霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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巻頭言(くわんとうげん)

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻 篇:前付 よみ(新仮名遣い):
章:巻頭言 よみ(新仮名遣い):かんとうげん 通し章番号:
口述日:1924(大正13)年01月22日(旧12月17日) 口述場所:伊予 山口氏邸 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1927(昭和2)年10月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
曰く、天運循環した甲子の年に、葦原の瑞穂国(全地球)のどこかに、一大聖人が現れてもおかしくはない。
そのような聖人でなければ無明暗黒の今日の世界を救うことは到底できないであろう。
そこで、自分は排他主義を廃し、米国バハイ教、支那朝鮮の宗教と提携し、現代世界を救うべき宗教家を探しつつあるのが、今日の活動である(大正十三年一月十五日)。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm690001
愛善世界社版:3頁 八幡書店版:第12輯 263頁 修補版: 校定版:3頁 普及版: 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]出口王仁三郎全集 > 第二巻 宗教・教育編 > 【宗教編】第一篇 既成宗教 > 第十章 吾人の現代観
001 吾々(われわれ)現代(げんだい)(おい)(もつと)(むし)()かない(きら)ひな(もの)沢山(たくさん)にある。002()第一(だいいち)借金取(しやくきんとり)()催促(さいそく)003(つぎ)絹足袋(きぬたび)をはいて(ある)きまはる商店(しやうてん)丁稚(でつち)004()つたか(ぶり)をして英語(えいご)(まじ)りの会話(くわいわ)をやる(やつ)005(ばば)アの眉毛(まゆげ)(つく)りに、006ハイカラ青年(せいねん)(あか)いネクタイ、007白頭爺(はくとうぢい)鍋墨顔(なべずみがほ)008女学生(ぢよがくせい)巻煙草(まきたばこ)009風呂(ふろ)(なか)葱節(ねぶかぶし)010眼鏡(めがね)()しに(ひか)つた()をして(ひと)(つら)(した)から(うへ)(のぞ)くやうに見上(みあ)げる(やつ)011可笑(をか)しくもないのに、012幇間(ほうかん)(てき)追従(つゐしよう)(わらひ)をする(やつ)013箱根(はこね)()えずの江戸(えど)()(もち)ゐる(やつ)014(へう)(きつね)(かは)首巻(くびまき)をする(をんな)(とう)015(かず)(かぎ)りもなく(きら)ひな(もの)がある(なか)に、016(もつと)(むし)()かぬのは、017現代(げんだい)政治家(せいぢか)018宗教家(しうけうか)(とな)ふる(ところ)信教(しんけう)自由(じいう)壅塞(ようそく)する時代(じだい)(おく)れの宗教(しうけう)法案(はふあん)(とう)である。019因循(いんじゆん)姑息(こそく)時代(じだい)錯誤(さくご)と、020頑迷(ぐわんめい)無智(むち)不親切(ふしんせつ)と、021偽善(ぎぜん)生活(せいくわつ)022厚顔(こうがん)無恥(むち)023没常識(ぼつじやうしき)(とう)(もつ)()たされた連中(れんちう)が、024万世(ばんせい)一系(いつけい)天壤(てんじやう)無窮(むきう)神国(しんこく)国政(こくせい)料理(れうり)しようとするのだからたまらない。