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第53巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 毘丘取颪
01 春菜草
〔1364〕
02 蜉蝣
〔1365〕
03 軟文学
〔1366〕
04 蜜語
〔1367〕
05 愛縁
〔1368〕
06 気縁
〔1369〕
07 比翼
〔1370〕
08 連理
〔1371〕
09 蛙の腸
〔1372〕
第2篇 貞烈亀鑑
10 女丈夫
〔1373〕
11 艶兵
〔1374〕
12 鬼の恋
〔1375〕
13 醜嵐
〔1376〕
14 女の力
〔1377〕
15 白熱化
〔1378〕
第3篇 兵権執着
16 暗示
〔1379〕
17 奉還状
〔1380〕
18 八当狸
〔1381〕
19 刺客
〔1382〕
第4篇 神愛遍満
20 背進
〔1383〕
21 軍議
〔1384〕
22 天祐
〔1385〕
23 純潔
〔1386〕
余白歌
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第三章
軟文学
(
なんぶんがく
)
〔一三六六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻
篇:
第1篇 毘丘取颪
よみ(新仮名遣い):
びくとりおろし
章:
第3章 軟文学
よみ(新仮名遣い):
なんぶんがく
通し章番号:
1366
口述日:
1923(大正12)年02月12日(旧12月27日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年3月8日
概要:
舞台:
左守キュービットの館
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
ビク国では左守は政務を、右守は軍馬を司っていた。左守のキュービットは、家令のエクスと密談を凝らしていた。二人は、右守が軍馬の権を握っているのをいいことに、わざと国内の治安を悪化させ、民心をビクトリヤ王からそむかせていると頭を痛めていた。
また二人は、キュービットの嫡子・ハルナが、文学に熱を上げて国家の事には少しも関心を示さないことにも頭を痛めていた。
しかし息子が政敵である右守の妹・カルナ姫と想いあっているということを耳にはさんでいたキュービットは、なんとかこの結婚を成就させて左守家と右守家を統合し、国内を治められないかと考えた。
エクスはキュービットに頼まれて、ハルナ本人の意向を確認することになった。エクスはハルナに問いかけて、ハルナの思い人が確かに右守の妹・カルナ姫であることを聞きだした。エクスから、父のキュービットもこの結婚には前向きであることを聞かされたハルナは、ひとり舞い上がっていた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5303
愛善世界社版:
35頁
八幡書店版:
第9輯 516頁
修補版:
校定版:
38頁
普及版:
19頁
初版:
ページ備考:
001
ビク
王国
(
わうこく
)
の
制度
(
せいど
)
は、
002
左守司
(
さもりのかみ
)
は
王
(
わう
)
の
師範役
(
しはんやく
)
となり、
003
国内
(
こくない
)
一切
(
いつさい
)
の
枢要
(
すうえう
)
なる
事務
(
じむ
)
を
取扱
(
とりあつか
)
ふこととなつてゐた。
004
そして
右守司
(
うもりのかみ
)
は
軍馬
(
ぐんば
)
の
権
(
けん
)
を
握
(
にぎ
)
り、
005
内寇
(
ないこう
)
外敵
(
ぐわいてき
)
の
鎮圧
(
ちんあつ
)
に
努
(
つと
)
むる
職掌
(
しよくしやう
)
であつた。
006
左守司
(
さもりのかみ
)
のキユービツトは、
007
家令
(
かれい
)
のヱクスと
共
(
とも
)
に
密談
(
みつだん
)
を
凝
(
こ
)
らしてゐる。
008
左守
(
さもり
)
『ヱクス、
009
どうも
今日
(
こんにち
)
の
国情
(
こくじやう
)
は
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
悪化
(
あくくわ
)
し、
010
国民
(
こくみん
)
怨嗟
(
えんさ
)
の
声
(
こゑ
)
は
四方
(
しはう
)
に
充
(
み
)
ち、
011
各所
(
かくしよ
)
に
動乱
(
どうらん
)
起
(
おこ
)
り、
012
暴徒
(
ばうと
)
は
其
(
その
)
隙
(
すき
)
に
乗
(
じやう
)
じて
民家
(
みんか
)
を
焼
(
や
)
き
放
(
はな
)
ち、
013
白昼
(
はくちう
)
強盗
(
がうたう
)
往来
(
わうらい
)
し、
014
人
(
ひと
)
を
斬
(
き
)
り、
015
婦女
(
ふぢよ
)
を
辱
(
