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第70巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 花鳥山月
01 信人権
〔1768〕
02 折衝戦
〔1769〕
03 恋戦連笑
〔1770〕
04 共倒れ
〔1771〕
05 花鳥山
〔1772〕
06 鬼遊婆
〔1773〕
07 妻生
〔1774〕
08 大勝
〔1775〕
第2篇 千種蛮態
09 針魔の森
〔1776〕
10 二教聯合
〔1777〕
11 血臭姫
〔1778〕
12 大魅勒
〔1779〕
13 喃悶題
〔1780〕
14 賓民窟
〔1781〕
15 地位転変
〔1782〕
第3篇 理想新政
16 天降里
〔1783〕
17 春の光
〔1784〕
18 鳳恋
〔1785〕
19 梅花団
〔1786〕
20 千代の声
〔1787〕
21 三婚
〔1788〕
22 優秀美
〔1789〕
附 記念撮影
余白歌
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第一四章
賓民窟
(
ひんみんくつ
)
〔一七八一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第70巻 山河草木 酉の巻
篇:
第2篇 千種蛮態
よみ(新仮名遣い):
せんしゅばんたい
章:
第14章 賓民窟
よみ(新仮名遣い):
ひんみんくつ
通し章番号:
1781
口述日:
1925(大正14)年08月24日(旧07月5日)
口述場所:
丹後由良 秋田別荘
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年10月16日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
テイラとハリスは、千草姫の変わりよう、また受けた命令のあまりのことに、太子に相談にやってくる。
太子は千草姫が発狂したと見なして、テイラ・ハリスに向上主義者レールとマークのところに隠れるように薦め、紹介文を書いて二人に渡す。
二人は貧民窟のレール・マークの隠れ家に行き、かくまわれることとなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-05-28 02:01:57
OBC :
rm7014
愛善世界社版:
176頁
八幡書店版:
第12輯 454頁
修補版:
校定版:
180頁
普及版:
89頁
初版:
ページ備考:
001
千草姫
(
ちぐさひめ
)
の
命
(
めい
)
を
受
(
う
)
け、
002
キユーバーの
捜索
(
そうさく
)
に
向
(
むか
)
はむとするテイラ
姫
(
ひめ
)
は、
003
母
(
はは
)
モクレンの
意
(
い
)
を
含
(
ふく
)
み
王
(
わう
)
様
(
さま
)
に
面会
(
めんくわい
)
せむものと
思
(
おも
)
へども、
004
千草姫
(
ちぐさひめ
)
の
警戒
(
けいかい
)
厳
(
きび
)
しく
到底
(
たうてい
)
近
(
ちか
)
よる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ぬので、
005
チウイン
太子
(
たいし
)
の
館
(
やかた
)
を
訪
(
と
)
ひ、
006
『
御免
(
ごめん
)
なさいませ。
007
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
008
テイラで
御座
(
ござ
)
います』
009
太子
(
たいし
)
は
机
(
つくゑ
)
にもたれ、
010
三五
(
あななひ
)
の
経典
(
きやうてん
)
を
頻
(
しき
)
りに
読誦
(
どくしよう
)
して
居
(
ゐ
)
たが、
011
テイラの
声
(
こゑ
)
が
門口
(
かどぐち
)
に
聞
(
きこ
)
えたので、
012
直
(
ただ
)
ちに
門口
(
かどぐち
)
に
迎
(
むか
)
へ
出
(
い
)
で、
013
さも
嬉
(
うれ
)
しげに、
014
チウイン『ヤア
女将軍
(
ぢよしやうぐん
)
テイラ
殿
(
どの
)
、
015
まあまあ
此方
(
こちら
)
へ……。
016
よう
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さつた。
017
何
(
なん
)
だか
最前
(
さいぜん
)
から
其方
(
そなた
)
に
会
(
あ
)
ひたいと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
た
処
(
ところ
)
だ。
018
今日
(
けふ
)
はゆつくり
話
(
はな
)
しませう』
019
テイラ『ハイ、
020
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
021
急用
(
きふよう
)
が
出来
(
でき
)
ましたので
一寸
(
ちよつと
)
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
に
参
(
まゐ
)
りました。
022
失礼
(
しつれい
)
さして
頂
(
いただ
)
きます』
023
と、
024
一室
(
いつしつ
)
に
立
(
た
)
ち
入
(
い
)
り
太子
(
たいし
)
と
向
(
むか
)
ひあつて、
025
テイ『
時
(
とき
)
に
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
、
026
今日
(
こんにち
)
は
妾
(
わらは
)
は
母
(
はは
)
と
共
(
とも
)
に
王妃
(
わうひ
)
様
(
さま
)
に
招
(
まね
)
かれ
沢山
(
たくさん
)
の
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
頂
(
いただ
)
きました
処
(
ところ
)
、
027
王妃
(
わうひ
)
様
(
さま
)
の
様子
(
やうす
)
が
俄
(
にはか
)
に
変
(
かは