025憲政(けんせい)逆転(ぎやくてん)時代(じだい)錯誤(さくご)か、026時勢(じせい)要求(えうきう)()らないが、027今日(こんにち)清浦(きようら)内閣(ないかく)顔触(かほぶれ)()ると、028田舎(いなか)(まち)はづれの(はう)にありさうな八百屋(やほや)(みせ)の、029()からびた南瓜(かぼちや)胡瓜(きうり)大根(だいこん)(かぶら)(やう)な、030到底(たうてい)中流(ちうりう)家庭(かてい)料理(れうり)にも(てき)せない、031(あぢ)(わる)歯切(はぎ)れのしない難物(なんぶつ)(ばかり)である。032乍併(しかしながら)吾々(われわれ)政治家(せいぢか)でないから、033(かへつ)てかう()内閣(ないかく)出来(でき)たのが時代(じだい)相応(さうおう)してゐるのかも()れない。034(あるひ)天意(てんい)であるかも(わか)らない。035政治(せいぢ)圏外(けんぐわい)()(われ)(ただ)表面(へうめん)から()(だけ)(こと)()(まで)だ。036それよりも(この)時代(じだい)(あた)つて精神(せいしん)(てき)文明(ぶんめい)皷吹(こすゐ)し、037国民(こくみん)信仰(しんかう)中心(ちうしん)とならねばならぬ宗教家(しうけうか)現状(げんじやう)()ると、038これ(また)()()れて(みち)(いよいよ)(とほ)しの(かん)()たれざるを()ないのである。039排他(はいた)猜疑(さいぎ)身勝手(みがつて)040自己愛(じこあい)嫉妬(しつと)より(ほか)()らない円頂(ゑんちやう)緇衣(しえ)()041アーメンの先生(せんせい)(たち)(なに)をしてゐるのであらうか。042普選案(ふせんあん)通過(つうくわ)するとか、043即行(そくかう)されるとかいふ(うはさ)()きかじつて、044仏教家(ぶつけうか)牧師(ぼくし)(れん)神職(しんしよく)教育家(けういくか)も、045全部(ぜんぶ)()(つばき)して、046逐鹿(ちくろく)場裡(ぢやうり)()つて()ようとする形勢(けいせい)仄見(ほのみ)えてゐるやうだ。047僧侶(そうりよ)牧師(ぼくし)などは(とく)政治(せいぢ)以外(いぐわい)超然(てうぜん)として神仏(しんぶつ)(をしへ)()き、048国民(こくみん)教化(けうくわ)してこそ宗教家(しうけうか)権威(けんゐ)(たも)たれるのでないか。049()(あやま)つて宗教家(しうけうか)薬鑵頭(やくわんあたま)湯気(ゆげ)()て、050捩鉢巻(ねぢはちまき)選挙(せんきよ)場裡(ぢやうり)()つやうなことがありとすれば、051それこそ信仰(しんかう)(じやう)大問題(だいもんだい)である。052壇家(だんか)嫉視(しつし)反目(はんもく)し、053信者(しんじや)(たう)(つく)り、054宗教家(しうけうか)敵視(てきし)する(やう)になり、055信仰(しんかう)中心(ちうしん)人物(じんぶつ)(うしな)つて(しま)ふ。056さうすれば(したが)つて神仏(しんぶつ)権威(けんゐ)失墜(しつつゐ)し、057信仰(しんかう)中心(ちうしん)058思想(しさう)真柱(まばしら)(うしな)道理(だうり)だ。059吾人(ごじん)(おも)ふ、060仮令(たとへ)普選案(ふせんあん)通過(つうくわ)し、061宗教家(しうけうか)教育家(けういくか)()選挙権(せんきよけん)(あた)へられたにしても、062かかる俗界(ぞくかい)仕事(しごと)俗人輩(ぞくじんばら)(まか)して、063超然(てうぜん)(てき)態度(たいど)()つて()しいものだ。064乍併(しかしながら)(ひるがへ)つて宗教界(しうけうかい)裏面(りめん)(かんが)へて()れば、065超人間(てうにんげん)(てき)宗教家(しうけうか)(かね)草鞋(わらぢ)日本(にほん)全国(ぜんこく)(さが)しても、066滅多(めつた)(あり)(さう)にもない。