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第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
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第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
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第69巻(申の巻)
巻頭言
第1篇 清風涼雨
01 大評定
〔1746〕
02 老断
〔1747〕
03 喬育
〔1748〕
04 国の光
〔1749〕
05 性明
〔1750〕
06 背水会
〔1751〕
第2篇 愛国の至情
07 聖子
〔1752〕
08 春乃愛
〔1753〕
09 迎酒
〔1754〕
10 宣両
〔1755〕
11 気転使
〔1756〕
12 悪原眠衆
〔1757〕
第3篇 神柱国礎
13 国別
〔1758〕
14 暗枕
〔1759〕
15 四天王
〔1760〕
16 波動
〔1761〕
第4篇 新政復興
17 琴玉
〔1762〕
18 老狽
〔1763〕
19 老水
〔1764〕
20 声援
〔1765〕
21 貴遇
〔1766〕
22 有終
〔1767〕
余白歌
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第二一章
貴遇
(
きぐう
)
〔一七六六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第69巻 山河草木 申の巻
篇:
第4篇 新政復興
よみ(新仮名遣い):
しんせいふっこう
章:
第21章 貴遇
よみ(新仮名遣い):
きぐう
通し章番号:
1766
口述日:
1924(大正13)年01月25日(旧12月20日)
口述場所:
伊予 山口氏邸
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1927(昭和2)年10月26日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
宣伝歌の主は、国照別一行であった。
国照別は、二人の女が山賊に襲われているところに出くわし、間に飛び込んで加勢をする。その勢いに山賊たちは切りたてられ、ほうほうの体で逃げていく。
清香姫・春子姫は、国愛別の密使により、国照別の素性をあらかじめ知っていた。また清香姫は兄より、国照別こそ将来の夫、と聞かされていた。そこで、一緒にヒルの国で立て直しの活動をしようともちかける。
国照別も、ヒルの国にやってきたのは、実は国愛別との約束「珍の国の改良は国愛別が、ヒルの国は国照別が改革する」にしたがってのことであったと、明かす。
一行はヒルの都の場末にやって来た。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6921
愛善世界社版:
289頁
八幡書店版:
第12輯 378頁
修補版:
校定版:
304頁
普及版:
66頁
初版:
ページ備考:
001
『
桃上彦
(
ももがみひこ
)
の
昔
(
むかし
)
より
002
万古
(
ばんこ
)
不易
(
ふえき
)
の
国体
(
こくたい
)
を
003
保
(
たも
)
ち
来
(
きた
)
りし
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
004
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
もアルゼンチンの
005
高砂城
(
たかさごじやう
)
の
国司
(
こくし
)
の
悴
(
せがれ
)
006
われは
国照別
(
くにてるわけ
)
司
(
つかさ
)
007
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
暗
(
やみ
)
を
晴
(
は
)
らさむと
008
雲霧
(
くもきり
)
分
(
わ
)
けて
天
(
あま
)
さかる
009
市井
(
しせい
)
の
巷
(
ちまた
)
に
身
(
み
)
をやつし
010
下人草
(
しもひとぐさ
)
の
窮状
(
きうじやう
)
を
011
窺
(
うかが
)
ひすまし
新
(
あたら
)
しき
012
五六七
(
みろく
)
の
御代
(
みよ
)
の
柱
(
はしら
)
をば
013
堅磐
(
かきは
)
常磐
(
ときは
)
に
立
(
た
)
てむとて
014
生
(
うま
)
れついたる
仁侠
(
にんけふ
)
の
015
引
(
ひ
)
くに
退
(
ひ
)
かれぬ
男伊達
(
をとこだて
)
016
故郷
(
こきやう
)
の
空
(
そら
)
を
後
(
あと
)
にして
017
踏
(
ふ
)
みもならはぬ
旅
(
たび
)
の
空
(
そら
)
018
心
(
こころ
)
を
研
(
みが
)
き
肝
(
きも
)
をねり
019
醜
(
しこ
)
の
大蛇
(
をろち
)
も
曲神
(
まがかみ
)
も
020
地震
(
ぢしん
)
雷
(
かみなり
)
火
(
ひ
)
の
雨
(
あめ
)
も
021
いつかな
恐
(
おそ
)
れぬ
魂
(
たま
)
となり
022
天
(
あめ
)
と
地
(
つち
)
とに
蟠
(
わだか
)
まる
023
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
醜狐
(
しこぎつね
)
024
其
(
その
)
外
(
ほか
)
百
(
もも
)
の
曲鬼
(
まがおに
)
を
025
言霊剣
(
ことたまつるぎ
)
抜
(
ぬ
)
きもちて
026
言向和
(
ことむけやは
)
し
天国
(
てんごく
)
の
027
御園
(
みその
)
を
開
(
ひら
)
く
吾
