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第55巻(午の巻)
序文
総説歌
第1篇 奇縁万情
01 心転
〔1409〕
02 道謡
〔1410〕
03 万民
〔1411〕
04 真異
〔1412〕
05 飯の灰
〔1413〕
06 洗濯使
〔1414〕
第2篇 縁三寵望
07 朝餉
〔1415〕
08 放棄
〔1416〕
09 三婚
〔1417〕
10 鬼涙
〔1418〕
第3篇 玉置長蛇
11 経愕
〔1419〕
12 霊婚
〔1420〕
13 蘇歌
〔1421〕
14 春陽
〔1422〕
15 公盗
〔1423〕
16 幽貝
〔1424〕
第4篇 法念舞詩
17 万巌
〔1425〕
18 音頭
〔1426〕
19 清滝
〔1427〕
20 万面
〔1428〕
21 嬉涙
〔1429〕
22 比丘
〔1430〕
余白歌
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第一六章
幽貝
(
いうかひ
)
〔一四二四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻
篇:
第3篇 玉置長蛇
よみ(新仮名遣い):
たまきちょうだ
章:
第16章 幽貝
よみ(新仮名遣い):
ゆうかい
通し章番号:
1424
口述日:
1923(大正12)年03月04日(旧01月17日)
口述場所:
竜宮館
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
四人の修験者たちはシメジ峠の南麓に着いた。一通りなき、昼なお暗い坂道を、四人は宣伝歌を歌いながら登っていく。
シメジ峠の頂上に達し、四人は松の根に腰かけてしばし息を休め、述懐の歌を歌った。そして今度は峠の坂を降って行く。
四人はビクの国へは立ち寄らず、山道を分けて照国山の谷間の清めの滝に向かって進んで行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-05-27 16:29:23
OBC :
rm5516
愛善世界社版:
204頁
八幡書店版:
第10輯 109頁
修補版:
校定版:
215頁
普及版:
91頁
初版:
ページ備考:
001
鬼春別
(
おにはるわけ
)
の
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
002
道貫
(
だうくわん
)
素道
(
そだう
)
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
003
此
(
この
)
四柱
(
よはしら
)
の
修験者
(
しうげんじや
)
004
北
(
きた
)
の
森
(
もり
)
をば
立出
(
たちい
)
でて
005
ブーブーブーと
法螺
(
ほら
)
の
貝
(
かひ
)
006
吹
(
ふ
)
き
立
(
た
)
て
山野
(
さんや
)
の
木精
(
こだま
)
をば
007
響
(
ひび
)
かせ
乍
(
なが
)
らスタスタと
008
杖
(
つゑ
)
を
力
(
ちから
)
に
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
009
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
は
北
(
きた
)
の
森
(
もり
)
を
立出
(
たちい
)
で、
010
三
(
さん
)
人
(
にん
)
と
共
(
とも
)
にシメジ
峠
(
たうげ
)
の
南麓
(
なんろく
)
に
着
(
つ
)
いた。
011
これから
先
(
さき
)
は
非常
(
ひじやう
)
な
難所
(
なんしよ
)
が
処々
(
ところどころ
)
にある。
012
人通
(
ひとどほ
)
りさへなき
昼
(
ひる
)
猶
(
なほ
)
暗
(
くら
)
き
樹木
(
じゆもく
)
の
茂
(
しげ
)
る
坂道
(
さかみち
)
を
喘
(
あへ
)
ぎ
喘
(
あへ
)
ぎ
登
(
のぼ
)
り
乍
(
なが
)
ら
足拍子
(
あしびやうし
)
をとり
歌
(
うた
)
ひ
行
(
ゆ
)
く。
013
治道居士
『
猪倉山
(
ゐのくらやま
)
の
峰続
(
みねつづ
)
き
014
此処
(
ここ
)
は
名
(
な
)
におふシメジ
坂
(
ざか
)
015
駒
(
こま
)
も
通
(
かよ
)
はぬ
阪道
(
さかみち
)
を
016
神
(
かみ
)
の
手綱
(
たづな
)
に
曳
(
ひ
)
かれつつ
017
沙門
(
しやもん
)
の
姿
(
すがた
)
に
身
(
み
)
を
変
(
か
)
へて
018
至善
(
しぜん
)
至上
(
しじやう
)
の
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
019
治
(
をさ
)
めて
世人
(
よびと
)
を
救
(
すく
)
はむと
020
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
に
鞭撻
(
むちう
)
つて
021
吾々
(
われわれ
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く
022
ハアハアハアハアきつい
阪
(
さか
)
023
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
気
(
き
)
をつけ
成
(
な
)
されませ
024
もしも
転落
(
てんらく
)
した
時
(
とき
)
は
025
折角
(
せつかく
)
神
(
かみ
)
に
許
(
ゆる
)
された
026
照国山
(
てるくにやま
)
の
荒行
(
あらぎやう
