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第七章 朝餉(あさげ)〔一四一五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻 篇:第2篇 縁三寵望 よみ(新仮名遣い):えんさんちょうぼう
章:第7章 朝餉 よみ(新仮名遣い):あさげ 通し章番号:1415
口述日:1923(大正12)年03月03日(旧01月16日) 口述場所:竜宮館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
万公は治国別の居間に駆け入った。頭に灰を被り、黒い顔に汗をにじらせながら、この家の主人気取りで口上を述べた。
一同はいつの間に万公がスガールと婚約したのかいぶかったが、万公は大得意でおかしな自慢の歌を歌って聞かせた。竜彦は万公をからかっている。
そこへアヅモスとフエルが新しいお膳を運んできた。万公は一同にお酌をして一座はにぎわい、一同は朝飯を済ませた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-05-17 17:52:40 OBC :rm5507
愛善世界社版:87頁 八幡書店版:第10輯 65頁 修補版: 校定版:89頁 普及版:37頁 初版: ページ備考:
001 万公(まんこう)炊事場(すゐじば)をあとに治国別(はるくにわけ)居間(ゐま)()()り、002(あたま)(はひ)(かぶ)(なが)(かほ)(くろ)(あせ)(にじ)らせ、
003万公(まんこう)『これはこれは三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)治国別(はるくにわけ)(さま)(はじ)(たてまつ)松彦(まつひこ)004竜彦(たつひこ)005鬼春別(おにはるわけ)006久米彦(くめひこ)007スパール、008エミシのお歴々(れきれき)(さま)009女房(にようばう)がいかいお世話(せわ)になりまして家内(かない)一統(いつとう)(よろこ)びは筆紙(ひつし)(つく)(こと)出来(でき)ませぬ。010(なん)とお(れい)(まを)してよいやら、011あまり突然(とつぜん)(こと)とて狼狽(らうばい)(いた)して()ります。012二三(にさん)(にち)しましたら(やや)()()きますから、013とつくりと調理法(てうりはふ)調(ととの)へお(くち)にあふものを差上(さしあ)()いと(ぞん)じます。014何分(なにぶん)下女(げぢよ)()たてで(ござ)りますなり、015下男(げなん)(やうや)(くら)から引張(ひつぱり)()して(はじ)めての修行(しうぎやう)をさしたのですから、016何事(なにごと)()(ごと)くなりませぬので、017万事(ばんじ)不始末(ふしまつ)(ばか)りで(ござ)ります、018何卒(なにとぞ)神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)しまして(しば)らくの()容赦(ようしや)をお(ねが)(まを)します』
019鬼春(おにはる)『アハハハハ、020万公別(まんこうわけ)さま、021貴方(あなた)何時(いつ)()に、022此処(ここ)主人(しゆじん)になりましたか。023まだ()披露(ひろう)もあつた(やう)にも(おも)ひませぬが』
024万公(まんこう)(けつ)して(けつ)して左様(さやう)()心配(しんぱい)()りませぬ。025披露(ひろう)婚姻(こんいん)儀式(ぎしき)(など)何日(いつ)でも(よろ)しう(ござ)ります。026()(かく)(みたま)(みたま)とが密着(みつちやく)不離(ふり)関係(くわんけい)()つてさへ()れば、027最早(もはや)(うご)かない大盤石(だいばんじやく)(やう)なものですからな』
028治国(はるくに)万公(まんこう)さま、029どうやら今度(こんど)はものになりさうだな。030吾々(われわれ)斡旋(あつせん)(らう)()らさうと(おも)へばチツと優待(いうたい)せぬと駄目(だめ)だよ』
031万公(まんこう)滅相(めつさう)もない、032こんな良縁(りやうえん)勇退(ゆうたい)して()まりますか。033仮令(たとへ)幽体(いうたい)になつても勇退(ゆうたい)しませぬわ。034エツヘヘヘヘ』
