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第53巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 毘丘取颪
01 春菜草
〔1364〕
02 蜉蝣
〔1365〕
03 軟文学
〔1366〕
04 蜜語
〔1367〕
05 愛縁
〔1368〕
06 気縁
〔1369〕
07 比翼
〔1370〕
08 連理
〔1371〕
09 蛙の腸
〔1372〕
第2篇 貞烈亀鑑
10 女丈夫
〔1373〕
11 艶兵
〔1374〕
12 鬼の恋
〔1375〕
13 醜嵐
〔1376〕
14 女の力
〔1377〕
15 白熱化
〔1378〕
第3篇 兵権執着
16 暗示
〔1379〕
17 奉還状
〔1380〕
18 八当狸
〔1381〕
19 刺客
〔1382〕
第4篇 神愛遍満
20 背進
〔1383〕
21 軍議
〔1384〕
22 天祐
〔1385〕
23 純潔
〔1386〕
余白歌
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第一〇章
女丈夫
(
ぢよぢやうぶ
)
〔一三七三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻
篇:
第2篇 貞烈亀鑑
よみ(新仮名遣い):
ていれつきかん
章:
第10章 女丈夫
よみ(新仮名遣い):
じょじょうぶ
通し章番号:
1373
口述日:
1923(大正12)年02月13日(旧12月28日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年3月8日
概要:
舞台:
ビクトリヤ城
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
関守長カントの報告に、一同は打ち驚いた。国家の危急にさすがの右守もいままでの確執よりも防衛に焦慮しだした。そして、一切の作戦計画を王家と左守家に一任するときっぱり言ってのけた。
そこで左守と王・王妃が、軍を二隊に分けてそれぞれ左守と右守が率い、迎撃態勢を整えるように命じたが、右守はなんだかんだと言い訳をつけて、城を動こうとしない。そうしている間にも次々に敵軍による被害の報告が上がってくる。
実は右守はこの事態に腰を抜かして自力で立てなくなっていた。それを悟られたくないためだけに、危急のときにあたっても立ち上がろうとしなかった。妹のカルナ姫は自分が出陣すると言って兄を振り切り、夫のハルナを促して部屋を出て行った。
ビクトリヤ王は右守の不甲斐なさに怒って、右守を切りつけようとした。王妃ヒルナ姫は王に取りすがり、右守がここまで慢心してしまった責任は自分にあり、右守の野心を探り、改心させるために、右守と不義の交わりをしたと告白した。
ビクトリヤ王は、ヒルナ姫の忠義を認め、離縁を言い渡しながらも、感謝を述べて今後も王家につかえるように言い渡した。ヒルナ姫はとっさに自害しようとしたが、タルマンはそれを止め、今は防衛に全力を勤めるように諭した。
ヒルナ姫はタルマンの諭しを容れ、武装を整えて戦陣に向かった。左守は老齢のため王のそばに仕えることになり、タルマンも出陣して行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-03-07 18:04:14
OBC :
rm5310
愛善世界社版:
99頁
八幡書店版:
第9輯 539頁
修補版:
校定版:
103頁
普及版:
49頁
初版:
ページ備考:
001
カントの
報告
(
はうこく
)
に
打驚
(
うちおどろ
)
いて、
002
一同
(
いちどう
)
は
暫
(
しばら
)
く
沈黙
(
ちんもく
)
の
幕
(
まく
)
を
下
(
お
)
ろした。
003
諺
(
ことわざ
)
にも
兄弟
(
きやうだい
)
檣
(
かき
)
にせめぐ
共
(
とも
)
、
004
外
(
ほか
)
其
(
その
)
侮
(
あなど
)
りを
防
(
ふせ
)
ぐとかや、
005
父
(
ちち
)
死
(
し
)
して
家
(
いへ
)
にせめぐ
子
(
こ
)
なし、
006
……とは
宜
(
うべ
)
なるかな。
007
国家
(
こくか
)
の
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
目睫
(
もくせふ
)
の
間
(
あひだ
)
に
迫
(
せま
)
れるを
聞
(
き
)
いて、
008
流石
(
さすが
)
の
右守
(
うもり
)
も
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
争論
(
そうろん
)
をケロリと
忘
(
わす
)
れ、
009
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
外敵
(
ぐわいてき
)
を
防
(
ふせ
)
がむとのみに
焦慮
(
せうりよ
)
し
出
(
だ
)
した。
010
右守
(
うもり
)
は
慌
(
あわ
)
てて
口
(
くち
)
を
