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第73巻(子の巻)
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第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第53巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 毘丘取颪
01 春菜草
〔1364〕
02 蜉蝣
〔1365〕
03 軟文学
〔1366〕
04 蜜語
〔1367〕
05 愛縁
〔1368〕
06 気縁
〔1369〕
07 比翼
〔1370〕
08 連理
〔1371〕
09 蛙の腸
〔1372〕
第2篇 貞烈亀鑑
10 女丈夫
〔1373〕
11 艶兵
〔1374〕
12 鬼の恋
〔1375〕
13 醜嵐
〔1376〕
14 女の力
〔1377〕
15 白熱化
〔1378〕
第3篇 兵権執着
16 暗示
〔1379〕
17 奉還状
〔1380〕
18 八当狸
〔1381〕
19 刺客
〔1382〕
第4篇 神愛遍満
20 背進
〔1383〕
21 軍議
〔1384〕
22 天祐
〔1385〕
23 純潔
〔1386〕
余白歌
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> 第3篇 兵権執着 > 第16章 暗示
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第一六章
暗示
(
あんじ
)
〔一三七九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻
篇:
第3篇 兵権執着
よみ(新仮名遣い):
へいけんしゅうちゃく
章:
第16章 暗示
よみ(新仮名遣い):
あんじ
通し章番号:
1379
口述日:
1923(大正12)年02月14日(旧12月29日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年3月8日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
バラモン軍は、牢獄につないでいたビクトリヤ王をはじめビク国の重臣たちを和睦の酒宴に招くことになった。鬼春別、久米彦らが上座を占め、王家の人々は下座に座って和睦の謝意を述べた。
ビクトリヤ王とハルナは、鬼春別・久米彦の傍らに控えている女性がヒルナ姫、カルナ姫によく似ていることに気が付き、突然バラモン軍が和睦を申し出てきたのも、彼女たちの働きがあったのではないか、とうすうす感じていた。
鬼春別と久米彦は、ヒルナ姫とカルナ姫を自分の妻のように扱っていた。将軍たちの酔った機嫌を幸い、ヒルナ姫とカルナ姫は酒の冗談にかまけて将軍たちをからかった。
ヒルナ姫とカルナ姫は、酒席のからかい話にまぎれて、ビク国王家の人々を解放するために自分たちがバラモンの将軍たちに取り入っていることを知らせた。刹帝利もハルナもそれによって二女の働きを悟り、女の魔力にひそかに舌を巻いていた。
鬼春別と久米彦は、ますます酒に酔ってよい機嫌になり、歌を唸りだした。そして二女にも歌を所望した。ヒルナ姫とカルナ姫は、歌の中に自分たちの赤誠と状況をバラモン軍に悟られないように籠めた。
これによって刹帝利をはじめ左守、右守、ハルナ、タルマンらビク国の人々は二女の貞節と活躍を知ることになった。
両将軍をはじめバラモン軍の士官たちは酔いつぶされて、酒宴の席で眠ってしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5316
愛善世界社版:
189頁
八幡書店版:
第9輯 573頁
修補版:
校定版:
195頁
普及版:
95頁
初版:
ページ備考:
001
ビクトリヤ
王
(
わう
)
が
和睦
(
わぼく
)
の
酒宴
(
しゆえん
)
に
招
(
まね
)
かれて、
002
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
003
久米彦
(
くめひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
始
(
はじ
)
め、
004
スパール、
005
エミシ、
006
シヤム、
007
マルタは
客人側
(
きやくじんがは
)
として、
008
上座
(
じやうざ
)
に
順序
(
じゆんじよ
)
よく
座席
(
ざせき
)
を
占
(
し
)
めた。
009
一方
(
いつぱう
)
には
刹帝利
(
せつていり
)
を
始
(
はじ
)
め
左守
(
さもり
)
右守
(
うもり
)
並
(
ならび
)
にタルマン、
010
ハルナ、
011
ヱクス、
012
シエールなどがズラリ
並
(
なら
)
んで、
013
平和
(
へいわ
)
克復
(
こくふく
)
の
祝宴
(
しゆくえん
)
が
始
(
はじ
)
まつた。
014
ビクトリヤ
王
(
わう
)
は
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
015
久米彦
(
くめひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
の
前
(
まへ
)
に
恭
(
うやうや
)
しく
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げ、
016
刹帝利
(
せつていり
)
『
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
様
(
さま
)
、
017
此
(
この
)
度
(
たび
)
は
御
(
ご
)
仁慈
(
じんじ
)
の
思召
(
おぼしめし
)
を
以
(
もつ
)
て、
018
吾々
(
われわれ
)
一族
(
いちぞく
)
をお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいまして、
019
何
(
なん
)
とも
御
(
お
)
礼
(
れい
)
の
申上
(
まをしあ
)
げやうも
厶
(
ござ
)
いませぬ』
020
と
泥棒
(
どろぼう
)
に
家
(
いへ
)
を
焼
(
や
)
かれ、
021
家族
(
かぞく
)
を
殺
(
ころ
)
された
上
(
うへ
)
、
022
自分
(
じぶん
)
の
命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
うたのを
感謝
(
かんしや
)
するやうな、
023
割
(
わり
)
の
悪
(
わる
)
い
立場
(
たちば
)
に
立
(
た
)
つて、
024
さも
嬉
(
うれ
)
しげに、
025
恨
(
うらみ
)
を
呑
(
の
)
んで
挨拶
(
あいさつ
)
をしてゐる。
026
鬼春別
(
おにはるわけ
)
は
威丈高
(
ゐたけだか
)
になり、
027
さも
鷹揚
(
おうやう
)
に
胡床
(
あぐら
)
をかき、
028
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『ア、
029
イヤ
刹帝利
(
せつていり
)
殿
(
どの
)
、
030
其
(
その
)
お
言葉
(
ことば
)
には
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
る。
031
拙者
(
せつしや
)
は
武骨
(
ぶこつ
)
なる
軍人
(
ぐんじん
)
で
厶
(
ござ
)
れば、
032
窮屈
(
きうくつ
)
な
行儀
(
ぎやうぎ
)
作法
(
さはふ
)
などは、
033
大
(
おほい
)
に
困
(
こま
)
り
申
(
まを
)
す。
034
野武士
(
のぶし
)
の
本領
(
ほんりやう
)
を
現
(
あら
)
はし、
035
尊
(
たふと
)
き
殿内
(
でんない
)
をも
省
(
かへり
)
みず、
036
胡床
(
あぐら
)
をかいて
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
を
致
(
いた
)
しまする。
037
刹帝利
(
せつていり
)
殿
(
どの
)
心
(
こころ
)
悪
(
あ
)
しく
思
(
おも
)
はず、
038
許
(
ゆる
)
して
貰
(
もら
)
ひたいもので
厶
(
ござ
)
る』
039
刹帝利
(
せつていり
)
『ハイ、
040
何
(
なに
)
を
仰
(
おほ
)
せられまする。
041
軍人
(
ぐんじん
)
様
(
さま
)
は
素朴
(
そぼく
)
なのが
価値
(
ねうち
