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第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
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第69巻(申の巻)
巻頭言
第1篇 清風涼雨
01 大評定
〔1746〕
02 老断
〔1747〕
03 喬育
〔1748〕
04 国の光
〔1749〕
05 性明
〔1750〕
06 背水会
〔1751〕
第2篇 愛国の至情
07 聖子
〔1752〕
08 春乃愛
〔1753〕
09 迎酒
〔1754〕
10 宣両
〔1755〕
11 気転使
〔1756〕
12 悪原眠衆
〔1757〕
第3篇 神柱国礎
13 国別
〔1758〕
14 暗枕
〔1759〕
15 四天王
〔1760〕
16 波動
〔1761〕
第4篇 新政復興
17 琴玉
〔1762〕
18 老狽
〔1763〕
19 老水
〔1764〕
20 声援
〔1765〕
21 貴遇
〔1766〕
22 有終
〔1767〕
余白歌
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第一四章
暗枕
(
やみまくら
)
〔一七五九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻
篇:
第3篇 神柱国礎
よみ(新仮名遣い):
しんちゅうこくそ
章:
第14章 暗枕
よみ(新仮名遣い):
やみまくら
通し章番号:
1759
口述日:
1924(大正13)年01月24日(旧12月19日)
口述場所:
伊予 山口氏邸
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1927(昭和2)年10月26日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
霧や大雨、大風に悩まされる中、国照別と浅公は互いに弱音を吐いたりからかったり強がったり、面白いやり取りを交わしている。
すると、怪しい口笛のような声が聞こえてくる。浅公はてっきり魔神の出現とおびえ出す。
実は梢を渡る風の音であった。国照別は風だとわかっていたが、面白半分に浅公をからかっている。
国照別は、浅公に言う。『魔神は退却したけれど、浅公がうまいものを沢山食って脂がのったら、またやって来て食おうと言っていたよ。だからこれからの道中、うまいものはみんな俺に食わせろ。』
主従、滑稽なやりとりをするうちに夜は明け、二人は急坂を下り、アリナの滝の懸橋御殿を指して進んでゆく。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6914
愛善世界社版:
200頁
八幡書店版:
第12輯 347頁
修補版:
校定版:
209頁
普及版:
66頁
初版:
ページ備考:
001
国照別
(
くにてるわけ
)
主従
(
しゆじゆう
)
はアリナ
山
(
やま
)
の
中腹
(
ちうふく
)
に
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あか
)
す
事
(
こと
)
となつた。
002
咫尺
(
しせき
)
を
弁
(
べん
)
ぜざる
濃霧
(
のうむ
)
は
陰々
(
いんいん
)
として
身
(
み
)
に
逼
(
せま
)
り
来
(
く
)
るかとみれば、
003
忽
(
たちま
)
ち
空
(
そら
)
は
黒雲
(
くろくも
)
漲
(
みなぎ
)
り、
004
夕立
(
ゆふだち
)
の
雨
(
あめ
)
が
礫
(
つぶて
)
の
如
(
ごと
)
く
二人
(
ふたり
)
の
衣
(
ころも
)
を
打
(
う
)
ち、
005
吹
(
ふ
)
き
飛
(
と
)
ばすやうな
風
(
かぜ
)
がやつて
来
(
く
)
る。
006
深霧
(
ふかぎり
)
、
007
靄
(
もや
)
、
008
大雨
(
おほあめ
)
、
009
大風
(
おほかぜ
)
と
交
(
かは
)
る
交
(
がは
)
る
走馬燈
(
そうまとう
)
の
様
(
やう
)
に
迫
(
せま
)
つて
来
(
く
)
る
其
(
その
)
淋
(
さび
)
しさ
苦
(
くる
)
しさに、
010
流石
(
さすが
)
の
国照別
(
くにてるわけ
)
も
初
(
はじ
)
めて
知
(
し
)
つた
旅
(
たび
)
の
悩
(
なや
)
み、
011
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
天地
(
てんち
)
に
拝跪
(
はいき
)
して
012
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
