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第67巻(午の巻)
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第71巻(戌の巻)
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第75巻(寅の巻)
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第69巻(申の巻)
巻頭言
第1篇 清風涼雨
01 大評定
〔1746〕
02 老断
〔1747〕
03 喬育
〔1748〕
04 国の光
〔1749〕
05 性明
〔1750〕
06 背水会
〔1751〕
第2篇 愛国の至情
07 聖子
〔1752〕
08 春乃愛
〔1753〕
09 迎酒
〔1754〕
10 宣両
〔1755〕
11 気転使
〔1756〕
12 悪原眠衆
〔1757〕
第3篇 神柱国礎
13 国別
〔1758〕
14 暗枕
〔1759〕
15 四天王
〔1760〕
16 波動
〔1761〕
第4篇 新政復興
17 琴玉
〔1762〕
18 老狽
〔1763〕
19 老水
〔1764〕
20 声援
〔1765〕
21 貴遇
〔1766〕
22 有終
〔1767〕
余白歌
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第一八章
老狽
(
らうばい
)
〔一七六三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻
篇:
第4篇 新政復興
よみ(新仮名遣い):
しんせいふっこう
章:
第18章 老狽
よみ(新仮名遣い):
ろうばい
通し章番号:
1763
口述日:
1924(大正13)年01月24日(旧12月19日)
口述場所:
伊予 山口氏邸
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1927(昭和2)年10月26日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
清香姫は侍女・春子姫の手引きで深夜一緒に館を抜け出すが、秋山別・モリスはいち早く変事に気づく。
秋山別・モリスは、清香姫の逐電が人に知られて責任を問われる前に、姫を連れ戻そうと、二人だけで追いかけてゆく。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
238「泣声」は原文ママ。
データ最終更新日:
2019-04-13 03:49:53
OBC :
rm6918
愛善世界社版:
252頁
八幡書店版:
第12輯 365頁
修補版:
校定版:
265頁
普及版:
66頁
初版:
ページ備考:
001
清香姫
(
きよかひめ
)
『
千早
(
ちはや
)
振
(
ふる
)
、
神代
(
かみよ
)
の
昔
(
むかし
)
天教
(
てんけう
)
の
002
山
(
やま
)
より
天降
(
あも
)
り
給
(
たま
)
ひたる
003
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
神柱
(
かむばしら
)
004
吾
(
わが
)
祖先
(
おやがみ
)
を
導
(
みちび
)
きて
005
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
清
(
きよ
)
むる
三五
(
あななひ
)
の
006
教
(
をしへ
)
を
開
(
ひら
)
かせ
給
(
たま
)
ひしゆ
007
神
(
かみ
)
の
御稜威
(
みいづ
)
は
四方
(
よも
)
の
国
(
くに
)
008
島
(
しま
)
の
崎々
(
さきざき
)
磯
(
いそ
)
の
隈々
(
くまぐま
)
009
落
(
お
)
ちなく
漏
(
も
)
れなく
拡
(
ひろ
)
ごりて
010
天
(
あめ
)
の
下
(
した
)
には
曲
(
まが
)
も
無
(
な
)
く
011
青人草
(
あをひとぐさ
)
は
村肝
(
むらきも
)
の
012
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
より
睦
(
むつ
)
び
合
(
あ
)
ひ
013
さながら
天津
(
あまつ
)
御国
(
みくに
)
の
天国
(
てんごく
)
の
014
姿
(
すがた
)
映
(
うつ
)
せしヒルの
国
(
くに
)
015
インカの
裔
(
すゑ
)
と
崇
(
あが
)
められ
016
親
(
おや
)
と
親
(
おや
)
とは
底津根
(
そこつね
)
の
017
堅磐
(
かきは
)
常磐
(
ときは
)
の
岩
(
いは
)
の
上
(
へ
)
に
018
珍
(
うづ
)
の
宮居
(
みやゐ
)
を
築
(
きづ
)
きつつ
019
珍
(
うづ
)
の
柱
(
はしら
)
のいや
太
(
ふと
)
く
020
立栄
(
たちさか
)
えたる
神柱
(
かむばしら
)
021
諸人
(
もろびと
