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第55巻(午の巻)
序文
総説歌
第1篇 奇縁万情
01 心転
〔1409〕
02 道謡
〔1410〕
03 万民
〔1411〕
04 真異
〔1412〕
05 飯の灰
〔1413〕
06 洗濯使
〔1414〕
第2篇 縁三寵望
07 朝餉
〔1415〕
08 放棄
〔1416〕
09 三婚
〔1417〕
10 鬼涙
〔1418〕
第3篇 玉置長蛇
11 経愕
〔1419〕
12 霊婚
〔1420〕
13 蘇歌
〔1421〕
14 春陽
〔1422〕
15 公盗
〔1423〕
16 幽貝
〔1424〕
第4篇 法念舞詩
17 万巌
〔1425〕
18 音頭
〔1426〕
19 清滝
〔1427〕
20 万面
〔1428〕
21 嬉涙
〔1429〕
22 比丘
〔1430〕
余白歌
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第七章
朝餉
(
あさげ
)
〔一四一五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻
篇:
第2篇 縁三寵望
よみ(新仮名遣い):
えんさんちょうぼう
章:
第7章 朝餉
よみ(新仮名遣い):
あさげ
通し章番号:
1415
口述日:
1923(大正12)年03月03日(旧01月16日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
万公は治国別の居間に駆け入った。頭に灰を被り、黒い顔に汗をにじらせながら、この家の主人気取りで口上を述べた。
一同はいつの間に万公がスガールと婚約したのかいぶかったが、万公は大得意でおかしな自慢の歌を歌って聞かせた。竜彦は万公をからかっている。
そこへアヅモスとフエルが新しいお膳を運んできた。万公は一同にお酌をして一座はにぎわい、一同は朝飯を済ませた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-05-17 17:52:40
OBC :
rm5507
愛善世界社版:
87頁
八幡書店版:
第10輯 65頁
修補版:
校定版:
89頁
普及版:
37頁
初版:
ページ備考:
001
万公
(
まんこう
)
は
炊事場
(
すゐじば
)
をあとに
治国別
(
はるくにわけ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
駆
(
か
)
け
入
(
い
)
り、
002
頭
(
あたま
)
に
灰
(
はひ
)
を
被
(
かぶ
)
り
乍
(
なが
)
ら
顔
(
かほ
)
に
黒
(
くろ
)
い
汗
(
あせ
)
を
滲
(
にじ
)
らせ、
003
万公
(
まんこう
)
『これはこれは
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
を
初
(
はじ
)
め
奉
(
たてまつ
)
り
松彦
(
まつひこ
)
、
004
竜彦
(
たつひこ
)
、
005
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
006
久米彦
(
くめひこ
)
、
007
スパール、
008
エミシのお
歴々
(
れきれき
)
様
(
さま
)
、
009
女房
(
にようばう
)
がいかいお
世話
(
せわ
)
になりまして
家内
(
かない
)
一統
(
いつとう
)
の
喜
(
よろこ
)
びは
筆紙
(
ひつし
)
に
尽
(
つく
)
す
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
010
何
(
なん
)
とお
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
してよいやら、
011
あまり
突然
(
とつぜん
)
の
事
(
こと
)
とて
狼狽
(
らうばい
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります。
012
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
しましたら
稍
(
やや
)
落
(
お
)
ち
着
(
つ
)
きますから、
013
とつくりと
調理法
(
てうりはふ
)
も
調
(
ととの
)
へお
口
(
くち
)
にあふものを
差上
(
さしあ
)
げ
度
(
た
)
いと
存
(
ぞん
)
じます。
014
何分
(
なにぶん
)
下女
(
げぢよ
)
が
来
(
き
)
たてで
厶
(
ござ
)
りますなり、
015
下男
(
げなん
)
も
漸
(
やうや
)
く
蔵
(
くら
)
から
引張
(
ひつぱり
)
出
(
だ
)
して
初
(
はじ
)
めての
修行
(
しうぎやう
)
をさしたのですから、
016
