霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第四章 (ゆめ)(まく)〔五三〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻 篇:第1篇 勝利光栄 よみ(新仮名遣い):しょうりこうえい
章:第4章 夢の幕 よみ(新仮名遣い):ゆめのまく 通し章番号:530
口述日:1922(大正11)年03月16日(旧02月18日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年10月30日
概要: 舞台:シヅの森 あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
日の出別宣伝使は上陸し、フサの都さして出発した。ウラル教の六人の宣伝使たちはその後をそっとつけていく。
砂塵を浴びながら原野を進み、日の出別命はシヅの森に着いて、一夜を明かすことになった。
ウラル教の宣伝使たちも到着し、点呼をするが、肝心の岩公がはぐれてしまったことに気づく。仲間たちは、岩公は普段いばっているからその報いだ、と話あっていたが、そこへ闇の中から大きな声が聞こえてきた。
暗がりの大声は、アーメニヤの神都は荒廃し、ウラル教にもはや勢いはないとして、三五教への改心を迫った。
化け物のような声にどう対処しようかと一同が相談していると、巨大な光が現れて、その中から恐ろしい朱色の顔をした怪物が、舌先に人の首を乗せている。よく見れば、岩彦の首であった。
鷹彦は怒って、岩彦の敵とばかりにウラル教の宣伝歌を歌って化け物をやっつけようとするが、化け物は、ウラル教の宣伝歌を聞くとかえって気分がよくなる、と言う。
仕方がないので、三五教の宣伝歌をうろ覚えで歌うが、それは梅彦、亀彦、駒彦、音彦に食いつけよ、というおかしな歌であった。
仲間は鷹彦を責めるが、鷹彦は、実は自分は三五教の宣伝使であり、今までウラル教に潜伏して布教の妨害をしていたのだ、と正体を明かす。
と、化け物の口から岩彦が落ちてきた。そこで一同は目を覚ます。シヅの森でみな夢を見ていたのであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ:サルヂニヤ島(サルジニヤ) データ凡例: データ最終更新日:2020-11-26 16:48:29 OBC :rm1304
愛善世界社版:54頁 八幡書店版:第3輯 51頁 修補版: 校定版:55頁 普及版:22頁 初版: ページ備考:
001 鶴山丸(つるやままる)は、002ペルシャ(わん)のタルの(みなと)寄港(きかう)した。003()出別(でわけ)宣伝使(せんでんし)は、004此処(ここ)上陸(じやうりく)してフサの(くに)(みやこ)()して宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら(すす)()く。
005 ウラル(けう)宣伝使(せんでんし)006岩彦(いはひこ)007梅彦(うめひこ)008音彦(おとひこ)009亀彦(かめひこ)010駒彦(こまひこ)011鷹彦(たかひこ)(ろく)(にん)(たがひ)目配(めくば)せしながらタルの(みなと)上陸(じやうりく)し、012(あし)(はや)めて(すす)()く。
013 (をり)から()()強風(きやうふう)景物(けいぶつ)砂塵(さぢん)()び、014灰泥餅(はいどろもち)のやうになつて、015最大(さいだい)急行(きふかう)突喊(とつかん)命令(めいれい)(くだ)しつつ、016シヅの(もり)(むか)つて電光(でんくわう)(ごと)疾走(しつそう)する。
017 ()出別(でわけの)(みこと)は、018暴風(ばうふう)強雨(きやうう)我不関(われくわんせず)(えん)といつたやうな調子(てうし)悠々(いういう)として原野(げんや)(あそ)べる野馬(やば)(ぎよ)し、019チヨクチヨクと(すす)()く。020()(やうや)くに黄昏(たそが)れたと()え、021(くら)さは(ひと)しきり(くら)くなつて()た。022もはや一寸(いつすん)(すす)むことが出来(でき)ない。
023 ここに()出別(でわけ)(うま)()()て、024親譲(おやゆづ)りの交通(かうつう)機関(きくわん)砂煙(すなけむり)()てながら、025シヅの(もり)()して(すす)(きた)り、026一夜(いちや)(あか)さむと(みの)木蔭(こかげ)()いて(ねむり)につく。