開
(
ひら
)
き、
011
右守
(
うもり
)
『
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
、
012
国家
(
こくか
)
の
危急
(
ききふ
)
、
013
目睫
(
もくせふ
)
に
迫
(
せま
)
りました。
014
斯様
(
かやう
)
な
時
(
とき
)
に
内紛
(
ないふん
)
を
醸
(
かも
)
すのは
最
(
もつと
)
も
不利益
(
ふりえき
)
千万
(
せんばん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
015
此
(
この
)
右守
(
うもり
)
は
君
(
きみ
)
の
為
(
ため
)
、
016
国
(
くに
)
の
為
(
ため
)
、
017
一切
(
いつさい
)
の
主張
(
しゆちやう
)
を
曲
(
ま
)
げて、
018
吾
(
わが
)
君様
(
きみさま
)
、
019
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
020
左守殿
(
さもりどの
)
に
一任
(
いちにん
)
致
(
いた
)
します、
021
何卒
(
どうぞ
)
よきに
御
(
お
)
取計
(
とりはか
)
らひを
願
(
ねが
)
ひませう』
022
と
打
(
う
)
つて
変
(
かは
)
つた
挨拶
(
あいさつ
)
に、
023
ビクトリヤ
王
(
わう
)
は
漸
(
やうや
)
く
顔
(
かほ
)
をあげ、
024
刹帝利
(
せつていり
)
『
汝
(
なんぢ
)
の
赤心
(
まごころ
)
は
只今
(
ただいま
)
現
(
あら
)
はれた。
025
人
(
ひと
)
は
愈
(
いよいよ
)
の
時
(
とき
)
にならねば
本心
(
ほんしん
)
の
分
(
わか
)
らぬものだ。
026
サア
是
(
これ
)
から
左守
(
さもり
)
、
027
右守
(
うもり
)
、
028
タルマン、
029
一致
(
いつち
)
の
上
(
うへ
)
防
(
ふせ
)
ぎの
用意
(
ようい
)
を
致
(
いた
)
されよ』
030
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『
左守殿
(
さもりどの
)
、
031
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
る。
032
其方
(
そなた
)
は
三軍
(
さんぐん
)
を
率
(
ひき
)
ゐ、
033
右守殿
(
うもりどの
)
と
力
(
ちから
)
を
協
(
あは
)
せ、
034
防戦
(
ばうせん
)
にお
向
(
むか
)
ひなさらぬか』
035
左守
(
さもり
)
『ハイ、
036
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
仕
(
つかまつ
)
りました。
037
然
(
しか
)
らば
之
(
これ
)
より、
038
右守殿
(
うもりどの
)
、
039
軍隊
(
ぐんたい
)
を
二手
(
ふたて
)
に
分
(
わか
)
ち、
040
其
(
その
)
一班
(
いつぱん
)
を
拙者
(
せつしや
)
が
預
(
あづか
)
りませう』
041
右守
(
うもり
)
『これは
怪
(
け
)
しからぬ、
042
軍学
(
ぐんがく
)
に
経験
(
けいけん
)
なき
其方
(
そなた
)
、
043
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
が
如何
(
どう
)
して
出来
(
でき
)
ませうか。
044
此
(
この
)
防戦
(
ばうせん
)
は
拙者
(
せつしや
)
にお
任
(
まか
)
せ
下
(
くだ
)
され。
045
一兵
(
いつぺい
)
も
動
(
うご
)
かさずして、
046
樽爼
(
そんそ
)
折衝
(
せつしよう
)
の
間
(
あひだ
)
に
解決
(
かいけつ
)
をつけてみせませう』
047
かかる
所
(
ところ
)
へ
第二
(
だいに
)
の
使者
(
ししや
)
として、
048
慌
(
あわ
)
ただしく
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
るはエムであつた。
049
エムは
一同
(
いちどう
)
の
前
(
まへ
)
に
平伏
(
へいふく
)
し、
050
汗
(
あせ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
051
エム
『
御
(
ご
)
注進
(
ちうしん
)
申上
(
まをしあ
)
げます、
052
敵
(
てき
)
は
目
(
め
)
に
余
(
あま
)
る
大軍
(
たいぐん
)
、
053
バラモンの
勇将
(
ゆうしやう
)
、
054
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
055
久米彦
(
くめひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
指揮
(
しき
)
の
下
(
もと
)
に
数千騎
(
すうせんき
)
を
以
(
もつ
)
て
押寄
(
おしよ
)
せ
来
(
きた
)
り、
056
忽
(
たちま
)
ち
表門
(
おもてもん
)
を
破壊
(
はくわい
)
し、
057
陣営
(
ぢんえい
)
を
焼払
(
やきはら
)
い、
058
民家
(
みんか
)
に
火
(
ひ
)
を
放
(
はな
)
ちました、
059
時
(
とき
)
遅
(
おく
)
れては
一大事
(
いちだいじ
)
、
060
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
防戦
(
ばうせん
)
の
用意
(
ようい
)
あつて
然
(
しか
)
るべし。
061
いで
某
(
それがし
)
は、
062
命
(
いのち
)
を
的
(
まと
)
にあらむ
限
(
かぎ
)
りの
奪戦
(
ふんせん
)
を
致
(
いた
)
し、
063
君
(
きみ
)
の
為
(
ため
)
に
一命
(
いちめい
)
を
捨
(
す
)
て
申
(
まを
)
さむ。
064
早
(
はや
)
く
御
(
ご
)
用意
(
ようい
)
あつて
然
(
しか
)
るべし』
065
と
言
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
066
韋駄天
(
ゐだてん
)
走
(
ばし
)
りに
駆
(
か
)
け
出
(
い
)
だし、
067
何処
(
いづこ
)
ともなく
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せたり。
068
左守
(
さもり
)
『
只今
(
ただいま
)
となつて、
069
拙者
(
せつしや
)
は
貴殿
(
きでん
)
の
意思
(
いし
)
に
反
(
そむ
)
き、
070
内紛
(
ないふん
)
を
続
(
つづ
)
くる
事
(
こと
)
を
好
(
この
)
み
申
(
まを
)
さぬ。
071
然
(
しか
)
らば
吾
(
わが
)
君
(
きみ
)
の
御
(
ご
)
身辺
(
しんぺん
)
の
保護
(
ほご
)
を
仕
(
つかまつ
)
るべければ、
072
貴殿
(
きでん
)
は
之
(
これ
)
より
三軍
(
さんぐん
)
を
率
(
ひき
)
ゐ、
073
華々
(
はなばな
)
しく
戦
(
たたか
)
ひめされ、
074
日頃
(
ひごろ
)
鍛
(
きた
)
へし
武術
(
ぶじゆつ
)
の
手並
(
てなみ
)
、
075
現
(
あら
)
はし
玉
(
たま
)
ふは
此
(
この
)
時
(
とき
)
ならむ。
076
サ
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く
御
(
ご
)
用意
(
ようい
)
あれ』
077
とすすむれど、
078
右守司
(
うもりのかみ
)
は
泰然
(
たいぜん
)
として
動
(
うご
)
きさうにもない。
079
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
『
右守殿
(
うもりどの
)
、
080
国家
(
こくか
)
危急
(
ききふ
)
の
場合
(
ばあひ
)
、
081
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
防戦
(
ばうせん
)
におかかりなさらぬか』
082
右守
(
うもり
)
『これはこれはヒルナ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
とも
覚
(
おぼ
)
えませぬ。
083
敵
(
てき
)
は
目
(
め
)
にあまる
大軍
(
たいぐん
)
、
084
勝敗
(
しようはい
)
の
数
(
すう
)
は
既
(
すで
)
に
決
(
けつ
)
してをりまするぞ。
085
あたら
勇士
(
ゆうし
)
の
屍
(
かばね
)
を
戦場
(
せんぢやう
)
に
曝
(
さら
)
すよりも、
086
暫
(
しばら
)
く
敵
(
てき
)
の
蹂躙
(
じうりん
)
に
任
(
まか
)
し、
087
極端
(
きよくたん
)
に
無抵抗
(
むていかう
)
主義
(
しゆぎ
)
を
発揮
(
はつき
)
して、
088
敵
(
てき
)
をしてアフンと
致
(
いた
)
さすが
兵法
(
へいはふ
)
の
奥義
(
おくぎ
)
で
厶
(
ござ
)
る。
089
右守
(
うもり
)
が
胸中
(
きようちう
)
に
貯
(
たくは
)
へたる
神算
(
しんさん
)
鬼謀
(
きぼう
)
を
発揮
(
はつき
)
するは
瞬
(
またた
)
く
内
(
うち
)
、
090
まづまづお
待
(
ま
)
たせあれ。
091
急
(
せ
)
いては
事
(
こと
)
を
仕損
(
しそん
)
ずる、
092
英雄
(
えいゆう
)
閑日月
(
かんじつげつ