何事
(
なにごと
)
も
意
(
い
)
の
如
(
ごと
)
くなりませぬので、
017
万事
(
ばんじ
)
不始末
(
ふしまつ
)
計
(
ばか
)
りで
厶
(
ござ
)
ります、
018
何卒
(
なにとぞ
)
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
しまして
暫
(
しば
)
らくの
御
(
ご
)
容赦
(
ようしや
)
をお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します』
019
鬼春
(
おにはる
)
『アハハハハ、
020
万公別
(
まんこうわけ
)
さま、
021
貴方
(
あなた
)
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
に、
022
此処
(
ここ
)
の
主人
(
しゆじん
)
になりましたか。
023
まだ
御
(
ご
)
披露
(
ひろう
)
もあつた
様
(
やう
)
にも
思
(
おも
)
ひませぬが』
024
万公
(
まんこう
)
『
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
左様
(
さやう
)
な
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
025
披露
(
ひろう
)
や
婚姻
(
こんいん
)
の
儀式
(
ぎしき
)
等
(
など
)
は
何日
(
いつ
)
でも
宜
(
よろ
)
しう
厶
(
ござ
)
ります。
026
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
霊
(
みたま
)
と
霊
(
みたま
)
とが
密着
(
みつちやく
)
不離
(
ふり
)
の
関係
(
くわんけい
)
を
持
(
も
)
つてさへ
居
(
を
)
れば、
027
最早
(
もはや
)
動
(
うご
)
かない
大盤石
(
だいばんじやく
)
の
様
(
やう
)
なものですからな』
028
治国
(
はるくに
)
『
万公
(
まんこう
)
さま、
029
どうやら
今度
(
こんど
)
はものになりさうだな。
030
吾々
(
われわれ
)
に
斡旋
(
あつせん
)
の
労
(
らう
)
を
執
(
と
)
らさうと
思
(
おも
)
へばチツと
優待
(
いうたい
)
せぬと
駄目
(
だめ
)
だよ』
031
万公
(
まんこう
)
『
滅相
(
めつさう
)
もない、
032
こんな
良縁
(
りやうえん
)
を
勇退
(
ゆうたい
)
して
堪
(
た
)
まりますか。
033
仮令
(
たとへ
)
幽体
(
いうたい
)
になつても
勇退
(
ゆうたい
)
しませぬわ。
034
エツヘヘヘヘ』
035
治国
(
はるくに
)
『
優待
(
いうたい
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
大切
(
たいせつ
)
に
もてなす
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
036
待遇
(
もてなし
)
が
悪
(
わる
)
いと
不成功
(
ふせいこう
)
に
終
(
をは
)
るかも
知
(
し
)
れないぞ』
037
万公
(
まんこう
)
『
先生
(
せんせい
)
、
038
縁起
(
えんぎ
)
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいますな。
039
もてなし
所
(
どころ
)
か
大
(
おほ
)
もてあり
です』
040
松彦
(
まつひこ
)
『アハハハハ、
041
先生
(
せんせい
)
、
042
こいつは
一寸
(
ちよつと
)
逆上
(
ぎやくじやう
)
してる
様
(
やう
)
ですな』
043
治国
(
はるくに
)
『うん、
044
頭
(
あたま
)
から
冷水
(
れいすい
)
でもぶつかけてやらなくちや
大変
(
たいへん
)
な
逆上
(
のぼ
)
せ
方
(
かた
)
だ。
045
おい、
046
万公
(
まんこう
)
さま、
047
お
前
(
まへ
)
の
頭
(
あたま
)
は
何
(
なん
)
だ、
048
大変
(
たいへん
)
心配
(
しんぱい
)
したと
見
(
み
)
えて
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
が
真白
(
まつしろ
)
になつたぢやないか』
049
竜彦
(
たつひこ
)
『
自分
(
じぶん
)
の
はい
ぐう(配偶)について
心
(
こころ
)
を
悩
(
なや
)
ましてゐるものだから、
050
頭
(
あたま
)
の
毛
(
け
)
迄
(
まで
)
灰
(
はひ
)
を
被
(
かぶ
)
つた
様
(
やう
)
にしてるのですよ。
051
之
