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第75巻(寅の巻)
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第53巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 毘丘取颪
01 春菜草
〔1364〕
02 蜉蝣
〔1365〕
03 軟文学
〔1366〕
04 蜜語
〔1367〕
05 愛縁
〔1368〕
06 気縁
〔1369〕
07 比翼
〔1370〕
08 連理
〔1371〕
09 蛙の腸
〔1372〕
第2篇 貞烈亀鑑
10 女丈夫
〔1373〕
11 艶兵
〔1374〕
12 鬼の恋
〔1375〕
13 醜嵐
〔1376〕
14 女の力
〔1377〕
15 白熱化
〔1378〕
第3篇 兵権執着
16 暗示
〔1379〕
17 奉還状
〔1380〕
18 八当狸
〔1381〕
19 刺客
〔1382〕
第4篇 神愛遍満
20 背進
〔1383〕
21 軍議
〔1384〕
22 天祐
〔1385〕
23 純潔
〔1386〕
余白歌
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第一章
春菜草
(
はるなぐさ
)
〔一三六四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻
篇:
第1篇 毘丘取颪
よみ(新仮名遣い):
びくとりおろし
章:
第1章 春菜草
よみ(新仮名遣い):
はるなぐさ
通し章番号:
1364
口述日:
1923(大正12)年02月12日(旧12月27日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年3月8日
概要:
舞台:
ライオン河の西岸
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
春のライオン河西岸に、瓢を下げてぶらぶらしながら雑談にふけっている四五人のバラモン教の兵卒があった。これは、河鹿峠で治国別宣伝使たちに敗れたために、ランチと片彦が鬼春別将軍に命じて黄金山を襲撃させるべく組織した、バラモン軍の別働隊であった。
兵卒たちは、すでにランチと片彦が三五教に降参して改心したことは知らず、依然として彼らは浮木の森の陣営で長期戦を張っていると思っている。
兵卒・甲は、別働隊で宿営先の人民から搾り取っていい暮らしをしている境遇を賛美しながらも、河鹿峠での敗北から考えてバラモン軍が斎苑館や黄金山に攻め寄せるなど難しいと分析した。
そうかといってハルナの都におめおめと帰るわけにもいかないので、鬼春別はここに陣取ってビクトル山に王城を作り、刹帝利となって永住するのではないか、と意見を披露した。
兵卒・丙は、宿営先の人民を苦しめるバラモン軍に嫌気がさしたと漏らす。乙は丙に、固い考えは捨てて辛抱したらどうだと言うが、丙は、すでに斎苑館から宣伝使の一群がハルナの都に出立したという情報を上げ、ここへも押し寄せてくるに違いない、と反論した。
かく兵卒たちが論争していると、河の向こうからバラモン教の手旗を掲げた騎馬武者たちが流れを渡ってやってきた。一同は何事かと目をみはっている。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-03-03 08:17:21
OBC :
rm5301
愛善世界社版:
13頁
八幡書店版:
第9輯 507頁
修補版:
校定版:
15頁
普及版:
7頁
初版:
ページ備考:
001
水
(
みづ
)
温
(
ぬる
)
み、
002
木々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
は
膨
(
ふく
)
らんで、
003
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ひ、
004
鳥
(
とり
)
歌
(
うた
)
ひ
蝶
(
てふ
)
は
舞
(
ま
)
ひ、
005
陽炎
(
かげろふ
)
閃
(
ひらめ
)
き、
006
野
(
の
)
は
一面
(
いちめん
)
に
青毛氈
(
あをまうせん
)
を
布
(
し
)
きつめたやうに
春
(
はる
)
めき
渡
(
わた
)
つた。
007
目
(
め
)
も
届
(
とど
)
かぬ
許
(
ばか
)
りの
広
(
ひろ
)
きライオン
河
(
がは
)
の
西岸
(
せいがん
)
に
瓢
(
ふくべ
)
をさげて
逍遥
(
せうえう
)
しつつ、
008
悠々
(
いういう
)
たる
川
(
かは
)
の
流
(
なが
)
れを
眺
(
なが
)
め
乍
(
なが
)
ら、
009
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
のバラモン
信者
(
しんじや
)
兼
(
けん
)
兵卒
(
へいそつ
)
があつた。
010
甲
(
かふ
)
『オイ
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