)
あり
程
(
てい
)
の
度量
(
どりやう
)
がなくては
国家
(
こくか
)
を
処理
(
しより
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまいぞ。
093
アハハハハ』
094
とクソ
落着
(
おちつ
)
きに
落着
(
おちつ
)
き、
095
何
(
なに
)
か
心
(
こころ
)
に
期
(
き
)
する
所
(
ところ
)
あるものの
如
(
ごと
)
くなりき。
096
其
(
その
)
実
(
じつ
)
右守
(
うもり
)
は
実際
(
じつさい
)
の
卑怯者
(
ひけふもの
)
で
早
(
はや
)
くも
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かしてゐたのである。
097
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らヒルナ
姫
(
ひめ
)
及
(
および
)
其
(
その
)
他
(
た
)
並
(
なみ
)
ゐる
歴々
(
れきれき
)
の
手前
(
てまへ
)
、
098
驚
(
おどろ
)
いて
腰
(
こし
)
が
抜
(
ぬ
)
けたといふ
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
099
さりとて
軍隊
(
ぐんたい
)
を
左守
(
さもり
)
に
渡
(
わた
)
せば、
100
再
(
ふたた
)
び
兵馬
(
へいば
)
の
権
(
けん
)
は
吾
(
わが
)
手
(
て
)
に
還
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
ない。
101
出
(
い
)
でて
武勇
(
ぶゆう
)
を
現
(
あら
)
はさむとすれば、
102
已
(
すで
)
に
腰
(
こし
)
が
抜
(
ぬ
)
けてゐる。
103
又
(
また
)
勝算
(
しようさん
)
の
見込
(
みこみ
)
がない。
104
なまじいに
戦
(
たたか
)
つて
敗北
(
はいぼく
)
をなし、
105
自分
(
じぶん
)
の
沽券
(
こけん
)
を
堕
(
おと
)
すよりも、
106
太刀
(
たち
)
を
抜
(
ぬ
)
かざれば、
107
其
(
その
)
勝劣
(
しようれつ
)
が
分
(
わか
)
らないであらう、
108
何
(
なん
)
とかならうから……といふズルイ
考
(
かんが
)
へが
咄嗟
(
とつさ
)
に
起
(
おこ
)
つた。
109
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
は
心
(
こころ
)
に
弱点
(
じやくてん
)
があるので、
110
右守司
(
うもりのかみ
)
に
対
(
たい
)
して
厳
(
きび
)
しく
叱咤
(
しつた
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ず、
111
実
(
じつ
)
に
煩悶
(
はんもん
)
苦悩
(
くなう
)
の
極
(
きよく
)
に
達
(
たつ
)
した。
112
刹帝利
(
せつていり
)
は
心
(
こころ
)
焦
(
いら
)
ち、
113
刹帝利
『アイヤ
右守殿
(
うもりどの
)
、
114
早
(
はや
)
くお
立
(
た
)
ちなされ、
115
日頃
(
ひごろ
)
軍隊
(
ぐんたい
)
を
練
(
ね
)
り
鍛
(
きた
)
ふるは、
116
斯様
(
かやう
)
な
時
(
とき
)
の
必要
(
ひつえう
)
ある
為
(
ため
)
ではないか。
117
汝
(
なんぢ
)
が
武勇
(
ぶゆう
)
を
現
(
あら
)
はすは
此
(
この
)
時
(
とき
)
ではないか、
118
サ
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
119
と
急
(
せ
)
き
立
(
た
)
つる。
120
左守
(
さもり
)
も
側
(
そば
)
によつて、
121
左守
『
右守殿
(
うもりどの
)
、
122
早
(
はや
)
くお
出
(
で
)
ましなされ。
123
貴殿
(
きでん
)
に
於
(
おい
)
て
不賛成
(
ふさんせい
)
とあらば、
124
拙者
(
せつしや
)
が
軍隊
(
ぐんたい
)
を
預
(
あづか
)
り、
125
防戦
(
ばうせん
)
に
出
(
で
)
かけませう。
126
早
(
はや
)
く
返答
(
へんたふ
)
を
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さい』
127
と
双方
(
さうはう
)
から
詰
(
つ
)
めかけられ、
128
右守
(
うもり
)
は
一言
(
ひとこと
)
も
答
(
こた
)
へず
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かした
儘
(
まま
)
、
129