(
これ
)
では
万公
(
まんこう
)
さまもゼロ
ハイ
(零敗)だ』
052
万公
(
まんこう
)
『もし、
053
竜彦
(
たつひこ
)
のお
客
(
きやく
)
さま、
054
ゼロ
ハイ
(零敗)でも
何
(
なん
)
でもありませぬよ。
055
万公山
(
まんこうざん
)
が
噴火
(
ふんくわ
)
して
降灰
(
かうはひ
)
をやつた
所
(
ところ
)
です』
056
竜彦
(
たつひこ
)
『ハハハハハまるつきり
灰猫
(
はひねこ
)
同様
(
どうやう
)
だ。
057
一体
(
いつたい
)
何
(
なに
)
をして
居
(
ゐ
)
たのかな』
058
万公
(
まんこう
)
『
炊事場
(
すゐじば
)
へ
行
(
い
)
つて
下女
(
げぢよ
)
下男
(
げなん
)
に
対
(
たい
)
して、
059
さい
はい
(采配)をふつて
居
(
ゐ
)
たものだから、
060
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
灰殻頭
(
はひからあたま
)
になつたのですよ』
061
竜彦
(
たつひこ
)
『
万公別
(
まんこうわけ
)
さま、
062
お
前
(
まへ
)
は
大変
(
たいへん
)
腹
(
はら
)
が
悪
(
わる
)
いぢやないか。
063
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
に
灰
(
はひ
)
まぶれの
飯
(
めし
)
を
食
(
た
)
べさせやうとしたぢやないか』
064
万公
(
まんこう
)
『
何分
(
なにぶん
)
家庭
(
かてい
)
の
様子
(
やうす
)
がテンと
分
(
わか
)
らぬものですから、
065
思
(
おも
)
はぬ
失
(
しつ
)
ぱい
(敗)を
致
(
いた
)
しました。
066
併
(
しか
)
し
御心
(
ごしん
)
ぱい
(配)
下
(
くだ
)
さいますな。
067
屹度
(
きつと
)
今
(
いま
)
に
御飯
(
ごはん
)
を
焚
(
た
)
き
直
(
なほ
)
し
僕
(
しもべ
)
共
(
ども
)
が
はい
ぜん(配膳)をもつて
参
(
まゐ
)
ります』
068
久米
(
くめ
)
『
万公別
(
まんこうわけ
)
さま、
069
随分
(
ずいぶん
)
敏
(
すば
)
しこうやりますね。
070
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にスガールさまと
情約
(
じやうやく
)
締結
(
ていけつ
)
をしましたか。
071
随分
(
ずいぶん
)
凄
(
すご
)
い
腕
(
うで
)
ですな』
072
万公
(
まんこう
)
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
三五教
(
あななひけう
)
の
万公別
(
まんこうわけ
)
ですよ。
073
音
(
おと
)
に
名高
(
なだか
)
きフサの
国
(
くに
)
074
猪倉山
(
ゐのくらやま
)
の
山砦
(
さんさい
)
に
075
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
乱
(
みだ
)
す
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
076
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
の
懸
(
かか
)
りたる
077
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
醜柱
(
しこばしら
)
078
これに
仕
(
つか
)
ふる
数多
(
あまた
)
の
魔神
(
まがみ
)
079
中
(
なか
)
にも
別
(
わ
)
けて
080
鬼将軍
(
おにしやうぐん
)
と
仇名
(
あだな
)
をとつた
081
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
鬼春別
(
おにはるわけ
)
082
久米彦
(
くめひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
が
083
金城
(
きんじやう
)
鉄壁
(
てつぺき
)
と
恃
(
たの
)
み
084
数万
(
すうまん
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
を
引率
(
ひきつ
)
れて
085
いとも
堅固
(
けんご
)
に
守
(
まも
)
りたる
086
醜
(
しこ
)
の
陣屋
(
ぢんや
)
を
打亡
(
うちほろ
)
ぼし
087
天下
(
てんか
)
の
害
(
がい
)
を
除
(
のぞ
)
かむと
088
万公別
(
まんこうわけ
)
が
部下
(
ぶか