黎明
(
れいめい
)
の
光
(
ひかり
)
を
仰
(
あふ
)
がむ
事
(
こと
)
を
祈願
(
きぐわん
)
した。
013
されども
時
(
とき
)
の
力
(
ちから
)
は
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
祈願
(
きぐわん
)
しても
左右
(
さいう
)
することは
出来
(
でき
)
ず、
014
夜
(
よ
)
は
深々
(
しんしん
)
として
更
(
ふけ
)
ゆく
計
(
ばか
)
り、
015
四辺
(
あたり
)
は
益々
(
ますます
)
暗
(
くら
)
く
互
(
たがひ
)
の
所在
(
ありか
)
さへ
目
(
め
)
に
入
(
い
)
らなくなつて
了
(
しま
)
つた。
016
国照
(
くにてる
)
『
雨風
(
あめかぜ
)
にさらされ
霧
(
きり
)
につつまれて
017
行手
(
ゆくて
)
に
迷
(
まよ
)
ふ
吾
(
わが
)
身魂
(
みたま
)
かな』
018
浅公
(
あさこう
)
『
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い
親分
(
おやぶん
)
さまのお
言葉
(
ことば
)
よ
019
いつ
迄
(
まで
)
暗
(
やみ
)
の
続
(
つづ
)
くものかは』
020
国照
(
くにてる
)
『
浅公
(
あさこう
)
の
生言霊
(
いくことたま
)
をめで
給
(
たま
)
ひ
021
朝日
(
あさひ
)
の
御空
(
みそら
)
恵
(
めぐ
)
ませ
給
(
たま
)
はむ。
022
朝茅生
(
あさぢふ
)
の
野辺
(
のべ
)
を
渡
(
わた
)
りて
今
(
いま
)
ここに
023
誠
(
まこと
)
アリナの
峰
(
みね
)
に
休
(
やす
)
らふ。
024
夜
(
よる
)
の
雨
(
あめ
)
峰
(
みね
)
の
嵐
(
あらし
)
におびえつつ
025
ふるひゐるかも
木々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
は』
026
浅公
(
あさこう
)
『
主従
(
しゆじゆう
)
がふるひゐるかと
思
(
おも
)
ひしに
027
木々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
で
先
(
ま
)
づは
安心
(
あんしん
)
。
028
親分
(
おやぶん
)
が
慄
(
ふる
)
ふ
様
(
やう
)
では
曲神
(
まがかみ
)
の
029
すさぶ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
渡
(
わた
)
るすべなし』
030
国照
(
くにてる
)
『ふるふといふ
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
は
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
031
あらゆる
塵
(
ちり
)
をふるふ
謎
(
なぞ
)
なり』
032
浅公
(
あさこう
)
『
負
(
まけ
)
ぬ
気
(
き
)
の
強
(
つよ
)
い
国照別
(
くにてるわけ
)
さまよ
033
気
(
き
)
をつけ
給
(
たま
)
へ
漆
(
うるし
)
の
木蔭
(
こかげ
)
を。
034
右
(
みぎ
)
左
(
ひだり
)
前
(
まへ
)
も
後
(
うしろ
)
も
見
(
み
)
えわかぬ
035
暗
(
やみ
)
の
山路
(
やまぢ
)
はいとど
静
(
しづ
)
けき』
036
国照
(
くにてる
)
『
浅公
(
あさこう
)
よ
静
(
しづ
)
かなりとは
嘘
(
うそ
)
だらう
037
心
(
こころ
)
の
淋
(
さび
)
しさ
語
(
かた
)
るにやあらむ』
038
両人
(
りやうにん
)
は
何
(
なん
)
となく
寂寥
(
せきれう
)
の
気
(
き
)
に
打
(
う
)
たれ、
039
膝
(
ひざ
)
をすり
合
(
あは
)
して
阿呆口
(
あはうぐち
)
を
駄句
(
だく
)
つてゐる。
040
どこともなしに
細
(
ほそ
)
い
淋
(
さび
)
しい
糸
(
いと
)
の
様
(
やう
)
な
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
041
浅公
(
あさこう
)
は
国照別
(
くにてるわけ
)
の
腰
(
こし
)
に
喰
(
くら
)
ひつき、
042
ビリビリと
慄
(
ふる
)
うてゐる。
043
浅
(
あさ
)
『オヽ
親分
(
おやぶん
)
さま、
044
デデ
出
(
で
)
ましたぞ』
045
国照
(
くにてる
)
『ウーン、