)
も
027
サツパリ
駄目
(
だめ
)
になりまする
028
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
029
昨日
(
きのふ
)
に
変
(
かは
)
る
今日
(
けふ
)
の
空
(
そら
)
030
ハアハアハアハア ウンウンウン
031
実
(
げ
)
に
騒
(
さわ
)
がしき
蝉
(
せみ
)
の
声
(
こゑ
)
032
その
ひぐらし
の
杣人
(
そまびと
)
も
033
容易
(
ようい
)
に
渡
(
わた
)
らぬ
此
(
この
)
阪
(
さか
)
を
034
登
(
のぼ
)
るは
苦
(
くる
)
しき
様
(
やう
)
なれど
035
山
(
やま
)
と
積
(
つ
)
みてし
罪科
(
つみとが
)
を
036
神
(
かみ
)
の
御水火
(
みいき
)
に
祓
(
はら
)
はれて
037
栄
(
さか
)
え
久
(
ひさ
)
しき
天国
(
てんごく
)
に
038
上
(
のぼ
)
りて
行
(
ゆ
)
かむ
首途
(
かどいで
)
と
039
思
(
おも
)
ひまはせばハアハアハア
040
何程
(
なにほど
)
阪
(
さか
)
は
峻
(
けは
)
しとも
041
如何
(
いか
)
でか
怯
(
ひる
)
まむ
惟神
(
かむながら
)
042
進
(
すす
)
めば
広
(
ひろ
)
き
平地
(
へいち
)
あり
043
此
(
この
)
難関
(
なんくわん
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
044
花
(
はな
)
爛漫
(
らんまん
)
と
開
(
ひら
)
きたる
045
神
(
かみ
)
の
御園
(
みその
)
に
進
(
すす
)
みなば
046
今
(
いま
)
絞
(
しぼ
)
り
出
(
だ
)
す
汗脂
(
あせあぶら
)
047
苦
(
く
)
もなくここに
拭
(
ふ
)
き
取
(
と
)
られ
048
神
(
かみ
)
の
御国
(
みくに
)
のエンゼルと
049
此
(
この
)
世
(
よ
)
ながらに
健
(
まめ
)
やかに
050
仕
(
つか
)
へて
神
(
かみ
)
と
道
(
みち
)
のため
051
世人
(
よびと
)
のために
面白
(
おもしろ
)
き
052
尊
(
たふと
)
き
余生
(
よせい
)
を
送
(
おく
)
り
得
(
え
)
む
053
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
軍人
(
いくさびと
)
054
今
(
いま
)
は
心
(
こころ
)
も
和
(
やは
)
らぎて
055
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
弥勒神
(
みろくしん
)
056
恵
(
めぐみ
)
の
露
(
つゆ
)
を
蒙
(
かがぶ
)
りつ
057
ビクの
神国
(
みくに
)
を
指
(
さ
)
して
行
(
ゆ
)
く
058
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
059
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
深
(
ふか
)
くして
060
吾
(
わが
)
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
に
曲
(
まが
)
もなく
061
悪
(
あ
)
しき
獣
(
けもの
)
の
災
(
わざはひ
)
も
062
あらずに
進
(
すす
)
ませ
玉
(
たま
)
へかし
063
駒
(
こま
)
曳
(
ひ
)
きつれて
此
(
この
)
阪
(
さか
)
を
064
下
(
くだ
)
りし
時
(
とき
)
のハアハアハア
065
吾
(
わが
)
勢
(
いきほひ
)
に
比
(
くら
)
ぶれば
066
今
(
いま
)
は
天地
(
てんち
)
の
相違
(
さうゐ
)
あり
067
悪鬼
(
あくき
)
羅刹
(
らせつ
)
は
忽
(
たちま
)
ちに
068
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
のエンゼルと
069
変化
(
へんくわ
)
したるも
三五
(
あななひ
)
の
070
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
御賜物
(
みたまもの
)
071
仰
(
あふ
)
げば
高
(
たか
)
し
久方
(
ひさかた
)
の
072
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
に
照
(
て
)
り
渡
(
わた
)
る
073
月日
(
つきひ
)
の
恵
(
めぐみ
)
いと
清
(
きよ
)
く
074
四方
(
よも
)
の
草木
(
くさき
)
はスクスクと
075
茂
(
しげ
)
り
栄
(
さか
)
えて
天国
(
てんごく
)
の
076
姿
(
すがた
)
を
写
(
うつ
)
す
楽
(
たの
)
しさよ
077
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
078
神
(
かみ
)
のまにまに
進
(
すす
)
む
身
(
み
)
は
079
いづくの
空
(
そら
)
に
至
(
いた
)
るとも
080
如何
(
いか
)
でか
恐
(
おそ
)
れむ
敷島
(
しきしま
)
の
081
大和心
(
やまとごころ
)
の
照
(
て
)
る
限
(
かぎ
)
り
082
心
(
こころ
)
も
身
(
み
)
をも
筑紫潟
(
つくしがた
)
083
高砂島