仕合
(
しあは
)
せ
者
(
もの
)
だらうな。
011
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
進軍
(
しんぐん
)
に
際
(
さい
)
し、
012
ランチ、
013
片彦
(
かたひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
が
敗北
(
はいぼく
)
してくれたお
蔭
(
かげ
)
で、
014
斯様
(
かやう
)
な
結構
(
けつこう
)
な
所
(
ところ
)
で
婦女
(
ふぢよ
)
を
姦
(
かん
)
し、
015
牛
(
うし
)
、
016
羊
(
ひつじ
)
、
017
豚
(
ぶた
)
を
無料
(
むれう
)
で
徴発
(
ちようはつ
)
し、
018
酒
(
さけ
)
迄
(
まで
)
ロハで
喰
(
くら
)
ひ、
019
誰
(
たれ
)
憚
(
はばか
)
る
者
(
もの
)
もなく、
020
日々
(
にちにち
)
歓喜
(
くわんき
)
の
生活
(
せいくわつ
)
に
酔
(
よ
)
うてゐるのも、
021
全
(
まつた
)
くバラモン
神
(
がみ
)
のお
蔭
(
かげ
)
だ。
022
大将
(
たいしやう
)
を
持
(
も
)
つなら、
023
どうしても
久米彦
(
くめひこ
)
さま、
024
鬼春別
(
おにはるわけ
)
さまのやうな
明智
(
めいち
)
の
将軍
(
しやうぐん
)
の
部下
(
ぶか
)
にならなくちや
駄目
(
だめ
)
だなア』
025
乙
(
おつ
)
『ウンさうだ。
026
ランチ、
027
片彦
(
かたひこ
)
さまが、
028
猪
(
ゐのしし
)
武者
(
むしや
)
であつて
見
(
み
)
よ、
029
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
今頃
(
いまごろ
)
は
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
で
血河
(
けつか
)
屍山
(
しざん
)
の
犠牲
(
ぎせい
)
になつてゐるに
違
(
ちが
)
ひないのだ。
030
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
部下
(
ぶか
)
を
愛
(
あい
)
する
大将
(
たいしやう
)
でなくちや
駄目
(
だめ
)
だ。
031
何程
(
なにほど
)
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
、
032
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
為
(
ため
)
だと
云
(
い
)
つても、
033
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
られちや、
034
世界
(
せかい
)
の
平和
(
へいわ
)
も
糞
(
くそ
)
もあつたものだない。
035
軍術
(
ぐんじゆつ
)
の
達人
(
たつじん
)
は
能
(
よ
)
く
遁走
(
とんそう
)
す……と
云
(
い
)
ふぢやないか。
036
本当
(
ほんたう
)
に
吾々
(
われわれ
)
は
都合
(
つがふ
)
の
好
(
い
)
い
大将
(
たいしやう
)
に
仕
(
つか
)
へたものだ。
037
強
(
つよ
)
い
奴
(
やつ
)
には
蛇
(
へび
)
の
如
(
ごと
)
く
鳩
(
はと
)
の
如
(
ごと
)
く
敏捷
(
びんせふ
)
に
逃
(
に
)
げ、
038
弱
(
よわ
)
い
奴
(
やつ
)
とみれば、
039
疾風
(
しつぷう
)
迅雷
(
じんらい
)
的
(
てき
)
に
押寄
(
おしよ
)
せて
敵
(
てき
)
を
殲滅
(
せんめつ
)
するのが
孫呉
(
そんご
)
の
兵法
(
へいはふ
)
だ。
040
鬼春別
(
おにはるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
吾
(
わが
)
意
(
い
)
を
得
(
え
)
たりと
云
(
い
)
ふものだ。
041
アハハハハ』
042
丙
(
へい
)
『それだと
云
(
い
)
つて、
043
吾々
(
われわれ
)
は
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
進撃
(
しんげき
)
するのが
使命
(
しめい
)
ではないか。
044
其
(
その
)
使命
(
しめい
)
も
果
(
はた
)
さずに、
045
こんな
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
退却
(
たいきやく
)
して、
046
倫安
(
とうあん
)
姑息
(
こそく
)
、
047
土地
(
とち
)
の
人民
(
じんみん
)
を
苦
(
くるし
)
め、
048
没義道
(
もぎだう
)
なことをして、