046
出
(
で
)
たの』
047
浅
(
あさ
)
『どうしませう』
048
国照
(
くにてる
)
『
何
(
ど
)
うでも
可
(
い
)
いワ、
049
惟神
(
かむながら
)
に
任
(
まか
)
すのだな。
050
屹度
(
きつと
)
神
(
かみ
)
の
試練
(
しれん
)
だよ。
051
お
前
(
まへ
)
のやうな
臆病者
(
おくびやうもの
)
を
伴
(
つ
)
れてゆくと、
052
俺
(
おれ
)
の
手足
(
てあし
)
纒
(
まと
)
ひになると
思
(
おも
)
つてアリナ
山
(
やま
)
の
魔神
(
まがみ
)
が
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かし、
053
お
前
(
まへ
)
を
片付
(
かたづ
)
けてやらうと
思
(
おも
)
つて、
054
出現
(
しゆつげん
)
したのかも
知
(
し
)
れないよ、
055
アツハヽヽ、
056
テモ
扨
(
さて
)
も
暗
(
くら
)
い
事
(
こと
)
だワイ。
057
若
(
も
)
し
汝
(
きさま
)
と
間違
(
まちが
)
へられて、
058
俺
(
おれ
)
が
頭
(
あたま
)
からガブリとやられちや
大変
(
たいへん
)
だから、
059
オイ
浅
(
あさ
)
、
060
二三尺
(
にさんじやく
)
間隔
(
かんかく
)
をおいて
喋
(
しやべ
)
らうだないか。
061
之
(
これ
)
丈
(
だけ
)
暗
(
くら
)
くては
化物
(
ばけもの
)
だつて、
062
目
(
め
)
が
見
(
み
)
え
相
(
さう
)
な
道理
(
だうり
)
がない。
063
声
(
こゑ
)
さへ
出
(
だ
)
しておればそれを
標的
(
めあて
)
にかぶるだらうから、
064
フツフヽヽ』
065
浅
(
あさ
)
『
親分
(
おやぶん
)
さま、
066
貴方
(
あなた
)
は
随分
(
ずいぶん
)
水臭
(
みづくさ
)
い
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ひますね。
067
乾児
(
こぶん
)
の
難儀
(
なんぎ
)
を
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さるのが
親分
(
おやぶん
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
068
自分
(
じぶん
)
が
助
(
たす
)
かる
為
(
ため
)
に
乾児
(
こぶん
)
を
魔神
(
まがみ
)
に
喰
(
く
)
はさうとなさるのですか』
069
国照
(
くにてる
)
『
勿論
(
もちろん
)
だよ、
070
お
前
(
まへ
)
は
俺
(
おれ
)
の
乾児
(
こぶん
)
になる
時
(
とき
)
、
071
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つて
誓
(
ちか
)
つた……
親分
(
おやぶん
)
さまの
御
(
おん
)
身
(
み
)
に
一大事
(
いちだいじ
)
があれば、
072
命
(
いのち
)
をすてて
尽
(
つく
)
します。
073
命
(
いのち
)
は
親分
(
おやぶん
)
に
捧
(
ささ
)
げました……と
云
(
い
)
つて、
074
小指
(
こゆび
)
迄
(
まで
)
切
(
き
)
つて
渡
(
わた
)
しただないか、
075
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だなア、
076
ハツハヽヽ、
077
持
(
も
)
つべき
者
(
もの
)
は
乾児
(
こぶん
)
なりけりだ。
078
若
(
も
)
しも
汝
(
きさま
)
がゐなかつたなれば、
079
身代
(
みがは
)
りがない
為
(
ため
)
、
080
俺
(
おれ
)
が
喰
(
く
)
はれて
了
(
しま
)
ふのだ。
081
浅公
(
あさこう
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
俺
(
おれ
)
も
命
(
いのち
)
が
全
(
まつた
)
ふ
出来
(
でき
)
るワイ。
082
南無
(
なむ
)
浅公
(
あさこう
)
大明神
(
だいみやうじん
)
、
083
殺
(
ころ
)
され
給
(
たま
)
へ、
084
喰
(
く
)
はれ
給
(
たま
)
へ、
085
叶
(
かな
)
はぬから
霊
(
たま
)
幸
(
ち
)
はへませ、
086
エツヘヽヽヽヘ』
087
浅
(
あさ
)
『ソヽそれは、
088
チヽチツと
違
(
ちが
)
ひませう。
089
親分
(
おやぶん
)
が
喧嘩