)
で
厶
(
ござ
)
います。
042
現代
(
げんだい
)
は
虚礼
(
きよれい
)
虚式
(
きよしき
)
の
流行
(
りうかう
)
する
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
、
043
貴方
(
あなた
)
の
如
(
ごと
)
き
赤裸々
(
せきらら
)
の
軍人
(
ぐんじん
)
様
(
さま
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
頼
(
たの
)
もしう
存
(
ぞん
)
じます。
044
サアどうか
一
(
ひと
)
つ
召
(
め
)
し
上
(
あが
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
045
と
盃
(
さかづき
)
をさす。
046
鬼春別
(
おにはるわけ
)
は
毛
(
け
)
だらけの
太
(
ふと
)
い
手
(
て
)
をヌツと
出
(
だ
)
し、
047
盃
(
さかづき
)
を
前
(
まへ
)
に
突出
(
つきだ
)
し、
048
刹帝利
(
せつていり
)
の
手
(
て
)
よりナミナミとつがれて、
049
グツと
呑
(
の
)
み
干
(
ほ
)
し、
050
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『イヤもう
結構
(
けつこう
)
な
酒
(
さけ
)
で
厶
(
ござ
)
る、
051
五臓
(
ござう
)
六腑
(
ろつぷ
)
に
沁
(
し
)
み
渡
(
わた
)
る
様
(
やう
)
な
妙味
(
めうみ
)
が
厶
(
ござ
)
る。
052
刹帝利
(
せつていり
)
殿
(
どの
)
、
053
拙者
(
せつしや
)
の
盃
(
さかづき
)
を
一杯
(
いつぱい
)
受取
(
うけと
)
り
下
(
くだ
)
され』
054
と
無雑作
(
むざふさ
)
にグツと
突出
(
つきだ
)
す。
055
刹帝利
(
せつていり
)
は、
056
斯様
(
かやう
)
な
猫
(
ねこ
)
を
被
(
かぶ
)
つた
豺狼
(
さいらう
)
の
機嫌
(
きげん
)
を
損
(
そこ
)
ねては
又
(
また
)
大変
(
たいへん
)
と、
057
さも
満足
(
まんぞく
)
の
態
(
てい
)
にて
盃
(
さかづき
)
を
頂
(
いただ
)
き、
058
二三回
(
にさんくわい
)
も
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げ、
059
刹帝利
(
せつていり
)
『これはこれは、
060
驍名
(
げうめい
)
高
(
たか
)
き
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
のお
盃
(
さかづき
)
、
061
謹
(
つつし
)
んで
頂戴
(
ちやうだい
)
仕
(
つか
)
まつります』
062
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『ヤ、
063
遠慮
(
ゑんりよ
)
には
及
(
およ
)
ばぬ。
064
沢山
(
たくさん
)
に
呑
(
の
)
んで
下
(
くだ
)
さい、
065
拙者
(
せつしや
)
の
懐
(
ふところ
)
が
痛
(
いた
)
む
酒
(
さけ
)
でもなし、
066
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
は
幾
(
いく
)
らなりと
喰
(
く
)
ひ
放題
(
はうだい
)
、
067
イヤ
早
(
はや
)
戦捷
(
せんせふ
)
の
勇士
(
ゆうし
)
の
盃
(
さかづき
)
をお
受
(
う
)
けになれば、
068
チツトはあやかつて
貴方
(
あなた
)
も
豪傑
(
がうけつ
)
になるでせう。
069
アハハハハ』
070
と
豪傑笑
(
がうけつわら
)
ひをやつてゐる。
071
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
傍
(
かたはら
)
に
怖
(
こは
)
相
(
さう
)
に
控
(
ひか
)
えてゐる
女
(
をんな
)
は、
072
風態
(
ふうてい
)
こそ
変
(
かは
)
れ、
073
刹帝利
(
せつていり
)
の
目
(
め
)
には、
074
どうもヒルナ
姫
(
ひめ
)
のやうに
思
(
おも
)
はれてならなかつた。
075
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら……
世間
(
せけん
)
にはよく
似
(
に
)
た
女
(
をんな
)
のあるものだなア……
位
(
ぐらゐ
)
に、
076
老眼
(
らうがん
)
の
事
(
こと
)
とて
軽
(
かる
)
く
見
(
み
)
てゐた。
077
そして
今回
(
こんくわい
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
以下
(
いか
)
を
助
(
たす
)
けたのも、
078
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
、
079
カルナ
姫
(
ひめ
)
両人
(
りやうにん
)
の
必死
(
ひつし
)
の
活動
(
くわつどう
)
に
仍
(
よ
)
つた
事
(
こと
)
は、
080
少
(
すこ
)
しも
気
(
き
)
がつかなかつたのである。
081
又
(
また
)
ハルナは……
久米彦
(
くめひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
側
(
そば
)
にゐる
美人
(
びじん
)
は
風
(
ふう
)
こそ
変
(
かは
)
つて
居
(
を
)
れ
共
(
ども
)
、
082
どこともなしに
最愛
(
さいあい
)
の
妻
(
つま
)
カルナにソツクリだ。
083
そして
時々
(
ときどき
)
自分
(
じぶん
)
の
方
(
はう
)
へ
視線
(
しせん
)
を
向
(
む
)
ける
事
(
こと
)
を
見
(
み
)
れば、
084
カルナではあるまいか、
085
今回
(
こんくわい
)
思
(
おも
)
はぬ
嬉
(
うれ
)
しい
解放
(
かいはう
)
に
会
(
あ
)
うたのも、
086
或
(
あるひ
)
はカルナが
斡旋
(
あつせん
)
の
力
(
ちから
)
ではなからうか……などと
考
(
かんが
)
へ、
087
盗
(
ぬす
)
むやうにして、
088
チヨイチヨイと
女
(
をんな
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
てゐた……
見
(
み
)
れば
見
(
み
)
る
程
(
ほど
)
よく
似
(
に
)
てゐる、
089
……と
思
(
おも
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
又
(
また
)
も
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
を
見
(
み
)
れば、
090
どう
思
(
おも
)
うてもヒルナ
姫
(
ひめ
)
とより
見
(
み
)
えない。
091
ハルナのみならず、
092
左守
(
さもり
)
右守
(
うもり
)
其
(
その
)
外
(
ほか
)
一同
(
いちどう
)
の
心
(
こころ
)
も
同様
(
どうやう
)
な
疑
(
うたがひ
)
を
抱
(
いだ
)
いてゐた。
093
久米彦
(
くめひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
は
威丈高
(
いたけだか
)
になり、
094
久米彦
(
くめひこ
)
『オイ、
095
カルナ
姫
(
ひめ
)
、
096
そちは
拙者
(
せつしや
)
の
最愛
(
さいあい
)
の
女房
(
にようばう
)
だ。
097
斯様
(
かやう
)
な
所
(
ところ
)
で
一
(
ひと
)
つ
鶯
(
うぐひす
)
のやうな
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
歌
(
うた
)
つたらどうだ。
098
何分
(
なにぶん
)
陣中
(
ぢんちう
)
は
男
(
をとこ
)
ばかりで
殺風景
(
さつぷうけい
)
極
(
きは
)
まる。
099
そこへ
其方
(
そなた
)
がやつて
来
(
き
)
たのは
天
(
てん
)
の
配剤
(
はいざい
