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第二一章 嬉涙(うれしなみだ)〔一四二九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第55巻 真善美愛 午の巻 篇:第4篇 法念舞詩 よみ(新仮名遣い):ほうねんぶし
章:第21章 嬉涙 よみ(新仮名遣い):うれしなみだ 通し章番号:1429
口述日:1923(大正12)年03月05日(旧01月18日) 口述場所:竜宮館 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
左守は仕方なく、万公たち一行を奥の間に招き入れた。万公は、玉置村の三組の新夫婦が新婚旅行がてら玉の宮に参拝し、その帰り道に挨拶に立ち寄ったのだと左守に説明した。
万公がスガールのような庄屋の娘と結婚するはずがないと疑う左守に対して、スガールは万公と確かに結婚したと証言した。
そして、バラモン軍に捕まっていた自分を治国別一行が救出してくれたが、その中でも万公は、実は万公別といって治国別の師匠であり、わざと部下に化けてひょうきんの事を言っているのだと挨拶した。左守はこれを聞いて、自分の見違いの詫びを述べた。
万公は、ダイヤ姫が行方不明になっていることを見通して見せた。そして玉の宮に参拝中エンゼルが降り、ビクトリヤ王の病気はベルツとシエールの怨霊の仕業であり、ダイヤ姫も二人に苦しめられているが、四人の修験者に助けられて無事に戻るだろうとの託宣があったことを伝えた。
万公は、自分が入城したとたんに、ベルツとシエールの怨霊は神徳を恐れてすでに逃げ出したので、ビクトリヤ王もすぐに回復されるだろうと告げた。
左守は万公に感謝を述べたが、ふと、アーシスがどこともなく息子ハルナに似ていることに気が付いて声をかけた。万公は、左守が昔、若気の至りで下女に産ませた息子・モンテスがアーシスであることを明かした。
左守はモンテスを里子に出してしまったことを悔いていたので、親子の再会を喜び二人は涙にむせた。そして万公から、アーシスの妻となったお民が、ビクトリヤ王の落とし子であると聞いて驚いた。
そこへカルナ姫が、ビクトリヤ王の病気が快癒したとの報せをもってやってきた。左守はうれし涙にかきくれて大神に感謝を述べた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2024-06-02 19:18:14 OBC :rm5521
愛善世界社版:271頁 八幡書店版:第10輯 132頁 修補版: 校定版:286頁 普及版:117頁 初版: ページ備考:
001 トマスは(ふたた)応接(おうせつ)()(あら)はれ(きた)り、
002トマス『ヤア、003万公別(まんこうわけ)さまを(はじ)()一同(いちどう)(さま)(そろ)ひの(うへ)どうか左守(さもり)(へや)(まで)()しを(ねが)ひます。004左守(さもり)(さま)大変(たいへん)()心配(しんぱい)(おこ)つて()(ところ)ですからどうか貴方(あなた)(がた)()経歴話(けいれきばなし)でも()かして(いただ)けば幾分(いくぶん)かお()(まぎ)れるでせう。005さア案内(あんない)(いた)しませう。006どうかお()(くだ)さいませ』
007万公(まんこう)『よし、008左守(さもり)(おやぢ)009万公別(まんこうわけ)(やす)()ひやがつたな。010(みな)一緒(いつしよ)()いなんて、011よし、012()つてやらう。013サア案内(あんない)せい、014(みな)さま拙者(せつしや)(つづ)いてお(いで)なさいませ。015三夫婦(みめをと)(そろ)うてビクトリヤ(じやう)(おく)()(まで)016玉置(たまき)(むら)里庄(りせう)息子(むすこ)(とほ)ると()(こと)異数(いすう)(ござ)いますよ。017(これ)()ふのも矢張(やつぱり)万公別(まんこうわけ)余光(よくわう)ですからな』
018()(なが)ら、019トマスの(あと)()いて(なが)廊下(らうか)(くぐ)り、020左守司(さもりのかみ)居間(ゐま)(すす)()つた。021万公(まんこう)左守(さもり)(むか)ひ、