(
わが
)
望
(
のぞみ
)
028
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
029
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へし
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
は
030
既
(
すで
)
に
年老
(
としお
)
い
給
(
たま
)
へども
031
新進
(
しんしん
)
気鋭
(
きえい
)
の
魂
(
たましひ
)
を
032
深
(
ふか
)
く
秘
(
かく
)
して
忍
(
しの
)
びます
033
其
(
その
)
御心
(
みこころ
)
を
思
(
おも
)
ひやり
034
子
(
こ
)
としていかで
悠々
(
いういう
)
と
035
遊惰
(
いうだ
)
に
日
(
ひ
)
をば
送
(
おく
)
らむや
036
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つたる
今日
(
けふ
)
の
旅
(
たび
)
037
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
現
(
あら
)
はれて
038
開
(
ひら
)
き
給
(
たま
)
ひしヒルの
国
(
くに
)
039
ヒルの
都
(
みやこ
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
し
040
南
(
みなみ
)
と
北
(
きた
)
と
相応
(
あひおう
)
じ
041
此
(
この
)
高砂
(
たかさご
)
の
天地
(
てんち
)
をば
042
昔
(
むかし
)
の
神代
(
かみよ
)
にねぢ
直
(
なほ
)
し
043
神人
(
しんじん
)
和合
(
わがふ
)
の
楽園
(
らくゑん
)
に
044
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
045
竜世
(
たつよ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
046
謹
(
つつし
)
み
敬
(
うやま
)
ひ
願
(
ね
)
ぎまつる
047
旭
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
048
月
(
つき
)
落
(
お
)
ち
星
(
ほし
)
は
失
(
う
)
するとも
049
神
(
かみ
)
の
守
(
まも
)
りのある
限
(
かぎ
)
り
050
いかで
恐
(
おそ
)
れむ
敷島
(
しきしま
)
の
051
大和
(
やまと
)
男子
(
をのこ
)
の
魂
(
たましひ
)
は
052
金鉄
(
きんてつ
)
よりも
尚
(
なほ
)
堅
(
かた
)
し
053
勇
(
いさ
)
めよ
勇
(
いさ
)
め
乾児
(
こぶん
)
共
(
ども
)
054
進
(
すす
)
めや
進
(
すす
)
めヒルの
国
(
くに
)
055
高照山
(
たかてるやま
)
は
峻
(
さか
)
しとも
056
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
嵐
(
あらし
)
は
強
(
つよ
)
くとも
057
道
(
みち
)
の
行方
(
ゆくへ
)
は
遠
(
とほ
)
くとも
058
いかで
怯
(
ひる
)
まむ
男伊達
(
をとこだて
)
059
男
(
をとこ
)
の
中
(
なか
)
の
男
(
をとこ
)
よと
060
世
(
よ
)
に
謳
(
うた
)
はれて
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
061
之
(
これ
)
ぞ
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
望
(
のぞみ
)
なり
062
之
(
これ
)
ぞ
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
願
(
ねがひ
)
なり
063
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
064
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
065
国照別
(
くにてるわけ
)
の
国州
(
くにしう
)
始
(
はじ
)
め
駒治
(
こまはる
)
、
066
市
(
いち
)
、
067
馬
(
うま
)
、
068
浅
(
あさ
)
の
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
捩鉢巻
(
ねぢはちまき
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
069
真黒
(
まつくろ
)
の
腕
(
うで
)
をヌツト
出
(
だ
)
し、
070
埃
(
ほこり
)
まぶれの
毛
(
け
)
だらけの
脛
(
すね
)
を
引
(
ひき
)
摺
(
ず
)
り
乍
(
なが
)
ら、
071
此処
(
ここ
)
までやつて
来
(
き
)
た。
072
見
(
み
)
れば
怪
(
あや
)
しき
人
(
ひと
)
の
喚
(
わめ
)
き
声
(
ごゑ
)
、
073
唯事
(
ただごと
)
ならじと
近寄
(
ちかよ
)
り
見
(
み
)
れば、
074
孱弱
(
かよわ
)
き
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
を
相手
(
あひて
)
に
大
(
だい
)
の
男
(
をとこ
)
が
詰
(
つ
)
めかけて
居
(
ゐ
)
る。
075
国州
(
くにしう
)