)
り「
妾
(
わらは
)
は
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
だ」とか、
028
「
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
だ」とか、
029
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
仰
(
おほ
)
せられ、
030
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
妾
(
わらは
)
に
対
(
たい
)
し「
彼
(
あ
)
の
妖僧
(
えうそう
)
キユーバーの
所在
(
ありか
)
を
探
(
さが
)
して
来
(
こ
)
よ」との
厳
(
きび
)
しき
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
、
031
否
(
いな
)
み
奉
(
まつ
)
る
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
ず、
032
ひそかに
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
に
参
(
まゐ
)
りました。
033
どうか
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
承
(
うけたま
)
はり
度
(
た
)
う
御座
(
ござ
)
います』
034
太子
(
たいし
)
『はて、
035
困
(
こま
)
つたなあ、
036
母上
(
ははうへ
)
は
発狂
(
はつきやう
)
されたのであらう。
037
どうも
様子
(
やうす
)
が
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
から
変
(
へん
)
だと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
038
母上
(
ははうへ
)
は
何故
(
なにゆゑ
)
か
彼
(
か
)
の
悪僧
(
あくそう
)
を
大変
(
たいへん
)
に
可愛
(
かあい
)
がつて
居
(
を
)
られるのだ。
039
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
040
彼
(
かれ
)
の
如
(
ごと
)
きものを
城中
(
じやうちう
)
に
引
(
ひ
)
き
入
(
い
)
れなば、
041
益々
(
ますます
)
母上
(
ははうへ
)
の
心
(
こころ
)
を
乱
(
みだ
)
し、
042
如何
(
いか
)
なる
悪智慧
(
わるぢゑ
)
を
注
(
つ
)
ぎ
込
(
こ
)
むかも
知
(
し
)
れない。
043
夫
(
それ
)
故
(
ゆゑ
)
吾
(
わが
)
計
(
はか
)
らひにて
或
(
ある
)
所
(
ところ
)
にキユーバーを
押込
(
おしこ
)
めておいたのだから、
044
捜索
(
そうさく
)
などは
止
(
や
)
めたがよからう』
045
テイ『ハイ、
046
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
047
妾
(
わらは
)
も
何
(
なん
)
だか
変
(
へん
)
だと
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
りました。
048
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
049
左守家
(
さもりけ
)
に
居
(
ゐ
)
る
訳
(
わけ
)
にも
参
(
まゐ
)
りませぬ。
050
何時
(
なんどき
)
王妃
(
わうひ
)
様
(
さま
)
が
人
(
ひと
)
を
派
(
は
)
し、
051
妾
(
わらは
)
の
行動
(
かうどう
)
をお
調
(
しら
)
べなさるか
知
(
し
)
れませぬから』
052
太子
(
たいし
)
『
成程
(
なるほど
)
それも
困
(
こま
)
る。
053
お
前
(
まへ
)
の
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えさへせねば
0531
分
(
わか
)
らない、
054
母上
(
ははうへ
)
はキユーバーの
捜索
(
そうさく
)
に
行
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだと
安心
(
あんしん
)
せられるだらう』
055
テイ『
妾
(
わらは
)
は
何処
(
どこ
)
へ
匿
(
かく
)
れたら
宜敷
(
よろし
)
う
御座
(
ござ
)
いませうか』
056
太子
(
たいし
)
『いや
心配
(
しんぱい
)
するな。
057
私
(
わたし
)
が
今
(
いま
)
手紙
(
てがみ
)
を
書
(
か
)
くから
058
之
(
これ
)
をもつて
名宛
(
なあて
)
の
人
(
ひと
)
の
処
(
ところ
)
へ
行
(
い
)
つて
世話
(
せわ
)
になれ。
059
暫
(
しばら
)
くの
間
(
あひだ
)
だから』
060
テイ『ハイ、
061
仰
(
おほせ
)
に
従
(
したが
)
ひ、
062
さうさして
頂
(
いただ
)
きませう』
063
太子
(
たいし
)
は
何事
(
なにごと
)
かすらすらと
巻紙
(
まきがみ
)
に
書
(
か
)
き
認
(
したた
)
め、
064
三百
(
さんびやく
)
円
(
えん
)
の
金
(
かね
)
を
封
(
ふう
)
じ
込
(
こ
)
み、
065
太子
(
たいし
)
『サア、
066
之
(
これ
)
を
持
(
も
)
つてお
出
(
いで
)
なさい。
067
屹度
(
きつと
)
世話
(
せわ
)
をして
呉
(
く
)
れるだらうから』
068
テイラは、
069
書面
(
しよめん
)
の
表書
(
うわがき
)
を
見
(
み
)
て
倒
(
たふ
)
れむ
許
(
ばか
)
りに
驚
(
おどろ