(
たかさごじま
)
の
果
(
は
)
て
迄
(
まで
)
も
084
進
(
すす
)
みて
行
(
ゆ
)
かむ
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
085
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
086
ウントコドツコイ ドツコイシヨ
087
天地
(
てんち
)
の
主
(
ぬし
)
と
現
(
あれ
)
ませる
088
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
089
慎
(
つつし
)
み
畏
(
かしこ
)
み
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る』
090
エミシの
求道
(
きうだう
)
居士
(
こじ
)
は
汗
(
あせ
)
をタラタラ
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら
一行
(
いつかう
)
の
前
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
元気
(
げんき
)
よく
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
上
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
091
求道
(
きうだう
)
『
春
(
はる
)
は
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
き
鳥
(
とり
)
歌
(
うた
)
ひ
092
草木
(
くさき
)
の
末
(
すゑ
)
も
青々
(
あをあを
)
と
093
茂
(
しげ
)
り
栄
(
さか
)
ゆる
夏
(
なつ
)
の
日
(
ひ
)
も
094
いつしか
越
(
こ
)
えて
秋
(
あき
)
の
風
(
かぜ
)
095
木枯
(
こがらし
)
荒
(
すさ
)
む
冬
(
ふゆ
)
の
空
(
そら
)
096
満天
(
まんてん
)
忽
(
たちま
)
ち
雪雲
(
ゆきぐも
)
に
097
包
(
つつ
)
まれ
月日
(
つきひ
)
を
隠
(
かく
)
せども
098
軈
(
やが
)
て
一陽
(
いちやう
)
来復
(
らいふく
)
の
099
再
(
ふたた
)
び
春
(
はる
)
が
来
(
く
)
る
時
(
とき
)
は
100
又
(
また
)
もや
山野
(
さんや
)
は
爛漫
(
らんまん
)
と
101
いと
美
(
うる
)
はしき
花
(
はな
)
ぞ
咲
(
さ
)
く
102
世
(
よ
)
の
有様
(
ありさま
)
を
眺
(
なが
)
むれば
103
これの
地上
(
ちじやう
)
に
生
(
うま
)
れたる
104
人
(
ひと
)
の
身魂
(
みたま
)
も
何時
(
いつ
)
しかに
105
移
(
うつ
)
り
変
(
かは
)
らぬ
事
(
こと
)
やある
106
バラモン
軍
(
ぐん
)
のカーネルと
107
数多
(
あまた
)
の
軍兵
(
ぐんぴやう
)
指揮
(
しき
)
なして
108
威張
(
ゐば
)
り
散
(
ち
)
らした
此
(
この
)
エミシ
109
今
(
いま
)
は
全
(
まつた
)
くハアハアハア
110
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
まし
111
執着心
(
しふちやくしん
)
を
放擲
(
はうてき
)
し
112
現幽
(
げんいう
)
神界
(
しんかい
)
一体
(
いつたい
)
の
113
救
(
すく
)
ひの
道
(
みち
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り
114
至善
(
しぜん
)
至上
(
しじやう
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
115
体得
(
たいとく
)
したる
嬉
(
うれ
)
しさよ
116
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
117
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
118
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
は
起
(
おこ
)
るとも
119
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
せし
此
(
この
)
体
(
からだ
)
120
如何
(
いか
)
でか
初心
(
しよしん
)
をドツコイシヨ
121
翻
(
ひるがへ
)
さむや
惟神
(
かむながら
)
122
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
せし
此
(
この
)
体
(
からだ
)
123
照国山
(
てるくにやま
)
の
谷間
(
たにあひ
)
で
124
百日
(
ももか
)
百夜
(
ももよ
)
の
行
(
ぎやう
)
修
(
をさ
)
め
125
神
(
かみ
)
の
御徳
(
みとく
)
を
身
(
み
)
に
享
(
う
)
けて
126
世人
(
よびと
)
を
救
(
すく
)
ふ
比丘
(
びく
)
となり
127
月照彦
(
つきてるひこ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
128
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