はづかし
)
め、
016
天下
(
てんか
)
は
麻
(
あさ
)
の
如
(
ごと
)
く
紊
(
みだ
)
れて
来
(
き
)
たではないか。
017
ビクトリヤ
王
(
わう
)
様
(
さま
)
も
御
(
ご
)
老齢
(
らうれい
)
の
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て、
018
日夜
(
にちや
)
宸慮
(
しんりよ
)
を
悩
(
なや
)
ませ
玉
(
たま
)
ひ、
019
余
(
よ
)
に
向
(
むか
)
つて
種々
(
いろいろ
)
と
鎮圧
(
ちんあつ
)
の
道
(
みち
)
をお
尋
(
たづ
)
ね
遊
(
あそ
)
ばすけれ
共
(
ども
)
、
020
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うても
斯
(
か
)
かる
時
(
とき
)
には
兵馬
(
へいば
)
の
権
(
けん
)
を
握
(
にぎ
)
つてゐない
為
(
ため
)
に、
021
強圧
(
きやうあつ
)
的
(
てき
)
に
一
(
いち
)
時
(
じ
)
なり
共
(
とも
)
鎮圧
(
ちんあつ
)
することが
出来
(
でき
)
ない。
022
何
(
なん
)
とかして
右守司
(
うもりのかみ
)
の
職権
(
しよくけん
)
を
左守
(
さもり
)
に
移
(
うつ
)
さなくては
仕方
(
しかた
)
がない。
023
何
(
なん
)
とか
妙案
(
めうあん
)
があるまいかな』
024
ヱクス『
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
しましても、
025
右守司
(
うもりのかみ
)
、
026
奸侫
(
かんねい
)
邪智
(
じやち
)
にして、
027
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
取入
(
とりい
)
り、
028
権
(
けん
)
を
恣
(
ほしいまま
)
に
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りますれば、
029
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
も、
030
左守司
(
さもりのかみ
)
様
(
さま
)
も、
031
殆
(
ほとん
)
ど
有名
(
いうめい
)
無実
(
むじつ
)
の
有様
(
ありさま
)
、
032
実
(
じつ
)
に
残念
(
ざんねん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
033
加
(
くは
)
ふるに
右守司
(
うもりのかみ
)
、
034
野心
(
やしん
)
を
包蔵
(
はうざう
)
し、
035
国内
(
こくない
)
の
動乱
(
どうらん
)
を
煽動
(
せんどう
)
し、
036
紛擾
(
ふんぜう
)
をして
益々
(
ますます
)
大
(
だい
)
ならしめむとするの
傾向
(
けいかう
)
が
厶
(
ござ
)
いまする。
037
モ
少
(
すこ
)
し
早
(
はや
)
く
軍隊
(
ぐんたい
)
を
動
(
うご
)
かし、
038
鎮撫
(
ちんぶ
)
にかかつたならば、
039
斯様
(
かやう
)
な
事
(
こと
)
にはならないのですが、
040
右守司
(
うもりのかみ
)
は
胸
(
むね
)
に
一物
(
いちもつ
)
ある
事
(
こと
)
とて、
041
此
(
この
)
紛擾
(
ふんぜう
)
を
傍観
(
ばうかん
)
し、
042
軍隊
(
ぐんたい
)
を
以
(
もつ
)
て
民
(
たみ
)
に
向
(
むか
)
ふは、
043
政治
(
せいぢ
)
の
本義
(
ほんぎ
)
ではない、
044
民心
(
みんしん
)
を
怒
(
いか
)
らしむるは
危険
(
きけん
)
至極
(
しごく
)
だと
主張
(
しゆちやう
)
し、
045
蔭
(
かげ
)
から
暴動
(
ばうどう
)
を
煽動
(
せんどう
)
し、
046
自発
(
じはつ
)
的
(
てき
)
に
貴方
(
あなた
)
の
退位
(
たいゐ
)
を
余儀
(
よぎ
)
なくせしめ、
047
自
(
みづか
)
ら
取
(
と
)
つて
代
(
かは
)
らむとの
野心
(
やしん
)
が
仄見
(
ほのみ
)
えて
居
(
を
)
ります。
048
何
(
なん
)
とか
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
に
用意
(
ようい
)
を
致
(
いた
)
さねば、
049
取返
(
とりかへ
)
しのつかぬ
大事
(
だいじ
)
が
起
(
おこ
)
るだらうと、
050
私
(
わたし
)
も
昼夜
(
ちうや
)
