霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第五章 愛縁(あいえん)〔一三六八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻 篇:第1篇 毘丘取颪 よみ(新仮名遣い):びくとりおろし
章:第5章 愛縁 よみ(新仮名遣い):あいえん 通し章番号:1368
口述日:1923(大正12)年02月12日(旧12月27日) 口述場所:竜宮館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月8日
概要: 舞台:ビクトリヤ城 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
ヒルナ姫から急使を受けた左守キュービットは、いそいで衣服を整え伺候した。ヒルナ姫は、左守の息子ハルナと、右守の妹カルナ姫の縁談をもちかけ、国内を統一するためにこの縁談を受けてほしいとキュービットに伝えた。
キュービットは元より望んでいた縁談であり、承諾すると準備を整えるために館に戻っていいった。一方ヒルナ姫は、ビクトリヤ王にこの件を報告に行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-12-03 23:16:02 OBC :rm5305
愛善世界社版:56頁 八幡書店版:第9輯 524頁 修補版: 校定版:60頁 普及版:30頁 初版: ページ備考:
001 ヒルナ(ひめ)急使(きふし)によつて左守司(さもりのかみ)キユービツトは倉皇(さうくわう)として衣紋(えもん)(ととの)(うやうや)しく伺候(しこう)した。
002左守(さもり)『キユービツトがお(まね)きによつて(いそ)参上(さんじやう)(つかまつ)りました。003御用(ごよう)(おもむき)(おほ)()(くだ)されますれば有難(ありがた)(ぞん)じます』
004ヒルナ(ひめ)『キユービツト、005其方(そなた)折入(をりい)つて(きふ)相談(さうだん)(いた)したい(こと)があるのだ。006そこは端近(はしぢか)007(ちか)()つて(くだ)さい』
008左守(さもり)『はい、009(おそ)(おほ)(ござ)いますが、010(おん)(おほ)(いな)(がた)失礼(しつれい)(いた)します』
011()(なが)(ひめ)三尺(さんじやく)(ばか)(まへ)まで(すす)()でた。012ヒルナ(ひめ)(こゑ)(ひく)うして四辺(あたり)(こころ)(くば)(なが)ら、
013ヒルナ(ひめ)『ヤ、014左守殿(さもりどの)015(ほか)でもないが其方(そなた)息子(むすこ)ハルナ殿(どの)(よめ)(あた)()いと(おも)ふのだがお()けをなさるかな』
016左守(さもり)『これはこれは(おも)ひもよらぬ()親切(しんせつ)017左守(さもり)()にとつて有難(ありがた)幸福(しあわせ)(ぞん)じます。018(しか)(なが)(この)結婚(けつこん)問題(もんだい)ばかりは本人(ほんにん)本人(ほんにん)との意志(いし)疎通(そつう)せなくては、019本人(ほんにん)以外(いぐわい)(わたくし)何程(なにほど)(おや)だと()つても直様(すぐさま)(こたへ)する(わけ)には(まゐ)りませぬ。020今日(こんにち)(すべ)()(なか)(むかし)(かは)夫婦(ふうふ)関係(くわんけい)()いても結婚(けつこん)問題(もんだい)()いても、021恋愛(れんあい)(その)ものを基礎(きそ)とせなくては()かない(こと)になつて()りまする。022夫婦(ふうふ)仲良(なかよ)(くら)して()れるのが所謂(いはゆる)親孝行(おやかうかう)でもあり、023(すべ)ての事業(じげふ)のためでもあります。024人間(にんげん)生活(せいくわつ)本来(ほんらい)としては、025如何(どう)しても相思(さうし)男女(だんぢよ)結婚(けつこん)(いた)さねば(おや)(ちから)権力(けんりよく)圧迫(あつぱく)しても到底(たうてい)(すゑ)()げられないでせう。026親子(おやこ)衝突(しようとつ)したり、027夫婦(ふうふ)(あひだ)悲劇(ひげき)(おこ)るのも、028所謂(いはゆる)思想(しさう)(じやう)誤謬(ごびう)と、029(その)誤謬(ごびう)ある思想(しさう)から出来(でき)現代(げんだい)法則(はふそく)道徳(だうとく)や、030いろいろのものの欠陥(けつかん)や、031不完全(ふくわんぜん)から(しやう)ずるものであります。032(おや)()(でう)につき親孝行(おやかうかう)せむがために恋人(こひびと)()()げられなかつたり、033(また)(ある)事情(じじやう)のために生木(なまき)()かれて(をんな)離別(りべつ)したりする(こと)は、034人間(にんげん)としては(だん)じて真直(まつすぐ)生活(せいくわつ)()(こと)出来(でき)ませぬ。035(この)問題(もんだい)(とく)(かんが)へさして(いただ)かねばなりませぬ』
