霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第五章 花鳥山(くわてうざん)〔一七七二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻 篇:第1篇 花鳥山月 よみ(新仮名遣い):かちょうさんげつ
章:第5章 花鳥山 よみ(新仮名遣い):かちょうざん 通し章番号:1772
口述日:1925(大正14)年08月23日(旧07月4日) 口述場所:丹後由良 秋田別荘 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年10月16日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
五色の雲がたなびき、鳳凰、孔雀ほか何百種もの鳥が舞い、地は一面の緑、空には色とりどり、紫・浅黄・白・黄色のめでたい雲がたなびいている。
紅の花が咲きにおい、胡蝶は花に遊び、天国浄土の光景を眺めつつ、地上三、四尺の空中を進んでゆく。
前方には黄金の甍が日に照り輝く、荘厳な世界がある。左手には青い海原、舟、五色の鳥。
涼しい風が常に吹いて、なんとも言えぬ芳香を送っている。
旅人は槍を片手につきながら、青草茂る山の中腹に、今きた道を眺めながら、タバコをくゆらし休憩している。
そこへ、おーい、おーいと声をあげながら、登ってくる貴婦人がある。よくみればその貴婦人は千草姫であった。
千草姫は旅人のそばに来て、満面の笑みにて話し掛ける。
千草姫:右守のスマンヂー様、あなたはどうしてこのようなところにいらっしゃったのですか。
スマンヂー:てっきり、軍議の最中ガーデン王の手にかかって死んだと思ったのだが、あれは夢だったのだろうか。しかし合点のいかないのは自分の身の様子、名も知らない清い聖地にいるのはなぜだろう。また、あなたがどうして私の後を追ってこんなところへおいでになったのだろうか。
千草姫:ここは天界の第三段の浄土です。私は寿命が尽きて、主の神様により、浄土住まいを命じられました。また、伊吹戸主の神様にお伺いしたところ、あなたも天界に住まうべき身の上であるとのことです。
千草姫:こうなった上は、神のお引き合わせ、私とガーデン王は意思想念を異にし、霊界では添えない定めです。あなたとここで夫婦となって、天国浄土の御用をいたしましょう。
スマンヂー:ああ、有難いことだ、実を言えば、私は現界であなたを恋しておりました。しかしながら、現実界のしがらみにより、思いを伝えることさえできませんでした。こうやって神様から定められた縁であれば、そのようにいたしましょう。現実界にて善行を尽くした報酬が今ここに実り、二人は喜びの苑にあって、時間空間を越えて永遠に、嬉しく楽しく暮らしましょう。ああ惟神惟神、御霊の恩頼をほぎまつります。
このように、お互いに歌い交わしているところへ、ダイヤモンドのごとく白金光のごとく天空を輝かし、二人の前に火の弾となって落下してきたのは、エンゼル・言霊別命であった。
言霊別は二人を第二霊国の花鳥山に案内する。スマンヂーは、なぜ俗人の自分が、宣伝使の楽園である霊国に招かれるのか言霊別に尋ねる。
言霊別:霊国は、宣伝使、国民指導者の善良なる霊の永久の住処である。今日の現実界の宣伝使・僧侶・牧師などは地獄に籍を置いている。一方スマンヂーは生前宣伝使ではなかったけれども、現実界の最善を尽くし、正守護神が霊国に相応していた。宇宙はすべて相応の理によってなりたっており、この花鳥山も、スマンヂーの精霊が、現界にありながら、作り上げていたものである。
言霊別は去り、二人はここに祝いの歌を歌い、霊国に夫婦となって永久に暮らすこととなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2018-11-28 15:53:46 OBC :rm7005
愛善世界社版:59頁 八幡書店版:第12輯 411頁 修補版: 校定版:59頁 普及版:32頁 初版: ページ備考:
001天津(あまつ)御空(みそら)はいと(きよ)
002五色(ごしき)(くも)棚引(たなび)いて
003鳳凰(ほうわう)孔雀(くじやく)百鳥(ももどり)
004低空(ていくう)飛行(ひかう)をやつてゐる
005()一面(いちめん)青畳(あをだたみ)
006(むらさき)浅黄(あさぎ)(しろ)黄色(きいろ)