)
の
勇将
(
ゆうしやう
)
089
治国別
(
はるくにわけ
)
、
松彦
(
まつひこ
)
、
竜彦
(
たつひこ
)
を
引率
(
ひきつ
)
れ
090
旗鼓
(
きこ
)
堂々
(
だうだう
)
と
091
敵
(
てき
)
の
陣屋
(
ぢんや
)
へ
攻
(
せ
)
めかくる
092
三五教
(
あななひけう
)
の
神将
(
しんしやう
)
と
093
世
(
よ
)
に
聞
(
きこ
)
えたる
某
(
それがし
)
が
094
生言霊
(
いくことたま
)
に
辟易
(
へきえき
)
し
095
流石
(
さすが
)
の
鬼春別
(
おにはるわけ
)
将軍
(
しやうぐん
)
も
096
兜
(
かぶと
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ
剣
(
けん
)
を
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
し
097
丸腰
(
まるごし
)
となつて
紅涙
(
こうるい
)
滴々
(
てきてき
)
098
五臓
(
ござう
)
六腑
(
ろつぷ
)
を
転覆
(
てんぷく
)
させ
乍
(
なが
)
ら
099
啜
(
すす
)
り
泣
(
な
)
きつつ
100
脆
(
もろ
)
くも
降参
(
かうさん
)
したりけり
101
逃
(
に
)
ぐるを
追
(
お
)
はず
102
謝罪
(
あやま
)
る
様
(
やう
)
な
腰抜者
(
こしぬけ
)
を
103
頭
(
あたま
)
の
一
(
ひと
)
つも
殴
(
なぐ
)
つた
所
(
ところ
)
で
104
何
(
なん
)
の
利益
(
りえき
)
かあるべきと
105
ここは
寛仁
(
くわんじん
)
大度
(
たいど
)
の
106
本性
(
ほんしやう
)
を
発揮
(
はつき
)
し
107
醜
(
しこ
)
の
魔神
(
まがみ
)
を
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
108
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
109
百千万
(
ももちよろづ
)
の
過失
(
あやまち
)
を
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
し
110
救
(
すく
)
ひ
助
(
たす
)
くるは
天
(
てん
)
の
道
(
みち
)
と
111
瞬
(
またた
)
く
間
(
うち
)
に
至清
(
しせい
)
至潔
(
しけつ
)
の
身魂
(
みたま
)
に
感
(
かん
)
じ
112
無事
(
ぶじ
)
にその
儘
(
まま
)
事済
(
ことず
)
みとなり
113
敵
(
てき
)
の
大将
(
たいしやう
)
を
霊縛
(
れいばく
)
し
乍
(
なが
)
ら
114
凱歌
(
がいか
)
を
奏
(
そう
)
して
谷
(
たに
)
を
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
え
115
岩間
(
いはま
)
を
潜
(
くぐ
)
り
杉
(
すぎ
)
の
木立
(
こだち
)
を
掻
(
か
)
き
分
(
わ
)
けて
116
青葉
(
あをば
)
茂
(
しげ
)
る
大野原
(
おほのはら
)
を
117
声
(
こゑ
)
は
聞
(
き
)
けども
姿
(
すがた
)
は
見
(
み
)
えぬ
118
山時鳥
(
やまほととぎす
)
に
送
(
おく
)
られて
119
玉木
(
たまき
)
の
村
(
むら
)
の
里庄
(
りしやう
)
が
館
(
やかた
)
120
テームス
方
(
かた
)
へと
凱旋
(
がいせん
)
したりけり
121
かかる
智勇
(
ちゆう
)
の
神将
(
しんしやう
)
なれば
122
鬼春別
(
おにはるわけ
)
や
久米彦
(
くめひこ
)
を
123
蚰蜒
(
げじげじ
)
の
如
(
ごと
)
くに
嫌
(
きら
)
ひたる
124
天下
(
てんか
)
無双
(
むさう
)
のスガール
美人
(
びじん
)
125
忽
(
たちま
)
ち
吾
(
われ
)
に
懸想
(
けさう
)
して
126
電光
(
でんくわう
)
石火
(
せきくわ
)
127
目
(
め
)
にもとまらぬ
急速力
(
きふそくりよく
)
で
128
吾
(
わが
)
両眼
(
りやうがん
)
に
視線
(
しせん
)
を
投
(
な
)
げ
129
以心
(
いしん
)
伝心
(
でんしん
)
130
忽
(
たちま
)
ち
情意
(
じやうい
)
投合
(
とうがふ
)
し
131
神界
(
しんかい
)
晴
(
は
)
れての
誠
(
まこと
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
132
テームス
館
(
やかた
)
の
若主人