036ヒルナ(ひめ)『そらさうですとも。037人間(にんげん)(こしら)へた金銭(きんせん)財宝(ざいはう)(など)()ふものが邪魔(じやま)したり、038家族(かぞく)制度(せいど)欠点(けつてん)があつたり、039法律(はふりつ)不備(ふび)であつたり(また)周囲(しうゐ)人々(ひとびと)(もの)(かんが)(かた)時代(じだい)錯誤(さくご)があつたり、040(あるひ)其処(そこ)野卑(やひ)下劣(げれつ)私欲(しよく)(はたら)いたり、041種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)理由(りいう)によつて、042人間(にんげん)(てき)生活(せいくわつ)破壊(はくわい)されて、043純正(じゆんせい)恋愛(れんあい)(その)ものは忠孝(ちうかう)友誼(いうぎ)などの(ため)にも、044(だん)じて犠牲(ぎせい)とせらるべき性質(せいしつ)のものではありませぬ。045忠信(ちうしん)孝貞(かうてい)046(いづ)れの()(とく)をとつて()ても(その)根底(こんてい)には(かなら)(だい)なるラブ(ちから)(うご)いてゐるものです。047世間(せけん)沢山(たくさん)(おこ)恋愛(れんあい)(てき)悲劇(ひげき)について(ふか)(かんが)へて()ますと、048(かなら)(しうと)(しうとめ)不当(ふたう)跋扈(ばつこ)とか、049(あるひ)金銭(きんせん)(わざはひ)とか、050結婚(けつこん)当事者(たうじしや)無思慮(むしりよ)とか、051階級(かいきふ)制度(せいど)誤謬(ごびう)とか、052法律(はふりつ)制度(せいど)不完全(ふくわんぜん)とか、053(なん)とかかんとか()つて、054(しん)人間(にんげん)としては(その)本質(ほんしつ)(てき)でない事柄(ことがら)(おほ)禍根(くわこん)をなしてゐる(こと)発見(はつけん)するものであります。055それ(ゆゑ)(たがひ)諒解(りやうかい)のない結婚(けつこん)強圧(きやうあつ)(てき)(しひ)るのは、056(じつ)危険(きけん)千万(せんばん)()(こと)は、057(この)ヒルナもよく承知(しようち)してゐます。058(しか)(なが)ら、059(わらは)がハルナ殿(どの)(よめ)(もら)へとお(すす)めするのは(けつ)して政略(せいりやく)(てき)でもなければ強圧(きやうあつ)(てき)でもなく、060(また)()都合主義(つがふしゆぎ)でもありませぬ。061ハルナ殿(どの)恋人(こひびと)右守司(うもりのかみ)(いもうと)カルナ(ひめ)(たがひ)ラブしあひ、062(ほと)んど白熱化(はくねつくわ)せむとする(いきほひ)(ござ)います。063かくの(ごと)神聖(しんせい)恋愛(れんあい)等閑(とうかん)()して()かうものなら何時(いつ)心中(しんぢう)沙汰(ざた)突発(とつぱつ)するか(わか)りますまい。064さすれば左守(さもり)065右守(うもり)両家(りやうけ)恥辱(ちじよく)のみならず(わらは)(たち)(はぢ)(ござ)いますれば、066(わざはひ)未然(みぜん)(ふせ)完全(くわんぜん)なるラブを遂行(すゐかう)せしめ、067両家(りやうけ)和合(わがふ)(はか)り、068国家(こくか)泰山(たいざん)(やす)きに()かむとする一挙(いつきよ)両得(りやうとく)美挙(びきよ)だと(かんが)へます。069左守殿(さもりどの)(わらは)言葉(ことば)無理(むり)(ござ)いますか』
070左守(さもり)『はい、071(じつ)(あたら)しき新空気(しんくうき)注入(ちうにふ)して(いただ)きまして、072この(ふる)(あたま)(なん)だか(よみがへ)つた(やう)心持(こころもち)(いた)します。073成程(なるほど)(ひめ)(さま)のお(せつ)(とほ)り、074(わたくし)もウロウロ(その)消息(せうそく)()かぬでも(ござ)いませぬが、075(あま)りの(こと)で、076貴女(あなた)申上(まをしあ)ぐるも(おそ)(おほ)いと、077今日(けふ)(まで)秘密(ひみつ)にして()りましたが、078(ひめ)(さま)にそれ(まで)(わか)りになつて()れば、079(なに)をか(かく)しませう。080(あさ)から(ばん)まで(せがれ)のハルナはリーベ・ライにのみ(あたま)(いた)め、081(ほと)んど神経(しんけい)衰弱(すゐじやく)(おちい)つてる(やう)次第(しだい)(ござ)います。082(おや)として一人(ひとり)(せがれ)083その(こひ)()げさしてやり()いとは(おも)うて()りましたが、084(なに)()つても、085刹帝利(せつていり)(さま)(ひめ)(さま)のお(ゆる)しがなくては取行(とりおこな)(こと)出来(でき)ませず、086()して右守司(うもりのかみ)(いもうと)とある以上(いじやう)(くち)頬張(ほほば)つてお(ねがひ)する(こと)出来(でき)なかつたので(ござ)います。087何卒(なにとぞ)何分(なにぶん)にも(よろ)しく()執成(とりな)しをお(ねが)(まを)します』