035治国(はるくに)優待(いうたい)()(こと)大切(たいせつ)もてなす()(こと)だ。036待遇(もてなし)(わる)いと不成功(ふせいこう)(をは)るかも()れないぞ』
037万公(まんこう)先生(せんせい)038縁起(えんぎ)(わる)(こと)()つて(くだ)さいますな。039もてなし(どころ)(おほ)もてありです』
040松彦(まつひこ)『アハハハハ、041先生(せんせい)042こいつは一寸(ちよつと)逆上(ぎやくじやう)してる(やう)ですな』
043治国(はるくに)『うん、044(あたま)から冷水(れいすい)でもぶつかけてやらなくちや大変(たいへん)逆上(のぼ)(かた)だ。045おい、046万公(まんこう)さま、047(まへ)(あたま)(なん)だ、048大変(たいへん)心配(しんぱい)したと()えて(かみ)()真白(まつしろ)になつたぢやないか』
049竜彦(たつひこ)自分(じぶん)はいぐう(配偶)について(こころ)(なや)ましてゐるものだから、050(あたま)()(まで)(はひ)(かぶ)つた(やう)にしてるのですよ。051(これ)では万公(まんこう)さまもゼロハイ(零敗)だ』
052万公(まんこう)『もし、053竜彦(たつひこ)のお(きやく)さま、054ゼロハイ(零敗)でも(なん)でもありませぬよ。055万公山(まんこうざん)噴火(ふんくわ)して降灰(かうはひ)をやつた(ところ)です』
056竜彦(たつひこ)『ハハハハハまるつきり灰猫(はひねこ)同様(どうやう)だ。057一体(いつたい)(なに)をして()たのかな』
058万公(まんこう)炊事場(すゐじば)()つて下女(げぢよ)下男(げなん)(たい)して、059さいはい(采配)をふつて()たものだから、060(この)(とほ)灰殻頭(はひからあたま)になつたのですよ』
061竜彦(たつひこ)万公別(まんこうわけ)さま、062(まへ)大変(たいへん)(はら)(わる)いぢやないか。063(おれ)(たち)(はひ)まぶれの(めし)()べさせやうとしたぢやないか』
064万公(まんこう)何分(なにぶん)家庭(かてい)様子(やうす)がテンと(わか)らぬものですから、065(おも)はぬ(しつ)ぱい(敗)を(いた)しました。066(しか)御心(ごしん)ぱい(配)(くだ)さいますな。067屹度(きつと)(いま)御飯(ごはん)()(なほ)(しもべ)(ども)はいぜん(配膳)をもつて(まゐ)ります』
068久米(くめ)万公別(まんこうわけ)さま、069随分(ずいぶん)(すば)しこうやりますね。070何時(いつ)()にスガールさまと情約(じやうやく)締結(ていけつ)をしましたか。071随分(ずいぶん)(すご)(うで)ですな』
072万公(まんこう)(なん)()つても三五教(あななひけう)万公別(まんこうわけ)ですよ。
073(おと)名高(なだか)きフサの(くに)
074猪倉山(ゐのくらやま)山砦(さんさい)
075(この)()(みだ)曲津(まがつ)(かみ)
076八岐(やまた)大蛇(をろち)(かか)りたる
077大黒主(おほくろぬし)醜柱(しこばしら)
078これに(つか)ふる数多(あまた)魔神(まがみ)
079(なか)にも()けて
080鬼将軍(おにしやうぐん)仇名(あだな)をとつた
081悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)鬼春別(おにはるわけ)
082久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)
083金城(きんじやう)鉄壁(てつぺき)(たの)
084数万(すうまん)軍勢(ぐんぜい)引率(ひきつ)れて
085いとも堅固(けんご)(まも)りたる
086(しこ)陣屋(ぢんや)打亡(うちほろ)ぼし
087天下(てんか)(がい)(のぞ)かむと
088万公別(まんこうわけ)部下(ぶか)勇将(ゆうしやう)
089治国別(はるくにわけ)松彦(まつひこ)竜彦(たつひこ)引率(ひきつ)
090旗鼓(きこ)堂々(だうだう)
091(てき)陣屋(ぢんや)()めかくる
092三五教(あななひけう)神将(しんしやう)