(
けんくわ
)
の
時
(
とき
)
とか、
090
又
(
また
)
強
(
つよ
)
きを
挫
(
くじ
)
き
弱
(
よわ
)
きを
扶
(
たす
)
け
遊
(
あそ
)
ばす
時
(
とき
)
に、
091
お
伴
(
とも
)
にいつて
命
(
いのち
)
をすてるのなら、
092
捨甲斐
(
すてがひ
)
もありますが、
093
こんな
淋
(
さび
)
しい
山
(
やま
)
の
奥
(
おく
)
で、
094
エタイの
分
(
わか
)
らぬ
化物
(
ばけもの
)
に
喰
(
くひ
)
殺
(
ころ
)
されちや
本当
(
ほんたう
)
に
犬死
(
いぬじに
)
ですからなア』
095
国照
(
くにてる
)
『そりや
汝
(
きさま
)
のいふ
通
(
とほ
)
り、
096
全
(
まつた
)
くの
犬死
(
いぬじに
)
だ、
097
縁
(
えん
)
の
下
(
した
)
の
舞
(
まひ
)
だ。
098
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らそれを
犠牲
(
ぎせい
)
といふのだ。
099
親分
(
おやぶん
)
がまさかの
時
(
とき
)
に
犠牲
(
ぎせい
)
にする
為
(
ため
)
、
100
汝
(
きさま
)
を
乾児
(
こぶん
)
にしておいたのだ。
101
俺
(
おれ
)
だつて、
102
たつた
一人
(
ひとり
)
の
乾児
(
こぶん
)
を
魔神
(
まがみ
)
に
喰
(
く
)
はしたくはないが、
103
それでも
自分
(
じぶん
)
の
命
(
いのち
)
をすてるよりは
辛抱
(
しんばう
)
がしよいからのう、
104
ホツホヽヽヽ』
105
最前
(
さいぜん
)
の
怪
(
あや
)
しい
口笛
(
くちぶえ
)
を
吹
(
ふ
)
くやうな
声
(
こゑ
)
は
106
細
(
ほそ
)
い
帯
(
おび
)
の
様
(
やう
)
に
地上
(
ちじやう
)
七八
(
しちはつ
)
尺
(
しやく
)
の
上
(
うへ
)
の
方
(
はう
)
に
線
(
せん
)
を
劃
(
くわく
)
して
聞
(
きこ
)
えてゐる。
107
『ヒユーヒユー、
108
ヒーユー』
109
実際
(
じつさい
)
は
梢
(
こずゑ
)
を
疾風
(
しつぷう
)
の
渡
(
わた
)
る
音
(
おと
)
であつた。
110
されど
浅公
(
あさこう
)
の
身
(
み
)
には
妖怪
(
えうくわい
)
とより
聞
(
きこ
)
えなかつた。
111
国照別
(
くにてるわけ
)
は
始
(
はじ
)
めから
風
(
かぜ
)
の
声
(
こゑ
)
だといふ
事
(
こと
)
は
承知
(
しようち
)
してゐたが、
112
余
(
あま
)
り
浅公
(
あさこう
)
が
驚
(
おどろ
)
くので、
113
面白
(
おもしろ
)
半分
(
はんぶん
)
に
揶揄
(
からか
)
つてみたのである。
114
浅公
(
あさこう
)
は
慄
(
ふる
)
ひ
声
(
ごゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
115
『
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
116
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたまの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
117
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
只今
(
ただいま
)
現
(
あら
)
はれました
怪
(
あや
)
しき
神
(
かみ
)
を
追
(
お
)
ひのけて
下
(
くだ
)
さいませ。
118
親分
(
おやぶん
)
も
大切
(
たいせつ
)
なら、
119
私
(
わたし
)
の
体
(
からだ
)
も
大切
(
たいせつ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
120
親分
(
おやぶん
)
の
代
(
かは
)
りに
私
(
わたし
)
が
喰
(
く
)
はれますのは
少
(
すこ
)
しも
厭
(
いと
)
はぬことは……
厶
(
ござ
)
いませぬが、
121
同
(
おな
)
じことなら、
122
親分
(
おやぶん
)
乾児
(
こぶん
)
共
(
とも
)
にお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいませ。
123
今
(
いま
)
私
(
わたし
)
がここで
喰
(
く
)
はれましては、
124
親分
(
おやぶん
)
さまも
知
(
し
)
らぬ