)
、
100
拙者
(
せつしや
)
の
心
(
こころ
)
を
生
(
い
)
かす
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
だ。
101
テモさても
美
(
うつく
)
しい
者
(
もの
)
だなア』
102
カルナ
姫
(
ひめ
)
『ハイ、
103
モウ
少
(
すこ
)
しお
酒
(
さけ
)
がまはりましたら、
104
何
(
なに
)
か
歌
(
うた
)
はして
貰
(
もら
)
ひませう。
105
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
からどうぞ
先
(
さき
)
へ
歌
(
うた
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
106
まだ
貴方
(
あなた
)
のお
歌
(
うた
)
を
聞
(
き
)
いた
事
(
こと
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬからねえ』
107
久米彦
(
くめひこ
)
は
刹帝利
(
せつていり
)
の
手
(
て
)
からナミナミと
酒
(
さけ
)
をつがれ、
108
団栗目
(
どんぐりめ
)
をむき
乍
(
なが
)
ら
大盃
(
たいはい
)
からグツと
呑
(
の
)
み
干
(
ほ
)
し、
109
久米彦
(
くめひこ
)
『
拙者
(
せつしや
)
は
刹帝利
(
せつていり
)
殿
(
どの
)
に
盃
(
さかづき
)
をさしたいのだが、
110
見
(
み
)
れば
余程
(
よほど
)
の
御
(
ご
)
老体
(
らうたい
)
、
111
却
(
かへつ
)
てお
困
(
こま
)
りだらうから、
112
最愛
(
さいあい
)
のカルナにさすであらう。
113
言
(
い
)
つても
女
(
をんな
)
は
社交界
(
しやかうかい
)
の
花
(
はな
)
、
114
一家
(
いつか
)
に
取
(
と
)
つては
女王
(
によわう
)
様
(
さま
)
だから、
115
先
(
ま
)
づ
女王
(
によわう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
を
損
(
そん
)
じないやう、
116
取計
(
とりはか
)
らうが
拙者
(
せつしや
)
の
利益
(
りえき
)
……と
申
(
まを
)
すもの、
117
老
(
おい
)
さらばうた
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
へさすよりも、
118
何程
(
なにほど
)
気分
(
きぶん
)
が
可
(
い
)
いか
知
(
し
)
れないからなア。
119
アハハハハ』
120
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『オイ、
121
ヒルナ
殿
(
どの
)
、
122
何
(
なに
)
湿
(
しめ
)
つてゐるのだ。
123
陣中
(
ぢんちう
)
へ
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
には、
124
随分
(
ずいぶん
)
ベラベラと
喋
(
しやべ
)
つたでないか、
125
チツとあの
時
(
とき
)
の
元気
(
げんき
)
を、
126
こんな
席
(
せき
)
で
出
(
だ
)
して
貰
(
もら
)
ひたいものだな。
127
エヘヘヘヘ、
128
ぢやと
云
(
い
)
つて、
129
頬
(
ほほ
)
べたをなめたり、
130
鼻
(
はな
)
を
撮
(
つま
)
んだり、
131
爪疵
(
つめきず
)
を
負
(
お
)
はされちや
困
(
こま
)
るよ』
132
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
の、
133
マア
卑怯
(
ひけふ
)
な
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
いますこと、
134
貴方
(
あなた
)
は
千軍
(
せんぐん
)
万馬
(
ばんば
)
の
中
(
なか
)
を
疾駆
(
しつく
)
する
勇将
(
ゆうしやう
)
だ
厶
(
ござ
)
いませぬか。
135
槍
(
やり
)
や
刀
(
かたな
)
の
創
(
きづ
)
を
何時
(
いつ
)
受
(
う
)
けるか
知
(
し
)
れないお
身分
(
みぶん
)
で
在
(
あ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
136
繊弱
(
かよわ
)
い
女
(
をんな
)
が
鼻
(
はな
)
一
(
ひと
)
つ
位
(
くらゐ
)
捻
(
ね
)
ぢ
取
(
と
)
つた
所
(
ところ
)
が、
137
何
(
なん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
138
そんな
事
(
こと
)
仰有
(
おつしや
)
ると
鬚
(
ひげ
)
をむしりますよ』
139
と
腮
(
あご
)
の
鬚
(
ひげ
)
をグツと
握
(
にぎ
)
つて、
140
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つしやくつてみた。
141
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『アイタタタ、
142
コレ、
143
ヒルナ、
144
さう
無茶
(
むちや
)
をするものだない。
145
エヘヘヘヘ、
146
ヤツパリ
痛
(
いた
)
うても
気分
(
きぶん
)
が
可
(
い
)
いワイ』
147
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『ホホホホホ、
148
そらさうですとも、
149
貴方
(
あなた
)
のお
鬚
(
ひげ
)
の
塵
(
ちり
)
を
払
(
はら
)
ふものは
沢山
(
たくさん
)
厶
(
ござ
)
いますけれど、
150
お
鬚
(
ひげ
)
をむしつて
赤
(
あか
)
い
血
(
ち
)
を
出
(
だ
)
す、
151
誠
(
まこと
)
の
熱烈
(
ねつれつ
)
な
女
(
をんな
)
は
妾
(
あたい
)
より
外
(
ほか
)
に
厶
(
ござ
)
いますまい。
152
あのマア、
153
奇妙
(
きめう
)
奇天烈
(
きてれつ
)
な、
154
人好
(
ひとずき
)
のするお
顔
(
かほ
)
ワイのう、
155
ホホホホ』
156
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『イヤ
久米彦
(
くめひこ
)
殿
(
どの
)
、
157
拙者
(
せつしや
)
のナイスは、
158
顔
(
かほ
)
にも
似合
(
にあ
)
はぬヤンチヤで
厶
(
ござ
)
る。
159
昨日
(
きのふ
)
始
(
はじ
)
めて
会
(
あ
)
うてから、
160
未
(
ま
)
だ
一度
(
いちど
)
も
枕
(
まくら
)
も
交
(
かは
)
さないに
拘
(
かかは
)
らず、
161
耳
(
みみ
)
をひつ
掻
(
か
)
く、
162
鼻
(
はな
)
を
捻
(
ね
)
ぢる、
163
鬚
(
ひげ
)
をむしる、
164
抓
(
つめ
)
る、
165
しまひの
果
(
は
)
てにや、
166
拙者
(
せつしや
)
の
面
(
かほ
)
に
痰唾
(
たんつば
)
を
吐
(
は
)
きかけるので
厶
(
ござ
)
る。
167
かやうなおキヤンに
出会
(
であ
)
つた
者
(
もの
)
は、
168
誠
(
まこと
)
に
不仕合
(
ふしあは
)
せ、
169
……イヤ
情熱
(
じやうねつ
)
の
高調
(
かうてう
)
した
時
(
とき
)
は、
170
先
(
ま
)
づこんなものとみえますワイ。
171
アハハハハハ』
172
久米彦
(
くめひこ
)
『
成程
(
なるほど
)
、
173
それは
随分
(
ずいぶん
)
お
楽
(
たの
)
しみで
厶
(
ござ
)
らう、
174
拙者
(
せつしや
)
のナイスは
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
因循
(
いんじゆん
)
で、
175
而
(
しか
)
も
淑女
(
しゆくぢよ
)
で
厶
(
ござ
)
るから、
176
酒
(
さけ
)
の
座
(
ざ
)
には
面白
(
おもしろ
)
く
厶
(
ござ
)
らぬ。
177
実