049
吾
(
わ
)
れよしの
行
(
や
)
り
方
(
かた
)
をやつて
居
(
を
)
つても、
050
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
は、
051
御
(
ご
)
立腹
(
りつぷく
)
遊
(
あそ
)
ばさないだらうか、
052
チツト
考
(
かんが
)
へねばなるまいぞ』
053
甲
(
かふ
)
『
馬鹿
(
ばか
)
だなア、
054
貴様
(
きさま
)
はそんな
古
(
ふる
)
い
頭
(
あたま
)
だから、
055
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
一兵卒
(
いつぺいそつ
)
として
上官
(
じやうくわん
)
の
頤使
(
いし
)
に
甘
(
あま
)
んじ、
056
馬
(
うま
)
の
掃除
(
さうぢ
)
や
靴磨
(
くつみが
)
き
計
(
ばか
)
りさされるのだよ。
057
人間
(
にんげん
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
058
悧巧
(
りかう
)
に
敏活
(
びんくわつ
)
に
立廻
(
たちまは
)
らなくちや、
059
生存
(
せいぞん
)
競争
(
きやうそう
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
立
(
た
)
つて、
060
理想
(
りさう
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
営
(
いとな
)
むことは
出来
(
でき
)
ないぞ』
061
丙
(
へい
)
『ハハハハハ、
062
理想
(
りさう
)
の
生活
(
せいくわつ
)
が
聞
(
き
)
いて
呆
(
あき
)
れらア、
063
強盗
(
がうたう
)
強姦
(
がうかん
)
、
064
所在
(
あらゆる
)
悪事
(
あくじ
)
を
尽
(
つく
)
して、
065
それが
理想
(
りさう
)
の
生活
(
せいくわつ
)
か。
066
能
(
よ
)
く
間違
(
まちが
)
へば
間違
(
まちが
)
ふものだなア。
067
そして
貴様
(
きさま
)
は
俺
(
おれ
)
に
対
(
たい
)
し、
068
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
馬
(
うま
)
の
掃除
(
さうぢ
)
や
靴磨
(
くつみが
)
きをしてゐると
吐
(
ぬか
)
したが、
069
貴様
(
きさま
)
だつて、
070
ヤツパリ
靴磨
(
くつみが
)
きだないか、
071
どこに
高下
(
かうげ
)
勝劣
(
しようれつ
)
があるのだ』
072
甲
(
かふ
)
『
俺
(
おれ
)
は
未来
(
みらい
)
の
総理
(
そうり
)
大臣
(
だいじん
)
兼
(
けん
)
元帥
(
げんすゐ
)
様
(
さま
)
だ。
073
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
頭
(
あたま
)
では、
074
何時
(
いつ
)
になつても
駄目
(
だめ
)
だ。
075
俺
(
おれ
)
は
大
(
おほい
)
に
未来
(
みらい
)
を
有
(
いう
)
するのだ。
076
前途
(
ぜんと
)
有望
(
いうばう
)
の
青年
(
せいねん
)
だぞ』
077
乙
(
おつ
)
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
078
現代
(
げんだい
)
は
表面
(
へうめん
)
に
善
(
ぜん
)
を
装
(
よそほ
)
ひ、
079
立派
(
りつぱ
)
な
熟語
(
じゆくご
)
を
使
(
つか
)
ひ、
080
そして
多数
(
たすう
)
の
人間
(
にんげん
)
をチヨロまかせ、
081
聖人
(
せいじん
)
君子
(
くんし
)
、
082
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
と
思
(
おも
)
はしめなくちや、
083
到底
(
たうてい
)
大人物
(
だいじんぶつ
)
にはなれない。
084
又
(
また
)
上官
(
じやうくわん
)
に
対
(
たい
)
しては
能
(
あた
)
ふる
限
(
かぎ
)
り
巧妙
(
かうめう
)
な
辞令
(
じれい
)
を
用
(
もち
)
ひ、
085
お
髭
(
ひげ
)
の
塵
(
ちり
)
を
払
(
はら
)
ひ、
086
何
(
なに
)
から
何
(
なに
)
迄
(
まで
)
能
(
よ
)
く
気
(
き
)
をつけて、
087
うい
奴
(
やつ
)
、
088
可愛
(
かあい
)
い
奴
(
やつ
)
と
言
(
い
)
はれなくちア
駄目
(
だめ
)
だぞ。
089
それだから
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
090
久米彦
(
くめひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
のお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
るやうに、
091
其
(
その
)
意志
(
いし
)
を
忖度
(
そんたく
)
して、
092
大将
(
たいしやう
)
が
女
(
をんな
)
を
弄
(
もてあそ
)
べば、
093
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
女
(
をんな
)
を
弄
(
もてあそ
)
ぶ、
094
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
へば
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ふ、
095
つまり
共鳴
(
きようめい
)
をするのだ。
096
抑
(
そもそ
)
も
軍隊
(
ぐんたい
)
は
一個人
(
いつこじん
)
の
形式
(
けいしき
)
に
仍
(
よ
)
つて
組織
(
そしき
)
されてるのだから、
097
頭
(
あたま
)
の
思
(
おも
)
ふ
所
(
ところ
)
を
手足
(
てあし
)
たる
吾々
(
われわれ
)
が
柔順
(
じうじゆん
)
に
行
(
おこな
)
へば、
098
それで
完全
(
くわんぜん
)
に
職務
(
しよくむ
)
が
勤
(
つと
)
まるのだ。
099
云
(
い
)
はば
将軍
(
しやうぐん
)
は
吾々
(
われわれ
)
……
多数
(
たすう
)
の
兵卒
(
へいそつ
)
を
統轄
(
とうかつ
)
した
一個
(
いつこ
)
の
人格者
(
じんかくしや
)
である。
100
そして
吾々
(
われわれ
)
は
其
(
その
)
個体
(
こたい
)
である。
101
全体
(
ぜんたい
)
は
個体
(
こたい
)
に
和合
(
わがふ
)
し、
102
個体
(
こたい
)
は
全体
(
ぜんたい
)
に
和合
(
わがふ
)
するのが
社会
(
しやくわい
)
の
秩序
(
ちつじよ
)
を
維持
(
ゐぢ
)
する
上
(
うへ
)
に
於
(
おい
)
て、
103
最
(
もつとも
)
必要
(
ひつえう
)
な
条件
(
でうけん
)
だ。
104
丙
(
へい
)
の
如
(
ごと
)
き
陳腐
(
ちんぷ
)
な
言説
(
げんせつ
)
は
最早
(
もはや
)
今日
(
こんにち
)
には
通用
(
つうよう
)
しないぞ。
105
チツト
脳味噌
(
なうみそ
)
の
詰替
(
つめかへ
)
をせなくちや、
106
いつも
人後
(
じんご
)
に
撞着
(
どうちやく
)
たらねばならぬ、
107
社会
(
しやくわい
)
の
廃物
(
はいぶつ
)
となるより
道
(
みち
)
はなからう、
108
フツフフフ』
109
丙
(
へい
)
『
俺
(
おれ
)
はモウこんな
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
な
思想
(
しさう
)
を
持
(
も
)
つてゐる
連中
(
れんぢう
)
と
伍
(
ご
)
するのは
飽々
(
あきあき
)
して
来
(
き
)
た。
110
一層
(
いつそ
)
のこと、
111
深山
(
しんざん
)
幽谷
(
いうこく
)
にでも
隠
(
かく
)
れて、
112
仙人
(
せんにん
)
を
気取
(
きど
)
り、
113
閑寂
(
かんじやく
)
な
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
り、
114
霊
(
みたま
)
の
浄化
(
じやうくわ
)
に
努
(
つと
)
めたいと
思
(
おも
)
ふのだ』
115
甲
(
かふ
)
『そんなら
何故
(
なぜ
)
、
116
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
くお
暇
(
ひま
)
を
頂
(
いただ
)
いて、
117
隠君子
(
いんくんし
)
を
気取
(
きど
)
らないのか。
118
ヤツパリ
貴様
(
きさま
)
も
口先
(
くちさき
)
計
(
ばか
)
りの
人間
(
にんげん
)
だ。
119
本当
(
ほんたう
)
に
貴様
(
きさま
)
の
言
(
い
)
ふことが、
120
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
湧
(
わ
)
いたのならば、
121
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
と
出
(
で
)
かけたら
可
(
い
)
いだないか。
122
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
は
来
(
きた
)
る
者
(
もの
)
は
拒
(
こば
)
まず、
123
去
(
さ
)
る
者
(
もの
)
は
追
(
お
)