067種々(しゆじゆ)悪思想(あくしさう)洪水(こうずい)氾濫(はんらん)して、068ヒマラヤ山上(さんじやう)(ひた)さむとする今日(こんにち)場合(ばあひ)069釈迦(しやか)070キリスト、071マホメット、072孔子(こうし)老子(らうし)073(せう)にしては空海(くうかい)074日蓮(にちれん)075親鸞(しんらん)076法然(ほふねん)(その)()高僧(かうそう)知識(ちしき)()ばれる連中(れんちう)(ひと)つに(まる)め、077団子(だんご)にして()(やう)宗教界(しうけうかい)偉人(ゐじん)(あら)はれて()なくては、078到底(たうてい)(この)人心(じんしん)悪化(あくくわ)(すく)(こと)出来(でき)ぬであらう。079吾人(ごじん)数十(すうじふ)年間(ねんかん)(かく)宗教家(しうけうか)(あさ)つて、080超人間(てうにんげん)(てき)人物(じんぶつ)(さが)して()たが、081寡聞(くわぶん)寡見(くわけん)吾々(われわれ)には到底(たうてい)(もと)むる(こと)()なかつた。082そこで、083信仰(しんかう)国境(こくきやう)はないといふ(てん)から084米国(べいこく)のバハイ(けう)研究(けんきう)し、085朝鮮(てうせん)支那(しな)新宗教(しんしうけう)研究(けんきう)して、086(この)現代(げんだい)世界(せかい)(すく)ふべき(しん)宗教家(しうけうか)はないかと(さが)しつつあるのだ。087腐敗(ふはい)堕落(だらく)矛盾(むじゆん)とに()たされた現代(げんだい)暗黒(あんこく)社会(しやくわい)には、088到底(たうてい)(だい)宗教家(しうけうか)089(だい)理想家(りさうか)(あら)はれ(さう)にもない。090乍併(しかしながら)どつかの山奥(やまおく)には、091天運(てんうん)循環(じゆんくわん)神律(しんりつ)によつて(いち)(にん)半人(はんにん)(ぐらゐ)(あら)はれて()りさうなものだ。092今年(ことし)甲子(きのえね)更始(かうし)(とし)である。093(この)葦原(あしはら)瑞穂国(みづほのくに)全地球(ぜんちきう))のどつかには、094一大(いちだい)聖人(せいじん)(あら)はれるか、095(また)太陽(たいやう)096大地(たいち)097太陰(たいいん)串団子(くしだんご)となし、098(ほし)胡麻(ごま)をかけて()ふやうな大豪傑(だいがうけつ)(あら)はれて()さうなものだと(おも)ふ。099さうでなくては到底(たうてい)(この)無明(むみやう)暗黒(あんこく)世界(せかい)(すく)(こと)出来(でき)ないと(おも)ふ。100吾人(ごじん)本年(ほんねん)甲子(きのえね)よりここ数年(すうねん)(あひだ)(おい)て、101(たしか)斯世(このよ)天国(てんごく)浄土(じやうど)進展(しんてん)せしむべき一大(いちだい)偉人(ゐじん)出現(しゆつげん)することを(かた)(しん)じ、102神仏(しんぶつ)(ねん)じて、103()つてゐるのである。104吾人(ごじん)前陳(ぜんちん)理由(りいう)()つて、105バハイ(けう)提携(ていけい)し、106(あるひ)支那(しな)朝鮮(てうせん)新進(しんしん)宗教(しうけう)握手(あくしゆ)したのも、107(けつ)して現代(げんだい)宗教家(しうけうか)(ごと)自教(じけう)拡張(くわくちやう)せむ(ため)でもなく、108(ただ)(たん)(わが)国家(こくか)前途(ぜんと)(うれ)へ、109世界(せかい)平和(へいわ)人類愛(じんるゐあい)(ため)(つく)さむとする真心(まごころ)(ほか)ならぬのである。110惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
111   大正十三年一月十五日(旧十二年十二月十日)
 
112   ○(つき)(なげ)かひ
 
113 (われ)(さび)しき(ふゆ)(つき)
114 下界(げかい)(なが)大空(おほぞら)
115 (なみだ)(かほ)(くも)らして
116 (ひと)(ふる)へる悲惨(ひさん)さよ
117 (はま)真砂(まさご)(ほし)(かず)