(
じつ
)
にお
羨
(
うらや
)
ましう
厶
(
ござ
)
る』
178
カルナ
姫
(
ひめ
)
『
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
179
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
います、
180
妾
(
わらは
)
が
淑女
(
しゆくぢよ
)
だから
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らないのですか。
181
宜
(
よろ
)
しい、
182
キツと
敵
(
かたき
)
を
討
(
う
)
つて
上
(
あ
)
げます』
183
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
184
鼻
(
はな
)
を
力
(
ちから
)
に
任
(
まか
)
せて、
185
捻
(
ね
)
ぢ
上
(
あ
)
げた。
186
久米彦
(
くめひこ
)
『イタイ イタイ イタイ、
187
コラ
無茶
(
むちや
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
すない、
188
何
(
なん
)
ぼ
惚
(
ほ
)
れたと
云
(
い
)
つても
余
(
あんま
)
りだないか』
189
カルナ
姫
(
ひめ
)
『それでも
貴方
(
あなた
)
、
190
ヒルナさまのやうな
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はして
欲
(
ほ
)
しいのでせう。
191
エエ
憎
(
にく
)
らしい
男
(
をとこ
)
だこと、
192
あたい、
193
こんな
男
(
をとこ
)
、
194
嫌
(
いや
)
……でもないけれど……』
195
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
196
ピシヤ ピシヤ ピシヤと
頬
(
ほほ
)
を
撲
(
なぐ
)
つた。
197
久米彦
(
くめひこ
)
『あああ、
198
天下
(
てんか
)
の
名将
(
めいしやう
)
も
女
(
をんな
)
にかけたら、
199
サツパリ
駄目
(
だめ
)
だなア、
200
エヘヘヘヘ。
201
鬼春別
(
おにはるわけ
)
殿
(
どの
)
、
202
拙者
(
せつしや
)
の
色男振
(
いろをとこぶり
)
は
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りで
厶
(
ござ
)
る』
203
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『オイ、
204
ヒルナ、
205
些
(
ちつ
)
としつかりせぬかい。
206
久米彦
(
くめひこ
)
に
夫
(
をつと
)
がヒケを
取
(
と
)
るのは、
207
お
前
(
まへ
)
何
(
なん
)
ともないのか』
208
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『
妾
(
わらは
)
は
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
、
209
モツとモツとひどい
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はして
上
(
あ
)
げたいので
厶
(
ござ
)
いますが、
210
どう
考
(
かんが
)
へても、
211
これ
丈
(
だけ
)
沢山
(
たくさん
)
お
歴々
(
れきれき
)
のゐらつしやる
前
(
まへ
)
ですもの、
212
あたいもチツと
心得
(
こころえ
)
て
居
(
を
)
りますのよ』
213
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『
妾
(
わらは
)
と
云
(
い
)
つたり、
214
あたいと
云
(
い
)
つたり、
215
人格
(
じんかく
)
が
二人
(
ふたり
)
もある
様
(
やう
)
だ。
216
どちらかに
一
(
ひと
)
つ、
217
きめて
貰
(
もら
)
ひたいものだな』
218
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『
妾
(
わらは
)
といふのは
貴方
(
あなた
)
の
正妻
(
せいさい
)
ですよ。
219
あたいといふのはバイタの
霊
(
れい
)
が
憑
(
うつ
)
つて
来
(
き
)
て
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
を
取
(
と
)
つて
居
(
を
)
りますのよ。
220
どうです、
221
バイタの
霊
(
れい
)
がお
好
(
す
)
きですか、
222
淑女
(
しゆくぢよ
)
が
宜
(
よろ
)
しいか、
223
どちらかにきめて
下
(
くだ
)
さいな』
224
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『
妾
(
わらは
)
もあたいも
私
(
わたくし
)
も
僕
(
ぼく
)
も
拙者
(
せつしや
)
も、
225
某
(
それがし
)
も、
226
やつがれも、
227
皆
(
みな
)
一度
(
いちど
)
に
来
(
こ
)
い、
228
かふ
云
(
い
)
ふ
目出
(
めで
)
たい
席
(
せき
)
は
一人
(
ひとり
)
でも
多
(
おほ
)
いが
可
(
い
)
いからな』
229
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『ホホホホホ、
230
気
(
き
)
の
多
(
おほ
)
いお
方
(
かた
)
だこと、
231
そんなら
某
(
それがし
)
の
霊
(
れい
)
を
呼
(
よ
)
んで
参
(
まゐ
)
りませうか』
232
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『ウンウン
何
(
なん
)
でもいい、
233
某
(
それがし
)
でも
僕
(
ぼく
)
でも
結構
(
けつこう
)
だ』
234
ヒルナは
俄
(
にはか
)
に
態度
(
たいど
)
を
改
(
あらた
)
め、
235
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『オイ
君
(
きみ
)
、
236
鬼春別
(
おにはるわけ
)
君
(
くん
)
、
237
随分
(
ずいぶん
)
デレ
助
(
すけ
)
だねえ。
238
折角
(
せつかく
)
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
つて
占領
(
せんりやう
)
したビクトリヤ
城
(
じやう
)
をヒルナ
姫
(
ひめ
)
にチヨロまかされ、
239
刹帝利
(
せつていり
)
に
還
(
かへ
)
すとは、
240
本当
(
ほんたう
)
に
何
(
ど
)
うかしてゐるだないかオイ、
241
チツと
確
(
しつか
)
りし
玉
(
たま
)
へ』
242
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『コーリヤ、
243
さう
猛烈
(
まうれつ
)
にやつてくれては
困
(
こま
)
るぢやないか、
244
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
ふのだ』
245
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『だつて
君
(
きみ
)
、
246
よう
考
(
かんが
)
へてみ
玉
(
たま
)
へ、
247
君
(
きみ
)
はヒルナ
姫
(
ひめ
)
を
我
(
わが
)
物
(
もの
)
にせうとして、
248
久米公
(
くめこう
)
と
随分
(
ずいぶん
)
陣中
(
ぢんちう
)
で
斬
(
き
)
り
合
(
あひ
)
までしただないか、
249
……モシ
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
250
何
(
なん
)
だか
妙
(
めう
)
な
霊
(
れい
)
が
憑
(
うつ
)
つて
来
(
き
)
て、
251
あんな
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
しますワ、
252
何
(