)
仰
(
あふ
)
がぬ
者
(
もの
)
もなし
022
近
(
ちか
)
き
御代
(
みよ
)
より
常世国
(
とこよくに
)
023
邪
(
よこさ
)
の
教
(
をしへ
)
蔓
(
はびこ
)
りて
024
天
(
あめ
)
を
曇
(
くも
)
らせ
地
(
つち
)
汚
(
けが
)
し
025
青山
(
あをやま
)
をば
枯山
(
からやま
)
となし
026
世人
(
よびと
)
の
心
(
こころ
)
荒
(
すさ
)
び
果
(
は
)
て
027
昔
(
むかし
)
の
儘
(
まま
)
の
神国
(
かみぐに
)
は
028
今
(
いま
)
や
魔国
(
まぐに
)
とならむとす
029
深夜
(
しんや
)
枕
(
まくら
)
を
擡
(
もた
)
げつつ
030
世
(
よ
)
の
行先
(
ゆくさき
)
を
窺
(
うかが
)
へば
031
ヒルの
都
(
みやこ
)
に
醜鬼
(
しこおに
)
の
032
棲家
(
すみか
)
ありとふ
神
(
かみ
)
の
宣
(
のり
)
033
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
も
狼
(
おほかみ
)
も
034
虎
(
とら
)
獅子
(
しし
)
熊
(
くま
)
の
猛獣
(
まうじう
)
も
035
爪
(
つめ
)
を
隠
(
かく
)
して
待
(
ま
)
ち
居
(
ゐ
)
ると
036
御神
(
みかみ
)
の
御告
(
みつ
)
げ
聞
(
き
)
くにつけ
037
胸
(
むね
)
は
痛
(
いた
)
みぬ
心
(
こころ
)
さやぎぬ
038
あゝ
妾
(
わらは
)
は
如何
(
いか
)
にして
039
国司
(
こくし
)
の
御子
(
みこ
)
と
生
(
うま
)
れしぞ
040
鄙
(
ひな
)
に
育
(
そだ
)
ちし
身
(
み
)
にしあれば
041
斯
(
か
)
かる
悩
(
なや
)
みもあらまじものを
042
清家
(
せいか
)
とふ
忌
(
い
)
まはしき
空衣
(
からごろも
)
に
包
(
つつ
)
まれて
043
身動
(
みうご
)
きならぬ
苦
(
くる
)
しさよ
044
愍
(
あはれ
)
み
給
(
たま
)
へ
天地
(
あめつち
)
の
神
(
かみ
)
045
兄
(
あに
)
に
誓
(
ちか
)
ひし
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
を
046
守
(
まも
)
りて
出
(
い
)
づるヒルの
城
(
しろ
)
047
夜
(
よる
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
山路
(
やまみち
)
を
048
伝
(
つた
)
ひ
伝
(
つた
)
ひて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
049
道
(
みち
)
の
行手
(
ゆくて
)
の
隈
(
くま
)
も
無
(
な
)
く
050
安
(
やす
)
く
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へかし
051
高倉山
(
たかくらやま
)
の
此
(
この
)
城
(
しろ
)
を
052
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
ふ
氏
(
うぢ
)
の
神
(
かみ
)
053
ヒルの
御国
(
みくに
)
を
永久
(
とこしへ
)
に
054
領有
(
うしは
)
ぎ
給
(
たま
)
ふ
国魂
(
くにたま
)
の
神
(
かみ
)
の
055
大御前
(
おほみまへ
)
に
八雲
(
やくも
)
の
小琴
(
をごと
)
を
弾
(
だん
)
じつつ
056
心
(
こころ
)
すがすがすが
掻
(
が
)
きの
057
糸
(
いと
)
は
二筋
(
ふたすぢ
)
真心
(
まごころ
)
は
058
只
(
ただ
)
一筋
(
ひとすぢ
)
に
祈
(
いの
)
るなり
059
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
060
御霊
(
みたま
)
の
恩頼
(
ふゆ
)
を
賜
(
たま
)
へかし』
061
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
つて
居
(
ゐ
)
る
折
(
をり
)
しも、
062
烏羽玉
(
うばたま
)
の
夜
(
よ
)
は
襲
(
おそ
)
ふて
来
(
き
)
た。
063
清香姫
(
きよかひめ
)
は
密
(
ひそ
)
かに
身
(
み
)
の
廻
(
まは
)
りの
準備
(
こしらへ
)
などして
子
(
ね
)
の
刻
(
こく
)
の
至
(
いた
)
るを
待
(
ま
)
つた。
064
城内
(
じやうない
)
の
灯
(
あかり
)
も
消
(
き
)
えて
四辺
(
あたり
)
は
閑寂
(
かんじやく
)
の
気
(
き
)
漂
(
ただよ
)
ひ、