022万公『これはこれは左守(さもり)のキユービツト殿(どの)023(しばら)くお()にかかりませぬ。024吾々(われわれ)三夫婦(みめをと)(そろ)うて新婚(しんこん)旅行(りよかう)出掛(でか)け、025(たま)(みや)への参拝(さんぱい)(かへ)(みち)026一度(いちど)()挨拶(あいさつ)(あが)らないでは()まないと(おも)ひ、027門番(もんばん)がゴテつくのをやつと(くぐ)つて此処(ここ)(まで)(まゐ)りました。028随分(ずいぶん)貴方(あなた)(とし)()りましたねえ。029白髪(しらが)がどつさり()えたぢやありませぬか』
030左守(さもり)『ハハハハハ、031(みな)さま()くお(いで)なさいませ。032(とき)万公(まんこう)さま、033拙者(せつしや)白髪(しらが)二十(にじふ)年前(ねんまへ)から()えて()るのぢや、034(まへ)さま(いま)()がついたか。035そして何処(どこ)奉公(ほうこう)して()るか()らないが、036綺麗(きれい)(むすめ)さまのお(とも)して()るが、037身分(みぶん)相応(さうおう)()(こと)(かんが)へて(いま)(まで)のやうな野心(やしん)()さないやうにしなさい』
038 万公(まんこう)はスガールの(かた)()をかけ、
039万公『ヘヘヘヘヘ。040もし左守(さもり)(さま)041ダイヤ(ひめ)(さま)とはどうで(ござ)いますな。042(わたし)女房(にようばう)は、043マアザツト(この)(とほ)りで(ござ)います』
044左守(さもり)『これこれ万公(まんこう)さま、045(また)してもお(まへ)さまは心得(こころえ)(わる)い。046主人(しゆじん)のお嬢様(ぢやうさま)(つか)まへて女房扱(にようばうあつか)ひをすると()(こと)がありますか。047(ちつ)心得(こころえ)なさい。048
049万公(まんこう)『ヘン、050()みまへんなア、051おいスガール、052左守(さもり)(さま)(うたがひ)()れるやうにお(まへ)から()つて()れ。053本当(ほんたう)(たれ)(かれ)(おれ)(やす)()つて馬鹿(ばか)にして()るからな』
054スガール『左守(さもり)(さま)055(はじ)めてお()(かか)ります。056(わたくし)玉置(たまき)(むら)のテームスが妹娘(いもうとむすめ)スガールと(まを)すもので(ござ)います。057バラモン(ぐん)(とら)へられ猪倉山(ゐのくらやま)岩窟(がんくつ)(くる)しんで()ました(ところ)を、058治国別(はるくにわけ)(さま)一行(いつかう)がお(いで)なさつてお(たす)(くだ)さつたのです。059(なか)にもこの万公(まんこう)さまは(じつ)万公別(まんこうわけ)(さま)(まをし)まして治国別(はるくにわけ)(さま)のお師匠(ししやう)さまですが、060ワザとに部下(ぶか)()けて剽軽(へうきん)(こと)(ばか)()つてお(いで)なさるので(ござ)います。061(わたし)治国別(はるくにわけ)(さま)()媒酌(ばいしやく)によつて万公別(まんこうわけ)宣伝使(せんでんし)夫婦(ふうふ)になり、062(たま)(みや)へお(れい)(まゐ)りましたその(かへ)りがけ、063(をつと)(とも)にお(うかが)ひしました。064何卒(どうぞ)見捨(みす)てなく今後(こんご)はお心易(こころやす)(ねが)ひます。065そして(この)(かた)はシーナさまと(まを)し、066スミエルと()(この)(あね)(をつと)(ござ)います。067一組(ひとくみ)はアーシスさま、068(たみ)さまと(まを)しましてこれも新夫婦(しんふうふ)(ござ)います』
069左守(さもり)『イヤ、070どうも見違(みちが)ひを(いた)して()りました。071万公別(まんこうわけ)宣伝使(せんでんし)さま、072よくマアお(たづ)(くだ)さいました。073(しか)折入(をりい)つてお(ねが)(まをし)()(こと)(ござ)いますが、074()いては(くだ)さいますまいか』