心胆
(
しんたん
)
を
砕
(
くだ
)
いて
居
(
を
)
ります。
051
加
(
くは
)
ふるに、
052
甚
(
はなはだ
)
申上
(
まをしあ
)
げ
難
(
にく
)
い
事
(
こと
)
乍
(
なが
)
ら、
053
左守司
(
さもりのかみ
)
の
跡
(
あと
)
をお
継
(
つ
)
ぎ
遊
(
あそ
)
ばすべき
御
(
ご
)
賢息
(
けんそく
)
様
(
さま
)
は、
054
耽美
(
たんび
)
生活
(
せいくわつ
)
だとか、
055
軟文学
(
なんぶんがく
)
だとか
云
(
い
)
つて、
056
荐
(
しきり
)
に
妙
(
めう
)
な
議論
(
ぎろん
)
をまくし
立
(
た
)
て、
057
国家
(
こくか
)
の
事
(
こと
)
などはチツトも
念頭
(
ねんとう
)
において
厶
(
ござ
)
らぬのだから、
058
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
います』
059
左守
(
さもり
)
『
如何
(
いか
)
にも、
060
親
(
おや
)
の
目
(
め
)
にも、
061
彼奴
(
あいつ
)
は
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
だと
思
(
おも
)
つてゐるのだ。
062
何
(
なん
)
とか
彼
(
かれ
)
を
甘
(
うま
)
く
改心
(
かいしん
)
させ、
063
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
に
舎身
(
しやしん
)
的
(
てき
)
の
忠勤
(
ちうきん
)
を
励
(
はげ
)
むやうにさせたいものだなア。
064
併
(
しか
)
し
仄
(
ほの
)
かに
聞
(
き
)
けば
伜
(
せがれ
)
のハルナは
右守
(
うもり
)
の
妹
(
いもうと
)
、
065
カルナに
対
(
たい
)
しラブ・レタースを
取交
(
とりかは
)
してゐるとやら
聞
(
き
)
いたが、
066
それが
果
(
はた
)
して
真
(
まこと
)
なら、
067
何
(
なん
)
とかして
此
(
この
)
結婚
(
けつこん
)
を
成立
(
せいりつ
)
させ、
068
災
(
わざはひ
)
を
未発
(
みはつ
)
に
防
(
ふせ
)
ぐ
手段
(
しゆだん
)
を
廻
(
めぐ
)
らさねばならぬ。
069
国内
(
こくない
)
の
紛擾
(
ふんぜう
)
を
治
(
をさ
)
めむとすれば、
070
先
(
ま
)
づ
城内
(
じやうない
)
の
暗闘
(
あんとう
)
を
防
(
ふせ
)
ぎ、
071
一致
(
いつち
)
団結
(
だんけつ
)
しておかねば
右守司
(
うもりのかみ
)
の
術中
(
じゆつちう
)
に
陥
(
おちい
)
るやうな
事
(
こと
)
があつては
実
(
じつ
)
に
困
(
こま
)
るからなア』
072
ヱクス『
如何
(
いか
)
にも
御尤
(
ごもつと
)
もな
御
(
お
)
説
(
せつ
)
、
073
ハルナ
様
(
さま
)
とカルナ
姫
(
ひめ
)
との
間
(
あひだ
)
に、
074
左様
(
さやう
)
な
消息
(
せうそく
)
があるとすれば、
075
一
(
ひと
)
つハルナ
様
(
さま
)
に
此処
(
ここ
)
に
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
つて、
076
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
承
(
うけたま
)
はつた
上
(
うへ
)
、
077
何
(
なん
)
とか
工夫
(
くふう
)
を
致
(
いた
)
さうだありませぬか』
078
左守
(
さもり
)
『それも
一
(
ひと
)
つの
方法
(
はうはふ
)
だ。
079
ヱクス、
080
お
前
(
まへ
)
一寸
(
ちよつと
)
伜
(
せがれ
)
に
会
(
あ
)
うて、
081
意見
(
いけん
)
を
叩
(
たた
)
いて
来
(
き
)
てくれまいかな』
082
ヱクス『ハイ
畏
(
かしこ
)
まりました。
083
直様
(
すぐさま
)
ハルナ
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
面会
(
めんくわい
)
を
願
(
ねが
)
ひ、
084
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
承
(
うけたま
)
はつた
上
(
うへ
)
、
085
詳細
(
しやうさい
)
なる
復命
(
ふくめい
)
を
致
(
いた
)
しませう』
086
と
左守
(
さもり
)
の
室
(
しつ
)
を
後
(
あと
)