ふ
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
129
いや
永久
(
とこしへ
)
に
開
(
ひら
)
くべし
130
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
131
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひましませよ』
132
かく
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
らシメジ
峠
(
たうげ
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
に
達
(
たつ
)
した。
133
風
(
かぜ
)
に
曝
(
さら
)
されて
洒落
(
しやれ
)
きつた
面白
(
おもしろ
)
い
松
(
まつ
)
の
木
(
き
)
が
六七本
(
ろくしちほん
)
並
(
なら
)
んでゐる。
134
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
松
(
まつ
)
の
根
(
ね
)
に
腰打掛
(
こしうちか
)
け
汗
(
あせ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
少時
(
しばし
)
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めてゐる。
135
治道
(
ちだう
)
『
見渡
(
みわた
)
せば
四方
(
よも
)
の
山々
(
やまやま
)
青葉
(
あをば
)
して
136
心
(
こころ
)
も
清
(
きよ
)
く
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
るなり』
137
道貫
(
だうくわん
)
『ライオンの
川
(
かは
)
の
流
(
なが
)
れは
弥遠
(
いやとほ
)
く
138
帯
(
おび
)
の
如
(
ごと
)
くに
見
(
み
)
えにけるかな』
139
素道
(
そだう
)
『
見渡
(
みわた
)
せば
何処
(
いづこ
)
も
同
(
おな
)
じ
天国
(
てんごく
)
の
140
姿
(
すがた
)
なるらむ
青々
(
あをあを
)
として』
141
求道
(
きうだう
)
『
大空
(
おほぞら
)
も
大地
(
だいち
)
の
上
(
うへ
)
も
青々
(
あをあを
)
と
142
綾
(
あや
)
を
翳
(
かざ
)
して
塵
(
ちり
)
もとどめず。
143
年
(
とし
)
老
(
お
)
いし
松
(
まつ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
休
(
やす
)
らひて
144
汗
(
あせ
)
拭
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
ふ
峰
(
みね
)
の
夏風
(
なつかぜ
)
』
145
治道
(
ちだう
)
『
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
は
天津
(
あまつ
)
神国
(
みくに
)
の
神人
(
かみびと
)
の
146
御水火
(
みいき
)
なるらむいとも
涼
(
すず
)
しき』
147
素道
(
そだう
)
『
苦
(
くる
)
しみて
漸
(
やうや
)
くここに
登
(
のぼ
)
り
見
(
み
)
れば
148
涼
(
すず
)
しき
風
(
かぜ
)
の
吾
(
われ
)
を
待
(
ま
)
ちぬる』
149
道貫
(
だうくわん
)
『いざさらば
此
(
この
)
阪道
(
さかみち
)
を
下
(
くだ
)
るべし
150
つづかせ
玉
(
たま
)
へ
神司
(
かむつかさ
)
等
(
たち
)
』
151
求道
(
きうだう
)
『これよりは
愈
(
いよいよ
)
下
(
くだ
)
り
阪
(
ざか
)
となる
152
されど
身魂
(
みたま
)
は
神国
(
みくに
)
に
上
(
のぼ
)
る』
153
かく
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
154
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
危
(
あやふ
)
き
阪道
(
さかみち
)
を
一歩
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
注意
(
ちうい
)
しつつ
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
155
道貫
(
だうくわん
)
は
又
(
また
)
歌
(
うた
)
ふ。
156
道貫
(
だうくわん
)
『バラモン
教
(
けう
)
の
久米彦
(
くめひこ
)
と
157
世
(
よ
)
に
謳
(
うた
)
はれし
将軍
(
しやうぐん
)
も
158
時世
(
ときよ
)
時節
(
じせつ
)
の
力
(
ちから
)
にて
159
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
を
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
し
160
自
(
みづか
)
ら
鞭撻
(
むちう
)
つ
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
161
ビクビクビクとビクの
国
(
くに
)
162
比丘
(
びく
)
の
姿
(