(
わかしゆじん
)
133
万公別
(
まんこうわけ
)
となりにけり
134
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
135
常平生
(
つねへいぜい
)
に
三五
(
あななひ
)
の
136
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へし
甲斐
(
かひ
)
ありて
137
嬉
(
うれ
)
しき
今日
(
けふ
)
の
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
138
夢
(
ゆめ
)
ではないかと
折々
(
をりをり
)
に
139
吾
(
われ
)
と
吾
(
わが
)
手
(
て
)
に
頬
(
ほほ
)
を
抓
(
つめ
)
り
140
鼻
(
はな
)
を
捻
(
ねぢ
)
つて
伺
(
うかが
)
へば
141
やつぱり
苦痛
(
くつう
)
を
感
(
かん
)
じ
入
(
い
)
る
142
治国別
(
はるくにわけ
)
の
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
よ
143
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
教子
(
をしへご
)
の
144
万公別
(
まんこうわけ
)
に
暇
(
いとま
)
を
賜
(
たま
)
はり
145
二人
(
ふたり
)
が
仲
(
なか
)
の
媒酌
(
ばいしやく
)
を
146
完全
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
結
(
むす
)
ばせ
給
(
たま
)
へ
147
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る。
148
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
で
十七
(
じふしち
)
の
149
娘
(
むすめ
)
お
菊
(
きく
)
に
弾
(
はぢ
)
かれて
150
男
(
をとこ
)
を
下
(
さ
)
げた
万公
(
まんこう
)
も
151
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
のお
蔭
(
かげ
)
にて
152
漸
(
やうや
)
く
男
(
をとこ
)
を
作
(
つく
)
り
上
(
あ
)
げ
153
ビクトリヤ
城
(
じやう
)
に
立向
(
たちむか
)
ひ
154
再
(
ふたた
)
び
神力
(
しんりき
)
現
(
あら
)
はして
155
ダイヤの
姫
(
ひめ
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
し
156
左守
(
さもり
)
の
司
(
かみ
)
に
遮
(
さへぎ
)
られ
157
いささか
閉口
(
へいこう
)
の
為態
(
ていたらく
)
158
然
(
しか
)
るに
何
(
なん
)
ぞ
図
(
はか
)
らむや
159
金勝要
(
きんかつかね
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
160
イドムの
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
恵
(
めぐみ
)
161
漸
(
やうや
)
くここに
相思
(
さうし
)
の
男女
(
なんによ
)
が
162
程遠
(
ほどとほ
)
からぬ
其
(
その
)
間
(
うち
)
に
163
合衾式
(
がふきんしき
)
を
挙
(
あ
)
げむとす
164
今
(
いま
)
は
万公別
(
まんこうわけ
)
にとり
165
最
(
もつと
)
も
大切
(
だいじ
)
の
正念場
(
しやうねんば
)
166
治国別
(
はるくにわけ
)
の
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
よ
167
私
(
わたし
)
の
結婚
(
けつこん
)
済
(
す
)
むまでは
168
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
辛抱
(
しんばう
)
して
169
万公別
(
まんこうわけ
)
の
弟子
(
でし
)
なりと
170
人目
(
ひとめ
)
を
繕
(
つく
)
ろひ
一生
(
いつしやう
)
に
171
一度
(
いちど
)
の
願
(
ねがひ
)
を
快
(
こころよ
)
く
172
何卒
(
なにとぞ
)
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さんせ
173
松彦
(
まつひこ
)
、
竜彦
(
たつひこ
)
始
(
はじ
)
めとし
174
鬼春別
(