118 銀河(ぎんが)(きし)につどへども
119 (われ)まつ(ほし)(ひと)つだになし
120 いづれの(ほし)もことごとく
121 (つき)()()(たの)しむか
122
123 (われ)(さび)しき(ふゆ)(つき)
124 (なみだ)かくして大空(おほぞら)
125 (ひと)(ふる)へる悲惨(ひさん)さよ
126 大地(たいち)一面(いちめん)(くさ)()
127 (こずゑ)(あまね)くおく(しも)
128 (つめた)宿(やど)(もと)めつつ
129 千々(ちぢ)(こころ)(くだ)くかな
130
131 (われ)(さび)しき(ふゆ)(つき)
132 御空(みそら)(たか)()(ふる)
133 下界(げかい)(はるか)見渡(みわた)せば
134 (わが)宿(やど)るべき池水(いけみづ)
135 (ゆき)(こほり)(とざ)されて
136 (うつ)(すべ)なき悲惨(ひさん)さよ
 
137   ○杜鵑(ほととぎす)
 
138 (われ)深山(みやま)杜鵑(ほととぎす)
139 ()りみ()らずみ五月(さつき)(そら)
140 さまよひながら(こゑ)()らし
141 (とも)(もと)めて()(さけ)
142 あゝうらめしや()(つき)
143 (ふか)(つつ)みし天津空(あまつそら)
144
145 (われ)深山(みやま)杜鵑(ほととぎす)
146 八千八(はつせんや)(こゑ)()(くら)
147 ()()(おも)ひの最後(さいご)(こゑ)
148 (つき)がないたと()はれてる
149 ほんに(せつ)ない(わが)(おも)
 
150   ○第十八(だいじふはち)宇和島(うわじま)(まる)
151(ふね)(いま)神港(しんかう)波止場(はとば)()でむとし
152(をし)見送(みおく)八人(やたり)乙女(をとめ)()
153艶人(あでびと)波止場(はとば)()ちて()比礼(ひれ)
154(なみだ)にしめる(かぜ)のさやれる。
155甲板(かんばん)()ちて波止場(はとば)()えぬまで
156首巻(くびまき)()りて(わか)れを(をし)む。
157(なみ)(おと)(ふね)(ひび)きもおだやかに
158(すべ)()くなり瀬戸(せと)内海(うちうみ)
159キラキラと夕日(ゆふひ)()ゆる(なみ)()
160(こころ)(しづ)かに(すす)(たの)しさ。
161皇神(すめかみ)(ふか)きめぐみは瀬戸(せと)(うみ)
162(なみ)()今日(けふ)(うる)はしきかな。
163(むらさき)(なみ)(なか)より()()でて
164永久(とは)(しづ)けき淡路(あはぢ)島山(しまやま)
165夕日影(ゆふひかげ)(なみ)()らして明石潟(あかしがた)
166()()汽車(きしや)(かげ)(ゆか)しさ。
167東路(あづまぢ)(つち)のさわぎを余所(よそ)にして
168(しづ)かに(うか)ぶあはぢ島山(しまやま)
169()(なみ)宇和島(うわじま)(まる)()をあづけ
170(こころ)うきうき(すす)今日(けふ)かな。
171(まど)()けて(ふね)外面(そとも)(なが)むれば
172胡蝶(こてふ)(ごと)白帆(しらほ)(ただ)よふ。
173淡路島(あはぢしま)()べば(こた)ふる(ばか)りなる
174磯辺(いそべ)をかすりて(ふね)()くなり。
175天地(あめつち)(なみ)(しづ)けき(ふね)()
176いとさわがしく八重(やへ)子鳥(ことり)()く。
177()(ひと)(おく)()たりし神戸港(かうべかう)
178(とほ)くかすみぬ(こころ)(さび)しも。
179()(わた)(なみ)のあなたに(さび)しくも
180ひとり(うか)べる(ひと)松島(まつしま)
181牛嶋(うしじま)(かげ)()()りて(わが)(むね)
182いとどかなしく()りまさり()く。
183ためしなき(しづ)けき(うみ)(うか)びつつ
184()ぎし(むかし)(おも)ひうかぶる。
185九年(ここのとせ)(まへ)(ひら)きし神島(かみじま)