すがた
)
に
身
(
み
)
を
窶
(
やつ
)
し
163
心
(
こころ
)
の
鑑
(
かがみ
)
も
照国
(
てるくに
)
の
164
山
(
やま
)
の
谷間
(
たにま
)
に
立向
(
たちむか
)
ひ
165
谷間
(
たにま
)
を
落
(
お
)
ちる
岩清水
(
いはしみづ
)
166
鼓
(
つづみ
)
の
滝
(
たき
)
に
身
(
み
)
を
打
(
う
)
たせ
167
汚
(
けが
)
れ
果
(
は
)
てたる
垢離
(
くり
)
をとり
168
霊肉
(
れいにく
)
ともに
清浄
(
しやうじやう
)
に
169
立直
(
たちなほ
)
したるその
上
(
うへ
)
で
170
ビクトル
山
(
さん
)
の
神殿
(
しんでん
)
に
171
参拝
(
さんぱい
)
なして
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
172
犯
(
おか
)
せし
罪
(
つみ
)
を
悉
(
ことごと
)
く
173
謝
(
あやま
)
り
詫
(
わ
)
びてビクトリヤ
174
王
(
わう
)
の
御前
(
みまへ
)
に
参向
(
さんかう
)
し
175
過
(
す
)
ぎにし
春
(
はる
)
の
無礼
(
ぶれい
)
をば
176
拝謝
(
はいしや
)
しまつり
三五
(
あななひ
)
の
177
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
の
教
(
をし
)
へ
子
(
ご
)
と
178
仕
(
つか
)
へまつらむ
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
179
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
180
国治立
(
くにはるたち
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
181
御前
(
みまへ
)
に
慎
(
つつし
)
み
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る
182
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
183
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
184
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
185
誠
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
186
今
(
いま
)
まで
悪
(
あく
)
を
尽
(
つく
)
したる
187
心
(
こころ
)
の
暗
(
くら
)
き
久米彦
(
くめひこ
)
も
188
忽
(
たちま
)
ち
日出
(
ひので
)
の
守護
(
しゆご
)
となり
189
吾
(
わが
)
精霊
(
せいれい
)
は
天国
(
てんごく
)
に
190
上
(
のぼ
)
りて
神
(
かみ
)
の
栄光
(
えいくわう
)
に
191
仕
(
つか
)
ふる
身
(
み
)
とはなりにけり
192
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
193
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みを
慎
(
つつし
)
みて
194
喜
(
よろこ
)
び
感謝
(
かんしや
)
し
奉
(
たてまつ
)
る』
195
素道
(
そだう
)
は
阪
(
さか
)
を
下
(
くだ
)
り
漸
(
やうや
)
く
平地
(
へいち
)
に
着
(
つ
)
いて
元気
(
げんき
)
を
恢復
(
くわいふく
)
し、
196
人並
(
ひとなみ
)
に
歌
(
うた
)
はねばならぬと
思
(
おも
)
つたか、
197
妙
(
めう
)
な
皺枯
(
しわが
)
れ
声
(
ごゑ
)
を
出
(
だ
)
して
一歩
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
拍子
(
ひやうし
)
をとり
歌
(
うた
)
ひ
始
(
はじ
)
めたり。
198
素道居士
『
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
199
治国別
(
はるくにわけ
)
に
助
(
たす
)
けられ
200
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
を
悟
(
さと
)
りてゆ
201
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
つづけし
罪業
(
ざいごふ
)
が
202
いと
恐
(
おそ
)
ろしくなり
来
(
きた
)
り
203
死後
(
しご
)
の
生涯
(
しやうがい
)
ある
事
(
こと
)
を
204
思
(
おも
)
へば
短
(
みじか
)
き
現世
(
げんせ
)
にて
205
小
(
ちひ
)
さき
欲
(
よく
)
に
踏
(
ふ
)
み
迷
(
まよ
)
ひ
206
名利
(
めいり
)
の
奴隷
(
どれい
)
となるよりも
207
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
執着
(
しふちやく
)
の
208
衣
(
きぬ
)
脱
(
ぬ
)
ぎ
棄
(
す
)
てて
比丘
(
びく
)
となり
209
生
(
うま
)
れ
赤児
(
あかご
)
となり
変
(
かは
)
り