)
いた。
070
テイ『もし
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
、
071
レールと
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
は、
072
向上
(
かうじやう
)
運動
(
うんどう
)
の
張本人
(
ちやうほんにん
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬか』
073
太子
(
たいし
)
『
如何
(
いか
)
にもさうだ。
074
彼
(
かれ
)
はトルマン
国
(
ごく
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
も
同様
(
どうやう
)
だ』
075
テイ『
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
は
又
(
また
)
このレールと
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
に
御
(
ご
)
交際
(
かうさい
)
が
御座
(
ござ
)
いますか』
076
と
不思議
(
ふしぎ
)
さうに
問
(
と
)
ふ。
077
太子
(
たいし
)
『
別
(
べつ
)
に
交際
(
かうさい
)
と
云
(
い
)
ふ
程
(
ほど
)
でもないが、
078
一度
(
いちど
)
会
(
あ
)
ふた
事
(
こと
)
がある。
079
其
(
その
)
時
(
とき
)
彼
(
かれ
)
の
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
迄
(
まで
)
見抜
(
みぬ
)
いておいた。
080
屹度
(
きつと
)
大切
(
たいせつ
)
にして
呉
(
く
)
れるよ。
081
此
(
この
)
書面
(
しよめん
)
の
中
(
なか
)
に
三百
(
さんびやく
)
円
(
ゑん
)
封
(
ふう
)
じ
込
(
こ
)
んであるから、
082
これは
其方
(
そなた
)
の
賄料
(
まかなひれう
)
としてレールに
与
(
あた
)
へるのだ』
083
テイ『ハイ、
084
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
085
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
行
(
い
)
つて
参
(
まゐ
)
りませう』
086
と
挨拶
(
あいさつ
)
する
折
(
をり
)
しも
門口
(
かどぐち
)
より、
087
『
右守
(
うもり
)
の
娘
(
むすめ
)
ハリスで
御座
(
ござ
)
います。
088
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
にお
目
(
め
)
に
掛
(
かか
)
りたう
御座
(
ござ
)
います』
089
と
女
(
をんな
)
の
優
(
やさ
)
しき
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
090
太子
(
たいし
)
は
直
(
ただ
)
ちに
立
(
た
)
つて
自
(
みづか
)
ら
入口
(
いりぐち
)
の
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
け、
091
太子
(
たいし
)
『ヤア、
092
ハリス
殿
(
どの
)
か、
093
よう
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さつた。
094
今
(
いま
)
テイラ
将軍
(
しやうぐん
)
が
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さるところだ。
095
サア、
096
ハリス
将軍
(
しやうぐん
)
お
入
(
はい
)
りなさい』
097
と
気軽
(
きがる
)
に
招
(
まね
)
き
入
(
い
)
れ、
098
ここに
三
(
さん
)
人
(
にん
)
巴
(
ともゑ
)
なりに
対坐
(
たいざ
)
した。
099
ハリス『
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
、
100
御
(
ご
)
勉強中
(
べんきやうちう
)
をお
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
しました。
101
ヤ、
102
貴方
(
あなた
)
はテイラ
様
(
さま
)
、
103
先刻
(
せんこく
)
は
失礼
(
しつれい
)
いたしましたね』
104
テイ『いやどう
致
(
いた
)
しまして、
105
貴女
(
あなた
)
も
王妃
(
わうひ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
に
関
(
くわん
)
して、
106
お
越
(
こ
)
しなさつたので
御座
(
ござ
)
いますか』
107
ハリ『ハイ、
108
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
109
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
を
仰
(
おほせ
)
つかつたので、
110
実
(
じつ
)
は
困
(
こま
)
り
入
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るので
御座
(
ござ
)
いますよ』
111
太子
(
たいし
)
『ハヽヽヽヽヽ、
112
ハリス
将軍
(
しやうぐん
)
もキユーバー
上人
(
しやうにん
)
の
所在
(
ありか
)
の
捜索隊
(
さうさくたい
)
でも
仰
(
おほ
)
せつかつたのだらう』
113
ハリ『いえいえ どうして どうして、
114
捜索隊
(
さうさくたい
)
はテイラさまに
大命
(
たいめい
)
が
下
(
くだ
)
りました。