はずとの
大襟度
(
だいきんど
)
を
持
(
も
)
つてゐられる、
124
智勇
(
ちゆう
)
兼備
(
けんび
)
の
名将
(
めいしやう
)
だからのう』
125
乙
(
おつ
)
『
時
(
とき
)
にランチ、
126
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
は
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
に
滞陣
(
たいぢん
)
して、
127
英気
(
えいき
)
を
養
(
やしな
)
ひ
武
(
ぶ
)
を
練
(
ね
)
り、
128
やがて
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
に
捲土
(
けんど
)
重来
(
ぢゆうらい
)
するといふ
方針
(
はうしん
)
だと
云
(
い
)
ふことだが、
129
実際
(
じつさい
)
戦
(
たたか
)
ふ
心算
(
つもり
)
だらうかなア。
130
どうも
怪
(
あや
)
しいものだぞ。
131
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
戦闘
(
せんとう
)
に
於
(
おい
)
て、
132
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
手並
(
てなみ
)
は
遺憾
(
ゐかん
)
なく、
133
其
(
その
)
卑怯振
(
ひけふぶり
)
を
暴露
(
ばくろ
)
したのだから、
134
ヨモヤ
捲土
(
けんど
)
重来
(
ぢゆうらい
)
の
勇気
(
ゆうき
)
はあるまい、
135
加
(
くは
)
ふるに
全軍
(
ぜんぐん
)
の
勢力
(
せいりよく
)
を
両分
(
りやうぶん
)
して
了
(
しま
)
つたのだから、
136
随分
(
ずいぶん
)
怪
(
あや
)
しいものだなア』
137
甲
(
かふ
)
『ナアニ、
138
ああ
言
(
い
)
つて、
139
あこに
糞詰
(
ふんづま
)
りといつて
空威張
(
からいば
)
りをしてるのだ。
140
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
たつても
五
(
ご
)
年
(
ねん
)
たつても、
141
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
へ
進軍
(
しんぐん
)
などとは
思
(
おも
)
ひもよらぬことだ。
142
さうでなければ、
143
あのやうな
半永久
(
はんえいきう
)
的
(
てき
)
な
陣屋
(
ぢんや
)
を
造
(
つく
)
る
筈
(
はず
)
がない。
144
キツと
持久戦
(
ぢきうせん
)
をやる
心算
(
つもり
)
だらうよ。
145
何程
(
なにほど
)
敵
(
てき
)
が
強
(
つよ
)
いと
云
(
い
)
つても、
146
敵
(
てき
)
の
大将
(
たいしやう
)
の
年
(
とし
)
が
老
(
よ
)
れば、
147
戦
(
たたか
)
はずして
死
(
し
)
んで
了
(
しま
)
ふのだから、
148
それを
待
(
ま
)
つてゐるのだよ。
149
ハハハハハ』
150
乙
(
おつ
)
『
此
(
この
)
ビクトル
山
(
さん
)
の
陣営
(
ぢんえい
)
も
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
立派
(
りつぱ
)
なものが
出来
(
でき
)
てゐるなり、
151
先繰
(
せんぐり
)
々々
(
せんぐり
)
、
152
増築
(
ぞうちく
)
してゐることを
見
(
み
)
れば、
153
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
の
行
(
や
)
り
方
(
かた
)
に
傚
(
なら
)
つて、
154
何時迄
(
いつまで
)
も
此処
(
ここ
)
に
滞陣
(
たいぢん
)
する
心算
(
つもり
)
だらうかなア』
155
甲
(
かふ
)
『きまつた
事
(
こと
)
だ。
156
よく
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
157
ハルナの
都
(
みやこ
)
へは
何程
(
なにほど
)
厚顔
(
こうがん
)
無恥
(
むち
)
の
将軍
(
しやうぐん
)
だとて、
158
のめのめと
之
(
これ
)
丈
(
だけ
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
を
引率
(
ひきつ
)
れて
帰
(
かへ
)
る
訳
(
わけ
)
にはいかうまい、
159
ぢやと
申
(
まを
)
して
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へは
猶更
(
なほさら
)
行
(
ゆ
)
けず、
160
何
(
なん
)
でもエルサレムの