おにはるわけ
)
や
久米彦
(
くめひこ
)
の
175
ゼネラルさんよカーネルの
176
スパール、エミシ
両人
(
りやうにん
)
よ
177
ここはお
前
(
まへ
)
も
辛抱
(
しんばう
)
して
178
万公別
(
まんこうわけ
)
に
花
(
はな
)
持
(
も
)
たせ
179
そこはそれそれ
都合
(
つがふ
)
よく
180
バツを
合
(
あは
)
して
下
(
くだ
)
さんせ
181
偏
(
ひとへ
)
にお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します
182
人
(
ひと
)
に
手柄
(
てがら
)
をさそと
思
(
おも
)
や
183
自分
(
じぶん
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
はれても
184
辛抱
(
しんばう
)
するのが
男
(
をとこ
)
ぞえ
185
男
(
をとこ
)
の
中
(
なか
)
の
男
(
をとこ
)
とは
186
吾
(
わが
)
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
を
初
(
はじ
)
めとし
187
皆
(
みな
)
さま
等
(
がた
)
の
事
(
こと
)
だらう
188
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
189
御霊
(
みたま
)
幸
(
さきは
)
ひましませよ』
190
一同
(
いちどう
)
『アハハハハハ』
191
鬼春
(
おにはる
)
『
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
、
192
大変
(
たいへん
)
に
万公別
(
まんこうわけ
)
さまは
春情立
(
にわだ
)
つてるぢやありませぬか。
193
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なものですな』
194
竜彦
(
たつひこ
)
『
三五教
(
あななひけう
)
の
大
(
だい
)
宣伝使
(
せんでんし
)
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
の
万公別
(
まんこうわけ
)
様
(
さま
)
、
195
スガール
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
容態
(
ようだい
)
は
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
りますか。
196
一度
(
いちど
)
お
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
したいとも
思
(
おも
)
ひ、
197
脈
(
みやく
)
も
見
(
み
)
てお
上
(
あ
)
げし
度
(
た
)
いと
存
(
ぞん
)
じて
居
(
を
)
りますが、
198
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
男
(
をとこ
)
が
女
(
をんな
)
に
手
(
て
)
を
触
(
ふ
)
れると
云
(
い
)
ふのは
剣呑
(
けんのん
)
ですからな。
199
もしや
拙者
(
せつしや
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て「やつぱり
万公別
(
まんこうわけ
)
様
(
さま
)
よりも
貴方
(
あなた
)
の
方
(
はう
)
がどこともなしに
男
(
をとこ
)
らしう
厶
(
ござ
)
いますわ。
200
ネー
貴方
(
あなた
)
」などとやられちや
当家
(
たうけ
)
の
若主人
(
わかしゆじん
)
に
対
(
たい
)
して
失礼
(
しつれい
)
ですから、
201
まア
控
(
ひか
)
へて
居
(
を
)
りませうかい』
202
万公
(
まんこう
)
『や、
203
有難
(
ありがた
)
う。
204
何卒
(
どうぞ
)
、
205
さう
願
(
ねが
)
ひます。
206
何
(
いづ
)
れ
主人
(
しゆじん
)
の
私
(
わたし
)
が
親
(
した
)
しく
見舞
(
みま
)
つてやれば
勢
(
いきほひ
)
がついて、
207
直
(
す
)
ぐに
全快
(
ぜんくわい
)
するでせうが、
208
何
(
なん
)
だか
女
(
をんな
)
に
でれ
てゐる
様
(
やう
)
に
舅
(
しうと
)
姑
(
しうとめ
)
に
思
(
おも
)
はれても
面白
(
おもしろ
)
くないと
思
(
おも
)
ひ、
209
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
るのですよ』
210
竜彦
(
たつひこ
)