他国
(
たこく
)
で
一人旅
(
ひとりたび
)
、
125
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
御
(
ご
)
艱難
(
かんなん
)
をなさるのがお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
で
厶
(
ござ
)
います。
126
私
(
わたし
)
だつてこんな
所
(
ところ
)
で
死
(
し
)
にたくは
厶
(
ござ
)
いませぬ、
127
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
、
128
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
129
と
祈
(
いの
)
つてゐる。
130
暗
(
やみ
)
は
益々
(
ますます
)
深
(
ふか
)
くして、
131
なまぬるい
風
(
かぜ
)
が
腰
(
こし
)
のあたりを
嘗
(
な
)
めて
通
(
とほ
)
る。
132
国照
(
くにてる
)
『
人
(
ひと
)
の
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
り
食
(
くら
)
ふ
133
曲津
(
まがつ
)
の
数多
(
あまた
)
アリナ
山
(
やま
)
134
暗
(
やみ
)
の
帳
(
とばり
)
に
包
(
つつ
)
まれて
135
茲
(
ここ
)
に
二人
(
ふたり
)
の
石枕
(
いしまくら
)
136
眠
(
ねむ
)
る
間
(
ま
)
もなく
人食
(
ひとく
)
ひの
137
怪
(
あや
)
しき
神
(
かみ
)
が
現
(
あら
)
はれて
138
其
(
その
)
泣
(
な
)
く
声
(
こゑ
)
を
尋
(
たづ
)
ぬれば
139
国照別
(
くにてるわけ
)
の
肉
(
にく
)
の
宮
(
みや
)
140
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
てさへうまさうだ
141
それに
従
(
したが
)
ふ
浅公
(
あさこう
)
の
142
奴
(
やつこ
)
の
体
(
からだ
)
はどことなく
143
味
(
あぢ
)
が
悪
(
わる
)
さうな
穢
(
きた
)
なさうな
144
こんなヤクザ
者
(
もの
)
喰
(
く
)
た
所
(
とこ
)
で
145
腹
(
はら
)
の
力
(
ちから
)
になりもせぬ
146
腹
(
はら
)
を
損
(
そん
)
じて
明日
(
あす
)
の
夜
(
よ
)
は
147
七転
(
しちてん
)
八倒
(
はつたう
)
せにやならぬ
148
それ
故
(
ゆゑ
)
浅公
(
あさこう
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
149
食
(
く
)
つてやるのは
止
(
や
)
めておかう
150
本当
(
ほんたう
)
に
食
(
く
)
ひたい
食
(
く
)
ひたいと
151
喉
(
のど
)
がなるのは
親分
(
おやぶん
)
の
152
国照別
(
くにてるわけ
)
の
肉
(
にく
)
の
香
(
か
)
だ
153
さはさり
乍
(
なが
)
ら
神徳
(
しんとく
)
が
154
体
(
からだ
)
一面
(
いちめん
)
充
(
み
)
ち
満
(
み
)
ちて
155
歯節
(
はぶし
)
の
立
(
た
)
たぬ
苦
(
くる
)
しさに
156
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
見
(
み
)
すてて
帰
(
かへ
)
りゆく
157
之
(
これ
)
から
浅
(
あさ
)
の
乾児
(
こぶん
)
等
(
ら
)
に
158
うまい
物
(
もの
)
をば
沢山
(
たくさん
)
に
159
喰
(
く
)
はして
肉
(
にく
)
を
肥満
(
ひまん
)
させ
160
脂
(
あぶら
)
の
乗
(
の
)
つた
其
(
その
)
上
(
うへ
)
で
161
改
(
あらた
)
めお
目
(
め
)
にかかるだらう
162
国
(
くに
)
さま
浅
(
あさ
)
さま
左様
(
さやう
)
なら
163
之
(
これ
)
でおいとま
致
(
いた
)
します
164
……と
唄
(
うた
)
ひもつて
魔神
(
まがみ
)
の
奴
(
やつ
)
、
165
下駄
(
げた
)
を
預
(
あづ
)
けて
帰
(
かへ
)
りよつた。
166
オイ
浅公
(
あさこう
)
、
167
確
(
しつか
)
りせぬと
助
(
たす
)
からぬぞよ』
168
浅
(
あさ
)
『オヽ
親分
(
おやぶん
)
、
169
そんな
事
(
こと
)
を
魔神
(