黄金山
(
わうごんざん
)
へ
攻
(
せ
)
めよせるといふ
宣言
(
せんげん
)
だが、
161
之
(
これ
)
も
亦
(
また
)
怪
(
あや
)
しいものだ。
162
たつた
一人
(
ひとり
)
の
治国別
(
はるくにわけ
)
の
言霊
(
ことたま
)
とやらに、
163
脆
(
もろ
)
くも
逃散
(
にげち
)
つた
将軍
(
しやうぐん
)
だもの、
164
黄金山
(
わうごんざん
)
と
雖
(
いへど
)
も、
165
治国別
(
はるくにわけ
)
以上
(
いじやう
)
の
人物
(
じんぶつ
)
が
二人
(
ふたり
)
や
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
居
(
を
)
るのはきまつてゐる。
166
さうだから
先
(
ま
)
づ
此処
(
ここ
)
で
王者
(
わうじや
)
気取
(
きど
)
りとなつて、
167
新
(
あたら
)
しい
国
(
くに
)
を
造
(
つく
)
り、
168
ビクトル
山
(
さん
)
を
中心
(
ちうしん
)
に
王城
(
わうじやう
)
を
作
(
つく
)
り、
169
刹帝利
(
せつていり
)
気取
(
きどり
)
となつて
永住
(
えいぢゆう
)
する
考
(
かんが
)
へだと、
170
俺
(
おれ
)
は
直覚
(
ちよくかく
)
してゐるのだ。
171
さうでなくちや、
172
こんな
手間
(
てま
)
の
要
(
い
)
つた
陣構
(
ぢんがま
)
へをする
筈
(
はず
)
がない……だないか』
173
乙
(
おつ
)
『さう
聞
(
き
)
けばさうかも
知
(
し
)
れぬのう。
174
オイ
丙
(
へい
)
の
奴
(
やつ
)
、
175
チツと
頭
(
あたま
)
を
改良
(
かいりやう
)
して、
176
ここ
一
(
いち
)
年
(
ねん
)
許
(
ばか
)
り
辛抱
(
しんばう
)
したらどうだ。
177
伍長
(
ごちやう
)
位
(
ぐらゐ
)
にはなれるか
知
(
し
)
れないぞ』
178
丙
(
へい
)
『
俺
(
おれ
)
の
考
(
かんが
)
へではビクトル
山
(
ざん
)
の
陣営
(
ぢんえい
)
は
到底
(
たうてい
)
永続
(
えいぞく
)
せないだらうと
思
(
おも
)
ふよ。
179
どうしてもロートル・ダンゼー
[
※
「ロートル・ダンゼー」はフランス語 l’autre danger 「他の危険」の意味。
]
が
迫
(
せま
)
つて
来
(
く
)
る
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
がしてならないワ。
180
よく
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
181
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
からは、
182
仄聞
(
そくぶん
)
する
処
(
ところ
)
に
依
(
よ
)
れば、
183
照国別
(
てるくにわけ
)
、
184
玉国別
(
たまくにわけ
)
、
185
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
186
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
187
治国別
(
はるくにわけ
)
と
云
(
い
)
ふ
宣伝使
(
せんでんし
)
隊
(
たい
)
が、
188
ハルナの
都
(
みやこ
)
へ
押寄
(
おしよ
)
せて
行
(
ゆ
)
くといふことだないか。
189
そして
其
(
その
)
行掛
(
ゆきがけ
)
の
駄賃
(
だちん
)
に
所在
(
あらゆる
)
バラモン
軍
(
ぐん
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
して、
190
暴風
(
ばうふう
)
の
原野
(
げんや
)
を
薙
(
な
)
ぐ
如
(
ごと
)
き
勢
(
いきほひ
)
で
進
(
すす
)
んで
来
(
く
)
るといふことだから、
191
キツとビクトル
山
(
ざん
)
へも
押寄
(
おしよ
)
せて
来
(
く
)
るに
違
(
ちが
)
ひない。
192
貴様
(
きさま
)
は
此処
(
ここ
)
にへ
張
(
ば
)
りついてさへ
居
(
を
)
れば、
193
やがてオー・シヤンス
[
※
「オー・シヤンス」はフランス語 la chance 「運」のこと。
]
が
吾
(
わが
)
身
(
み
)
に
降
(
ふ
)
つて
来
(
く
)
るやうに
思
(
おも
)
うてゐるが、
194
そんな
泡沫
(
はうまつ
)
に
等
(
ひと
)
しい
考
(
かんが
)
へは
念頭
(
ねんとう
)
よりキツパリ
削除
(
さくぢよ
)
せなくちや、
195
アフンと
致
(
いた
)
さなならぬ
破目
(
はめ
)
に
陥
(
おちい
)
るぞ、
196
チツとコンモンセンスを