065
只
(
ただ
)
天井
(
てんじやう
)
に
鼠
(
ねずみ
)
の
走
(
はし
)
る
音
(
おと
)
がシト シト シトと
幽
(
かす
)
かに
聞
(
きこ
)
ゆるのみであつた。
066
時分
(
じぶん
)
はよしと、
067
清香姫
(
きよかひめ
)
は
私
(
ひそ
)
かに
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
を
忍
(
しの
)
び
出
(
い
)
でむとする
所
(
ところ
)
へ、
068
侍女
(
じぢよ
)
の
春子姫
(
はるこひめ
)
は
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせ
来
(
きた
)
り、
069
『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
070
未
(
ま
)
だお
寝
(
やす
)
みぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
071
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
清香姫
(
きよかひめ
)
はハツと
驚
(
おどろ
)
き
乍
(
なが
)
ら、
072
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
して、
073
『あ、
074
其方
(
そなた
)
は
春子姫
(
はるこひめ
)
か、
075
お
前
(
まへ
)
まだ
寝
(
やす
)
めないの』
076
春子
(
はるこ
)
『ハイ、
077
何
(
なん
)
だか、
078
今晩
(
こんばん
)
に
限
(
かぎ
)
つて
目
(
め
)
がさえざえと
致
(
いた
)
しまして、
079
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のお
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
が
気
(
き
)
にかかり、
080
何
(
なん
)
だか
寝
(
ね
)
られないので
厶
(
ござ
)
りますよ』
081
清香
(
きよか
)
『お
前
(
まへ
)
も
寝
(
ね
)
られないかね、
082
妾
(
わらは
)
も
何
(
なん
)
だかチツトも
寝
(
やす
)
めないワ』
083
春子
(
はるこ
)
『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
084
歌
(
うた
)
でも
詠
(
よ
)
んで
夜
(
よ
)
を
明
(
あか
)
しませうか』
085
清香姫
(
きよかひめ
)
は
迷惑
(
めいわく
)
し
乍
(
なが
)
らも、
086
『
妾
(
わらは
)
もやがて
眠
(
ねむ
)
れるだらうが、
087
併
(
しか
)
し
一二首
(
いちにしゆ
)
歌
(
うた
)
を
詠
(
よ
)
んで
別
(
わか
)
れませう』
088
春子
(
はるこ
)
『ハイ、
089
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います』
090
と
春子姫
(
はるこひめ
)
は
姫
(
ひめ
)
の
側
(
そば
)
近
(
ちか
)
く
座
(
ざ
)
を
占
(
し
)
め、
091
『
高倉
(
たかくら
)
の
表
(
おもて
)
に
立
(
た
)
てる
鉄門守
(
かなどもり
)
092
其
(
その
)
まなざしの
血走
(
ちばし
)
りて
見
(
み
)
えぬ。
093
十五夜
(
じふごや
)
の
月光
(
つきかげ
)
覗
(
のぞ
)
く
裏門
(
うらもん
)
は
094
いとも
静
(
しづ
)
けし
風
(
かぜ
)
さへもなし』
095
清香姫
(
きよかひめ
)
は
初
(
はじ
)
めて
春子姫
(
はるこひめ
)
が、
096
自分
(
じぶん
)
が
今夜
(
こんや
)
脱
(
ぬ
)
け
出
(
だ
)
すことを
悟
(
さと
)
り、
097
裏門
(
うらもん
)
から
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
せと
教
(
をし
)
へて
呉
(
く
)
れたのだらうと
感謝
(
かんしや
)
し
乍
(
なが
)
ら、
098
『
行
(
ゆく
)
春
(
はる
)
の
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
に
照
(
てら
)
されて
099
清
(
きよ
)
く
香
(
かを
)
れる
梅
(
うめ
)
の
初花
(
はつはな
)
。
100
匂
(
にほ
)
ふとは
誰
(
た
)
も
白梅
(
しらうめ
)
の
奥
(
おく
)
深
(
ふか
)
き
101
谷間
(
たにま
)
にもゆる
姿
(
すがた
)
かしこし』
102
と
互
(
たがひ
)
に
歌
(
うた
)
をかはし、
103