007(くれなゐ)(はな)()(にほ)
008胡蝶(こてふ)姿(すがた)翩飜(へんぽん)
009天国(てんごく)浄土(じやうど)光景(くわうけい)
010いとも(たの)しく(なが)めつつ
011(かぜ)()かるる心地(ここち)して
012地上(ちじやう)()ること三四(さんし)(しやく)
013空中(くうちう)易々(やすやす)(すす)()
014(はるか)前方(ぜんぱう)(なが)むれば
015黄金(こがね)(いらか)キラキラと
016天津(あまつ)日影(ひかげ)()()えて
017荘厳(さうごん)世界(せかい)現出(げんしゆつ)
018左手(ゆんで)(かた)(なが)むれば
019青海原(あをうなばら)(なみ)しづか
020彼方(あなた)此方(こなた)にチラチラと
021胡蝶(こてふ)空中(くうちう)()(ごと)
022(しろ)(かがや)真帆(まほ)片帆(かたほ)
023五色(ごしき)(とり)(みぎ)(ひだり)
024(なみ)()(はし)面白(おもしろ)
025(すず)しき(かぜ)永遠(とは)()
026(なん)とも()へぬ芳香(はうかう)
027(みち)()(ひと)身辺(しんぺん)
028(おく)(きた)るぞ(ゆか)しけれ。
029(ここ)一人(ひとり)旅人(たびびと)
030(やり)片手(かたて)につき(なが)
031青草(あをくさ)しげる丸山(まるやま)
032(その)中腹(ちうふく)()をおいて
033(わが)()(あゆ)(きた)りたる
034あとを(なが)めてニコニコと
035煙草(たばこ)をくゆらし(いこ)ひゐる
036かかる(ところ)山下(さんか)より
037オーイ オーイと(こゑ)をかけ
038(のぼ)(きた)れる婦人(ふじん)あり
039よくよく()ればこはいかに
040(おも)ひもよらぬ千草姫(ちぐさひめ)
041(すず)しき(きよ)白妙(しろたへ)
042(ころも)(かぜ)(ひるがへ)
043旅人(りよじん)のそばに(ちか)よりて
044満面(まんめん)(ゑみ)(たた)へつつ
045貴方(あなた)右守(うもり)のスマンヂー
046コラまあ()うして(この)(やう)
047平和(へいわ)(やま)()到来(たうらい)
048(いぶ)かしさよ』と(たづ)ぬれば
049一人(ひとり)旅人(りよじん)はうなづいて
050貴女(あなた)(たふと)きお(ひめ)(さま)
051()うして此処(ここ)へお()ましか
052(わたし)合点(がてん)()きませぬ
053トルマン(じやう)(おく)()
054ガーデン(わう)左守司(さもりがみ)
055大足別(おほだるわけ)攻軍(こうぐん)
056抵抗(ていかう)せむといろいろに
057軍議(ぐんぎ)(めぐら)しゐたりしが
058協議(けふぎ)(かな)はぬ(わたくし)
059(たふと)(きみ)(おん)(ため)
060()にかかつて身失(みう)せしと
061(おも)ひしことは(ゆめ)なるか
062合点(がてん)のゆかぬ(この)(からだ)
063ここは(なん)といふ(とこ)
064()さへも()らない清浄(しやうじやう)
065百花(ももばな)千花(ちばな)(さき)ほこる
066浄土(じやうど)()うな聖地(せいち)です
067貴女(あなた)()うして吾々(われわれ)
068(あと)(たづ)ねてお()ましか
069不思議(ふしぎ)不思議(ふしぎ)(かさ)なつて
070どうして()いやら(わか)らない』
071(かた)れば千草(ちぐさ)はうなづいて
072『ここは所謂(いはゆる)天界(てんかい)
073第三段(だいさんだん)浄土(じやうど)です
074(わたし)天寿(てんじゆ)()きまして
075()(かみ)(さま)命令(めいれい)
076浄土(じやうど)住居(すまゐ)(めい)ぜられ
077(よろこ)(いさ)んでスタスタと
078(はな)()野辺(のべ)(まゐ)りました
079貴方(あなた)()うやら天界(てんかい)
080住居(すまゐ)(あそ)ばすお()(うへ)
081伊吹戸主(いぶきどぬし)(かみ)(さま)
082(たしか)()いておきました
083現界(げんかい)などに(こころ)をば
084(のこ)させ(たま)はず(すみやか)
085(かみ)()さしの天界(てんかい)
086(わたし)(とも)(のぼ)りませう
087あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