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
つてゐる。
130
カルナ
姫
(
ひめ
)
は
側
(
そば
)
近
(
ちか
)
く
寄
(
よ
)
つて、
131
カルナ姫
『お
兄
(
にい
)
さま、
132
君
(
きみ
)
の
御
(
ご
)
心慮
(
しんりよ
)
を
慰
(
なぐさ
)
め、
133
貴方
(
あなた
)
が
忠誠
(
ちうせい
)
を
現
(
あら
)
はすは、
134
今
(
いま
)
此
(
この
)
時
(
とき
)
で
厶
(
ござ
)
います。
135
飾
(
かざ
)
りおいたる
弓矢
(
ゆみや
)
の
手前
(
てまへ
)
、
136
かやうの
時
(
とき
)
にお
働
(
はたら
)
きなさらねば、
137
却
(
かへつ
)
て
武門
(
ぶもん
)
の
恥辱
(
ちじよく
)
で
厶
(
ござ
)
いまするぞ』
138
右守
(
うもり
)
『エエ
小
(
こ
)
ざかしき
女
(
をんな
)
の
差出口
(
さしでぐち
)
、
139
構
(
かま
)
つてくれな、
140
右守
(
うもり
)
は
右守
(
うもり
)
としての
成案
(
せいあん
)
があるのだ。
141
燕雀
(
えんじやく
)
何
(
なん
)
ぞ
大鵬
(
たいほう
)
の
志
(
こころざし
)
を
知
(
し
)
らむやだ。
142
ひつ
込
(
こ
)
みをらう』
143
と
妹
(
いもうと
)
に
向
(
むか
)
つて、
144
噴火口
(
ふんくわこう
)
を
向
(
む
)
けた。
145
カルナ
姫
(
ひめ
)
『エエ
不甲斐
(
ふがひ
)
ない
兄上
(
あにうへ
)
、
146
ようマア
右守司
(
うもりのかみ
)
だと
言
(
い
)
つて、
147
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
威張
(
ゐば
)
られたものだ。
148
こんな
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
な
兄
(
あに
)
があるかと
思
(
おも
)
へば、
149
カルナ
姫
(
ひめ
)
残念
(
ざんねん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
150
イザ
之
(
これ
)
よりは
此
(
この
)
カルナが
三軍
(
さんぐん
)
を
指揮
(
しき
)
し、
151
戦陣
(
せんぢん
)
に
向
(
むか
)
ひませう、
152
兄上
(
あにうへ
)
さらば』
153
といふより
早
(
はや
)
く
立出
(
たちい
)
でむとする、
154
右守
(
うもり
)
はカルナの
手
(
て
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り、
155
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らして、
156
右守
『コレヤ
妹
(
いもうと
)
、
157
女
(
をんな
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として
戦陣
(
せんぢん
)
に
向
(
むか
)
ふとは
何事
(
なにごと
)
だ。
158
越権
(
ゑつけん
)
の
沙汰
(
さた
)
ではないか』
159
カルナ
姫
(
ひめ
)
『エエ
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
及
(
およ
)
んで、
160
越権
(
ゑつけん
)
も
鉄拳
(
てつけん
)
もありますか、
161
上
(
かみ
)
はタルマンを
始
(
はじ
)
め
下
(
しも
)
一兵卒
(
いつぺいそつ
)
の
端
(
はし
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
、
162
力
(
ちから
)
を
合
(
あは
)
せ
心
(
こころ
)
を
一
(
いつ
)
にして、
163
王家
(
わうけ
)
と
国家
(
こくか
)
を
守
(
まも
)
らねばならぬ
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
164
ササそこ
放
(
はな
)
して
下
(
くだ
)
さい』
165
ともがけど、
166
剛力
(
がうりき
)
に
掴
(
つか
)
まれたカルナ
姫
(
ひめ
)
の
細腕
(
ほそうで
)
は
容易
(
ようい
)
に
離
(
はな
)
れなかつた。
167
カルナ
姫
(
ひめ
)
は
幸
(
さいはひ
)
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
られてゐたのだから、
168
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
にて
懐剣
(
くわいけん
)
の
鞘
(
さや
)
を
払
(
はら