115
妾
(
わらは
)
はもつともつと
六ケ
(
むつか
)
しい
御用
(
ごよう
)
を
仰
(
おほ
)
せつけられたので
御座
(
ござ
)
います』
116
太子
(
たいし
)
『それや
一体
(
いつたい
)
どんな
用
(
よう
)
だ。
117
差支
(
さしつかへ
)
なくば
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
ひたいものだなあ』
118
ハリ『ハイ、
119
妾
(
わらは
)
は、
120
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
を
生擒
(
いけど
)
る
御用
(
ごよう
)
を
仰
(
あふ
)
せつかりました』
121
太子
(
たいし
)
『ハヽヽヽヽヽ、
122
遉
(
さすが
)
はハリス
女将軍
(
ぢよしやうぐん
)
だけあつて、
123
それ
相当
(
さうたう
)
の
御用
(
ごよう
)
を
云
(
い
)
ひつけられたものだなあ。
124
其
(
その
)
美貌
(
びばう
)
をもつて
攻撃
(
こうげき
)
されるものなら、
125
瞬
(
またた
)
く
間
(
ま
)
にチウイン
砲台
(
はうだい
)
も
滅茶
(
めちや
)
々々
(
めちや
)
に
壊
(
こわ
)
されて
仕舞
(
しま
)
ふかも
知
(
し
)
れないよ』
126
ハリ『
王妃
(
わうひ
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
には「
紅
(
べに
)
、
127
白粉
(
おしろい
)
、
128
油
(
あぶら
)
を
惜
(
をし
)
まず、
129
盛装
(
せいさう
)
をこらし
抜
(
ぬ
)
け
目
(
め
)
なく
太子
(
たいし
)
を
恋
(
こひ
)
の
淵
(
ふち
)
に
陥
(
おとし
)
いれ、
130
首尾
(
しゆび
)
よく
成功
(
せいこう
)
致
(
いた
)
したならば、
131
汝
(
なんぢ
)
を
太子妃
(
たいしひ
)
にしてやらう」との
有難
(
ありがた
)
い
御
(
ご
)
恩命
(
おんめい
)
、
132
いやはや
畏
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
つて
居
(
を
)
りまする』
133
テイ『
何
(
なん
)
とまあ、
134
粋
(
すゐ
)
なお
母
(
かあ
)
さまぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
135
ハリス
様
(
さま
)
、
136
羨
(
うらや
)
ましう
御座
(
ござ
)
います』
137
ハリ『どうか
貴女
(
あなた
)
、
138
妾
(
わらは
)
が
捜索
(
そうさく
)
に
参
(
まゐ
)
りますから、
139
貴女
(
あなた
)
代
(
かは
)
つて
下
(
くだ
)
さいませぬか。
140
到底
(
たうてい
)
この
使命
(
しめい
)
は
妾
(
わらは
)
が
如
(
ごと
)
き
者
(
もの
)
の
挺子
(
てこ
)
には
合
(
あ
)
ひませぬ。
141
又
(
また
)
太子
(
たいし
)
を
生擒
(
いけど
)
るなどの
大野心
(
だいやしん
)
は、
142
王家
(
わうけ
)
を
思
(
おも
)
ひ、
143
右守家
(
うもりけ
)
を
思
(
おも
)
へばどうして
出来
(
でき
)
ませう。
144
実
(
じつ
)
に
困
(
こま
)
り
入
(
い
)
つて
御座
(
ござ
)
います』
145
太
(
たい
)
『これや
一通
(
ひととほり
)
ぢやない。
146
母上
(
ははうへ
)
には
何
(
なに
)
か
悪神
(
あくがみ
)
が
憑依
(
ひようい
)
して、
147
トルマン
城
(
じやう
)
を
攪乱
(
かくらん
)
せむと
企
(
たく
)
らんで
居
(
ゐ
)
るに
違
(
ちが
)
ひない。
148
いやハリス
殿
(
どの
)
、
149
余
(
よ
)
が
手紙
(
てがみ
)
を
書
(
か
)
きますから、
150
宛名人
(
あてなにん
)
の
処
(
ところ
)
へ
暫
(
しばら
)
く
身
(
み
)
をお
忍
(
しの
)
びなさい。
151
後
(
あと
)
は
都合
(
つがふ
)
よく
母
(
はは
)
の
手前
(
てまへ
)
を
取
(
とり
)
なしておきます。
152
どうやら
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
危険
(
きけん
)
が
迫
(
せま
)
つて
来
(
き
)
たやうに
余
(
よ
)
は
考
(
かんが
)
へる』
153
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
154
すらすらと
巻紙
(
まきがみ
)
に
何事
(
なにごと
)
か
認
(
したた
)
め、
155
これ
又
(
また
)
三百
(
さんびやく
)
円
(
えん
)
の
紙幣
(
しへい
)
を
封
(
ふう
)
じ
込
(
こ
)
み、
156
『サア、
157
ハリス
殿
(
どの
)
、
158
暫
(
しばら
)
く
此
(
この
)
宛名人
(
あてなにん
)
の
処
(
ところ
)
へ
行
(
い
)
つて
身
(
み
)
を
忍
(
しの
)
んで
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さい』
159
と
差出
(
さしだ
)
す
書状
(
しよじやう
)
、
160
ハリスはハツと
首
(
くび
)
をさげ
押
(
お
)
し
頂
(
いただ
)
き、
161
名宛
(
なあて
)
を
見
(
み
)
ればマーク
殿
(
どの
)
と
認
(
したた
)
めてある。
162
ハリスは
仰天
(
ぎやうてん
)
せむ
許
(
ばか
)
り
吃驚
(
びつくり
)
して
太子
(
たいし
)
の
顔
(
かほ
)
をつくづく
見守
(
みまも
)
り
乍
(
なが
)
ら、
163
ハリ『