にしてハルナの
居間
(
ゐま
)
を
訪
(
おとづ
)
れた。
087
ハルナは
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
机
(
つくゑ
)
に
凭
(
もた
)
れて、
088
少
(
すこ
)
し
青白
(
あをじろ
)
い
顔
(
かほ
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
089
マトリモーニアル・インスティチューシャンズを
繙
(
ひもと
)
き、
090
読
(
よ
)
み
耽
(
ふけ
)
つてゐた。
091
そこへ
頑強
(
ぐわんきやう
)
な
無粋
(
ぶすゐ
)
な
忠義
(
ちうぎ
)
一途
(
いちづ
)
のヱクスが、
092
古
(
ふる
)
い
頭
(
あたま
)
をニユツと
突出
(
つきだ
)
して、
093
糊
(
のり
)
つけ
物
(
もの
)
のバチバチを
着
(
き
)
たやうな
四角張
(
しかくば
)
つたスタイルで、
094
ソツと
襖
(
ふすま
)
を
引
(
ひき
)
あけ、
095
ヱクス『ハイ、
096
御免
(
ごめん
)
下
(
くだ
)
さいませ。
097
ヱクスで
厶
(
ござ
)
います』
098
ハルナは
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
が
耳
(
みみ
)
に
這入
(
はい
)
らぬとみえて、
099
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
結婚
(
けつこん
)
制度史
(
せいどし
)
の
上
(
うへ
)
に
目
(
め
)
を
注
(
そそ
)
ぎ、
100
ゲツティング・マリドだとか、
101
フヰジオロヂー・オブ・ラブなどと
首
(
くび
)
をかたげて
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
102
ヱクスは
頓狂
(
とんきやう
)
な
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
103
ヱクス『モーシ、
104
ハルナ
様
(
さま
)
』
105
と
呼
(
よば
)
はる
声
(
こゑ
)
にハツと
気
(
き
)
がつき、
106
慌
(
あわ
)
てて
結婚
(
けつこん
)
制度史
(
せいどし
)
を
机
(
つくゑ
)
の
引出
(
ひきだ
)
しにしまひこみ、
107
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をして、
108
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うへ
)
に
両手
(
りやうて
)
をキチンとおき、
109
ハルナ『ヤ、
110
お
前
(
まへ
)
はヱクスだないか、
111
僕
(
ぼく
)
が
勉強
(
べんきやう
)
してる
所
(
ところ
)
へ
突然
(
とつぜん
)
やつて
来
(
き
)
たものだから、
112
面
(
めん
)
くらつて
了
(
しま
)
つたよ』
113
ヱクス『
又
(
また
)
軟派
(
なんぱ
)
文学
(
ぶんがく
)
でも
耽読
(
たんどく
)
してゐられましたのでせう』
114
ハルナはハツとし
乍
(
なが
)
ら、
115
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
り、
116
ハルナ『アアイヤイヤ、
117
軟派
(
なんぱ
)
の
文学
(
ぶんがく
)
などは
青年
(
せいねん
)
の
読
(
よ
)
むべきものでない、
118
俺
(
おれ
)
は
硬派
(
かうは
)
文学
(
ぶんがく
)
を
耽読
(
たんどく
)
してゐるのだ』
119
ヱクス『それでも、
120
貴方
(
あなた
)
、
121
机
(
つくゑ
)
の
上
(
うへ
)
にマトリモーニアル・インスティチューシャンズがチヨコチヨコおいてあるだありませぬか』
122
ハルナ『ウンあれか、
123
あれは
結婚
(
けつこん
)
制度史
(
せいどし
)
だから、
124
お
前
(
まへ
)
のやうな
既婚者
(
きこんしや
)
は
必要
(
ひつえう
)
はないが、
125
吾々
(
われわれ
)
には
強
(
あなが
)
ち
不必要
(
ふひつえう
)
と
断
(
だん
)
ずることは
出来
(
でき
)
ない。
126
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
少
(
すこ
)
し
許
(
ばか
)
り
軟派
(
なんぱ
)
でも
硬派
(
かうは
)
を
研究
(
けんきう
)
比較
(
ひかく
)
上
(
じやう
)
、
127
一度
(
いちど
)
は
読
(
よ
)