)
ひ、
169
右守
(
うもり
)
の
二
(
に
)
の
腕
(
うで
)
をグサツと
突
(
つ
)
き
刺
(
さ
)
せば、
170
パツと
散
(
ち
)
る
血潮
(
ちしほ
)
と
痛
(
いた
)
さに
驚
(
おどろ
)
いて
手
(
て
)
を
放
(
はな
)
したり。
171
カルナ
姫
(
ひめ
)
は、
172
カルナ姫
『ハルナ
殿
(
どの
)
、
173
サア、
174
厶
(
ござ
)
りませ。
175
妾
(
わらは
)
と
共
(
とも
)
に
防戦
(
ばうせん
)
の
用意
(
ようい
)
、
176
吾
(
わが
)
君様
(
きみさま
)
、
177
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
178
御
(
おん
)
身
(
み
)
を
御
(
ご
)
安泰
(
あんたい
)
に』
179
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
180
一目散
(
いちもくさん
)
に
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
した。
181
刹帝利
(
せつていり
)
『
汝
(
なんぢ
)
不届
(
ふとどき
)
至極
(
しごく
)
な
右守司
(
うもりのかみ
)
、
182
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
になつて、
183
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
にも
防戦
(
ばうせん
)
の
用意
(
ようい
)
を
致
(
いた
)
さぬとは、
184
不忠
(
ふちう
)
不義
(
ふぎ
)
の
曲者
(
しれもの
)
、
185
一刀
(
いつたう
)
の
下
(
もと
)
に
斬
(
き
)
りつけてくれむ、
186
覚悟
(
かくご
)
いたせ』
187
と
大刀
(
だいたう
)
をスラリと
抜
(
ぬ
)
いて
斬
(
き
)
りつけむとする。
188
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
は
王
(
わう
)
の
腕
(
うで
)
にすがりつき、
189
ヒルナ姫
『
吾
(
わが
)
君様
(
きみさま
)
、
190
暫
(
しばら
)
くお
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さいませ。
191
妾
(
わらは
)
が
悪
(
わる
)
いので
厶
(
ござ
)
います、
192
ここにて
一切
(
いつさい
)
の
罪科
(
ざいくわ
)
を
自白
(
じはく
)
致
(
いた
)
しまする。
193
何卒
(
どうぞ
)
右守
(
うもり
)
をお
斬
(
き
)
り
遊
(
あそ
)
ばすならば、
194
それより
先
(
さき
)
に
妾
(
わらは
)
を
御
(
お
)
手
(
て
)
にお
掛
(
か
)
け
下
(
くだ
)
さいませ。
195
そして
臨終
(
いまは
)
の
際
(
きは
)
に
申上
(
まをしあ
)
げておかねばならぬ
事
(
こと
)
が
厶
(
ござ
)
います。
196
此
(
この
)
右守
(
うもり
)
は
表
(
おもて
)
に
忠義面
(
ちうぎづら
)
を
装
(
よそほ
)
ひ、
197
数多
(
あまた
)
の
軍隊
(
ぐんたい
)
を
擁
(
よう
)
し、
198
内々
(
ないない
)
手
(
て
)
をまはして
国民
(
こくみん
)
を
煽動
(
せんどう
)
し、
199
各地
(
かくち
)
に
暴動
(
ばうどう
)
を
起
(
おこ
)
させ、
200
収拾
(
しうしふ
)
す
可
(
べか
)
らざるに
至
(
いた
)
るを
待
(
ま
)
ち、
201
已
(
や
)
むなく
王
(
わう
)
様
(
さま
)
を
退隠
(
たいいん
)
致
(
いた
)
させ、
202
自
(
みづか
)
ら
取
(
と
)
つて
代
(
かは
)
つて、
203
刹帝利
(
せつていり
)
たらむとの
野心
(
やしん
)
を
抱
(
いだ
)
いて
居
(
を
)
りまする。
204
妾
(
わらは
)
は
陰
(
かげ
)
になり
陽
(
ひなた
)
になり、
205
此
(
この
)
野謀
(
やぼう
)
を
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めしめ、
206
王家
(
わうけ
)
を
救
(
すく
)
はむ
為
(
ため
)
に、
207
彼
(
かれ
)
と
不義
(
ふぎ
)
の
交
(
まじ
)
はりを
致
(
いた
)
しました。
208
これも
全
(
まつた
)
く
王家
(
わうけ
)
を
思
(
おも
)
ふ
一念
(
いちねん
)
より
女
(
をんな
)
の
あさはか
な
心
(
こころ
)
から、
209
女
(
をんな
)
として
行
(
ゆ
)