まがみ
)
が
云
(
い
)
ひましたか、
170
嘘
(
うそ
)
でせう』
171
国照
(
くにてる
)
『お
前
(
まへ
)
の
耳
(
みみ
)
には
聞
(
きこ
)
えなかつただらう、
172
俺
(
おれ
)
が
魔神
(
まがみ
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
翻訳
(
ほんやく
)
すると、
173
つまりあゝなるのだ。
174
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
の
人間
(
にんげん
)
とテルの
国
(
くに
)
の
人間
(
にんげん
)
とは
日々
(
ひび
)
使
(
つか
)
ふ
言葉
(
ことば
)
が
変
(
かは
)
つてるやうに、
175
人間
(
にんげん
)
と
魔神
(
まがみ
)
とは
又
(
また
)
言葉
(
ことば
)
が
違
(
ちが
)
ふのだ。
176
鳥
(
とり
)
でも
獣
(
けもの
)
でも
皆
(
みな
)
言葉
(
ことば
)
があつて
互
(
たがひ
)
に
意思
(
いし
)
を
通
(
つう
)
じて
居
(
ゐ
)
るのだからなア』
177
浅
(
あさ
)
『さうすると
親分
(
おやぶん
)
、
178
貴方
(
あなた
)
は
神
(
かみ
)
さまみた
様
(
やう
)
な
御
(
お
)
方
(
かた
)
ですな。
179
結構
(
けつこう
)
な
城中
(
じやうちう
)
に
生
(
うま
)
れ、
180
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
の
国司
(
こくし
)
になる
身
(
み
)
を
持
(
も
)
ち
乍
(
なが
)
ら、
181
物好
(
ものずき
)
にも
程
(
ほど
)
があると
思
(
おも
)
ひ
思
(
おも
)
ひ、
182
乾児
(
こぶん
)
に
使
(
つか
)
はれて
来
(
き
)
ましたが、
183
魔神
(
まがみ
)
の
言葉
(
ことば
)
が
分
(
わか
)
るとは、
184
本当
(
ほんたう
)
に
感心
(
かんしん
)
致
(
いた
)
しました。
185
親分
(
おやぶん
)
々々
(
おやぶん
)
といふのも
勿体
(
もつたい
)
なくなりましたよ』
186
国照
(
くにてる
)
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
187
お
前
(
まへ
)
の
体
(
からだ
)
は
穢
(
むさくる
)
しうて、
188
味
(
あぢ
)
が
悪
(
わる
)
くつて、
189
喰
(
く
)
へないと
云
(
い
)
つたから、
190
マア
安心
(
あんしん
)
せい。
191
険呑
(
けんのん
)
なのは
俺
(
おれ
)
だ。
192
俺
(
おれ
)
は
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
から
栄耀
(
えいえう
)
栄華
(
えいぐわ
)
に
育
(
そだ
)
てられ、
193
体
(
からだ
)
が
柔
(
やはら
)
かく
出来
(
でき
)
てるとみえ、
194
国
(
くに
)
の
体
(
からだ
)
が
喰
(
く
)
ひたいと
云
(
い
)
つたが、
195
お
蔭
(
かげ
)
で
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
があるので、
196
屁古垂
(
へこた
)
れて
帰
(
かへ
)
りよつた。
197
併
(
しか
)
し
浅公
(
あさこう
)
は
甘
(
うま
)
い
物
(
もの
)
をくはせ
充分
(
じゆうぶん
)
脂
(
あぶら
)
を
乗
(
の
)
せておいて
呉
(
く
)
れ、
198
其
(
その
)
時
(
とき
)
に
又
(
また
)
現
(
あら
)
はれて、
199
バリバリとやると
云
(
い
)
つてたよ。
200
随分
(
ずいぶん
)
用心
(
ようじん
)
せないと
可
(
い
)
けないよ。
201
だから
甘
(
うま
)
い
物
(
もの
)
があつたら、
202
皆
(
みな
)
俺
(
おれ
)
に
食
(
く
)
はせ、
203
お
前
(
まへ
)
は
糟
(
かす
)
計
(
ばか
)
り
喰
(
く
)
つてゐたら
脂
(
あぶら
)
ものらず、
204
魔神
(
まがみ
)
も
見
(
み
)
すててくれるのだ、
205
イヽか。
206
命
(
いのち
)
が
惜
(
をし
)
くなければ
精
(
せい
)
出
(
だ
)
して
美食
(
びしよく
)
をするのだな、
207
ハヽヽヽ』
208
浅公
(
あさこう
)
は
思
(
おも
)
ひの
外
(
ほか
)
の