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
、
164
御
(
ご
)
冗談
(
ぢようだん
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬか。
165
マークと
云
(
い
)
ふ
人間
(
にんげん
)
は
首陀
(
しゆだ
)
向上
(
かうじやう
)
運動
(
うんどう
)
の
首謀者
(
しゆぼうしや
)
、
166
ラマ
本山
(
ほんざん
)
の
注意
(
ちうい
)
人物
(
じんぶつ
)
、
167
彼様
(
かやう
)
な
人間
(
にんげん
)
の
所
(
ところ
)
へ、
168
どうして
忍
(
しの
)
んで
居
(
ゐ
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませうか』
169
太子
(
たいし
)
『いや
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
らぬ。
170
彼
(
かれ
)
は
決
(
けつ
)
して
悪人
(
あくにん
)
でない。
171
吾
(
わが
)
トルマン
国
(
ごく
)
の
将来
(
しやうらい
)
重鎮
(
ぢうちん
)
となる
人物
(
じんぶつ
)
だ。
172
この
書状
(
しよじやう
)
をもつて
行
(
ゆ
)
けば
屹度
(
きつと
)
世話
(
せわ
)
して
呉
(
く
)
れるだらう』
173
ハリ『テイラさま、
174
妾
(
わたし
)
、
175
どうしませう。
176
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
も、
177
あまりぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
178
彼
(
あ
)
の
様
(
やう
)
な
所
(
ところ
)
へ
島流
(
しまなが
)
しとは
余
(
あま
)
り
甚
(
ひど
)
う
御座
(
ござ
)
いますわ』
179
テイ『
妾
(
わらは
)
だつて
有名
(
いうめい
)
な
向上会
(
かうじやうくわい
)
のレールさまの
家
(
いへ
)
へ
預
(
あづ
)
けられるのですもの。
180
何
(
なに
)
かこれには
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
に
於
(
おい
)
て
深
(
ふか
)
いお
考
(
かんが
)
へがお
有
(
あ
)
りなさるのでせう。
181
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
いつて
見
(
み
)
ようぢやありませぬか』
182
と、
183
二人
(
ふたり
)
は
早
(
はや
)
くも
太子
(
たいし
)
に
暇
(
いとま
)
を
告
(
つ
)
げ、
184
『
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
185
暫
(
しばら
)
く
行
(
い
)
つて
参
(
まゐ
)
ります』
186
と
黄昏
(
たそがれ
)
を
幸
(
さいは
)
ひ
裏町通
(
うらまちどほ
)
りを
伝
(
つた
)
うて
187
レール、
188
マークの
住家
(
すみか
)
をさして
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
189
レール、
190
マークの
両人
(
りやうにん
)
は
其
(
そ
)
の
日
(
ひ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
に
追
(
お
)
はれ、
191
九尺
(
くしやく
)
二間
(
にけん
)
の
裏店
(
うらだな
)
に、
192
二人
(
ふたり
)
一組
(
ひとくみ
)
の
世帯
(
しよたい
)
をやつて
居
(
ゐ
)
る。
193
二人
(
ふたり
)
は
荒井
(
あらゐ
)
ケ
嶽
(
だけ
)
の
麓
(
ふもと
)
なる
岩窟
(
がんくつ
)
の
番人
(
ばんにん
)
を
了
(
を
)
へ、
194
固
(
かた
)
く
錠
(
ぢやう
)
をかけおき、
195
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た
所
(
ところ
)
であつた。
196
両人
(
りやうにん
)
はやれやれと
腰
(
こし
)
を
卸
(
おろ
)
し、
197
夕飯
(
ゆふはん
)
の
箸
(
はし
)
を
執
(
と
)
らむとする
時
(
とき
)
、
198
門口
(
かどぐち
)
に
優
(
やさ
)
しき
女
(
をんな
)
の
声
(
こゑ
)
、
199
『
御免
(
ごめん
)
なさいませ。
200
レール、
201
マークさまのお
宅
(
たく
)
は
此処
(
ここ
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
202
薄暗
(
うすくら
)
がりにレール、
203
マーク
二人
(
ふたり
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
くより、
204
レール『オイ、
205
マーク、
206
艶
(
なま
)
めかしい、
207
しかも
高尚
(
かうしやう
)
な
女性
(
ぢよせい
)
の
声
(
こゑ
)
が
門口
(
かどぐち
)
に
聞
(
きこ
)
えて
居
(
ゐ
)
るぢやないか。
208
さうして「レール、
209
マークさまのお
宅
(
たく
)
は」と、
210
ほざいて
居
(
ゐ
)
るやうだ。
211
一体
(
いつたい
)
何
(
なん
)
だらうか』
212
マーク『ヘン、
213
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
214
こんな
所
(
ところ
)
へ
誰
(
たれ
)
が
尋
(
たづ
)
ねて
来
(
く
)
るものか、
215
しかも
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