は
男
(
をとこ
)
を
売
(
う
)
るは
今
(
いま
)
此
(
この
)
時
(
とき
)
と、
076
赤裸
(
まつぱだか
)
の
褌
(
まはし
)
一
(
ひと
)
つとなり、
077
喧嘩
(
けんくわ
)
の
中
(
なか
)
に
矢庭
(
やには
)
に
飛
(
とび
)
込
(
こ
)
み、
078
大音声
(
だいおんじやう
)
にて、
079
『
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つた、
080
此
(
この
)
喧嘩
(
けんくわ
)
、
081
俺
(
おれ
)
が
預
(
あづ
)
かつた』
082
と
大
(
だい
)
の
字
(
じ
)
になつて、
083
立
(
た
)
ちはだかれば、
084
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
何
(
いづ
)
れも
二三間
(
にさんげん
)
許
(
ばか
)
り
後
(
あと
)
へ
退
(
ひ
)
いて
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
085
源九郎
(
げんくらう
)
は
冷
(
ひや
)
やかに
之
(
これ
)
を
眺
(
なが
)
めて、
086
『オイ、
087
どこの
唐変木
(
たうへんぼく
)
か
知
(
し
)
らねいが、
088
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
喧嘩
(
けんくわ
)
に
這入
(
はい
)
つた
以上
(
いじやう
)
は、
089
みん
事
(
ごと
)
、
090
埒
(
らち
)
をあけるだらうのう。
091
なまじひ
挨拶
(
あいさつ
)
なら、
092
やらねえが
良
(
よ
)
いぞ、
093
みん
事
(
ごと
)
、
094
甲斐性
(
かひしやう
)
があるか』
095
国
(
くに
)
『アツハヽヽヽ、
096
耄碌
(
まうろく
)
共
(
ども
)
、
097
確
(
しつ
)
かり
聞
(
き
)
け。
098
其
(
その
)
方
(
はう
)
等
(
ら
)
は
旅人
(
たびびと
)
を
掠
(
かす
)
むる
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
泥棒
(
どろばう
)
ぢやねえか、
099
俺
(
おれ
)
はかう
見
(
み
)
えても
天下
(
てんか
)
の
侠客
(
けふかく
)
だ。
100
義
(
ぎ
)
の
為
(
ため
)
には
命
(
いのち
)
を
惜
(
をし
)
まねえお
兄
(
にい
)
さまだ。
101
泥棒
(
どろばう
)
が
旅人
(
りよにん
)
を
掠
(
かす
)
めてる
所
(
ところ
)
へ
入
(
いり
)
込
(
こ
)
んで
来
(
き
)
たのは
102
仲裁
(
ちうさい
)
ではねえぞ、
103
懲
(
こら
)
しめの
為
(
ため
)
にやつて
来
(
き
)
たのだ。
104
どうだ、
105
其
(
その
)
方
(
はう
)
を
始
(
はじ
)
め
一同
(
いちどう
)
の
奴
(
やつ
)
、
106
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
して
真人間
(
まにんげん
)
になるか、
107
返答
(
へんたふ
)
聞
(
き
)
かう』
108
源
(
げん
)
『ワツハヽヽヽ、
109
蟷螂
(
かまきり
)
の
空威張
(
からゐばり
)
奴
(
め
)
、
110
そんなおどし
文句
(
もんく
)
で
驚
(
おどろ
)
く
様
(
やう
)
な
源九郎
(
げんくらう
)
ぢやねえぞ、
111
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
人
(
ひと
)
を
裸
(
はだか
)
にして、
112
財物
(
ざいもつ
)
を
盗
(
と
)
れば
可
(
い
)
いのだ。
113
それを
否
(
いな
)
む
奴
(
やつ
)
は、
114
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
乍
(
なが
)
ら
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
つても
目的
(
もくてき
)
を
達
(
たつ
)
するのだ。
115
其
(
その
)
方
(
はう
)
もいらざる
空威張
(
からゐば
)
りを
致
(
いた
)
すより、
116
赤裸
(
まつぱだか
)
のまま、
1161
トツトと
帰
(
かへ
)
れ。
117
いらざるチヨツカイを
出
(
だ
)
すと、
118
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
乍
(
なが
)
ら
命
(
いのち
)
がねえぞ』
119
国
(
くに
)
『ハツハヽヽヽ、
120
盗人
(
ぬすびと
)
猛々
(
たけだけ
)
しいとはよく
云
(
い
)
つたものだ、
121
取
(
と
)
れるなら
取
(
と
)
つて
見
(
み
)
よ』
122
源九郎
(
げんくらう
)
は
髪
(
かみ
)
を
逆立
(
さかだ
)
て
乍
(
なが
)
ら、
123
『オイ
乾児
(
こぶん
)
共
(
ども
)
、
124
何
(
なに
)
を
躊躇
(
ちうちよ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
125
タカが
侠客
(
けふかく
)
の
四
(
よ
)
人
(
にん
)
や
五
(
ご
)
人
(
にん
)
、
126
ばらして
了
(
しま
)
へ』
127
と
下知
(
げち
)
すれば、
128
又
(
また
)
もや
十数
(
じふすう
)
人
(