正直者
(
しやうぢきもの
)
である。
209
国照別
(
くにてるわけ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
一
(
いち
)
も
二
(
に
)
もなく
丸呑
(
まるのみ
)
にして
了
(
しま
)
つた。
210
浅
(
あさ
)
『
親分
(
おやぶん
)
さま、
211
貴方
(
あなた
)
は
神
(
かみ
)
さま
侠客
(
けふかく
)
だからメツタに
嘘
(
うそ
)
は
仰有
(
おつしや
)
る
気遣
(
きづか
)
ひはありますまい。
212
さうすりや、
213
わつちや、
214
之
(
これ
)
から
一
(
ひと
)
つ
考
(
かんが
)
へねばなりますまい。
215
うまい
物
(
もの
)
は
喰
(
く
)
はれませぬなア』
216
国照
(
くにてる
)
『さうだ、
217
うまい
物
(
もの
)
は
皆
(
みな
)
俺
(
おれ
)
に
食
(
く
)
はせと
云
(
い
)
つたよ』
218
浅
(
あさ
)
『ヘーン、
219
うまい
事
(
こと
)
をいひますね。
220
魔神
(
まがみ
)
の
奴
(
やつ
)
221
仲々
(
なかなか
)
気
(
き
)
が
利
(
き
)
いてるワイ』
222
国照
(
くにてる
)
『
魔神
(
まがみ
)
も
退却
(
たいきやく
)
したなり、
223
之
(
これ
)
から
一
(
ひと
)
つ
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
つて
暗
(
やみ
)
を
晴
(
は
)
らし、
224
東雲
(
しののめ
)
を
待
(
ま
)
つことにせうかい』
225
浅
(
あさ
)
『
宜
(
よろ
)
しう
厶
(
ござ
)
いませう』
226
国照別
(
くにてるわけ
)
『
故郷
(
ふるさと
)
の
空
(
そら
)
遥
(
はるか
)
に
出
(
い
)
で
行
(
ゆ
)
く
二人
(
ふたり
)
の
仁侠
(
にんけふ
)
227
あはれ
今宵
(
こよひ
)
はアリナ
山
(
やま
)
の
228
野宿
(
のじゆく
)
に
肝
(
きも
)
をひやす
229
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
融通
(
ゆうづう
)
の
利
(
き
)
く
侠客
(
けふかく
)
の
睾丸
(
きんたま
)
230
人間
(
にんげん
)
の
想念界
(
さうねんかい
)
に
於
(
お
)
けると
同様
(
どうやう
)
231
伸縮
(
しんしゆく
)
自在
(
じざい
)
なるも
亦
(
また
)
可笑
(
をか
)
し
232
仁侠
(
にんけふ
)
を
以
(
もつ
)
て
誇
(
ほこ
)
る
浅公
(
あさこう
)
親分
(
おやぶん
)
の
233
股間
(
こかん
)
の
珍器
(
ちんき
)
今
(
いま
)
何処
(
いづこ
)
にかある
234
珍
(
うづ
)
の
荒野
(
あらの
)
に
彷徨
(
さまよ
)
ふか
235
但
(
ただ
)
しは
遠
(
とほ
)
く
海
(
うみ
)
を
渡
(
わた
)
つて
236
竜宮
(
りうぐう
)
に
走
(
はし
)
るか
聞
(
き
)
かまほし、
珍器
(
ちんき
)
の
所在
(
ありか
)
237
雨
(
あめ
)
はしげし、
靄
(
もや
)
は
深
(
ふか
)
く
包
(
つつ
)
む
238
魔神
(
まがみ
)
の
怪声
(
くわいせい
)
は
頻
(
しき
)
りに
至
(
いた
)
り
239
寂寥
(
せきれう
)
の
空気
(
くうき
)
刻々
(
こくこく
)
身
(
み
)
に
迫
(
せま
)
る
240
あゝ
人間
(
にんげん
)
の
腋甲斐
(
ふがひ
)
なさ
241
暗夜
(
あんや
)
に
会
(
あ
)
へば
242
忽
(
たちま
)
ち
寂寥
(
せきれう
)
にをののく
243
いかにして
天地
(
てんち
)
の
奉仕者
(
ほうししや
)
244
万物
(
ばんぶつ
)
の
霊長
(
れいちやう
)
たるを
得
(
え
)
む
245
故里
(
ふるさと
)
の
空
(
そら
)
遠
(
とほ
)
く
回顧
(
くわいこ
)
すれば
246
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
に
残
(
のこ
)
れる
相思
(
さうし
)
の
人々
(
ひとびと
)
247
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
を
引
(
ひ
)
き
留
(
と
)
むるが
如
(
ごと
)
く
覚
(
おぼ
)
ゆ
248
進
(
すす
)
まむとせば
小胆
(
せうたん
)
なる
浅公
(