ど
)
う
致
(
いた
)
しませうかねえ、
253
妾
(
わらは
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
恥
(
はづか
)
しうて
堪
(
たま
)
りませぬワ』
254
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『アハハハハハ、
255
随分
(
ずいぶん
)
憑
(
うつ
)
られ
易
(
やす
)
い
霊
(
みたま
)
だのう。
256
大方
(
おほかた
)
拙者
(
せつしや
)
に
対
(
たい
)
し、
257
君々
(
きみきみ
)
といふからは、
258
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
の
霊
(
れい
)
がお
前
(
まへ
)
に
憑
(
うつ
)
つたのかも
知
(
し
)
れないよ』
259
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『
成程
(
なるほど
)
、
260
さう
承
(
うけたま
)
はりますと、
261
何
(
なん
)
だか
体
(
からだ
)
がヘンになつて
来
(
き
)
ましたワ。
262
……オイ
君
(
きみ
)
、
263
お
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
り、
264
僕
(
ぼく
)
はランチだよ。
265
君
(
きみ
)
も
随分
(
ずいぶん
)
乱痴気
(
らんちき
)
将軍
(
しやうぐん
)
になつたね。
266
モウこんな
殺伐
(
さつばつ
)
な
事
(
こと
)
はよし
玉
(
たま
)
へ。
267
それよりもヒルナ
姫
(
ひめ
)
と
夫婦
(
ふうふ
)
になる
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へたがよからうぞ。
268
併
(
しか
)
しヒルナは
到底
(
たうてい
)
君
(
きみ
)
の
手
(
て
)
には
合
(
あ
)
ふまいよ』
269
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『コリヤ、
270
ランチ、
271
馬鹿
(
ばか
)
を
云
(
い
)
ふな。
272
貴様
(
きさま
)
のやうなヒヨツトコには、
273
僕
(
ぼく
)
の
熱烈
(
ねつれつ
)
な
恋愛
(
れんあい
)
が
分
(
わか
)
るかい、
274
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
は
既
(
すで
)
に
既
(
すで
)
に
拙者
(
せつしや
)
と
情約済
(
じやうやくずみ
)
だ。
275
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
、
276
マア
一杯
(
いつぱい
)
やり
玉
(
たま
)
へ』
277
とヒルナ
姫
(
ひめ
)
に
盃
(
さかづき
)
をさす。
278
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『あれマア
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
279
妾
(
わらは
)
にそんなお
言葉
(
ことば
)
をお
使
(
つか
)
ひになると、
280
恐
(
おそ
)
ろしうなりましたワ。
281
チツと
優
(
やさ
)
しう
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいな、
282
妾
(
わらは
)
は
怖
(
こは
)
いのだもの』
283
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『エツヘヘヘヘ、
284
そらさうだらう、
285
軍人
(
ぐんじん
)
といふ
者
(
もの
)
は、
286
元来
(
ぐわんらい
)
荒
(
あら
)
つぽい
性質
(
せいしつ
)
のものだからなア。
287
ましてランチといふ
奴
(
やつ
)
は、
288
仕方
(
しかた
)
のない
男
(
をとこ
)
だから、
289
お
前
(
まへ
)
の
肉体
(
にくたい
)
に
憑
(
かか
)
つて、
290
あんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
ひやがるのだ。
291
余程
(
よほど
)
けなりいと
見
(
み
)
えるワイ。
292
エツヘヘヘヘ』
293
カルナは
又
(
また
)
もや
体
(
からだ
)
を
四角
(
しかく
)
にし、
294
軍人
(
ぐんじん
)
のやうな
態度
(
たいど
)
を
装
(
よそほ
)
ひ、
295
カルナ
姫
(
ひめ
)
『オイ、
296
君
(
きみ
)
、
297
久米彦
(
くめひこ
)
、
298
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶり
)
だねー。
299
僕
(
ぼく
)
は
片彦
(
かたひこ
)
だよ。
300
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
では
随分
(
ずいぶん
)
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
いて
将軍
(
しやうぐん
)
の
威勢
(
ゐせい
)
は
全
(
まつた
)
く
地
(
ち
)
におちたでないか。
301
本当
(
ほんたう
)
に
僕
(
ぼく
)
も
君
(
きみ
)
も
軍人
(
ぐんじん
)
の
面汚
(
つらよご
)
しだね。
302
併
(
しか
)
し
君
(
きみ
)
は
偉
(
えら
)
いワ、
303
ビクのやうな
小
(
ちひ
)
さい
国
(
くに
)
を
占領
(
せんりやう
)
しやうとやつて
来
(
き
)
たのは、
304
本当
(
ほんたう
)
に
先見
(
せんけん
)
の
明
(
めい
)
ありだ。
305
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
一
(
ひと
)
つの
欠点
(
けつてん
)
は
女
(
をんな
)
に
溺
(
おぼ
)
れる
事
(
こと
)
だ』
306
久米彦
(
くめひこ
)
『ヤ、
307
又
(
また
)
此奴
(
こいつ
)
、
308
変
(
へん
)
になりやがつたぞ。
309
拙者
(
せつしや
)
のローマンスを
羨望
(
せんばう
)
して、
310
片彦
(
かたひこ
)
の
精霊
(
せいれい
)
奴
(
め
)
、
311
大切
(
たいせつ
)
なカルナ
姫
(
ひめ
)
の
体
(
からだ
)
を
自由
(
じいう
)
にしやがる。
312
……コリヤ
片彦
(
かたひこ
)
、
313
貴様
(
きさま
)
の
来
(
く
)
る
所
(
ところ
)
だない、
314
早
(
はや
)
くここを
立去
(
たちさ
)
れ
立去
(
たちさ
)
れ』
315
カルナ
姫
(
ひめ
)
『ホホホホ、
316
もし
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
317
あたい、
318
何
(
なん
)
だか、
319
恐
(
おそ
)
ろしくなつて
来
(
き
)
ましたわ、
320
何者
(
なにもの
)
があんな
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふのでせうかね』
321
久米彦
(
くめひこ
)
『ウン、
322
お
前
(
まへ
)
の
知
(
し
)
つた
事
(
こと
)
だない、
323
心配
(
しんぱい
)
するな、
324
お
前
(
まへ
)
は
霊
(
みたま
)
が
水晶
(
すいしやう
)
だから、
325
確
(
しつか
)
りせぬといろいろの
霊
(
れい
)
に
憑
(
うつ
)
られ
易
(
やす
)
いからなア』
326
斯
(
か
)
くしてヒルナ、
327
カルナは
互
(
たがひ
)
ちがひに
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
を、
328
刹帝利
(
せつていり
)
やハルナを
始
(
はじ
)
め
其
(
その
)
他
(
た
)
の
前
(
まへ
)
に
翻弄
(
ほんろう
)
して、
329
それとはなしに
自分
(
じぶん
)
の
意志
(
いし
)
を
悟
(