にん
)
の
小盗人
(
こぬすびと
)
は
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
より
切
(
き
)
つてかかる。
129
清香姫
(
きよかひめ
)
、
130
春子姫
(
はるこひめ
)
は
之
(
これ
)
に
力
(
ちから
)
を
得
(
え
)
、
131
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
敵
(
てき
)
を
潜
(
くぐ
)
つて、
132
切
(
きり
)
立
(
た
)
て
薙
(
なぎ
)
立
(
た
)
てる。
133
瞬
(
またた
)
く
間
(
うち
)
に、
134
十数
(
じふすう
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつ
)
は
鼻
(
はな
)
を
削
(
そ
)
がれ、
135
腕
(
うで
)
をかすられ、
136
足
(
あし
)
を
突
(
つ
)
かれ、
137
ホウボウの
体
(
てい
)
で
算
(
さん
)
を
乱
(
みだ
)
して
逃
(
にげ
)
出
(
いだ
)
す。
138
源九郎
(
げんくらう
)
も
此
(
この
)
体
(
てい
)
を
見
(
み
)
て、
139
大人気
(
おとなげ
)
なくも、
140
高照山
(
たかてるやま
)
の
山頂
(
さんちやう
)
目懸
(
めが
)
け
刀
(
かたな
)
を
打
(
うち
)
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
141
殿
(
しんがり
)
を
守
(
まも
)
り、
142
味方
(
みかた
)
を
浚
(
さら
)
へて
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
143
国州
(
くにしう
)
は
追
(
お
)
ひかけるも
無用
(
むよう
)
と、
144
谷川
(
たにがは
)
の
水
(
みづ
)
を
手
(
て
)
に
掬
(
すく
)
ふて
喉
(
のど
)
を
潤
(
うるほ
)
し、
145
身
(
み
)
づくろひをし
乍
(
なが
)
ら、
146
『オイ
駒
(
こま
)
、
147
如何
(
どう
)
だつた、
148
チツト
泡
(
あわ
)
吹
(
ふ
)
いただらうな』
149
駒
(
こま
)
『
侠客
(
けふかく
)
の
喧嘩
(
けんくわ
)
なら
喧嘩
(
けんくわ
)
の
仕応
(
しごた
)
へもありますが、
150
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つても
151
一方
(
いつぱう
)
が
泥棒
(
どろばう
)
だから
険呑
(
けんのん
)
でなりませぬワ。
152
マアマア
御
(
お
)
蔭
(
かげ
)
で
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
には
怪我
(
けが
)
が
無
(
な
)
くて
結構
(
けつこう
)
でした』
153
国
(
くに
)
『
泥棒
(
どろばう
)
だつて、
154
侠客
(
けふかく
)
だつて、
155
喧嘩
(
けんくわ
)
に
変
(
かは
)
りは
無
(
な
)
い。
156
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
も、
157
此処
(
ここ
)
でゆつくり
一服
(
いつぷく
)
するが
可
(
い
)
い。
158
此
(
この
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は
如何
(
どう
)
して
又
(
また
)
あんな
者
(
もの
)
と
喧嘩
(
けんくわ
)
をなさつただらうかな』
159
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
160
清香姫
(
きよかひめ
)
の
側
(
そば
)
に
寄
(
よ
)
り、
161
国
(
くに
)
『エー
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
162
危
(
あぶ
)
ねえこつて
厶
(
ござ
)
えやした。
163
先
(
ま
)
づ
御
(
お
)
怪我
(
けが
)
が
無
(
な
)
くて、
164
お
芽出度
(
めでた
)
う
厶
(
ござ
)
いやす。
165
わつちや、
166
国州
(
くにしう
)
と
云
(
い
)
つて、
167
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
の
者
(
もの
)
、
168
ヒルの
国
(
くに
)
へ
行
(
ゆ
)
く
途中
(
とちう
)
、
169
計
(
はか
)
らずも
泥棒
(
どろばう
)
に
出会
(
でつくは
)
し、
170
一
(
ひと
)
つ
目覚
(
めざま
)
しをやつて
見
(
み
)
ましたが、
171
イヤ
早
(
はや
)
もろい
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
えやした。
172
アツハヽヽヽ』
173
清香
(
きよか
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います、
174
危
(
あやふ
)
い
所
(
ところ
)
へお
出
(
いで
)
下
(
くだ
)
さいまして、
175
こんな
嬉
(
うれ
)
しいことは
厶
(
ござ
)
いませぬ。
176
貴方
(
あなた
)
は
今
(
いま
)
、
177
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
の
国州
(
くにしう
)