あさこう
)
のあるあり
249
退
(
しりぞ
)
かむとせば
故郷
(
こきやう
)
の
友人
(
いうじん
)
に
恥
(
はづ
)
かし
250
あゝ
如何
(
いか
)
にせむ
251
アリナ
山
(
やま
)
の
夜露
(
よつゆ
)
の
宿
(
やど
)
252
星
(
ほし
)
もなく
月
(
つき
)
もなく
253
八重雲
(
やへくも
)
のふさがる
下
(
した
)
に
254
臆病
(
おくびやう
)
武士
(
ぶし
)
と
相共
(
あひとも
)
に
255
ふるふて
一夜
(
いちや
)
を
送
(
おく
)
る
吾
(
われ
)
ぞ
果敢
(
はか
)
なき
256
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
257
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
258
浅公
(
あさこう
)
『アリナ
山
(
やま
)
下
(
くだ
)
りてここに
来
(
き
)
てみれば
259
暗
(
やみ
)
の
帳
(
とばり
)
に
包
(
つつ
)
まれて
260
行手
(
ゆくて
)
も
知
(
し
)
れぬ
苦
(
くる
)
しさよ
261
魔神
(
まがみ
)
は
夜半
(
よは
)
に
現
(
あら
)
はれて
262
親分
(
おやぶん
)
乾児
(
こぶん
)
の
胸
(
むね
)
冷
(
ひや
)
す
263
健気
(
けなげ
)
にもわが
命
(
いのち
)
264
取
(
と
)
り
食
(
くら
)
はむといひし
魔神
(
まがみ
)
の
叫
(
たけ
)
び
265
一寸
(
ちよつと
)
味
(
あぢ
)
をやりよるワイ
266
さり
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
浅公
(
あさこう
)
は
267
全身
(
ぜんしん
)
骨
(
ほね
)
を
以
(
もつ
)
て
固
(
かた
)
めたる
268
歯節
(
はぶし
)
も
立
(
た
)
たぬ
剛力
(
がうりき
)
に
269
呆
(
あき
)
れたのか
魔神
(
まがみ
)
の
群
(
むれ
)
270
豊
(
ゆた
)
かに
育
(
そだ
)
ちし
親分
(
おやぶん
)
の
君
(
きみ
)
271
肉
(
にく
)
柔
(
やはら
)
かく
血
(
ち
)
の
香
(
か
)
芳
(
かん
)
ばしく
272
わが
身
(
み
)
の
食料
(
しよくれう
)
には
最適当
(
さいてきたう
)
だと
273
言葉
(
ことば
)
をのこして
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く
274
魔神
(
まがみ
)
も
仲々
(
なかなか
)
食
(
く
)
へぬ
奴
(
やつ
)
275
味
(
あぢ
)
な
事
(
こと
)
をいひよるワイ
276
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
277
あぢ
気
(
き
)
なき
浮世
(
うきよ
)
だなア
278
暗
(
やみ
)
は
益々
(
ますます
)
深
(
ふか
)
くして
胸
(
むね
)
は
益々
(
ますます
)
打
(
うち
)
ふるふ
279
血管
(
けつくわん
)
の
血
(
ち
)
は
凍
(
こほ
)
り
肉
(
にく
)
は
引
(
ひ
)
きしまり
280
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
は
立
(
た
)
つ
281
あゝ
惟神
(
かむながら
)
救
(
すく
)
はせ
給
(
たま
)
へ
282
わが
弱
(
よわ
)
き
魂
(
たま
)
を
283
あゝ
惟神
(
かむながら
)
開
(
ひら
)
かせ
給
(
たま
)
へ
284
わが
清
(
きよ
)
き
強
(
つよ
)
き
魂
(
たま
)
の
光
(
ひかり
)
を』
285
斯
(
か
)
く
二人
(
ふたり
)
はいろいろな
事
(
こと
)
を
口
(
くち
)
ずさみ
乍
(
なが
)
ら
一夜
(
いちや
)
をあかし、
286
ホンノリと
足許
(
あしもと
)
の
見
(
み
)
ゆる
頃
(
ころ
)
、
287
又
(
また
)
もや
急阪
(
きふはん
)
を
下
(
くだ
)
り、
288
アリナの
滝
(
たき
)
の
懸橋
(
かけはし
)
御殿
(
ごてん
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
289
(
大正一三・一・二四
旧一二・一二・一九
伊予 於山口氏邸、
松村真澄
録)
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