く
可
(
べか
)
らざる
道
(
みち
)
を
通
(
とほ
)
りました
不貞
(
ふてい
)
の
罪
(
つみ
)
、
210
万死
(
ばんし
)
に
値
(
あたひ
)
致
(
いた
)
しますれば、
211
何卒
(
どうぞ
)
妾
(
わらは
)
を
先
(
さき
)
へ
御
(
お
)
手
(
て
)
にかけ
下
(
くだ
)
さいまして、
212
右守
(
うもり
)
を
御
(
ご
)
成敗
(
せいばい
)
下
(
くだ
)
さいます
様
(
やう
)
、
213
偏
(
ひとへ
)
にお
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
します』
214
刹帝利
(
せつていり
)
は
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
いて、
215
怒髪
(
どはつ
)
天
(
てん
)
を
衝
(
つ
)
き、
216
一刀
(
いつたう
)
の
下
(
もと
)
にヒルナ
姫
(
ひめ
)
を
斬
(
き
)
り
捨
(
す
)
つるかと
思
(
おも
)
ひきや、
217
刀
(
かたな
)
を
座敷
(
ざしき
)
に
投
(
な
)
げ
捨
(
す
)
て、
218
ドツカと
坐
(
ざ
)
し、
219
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み、
220
涙
(
なみだ
)
をハラハラと
流
(
なが
)
して
云
(
い
)
ふ、
221
刹帝利
(
せつていり
)
『ヒルナ
姫
(
ひめ
)
、
222
其方
(
そなた
)
の
心遣
(
こころづか
)
ひ、
223
吾
(
われ
)
は
嬉
(
うれ
)
しう
思
(
おも
)
ふぞよ。
224
女
(
をんな
)
の
行
(
ゆ
)
く
可
(
べか
)
らざる
道
(
みち
)
を
行
(
い
)
つて
迄
(
まで
)
も、
225
王家
(
わうけ
)
を
守
(
まも
)
らむとした
其
(
その
)
誠忠
(
せいちう
)
、
226
実
(
じつ
)
に
感歎
(
かんたん
)
の
余
(
あま
)
りである。
227
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
其
(
その
)
自白
(
じはく
)
を
聞
(
き
)
く
上
(
うへ
)
は、
228
最早
(
もはや
)
吾
(
わが
)
妃
(
きさき
)
として
侍
(
はべ
)
らす
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない。
229
可愛相
(
かあいさう
)
乍
(
なが
)
ら、
230
夫婦
(
ふうふ
)
の
縁
(
えん
)
を
切
(
き
)
る。
231
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
以前
(
いぜん
)
に
変
(
かは
)
らず、
232
王家
(
わうけ
)
の
為
(
ため
)
に
尽
(
つく
)
してくれ、
233
其方
(
そなた
)
の
赤心
(
まごころ
)
は
実
(
じつ
)
に
感謝
(
かんしや
)
致
(
いた
)
すぞよ』
234
とヒルナ
姫
(
ひめ
)
の
背
(
せ
)
を
撫
(
な
)
でて
慰
(
なぐさ
)
めた。
235
ヒルナ
姫
(
ひめ
)
は
王
(
わう
)
の
愛情
(
あいじやう
)
に
絆
(
ほだ
)
され、
236
立
(
た
)
つてもゐてもゐたたまらず、
237
懐剣
(
くわいけん
)
を
抜
(
ぬ
)
くより
早
(
はや
)
く
吾
(
わが
)
喉
(
のんど
)
につき
立
(
た
)
てむとしたるを、
238
タルマンは
目敏
(
めざと
)
く
之
(
これ
)
をみて
姫
(
ひめ
)
の
手
(
て
)
を
固
(
かた
)
く
握
(
にぎ
)
り
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に、
239
タルマン
『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
240
吾
(
わが
)
君
(
きみ
)
のお
許
(
ゆる
)
しある
上
(
うへ
)
は、
241
国家
(
こくか
)
危急
(
ききふ
)
の
場合
(
ばあひ
)
、
242
自殺
(
じさつ
)
などなさる
所
(
ところ
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬ。
243
そこ
迄
(
まで
)
の
覚悟
(
かくご
)
をお
定
(
き
)
めなさつた
以上
(
いじやう
)
は、
244
王家
(
わうけ
)
の
為
(
ため
)
に
今
(
いま
)
一息
(
ひといき
)
の
命
(
いのち
)
を
存
(
なが
)
らへ、
245
敵
(
てき
)
の
陣中
(
ぢんちう
)
に
駆
(
か
)
け
入
(
い
)
り、
246