清香姫
(
きよかひめ
)
は、
104
『
月
(
つき
)
の
庭園
(
ていえん
)
をチツトばかり
逍遥
(
せうえう
)
して
来
(
き
)
ますから、
105
春子
(
はるこ
)
、
106
其方
(
そなた
)
は
此
(
この
)
琴
(
こと
)
を
弾
(
だん
)
じて
待
(
ま
)
つてゐて
下
(
くだ
)
さい』
107
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
裏口
(
うらぐち
)
へと
忍
(
しの
)
び
行
(
ゆ
)
く。
108
裏口
(
うらぐち
)
には
蓑笠
(
みのかさ
)
、
109
手甲
(
てかふ
)
脚絆
(
きやはん
)
、
110
杖
(
つゑ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
一切
(
いつさい
)
旅
(
たび
)
に
必要
(
ひつえう
)
なものがチヤンと
整
(
ととの
)
へてあつた。
111
春子姫
(
はるこひめ
)
は
涙
(
なみだ
)
を
泛
(
うか
)
べ
乍
(
なが
)
ら、
112
『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
113
決
(
けつ
)
して、
114
貴女
(
あなた
)
お
一人
(
ひとり
)
の
旅
(
たび
)
はさせませぬ、
115
どうぞ
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ』
116
と
小声
(
こごゑ
)
で
云
(
い
)
へば、
117
清香姫
(
きよかひめ
)
は
後
(
あと
)
振
(
ふり
)
返
(
かへ
)
り、
118
『
何処
(
どこ
)
へ
行
(
ゆ
)
くのも
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
と
二人
(
ふたり
)
連
(
づ
)
れ、
119
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
んで
下
(
くだ
)
さるな』
120
と
云
(
い
)
ひ
残
(
のこ
)
し、
121
見
(
み
)
つけられては
一大事
(
いちだいじ
)
と
裏口
(
うらぐち
)
へ
出
(
い
)
で、
122
手早
(
てばや
)
く
身
(
み
)
づくろひをなし、
123
裏門
(
うらもん
)
からソツト
脱
(
ぬ
)
け
出
(
だ
)
し、
124
馬場
(
ばんば
)
の
木立
(
こだち
)
の
下
(
した
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
南
(
みなみ
)
へ
南
(
みなみ
)
へと
急
(
いそ
)
ぐのであつた。
125
後
(
あと
)
に
春子姫
(
はるこひめ
)
は
126
二絃琴
(
にげんきん
)
を
執
(
と
)
り、
127
隔
(
へだ
)
ての
襖
(
ふすま
)
に
錠
(
ぢやう
)
をかけて、
128
琴
(
こと
)
を
弾
(
だん
)
じつつ
歌
(
うた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
129
『
此処
(
ここ
)
は
夜
(
よる
)
なきヒルの
国
(
くに
)
130
ヒルの
都
(
みやこ
)
の
中心地
(
ちうしんち
)
131
神
(
かみ
)
の
御稜威
(
みいづ
)
も
高倉山
(
たかくらやま
)
の
132
岩根
(
いはね
)
に
建
(
た
)
ちし
珍
(
うづ
)
の
城
(
しろ
)
133
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
昔
(
むかし
)
より
134
三五教
(
あななひけう
)
の
大神
(
おほかみ
)
を
135
斎
(
いつ
)
きまつりし
珍
(
うづ
)
の
城
(
しろ
)
136
さはさり
乍
(
なが
)
ら
星
(
ほし
)
移
(
うつ
)
り
137
月日
(
つきひ
)
は
流
(
なが
)
れ
行
(
ゆ
)
くに
連
(
つ
)
れ
138
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
は
漸
(
やうや
)
くに
139
あらぬ
方
(
かた
)
へと
移
(
うつ
)
ろひて
140
世
(
よ
)
は
刈菰
(
かりごも
)
と
乱
(
みだ
)
れゆく
141
実
(
げ
)
に
浅
(
あさ
)
ましき
此
(
この
)
天地
(
てんち
)
142
清
(
きよ
)
めむ
為
(
ため
)
に
皇神
(
すめかみ
)
の
143
御心
(
みこころ
)
深
(
ふか
)
く
悟
(
さと
)
りまし
144
若君
(
わかぎみ
)
始
(
はじ
)
め
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
145