と
云
(
い
)
ふ
侠客
(
けふかく
)
だと
仰有
(
おつしや
)
いましたが、
178
そんなら
貴方
(
あなた
)
は
妾
(
わらは
)
の
尋
(
たづ
)
ぬるお
方
(
かた
)
、
179
国照別
(
くにてるわけ
)
さまぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
180
浅公
(
あさこう
)
は
側
(
そば
)
より、
181
『
左様
(
さやう
)
々々
(
さやう
)
、
182
今
(
いま
)
こそ
侠客
(
けふかく
)
になつて
厶
(
ござ
)
るけれど、
183
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
の
御
(
お
)
世継
(
よつぎ
)
国照別
(
くにてるわけ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ。
184
用
(
よう
)
も
無
(
な
)
いのにヒルの
都
(
みやこ
)
へ
行
(
ゆ
)
かうと
仰有
(
おつしや
)
るので、
185
乾児
(
こぶん
)
の
悲
(
かな
)
しさ
已
(
やむ
)
を
得
(
え
)
ず
従
(
つ
)
いて
来
(
き
)
ましたが……ヘヽヽヽこんな
別嬪
(
べつぴん
)
さまが
厶
(
ござ
)
るので、
186
親分
(
おやぶん
)
さまも
御
(
お
)
越
(
こ
)
しになつたのだな、
187
イヤ
分
(
わか
)
りました、
188
親分
(
おやぶん
)
さま、
189
一杯
(
いつぱい
)
買
(
か
)
うて
貰
(
もら
)
はにやなりませぬぞ』
190
国
(
くに
)
『エ、
191
仕方
(
しかた
)
の
無
(
な
)
い
男
(
をとこ
)
だなア。
192
之
(
これ
)
だから
口
(
くち
)
の
軽
(
かる
)
い
奴
(
やつ
)
ア、
193
困
(
こま
)
ると
云
(
い
)
ふのだ。
194
チツト
控
(
ひか
)
へて
居
(
を
)
らう』
195
浅
(
あさ
)
『
何
(
なん
)
とマア、
196
親分
(
おやぶん
)
の
愉快
(
ゆくわい
)
相
(
さう
)
な
顔
(
かほ
)
、
197
そらさうだらう。
198
乾児
(
こぶん
)
の
私
(
わし
)
だつて、
199
愉快
(
ゆくわい
)
で
堪
(
たま
)
らないもの……
若
(
も
)
し
姫
(
ひめ
)
さま
喜
(
よろこ
)
びなさい。
200
貴女
(
あなた
)
が
遥々
(
はるばる
)
慕
(
した
)
ふて
怖
(
こは
)
い
目
(
め
)
をして、
201
尋
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
た
三国一
(
さんごくいち
)
の
婿
(
むこ
)
さまは、
202
ヘエー、
203
此
(
この
)
親方
(
おやかた
)
で
厶
(
ござ
)
いますよ。
204
何
(
なに
)
をグヅグヅして
厶
(
ござ
)
る、
205
恥
(
はづ
)
かしい
事
(
こと
)
も
何
(
なに
)
もない、
206
及
(
およ
)
ばず
乍
(
なが
)
ら
207
此
(
この
)
浅公
(
あさこう
)
が
月下氷人
(
なかうど
)
となつて
握手
(
あくしゆ
)
をさせませう。
208
何
(
なん
)
と
悪
(
わる
)
うは
厶
(
ござ
)
いますまいがな』
209
清香
(
きよか
)
『
妾
(
わらは
)
は
余
(
あま
)
りの
驚
(
おどろ
)
きで
何
(
なに
)
も
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
210
春子姫
(
はるこひめ
)
、
211
お
前
(
まへ
)
代
(
かは
)
つて、
212
あの
国
(
くに
)
さまにお
話
(
はなし
)
をして
下
(
くだ
)
さいな』
213
春子
(
はるこ
)
『これはこれは
危
(
あやふ
)
い
所
(
ところ
)
、
214
お
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいまして、
215
厚
(
あつ
)
く
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げまする。
216
貴方
(
あなた
)
が
噂
(
うはさ
)
に
高
(
たか
)
き
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
の
国照別
(
くにてるわけ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いますか、
217
存
(
ぞん
)
ぜぬ
事
(
こと
)
とて
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
を
致
(
いた
)
しました。
218
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
仰
(
おほ
)
せに
従
(
したが
)
ひ、
219
妾
(
わらは
)
が
代
(
かは
)
つて
御
(
お
)
話
(
はなし
)
を
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げ
度
(
た
)
う
厶
(
ござ
)
いますが、
220
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
はお
兄様
(
あにさま
)
と
牒
(
しめ
)
し
合
(
あは
)
せ、
221
国家
(
こくか
)
の
窮状
(
きうじやう
)
を
救
(
すく
)
はむとして、
222
色々
(
いろいろ
)
と
画策
(