088ヒルナ(ひめ)流石(さすが)左守殿(さもりどの)089早速(さつそく)()承知(しようち)090ヒルナ(ひめ)満足(まんぞく)(おも)ふぞや』
091左守(さもり)『はい、092有難(ありがた)(ござ)います。093貴女(あなた)満足(まんぞく)して(くだ)されば(さだ)めて刹帝利(せつていり)(さま)()承知(しようち)(くだ)さるでせう。094(つぎ)(この)左守(さもり)満足(まんぞく)095(せがれ)(さぞ)満足(まんぞく)(いた)すで(ござ)いませう』
096ヒルナ(ひめ)左守殿(さもりどの)097其方(そなた)(わらは)何時(いつ)心配(しんぱい)して()つたが、098新旧(しんきう)思想(しさう)衝突(しようとつ)で、099右守殿(うもりどの)暗闘(あんとう)()えなかつた(やう)だが、100(これ)にて両家(りやうけ)和合(わがふ)曙光(しよくわう)(みと)め、101(したが)つて城内(じやうない)政治(せいぢ)完全(くわんぜん)(おこな)はれるでせう。102政略(せいりやく)(じやう)から()つても、103恋愛(れんあい)至上(しじやう)主義(しゆぎ)から()つても、104間然(かんぜん)する(ところ)なき、105(ねが)うてもなき縁談(えんだん)ぢや。106(これ)でビクトリヤの国家(こくか)もビクとも(いた)しますまい。107ああ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)108盤古(ばんこ)神王(しんのう)塩長彦(しほながひこの)(みこと)(さま)!』
109左守(さもり)(ひめ)(さま)110重々(ぢゆうぢゆう)()心尽(こころづく)し、111有難(ありがた)(ぞん)じます。112何卒(なにとぞ)刹帝利(せつていり)(さま)(はや)貴女(あなた)(さま)よりお(はな)(くだ)さいまして、113(この)縁談(えんだん)(ととの)ひます(やう)執成(とりなし)(ねが)ひまする』
114ヒルナ(ひめ)心配(しんぱい)なさるな。115屹度(きつと)(ととの)へて()せませう。116其方(そなた)覚悟(かくご)がきまつた(うへ)直様(すぐさま)(この)縁談(えんだん)取掛(とりかか)ります。117一時(いちとき)(はや)(かへ)つて()準備(じゆんび)(ねが)ひます。118(ぜん)(いそ)げと(まを)しますからな』
119左守(さもり)『はい、120有難(ありがた)(ござ)います。121左様(さやう)ならば』
122叮嚀(ていねい)(れい)(ほどこ)欣々(いそいそ)として(おの)(やかた)(かへ)()く。123(あと)にヒルナ(ひめ)(ただ)一人(ひとり)ニコニコ(わら)(なが)ら、
124ヒルナ(ひめ)『あ、125(これ)にて両家(りやうけ)(もつ)れもスツパリと和解(わかい)するだらう。126刹帝利(せつていり)(さま)七十路(ななそぢ)()えた()老体(らうたい)なり、127何時(なんどき)国替(くにがへ)(あそ)ばすか人命(じんめい)(ほど)(はか)()れない。128(あと)()ぐべき()()(さま)がないのだから、129(にはか)()帰幽(きいう)にでもなれば、130(たちま)左守(さもり)131右守(うもり)両家(りやうけ)(あらそ)ひが勃発(ぼつぱつ)し、132(これ)(をさ)むべき重鎮(ぢうちん)なる人物(じんぶつ)がなくなつて(しま)ふ。133さうすれば国家(こくか)滅亡(めつぼう)眼前(がんぜん)にありと(こころ)(こころ)ならず今日(けふ)(まで)()れて()たが、134(この)結婚(けつこん)がうまく()つて両家(りやうけ)和合(わがふ)せば仮令(たとへ)刹帝利(せつていり)(さま)()他界(たかい)になつても最早(もはや)大磐石(だいばんじやく)だ。135右守(うもり)136左守司(さもりのかみ)(ひき)ゐて、137(をんな)(なが)らも女王(ぢよわう)となり、138(この)国家(こくか)(をさ)める(こと)出来(でき)るだらう。139それに()いても(こま)つたのは右守司(うもりのかみ)だ。140アアア、141残念(ざんねん)(こと)(わらは)もしたものだな。142(ひと)(のが)れて(また)(ひと)つ、143右守司(うもりのかみ)()をきる(こと)(じつ)難事中(なんじちう)難事(なんじ)だ。144ホンにままならぬ浮世(うきよ)だなア』
145吐息(といき)()らし思案(しあん)()れてゐる。
146大正一二・二・一二 旧一一・一二・二七 於竜宮館 北村隆光録)
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