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つての
鹿島立
(
かしまだち
)
146
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
吾
(
わが
)
涙
(
なみだ
)
147
淵瀬
(
ふちせ
)
と
流
(
なが
)
れて
止
(
と
)
め
度
(
ど
)
なし
148
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
神
(
かみ
)
のます
限
(
かぎ
)
り
149
若君
(
わかぎみ
)
様
(
さま
)
や
姫君
(
ひめぎみ
)
は
150
太
(
ふと
)
き
功
(
いさを
)
を
立
(
た
)
てまして
151
軈
(
やが
)
てはヒルの
神柱
(
かむばしら
)
152
救
(
すく
)
ひの
君
(
きみ
)
と
仰
(
あふ
)
がれて
153
これの
御国
(
みくに
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
154
高砂島
(
たかさごじま
)
の
端々
(
はしばし
)
を
155
皆
(
みな
)
其
(
その
)
徳
(
とく
)
に
服
(
まつろ
)
へて
156
昔
(
むかし
)
に
変
(
かは
)
るインカの
栄
(
さか
)
え
157
松
(
まつ
)
も
目出度
(
めでた
)
き
高砂
(
たかさご
)
の
158
慰
(
じやう
)
と
姥
(
うば
)
との
末永
(
すゑなが
)
く
159
治
(
をさ
)
まる
御代
(
みよ
)
ぞ
待
(
ま
)
たれける
160
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
161
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御恵
(
みめぐみ
)
に
162
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
の
行衛
(
ゆくへ
)
をば
163
何卒
(
なにとぞ
)
安
(
やす
)
く
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
164
兄
(
あに
)
の
命
(
みこと
)
のましませる
165
霊地
(
れいち
)
に
無事
(
ぶじ
)
に
送
(
おく
)
りませ
166
御側
(
みそば
)
に
近
(
ちか
)
く
仕
(
つか
)
へたる
167
春子
(
はるこ
)
の
姫
(
ひめ
)
が
赤心
(
まごころ
)
を
168
捧
(
ささ
)
げて
祈
(
いの
)
り
奉
(
たてまつ
)
る』
169
秋山別
(
あきやまわけ
)
、
170
モリスは
吾
(
わが
)
家
(
や
)
に
帰
(
かへ
)
つて
居
(
ゐ
)
たが、
171
何
(
なん
)
だか
胸騒
(
むなさわ
)
ぎがしてならぬので、
172
姫
(
ひめ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
変事
(
へんじ
)
はなきかと、
173
両人
(
りやうにん
)
期
(
き
)
せずして、
174
子
(
ね
)
の
刻
(
こく
)
過
(
すぎ
)
に
表門
(
おもてもん
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
入
(
いり
)
来
(
きた
)
り、
175
各自
(
めいめい
)
の
事務室
(
じむしつ
)
に
入
(
い
)
つて
監視
(
かんし
)
の
役
(
やく
)
を
努
(
つと
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
176
姫
(
ひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
よりは
流暢
(
りうちやう
)
な
琴
(
こと
)
の
音
(
ね
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
177
秋山別
(
あきやまわけ
)
、
178
モリス
両人
(
りやうにん
)
は
琴
(
こと
)
の
音
(
ね
)
を
聞
(
き
)
いて
一
(
ひと
)
先
(
ま
)
づ
安心
(
あんしん
)
し、
179
両人
(
りやうにん
)
は
愉快気
(
ゆくわいげ
)
に
声
(
こゑ
)
高
(
たか
)
らかに
談話
(
だんわ
)
を
始
(
はじ
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
180
秋山
(
あきやま
)
『モリス
殿
(
どの
)
、
181
此
(
この
)
深夜
(
しんや
)
に
御
(
ご
)
老体
(
らうたい
)
の
貴殿
(
きでん
)
、
182
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
千万
(