186(むかし)ながらに(わが)()(おい)ぬる。
187瀬戸(せと)(うみ)(くま)なく()れて(かもめ)()
188(なみ)はてるてる(ふね)()()く。
189甲板(かんばん)(たち)()海原(うなばら)見渡(みわた)せば
190魚鱗(ぎよりん)(なみ)夕日(ゆふひ)(かがや)く。
191(つね)になき波路(なみぢ)()けど甲板(かんばん)
192やはり(つめ)たき(かぜ)()()る。
193八重(やへ)(なみ)おしわけ(すす)むこの(ふね)
194如何(いか)なる(ひと)(つく)りしなるらむ。
195(しち)(にん)男子(をのこ)女子(をみな)一行(いつかう)
196(とも)にのり()(かみ)方舟(はこぶね)
197(なみ)(おと)(ふね)のどよめき余所(よそ)にして
198()(わた)るかな蓄音器(ちくおんき)(こゑ)
199十二夜(じふにや)(つき)(ひかり)()びながら
200浮世(うきよ)瀬戸(せと)(うみ)(わた)るかな。
201(ふゆ)()(さむ)さも()らぬ船室(せんしつ)
202一夜(いちや)(おく)りぬ瀬戸(せと)海原(うなばら)
203()るるかと(かね)(おも)ひし(なみ)(うへ)
204いとも(しづ)かに()ゆる内海(うちうみ)
205蓄音器(ちくおんき)()りを(しづ)めてあとしばし
206(なみ)(はなし)()()(かた)る。
207十二夜(じふにや)(つき)波間(なみま)(くだ)けつつ
208火竜(くわりう)となりて海原(うなばら)(をど)る。
209(つき)(さむ)御空(みそら)にふるひをののきて
210(ほし)のまたたき(きよ)海原(うなばら)
211十二(じふに)(ぐわつ)十二(じふに)月影(つきかげ)()びながら
212(みづ)御魂(みたま)初渡航(はつとかう)する。
213十二(じふに)(ぐわつ)十二(じふに)(そら)瀬戸(せと)(うみ)
214()()火伏(ひぶ)(みづ)大神(おほかみ)
215たまさかの(ふね)旅路(たびぢ)(そら)()れて
216()ちもさわがぬ瀬戸海(せとうみ)(なみ)
217(そら)はれて銀波(ぎんぱ)ただよふ瀬戸(せと)(うみ)
218のり()くわれぞ(たの)しかりけり。
219煙突(えんとつ)黒煙(こくえん)(そら)蜒々(えんえん)
220(かぜ)()()(りう)(ごと)くに。
221(わが)(ふね)黒煙(こくえん)(そら)をかすめつつ
222(つき)のおもてを(つつ)みつつ()く。
223(ひと)(ぼし)(なみ)()(ちか)くまたたきて
224(つき)をも()たで(しづ)まむとぞする。
225西(にし)()(つき)()はむとや(わが)(ふね)
226(なみ)蹴立(けた)ててひた(はし)()く。
227われ一人(ひとり)(ただ)われ一人(ひとり)(さむ)()
228宿(やど)立出(たちい)(つき)(なげ)きぬ。
229(つき)(ひと)御空(みそら)にふるひ()一人(ひとり)
230(とも)なくふるふ(われ)ぞわびしき。
231(そら)(つき)(なに)をふるふか(みづ)(つき)
232(いま)海上(かいじやう)にあり(ちか)(かた)りね。
233(つき)(きよ)大空(おほぞら)(さむ)(ほし)()れし
234波路(なみぢ)(すべ)(ふね)長閑(のどか)さ。
235()もすがら(つき)(とも)とし甲板(かんばん)
236()ちつつ(ふか)(おも)ひに(しづ)む。
237灯台(とうだい)(ひかり)目当(めあ)てに(すす)()
238宇和島(うわじま)(まる)(いさ)ましきかな。
239(しま)(かげ)(なみ)のまにまに()()でて
240(しづ)けき(よる)(さび)しく(おく)る。
241(ふた)()島影(しまかげ)()えて(うみ)(おと)
242一入(ひとしほ)(たか)()(ひび)きつつ。
243(なみ)(おと)いと高々(たかだか)(きこ)えけり
244磯辺(いそべ)(ふね)近附(ちかづ)きしならむ。