027 (いは)028(うめ)029(おと)030(かめ)031(こま)032(たか)のウラル(けう)宣伝使(せんでんし)は、033タルの(みなと)上陸(じやうりく)(あし)(はや)めてシヅの(もり)(すす)()たり。
034梅彦(うめひこ)『ヤア、035(やうや)此処(ここ)がシヅの(もり)だ。036サア人員(じんゐん)点呼(てんこ)だ、037(いち)038()039(さん)040()041()042
043梅彦(うめひこ)(ろく)()いのか、044オイ(たれ)だ、045途中(とちう)落伍(らくご)した(やつ)がありさうだナア』
046音彦(おとひこ)(くら)がり(みち)強行(きやうかう)(てき)行進(かうしん)(つづ)けたものだから、047岩公(いはこう)(やつ)たうとう落伍(らくご)しよつたな。048口程(くちほど)にもない(やつ)だ。049空虚(くうきよ)なる器物(きぶつ)強大(きやうだい)なる音響(おんきやう)(はつ)すと()うて、050実力(じつりよく)のないものだ。051言葉(ことば)(おほ)ければ(しな)(すくな)しだ。052吾々(われわれ)三五教(あななひけう)帰順(きじゆん)しようと(おも)つて()たのに、053岩公(いはこう)(やつ)054()らず(ぐち)(たた)きよつて、055たうとう議会(ぎくわい)停会(ていくわい)()たものだから、056(いち)()らず()()らず、057その(あひだ)()出別(でわけ)宣伝使(せんでんし)は、058この(ひろ)いフサの(くに)上陸(じやうりく)して仕舞(しま)はれた』
059亀彦(かめひこ)彼奴(あいつ)(なに)()つたところうでモウ駄目(だめ)だよ。060自分(じぶん)ほど(えら)(もの)()いと()めて()るのだから馬耳(ばじ)東風(とうふう)061余程(よほど)(きつ)()()はねば、062免疫性(めんえきせい)無感覚(むかんかく)(しや)だから()()めないよ。063多分(たぶん)タルの(かは)崖道(がけみち)断巌(だんがん)絶壁(ぜつぺき)から空中(くうちう)滑走(くわつそう)をやつてタルの(かは)川底(かはぞこ)へでも有事(いうじ)着陸(ちやくりく)したのだらう。064今頃(いまごろ)にはプロペラーが()れたので谷底(たにそこ)進退(しんたい)(きは)まつて岩彦(いはひこ)(いは)(かか)へてアヽいはぬは()ふに弥勝(いやまさ)る、065鶴山丸(つるやままる)(なか)で、066あんないはいでもよい(こと)いはなかつたらよかつたになぞと()つてこうかいして()るだらう』
067駒彦(こまひこ)航海(かうかい)吾々(われわれ)もして()たぢやないか。068(あと)後悔(こうくわい)(さき)()たず、069ぢやない(やく)()たずだ。070(しか)(なが)此処(ここ)はシヅの(もり)()ふて、071バの()とケの()()(ところ)()有名(いうめい)妖怪窟(ようくわいくつ)だ。072オイ(しつ)かりせぬと、073トンダ()()ふか()れやしないぞ。074岩彦(いはひこ)()ひこで()いと()(わけ)()かない、075吾々(われわれ)極力(きよくりよく)捜索(そうさく)をやつて(かれ)潜伏所(せんぷくしよ)()()めねば宣伝使(せんでんし)(やく)(つと)まらない。076アーメニヤに(かへ)つて、077あの(おほ)きな岩公(いはこう)をまさか紛失(ふんしつ)したとも、078途中(とちう)遺失(ゐしつ)したとも、079また磨滅(まめつ)して仕舞(しま)つたとも()(わけ)には()かぬからなア』
080梅彦(うめひこ)(なん)だ。081遺失(ゐしつ)だの磨滅(まめつ)だのと、082(まる)手荷物(てにもつ)のやうに()つて()るじやないか、083()言霊(ことたま)(つつし)まむかい』
084駒彦(こまひこ)『マア、085マア、086今晩(こんばん)はこれで打切(うちき)りとして、087明朝(みやうてう)早々(さうさう)捜索(そうさく)(けん)探険(たんけん)()かけよう。088(はな)(つま)まれても(わか)らぬやうな(この)暗夜(やみよ)にどうして居所(ゐどころ)(わか)るものか。089木乃伊(みいら)()りが木乃伊(みいら)になるやうな慘虐事(ざんぎやくじ)継続(けいぞく)しては(たま)らぬからなア』