れ
間際
(
まぎは
)
に、
216
大方
(
おほかた
)
狐
(
きつね
)
か
狸
(
たぬき
)
のお
化
(
ばけ
)
だらうよ』
217
レ『いやいや、
218
確
(
たしか
)
に
女
(
をんな
)
の
声
(
こゑ
)
だ』
219
と
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る
時
(
とき
)
しも、
220
再
(
ふたた
)
び
優
(
やさ
)
しき
女
(
をんな
)
の
声
(
こゑ
)
、
221
『レールさま、
222
マークさまのお
宅
(
たく
)
は
此所
(
ここ
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
223
マ『
如何
(
いか
)
にも
女性
(
ぢよせい
)
の
声
(
こゑ
)
だ』
224
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
225
つつと
立
(
た
)
つて
菱
(
ひし
)
になつた
破
(
やぶ
)
れ
戸
(
ど
)
をがらりと
引
(
ひ
)
き
開
(
あ
)
け、
226
見
(
み
)
れば
盛装
(
せいさう
)
を
凝
(
こ
)
らした
二人
(
ふたり
)
の
美人
(
びじん
)
、
227
ニコニコとして、
228
女
(
をんな
)
『
妾
(
わらは
)
は、
229
一寸
(
ちよつと
)
様子
(
やうす
)
あつて
貴方
(
あなた
)
のお
家
(
いへ
)
へお
世話
(
せわ
)
になりに
参
(
まゐ
)
りました。
230
どうか
宜敷
(
よろし
)
う
願
(
ねが
)
ひます。
231
見
(
み
)
れば
奥
(
おく
)
さまもお
子
(
こ
)
達
(
たち
)
もおはさぬ
様子
(
やうす
)
、
232
どうかお
世話
(
せわ
)
にして
下
(
くだ
)
さいませ』
233
マ『どこの
貴婦人
(
きふじん
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
234
冗談
(
ぢようだん
)
云
(
い
)
つてはいけませぬよ。
235
私
(
わたし
)
はお
粥腹
(
かゆばら
)
を
抱
(
かか
)
へて
飢
(
うゑ
)
に
泣
(
な
)
き
寒
(
かん
)
に
慄
(
ふる
)
へて
居
(
ゐ
)
る
貧民窟
(
ひんみんくつ
)
の
主人公
(
しゆじんこう
)
、
236
どうして
人様
(
ひとさま
)
のお
世話
(
せわ
)
する
余裕
(
よゆう
)
が
御座
(
ござ
)
いませう。
237
大方
(
おほかた
)
人違
(
ひとちが
)
ひで
御座
(
ござ
)
いませう。
238
お
帰
(
かへ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
239
オイ、
240
レール
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
になつて
来
(
き
)
たぢやないか。
241
貴婦人
(
きふじん
)
が、
242
しかも
二人
(
ふたり
)
、
243
盛装
(
せいさう
)
を
凝
(
こ
)
らしお
前
(
まへ
)
と
俺
(
おれ
)
とを
尋
(
たづ
)
ねて
来
(
こ
)
られたのだが、
244
どうも
承知
(
しようち
)
出来
(
でき
)
ぬぢやないか。
245
大方
(
おほかた
)
それ、
246
キユーバーに
関係
(
くわんけい
)
のある、
247
お
安
(
やす
)
くない
連中
(
れんぢう
)
ぢやなからうか』
248
と、
249
小声
(
こごゑ
)
に
囁
(
ささや
)
く。
250
レ『
成程
(
なるほど
)
さうかも
知
(
し
)
れぬよ。
251
此奴
(
こいつ
)
はうつかり
相手
(
あひて
)
になつては
駄目
(
だめ
)
だ。
252
スコブツエン
宗
(
しう
)
のキユーバーと
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
、
253
沢山
(
たくさん
)
の
貴婦人
(
きふじん
)
を
胡麻化
(
ごまくわ
)
しよつたと
云
(
い
)
ふことだ。
254
その
貴婦人
(
きふじん
)
が
俺
(
おれ
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
が
牢番
(
らうばん
)
をして
居
(
ゐ
)
る
事
(
こと
)
を
嗅
(
かぎ
)
つけ、
255
尋
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
よつたのだらう。
256
そんな
事
(
こと
)
をしては
太子
(
たいし
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
して
申
(
まをし
)
訳
(
わけ
)
が
無
(
な
)
いからなア。
257
断
(
ことわ
)
つて
逐
(
お
)
ひ
帰
(
かへ
)
せ』
258
マ『
折角
(
せつかく
)
乍
(
なが
)
ら、
259
二人
(
ふたり
)
の
女中
(
ぢよちう
)
さま、
260
レール、
261
マークは
当家
(
たうけ
)
に
居
(
を
)
りませぬ。
262
トツトとお
帰
(
かへ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
263
こんな
破
(
やぶ
)
れ
家
(
や
)
を
尋
(
たづ
)
ねると
云
(
い
)
ふ
女性
(
ぢよせい
)
は
人間
(
にんげん
)
ぢやありますまい。
264
狐
(
きつね
)
か
狸
(
たぬき
)
かの
化
(
ば
)
けた
奴
(
やつ
)
と
認
(
みと
)
めるからトツトといんで
下
(
くだ
)
さい』
265
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く
破
(
やぶ
)
れ
戸
(
ど
)