093()(きこ)えたる(それがし)
094生言霊(いくことたま)辟易(へきえき)
095流石(さすが)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)
096(かぶと)()(けん)()()
097丸腰(まるごし)となつて紅涙(こうるい)滴々(てきてき)
098五臓(ござう)六腑(ろつぷ)転覆(てんぷく)させ(なが)
099(すす)()きつつ
100(もろ)くも降参(かうさん)したりけり
101()ぐるを()はず
102謝罪(あやま)(やう)腰抜者(こしぬけ)
103(あたま)(ひと)つも(なぐ)つた(ところ)
104(なん)利益(りえき)かあるべきと
105ここは寛仁(くわんじん)大度(たいど)
106本性(ほんしやう)発揮(はつき)
107(しこ)魔神(まがみ)神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)
108見直(みなほ)聞直(ききなほ)
109百千万(ももちよろづ)過失(あやまち)()(なほ)
110(すく)(たす)くるは(てん)(みち)
111(またた)(うち)至清(しせい)至潔(しけつ)身魂(みたま)(かん)
112無事(ぶじ)にその(まま)事済(ことず)みとなり
113(てき)大将(たいしやう)霊縛(れいばく)(なが)
114凱歌(がいか)(そう)して(たに)()()
115岩間(いはま)(くぐ)(すぎ)木立(こだち)()()けて
116青葉(あをば)(しげ)大野原(おほのはら)
117(こゑ)()けども姿(すがた)()えぬ
118山時鳥(やまほととぎす)(おく)られて
119玉木(たまき)(むら)里庄(りしやう)(やかた)
120テームス(かた)へと凱旋(がいせん)したりけり
121かかる智勇(ちゆう)神将(しんしやう)なれば
122鬼春別(おにはるわけ)久米彦(くめひこ)
123蚰蜒(げじげじ)(ごと)くに(きら)ひたる
124天下(てんか)無双(むさう)のスガール美人(びじん)
125(たちま)(われ)懸想(けさう)して
126電光(でんくわう)石火(せきくわ)
127()にもとまらぬ急速力(きふそくりよく)
128(わが)両眼(りやうがん)視線(しせん)()
129以心(いしん)伝心(でんしん)
130(たちま)情意(じやうい)投合(とうがふ)
131神界(しんかい)()れての(まこと)夫婦(ふうふ)
132テームス(やかた)若主人(わかしゆじん)
133万公別(まんこうわけ)となりにけり
134ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
135常平生(つねへいぜい)三五(あななひ)
136(かみ)(つか)へし甲斐(かひ)ありて
137(うれ)しき今日(けふ)(わが)()(うへ)
138(ゆめ)ではないかと折々(をりをり)
139(われ)(わが)()(ほほ)(つめ)
140(はな)(ねぢ)つて(うかが)へば
141やつぱり苦痛(くつう)(かん)()
142治国別(はるくにわけ)()(きみ)
143何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)教子(をしへご)
144万公別(まんこうわけ)(いとま)(たま)はり
145二人(ふたり)(なか)媒酌(ばいしやく)
146完全(うまら)委曲(つばら)(むす)ばせ(たま)
147(ひとへ)(ねが)(たてまつ)る。
148小北(こぎた)(やま)十七(じふしち)
149(むすめ)(きく)(はぢ)かれて
150(をとこ)()げた万公(まんこう)
151(わが)()(きみ)のお(かげ)にて
152(やうや)(をとこ)(つく)()
153ビクトリヤ(じやう)立向(たちむか)
154(ふたた)神力(しんりき)(あら)はして
155ダイヤの(ひめ)(すく)()
156左守(さもり)(かみ)(さへぎ)られ
157いささか閉口(へいこう)為態(ていたらく)
158(しか)るに(なん)(はか)らむや
159金勝要(きんかつかね)大御神(おほみかみ)
160イドムの(かみ)(おん)(めぐみ)
161(やうや)くここに相思(さうし)男女(なんによ)