んでおかなくちやならないからなア』
128
ヱクス『もし、
129
ハルナ
様
(
さま
)
、
130
私
(
わたし
)
は
軟文学
(
なんぶんがく
)
が
大好物
(
だいかうぶつ
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ。
131
貴方
(
あなた
)
の
不在中
(
ふざいちう
)
にも、
132
チヨコチヨコ
拝借
(
はいしやく
)
しまして、
133
覗
(
のぞ
)
き
読
(
よ
)
みをさして
頂
(
いただ
)
きましたが、
134
随分
(
ずいぶん
)
面白
(
おもしろ
)
いものですな』
135
ハルナ『
吾々
(
われわれ
)
の
参考書
(
さんかうしよ
)
を
無断
(
むだん
)
で、
136
お
前
(
まへ
)
は
読
(
よ
)
んだのか、
137
怪
(
け
)
しからぬだないか』
138
ヱクスは
頭
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
き
乍
(
なが
)
ら、
139
ヱクス『ヘー、
140
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬ、
141
余
(
あま
)
り
面白
(
おもしろ
)
いものですから、
142
お
父上
(
ちちうへ
)
に、
143
ソツとお
見
(
み
)
せ
申
(
まを
)
しました
所
(
ところ
)
、
144
此
(
この
)
様
(
やう
)
な
軟文学
(
なんぶんがく
)
は
汚
(
けが
)
らはしい、
145
雪隠壺
(
せつちんつぼ
)
へでも
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
へ……とお
目玉
(
めだま
)
を
頂
(
いただ
)
くかと
思
(
おも
)
ひの
外
(
ほか
)
、
146
流石
(
さすが
)
はハルナ
様
(
さま
)
のお
父
(
とう
)
さま
丈
(
だけ
)
あつて、
147
ヘヘヘヘヘ、
148
開
(
ひら
)
けたお
方
(
かた
)
ですよ。
149
内
(
うち
)
の
伜
(
せがれ
)
もここ
迄
(
まで
)
徹底
(
てつてい
)
したか、
150
流石
(
さすが
)
は
私
(
わし
)
の
息子
(
むすこ
)
だ。
151
これならば
左守
(
さもり
)
の
後
(
あと
)
を
継
(
つ
)
がしても
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ……と
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
のお
喜
(
よろこ
)
び、
152
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて
御
(
ご
)
讃嘆
(
さんたん
)
、
153
イヤもう
此
(
この
)
頑固爺
(
ぐわんこおやぢ
)
も
意外
(
いぐわい
)
の
感
(
かん
)
に
打
(
う
)
たれ、
154
それから
後
(
のち
)
といふものは、
155
スツカリ
軟派
(
なんぱ
)
に
改悪
(
かいあく
)
……
否
(
いな
)
改良
(
かいりやう
)
致
(
いた
)
しまして、
156
此
(
この
)
古
(
ふる
)
い
頭
(
あたま
)
もチツと
許
(
ばか
)
り
新
(
あたら
)
しくなりました。
157
此
(
この
)
書籍
(
しよせき
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
全
(
まつた
)
くヰータ・ヌーバの
気分
(
きぶん
)
になり、
158
どこともなしに
心
(
こころ
)
が
若
(
わか
)
やいで
来
(
き
)
ましたがな、
159
アハハハハ』
160
とうまくハルナの
精神
(
せいしん
)
にバツを
合
(
あは
)
さうとしてゐる
其
(
その
)
老獪
(
らうくわい
)
さ。
161
ハルナはヱクスの
心中
(
しんちう
)
を
知
(
し
)
らず、
162
大
(
おほい
)
に
喜
(
よろこ
)
んで、
163
ハルナ『
成程
(
なるほど
)
父上
(
ちちうへ
)
様
(
さま
)
も、
164
時代
(
じだい
)
に
目覚
(
めざ
)
め
遊
(
あそ
)
ばしたと
見
(
み
)
えるなア、
165
イヤ
有難
(
ありがた
)
い
有難
(
ありがた
)
い。
166
元
(
もと
)
より
左守家
(
さもりけ
)
は
殺伐
(
さつばつ
)
な
軍馬
(
ぐんば
)
の
権
(
けん
)
を
扱
(
あつか
)
ふ
家
(
いへ
)
だない、
167
文学
(
ぶんがく
)
の
家
(
いへ
)
だから、
168
お
父
(
とう
)
さまがさうなられるのも
当然
(