088(たふと)(かみ)引合(ひきあは)
089貴方(あなた)(なが)らく独身者(ひとりもの)
090(わたし)(をつと)はおはせ(ども)
091現幽(げんいう)(ところ)(こと)にした
092今日(けふ)(わが)()独身者(ひとりもの)
093意思(いし)想念(さうねん)相異(さうい)より
094ガーデン(わう)永久(えいきう)
095霊界(れいかい)までは()へませぬ
096貴方(あなた)智性(ちせい)(わが)智性(ちせい)
097(わたし)意思(いし)全然(さつぱり)
098貴方(あなた)意思(いし)(かよ)ひます
099(かみ)(ひら)きし天界(てんかい)
100(この)楽園(らくゑん)二柱(ふたはしら)
101夫婦(ふうふ)となつて永久(とこしへ)
102天国(てんごく)浄土(じやうど)御用(ごよう)をば
103(ちから)(かぎ)りに(いた)しませう
104如何(いかが)御座(ござ)右守(うもり)さま』
105いへば右守(うもり)(うなづ)いて
106『あゝ有難(ありがた)有難(ありがた)
107(わたし)現世(げんせ)()(うち)
108貴女(あなた)(こひ)して()りました
109とは()ふものの現界(げんかい)
110(くだ)らぬ階級(かいきふ)邪魔(じやま)をして
111(こころ)(たけ)一言(ひとこと)
112(まを)()げたることはない
113貴女(あなた)(こころ)(その)(とほ)
114(わたし)(あい)してゐらるると
115(はや)くも承知(しようち)はしてゐたが
116現実界(げんじつかい)義理(ぎり)人情(にんじやう)
117法則(はふそく)などを(かへり)みて
118こらへ(しの)んで()りました
119もう(この)(うへ)(かみ)(さま)
120(さだ)(たま)ひし(えん)ぢやもの
121(たれ)遠慮(ゑんりよ)はいりませぬ
122現実界(げんじつかい)におきまして
123あらむ(かぎり)善行(ぜんかう)
124(つく)した二人(ふたり)報酬(はうしう)
125(いま)(みの)つて(この)(とほ)
126歓喜(くわんき)(その)()をおいて
127千代(ちよ)八千代(やちよ)万代(よろづよ)
128時間(じかん)空間(くうかん)超越(てうゑつ)
129(うれ)しく(たの)しく(くら)しませう
130あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
131御霊(みたま)恩頼(ふゆ)をほぎまつる』
132 かく(たがひ)(うた)つてゐる(ところ)へ、133天空(てんくう)(かがや)かし、134ゴウゴウと(おと)()て、135両人(りやうにん)(まへ)火弾(くわだん)となつて落下(らくか)した。136(その)光明(くわうみやう)はダイヤモンドの(ごと)く、137白金光(プラチナ)(ごと)くであつた。138両人(りやうにん)はハツと(おどろ)き、139両手(りやうて)()(おさ)(その)()蹲踞(しやが)んでゐる。140火光(くわくわう)(たちま)(うるは)しき神人(しんじん)(くわ)し、141(こゑ)(しづか)に、
142エンゼル『スマンヂー(さま)143千草姫(ちぐさひめ)(さま)144(わたし)第一(だいいち)霊国(れいごく)より貴方(あなた)をお(むか)へに()たエンゼルで御座(ござ)います。145どうかお()をあけて(くだ)さい』
146 両人(りやうにん)は『ハイ』と言葉(ことば)(かへ)(なが)ら、147(しづ)かに両眼(りやうがん)(ひら)けば、148白妙(しろたへ)(ころも)(まと)ひたる、149威厳(ゐげん)(そな)はる神人(しんじん)七八(しちはち)(しやく)(まへ)にニコニコし(なが)()つてゐる。
150エンゼル『(わたし)言霊別(ことたまわけの)(みこと)であります。151スマンヂーさま、152千草姫(ちぐさひめ)さま、153貴方(あなた)(がた)現界(げんかい)(おい)て、154トルマン(ごく)(ため)155多数(たすう)民衆(みんしう)(ため)156現界(げんかい)()ける最善(さいぜん)(つく)しておいでになりました。157そして貴方(あなた)(がた)両人(りやうにん)は、158意思(いし)想念(さうねん)合致(がつち)した真正(しんせい)()夫婦(ふうふ)であり(なが)ら、159所在(あらゆる)苦痛(くつう)()(しの)び、160(こひ)てふ()(うち)()つて、161よくも一生(いつしやう)(あひだ)(しの)ばれました。162神界(しんかい)(おい)ては、163(とく)貴女(あなた)善行(ぜんかう)(しる)されて御座(ござ)いますよ。164サア、165(これ)から第二(だいに)霊国(れいごく)()案内(あんない)(まを)しませう』