せんばん
)
で
厶
(
ござ
)
る。
183
何
(
なに
)
か
急用
(
きふよう
)
でも
出来
(
でき
)
たので
厶
(
ござ
)
るかな』
184
モリス『
別
(
べつ
)
に
之
(
これ
)
といふ
急用
(
きふよう
)
も
無
(
な
)
けれども、
185
何
(
なん
)
だか
胸騒
(
むなさわ
)
ぎが
致
(
いた
)
し、
186
或
(
あるひ
)
は
城中
(
じやうちう
)
に
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
就
(
つい
)
て
変事
(
へんじ
)
の
突発
(
とつぱつ
)
せしに
非
(
あら
)
ずやと、
187
取
(
と
)
る
物
(
もの
)
も
取
(
とり
)
敢
(
あへ
)
ず、
188
夜中
(
やちう
)
乍
(
なが
)
らも、
189
供
(
とも
)
をも
連
(
つ
)
れずソツト
出
(
で
)
て
参
(
まゐ
)
つた
次第
(
しだい
)
で
厶
(
ござ
)
る。
190
そして
貴殿
(
きでん
)
も
亦
(
また
)
夜陰
(
やいん
)
に
御
(
ご
)
登城
(
とじやう
)
になつたのは、
191
何
(
なに
)
か
感
(
かん
)
ずる
所
(
ところ
)
があつての
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
るかな』
192
秋山
(
あきやま
)
『
吾々
(
われわれ
)
も
貴殿
(
きでん
)
の
御
(
お
)
考
(
かんが
)
への
如
(
ごと
)
く、
193
何
(
なん
)
だか
胸騒
(
むなさわ
)
ぎが
致
(
いた
)
すので、
194
姫
(
ひめ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
変
(
かは
)
つた
事
(
こと
)
はなきやと
心配
(
しんぱい
)
でならず
罷
(
まか
)
り
越
(
こ
)
したので
厶
(
ござ
)
る。
195
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
姫
(
ひめ
)
の
御
(
お
)
居間
(
ゐま
)
近
(
ちか
)
く
伺
(
うかが
)
ひ
寄
(
よ
)
つて、
196
様子
(
やうす
)
を
探
(
さぐ
)
れば、
197
いと
流暢
(
りうちやう
)
なる
琴
(
こと
)
の
音色
(
ねいろ
)
、
198
ヤレ
安心
(
あんしん
)
とここ
迄
(
まで
)
引返
(
ひきかへ
)
して
休息
(
きうそく
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
る
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
る。
199
どうやら
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
もお
気
(
き
)
が
召
(
め
)
したと
見
(
み
)
えて、
200
明日
(
あす
)
の
日
(
ひ
)
が
待
(
ま
)
たれてならぬか、
201
一目
(
ひとめ
)
も
寝
(
ね
)
ずに
琴
(
こと
)
を
弾
(
だん
)
じて
居
(
ゐ
)
られるとは、
202
之
(
これ
)
迄
(
まで
)
にない
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
る。
203
テも
扨
(
さて
)
も
喜
(
よろこ
)
ばしい
瑞祥
(
ずゐしやう
)
では
厶
(
ござ
)
らぬか』
204
モリス『
如何
(
いか
)
にも
御
(
お
)
説
(
せつ
)
の
通
(
とほ
)
り
吾々
(
われわれ
)
も
若返
(
わかがへ
)
つた
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
が
致
(
いた
)
すで
厶
(
ござ
)
る。
205
モ
一度
(
いちど
)
元
(
もと
)
の
昔
(
むかし
)
の
若
(
わか
)
い
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
になつて
見
(
み
)
たい
様
(
やう
)
で
厶
(
ござ
)
るワイ。
206
アツハヽヽヽ』
207
秋山
(
あきやま
)
『
時
(
とき
)
にモリス
殿
(
どの
)
、
208
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は
何号
(
なんがう
)
がお
望
(
のぞ
)
みであらうかな』
209
モリス『あの
歌
(
うた
)
によれば、
210
一号
(
いちがう
)
二号
(
にがう
)
三号
(
さんがう
)
四号
(
しがう
)
は
駄目
(
だめ
)
でせう、
211
先
(
ま
)
づ
五号
(
ごがう
)
を
御
(
ご
)
採用
(
さいよう
)
になるでせう。