くわくさく
)
を
遊
(
あそ
)
ばされ、
223
今
(
いま
)
又
(
また
)
お
兄様
(
あにさま
)
の
密使
(
みつし
)
に
依
(
よ
)
つて……
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
の
国州
(
くにしう
)
さまと
云
(
い
)
ふ
侠客
(
けふかく
)
にお
前
(
まへ
)
を
娶合
(
めあは
)
してやらう、
224
さうすればヒルの
国
(
くに
)
を
救
(
すく
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
る……と
御
(
ご
)
通知
(
つうち
)
が
厶
(
ござ
)
いましたので、
225
取
(
と
)
る
物
(
もの
)
も
取敢
(
とりあへ
)
ず
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
参
(
まゐ
)
つたので
厶
(
ござ
)
います。
226
果
(
はた
)
して
貴方
(
あなた
)
が
国照別
(
くにてるわけ
)
様
(
さま
)
ならば、
227
こんな
好都合
(
かうつがふ
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬ。
228
之
(
これ
)
からヒルの
国
(
くに
)
へお
伴
(
とも
)
をして
帰
(
かへ
)
り
度
(
た
)
う
厶
(
ござ
)
います。
229
どうぞ
此
(
この
)
儀
(
ぎ
)
御
(
お
)
聞届
(
ききとどけ
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
230
国
(
くに
)
『ウン、
231
貴女
(
あなた
)
が
国愛別
(
くにちかわけ
)
様
(
さま
)
のお
妹御
(
いもうとご
)
で
厶
(
ござ
)
つたか。
232
兼々
(
かねがね
)
兄上
(
あにうへ
)
より
貴女
(
あなた
)
の
思想
(
しさう
)
も
御
(
ご
)
器量
(
きりやう
)
も
承
(
うけたま
)
はつて
居
(
を
)
りました。
233
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
234
此
(
この
)
国照別
(
くにてるわけ
)
もヒルの
都
(
みやこ
)
を
指
(
さ
)
して
来
(
き
)
たのは、
235
貴女
(
あなた
)
に
会
(
あ
)
ひ
度
(
た
)
くもあり、
236
又
(
また
)
一
(
ひと
)
つ
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
は
国愛別
(
くにちかわけ
)
様
(
さま
)
に
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
して
改良
(
かいりやう
)
して
頂
(
いただ
)
き、
237
其
(
その
)
代
(
かは
)
りとして
拙者
(
せつしや
)
がヒルの
国
(
くに
)
を
根本
(
こんぽん
)
的
(
てき
)
に
改革
(
かいかく
)
せむと、
238
侠客
(
けふかく
)
となつて
浮世
(
うきよ
)
を
忍
(
しの
)
び
下層
(
かそう
)
生活
(
せいくわつ
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
239
回天
(
くわいてん
)
動地
(
どうち
)
の
大業
(
たいげふ
)
を
為
(
な
)
さむと、
240
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
やつて
参
(
まゐ
)
りました。
241
之
(
これ
)
は
願
(
ねが
)
ふても
無
(
な
)
き
互
(
たがひ
)
の
奇遇
(
きぐう
)
、
242
然
(
しか
)
らば
之
(
これ
)
より
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
伴
(
とも
)
を
致
(
いた
)
し、
243
ヒルの
城下
(
じやうか
)
へ
参
(
まゐ
)
りませう』
244
之
(
これ
)
より
一行
(
いつかう
)
男女
(
だんぢよ
)
七
(
しち
)
人
(
にん
)
は
堂々
(
だうだう
)
として、
245
大道
(
だいだう
)
の
正中
(
まんなか
)
を
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
唄
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
246
ヒルの
都
(
みやこ
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
247
浅公
(
あさこう
)
は
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて、
248
道々
(
みちみち
)
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
唄
(
うた
)
ふ。
249
『テルとカルとの
国境
(
くにざかひ
)
250
高照山
(
たかてるやま
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
251
高砂島
(
たかさごじま
)
で
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
い
252
大親分
(
おほおやぶん
)
の
国
(
くに
)
さまと
253
あたりを
払
(
はら
)
ひ
堂々
(
だうだう
)
と
254
地
(
つち
)
踏
(