仮令
(
たとへ
)
一人
(
ひとり
)
なり
共
(
とも
)
敵
(
てき
)
を
悩
(
なや
)
ませ、
247
勇
(
いさ
)
ましく
討死
(
うちじに
)
なさつたらどうで
厶
(
ござ
)
いませう。
248
さすれば
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
死花
(
しにばな
)
が
咲
(
さ
)
くといふもの、
249
勇猛
(
ゆうまう
)
な
女武者
(
をんなむしや
)
として、
250
千載
(
せんざい
)
に
其
(
その
)
芳名
(
はうめい
)
が
伝
(
つた
)
はるでせう、
251
暫
(
しばら
)
く
思
(
おも
)
ひ
止
(
と
)
まつて
下
(
くだ
)
さいませ』
252
と
涙
(
なみだ
)
乍
(
なが
)
らに
諫止
(
かんし
)
する。
253
姫
(
ひめ
)
は
打
(
う
)
ち
頷
(
うなづ
)
き、
254
ヒルナ姫
『ああ
如何
(
いか
)
にも、
255
其方
(
そなた
)
の
言
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
り、
256
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
に
陣中
(
ぢんちう
)
に
駆
(
か
)
け
込
(
こ
)
んで
命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
てませう。
257
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
で
自害
(
じがい
)
して
果
(
は
)
つれば、
258
犬死
(
いぬじに
)
も
同様
(
どうやう
)
、
259
不義
(
ふぎ
)
不貞腐
(
ふていくさ
)
れの
女
(
をんな
)
よと、
260
醜名
(
しうめい
)
を
後
(
のち
)
の
世
(
よ
)
に
流
(
なが
)
すのも
残念
(
ざんねん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
261
ああよい
所
(
ところ
)
へ
気
(
き
)
がついた』
262
と
気
(
き
)
を
取直
(
とりなほ
)
し、
263
俄
(
にはか
)
に
武装
(
ぶさう
)
を
整
(
ととの
)
へ、
264
後鉢巻
(
うしろはちまき
)
凛
(
りん
)
としめ、
265
薙刀
(
なぎなた
)
小脇
(
こわき
)
に
掻
(
か
)
い
込
(
こ
)
み、
266
門外
(
もんぐわい
)
さして
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
、
267
トウトウトウと
足早
(
あしばや
)
に
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
す
其
(
その
)
勇
(
いさ
)
ましさ。
268
王
(
わう
)
は
後姿
(
うしろすがた
)
を
見送
(
みおく
)
つて、
269
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
せ『
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
へ』と
祈願
(
きぐわん
)
を
凝
(
こら
)
し、
270
且
(
か
)
つ
姫
(
ひめ
)
が
天晴
(
あつぱれ
)
、
271
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
を
顕
(
あら
)
はして、
272
華々
(
はなばな
)
しく
凱旋
(
がいせん
)
せむ
事
(
こと
)
を
祈願
(
きぐわん
)
した。
273
左守司
(
さもりのかみ
)
は
老齢
(
らうれい
)
の
事
(
こと
)
とて、
274
王
(
わう
)
の
命
(
めい
)
により
王
(
わう
)
の
側
(
そば
)
近
(
ちか
)
く
仕
(
つか
)
へた。
275
タルマンは、
276
タルマン『われも
之
(
これ
)
より
戦陣
(
せんぢん
)
に
向
(
むか
)
ひ、
277
一当
(
ひとあて
)
あてて
敵
(
てき
)
の
肝
(
きも
)
を
冷
(
ひや
)
してくれむ、
278
吾
(
わが
)
君様
(
きみさま
)
、
279
さらば』
280
と
言
(
い
)
ひ
残
(
のこ
)
し、
281
武装
(
ぶさう
)
を
整
(
ととの
)
へ、
282
表
(
おもて
)
をさして
一目散
(
いちもくさん
)
に
駆
(
か
)
けり
行
(
ゆ
)
く。
283
(
大正一二・二・一三
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於竜宮館
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