245あどけなき小娘(こむすめ)(とも)(ふね)(たび)
246いとさわがしく海原(うなばら)すすむ。
247()(ひと)()をとり(さむ)甲板(かんばん)
248()ちて御空(みそら)(つき)(しの)ばゆ。
249(つき)()れる甲板(でつき)(うへ)()二人(ふたり)
250(しづ)かに()てば(かもめ)()くなり。
251(わか)やぎて(むかし)(われ)(かへ)りつつ
252月下(げつか)甲板(でつき)二人(ふたり)たたずむ。
253よき(ひと)二人(ふたり)甲板(でつき)にたたずめば
254(おき)のかもめが千代(ちよ)々々(ちよ)()く。
255(つき)(ひと)(わが)(ふね)(ひと)甲板(かんばん)
256二人(ふたり)たたずみ(かぜ)()びたり。
257(わが)(とも)のいねたるすきに起出(おきい)でて
258意中(いちう)(つき)甲板(かんばん)()つ。
259小夜(さよ)()けてかもめの(こゑ)(しづ)まりぬ
260()れどさやぎぬ意中(いちう)(つき)に。
261アヽぬくいぬくいと(まど)にかけよつて
262硝子(がらす)なめつつビスケット()ふ。
263一等室(いつとうしつ)(わが)一行(いつかう)(まぢは)りて
264狸老爺(たぬきおやぢ)(ただ)一人(ひとり)()る。
265この(やう)(ひく)(ところ)電燈(でんとう)
266あるかと()れば(はげ)チヤンの天窓(あたま)
267汽笛(きてき)()いと高松(たかまつ)につきにけり
268(とき)しも(すで)午後(ごご)()()(まへ)
269甲板(かんばん)(ひと)足音(あしおと)しげくなりて
270仲仕(なかし)(こゑ)高松港(たかまつかう)(ない)
271クナビーノ相手(あひて)となして相撲(すまう)()れば
272(あま)(ちから)()れどころ()し。
273瀬戸(せと)(うみ)黄金(こがね)(なみ)をかきわけて
274(たから)(ふね)をやるぞ(たの)しき。
275小舟(こぶね)二隻(にせき)またたく(うち)(くつが)へし
276一伏(いつぷく)したる瀬戸(せと)荒浪(あらなみ)
277(わが)のれる(ふね)多度津(たどつ)(はま)(ちか)
278なりて一入(ひとしほ)波音(なみおと)たかし。
279昨日(きのふ)より(はれ)(わた)りたる(みなと)さへ
280矢張(やはり)世人(よびと)今治(いまはる)()ふ。
281   ○伊予(いよ)高浜(たかはま)上陸(じやうりく)
282(わが)のれる宇和島(うわじま)(まる)午前(ごぜん)七時半(しちじはん)
283無事(ぶじ)高浜(たかはま)月汐(つきしほ)(そら)
284信徒(まめひと)誠心(まごころ)こめて(むか)へたる
285波止場(はとば)景色(けしき)いとど(にぎ)はし。
286   ○松山城(まつやまじやう)
287松山城(まつやまじやう)(やま)()()にそそり()
288(われ)()(がほ)()ゆるおもほゆ。
289(きみ)()のいづの(さか)えを松山(まつやま)
290(そら)にそびゆる天守閣(てんしゆかく)あはれ。
291   ○道後(だうご)公園(こうゑん)
292(めづ)らしき岩石(がんせき)樹木(じゆもく)おき(なら)
293(きよ)(きづ)ける(うづ)公園(こうゑん)
294松山(まつやま)金亀(きんき)(しろ)背景(はいけい)
295(ひろ)(つく)れる道後(だうご)公園(こうゑん)
296山水(さんすい)(すゐ)をあつめし道後(みちしり)
297(うづ)公園(こうゑん)()るもさやけき。
298   ○道後(だうご)温泉(をんせん)
299久方(ひさかた)天津(あまつ)()御子(みこ)天降(あも)りまして
300(いこ)はせ(たま)ひし(うづ)御室(みや)かな。
301艶人(あでびと)浮世(うきよ)(きぬ)()()てて
302赤裸々(せきらら)となり霊肉(れいにく)(あら)ふ。
303神霊(しんれい)()にひたりつつ信徒(まめひと)