さと
)
らしめんと
努
(
つと
)
めてゐたのである。
330
ビクトリヤ
王
(
わう
)
始
(
はじ
)
めハルナは
早
(
はや
)
くも
二女
(
にぢよ
)
の
態度
(
たいど
)
に
仍
(
よ
)
つて
嫉妬
(
しつと
)
の
念
(
ねん
)
も
晴
(
は
)
れ、
331
女
(
をんな
)
の
恐
(
おそ
)
ろしき
魔力
(
まりよく
)
に
感歎
(
かんたん
)
し、
332
且
(
かつ
)
ひそかに
舌
(
した
)
をまいてゐた。
333
鬼春別
(
おにはるわけ
)
は
酔
(
ゑひ
)
が
廻
(
まは
)
つて、
334
ソロソロどら
声
(
ごゑ
)
をはり
上
(
あ
)
げ
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
335
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『ここは
名
(
な
)
に
負
(
お
)
ふビクの
国
(
くに
)
336
ドツコイシヨウ ドツコイシヨウ
337
ビクの
都
(
みやこ
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
338
老
(
おい
)
ぼれ
爺
(
ぢい
)
さまが
頑張
(
ぐわんば
)
つて
339
左守
(
さもり
)
右守
(
うもり
)
の
家来
(
けらい
)
をば
340
抱
(
かか
)
へて
威勢
(
ゐせい
)
を
近国
(
きんごく
)
に
341
示
(
しめ
)
して
居
(
を
)
つた
時
(
とき
)
もあれ
342
バラモン
教
(
けう
)
で
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
343
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
将軍
(
しやうぐん
)
が
344
率
(
ひき
)
ゆるナイト
三千騎
(
さんぜんき
)
345
破竹
(
はちく
)
の
勢
(
いきほひ
)
敵
(
てき
)
し
得
(
え
)
ず
346
忽
(
たちま
)
ち
捕虜
(
ほりよ
)
となり
果
(
は
)
てて
347
土蔵
(
どざう
)
の
中
(
なか
)
に
手足
(
てあし
)
をば
348
縛
(
しば
)
りて
無残
(
むざん
)
に
投込
(
なげこ
)
まれ
349
無念
(
むねん
)
の
涙
(
なみだ
)
を
絞
(
しぼ
)
る
折
(
をり
)
350
天女
(
てんによ
)
の
様
(
やう
)
なヒルナ
姫
(
ひめ
)
351
天
(
てん
)
の
一方
(
いつぱう
)
から
降
(
くだ
)
つて
来
(
き
)
て
352
ドツコイシヨウ ドツコイシヨウ
353
色々
(
いろいろ
)
雑多
(
ざつた
)
と
道
(
みち
)
を
説
(
と
)
き
354
抑
(
そもそも
)
人
(
ひと
)
の
生涯
(
しやうがい
)
は
355
ラブ・イズ・ベストが
肝腎
(
かんじん
)
だ
356
などとしほらしい
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふ
357
仁慈
(
じんじ
)
に
富
(
と
)
める
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
358
兇悪
(
きようあく
)
一途
(
いちづ
)
の
久米彦
(
くめひこ
)
を
359
やつと
説
(
と
)
き
伏
(
ふ
)
せ
刹帝利
(
せつていり
)
360
其
(
その
)
他一同
(
たいちどう
)
を
解放
(
かいはう
)
し
361
助
(
たす
)
けてやつたは
救世主
(
きうせいしゆ
)
362
神
(
かみ
)
に
等
(
ひと
)
しき
名将
(
めいしやう
)
ぞ
363
其
(
その
)
酬
(
むく
)
いにやヒルナ
姫
(
ひめ
)
364
一瞥
(
いちべつ
)
城
(
しろ
)
を
傾
(
かたむ
)
ける
365
様
(
やう
)
な
眼
(
まなこ
)
を
光
(
ひか
)
らして
366
鬼春別
(
おにはるわけ
)
を
慇懃
(
いんぎん
)
に
367
もてなしくるる
楽
(
たの
)
しさよ
368
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
369
女
(
をんな
)
の
惚
(
ほ
)
れる
男
(
をとこ
)
ぞよ
370
情
(
なさけ
)
を
知
(
し
)
つた
英雄
(
えいゆう
)
ぞ
371
コリヤ コリヤ
久米彦
(
くめひこ
)
某
(
それがし
)
が
372
申
(
まを
)
す
言葉
(
ことば
)
に
無理
(
むり
)
なかろ
373
アハハハハハ、アハハハハ。
374
オイ、
375
ヒルナ、
376
モ
一杯
(
いつぱい
)
ついでくれ。
377
そして
一
(
ひと
)
つ
歌
(
うた
)
つたり
歌
(
うた
)
つたり』
378
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『
今度
(
こんど
)
此
(
この
)
度
(
たび
)
の
戦
(
いくさ
)
についてね
379
私
(
わたし
)
の
好
(
す
)
きなは
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
380
色
(
いろ
)
が
黒
(
くろ
)
うて
歯
(
は
)
が
田螺
(
たにし
)
381
眼団栗
(
まなこどんぐり
)
でベラ
作
(
さく
)
眉毛
(
まゆげ
)
382
鼻
(
はな
)
は
唐獅子
(
からしし
)
耳
(
みみ
)
兎
(
うさぎ
)
383
繻子
(
しゆす
)
のシヤツポン
鉄
(
てつ
)
の
杖
(
つゑ
)
384
ブリキの
様
(
やう
)
なサーベルさげて
385
自
(
みづか
)
ら
率
(
ひき
)
ゆる
三千騎
(
さんぜんき
)
386
こんな
男
(
をとこ
)
があればこそ
387
今度
(
こんど
)
の
難儀
(
なんぎ
)
が
助
(
たす
)
かつた
388
かく
云
(
い
)
ふ
声
(
こゑ
)
はヒルナ
姫
(
ひめ
)
389
其
(
その
)
肉体
(
にくたい
)
の
声
(
こゑ
)
だない
390
ランチ
将軍
(
しやうぐん
)
の
精霊
(
せいれい
)
が
391
一寸
(
ちよつと
)
ヒルナの
体
(
たい
)
を
借
(
か
)
り
392
憎
(
にく
)
まれ
口
(
ぐち
)
を
言
(
い
)
うたのだ
393
ドツコイシヨウ ドツコイシヨウ
394
ドツコイドツコイ ドツコイシヨウ
395
サーサ
之
(
これ
)
から
御
(
ご
)
本人
(
ほんにん
)
396
ヒルナの
姫
(
ひめ
)
に
任
(
まか
)
しませう。
397
モシ
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
398
又
(
また
)
何
(
なん
)
だか、
399
あたいに
憑
(
かか
)
りましたよ。
400
どうか
退
(
の
)
けて
下
(
くだ
)
さいませぬかねえ』
401
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『ハハハハ、
402
ヤツパリ
霊
(
みたま
)
が
良
(
い
)
いとみえて、
403
憑
(
うつ
)
り
易
(
やす
)
い
女
(
をんな
)
だのう。
404
併
(
しか
)
し
今日
(
けふ
)
は
酒
(
さけ
)
の
席
(
せき
)
だから、
405
ランチだつて、
406
ヤツパリ
俺
(
おれ
)
の
友人
(
いうじん
)
だ。
407
今日
(
けふ
)
は
一切
(
いつさい
)
治外
(
ちぐわい
)
法権
(
はふけん
)
だから、
408
何
(
なん
)
でも
可
(
い
)
いワ、
409
どうかお
前
(
まへ
)
の
本性
(
ほんしやう
)
で
一
(
ひと
)
つ
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
ひたいものだなア』
410
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
411
一
(
ひと
)
つ
唄
(
うた
)
はして
頂
(
いただ
)
きませう』
412
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
413
両手
(
りやうて
)