166スマンヂー『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。167(おも)はぬ(ところ)(かみ)(さま)()()にかかり、168(なん)といふ有難(ありがた)いことで御座(ござ)いませうか。169()(れい)言葉(ことば)(つく)されませぬ』
170言霊別(ことたまわけ)貴方(あなた)(つち)かふた(はたけ)(みの)つた果実(くわじつ)御座(ござ)いますよ。171(けつ)して(わたし)()(れい)(まを)されては(こま)ります。172今日(けふ)(よろこ)びは貴方(あなた)(つちか)(やしな)つてゐた(ところ)(よろこ)びの()御座(ござ)います。173千草姫(ちぐさひめ)(さま)(その)(とほ)り、174(かなら)(かなら)(れい)なんか()つてはなりませぬ。175サア(わたし)についてお(いで)なさいませ』
176言霊別(ことたまわけの)(みこと)一足先(ひとあしさき)()ち、177両人(りやうにん)(たがひ)(いたは)(なが)ら、178(くも)(ごと)き、1781(なみ)(ごと)青々(あをあを)とした丘陵(きうりよう)をふみこえふみこえ、179(ひがし)(ひがし)へと(すす)んで()く。
180 何時(いつ)とはなしに嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)(ひび)き、181四辺(しへん)より(きこ)えるとみれば、182二人(ふたり)(はや)くも方形(はうけい)(いは)(もつ)(たた)んだ(やう)丘陵(きうりよう)(うへ)(つい)てゐた。
183言霊別(ことたまわけ)此処(ここ)第二(だいに)霊国(れいごく)(おい)有名(いうめい)なる花鳥山(くわてうざん)御座(ござ)います。184御覧(ごらん)なさい、185(みどり)(はね)(ひろ)げ、186(くれなゐ)(かむり)(いただ)き、187(うつく)しい(とり)四方(しはう)八方(はつぱう)翺翔(かうしよう)し、188美妙(びめう)(こゑ)(はな)ち、189(また)(この)(とほ)地上(ちじやう)世界(せかい)にないやうな(うるは)しき(はな)()(みだ)香気(かうき)(はな)つてをります。190ここは貴方(あなた)(がた)千代(ちよ)住家(すみか)御座(ござ)いますよ。191(たべ)たい(もの)(なん)でも(のぞ)次第(しだい)192(この)(うるは)しき樹木(じゆもく)(えだ)臨時(りんじ)(じゆく)しますから、193それを()つておあがりなさい』
194スマンヂー『一寸(ちよつと)エンゼル(さま)にお(たづ)(いた)します。195(いま)霊国(れいごく)(うけたま)はりましたが196霊国(れいごく)宣伝使(せんでんし)(あつ)まる楽園(らくゑん)では御座(ござ)いませぬか。197(わたし)はトルマン(ごく)小臣(せうしん)198平素(へいそ)ウラル(けう)(ほう)(なが)ら、199(ふか)信仰(しんかう)(いた)しませず、200(また)千草姫(ちぐさひめ)(さま)だとて(その)(とほ)り、201トルマン(ごく)王妃(わうひ)として、202国民(こくみん)(はは)として最善(さいぜん)をお(つく)(あそ)ばしたもの、203宣伝使(せんでんし)牧師(ぼくし)ならばいざ()らず、204吾々(われわれ)(ごと)俗界(ぞくかい)(こころ)をひたして()りましたものが、205()うして(また)霊国(れいごく)()られたもので御座(ござ)いませうか、206どうも(この)理由(りいう)(わか)りませぬ』