210
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
捨
(
す
)
てし
修験者
(
しうげんじや
)
211
本来
(
ほんらい
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
は
無東西
(
むとうざい
)
212
何処有
(
かしよう
)
南北
(
なんぼく
)
是宇宙
(
これうちう
)
213
色即
(
しきそく
)
是空
(
ぜくう
)
の
世
(
よ
)
の
習
(
なら
)
ひ
214
空即
(
くうそく
)
是色
(
ぜしき
)
の
真諦
(
しんたい
)
を
215
漸
(
やうや
)
く
悟
(
さと
)
り
吾々
(
われわれ
)
は
216
剣
(
つるぎ
)
を
棄
(
す
)
てて
言霊
(
ことたま
)
の
217
神
(
かみ
)
の
依
(
よ
)
さしの
御剣
(
みつるぎ
)
に
218
持
(
も
)
ち
直
(
なほ
)
したる
嬉
(
うれ
)
しさよ
219
ブーブーブーと
法螺
(
ほら
)
の
貝
(
かひ
)
220
吹
(
ふ
)
き
鳴
(
な
)
らし
行
(
ゆ
)
く
嬉
(
うれ
)
しさは
221
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
生
(
い
)
きて
人欲
(
にんよく
)
に
222
囚
(
とら
)
はれ
居
(
ゐ
)
たる
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
の
223
転迷
(
てんめい
)
開悟
(
かいご
)
の
声
(
こゑ
)
聞
(
き
)
いて
224
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
ましたる
鬨
(
とき
)
の
声
(
こゑ
)
225
そも
法螺貝
(
ほらがひ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
226
生
(
いき
)
たる
時
(
とき
)
は
声
(
こゑ
)
もなし
227
死
(
し
)
んで
死骸
(
しがい
)
となりし
時
(
とき
)
228
生言霊
(
いくことたま
)
の
息
(
いき
)
により
229
大
(
だい
)
なる
声
(
こゑ
)
を
張
(
は
)
り
上
(
あ
)
げて
230
遠
(
とほ
)
き
近
(
ちか
)
きの
山彦
(
やまびこ
)
を
231
驚
(
おどろ
)
かし
行
(
ゆ
)
く
健気
(
けなげ
)
さよ
232
吾
(
われ
)
も
現世
(
げんせ
)
に
住
(
す
)
まひては
233
いとも
小
(
ちひ
)
さきものにして
234
呼
(
よ
)
ばはる
国
(
くに
)
は
四方
(
よも
)
の
国
(
くに
)
235
轟
(
とどろ
)
く
術
(
すべ
)
もなけれども
236
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
去
(
さ
)
りて
霊界
(
れいかい
)
に
237
復活
(
ふくくわつ
)
したる
其
(
その
)
時
(
とき
)
は
238
此
(
この
)
法螺貝
(
ほらがひ
)
ぢやなけれども
239
其
(
その
)
言霊
(
ことたま
)
は
弥高
(
いやたか
)
く
240
高天原
(
たかあまはら
)
に
鳴
(
な
)
り
渡
(
わた
)
り
241
中有界
(
ちううかい
)
や
地獄界
(
ぢごくかい
)
242
彷徨
(
さまよ
)
ひ
苦
(
くる
)
しむ
身魂
(
みたま
)
をば
243
いとも
尊
(
たふと
)
き
天国
(
てんごく
)
へ
244
導
(
みちび
)
き
悟
(
さと
)
す
瑞祥
(
ずゐしやう
)
と
245
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
み
吹
(
ふ
)
き
立
(
た
)
てる
246
プープープープー プツプツプツ
247
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
248
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひましませよ』
249
かく
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
列
(
れつ
)
を
正
(
ただ
)
しうしてビクの
国
(
くに
)
へは
立寄
(
たちよ
)
らず、
250
直
(
ただ
)
ちに
荊棘
(
けいきよく
)
茂
(
しげ
)
る
山道
(
やまみち
)
を
分
(
わ
)
けて
照国山
(
てるくにやま
)
の
谷間
(
たにま
)
、
251
清
(
きよ
)
めの
滝
(
たき
)
に
向
(
むか
)
つて
一目散
(
いちもくさん
)
に
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
252
死
(
し
)
んでから
大
(
いか
)
い
声
(
こゑ
)
出
(
だ
)
す
法螺
(
ほら
)
の
貝
(
かひ
)
253
改心
(
かいしん
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
吹
(
ふ
)
く
法螺
(
ほら
)
の
貝
(
かひ
)
254
(
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旧一・一七
於竜宮館
北村隆光
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