をピシヤピシヤ
叩
(
たた
)
き
乍
(
なが
)
ら、
414
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『
酒
(
さけ
)
を
呑
(
の
)
む
人
(
ひと
)
真
(
しん
)
から
可愛
(
かあい
)
415
酔
(
よ
)
うてクダまきや
尚
(
なほ
)
可愛
(
かあい
)
416
私
(
わたし
)
や
将軍
(
しやうぐん
)
さまに
本当
(
ほんたう
)
に
惚
(
ほれ
)
た
417
石
(
いし
)
の
飛越
(
とびこ
)
え
見
(
み
)
えなんだ』
418
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『
妙々
(
めうめう
)
、
419
モ
一
(
ひと
)
つ
唄
(
うた
)
つてくれぬか。
420
何
(
なん
)
だかお
前
(
まへ
)
の
声
(
こゑ
)
は
五臓
(
ござう
)
六腑
(
ろつぷ
)
に
沁
(
し
)
み
渡
(
わた
)
るやうだ。
421
天女
(
てんによ
)
の
音楽
(
おんがく
)
だつてこれ
程
(
ほど
)
に
感動
(
かんどう
)
は
与
(
あた
)
へまいて、
422
エヘヘヘヘヘ……オイ
久米彦
(
くめひこ
)
どうだ、
423
カルナ
砲台
(
はうだい
)
は
非常
(
ひじやう
)
に
沈黙
(
ちんもく
)
してゐるだないか、
424
ヤツパリ
霊相応
(
みたまさうおう
)
のナイスより
天
(
てん
)
から
与
(
あた
)
へられぬものと
見
(
み
)
えるね。
425
ウツフフフフ』
426
久米彦
(
くめひこ
)
『ヘン、
427
仰有
(
おつしや
)
いますワイ、
428
……オイ、
429
カルナ、
430
お
前
(
まへ
)
も
夫
(
をつと
)
の
恥辱
(
ちじよく
)
を
雪
(
すす
)
ぐ
為
(
ため
)
、
431
シツカリ
奪戦
(
ふんせん
)
してくれ』
432
カルナ
姫
(
ひめ
)
『ハイ、
433
畏
(
かしこ
)
まりました。
434
そんなら
噴火口
(
ふんくわこう
)
の
詰
(
つめ
)
をぬきますから、
435
そこら
中
(
ぢう
)
に
火山灰
(
くわざんばひ
)
が
散
(
ち
)
るかも
知
(
し
)
れませぬよ。
436
どうぞ
警戒
(
けいかい
)
を
願
(
ねが
)
ひます、
437
左様
(
さやう
)
なら
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
、
438
御免
(
ごめん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
439
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
440
カルナ
姫
(
ひめ
)
『わしの
好
(
す
)
きなは
ハルナ
の
都
(
みやこ
)
441
ハルナハルナと
朝夕
(
あさゆふ
)
に
442
神
(
かみ
)
の
願
(
ねがひ
)
を
掛
(
かけ
)
まくも
443
畏
(
かしこ
)
き
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
恵
(
めぐみ
)
444
恋
(
こい
)
しいお
方
(
かた
)
の
其
(
その
)
前
(
まへ
)
で
445
お
酒
(
さけ
)
を
頂
(
いただ
)
く
嬉
(
うれ
)
しさよ
446
世間
(
せけん
)
の
人
(
ひと
)
は
何
(
なに
)
なりと
447
誹
(
そし
)
らば
誹
(
そし
)
れ
云
(
い
)
はば
云
(
い
)
へ
448
わが
赤心
(
まごころ
)
はハルナさま
449
都
(
みやこ
)
にゐます
神
(
かみ
)
ぞ
知
(
し
)
る
450
何程
(
なにほど
)
好
(
す
)
きな
面
(
かほ
)
しても
451
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
が
承知
(
しようち
)
せぬ
452
メツタに
操
(
みさを
)
は
破
(
やぶ
)
らない
453
安心
(
あんしん
)
なされよハルナ
草
(
ぐさ
)
454
もえ
立
(
た
)
つやうな
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
よ
455
ハーレヤーレあれワのサー
456
コレワのサー
457
ヨーイヨーイ ヨーイトサ』
458
とうたひ
了
(
をは
)
り、
459
ハルナに
だる
相
(
さう
)
な
視線
(
しせん
)
を
投
(
な
)
げ
乍
(
なが
)
ら
久米彦
(
くめひこ
)
の
前
(
まへ
)
に
盃
(
さかづき
)
をつきつけ、
460
カルナ
姫
(
ひめ
)
『
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
、
461
エライ
不調法
(
ぶてふはふ
)
申
(
まを
)
しました』
462
久米彦
(
くめひこ
)
『エヘヘヘヘ、
463
ヤツパリお
前
(
まへ
)
の
歌
(
うた
)
を
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
ると、
464
俺
(
おれ
)
を
真剣
(
しんけん
)
に
思
(
おも
)
うてると
見
(
み
)
えるのう、
465
可愛
(
かあい
)
いものだ。
466
イヒヒヒヒ、
467
鬼春別
(
おにはるわけ
)
殿
(
どの
)
、
468
拙者
(
せつしや
)
のナイスの
歌
(
うた
)
は
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りで
厶
(
ござ
)
る、
469
何
(
なん
)
と
高等
(
かうとう
)
教育
(
けういく
)
を
受
(
う
)
けた
丈
(
だけ
)
あつて、
470
立派
(
りつぱ
)
な
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
らうがのう』
471
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『ヘヘン、
472
仰有
(
おつしや
)
いますワイ、
473
今
(
いま
)
にアフンとさしてやらう。
474
サ、
475
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
、
476
夫
(
をつと
)
の
一大事
(
いちだいじ
)
だ、
477
カルナを
美事
(
みごと
)
に
投
(
なげ
)
つけ、
478
久米彦
(
くめひこ
)
の
肝玉
(
きもだま
)
をひしぐは
今
(
いま
)
此
(
この
)
時
(
とき
)
だ。
479
サ、
480
一杯
(
いつぱい
)
呑
(
の
)
んで、
481
確
(
しつか
)
り
頼
(
たの
)
むよ』
482
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『あたい、
483
又
(
また
)
妙
(
めう
)
な
者
(
もの
)
が
憑
(
うつ
)
つたら
困
(
こま
)
りますワ。
484
モウこらへて
下
(
くだ
)
さいな』
485
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『エエエ、
486
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
487
モ
一
(
ひと
)
つで
可
(
い
)
いから、
488
飛切
(
とびき
)
り
上等
(
じやうとう
)
の
奴
(
やつ
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
してくれ、
489
頼
(
たの
)
みだ』
490
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
がヒケをお
取
(
と
)
り
遊
(
あそ
)
ばすやうな
事
(
こと
)
があつては、
491
あたい
済
(
す
)
みませぬから、
492
そんなら
一
(
ひと
)
つうたつてみませう』
493
鬼春別
(
おにはるわけ
)
『ウン、
494
ヨシヨシ
出
(
で
)
かした
出
(
で
)
かした、
495
シツカリ
頼
(
たの
)
むよ』
496
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『
