髪に魂があり、髪に心がある。頭髪は美の源泉であり女の生命である。女の美は頭髪にある。洗いだてのきれいな髪を、さっと垂らしているのはいちばん人の心をひく。女の髪は、毛そのものが美しいのであるから、なるべく簡単に結んでおくがいちばんよいので、いろんな形をこしらえるとそれだけ美が減ずるものである。昔から女の髪の毛で大象をもつなぎとめる力があるというのは、この理である。よい髪をもちながら、わざわざ縮らすのはよくない。
髪は神への架橋であるから、多くて長いのがけっこうである。相撲とりでも髪が長くなければ九分九厘というところで負けをとる。美術家などが髪を長くすることはまことに理由のあることで、これでなければよい想はうかんでこない。インスピレーションというのは神からの内流である。頭髪だけは毛といわずしてカミというが、神の毛の意味である。
(「神の国」昭和5年8月)