162程遠(ほどとほ)からぬ(その)(うち)
163合衾式(がふきんしき)()げむとす
164(いま)万公別(まんこうわけ)にとり
165(もつと)大切(だいじ)正念場(しやうねんば)
166治国別(はるくにわけ)()(きみ)
167(わたし)結婚(けつこん)()むまでは
168何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)辛抱(しんばう)して
169万公別(まんこうわけ)弟子(でし)なりと
170人目(ひとめ)(つく)ろひ一生(いつしやう)
171一度(いちど)(ねがひ)(こころよ)
172何卒(なにとぞ)()いて(くだ)さんせ
173松彦(まつひこ)竜彦(たつひこ)(はじ)めとし
174鬼春別(おにはるわけ)久米彦(くめひこ)
175ゼネラルさんよカーネルの
176スパール、エミシ両人(りやうにん)
177ここはお(まへ)辛抱(しんばう)して
178万公別(まんこうわけ)(はな)()たせ
179そこはそれそれ都合(つがふ)よく
180バツを(あは)して(くだ)さんせ
181(ひとへ)にお(ねが)(まを)します
182(ひと)手柄(てがら)をさそと(おも)
183自分(じぶん)(なん)()はれても
184辛抱(しんばう)するのが(をとこ)ぞえ
185(をとこ)(なか)(をとこ)とは
186(わが)()(きみ)(はじ)めとし
187(みな)さま(がた)(こと)だらう
188ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
189御霊(みたま)(さきは)ひましませよ』
190一同(いちどう)『アハハハハハ』
191鬼春(おにはる)治国別(はるくにわけ)(さま)192大変(たいへん)万公別(まんこうわけ)さまは春情立(にわだ)つてるぢやありませぬか。193()(どく)なものですな』
194竜彦(たつひこ)三五教(あななひけう)(だい)宣伝使(せんでんし)英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)万公別(まんこうわけ)(さま)195スガール(さま)()容態(ようだい)如何(いかが)(ござ)りますか。196一度(いちど)(たづ)(いた)したいとも(おも)ひ、197(みやく)()てお()げし()いと(ぞん)じて()りますが、198(なん)()つても(をとこ)(をんな)()()れると()ふのは剣呑(けんのん)ですからな。199もしや拙者(せつしや)(かほ)()て「やつぱり万公別(まんこうわけ)(さま)よりも貴方(あなた)(はう)がどこともなしに(をとこ)らしう(ござ)いますわ。200ネー貴方(あなた)」などとやられちや当家(たうけ)若主人(わかしゆじん)(たい)して失礼(しつれい)ですから、201まア(ひか)へて()りませうかい』
202万公(まんこう)『や、203有難(ありがた)う。204何卒(どうぞ)205さう(ねが)ひます。206(いづ)主人(しゆじん)(わたし)(した)しく見舞(みま)つてやれば(いきほひ)がついて、207()ぐに全快(ぜんくわい)するでせうが、208(なん)だか(をんな)でれてゐる(やう)(しうと)(しうとめ)(おも)はれても面白(おもしろ)くないと(おも)ひ、209(ひか)へて()るのですよ』
210竜彦(たつひこ)『それだと()つて吾々(われわれ)()祈願(きぐわん)もし、211鎮魂(ちんこん)もしてやらなくちやなるまい、212なア松彦(まつひこ)さま。213(ひと)先生(せんせい)にお(ねが)ひして直接(ちよくせつ)鎮魂(ちんこん)をやつて()うぢやないか』
214治国(はるくに)『さア、215夫婦(ふうふ)()心配(しんぱい)だらうし、216道晴別(みちはるわけ)(くる)しんでるだらうから、217(まへ)(たち)二人(ふたり)鎮魂(ちんこん)(ねが)()いものだな』
218竜彦(たつひこ)『ハイ、219承知(しようち)(いた)しました。220さア松彦(まつひこ)さま、221()(きみ)のお(ゆる)しが()た。222(これ)から第一(だいいち)着手(ちやくしゆ)としてスガールさまの身体(しんたい)検査(けんさ)をしようぢやないか。223エツヘヘヘヘ』