輝
(
かがや
)
かして、
197
前後
(
ぜんご
)
の
状況
(
じやうきやう
)
を
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ』
198
甲
(
かふ
)
『ヘン、
199
一寸先
(
いつすんさき
)
は
暗
(
やみ
)
の
夜
(
よ
)
だ。
200
吾々
(
われわれ
)
如
(
ごと
)
き
人間
(
にんげん
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として、
201
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
変遷
(
へんせん
)
が
分
(
わか
)
るものかい。
202
刹那心
(
せつなしん
)
を
楽
(
たの
)
しむのだ。
203
三五教
(
あななひけう
)
の
教理
(
けうり
)
にも……
取越
(
とりこし
)
苦労
(
くらう
)
をすな、
204
又
(
また
)
過越
(
すぎこし
)
苦労
(
くらう
)
も
致
(
いた
)
すな……とあるだないか。
205
其
(
その
)
時
(
とき
)
や
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
又
(
また
)
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
くさ、
206
万々一
(
まんまんいち
)
、
207
三五教
(
あななひけう
)
の
連中
(
れんぢう
)
が
猛虎
(
まうこ
)
の
勢
(
いきほひ
)
で
迫
(
せま
)
つて
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
には
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
に
傚
(
なら
)
つて
戦術
(
せんじゆつ
)
の
奥
(
おく
)
の
手
(
て
)
を
出
(
だ
)
し、
208
尻
(
しり
)
に
帆
(
ほ
)
をかけて、
209
逸早
(
いちはや
)
く
遁走
(
とんそう
)
すれば、
210
それで
可
(
い
)
いのだ。
211
それがセルフ・ブリサベーシヨンの
最
(
もつとも
)
必要
(
ひつえう
)
とする
要件
(
えうけん
)
だ。
212
アハハハハ』
213
丙
(
へい
)
『
何
(
なん
)
とマア、
214
貴様
(
きさま
)
達
(
たち
)
は、
215
善
(
ぜん
)
とも
悪
(
あく
)
とも
判別
(
はんべつ
)
し
難
(
がた
)
き
代物
(
しろもの
)
だなア。
216
それでも
人間
(
にんげん
)
だと
思
(
おも
)
つてゐるのか』
217
甲
(
かふ
)
『ヘン、
218
馬鹿
(
ばか
)
にするない。
219
之
(
これ
)
でもヤツパリ
一人前
(
いちにんまへ
)
の
哥兄
(
にい
)
さまだ。
220
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
表面
(
へうめん
)
は
軍律
(
ぐんりつ
)
だとか、
221
法律
(
はふりつ
)
だとか、
222
道徳
(
だうとく
)
だとか、
223
節制
(
せつせい
)
、
224
カウンテネンスだとか
云
(
い
)
つて、
225
リゴリズムを
標榜
(
へうばう
)
してゐるが、
226
其
(
その
)
内面
(
ないめん
)
はヤツパリ
内面
(
ないめん
)
だ。
227
詐
(
いつは
)
り
多
(
おほ
)
き
現代
(
げんだい
)
に
処
(
しよ
)
して、
228
馬鹿
(
ばか
)
正直
(
しやうぢき
)
なことを
墨守
(
ぼくしゆ
)
してゐても、
229
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
遅
(
おく
)
れる
計
(
ばか
)
りで、
230
しまひには
廃人扱
(
はいじんあつかひ
)
にされて
了
(
しま
)
ふよ。
231
それよりも
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
から
与
(
あた
)
へられた
同様
(
どうやう
)
の
此
(
この
)
盗
(
ぬす
)
み
酒
(
ざけ
)
、
232
ホリ・グレールを
傾
(
かたむ
)
けて、
233
神徳
(
しんとく
)
を
讃美
(
さんび
)
し、
234
生
(
い
)
き
乍
(
なが
)
ら
天国
(
てんごく
)
の
生涯
(
しやうがい
)
を、
235
仮令
(
たとへ
)
一瞬間
(
いつしゆんかん
)
なりとも
楽
(
たの
)
しむが
人生
(
じんせい
)
の
極致
(
きよくち
)
だ。
236
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
食
(
くら
)
ふ
事
(
こと
)
と
飲
(
の
)
む
事
(