ふ
)
みならし
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る
255
時
(
とき
)
しもあれや
谷川
(
たにがは
)
の
256
傍辺
(
かたへ
)
に
怪
(
あや
)
しき
人
(
ひと
)
の
声
(
こゑ
)
257
何事
(
なにごと
)
ならむと
近寄
(
ちかよ
)
れば
258
豈計
(
あにはか
)
らむや
雲
(
くも
)
をつく
259
ばかりの
大
(
おほ
)
きな
泥棒
(
どろばう
)
が
260
長
(
なが
)
い
奴
(
やつ
)
をば
引
(
ひき
)
抜
(
ぬ
)
いて
261
二人
(
ふたり
)
の
姫
(
ひめ
)
をまん
中
(
なか
)
に
262
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
から
切
(
き
)
りつける
263
此奴
(
こいつ
)
ア
救
(
すく
)
はにやなるまいと
264
親分
(
おやぶん
)
さまが
赤裸
(
まつぱだか
)
265
喧嘩
(
けんくわ
)
の
中
(
なか
)
に
跳
(
おど
)
り
入
(
い
)
り
266
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つたと
四股
(
しこ
)
踏
(
ふ
)
めば
267
さすがの
泥棒
(
どろぼう
)
肝
(
きも
)
つぶし
268
二足
(
ふたあし
)
三足
(
みあし
)
後
(
あと
)
しざり
269
蜥蜴
(
とかげ
)
が
欠伸
(
あくび
)
をした
様
(
やう
)
に
270
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
いで
呆
(
あき
)
れ
顔
(
がほ
)
271
親分
(
おやぶん
)
さまの
掛合
(
かけあひ
)
で
272
木
(
こ
)
つ
端
(
ぱ
)
泥棒
(
どろぼう
)
は
悉
(
ことごと
)
く
273
大切
(
だいじ
)
の
大切
(
だいじ
)
の
仕事
(
しごと
)
をば
274
可惜
(
あつたら
)
棒
(
ぼう
)
に
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら
275
手疵
(
てきず
)
を
負
(
お
)
ふて
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く
276
後
(
あと
)
に
国照別
(
くにてるわけ
)
さまは
277
ヒルの
国
(
くに
)
からやつて
来
(
き
)
た
278
天女
(
てんによ
)
のやうな
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
と
279
二世
(
にせ
)
の
約束
(
やくそく
)
堅
(
かた
)
めつつ
280
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
乾児
(
こぶん
)
を
引
(
ひき
)
伴
(
つ
)
れて
281
そんならお
前
(
まへ
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
り
282
之
(
これ
)
からヒルの
都路
(
みやこぢ
)
へ
283
行
(
い
)
つてやらうと
嬉
(
うれ
)
し
気
(
げ
)
に
284
云
(
い
)
はれた
時
(
とき
)
の
姫
(
ひめ
)
の
顔
(
かほ
)
285
側
(
そば
)
に
見
(
み
)
てゐる
俺
(
おれ
)
さへも
286
何
(
なん
)
だか
嬉
(
うれ
)
しうなつてきた
287
オイオイ
駒治
(
こまはる
)
、
市
(
いち
)
、
馬
(
うま
)
よ
288
お
前
(
まへ
)
は
元
(
もと
)
は
取締
(
とりしまり
)
289
現在
(
げんざい
)
泥棒
(
どろぼう
)
を
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
290
眺
(
なが
)
め
乍
(
なが
)
らに
何
(
なん
)
のザマ
291
コラツと
一声
(
ひとこゑ
)
かけもせず
292
青
(
あを
)
い
面
(
つら
)
して
慄
(
ふる
)
ふて
居
(
ゐ
)
た
293
こんな
取締
(
とりしまり
)
が
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
294
あると
思
(
おも
)
へば
衆生
(
しゆじやう
)
も
295
枕
(
まくら
)
を
高
(
たか
)
う
寝
(
ね
)
られない
296
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
腰抜
(
こしぬけ
)
だ
297
親分
(
おやぶん
)
さまの
御
(
お
)
光
(
ひか
)
りで
298
ここまで
御
(
お
)
伴
(
とも
)
はしたものの
299
若
(
も
)
しも
一人
(
ひとり
)
になつたなら
300
キツト
泥棒
(
どろばう
)
にこみわられ
301
腕
(
かひな
)
の
一本
(
いつぽん
)
も
捩
(
も
)
ぎ
取
(
と
)
られ
302
ベソをかいたに
違
(
ちが
)
ひない
303
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
304
之
(
これ
)
を
思
(
おも
)
へば
浅公
(
あさこう
)
は
305
矢張
(
やつぱ
)
り
肝
(
きも
)
が
太
(
ふと
)
いワイ
306
サア
之
(
これ
)
からは
浅公
(
あさこう
)
が
307
親分
(
おやぶん
)
さまの
一
(
いち
)
の
枝
(
えだ
)
308
お
前
(
まへ
)
は