075万公(まんこう)刹帝利(せつていり)(さま)()病気(びやうき)とダイヤ(さま)行衛(ゆくゑ)(わか)らないので()心配(しんぱい)なさつて()るのでせうがな』
076 左守(さもり)(おどろ)いて、
077左守(さもり)『ハイ、078(さつ)しの(とほ)りで(ござ)います。079どうしてマアそんな(こと)がお(わか)りになりましたか』
080万公(まんこう)(なん)()つても三五教(あななひけう)()つての(だい)宣伝使(せんでんし)万公別(まんこうわけ)(ござ)います。081(せん)()先方(むかふ)(こと)でも()うして()つてチヤンと(わか)つて()るのですからなア。082(しか)(なが)(この)(こと)城下(じやうか)一寸(ちよつと)()いて()たのですよ。083アハハハハ、084本当(ほんたう)(こと)()へば薄紙(うすがみ)(かほ)()てて(もの)()(くらゐ)より(わか)りませぬわい』
085左守(さもり)冗談(じようだん)はさておいて、086万公別(まんこうわけ)さま刹帝利(せつていり)(さま)()病気(びやうき)はどうお(かんが)へですか』
087万公(まんこう)『ヤア(じつ)(ところ)(たま)宮様(みやさま)参拝(さんぱい)(いた)祈願(きぐわん)最中(さいちう)隆靖彦(たかやすひこ)088隆光彦(たかてるひこ)()二人(ふたり)のエンゼルが拙者(せつしや)(まへ)(くだ)らせ(たま)ひ、089刹帝利(せつていり)(さま)はベルツ、090シエールの怨霊(をんりやう)(なや)めて()るから(はや)(なんぢ)はホーフスに()り、091(たす)(まを)せ。092さうしてダイヤ(ひめ)(さま)両人(りやうにん)(ため)(くる)しめられお(いのち)(あやふ)(ところ)093()(にん)修験者(しうげんじや)(たす)けられ、094やがてお(かへ)りになるから()心配(しんぱい)なさらぬやう、095()らせ(まを)せ……」との(こと)(ござ)います。096(それ)(ゆゑ)失礼(しつれい)をも(かへり)みず六人(ろくにん)()れでお邪魔(じやま)(いた)したので(ござ)います』
097左守(さもり)成程(なるほど)タルマンの(うかが)ひにも左様(さやう)(こと)(まをし)()りました。098(それ)間違(まちが)ひは(ござ)いますまい。099ああ有難(ありがた)(ござ)いました。100何卒(どうぞ)直様(すぐさま)101()苦労(くらう)(さま)ながら、102刹帝利(せつていり)(さま)()病気(びやうき)平癒(へいゆ)のため()鎮魂(ちんこん)をお(ねが)(まを)(わけ)には(まゐ)りますまいか』
103万公(まんこう)拙者(せつしや)(べつ)刹帝利(せつていり)(さま)のお居間(ゐま)(まゐ)らずとも万公別(まんこうわけ)(この)(しろ)()るや(いな)神徳(しんとく)(おそ)二人(ふたり)怨霊(をんりやう)(くも)(かすみ)()()せました。104やがてニコニコとして此処(ここ)にお(いで)になるでせう。105(また)ダイヤ(ひめ)(さま)修験者(しうげんじや)(おく)られて此処(ここ)へお(かへ)りなさりませうから、106()(ゆつく)落付(おちつ)きなさいませ』
107左守(さもり)『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。108それで一寸(ちよつと)安心(あんしん)(いた)しました。109(とき)にアーシスさまとやら貴方(あなた)はどこともなしに(せがれ)のハルナに()()るやうだが、110貴方(あなた)()(たち)()かして(もら)(こと)出来(でき)ますまいかな』
111アーシス『ハイ』
112()つたきり、113(はや)くも(なみだ)をハラハラと(なが)して()る。
114万公(まんこう)『エエ アーシスさま()(よわ)い、115(なに)()いて()るのだ。116何故(なぜ)堂々(だうだう)とお名乗(なの)りなさらぬか』
117アーシス『ハイ、118それでも(なん)だか()ひかねます』
119万公(まんこう)『モシ左守(さもり)さま、120貴方(あなた)のお()さまと()ふのはハルナさま(ただ)一人(ひとり)ですか』
121左守(さもり)『ハイ、122まアまア一人(ひとり)(ござ)います』