212
秋山別
(
あきやまわけ
)
殿
(
どの
)
、
213
御
(
お
)
芽出度
(
めでた
)
う
厶
(
ござ
)
る。
214
貴殿
(
きでん
)
の
御
(
ご
)
子息
(
しそく
)
では
厶
(
ござ
)
らぬか』
215
秋山
(
あきやま
)
『
成程
(
なるほど
)
、
216
拙者
(
せつしや
)
の
悴
(
せがれ
)
菊彦
(
きくひこ
)
も
果報者
(
くわはうもの
)
で
厶
(
ござ
)
るワイ。
217
拙者
(
せつしや
)
と
貴殿
(
きでん
)
とは
当城
(
たうじやう
)
の
御
(
お
)
娘子
(
むすめご
)
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
し、
218
大変
(
たいへん
)
に
苦労
(
くらう
)
を
致
(
いた
)
して、
219
遂
(
つひ
)
にはあの
結果
(
けつくわ
)
、
220
実
(
じつ
)
に
若気
(
わかげ
)
の
至
(
いた
)
りとは
申
(
まを
)
し
乍
(
なが
)
ら、
221
エライ
恥
(
はぢ
)
をかいたもので
厶
(
ござ
)
るが、
222
吾
(
わが
)
悴
(
せがれ
)
は
父
(
ちち
)
に
勝
(
まさ
)
つて、
223
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
御意
(
ぎよい
)
に
叶
(
かな
)
ふとは、
224
テもさても
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
も
変
(
かは
)
つたもので
厶
(
ござ
)
るワ、
225
オツホヽヽヽ』
226
と
笑壺
(
ゑつぼ
)
に
入
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
227
一方
(
いつぱう
)
春子姫
(
はるこひめ
)
は……
最早
(
もはや
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
も
落
(
おち
)
のびられたであらう、
228
ヨモヤ
追手
(
おつて
)
もかかるまい。
229
サア
之
(
これ
)
から
妾
(
わらは
)
もお
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
ひ、
230
姫
(
ひめ
)
の
御
(
おん
)
身
(
み
)
を
保護
(
ほご
)
せねばなるまい。
231
照国
(
てるくに
)
街道
(
かいだう
)
の
一筋道
(
ひとすぢみち
)
、
232
夜明
(
よあ
)
けに
間
(
ま
)
のない
寅
(
とら
)
の
刻
(
こく
)
、
233
グヅグヅしては
居
(
を
)
られない……と
足装束
(
あししやうぞく
)
を
固
(
かた
)
め、
234
裏門
(
うらもん
)
より
一散走
(
いちさんばし
)
りに
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
した。
235
城内
(
じやうない
)
の
洋犬
(
かめ
)
の
吠
(
ほ
)
える
声
(
こゑ
)
がワウ ワウ ワウと
頻
(
しき
)
りに
響
(
ひび
)
き
来
(
きた
)
る。
236
秋山別
(
あきやまわけ
)
、
237
モリスは
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
耳
(
みみ
)
を
澄
(
す
)
ませ、
238
秋山
(
あきやま
)
『
何時
(
いつ
)
にない
犬
(
いぬ
)
の
泣声
(
なきごゑ
)
、
239
コリヤ
一通
(
ひととほり
)
では
厶
(
ござ
)
るまい。
240
第一
(
だいいち
)
、
241
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のお
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
が
気
(
き
)
づかはしい』
242
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
243
姫
(
ひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
の
前
(
まへ
)
に
駆
(
かけ
)
つけて
見
(
み
)
ると、
244
琴
(
こと
)
の
音
(
ね
)
はピタリと
止
(
や
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
245
秋山
(
あきやま
)
『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
246
御免
(
ごめん
)
』
247
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
248
隔
(
へだて
)