たうぜん
)
だ。
169
お
前
(
まへ
)
も
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
様
(
やう
)
に
拙者
(
せつしや
)
の
恋愛論
(
れんあいろん
)
に
就
(
つい
)
て、
170
此
(
この
)
上
(
うへ
)
ゴテゴテ
苦情
(
くじやう
)
は
云
(
い
)
はないだらうなア』
171
ヱクス『ハイ、
172
仰
(
おほ
)
せ
迄
(
まで
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ、
173
頭
(
あたま
)
は
禿
(
は
)
げても、
174
気
(
き
)
はヤツパリ
十七八
(
じふしちはち
)
、
175
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
主義
(
しゆぎ
)
に
全部
(
ぜんぶ
)
共鳴
(
きようめい
)
して
居
(
を
)
ります。
176
アハハハハ』
177
ハルナ『
父上
(
ちちうへ
)
様
(
さま
)
はそこ
迄
(
まで
)
人間味
(
にんげんみ
)
がお
分
(
わか
)
りになつた
以上
(
いじやう
)
は、
178
僕
(
ぼく
)
の
主義
(
しゆぎ
)
にキツト
賛成
(
さんせい
)
して
下
(
くだ
)
さるだらうかな。
179
レター・ライタの
中
(
なか
)
に
普通
(
ふつう
)
一般
(
いつぱん
)
の
往復文
(
わうふくぶん
)
の
中
(
なか
)
にラブ・レターズが
混入
(
こんにふ
)
してゐる
今日
(
こんにち
)
の
教育法
(
けういくはふ
)
だから、
180
ラブ・イズ・ベストの
真理
(
しんり
)
は
分
(
わか
)
つてゐるだらうなア。
181
コーエデュケーシヤンの
行
(
おこな
)
はれてゐる
今日
(
こんにち
)
、
182
古
(
ふる
)
い
道徳
(
だうとく
)
に
捉
(
とら
)
はれて、
183
夫婦別
(
ふうふべつ
)
あり、
184
男女
(
だんぢよ
)
席
(
せき
)
を
同
(
おなじ
)
うせずなどと、
185
旧套語
(
きうたうご
)
をふり
廻
(
まは
)
したり、
186
門閥
(
もんばつ
)
結婚
(
けつこん
)
、
187
強圧
(
きやうあつ
)
結婚
(
けつこん
)
、
188
無情
(
むじやう
)
結婚
(
けつこん
)
、
189
自分
(
じぶん
)
以外
(
いぐわい
)
の
者
(
もの
)
が
定
(
さだ
)
める
結婚
(
けつこん
)
などの
迷夢
(
めいむ
)
は
醒
(
さ
)
まされたであらうなア』
190
ヱクス『
決
(
けつ
)
して
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
191
お
父
(
とう
)
さまはジュネス・アンテレック・テーエルですよ。
192
キヨロキヨロしてゐると、
193
貴方
(
あなた
)
よりも
遥
(
はる
)
かに
新
(
あたら
)
しうなられますからな』
194
ハルナ『さうすると、
195
僕
(
ぼく
)
のゲツティング・マリドに
就
(
つい
)
ては
決
(
けつ
)
して
干渉
(
かんせう
)
せないと
云
(
い
)
ふ
御
(
ご
)
方針
(
はうしん
)
だな。
196
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
の
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
つた、
197
アメージング・マリーヂな
事
(
こと
)
を
強
(
しひ
)
られると、
198
俺
(
おれ
)
のやうな
文明
(
ぶんめい
)
人士
(
じんし
)
はサイキツク・トラウマを
来
(
きた
)
し
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか、
199
ヒステリックになつて
了
(
しま
)
ふ。
200
今日
(
こんにち
)
の
親
(
おや
)
はすべてを
其
(
その
)
子
(
こ
)
の
自由
(
じいう
)
意志
(
いし
)
に
任
(
まか
)
すのが
賢明
(
けんめい
)
なる
親
(
おや
)
たるの
道
(
みち
)
だからなア』
201
ヱクス『
実
(
じつ
)
に
貴方
(
あなた
)
は
明敏
(
めいびん
)
な
頭脳
(
づなう
)
の
持主
(
もちぬし
)
ですな、
202
此
(
この
)
親
(
おや
)
にして
此
(
この
)
子
(
こ
)
あり、
203
イヤ
早
(
はや
)
、
204
此
(
この
)
頑固
(
ぐわんこ
)
なヱクスも
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りました。