こと
)
とラブする
事
(
こと
)
を
疎外
(
そぐわい
)
したら、
237
到底
(
たうてい
)
、
238
生存
(
せいぞん
)
することは
出来
(
でき
)
ない。
239
ぢやと
云
(
い
)
つて、
240
斯
(
か
)
かる
殺風景
(
さつぷうけい
)
な
陣中
(
ぢんちう
)
に
於
(
おい
)
て、
241
ラブ・イズ・ベスト
論
(
ろん
)
を
持出
(
もちだ
)
した
所
(
ところ
)
で、
242
有名
(
いうめい
)
無実
(
むじつ
)
だから、
243
先
(
ま
)
づ
手近
(
てぢか
)
にあるホール・ワインでも
傾
(
かたむ
)
けて、
244
浩然
(
こうぜん
)
の
気
(
き
)
を
養
(
やしな
)
ひ、
245
イザ
一大事
(
いちだいじ
)
と
云
(
い
)
ふ
場合
(
ばあひ
)
には、
246
吾
(
わ
)
れ
先
(
さき
)
に
戦術
(
せんじゆつ
)
の
奥
(
おく
)
の
手
(
て
)
を
発揮
(
はつき
)
さへすれば
至極
(
しごく
)
安全
(
あんぜん
)
といふものだ。
247
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
にクヨクヨと
致
(
いた
)
して、
248
サイキツク・トラーマを
続
(
つづ
)
けてゐると、
249
遂
(
つひ
)
には
神経
(
しんけい
)
衰弱
(
すゐじやく
)
を
来
(
きた
)
し、
250
地獄界
(
ぢごくかい
)
の
餓鬼
(
がき
)
さんの
様
(
やう
)
になつて
了
(
しま
)
ふぞ。
251
人間
(
にんげん
)
は
心
(
こころ
)
の
持様
(
もちやう
)
が
第一
(
だいいち
)
だ。
252
今日
(
こんにち
)
は
新
(
あたら
)
しい
人間
(
にんげん
)
の
社会
(
しやくわい
)
だ。
253
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めて、
254
ジウネス・アンテレク・テーユエルの
域
(
ゐき
)
に
進
(
すす
)
み、
255
社会
(
しやくわい
)
の
波
(
なみ
)
に
呑
(
の
)
まれない
様
(
やう
)
にせなくちや
人生
(
じんせい
)
は
嘘
(
うそ
)
だ。
256
素
(
もと
)
より
神経質
(
しんけいしつ
)
な
道徳論
(
だうとくろん
)
に
捉
(
とら
)
はれてゐるやうな
者
(
もの
)
が、
257
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
のバラモン
軍
(
ぐん
)
に
従軍
(
じゆうぐん
)
するものか。
258
貴様
(
きさま
)
は
軍人
(
ぐんじん
)
になるなんて、
259
性
(
しやう
)
に
合
(
あ
)
うてゐない。
260
サイコ・アナリシスに
仍
(
よ
)
つて
調査
(
てうさ
)
したならば、
261
キツと
汝
(
きさま
)
の
心中
(
しんちう
)
には
弱虫
(
よわむし
)
が
団体
(
だんたい
)
を
組
(
く
)
んで、
262
現世
(
げんせ
)
を
呪
(
のろ
)
うてゐる
馬鹿者
(
ばかもの
)
の
軍政署
(
ぐんせいしよ
)
となつてゐるだらうよ。
263
悪人
(
あくにん
)
は
悪人
(
あくにん
)
とユニオンし、
264
善人
(
ぜんにん
)
は
善人
(
ぜんにん
)
と
結合
(
けつがふ
)
するのだから、
265
貴様
(
きさま
)
は
此
(
この
)
河
(
かは
)
を
向
(
むか
)
ふへ
渡
(
わた
)
つて、
266
治国別
(
はるくにわけ
)
さまでもお
迎
(
むか
)
へ
申
(
まを
)
し、
267
弁当持
(
べんたうもち
)
でもさして
頂
(
いただ
)
くが
性
(
しやう
)
に
合
(
あ
)
うて
居
(
を
)
らうぞや、
268
イヒヒヒヒ』
269
と
論争
(
ろんそう
)
してゐる。
270
河
(
かは
)
の
向方
(
むかふ
)
より
七八
(
しちはち
)
人
(
にん
)
のナイトは
三葉葵
(
みつばあふひ
)
を
染
(
そ
)
めなした
手旗
(
てばた
)
をかざし、
271
長閑
(
のどか
)
な
流
(
なが
)
れを
驀地
(
まつしぐら
)
に
渡
(
わた
)
つて、
272
ザワザワザワと
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて
渡
(
わた
)
り
来
(
く
)
る。
273
一同
(
いちどう
)
は
何事
(
なにごと
)
の
突発
(
とつぱつ
)
せしならむと、
274
酒
(
さけ
)
の
酔
(
よひ
)
も
醒
(
さ
)
め、
275
目
(
め
)
をみはつてゐる。
276
(
大正一二・二・一二
旧一一・一二・二七
於竜宮館
松村真澄
録)
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