相愛する同土が結婚してつくった家庭は、家庭としてはあまりおもしろくないものである。なぜならば、夫婦は家庭の重要品であって、家庭本位でやってゆかねばならぬ。しかるに相愛する同士は、ややもすれば家庭を忘れて夫婦本位となる傾きがある。また相愛する同士は意思想念に共通点が多いので、何事にもすぐ共鳴しやすい。したがって夫が主張することには、一も二もなく妻が賛成してしまう。それがまた家庭からみて、はなはだためにならぬことがある。やはり夫婦は家庭本位でなければならぬから、時には夫のいうことでも、家庭のためにならぬことには反対せねばならぬ。夫婦の性格は反対の方がかえって家庭からいうと、よい夫婦である。
(恋愛と家庭、「神の国」昭和2年8月)