304(たの)しく(あそ)道後(だうご)公園(こうゑん)
305()(しづ)七度(ななたび)八度(やたび)のり()えて
306(はだか)大丈夫(ますらを)神霊(しんれい)(あら)ふ。
307(かみ)()霊湯(たまゆ)(ふだ)()りひさぐ
308(これ)(やかた)(うる)はしきかな。
309天地(あめつち)(かみ)(めぐ)みの()とふかき
310(みち)(しり)なる(かみ)()()る。
311
312たちまちに()(にん)記者(きしや)(とり)まかれ
313おもはず(つひ)やす(うづ)のタイムを。
314数十(すうじふ)(にん)(うづ)のまめ(ひと)あつまりて
315いと(あた)らしく(かた)()ふかな。
316洋服(やうふく)和装(わさう)記者(きしや)(おとづ)れて
317和洋(わやう)折衷(せつちう)談話(だんわ)(かは)しつ。
318(をか)()にいらかも(たか)くかがやきて
319道後(だうご)見下(みお)ろす阿房宮(あはうきう)かな。
320(また)しても二人(ふたり)記者(きしや)(おと)づれて
321(わが)スタイルを(あや)しげに()る。
322()(やま)(はる)めき()めて湯煙(ゆけむり)
323いと(ゆる)やかに()(のぼ)りつつ。
324(ふゆ)ながら(はる)景色(けしき)(ただよ)へる
325道後(だうご)(はな)城山(しろやま)公園(こうゑん)
326一生(いつしやう)(ねがひ)(かな)ふて和田(わだ)(はら)
327()りこえ()にし道後(だうご)温泉(をんせん)
328室外(しつぐわい)(はる)(ひか)りの()えながら
329(まど)(ひら)けば冷風(ひやかぜ)(きた)る。
330(わが)姿(すがた)カメラに()りて夕刊(ゆふかん)
331紙面(しめん)(はや)くも()ちにけるかな。
332写真班(しやしんはん)道後(だうご)ホテルに(たづ)()
333カメラに(われ)(をさ)(かへ)りぬ。
334感想(かんさう)如何(いかん)予言(よげん)はいかにぞと
335五月蠅(うるさ)打出(うちだ)記者(きしや)言霊(ことたま)
336宇宙間(うちうかん)(おそ)るるものは()けれども
337(かみ)(まこと)(みち)(おそ)るる。
338排他(はいた)(てき)既成(きせい)宗教(しうけう)はあとにして
339(ひら)()かなむ(うみ)(そと)まで。
340自然愛(しぜんあい)自己愛(じこあい)而已(のみ)現代(げんだい)
341(なに)(かた)るも()(ひと)()し。
342敗残(はいざん)大本(おほもと)なりと見縊(みくび)りて
343()()記者(きしや)のけげん(がほ)かな。
344()(つき)権威(けんゐ)(かさな)大本(おほもと)
345誤解(ごかい)してゐる記者(きしや)可笑(をか)しさ。
346(ぎよう)(しん)(ちよ)(しよ)(ちよう)(くわい)(くわん)(だう)
347(せい)(こう)()(どく)
348凝神(ぎようしん)著書(ちよしよ)澄懐(ちようくわい)観道(くわんだう)(とこ)()
349掛軸(かけぢく)(われ)(ふさ)はしくおもふ。
350大小(だいせう)島々(しまじま)あまた(ただ)よへる
351瀬戸(せと)のながめは天津(あまつ)神国(かみくに)
352常磐木(ときはぎ)(しげ)()ひたる浮島(うきじま)
353胡蝶(こてふ)(ごと)信天翁(あはうどり)()ぶ。
354真帆(まほ)片帆(かたほ)()()(さま)天国(てんごく)
355(うづ)景色(けしき)(しの)ばるるかな。
356(とし)十二(じふに)(つき)また十二(じふに)()十二(じふに)
357(あは)せて三六(みろく)今日(けふ)(ふな)()で。
358   大正十二年旧暦十二月十三日 於道後ホテル三階 瑞月誌
絶賛発売中『超訳霊界物語2/出口王仁三郎の「身魂磨き」実践書/一人旅するスサノオの宣伝使たち』
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