『それだと
云
(
い
)
つて
吾々
(
われわれ
)
は
御
(
ご
)
祈願
(
きぐわん
)
もし、
211
鎮魂
(
ちんこん
)
もしてやらなくちやなるまい、
212
なア
松彦
(
まつひこ
)
さま。
213
一
(
ひと
)
つ
先生
(
せんせい
)
にお
願
(
ねが
)
ひして
直接
(
ちよくせつ
)
鎮魂
(
ちんこん
)
をやつて
来
(
こ
)
うぢやないか』
214
治国
(
はるくに
)
『さア、
215
夫婦
(
ふうふ
)
も
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
だらうし、
216
道晴別
(
みちはるわけ
)
も
苦
(
くる
)
しんでるだらうから、
217
お
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
に
鎮魂
(
ちんこん
)
を
願
(
ねが
)
ひ
度
(
た
)
いものだな』
218
竜彦
(
たつひこ
)
『ハイ、
219
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
220
さア
松彦
(
まつひこ
)
さま、
221
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
のお
許
(
ゆる
)
しが
出
(
で
)
た。
222
之
(
これ
)
から
第一
(
だいいち
)
着手
(
ちやくしゆ
)
としてスガールさまの
身体
(
しんたい
)
検査
(
けんさ
)
をしようぢやないか。
223
エツヘヘヘヘ』
224
と
故意
(
わざ
)
とデレ
声
(
ごゑ
)
を
出
(
だ
)
して
笑
(
わら
)
うて
見
(
み
)
せた。
225
万公
(
まんこう
)
『いや、
226
その
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
には
及
(
およ
)
びませぬ。
227
お
前
(
まへ
)
さま
等
(
たち
)
に
拙者
(
せつしや
)
の
女房
(
にようばう
)
を
鎮魂
(
ちんこん
)
して
貰
(
もら
)
ひましては
剣呑
(
けんのん
)
です。
228
乳吸
(
ちちすひ
)
鎮魂
(
ちんこん
)
、
229
接吻
(
きつす
)
鎮魂
(
ちんこん
)
、
230
裸鎮魂
(
はだかちんこん
)
などをやられちや
困
(
こま
)
りますからな』
231
竜彦
(
たつひこ
)
『
私
(
わたし
)
は
誠
(
まこと
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だ、
232
決
(
けつ
)
して
心配
(
しんぱい
)
して
下
(
くだ
)
さるな。
233
偽
(
にせ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
のガラクタ
役員
(
やくゐん
)
の
様
(
やう
)
な
脱線
(
だつせん
)
的
(
てき
)
鎮魂
(
ちんこん
)
はやらないからな』
234
万公
(
まんこう
)
『それでも
廿
(
にじつ
)
世紀
(
せいき
)
の○○
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
がチヨコチヨコやつて
家
(
いへ
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
されたり、
235
本山
(
ほんざん
)
から
電報
(
でんぱう
)
で
呼
(
よ
)
び
戻
(
もど
)
されたりした
例
(
ためし
)
もあるのだから
大切
(
だいじ
)
の
女房
(
にようばう
)
を
任
(
まか
)
す
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬわい、
236
イツヒヒヒヒ』
237
治国
(
はるくに
)
『
万公別
(
まんこうわけ
)
さまが、
238
あまり
心配
(
しんぱい
)
をするから
松彦
(
まつひこ
)
、
239
竜彦
(
たつひこ
)
は
少時
(
しばら
)
く
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
して
鬼春別
(
おにはるわけ
)
、
240
久米彦
(
くめひこ
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
になりませうかな』
241
万公
(
まんこう
)
『いえいえ
滅相
(
めつさう
)
もない。
242
スガールは
何卒
(
どうぞ
)
放
(
ほ
)
つといて
下
(
くだ
)
さい。
243
此
(
この
)
万公別
(
まんこうわけ
)
が
不断
(
ふだん
)
的
(
てき
)
に
遠隔
(
ゑんかく
)
鎮魂
(
ちんこん
)