の
襖
(
ふすま
)
をガラリと
引開
(
ひきあ
)
け、
249
覗
(
のぞ
)
き
見
(
み
)
れば
豈計
(
あにはか
)
らむや、
250
琴
(
こと
)
の
主
(
ぬし
)
は
藻脱
(
もぬ
)
けの
殻
(
から
)
、
251
若
(
も
)
しや
便所
(
べんじよ
)
ではあるまいかと、
252
捜
(
さが
)
し
廻
(
まは
)
れども、
253
姫
(
ひめ
)
の
気配
(
けはい
)
もせぬ。
254
春子姫
(
はるこひめ
)
を
起
(
おこ
)
して
尋
(
たづ
)
ねむかと、
255
春子
(
はるこ
)
の
居間
(
ゐま
)
へ
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
れば、
256
之
(
これ
)
も
亦
(
また
)
藻脱
(
もぬ
)
けの
殻
(
から
)
……
257
秋山
(
あきやま
)
『コリヤ
大変
(
たいへん
)
だ、
258
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らこんな
失態
(
しつたい
)
を
演
(
えん
)
じ
乍
(
なが
)
ら、
259
国司
(
こくし
)
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
に
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げることは
出来
(
でき
)
まい。
260
前
(
さき
)
には
若君
(
わかぎみ
)
を
取逃
(
とりにが
)
し、
261
今度
(
こんど
)
又
(
また
)
姫君
(
ひめぎみ
)
を
取逃
(
とりにが
)
したと
云
(
い
)
はれては、
262
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
は
皺
(
しわ
)
つ
腹
(
ぱら
)
を
切
(
き
)
つて
申
(
まをし
)
訳
(
わけ
)
をするより
道
(
みち
)
は
無
(
な
)
からう。
263
幸
(
さいはひ
)
まだ
誰
(
たれ
)
も
知
(
し
)
らぬ
内
(
うち
)
だ。
264
モリス
殿
(
どの
)
、
265
貴殿
(
きでん
)
と
両人
(
りやうにん
)
がソツと
捜
(
さが
)
さうでは
厶
(
ござ
)
らぬか』
266
モリス『
秋山別
(
あきやまわけ
)
殿
(
どの
)
、
267
如何
(
いか
)
にも
左様
(
さやう
)
、
268
吾々
(
われわれ
)
の
大責任
(
だいせきにん
)
で
厶
(
ござ
)
れば、
269
城内
(
じやうない
)
の
人々
(
ひとびと
)
に
分
(
わか
)
らぬ
内
(
うち
)
、
270
余
(
あま
)
り
遠
(
とほ
)
くは
参
(
まゐ
)
りますまい、
271
捜索
(
そうさく
)
致
(
いた
)
しませう。
272
表門
(
おもてもん
)
は
人
(
ひと
)
の
目
(
め
)
に
立
(
た
)
つ、
273
先
(
ま
)
づは
裏門
(
うらもん
)
より』
274
と
裏門
(
うらもん
)
指
(
さ
)
して
急
(
いそ
)
ぎ
行
(
ゆ
)
く。
275
裏門
(
うらもん
)
の
戸
(
と
)
は
無造作
(
むざうさ
)
に
開
(
あ
)
け
放
(
はな
)
たれ、
276
女
(
をんな
)
の
半巾
(
はんかち
)
が
一
(
ひと
)
つ
落
(
お
)
ちて
居
(
ゐ
)
る。
277
モリスは
早
(
はや
)
くも
半巾
(
はんかち
)
を
拾
(
ひろ
)
ひ
上
(
あ
)
げ、
278
夜明前
(
よあけまへ
)
の
月光
(
げつくわう
)
に
照
(
てら
)
して
見
(
み
)
れば、
279
春
(
はる
)
の
印
(
しるし
)
がついて
居
(
ゐ
)
る。
280
……テツキリ
之
(
これ
)
は
春子
(
はるこ
)
が
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
と
諜
(
しめ
)
し
合
(
あは
)
せ、
281
逐電
(
ちくでん
)
したに
違
(
ちが
)
ひない……と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
282
両人
(
りやうにん
)
は
裏門外
(
うらもんぐわい
)
の
階段
(
かいだん
)
をトントントンと
下
(
お
)
り
乍
(
なが
)
ら、
283
杖
(
つゑ
)
を
力
(
ちから
)
に
転
(
こ
)
けつ
輾
(
まろ
)
びつ、
284
馬場
(
ばんば
)
の
木
(
き
)
の
茂
(
しげ
)
みを
指
(
さ
)
して
追
(
お
)
つかけ
行
(
ゆ
)
く。
285
(
大正一三・一・二四
旧一二・一二・一九
伊予 於山口氏邸、
松村真澄
録)
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