をピシヤリと
閉
(
し
)
め、
266
戸
(
と
)
に
突張
(
つつぱ
)
りをかうて
了
(
しま
)
つた。
267
マ『ハヽヽヽヽヽ、
268
此
(
この
)
破戸
(
やぶれど
)
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
が
鉄
(
くろがね
)
の
門
(
もん
)
より
高
(
たか
)
う
269
と
云
(
い
)
ふ
処
(
ところ
)
だ、
270
ハヽヽヽヽヽ』
271
と
大声
(
おほごゑ
)
に
笑
(
わら
)
ふ。
272
テイ『もし
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
、
273
どうか
此
(
この
)
手紙
(
てがみ
)
を
読
(
よ
)
んで
下
(
くだ
)
さいませ。
274
さうすれば
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
のお
疑
(
うたが
)
ひが
晴
(
は
)
れるでせう』
275
と、
276
戸
(
と
)
の
隙間
(
すきま
)
より
二通
(
につう
)
共
(
とも
)
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
んだ。
277
二人
(
ふたり
)
は
二通
(
につう
)
共
(
とも
)
拾
(
ひろ
)
ひ
上
(
あ
)
げ、
278
薄暗
(
うすぐら
)
いランプにすかして
見
(
み
)
れば、
279
一通
(
いつつう
)
にはレール
殿
(
どの
)
、
280
チウイン
太子
(
たいし
)
より、
281
一通
(
いつつう
)
にはマーク
殿
(
どの
)
、
282
チウイン
太子
(
たいし
)
より、
283
と
記
(
しる
)
されてある。
284
急
(
いそ
)
ぎ
封
(
ふう
)
押
(
お
)
しきつて
見
(
み
)
れば、
285
正
(
まさ
)
しくチウイン
太子
(
たいし
)
の
手紙
(
てがみ
)
に
間違
(
まちが
)
ひない。
286
さうして
枯
(
か
)
れきつた
貧乏
(
びんばふ
)
世帯
(
せたい
)
へ、
287
大枚
(
たいまい
)
三百
(
さんびやく
)
円
(
ゑん
)
宛
(
づつ
)
、
288
女
(
をんな
)
の
賄料
(
まかなひれう
)
として
封
(
ふう
)
じ
込
(
こ
)
んである。
289
二人
(
ふたり
)
は
慌
(
あわ
)
てて
戸
(
と
)
を
押
(
お
)
し
開
(
あ
)
け、
290
レ『ヤこれはこれは
失礼
(
しつれい
)
いたしました。
291
むさくろ
しい
処
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
292
どうかお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
293
オイ、
294
マーク
手箒
(
てばうき
)
でそこらを
掃
(
は
)
かないか、
295
珍客
(
ちんきやく
)
だぞ。
296
これは
左守家
(
さもりけ
)
のお
嬢
(
ぢやう
)
さまと、
297
右守家
(
うもりけ
)
のお
嬢
(
ぢやう
)
さまだ』
298
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
299
二人
(
ふたり
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
、
300
黒
(
くろ
)
ずんだ
畳
(
たたみ
)
の
表
(
おもて
)
や
庭
(
には
)
を
掃
(
はき
)
出
(
だ
)
した。
301
テイ『どうぞお
構
(
かま
)
ひ
下
(
くだ
)
さいますな。
302
今日
(
けふ
)
から
私
(
わたし
)
がお
掃除
(
さうぢ
)
も
致
(
いた
)
します。
303
御飯
(
ごはん
)
も
炊
(
た
)
きます。
304
男
(
をとこ
)
さまがなさいますと
見
(
み
)
つともなう
御座
(
ござ
)
います』
305
レ『いや
勿体
(
もつたい
)
ない、
306
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
に
飯炊
(
めしたき
)
をさせたり、
307
掃除
(
さうぢ
)
をさしたりして
耐
(
たま
)
りますか。
308
しかし
折角
(
せつかく
)
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
ひましたが
寝具
(
しんぐ
)
もなし、
309
食器
(
しよくき
)
も
無
(
な
)
し、
310
まあ
暫
(
しばら
)
くお
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さい。
311
マークに
買
(
かひ
)
にやりますからな。
312
オイ、
313
マークこの
頂
(
いただ
)
いたお
金
(
かね
)
で
絹夜具
(
きぬやぐ
)
を
二組
(
ふたくみ
)
買
(
か
)
ふて
来
(
こ
)
い。
314
そして
上等
(
じやうとう
)
の
食器
(
しよくき
)
を
二組
(
ふたくみ
)
揃
(
そろ
)
へて
来
(
く
)
るのだぞ』
315
マ『よし
来
(
き
)
た』
316
と
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
さうとするをテイラは
細
(
ほそ
)
い
柔
(
やはら
)
かい
手
(
て
)
で、
317
マークの
袖
(
そで
)
を
控
(
とら
)
へ
乍
(
なが
)
ら、
318
テイ『もしマーク
様
(
さま
)
、
319
失礼
(
しつれい
)
乍
(
なが
)
ら、
320
彼様
(
かやう
)
なお
住
(
すまゐ
)
へ
絹夜具
(
きぬやぐ
)
を
入
(
い
)
れたり、
321
立派
(
りつぱ
)
な
食器
(
しよくき
)
をお
入
(
い
)
れになつては、
322
直様
(
すぐさま
)