123万公(まんこう)『まアまア一人(ひとり)とは、124チツと瞹昧(あいまい)ぢやありませぬか。125奥様(おくさま)()(ぬす)んで、126下女(げぢよ)部屋(へや)へ○○して(はら)(ふく)らせた(こと)はありませぬか』
127左守(さもり)『ハイ何分(なにぶん)(わか)(とき)にはいろいろの不仕鱈(ふしだら)(こと)(ござ)いました。128(あま)(はづ)かしうてお(はなし)出来(でき)ませぬ』
129万公(まんこう)『もし貴方(あなた)落胤(おとしだね)(いま)無事(ぶじ)()きて()られたら貴方(あなた)(よろこ)んで面会(めんくわい)しますか。130イヤ親子(おやこ)名乗(なの)りをしますか。131先決(せんけつ)問題(もんだい)として()いて()きたいものです』
132左守(さもり)女房(にようばう)には死別(しにわか)れ、133(この)(とほ)(とし)()り、134一人(ひとり)(せがれ)のハルナに女房(にようばう)をもたせ、135(いま)では一寸(ちよつと)一安心(ひとあんしん)したものの、136ハルナの(あに)(あた)る、137モンテスと()(せがれ)があつた(はず)(ござ)います。138世間(せけん)手前(てまへ)139(ある)田舎(いなか)(かね)をつけて()にやつた(ところ)140不幸(ふかう)(せがれ)両親(りやうしん)()くなり、141何処(どこ)()つたか(わか)らぬと()(うはさ)()いて()りますが、142(いま)となつて(おも)へば(じつ)残念(ざんねん)(こと)をしました。143()(とし)()つて何時(いつ)天国参(てんごくまゐ)りをするか(わか)らぬ()(うへ)144せめて生前(せいぜん)一度(いちど)(その)(せがれ)()()いと(かみ)(さま)(ねん)じて()ります。145どうか貴方(あなた)()神力(しんりき)(せがれ)所在(ありか)()(いただ)(わけ)には(まゐ)りますまいかなア』
146鼻汁(はな)(すす)りながらグタリと(しほ)れる。
147万公(まんこう)『もし左守(さもり)さま、148貴方(あなた)()賢息(けんそく)モンテス(さま)立派(りつぱ)(おく)さまを()つて、149立派(りつぱ)(くら)して()られますよ。150その(また)(おく)さまが一通(ひととほ)りの(ひと)ではありませぬ。151提灯(ちやうちん)釣鐘(つりがね)」と()ふやうな、152身分(みぶん)から()へば懸隔(けんかく)のある()夫婦(ふうふ)(ござ)います』
153左守(さもり)(なに)154(せがれ)立派(りつぱ)(くら)して()りますか、155それは有難(ありがた)(こと)(ござ)います。156さうして何処(どこ)()りますかな』
157万公(まんこう)『ハイ只今(ただいま)所在(ありか)はビクの(くに)158ビクトリヤ城内(じやうない)159左守(さもり)室内(しつない)に、160(たみ)(かた)()奥様(おくさま)万公別(まんこうわけ)(したが)ひお(いで)になつて()ります。161それ、162このお(かた)ですよ』
163とアーシスを(ゆび)ざす。164左守(さもり)はアーシスの(かほ)熟視(じゆくし)(なが)ら、
165左守『アーお(まへ)(せがれ)であつたか。166どこともなしにハルナに()()ると(おも)うて最前(さいぜん)から不審(ふしん)(いだ)いて()たのだ。167まア無事(ぶじ)()てくれたか。168さうしてお(まへ)(よめ)()ふのはどのお(かた)か』
169アーシス『アアお(とう)さまで(ござ)いましたか。170何卒(どうぞ)一度(いちど)()(かか)()いと、171()ても()めても(わす)れる(ひま)(ござ)いませなんだ。172されど(いや)しき首陀(しゆだ)()ちて()()(うへ)173到底(たうてい)(たふと)左守(さもり)(さま)()面会(めんくわい)(かな)ふまいと(あきら)めて()りました』
174男泣(をとこなき)()く。175左守(さもり)両眼(りやうがん)(そで)()て、176夕立(ゆふだち)(ごと)(なみだ)(ぬぐ)ひながら(うれ)しさ(あま)つて一言(ひとこと)(はつ)()ず、177アーシスの身体(からだ)()きつき嘘唏泣(しやくりな)きして()る。