207言霊(ことたま)『お(たづ)ねの(とほ)り、208霊国(れいごく)(すべ)宣伝使(せんでんし)や、209国民(こくみん)指導者(しだうしや)善良(ぜんりやう)なる(れい)(きた)るべき永久(えいきう)住所(すみか)御座(ござ)います。210今日(こんにち)現実界(げんじつかい)(おい)て、211宣伝使(せんでんし)僧侶(そうりよ)神官(しんくわん)牧師(ぼくし)などは一人(ひとり)として霊国(れいごく)(のぼ)()資格(しかく)()つてをりませぬ。212(また)天国(てんごく)へは(なほ)(さら)(のぼ)(もの)なく、213(いづ)れも地獄(ぢごく)(せき)をおき、214地獄界(ぢごくかい)(おい)昏迷(こんめい)矛盾(むじゆん)と、215射利(しやり)脱線(だつせん)暗黒(あんこく)との()(むす)んで、216(たがひ)(にく)(けづ)()ひ、217()(すす)()ひ、218妄動(まうどう)(つづ)けて()りまする。219貴方(あなた)生前(せいぜん)(おい)宣伝使(せんでんし)ではなかつたが、220現実界(げんじつかい)人間(にんげん)としての最善(さいぜん)(つく)されました。221(これ)(えう)するに表面(へうめん)(てき)(かみ)信仰(しんかう)せなくても、222貴方(あなた)(せい)守護神(しゆごじん)はすでに天界(てんかい)霊国(れいごく)相応(さうおう)し、223神籍(しんせき)をおいてゐられたのです。224(すべ)宇宙(うちう)相応(さうおう)()()つて(なり)()つてゐるものです。225(この)第二(だいに)霊国(れいごく)花鳥山(くわてうざん)貴方(あなた)(もの)です。226貴方(あなた)精霊(せいれい)現界(げんかい)(おい)て、227(すで)(この)(うるは)しき霊山(れいざん)(つく)つておかれたのです。228(たれ)遠慮(ゑんりよ)()りませぬ。229永久(えいきう)(とみ)(さか)えて夫婦(ふうふ)(なか)よく神界(しんかい)御用(ごよう)をお(つと)めなさい。230左様(さやう)ならば』
231立去(たちさ)らむとするを、232千草姫(ちぐさひめ)(あわ)てて(しろ)()()(なが)ら、
233『もしもし、234エンゼル(さま)235(わらは)(いま)フツと(かんが)へましたが、236スコブツエン(しう)のキユーバーと(まを)(もの)()(にぎ)()ひ、237双方(さうはう)(とも)(いち)()気絶(きぜつ)した(やう)記憶(きおく)()かんで(まゐ)ります。238あのキユーバーはどうなりましたか、239一寸(ちよつと)(たづ)(いた)します』
240言霊(ことたま)(かれ)(いま)現界(げんかい)生命(せいめい)(のこ)つて()りますから、241(いま)八衢(やちまた)彷徨(さまよう)()ります。242(しか)(なが)愛善(あいぜん)(とく)うすく、243智慧(ちゑ)証覚(しようかく)(ひかり)(にぶ)(かれ)(ごと)人物(じんぶつ)のことを(おも)()してはなりませぬよ。244貴女(あなた)智慧(ちゑ)証覚(しようかく)(にぶ)りますから、245今後(こんご)(けつ)して現界(げんかい)のことを(おも)(おこ)してはなりませぬ。246最早(もはや)現界(げんかい)貴女(あなた)(よう)はすんでをります。247スマンヂーさまも()同様(どうやう)248(けつ)して(けつ)して現界(げんかい)のことを(おも)はないで()(くだ)さい』
249 両人(りやうにん)はハツと(かしら)()有難涙(ありがたなみだ)にくれてゐる。250言霊別(ことたまわけの)(みこと)五色(ごしき)(くも)(つつ)まれ、251一大(いちだい)火光(くわくわう)となつて、252東天(とうてん)()して空中(くうちう)(とどろ)かせ(なが)(かへ)つて()く。253(あと)二人(ふたり)(かほ)見合(みあは)せ、
254スマンヂー『(ひめ)(さま)255不思議(ふしぎ)(こと)ぢや御座(ござ)いませぬか。256吾々(われわれ)(ゆめ)でもみて()(やう)ですなア』
257千草(ちぐさ)本当(ほんたう)不思議(ふしぎ)でたまりませぬ。258(たしか)貴方(あなた)(わたし)()んだに間違(まちが)ひは御座(ござ)いませぬ。259それにも(かか)はらず、260益々(ますます)意識(いしき)明瞭(めいれう)になり、261斯様(かやう)(うるは)しき(やま)(いただ)きに、262(こひ)しき貴方(あなた)二人(ふたり)(ゆる)されて夫婦(ふうふ)となると()ふやうなことが、263どうして現実(げんじつ)(おも)はれませう。264どうも不思議(ふしぎ)でたまりませぬ』
265スマ『(わたし)現界(げんかい)(おい)貴方(あなた)臣下(しんか)御座(ござ)います。266そして貴女(あなた)はトルマン(ごく)()ける(わう)(さま)()いでの(たふと)()(かた)267如何(いか)(かみ)(さま)のお(ゆる)しとは()(なが)ら、268貴女(あなた)女房(にようばう)()ぶことは(じつ)(おそ)(おほ)くてなりませぬワ』