其
(
その
)
筋
(
すぢ
)
の
疑
(
うたが
)
ひをうけ
迷惑
(
めいわく
)
をなさいませう。
323
妾
(
わらは
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
は
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
と
同
(
おな
)
じ
生活
(
せいくわつ
)
が
致
(
いた
)
したう
御座
(
ござ
)
います。
324
どうか
食器
(
しよくき
)
の
最
(
もつと
)
も
悪
(
わる
)
い
欠
(
か
)
げたやうなものを
購
(
もと
)
めて
下
(
くだ
)
さい。
325
さうして
寝具
(
しんぐ
)
も
最
(
もつと
)
も
悪
(
わる
)
い、
326
これより
悪
(
わる
)
いものはないと
云
(
い
)
ふやうなものを
買
(
か
)
つて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい。
327
さうせねば
向上会
(
かうじやうくわい
)
の
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
が、
328
其
(
その
)
筋
(
すぢ
)
の
疑
(
うたがひ
)
を
受
(
う
)
けられては
妾
(
わらは
)
等
(
たち
)
、
329
長
(
なが
)
いお
世話
(
せわ
)
になる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬからなあ』
330
マ『オイ、
331
レールどうせうかな、
332
なんぼなんでもこんな
貴婦人
(
きふじん
)
にまさか
破
(
やぶ
)
れ
布団
(
ぶとん
)
も
着
(
き
)
せる
訳
(
わけ
)
にゆかぬぢやないか』
333
レ『
何
(
なに
)
、
334
構
(
かま
)
やしないよ。
335
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
浄行
(
じやうぎやう
)
階級
(
かいきふ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
をなされて
居
(
ゐ
)
たお
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
336
些
(
ちつ
)
とは
吾々
(
われわれ
)
貧民窟
(
ひんみんくつ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
味
(
あぢは
)
はしてやつてもいいぢやないか。
337
そんな
遠慮
(
ゑんりよ
)
をして
居
(
を
)
つて、
338
どうして
目的
(
もくてき
)
の
貫徹
(
くわんてつ
)
が
出来
(
でき
)
ようか』
339
テイ『ホヽヽ、
340
レールさまのお
言葉
(
ことば
)
、
341
私
(
わたし
)
ぞつこん
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りましたよ。
342
ねえハリスさま』
343
ハ『さうですねえ、
344
本当
(
ほんたう
)
に
貧民窟
(
ひんみんくつ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
は
愉快
(
ゆくわい
)
なものでせうよ』
345
マ『これお
姫
(
ひめ
)
さま、
346
貧民窟
(
ひんみんくつ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
が
愉快
(
ゆくわい
)
だなんて、
347
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
るのだ。
348
まあ
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
やつて
見
(
み
)
なさい、
349
吠面
(
ほえづら
)
かわいて
逃
(
に
)
げて
帰
(
かへ
)
らにやならぬやうになりますよ』
350
ハリ『
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
つらくても
構
(
かま
)
ひませぬよ。
351
国家
(
こくか
)
の
柱石
(
ちうせき
)
ともなるべき
立派
(
りつぱ
)
なお
二人
(
ふたり
)
さまと
共同
(
きようどう
)
生活
(
せいくわつ
)
をすると
思
(
おも
)
へば、
352
どんな
辛
(
つら
)
い
事
(
こと
)
でも
辛抱
(
しんばう
)
致
(
いた
)
しますわ』
353
レ『やアお
出
(
いで
)
たな、
354
これやまあ、
355
何
(
なん
)
のこつた。
356
今日
(
こんにち
)
只
(
ただ
)
今
(
いま
)
より
貧乏神
(
びんばふがみ
)
の
御
(
ご
)
退却
(
たいきやく
)
、
357
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
入来
(
じゆらい
)
、
358
まるで
夢
(
ゆめ
)
のやうだわい』
359
四
(
よ
)
人
(
にん
)
一度
(
いちど
)
に『ハヽヽヽヽヽ、
360
ホヽヽヽヽヽ』
361
三日
(
みつか
)
の
月
(
つき
)
は
西山
(
せいざん
)
に
隠
(
かく
)
れ、
362
暗
(
やみ
)
の
帳
(
とばり
)
は
四辺
(
あたり
)
を
包
(
つつ
)
み、
363
近所
(
きんじよ
)
合壁
(
がつぺき
)
の
婆嬶
(
ばばかか
)
の
囀
(
さへづ
)
る
声
(
こゑ
)
も
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に
消
(
き
)
えて
行
(
ゆ
)
く。
364
(
大正一四・八・二四
旧七・五
於由良海岸秋田別荘
加藤明子
録)
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