205
付
(
つ
)
いては
貴方
(
あなた
)
が
理想
(
りさう
)
の
妻
(
つま
)
となさる
御
(
お
)
方
(
かた
)
はきまつて
居
(
を
)
りますか』
206
ハルナ『きまつたでもなし、
207
きまらぬでもなし、
208
今
(
いま
)
熟考中
(
じゆくかうちう
)
だ。
209
何
(
なん
)
ぞ
好
(
い
)
い
機会
(
きくわい
)
があつたらお
前
(
まへ
)
に
相談
(
さうだん
)
してみたいと
思
(
おも
)
つてゐたのだが、
210
何分
(
なにぶん
)
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
のお
前
(
まへ
)
と
俺
(
おれ
)
とは
思想
(
しさう
)
上
(
じやう
)
の
距離
(
きより
)
が
余
(
あま
)
り
甚
(
はなはだ
)
しいので、
211
つい
言
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
しかね、
212
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
煩悶
(
はんもん
)
苦悩
(
くなう
)
を
続
(
つづ
)
けて
来
(
き
)
たのだよ』
213
ヱクス『ハハハ、
214
そんな
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
がいりますか、
215
娘
(
むすめ
)
が
乳母
(
うば
)
に
打
(
うち
)
あけるやうに、
216
私
(
わたし
)
は
左守家
(
さもりけ
)
の
家令
(
かれい
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
217
万一
(
まんいち
)
お
父
(
とう
)
さまが
亡
(
な
)
くなられた
後
(
あと
)
は、
218
貴方
(
あなた
)
の
直接
(
ちよくせつ
)
の
御
(
ご
)
家来
(
けらい
)
、
219
どんな
事
(
こと
)
でも、
220
腹蔵
(
ふくざう
)
なく
仰有
(
おつしや
)
つて
頂
(
いただ
)
きたう
厶
(
ござ
)
います。
221
心
(
こころ
)
の
秘密
(
ひみつ
)
を
家令
(
かれい
)
の
私
(
わたし
)
にお
打明
(
うちあ
)
けなさらぬとは、
222
実
(
じつ
)
にお
水臭
(
みづくさ
)
い
御
(
お
)
心根
(
こころね
)
、
223
ヱクスはお
恨
(
うら
)
み
致
(
いた
)
します』
224
とワザとに
袖
(
そで
)
に
空涙
(
からなみだ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ふ。
225
ハルナは
得意
(
とくい
)
になり、
226
ハルナ『ヤア、
227
そんなら
打明
(
うちあ
)
かすが、
228
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
右守司
(
うもりのかみ
)
の
妹
(
いもうと
)
カルナ
姫
(
ひめ
)
とゲッティング・マリドの
予約
(
よやく
)
が
出来
(
でき
)
てゐるのだ』
229
ヱクス『エツ、
230
何
(
なん
)
と
仰
(
おほ
)
せられます、
231
あのカルナ
様
(
さま
)
と
情約
(
じやうやく
)
締結
(
ていけつ
)
が
整
(
ととの
)
うたと
仰有
(
おつしや
)
るのですか……ヘーエ……
何
(
なん
)
と
貴方
(
あなた
)
も
辣腕家
(
らつわんか
)
ですな。
232
此
(
この
)
ヱクスもゾツコンから
感服
(
かんぷく
)
致
(
いた
)
しました。
233
ヤ、
234
大
(
おほい
)
におやりなさいませ、
235
双手
(
もろて
)
をあげて
家令
(
かれい
)
のヱクス
賛成
(
さんせい
)
致
(
いた
)
します』
236
ハルナ『お
前
(
まへ
)
は
賛成
(
さんせい
)
してくれても、
237
肝心要
(
かんじんかなめ
)
の
父上
(
ちちうへ
)
の
御
(
ご
)
意思
(
いし
)
を
伺
(
うかが
)
はねば、
238
まだ
安心
(
あんしん
)
する
所
(
ところ
)
へは
行
(
い
)
けない、
239
よく
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
240
右守
(
うもり
)
左守
(
さもり
)
両家
(
りやうけ
)
の
暗闘
(
あんとう
)
は
時々
(
じじ
)
刻々
(
こくこく
)
に
激烈
(
げきれつ
)
になつて
来
(
き
)
てゐるのだからなア』
241
ヱクス『
貴方
(
あなた
)
にも
