはぢしま)(わが)(やかた)へでもお立寄(たちよ)りになつて、137今晩(こんばん)はゆつくりお(やす)(あそ)ばし、138明日(みやうにち)(あらた)めてお()でになるでせう』
139高姫(たかひめ)『ヤアそりや大変(たいへん)だ。140如何(どう)しても()うしても東助(とうすけ)さまに一目(ひとめ)()にかかり、141一言(ひとこと)(うら)みいはねばなりませぬ。142イヤ一言(ひとこと)()(れい)をいはねばならないのです。143コレ国玉別(くにたまわけ)さま、144玉能姫(たまのひめ)さま、145()苦労(くらう)だが、146(ひと)(ふね)(いそ)いで()して(くだ)さい。147そして淡路島(あはぢしま)まで(おく)(とど)けて(くだ)さい。148玉能姫(たまのひめ)(さま)(ふね)(あやつ)るのが大変(たいへん)上手(じやうづ)だから……』
149国玉別(くにたまわけ)(また)貴方(あなた)(にはか)東助(とうすけ)(さま)をお(した)(あそ)ばすのですな。150(なに)(ふか)事情(じじやう)御座(ござ)いますか』
151高姫(たかひめ)事情(じじやう)がなうて(なん)としよう。152(わたし)(こひ)しい(こひ)しい(むかし)(をつと)御座(ござ)んすワイナ。153サア(はや)(ふね)()して(くだ)さいなア。154コレ玉能姫(たまのひめ)さま、155一生(いつしやう)(ねが)ひぢや、156(はや)()して(くだ)さらぬと()()ひませぬ』
157玉能姫(たまのひめ)『モシ国玉別(くにたまわけ)(さま)158(ふね)()して(おく)つて()げませうかなア』
159国玉別(くにたまわけ)折角(せつかく)のお(たの)みだから、160(おく)つて()げたいが、161(むかし)恋男(こひをとこ)だなんて()(うへ)は、162ウツカリ(おく)(わけ)にも()くまい。163東助(とうすけ)さまの()(こころ)(わか)らず、164ウツカリ(おく)つて()かうものなら、165それこそ()んなお目玉(めだま)頂戴(ちやうだい)するか(わか)るまいぞや。166いつもの東助(とうすけ)(さま)ならば、167ゆつくりと(わが)()(やす)んで()つて(くだ)さるのだけれど、168(しきゐ)もまたげずに()かれたとこを(おも)へば、169高姫(たかひめ)さまが(あと)からお(いで)になるのを()つて、170うるさがつて()げられたのかも(わか)らぬから、171此奴(こいつ)(ひと)(かんが)へものだ』
172高姫(たかひめ)『エヽ人情(にんじやう)()らぬ冷酷(れいこく)動物(どうぶつ)だなア。173そんなことで三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)出来(でき)ますか。174チツト(すゐ)()かしたら如何(どう)だなア』
175 かく(はな)(をり)しもスタスタと(かへ)つて()たのは駒彦(こまひこ)であつた。
176国玉別(くにたまわけ)『ヤア駒彦(こまひこ)か。177東助(とうすけ)さまに()うて()たか』
178駒彦(こまひこ)『ハイ都合(つがふ)よく明石(あかし)(みなと)()()き、179秋彦(あきひこ)にも()ひ、180それから(ふね)淡路島(あはぢしま)のお(たく)まで(おく)(とど)け、181百合(ゆり)さまと面会(めんくわい)(うへ)(さけ)()みかはし、182(わたし)(たち)兄弟(きやうだい)もドツサリと(いただ)きました』
183高姫(たかひめ)『コレお(まへ)駒彦(こまひこ)だつたな。184そして東助(とうすけ)さまはまだ淡路島(あはぢしま)にゐられますかな』
185駒彦(こまひこ)『ヤア高姫(たかひめ)(さま)か、186(めづ)らしい(ところ)でお()にかかりました。187随分(ずゐぶん)貴女(あなた)(たま)(こと)について、188生田(いくた)(もり)には面白(おもしろ)経歴(けいれき)(のこ)つて()りますなア。189国依別(くによりわけ)さまの神懸(かむがかり)三版・御校正本・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑」。竹生島(ちくぶしま)へお()しになつたり、190随分(ずゐぶん)()苦労(くらう)をなさいましたですなア。191(いま)だに時々(ときどき)(おも)()して、192国玉別(くにたまわけ)(さま)(はなし)をして()るのですよ。193随分(ずゐぶん)(たま)にかけては、194貴女(あなた)(えら)いものですなア』
195高姫(たかひめ)『コレ駒彦(こまひこ)196(たま)(こと)如何(どう)でも(よろ)しい、197(ひま)(とき)()かして(くだ)さい。198東助(とうすけ)さまは如何(どう)して()られますかなア。199サア(はや)()つて(くだ)さい。200(はや)(はや)く、201()がせけてなりませぬワイナ』