269千草(ちぐさ)『スマンヂー(さま)270現幽(げんいう)(ところ)(こと)にした今日(こんにち)271(なに)もかも(すべ)洗替(あらひかへ)ぢや御座(ござ)いませぬか、272かかる(たふと)霊国(れいごく)(きた)(なが)ら、273(いま)左様(さやう)虚礼(きよれい)虚式(きよしき)(てき)辞令(じれい)をお使(つか)(あそ)ばすのは、274(みづか)らの想念(さうねん)(いつは)るようなもので御座(ござ)いますよ』
275スマ『成程(なるほど)左様(さやう)御座(ござ)いますな。276そんなら(あらた)めて、277貴女(あなた)(つま)()びませう。278(わたし)(をつと)()んで(くだ)さい。279一人(ひとり)(むすめ)(のこ)して御座(ござ)いますけれど、280(この)(こと)(おも)()りませう』
281千草(ちぐさ)『どうかさうして(くだ)さいませ。282サア(これ)から二人(ふたり)(この)(よろこ)びを(うた)ひませう』
283 (ここ)両人(りやうにん)()をつなぎ、284胡蝶(こてふ)(ごと)花鳥山(くわてうざん)(いただ)きにて(さはや)かな(こゑ)(はり)()げ、285(うた)ひつつ()(はじ)めた。
286天津(あまつ)御空(みそら)(なが)むれば
287(もも)のエンゼル(ほし)(ごと)
288(かがや)(たま)(わが)()をば
289(あるひ)(とほ)(あるひ)(ちか)
290(まも)らせ(たま)有難(ありがた)
291脚下(きやくか)()して(なが)むれば
292堅磐(かきは)常磐(ときは)(いはほ)もて
293(つく)(かた)めし(かみ)(やま)
294()なれぬ(とり)(うるは)しき
295(つばさ)(ひろ)げて天界(てんかい)
296瑞祥(ずゐしやう)うたひ百花(ももばな)
297(えん)(きそ)ふて(さき)(にほ)
298(われ)()二人(ふたり)(まなこ)をば
299(こころ)ゆく(まで)(なぐさ)むる
300あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
301(ひと)(いのち)現世(うつしよ)
302百年(ももとせ)(ばか)りに(かぎ)らない
303幾億(いくおく)(ねん)(すゑ)までも
304(わが)精霊(せいれい)生通(いきとほ)
305(いき)(さか)えて(はな)()かし
306(まこと)(みのり)(たの)しまむ
307(まこと)(みのり)(たの)しまむ
308(かみ)(われ)()(とも)にあり
309(われ)()(かみ)(とも)にあり
310(かみ)(かみ)とがむつび()
311(かみ)御国(みくに)をいや(ひろ)
312(ひろ)めてゆかむ夫婦仲(ふうふなか)
313(いや)永久(とこしへ)(はる)なれや
314いや永久(とこしへ)(さか)えませ
315いや永久(とこしへ)(なつ)(きた)
316いや永久(とこしへ)(たの)しまむ
317(てん)(ますま)(たか)くして
318空気(くうき)(いろ)はいや(きよ)
319(つち)(ますま)(ひろ)くして
320百草(ももくさ)千草(ちぐさ)(みな)(ひか)
321光明(くわうみやう)世界(せかい)真中(まんなか)
322(なれ)(われ)とは()(おく)
323(ゆめ)(うつつ)(まぼろし)
324否々(いやいや)(けつ)して(ゆめ)でない
325(ゆめ)浮世(うきよ)()ちいでて
326(まこと)(かみ)のあれませる
327(まこと)(くに)へまゐ(のぼ)
328(まこと)(はな)手折(たを)りつつ
329(まこと)(くら)しをいとなまむ
330あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
331御霊(みたま)(さち)(はへ)ましませよ』
332(うた)(なが)ら、333二人(ふたり)永久(えいきう)霊国(れいごく)住民(ぢうみん)となつた。334あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
335大正一四・八・二三 旧七・四 於丹後由良秋田別荘 松村真澄録)
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