無始無終の宇宙開において、もっとも強く美しきものは愛の発動なり。大虚空中に愛の発動ありてはじめてスの言霊は生まれ、天地の万神は生まる。ゆえに神は愛なり力なりと称するゆえんなり。愛あるがゆえに宇宙は創造され、万物は発生す。宇宙間いっさいのものはこの愛に左右され、創造も、建設も、破壊も、滅亡も、混乱も生ずるものなり。愛はもっとも尊むべく、かつ恐るべきものとす。愛よりスク、スカヌの言霊は生まるるなり。
愛の情動にしてその度合いよろしければ、生成化育の神業は完成し、愛の情動の度合い過ぐれば、ついにはいっさいを破壊するにいたる。しかして、愛には善あり、悪あり、大あり、小あり、神の愛は愛善にして、世間いっさいの愛は愛悪なり。神の愛は大愛にして世間の愛は小愛なり。わが身を愛し、わが家を愛し、わが郷土を愛し、わが国土を愛するはいわゆる自己愛にして、神の大愛に比して雲泥の相違あり。ゆえに小愛は我情我欲の心を増長せしめ、ついには自己愛のために他人を害し、他家を破り、他郷と争い、他の国と戦い、ついに彼我ともに惨禍の洗礼をうくるにいたる。また神の愛は大愛なれば、宇宙いっさい万有に普遍して毫も依怙の沙汰なし。世間の愛は他をかえりみず、ひたすらにわが身を愛し、わが家を愛し、わが郷土を愛し、わが国家を愛するがゆえに、他よりもし不利益をくわえらるるとみる時は、たちまちたって反抗し争闘し、身を破り、家を破り、国家を破るにいたる。
恐るべきは愛の情動の度合いなり。
(真心の曇らひ、『天祥地瑞』七十四巻、昭和8年10月24日)