をやつてゐますから、
244
やがて
全快
(
ぜんくわい
)
するでせう』
245
竜彦
(
たつひこ
)
『
大変
(
たいへん
)
気
(
き
)
が
揉
(
も
)
めると
見
(
み
)
えますな。
246
とらぬ
狸
(
たぬき
)
の
皮算用
(
かはざんによう
)
ぢやありませぬか。
247
どうも
前途
(
ぜんと
)
暗澹
(
あんたん
)
不有望
(
ふいうばう
)
の
気配
(
けはい
)
が
漂
(
ただよ
)
うてゐる
様
(
やう
)
ですな。
248
先生
(
せんせい
)
』
249
かかる
処
(
ところ
)
へアヅモスはフエルと
共
(
とも
)
に
膳部
(
ぜんぶ
)
を
運
(
はこ
)
び
来
(
きた
)
り
両手
(
りやうて
)
をついて、
250
アヅモス『
皆様
(
みなさま
)
、
251
先程
(
さきほど
)
は
誠
(
まこと
)
に
不都合
(
ふつがふ
)
な
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しました。
252
何分
(
なにぶん
)
俄主人
(
にはかしゆじん
)
が
采配
(
さいはい
)
をなさつたものですから、
253
到頭
(
たうとう
)
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
灰
(
はひ
)
まぶれになりまして
申訳
(
まをしわけ
)
が
厶
(
ござ
)
りませぬ。
254
今度
(
こんど
)
は
改
(
あらた
)
めて
支度
(
したく
)
を
致
(
いた
)
しましたから、
255
何卒
(
どうぞ
)
お
食
(
あが
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
256
治国
(
はるくに
)
『どうもお
手数
(
てかず
)
をかけて
済
(
す
)
みませぬ。
257
さア
皆
(
みな
)
さま
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
しませう。
258
随分
(
ずいぶん
)
お
腹
(
なか
)
が
空
(
す
)
いたでせう』
259
万公
(
まんこう
)
『いや、
260
アヅモス、
261
フエル、
262
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だつた。
263
之
(
これ
)
から
拙者
(
せつしや
)
が
皆様
(
みなさま
)
にお
給仕
(
きふじ
)
を
致
(
いた
)
すから、
264
お
前
(
まへ
)
は
彼方
(
あちら
)
へ
行
(
い
)
つて
其処辺
(
そこら
)
を
片付
(
かたつ
)
けるのだ。
265
グヅグヅしてゐると、
266
しやうもない
屑
(
くづ
)
が
出
(
で
)
ると
困
(
こま
)
るからな』
267
アヅモス『ハイ、
268
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
269
ここにお
酒
(
さけ
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
厶
(
ござ
)
りますから、
270
何卒
(
どうぞ
)
馬鹿
(
ばか
)
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
……ア、
271
イヤイヤ
若旦那
(
わかだんな
)
様
(
さま
)
、
272
お
客様
(
きやくさま
)
に
充分
(
じゆうぶん
)
お
召
(
あが
)
り
下
(
くだ
)
さる
様
(
やう
)
、
273
お
勧
(
すす
)
め
下
(
くだ
)
さいませ。
274
左様
(
さやう
)
ならば
皆様
(
みなさま
)
、
275
緩
(
ゆつく
)
りと
召
(
めし
)
あがり
下
(
くだ
)
さいませ』
276
とフエルと
共
(
とも
)
に
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
る
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
り
再
(
ふたた
)
び
炊事場
(
すゐじば
)
に
皈
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
277
後
(
あと
)
は
万公
(
まんこう
)
の
酌
(
しやく
)
で
一座
(
いちざ
)
も
賑
(
にぎは
)
ひ
一同
(
いちどう
)
舌鼓
(
したつづみ
)
をうつて
朝飯
(
あさはん
)
を
済
(
す
)
ましたりける。
278
(
大正一二・三・三
旧一・一六
於竜宮館
北村隆光
録)
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