歌
(
うた
)
へ
歌
(
うた
)
へとせき
立
(
た
)
てられて
497
歌
(
うた
)
の
文句
(
もんく
)
に
困
(
こま
)
ります
498
さはさり
乍
(
なが
)
ら
今
(
いま
)
となり
499
後
(
あと
)
へ
引
(
ひ
)
くのも
卑怯
(
ひけふ
)
だと
500
金輪
(
こんりん
)
奈落
(
ならく
)
の
力
(
ちから
)
出
(
だ
)
し
501
飛切
(
とびきり
)
上等
(
じやうとう
)
の
名歌
(
めいか
)
をば
502
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
に
聞
(
き
)
かせませう
503
妾
(
わらは
)
の
好
(
す
)
きなは
刹帝利
(
せつていり
)
504
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
を
助
(
たす
)
けたる
505
心
(
こころ
)
の
鬼
(
おに
)
の
悪党
(
あくたう
)
な
506
やうに
思
(
おも
)
はれた
将軍
(
しやうぐん
)
さま
507
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
君様
(
きみさま
)
は
508
本当
(
ほんたう
)
に
本当
(
ほんたう
)
にのろい
人
(
ひと
)
509
人
(
ひと
)
は
見
(
み
)
かけによりませぬ
510
妾
(
わらは
)
は
将軍
(
しやうぐん
)
の
心根
(
こころね
)
に
511
ゾツコン
惚
(
ほれ
)
てはゐるけれど
512
モ
一
(
ひと
)
つ
何
(
なん
)
だか
気
(
き
)
にかかる
513
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
の
陣中
(
ぢんちう
)
へ
514
奇妙
(
きめう
)
な
女
(
をんな
)
がやつて
来
(
き
)
て
515
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
をばチヨロまかし
516
魂
(
たましひ
)
迄
(
まで
)
もぬき
取
(
と
)
つて
517
一切
(
いつさい
)
軍務
(
ぐんむ
)
を
打忘
(
うちわす
)
れ
518
菎蒻腰
(
こんにやくごし
)
になられよかと
519
そればつかりが
心配
(
しんぱい
)
ぢや
520
イヤイヤ
心配
(
しんぱい
)
はしませぬよ
521
どうして
心配
(
しんぱい
)
するものか
522
却
(
かへつ
)
て
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
します
523
其
(
その
)
故
(
ゆゑ
)
如何
(
いかん
)
と
言
(
い
)
ふならば
524
将軍
(
しやうぐん
)
様
(
さま
)
の
聰明
(
そうめい
)
な
525
心
(
こころ
)
にしまりがあることを
526
妾
(
わらは
)
は
信
(
しん
)
じてゐるからだ
527
刹帝利
(
せつていり
)
さまを
助
(
たす
)
けたは
528
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
将軍
(
しやうぐん
)
が
529
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
御心
(
みこころ
)
の
530
発露
(
はつろ
)
なりとは
言
(
い
)
ふものの
531
陰
(
かげ
)
に
女性
(
ぢよせい
)
がつきまとひ
532
操
(
あやつ
)
つて
居
(
を
)
つたのだ
皆
(
みな
)
さまよ
533
ドツコイ ドツコイ ドツコイシヨー
534
将軍
(
しやうぐん
)
さまは
偉
(
えら
)
い
人
(
ひと
)
535
女
(
をんな
)
にかけたら
尚
(
なほ
)
エライ
536
鼻
(
はな
)
を
捻
(
ね
)
ぢられ
手
(
て
)
をかかれ
537
鬚
(
ひげ
)
をしやくられ
面体
(
めんてい
)
に
538
痰
(
たん
)
や
唾
(
つばき
)
をかけられて
539
それでも
一寸
(
ちよつと
)
も
怒
(
おこ
)
らない
540
寛仁
(
くわんじん
)
大度
(
たいど
)
の
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
541
見下
(
みさ
)
げたものでドツコイシヨ
542
見上
(
みあ
)
げたお
方
(
かた
)
で
厶
(
ござ
)
います
543
こんなお
方
(
かた
)
と
添
(
そ
)
へぬなら
544
妾
(
わらは
)
は
死
(
し
)
んだがマシですよ
545
妾
(
わらは
)
の
本当
(
ほんたう
)
に
好
(
す
)
きなのは
546
ビクの
都
(
みやこ
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
547
ビクトリヤ
王
(
わう
)
さまを
助
(
たす
)
けたる
548
誠
(
まこと
)
の
誠
(
まこと
)
の
勇士
(
ゆうし
)
ぞや
549
お
情深
(
なさけぶか
)
い
英雄
(
えいゆう
)
の
550
心事
(
しんじ
)
にホロリとなりました
551
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
552
目玉
(
めだま
)
飛出
(
とびだ
)
しましませよ
553
ア、オツトドツコイ
惟神
(
かむながら
)
554
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はへましませよ』
555
と
一方
(
いつぱう
)
は
刹帝利
(
せつていり
)
に
向
(
むか
)
つて
自分
(
じぶん
)
の
赤心
(
せきしん
)
を
現
(
あら
)
はし
乍
(
なが
)
らも、
556
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
557
久米彦
(
くめひこ
)
がカンづかないやうに、
558
うまくうたつてのけた。
559
此
(
この
)
歌
(
うた
)
を
聞
(
き
)
くより、
560
刹帝利
(
せつていり
)
、
561
左守
(
さもり
)
、
562
右守
(
うもり
)
、
563
ハルナ、
564
タルマンの
面々
(
めんめん
)
は
始
(
はじ
)
めて、
565
両女
(
りやうぢよ
)
が
赤心
(
せきしん
)
を
悟
(
さと
)
り
且
(
かつ
)
未
(
いま
)
だ
身
(
み
)
を
汚
(
けが
)
してゐない
事
(
こと
)
を
確
(
たしか
)
め、
566
心中
(
しんちう
)
深
(
ふか
)
く
感激
(
かんげき
)
した。
567
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
は
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
に
盛
(
も
)
り
潰
(
つぶ
)
され、
568
女
(
をんな
)
の
膝
(
ひざ
)
を
枕
(
まくら
)
にして、
569
前後
(
ぜんご
)
も
知
(
し
)
らずゴロリと
倒
(
たふ
)
れ、
570
グウグウと
鼾
(
いびき
)
をかき
出
(
だ
)
した。
571
刹帝利
(
せつていり
)
を
始
(
はじ
)
め、
572
左守
(
さもり
)
、
573
右守
(
うもり
)
、
574
ハルナはソツと
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
り、
575
別殿
(
べつでん
)
に
入
(
い
)
つてホツと
息
(
いき
)
をつぎ、
576
互
(
たがひ
)
に
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあは
)
せて、
577
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
が
辣腕
(
らつわん
)
を、
578
目
(
め
)
と
目
(
め
)
を
以
(
もつ
)
て
褒
(
ほ
)
めそやし
居
(
ゐ
)
たりけり。
579
(
大正一二・二・一四
旧一一・一二・二九
於竜宮館
松村真澄
録)
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