乾児
(
こぶん
)
になるがよい
309
ウントコドツコイ ドツコイシヨ
310
天
(
てん
)
を
封
(
ふう
)
じた
老木
(
らうぼく
)
の
311
並木
(
なみき
)
の
街道
(
かいだう
)
を
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
312
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
一行
(
いつかう
)
は
何
(
なん
)
と
無
(
な
)
く
313
勝利
(
しようり
)
の
都
(
みやこ
)
へ
行
(
ゆ
)
くやうな
314
涼
(
すず
)
しい
気分
(
きぶん
)
になつて
来
(
き
)
た
315
谷
(
たに
)
の
流
(
なが
)
れは
淙々
(
そうそう
)
と
316
飛沫
(
ひまつ
)
の
玉
(
たま
)
を
飾
(
かざ
)
りつつ
317
吾
(
わが
)
一行
(
いつかう
)
を
歓迎
(
くわんげい
)
し
318
琴
(
こと
)
を
弾
(
だん
)
じて
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
る
319
峰
(
みね
)
の
嵐
(
あらし
)
は
松柏
(
しようはく
)
の
320
梢
(
こずゑ
)
を
吹
(
ふ
)
いて
吾々
(
われわれ
)
を
321
謳歌
(
おうか
)
して
居
(
ゐ
)
る
勇
(
いさ
)
ましさ
322
ウントコドツコイ ドツコイシヨ
323
今
(
いま
)
は
侠客
(
けふかく
)
渡世
(
とせい
)
だが
324
親分
(
おやぶん
)
さまがたつた
今
(
いま
)
325
ヒルの
都
(
みやこ
)
に
現
(
あら
)
はれて
326
清香
(
きよか
)
の
姫
(
ひめ
)
の
婿
(
むこ
)
となり
327
国
(
くに
)
の
政治
(
せいぢ
)
を
執
(
と
)
られたら
328
必
(
かなら
)
ず
抜擢
(
ばつてき
)
遊
(
あそ
)
ばして
329
使
(
つか
)
ふて
下
(
くだ
)
さるだろ
程
(
ほど
)
に
330
駒公
(
こまこう
)
市公
(
いちこう
)
馬公
(
うまこう
)
よ
331
それをば
先
(
さき
)
の
楽
(
たのし
)
みと
332
思
(
おも
)
つて
俺
(
おれ
)
に
従
(
つ
)
いて
来
(
こ
)
い
333
前途
(
ぜんと
)
はいよいよ
有望
(
いうばう
)
だ
334
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
身
(
み
)
も
魂
(
たま
)
も
335
勇
(
いさ
)
みに
勇
(
いさ
)
み
跳
(
おど
)
り
出
(
だ
)
す
336
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
坂
(
さか
)
はきつくとも
337
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
日
(
ひ
)
かげは
暑
(
あつ
)
くとも
338
前途
(
ぜんと
)
に
望
(
のぞ
)
みを
抱
(
かか
)
へたる
339
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
一行
(
いつかう
)
の
魂
(
たましひ
)
は
340
火
(
ひ
)
にも
焼
(
や
)
けない
又
(
また
)
水
(
みづ
)
に
341
溺
(
おぼ
)
るる
事
(
こと
)
なき
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
342
大和
(
やまと
)
男子
(
をのこ
)
の
典型
(
てんけい
)
と
343
末代
(
まつだい
)
迄
(
まで
)
も
名
(
な
)
を
揚
(
あ
)
げて
344
国
(
くに
)
の
柱
(
はしら
)
となるだらう
345
あゝ
勇
(
いさ
)
ましや
勇
(
いさ
)
ましや
346
全隊
(
ぜんたい
)
進
(
すす
)
めいざ
進
(
すす
)
め
347
勝利
(
しようり
)
の
都
(
みやこ
)
が
近
(
ちか
)
づいた
348
勝利
(
しようり
)
の
都
(
みやこ
)
はヒルの
国
(
くに
)
349
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
350
国魂神
(
くにたまがみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
351
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
前途
(
ぜんと
)
の
幸福
(
かうふく
)
を
352
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へと
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る』
353
斯
(
か
)
く
代
(
かは
)
る
代
(
がは
)
る
行進歌
(
かうしんか
)
を
唄
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
354
十数日
(
じふすうじつ
)
を
経
(
へ
)
た
黄昏
(
たそがれ
)
頃
(
ごろ
)
ヒルの
都
(
みやこ
)
の
町末
(
まちすゑ
)
の
或
(
あ
)
る
茅屋
(
ばうをく
)
に
着
(
つ
)
いた。
355
(
大正一三・一・二五
旧一二・一二・二〇
伊予 於山口氏邸、
松村真澄
録)
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