202駒彦(こまひこ)東助(とうすけ)さまですか、203明石(あかし)海峡(かいけふ)(わか)れました。204モウ今頃(いまごろ)にやあの(いきほひ)()かれたら、205高砂(たかさご)(おき)へでもかかつてゐられるでせう。206(わたし)小舟(こぶね)でたつた一人(ひとり)207ここまで(かへ)つて()ました。208そして(もり)(なか)でいろいろと道草(みちくさ)をくつて()りましたから、209大分(だいぶん)時間(じかん)がたつて()りますよ。210高姫(たかひめ)さまは東助(とうすけ)さまに(なに)急用(きふよう)があるのですか』
211高姫(たかひめ)『エヽもう(よろ)しい。212東助(とうすけ)(こと)(おも)ひますまい』
213国玉別(くにたまわけ)『サア高姫(たかひめ)(さま)214何卒(どうぞ)ここに洗足(せんそく)()()いて()りますから、215(これ)使(つか)つてお(あが)(くだ)さいませ、216事務(じむ)引継(ひきつ)ぎをせなくてはなりませぬから、217引継(ひきつ)いだ以上(いじやう)最早(もはや)此処(ここ)貴女(あなた)のお(やかた)ですから、218どうぞ()ゆつくりとくつろいで()(はなし)(うけたま)はりませう』
219高姫(たかひめ)『ハイ有難(ありがた)う』
220()(なが)ら、221佐田彦(さだひこ)(あし)(あら)つて(もら)ひ、222(ちり)打払(うちはら)(なが)ら、223(かさ)をぬぎ(みの)をすて、224(おく)()(すす)()る。
225 (その)()主客(しゆきやく)(とも)(やす)(しん)につき、226翌日(あくるひ)国玉別(くにたまわけ)(りう)(たま)高姫(たかひめ)(まへ)差出(さしだ)し、
227国玉別(くにたまわけ)『これが言依別(ことよりわけの)(みこと)(さま)より(あづか)りました(りう)宝玉(ほうぎよく)御座(ござ)います。228貴女(あなた)(この)(たま)何処(どこ)までも保護(ほご)して(なが)(この)(もり)にお(とど)まり(くだ)さいませ。229(わたし)神命(しんめい)()り、230玉能姫(たまのひめ)231駒彦(こまひこ)(とも)(きう)(たま)()つて、232()国路(くにぢ)(まゐ)り、233(これ)(まつ)らねばなりませぬから、234どうぞ、235(よろ)しうお(ねがひ)(まを)します』
236玉能姫(たまのひめ)高姫(たかひめ)(さま)237何卒(どうぞ)(よろ)しく』
238高姫(たかひめ)『ハイ、239(かしこ)まりました。240(わたし)のやうな(もの)が、241(たふと)(りう)(たま)保護(ほご)さして(いただ)くといふ(こと)は、242(なん)とした冥加(みやうが)(あま)つた(こと)御座(ござ)いませう。243キツト大切(たいせつ)にお(まも)(いた)しますから、244()安心(あんしん)(くだ)さいませ』
245国玉別(くにたまわけ)早速(さつそく)()承知(しようち)(くだ)さつた(うへ)は、246一刻(いつこく)猶予(いうよ)がなりませぬ。247サア(これ)より(きう)(たま)(ほう)じ、248()(くに)(まゐ)りますから、249随分(ずゐぶん)()機嫌(きげん)よくお(つと)めなさいませ』
250玉能姫(たまのひめ)駒彦(こまひこ)251サア(まゐ)りませう………高姫(たかひめ)(さま)左様(さやう)ならば(しばら)くお(わか)(いた)します』
252高姫(たかひめ)『どうぞ()無事(ぶじ)()神業(しんげふ)をお(つと)めあそばすやう(いの)つて()ります。253そんならそこ(まで)(わたくし)がお(おく)(いた)しますから、254コレ佐田彦(さだひこ)255(この)宝玉(ほうぎよく)(ばん)をしてゐて(くだ)さい』
256国玉別(くにたまわけ)『イエイエそれには(およ)びませぬ。257(この)(たま)(やかた)にある以上(いじやう)は、258あなたは(しばら)くの(あひだ)(この)(いへ)をお()ましになつてはいけませぬ』
259高姫(たかひめ)左様(さやう)ならば、260是非(ぜひ)御座(ござ)いませぬ。261ここでお(わか)(いた)しませう』
262門口(かどぐち)見送(みおく)る。263国玉別(くにたまわけ)264玉能姫(たまのひめ)265駒彦(こまひこ)十数(じふすう)(にん)信徒(しんと)(おく)られ、266()()についで()(くに)(わか)(うら)()して(すす)()く。
267大正一一・九・一九 旧七・二八 松村真澄録)
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