224故意(わざ)とデレ(ごゑ)()して(わら)うて()せた。
225万公(まんこう)『いや、226その()心配(しんぱい)には(およ)びませぬ。227(まへ)さま(たち)拙者(せつしや)女房(にようばう)鎮魂(ちんこん)して(もら)ひましては剣呑(けんのん)です。228乳吸(ちちすひ)鎮魂(ちんこん)229接吻(きつす)鎮魂(ちんこん)230裸鎮魂(はだかちんこん)などをやられちや(こま)りますからな』
231竜彦(たつひこ)(わたし)(まこと)宣伝使(せんでんし)だ、232(けつ)して心配(しんぱい)して(くだ)さるな。233(にせ)宣伝使(せんでんし)のガラクタ役員(やくゐん)(やう)脱線(だつせん)(てき)鎮魂(ちんこん)はやらないからな』
234万公(まんこう)『それでも廿(にじつ)世紀(せいき)の○○(けう)宣伝使(せんでんし)がチヨコチヨコやつて(いへ)()()されたり、235本山(ほんざん)から電報(でんぱう)()(もど)されたりした(ためし)もあるのだから大切(だいじ)女房(にようばう)(まか)(こと)出来(でき)ませぬわい、236イツヒヒヒヒ』
237治国(はるくに)万公別(まんこうわけ)さまが、238あまり心配(しんぱい)をするから松彦(まつひこ)239竜彦(たつひこ)少時(しばら)()遠慮(ゑんりよ)して鬼春別(おにはるわけ)240久米彦(くめひこ)(さま)()苦労(くらう)になりませうかな』
241万公(まんこう)『いえいえ滅相(めつさう)もない。242スガールは何卒(どうぞ)()つといて(くだ)さい。243(この)万公別(まんこうわけ)不断(ふだん)(てき)遠隔(ゑんかく)鎮魂(ちんこん)をやつてゐますから、244やがて全快(ぜんくわい)するでせう』
245竜彦(たつひこ)大変(たいへん)()()めると()えますな。246とらぬ(たぬき)皮算用(かはざんによう)ぢやありませぬか。247どうも前途(ぜんと)暗澹(あんたん)不有望(ふいうばう)気配(けはい)(ただよ)うてゐる(やう)ですな。248先生(せんせい)
249 かかる(ところ)へアヅモスはフエルと(とも)膳部(ぜんぶ)(はこ)(きた)両手(りやうて)をついて、
250アヅモス『皆様(みなさま)251先程(さきほど)(まこと)不都合(ふつがふ)(こと)(いた)しました。252何分(なにぶん)俄主人(にはかしゆじん)采配(さいはい)をなさつたものですから、253到頭(たうとう)(なに)()(はひ)まぶれになりまして申訳(まをしわけ)(ござ)りませぬ。254今度(こんど)(あらた)めて支度(したく)(いた)しましたから、255何卒(どうぞ)(あが)(くだ)さいませ』
256治国(はるくに)『どうもお手数(てかず)をかけて()みませぬ。257さア(みな)さま頂戴(ちやうだい)(いた)しませう。258随分(ずいぶん)(なか)()いたでせう』
259万公(まんこう)『いや、260アヅモス、261フエル、262()苦労(くらう)だつた。263(これ)から拙者(せつしや)皆様(みなさま)にお給仕(きふじ)(いた)すから、264(まへ)彼方(あちら)()つて其処辺(そこら)片付(かたつ)けるのだ。265グヅグヅしてゐると、266しやうもない(くづ)()ると(こま)るからな』
267アヅモス『ハイ、268承知(しようち)(いた)しました。269ここにお(さけ)沢山(たくさん)(ござ)りますから、270何卒(どうぞ)馬鹿(ばか)旦那(だんな)(さま)……ア、271イヤイヤ若旦那(わかだんな)(さま)272客様(きやくさま)充分(じゆうぶん)(あが)(くだ)さる(やう)273(すす)(くだ)さいませ。274左様(さやう)ならば皆様(みなさま)275(ゆつく)りと(めし)あがり(くだ)さいませ』
276とフエルと(とも)(おそ)(おそ)(この)()立去(たちさ)(ふたた)炊事場(すゐじば)(かへ)()く。277(あと)万公(まんこう)(しやく)一座(いちざ)(にぎは)一同(いちどう)舌鼓(したつづみ)をうつて朝飯(あさはん)()ましたりける。
278大正一二・三・三 旧一・一六 於竜宮館 北村隆光録)
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