似合
(
にあは
)
ぬ
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
いますなア。
242
両家
(
りやうけ
)
の
暗闘
(
あんとう
)
は
暗闘
(
あんとう
)
だありませぬか。
243
人生
(
じんせい
)
に
取
(
と
)
つて
肝心要
(
かんじんかなめ
)
の、
244
それが
為
(
ため
)
に、
245
結婚
(
けつこん
)
問題
(
もんだい
)
までも
犠牲
(
ぎせい
)
にするといふ
事
(
こと
)
がありますか、
246
ソレヤ
問題
(
もんだい
)
が
違
(
ちが
)
ひますよ。
247
キツトお
父上
(
ちちうへ
)
も
此
(
この
)
問題
(
もんだい
)
に
就
(
つ
)
いては
賛成
(
さんせい
)
遊
(
あそ
)
ばすことは
受合
(
うけあひ
)
です。
248
貴方
(
あなた
)
の
決心
(
けつしん
)
が
定
(
き
)
まれば、
249
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く、
250
及
(
およ
)
ばず
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
ヱクスが
斡旋
(
あつせん
)
の
労
(
らう
)
をとらして
戴
(
いただ
)
きます。
251
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なされませ』
252
ハルナはさも
嬉
(
うれ
)
しげに、
253
包
(
つつ
)
みきれぬやうな
笑
(
ゑみ
)
を
頬
(
ほほ
)
に
泛
(
うか
)
べて、
254
恥
(
はづ
)
かしげに
俯
(
うつむ
)
いた。
255
ヱクスはしてやつたりと、
256
心中
(
しんちう
)
に
頷
(
うなづ
)
き
乍
(
なが
)
ら、
257
ヱクス『ハルナ
様
(
さま
)
、
258
善
(
ぜん
)
は
急
(
いそ
)
げで
厶
(
ござ
)
いますから、
259
直様
(
すぐさま
)
お
父上
(
ちちうへ
)
に
申上
(
まをしあ
)
げ、
260
先方
(
せんぱう
)
に
掛合
(
かけあ
)
ふ
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
しませう』
261
とイソイソとして、
262
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立出
(
たちい
)
で
左守司
(
さもりのかみ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を
報告
(
はうこく
)
すべく
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
263
後
(
あと
)
にハルナは
天
(
てん
)
にも
上
(
のぼ
)
る
心地
(
ここち
)
して、
264
ハルナ『あああ、
265
時節
(
じせつ
)
が
来
(
き
)
たかなア、
266
よく
開
(
ひら
)
けた
父上
(
ちちうへ
)
だ。
267
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんのう
)
様
(
さま
)
、
268
何卒
(
どうぞ
)
此
(
この
)
恋
(
こひ
)
が
完全
(
くわんぜん
)
に
成就
(
じやうじゆ
)
致
(
いた
)
します
様
(
やう
)
に、
269
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
へ、
270
幸
(
さきは
)
ひ
玉
(
たま
)
へ、
271
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
ませ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
ませ』
272
と
合掌
(
がつしやう
)
し、
273
結婚
(
けつこん
)
の
成立
(
せいりつ
)
を
祈願
(
きぐわん
)
した。
274
天井
(
てんじやう
)
から
鼠
(
ねづみ
)
がクウクウクウ チウチウチウ チーチー ドドドドド、
275
バタバタバタと
鳴
(
な
)
き
乍
(
なが
)
ら
走
(
はし
)
る
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
276
(
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旧一一・一二・二七
於竜宮館
松村真澄
録)
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