178 お(たみ)両人(りやうにん)(せな)両手(りやうて)()でながら、
179(たみ)『お(とう)さま、180旦那(だんな)(さま)181何卒(どうぞ)(いさぎ)ようして(くだ)さいませ。182(わたくし)(まで)(かな)しくなりますからな』
183左守(さもり)『アーお(まへ)(せがれ)(よめ)であつたか、184()()()れた。185まアまア綺麗(きれい)(をんな)だな。186(せがれ)(さぞ)(よろこ)んで()るだらう。187(わし)(うれ)しい……』
188(また)もや両眼(りやうがん)(なみだ)(たた)へて()きじやくる。
189万公(まんこう)『エー()つともない、190チツと(しつか)りなさいませ。191万公(まんこう)(まで)(かな)しくなつて()ました。192もしもし左守(さもり)さま、193(この)(たみ)さまは誰人(どなた)(むすめ)だと(かんが)へて()なさるか。194勿体(もつたい)なくも刹帝利(せつていり)(さま)落胤(おとしご)玉手姫(たまてひめ)(さま)(ござ)いますぞ。195チヌの(むら)卓助(たくすけ)(うち)へお(くだ)しになつた王女(わうぢよ)(さま)で、196(いま)はお(たみ)名乗(なの)つて()られます』
197 左守(さもり)はこれを()くより(おどろ)いて五足(いつあし)六足(むあし)退(しりぞ)き、198両手(りやうて)をつかへ(たたみ)(かしら)()げ、
199左守『ハハア貴女(あなた)(さま)王女(わうぢよ)(さま)(ござ)いましたか。200(ぞん)ぜぬ(こと)とて()無礼(ぶれい)(いた)しました。201ああ勿体(もつたい)ない。202(いや)しき吾々(われわれ)(せがれ)女房(にようばう)とおなり(くだ)され、203冥加(みやうが)()きはせぬかと心配(しんぱい)(ござ)います。204何卒(どうぞ)(ゆる)(くだ)さいませ』
205(たみ)『お(とう)さま、206(なに)仰有(おつしや)います。207そんな(こと)()うて(くだ)さると(わたくし)(くる)しう(ござ)います。208何卒(どうぞ)209「お(たみ)(たみ)」と()()けにして(くだ)さいませ』
210万公(まんこう)『サアサア親子(おやこ)名乗(なのり)()んだ(うへ)(なみだ)禁物(きんもつ)だ、211()つと(うた)でも(うた)ひませう』
212 ()()(ところ)へ、213カルナ(ひめ)(ふすま)をそつと()(ひら)叮嚀(ていねい)辞儀(じぎ)をしながら、
214カルナ姫『お客様(きやくさま)215よくお(いで)(くだ)さいました。216何卒(どうぞ)御悠(ごゆつく)りと()休息(きうそく)(ねが)ひます。217(とき)にお父上(ちちうへ)(さま)218刹帝利(せつていり)(さま)(にはか)()気分(きぶん)がよくなり、219()元気(げんき)におなりなさいました。220左守(さもり)心配(しんぱい)して()るだらうから、221(はや)()らせて()い」との(きみ)(おほ)せ、222何卒(どうぞ)(よろこ)(くだ)さいませ』
223左守(さもり)(なに)224刹帝利(せつていり)(さま)()病気(びやうき)()快癒(くわいゆ)なされたとな。225ああ有難(ありがた)有難(ありがた)い、226これと()ふのも(まつた)三五教(あななひけう)(かみ)(さま)()守護(しゆご)227ああ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)228惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
229(うれ)(なみだ)(また)()(くも)る、230カルナは早々(さうさう)(この)()()()刹帝利(せつていり)居間(ゐま)(いそ)愛善世界社版では「ぐ」になっているが御校正本では「ぎ」()く。
231大正一二・三・五 旧一・一八 於竜宮館 加藤明子録)
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