090鷹彦(たかひこ)(きみ)(たち)随分(ずゐぶん)冷淡(れいたん)(をとこ)だなア。091人情(にんじやう)軽薄(けいはく)なる(こと)(かみ)(ごと)しだよ』
092梅彦(うめひこ)『それや貴様(きさま)093(かみ)(さま)使(つかひ)だもの、094()(へん)暗雲(あんうん)(つつ)まれ咫尺(しせき)(べん)ぜざる深夜(しんや)に、095どう心配(しんぱい)したつて進退(しんたい)(きは)まつた(この)()光景(くわうけい)096(いな)暗景(あんけい)だ。097如何(どう)とも(さく)(ほどこ)余地(よち)()いぢやないか』
098鷹彦(たかひこ)(なに)099(くら)くつても矢張(やつぱ)(かみ)(つく)つた神国(しんこく)(つち)(うへ)()吾々(われわれ)だ。100如何(いか)妖怪(えうくわい)(あら)はれるシヅの(もり)だと()つても、101これも矢張(やつぱ)神国(しんこく)断片(だんぺん)だ。102(たれ)一人(ひとり)此処(ここ)()(こと)にして(あと)()(にん)岩公(いはこう)捜索(そうさく)だよ』
103音彦(おとひこ)『おとましい、104この深夜(しんや)縁起(えんぎ)(わる)()(にん)とはどうだ。105何故(なぜ)()(にん)()はないのだ』
106駒彦(こまひこ)言霊(ことたま)()ふものは(めう)なものだ。107まかり間違(まちが)へば岩彦(いはひこ)死人(しにん)になつて()るかも()れやしないぞ、108よい辻占(つじうら)だ。109マア如何(どう)でも()いぢやないか、110明日(あす)明日(あす)(こと)だ』
111鷹彦(たかひこ)たか()れた宣伝使(せんでんし)一羽(いちは)二羽(には)112()くなつたつて(かま)ふものかい。113彼奴(あいつ)(あんま)自負心(じふしん)(つよ)いから、114(かみ)(さま)懲罰(ちようばつ)()うて()るのだ。115何時(いつ)(えら)さうに聖人(せいじん)()つて、116宇宙(うちう)(かん)無限(むげん)絶対(ぜつたい)なる不可解(ふかかい)(てき)事実(じじつ)道破(だうは)したものは(この)岩彦(いはひこ)だ……ナンテ駄法螺(だぼら)()きよつて吾々(われわれ)(けむ)()いて()たが、117フサの(うみ)暴風雨(しけ)出遇(であ)つた(とき)随分(ずゐぶん)六ケ敷(むつかしい)(かほ)をしとつたよ。118負惜(まけをし)みで(こゑ)()ててオイオイと()えはせなかつたが、119(ちから)一ぱい気張(きば)つて(なみだ)泣面(なきづら)保留(ほりう)をして()たのは(たしか)事実(じじつ)だよアハヽヽヽ』
120 ()(はな)(とき)しも鼓膜(こまく)運命(うんめい)危殆(きたい)ならしむる(ごと)きドラ(こゑ)暗中(あんちう)より(きこ)えて()た。
121梅彦(うめひこ)『ヤア(うな)るぞ、122(うな)るぞ、123大変(たいへん)だぞ』
124音彦(おとひこ)『ヤイ、125何者(なにもの)なればこの深夜(しんや)(うな)るのだ。126この(はう)はウナル(けう)宣伝使(せんでんし)127ウナル(ひこ)(さま)()家来(けらい)だぞ。128(なん)ぼなと法螺(ほら)()け、129太鼓(たいこ)()て、130もつともつと馬力(ばりき)()して(のど)()ける(ほど)呶鳴(どな)つたがよいわ。131シヅの(もり)(しづか)(ところ)だと(おも)へば、132反対(あべこべ)(やかま)しの(もり)の、133(さわ)がしの(もり)の、134呶鳴(どな)りの(もり)だ。135呶鳴(どな)るなら呶鳴(どな)れ、136どうなりても(かま)はぬ、137(いのち)()らずの宣伝使(せんでんし)(おと)さまだ。138オイオイ(うめ)139(かめ)140(たか)141(こま)142貴様(きさま)(たち)(なん)とか防戦(ばうせん)せむかい。143(おほ)きな言霊(げんれい)()しよつて、144吾々(われわれ)(みみ)鼓膜(こまく)破裂(はれつ)させようとかかつて()やがるのだよ』
145暗中(あんちう)より一層(いつそう)(おほ)きな(こゑ)で、
146(化物)『オヽヽー音公(おとこう)147(こま)鼓膜(こまく)(やぶ)れるどころか、148(たか)のやうな高声(たかごゑ)呶鳴(どな)つてやるから、149(きも)破裂(はれつ)せぬやうに用心(ようじん)(いた)せ』
150鷹彦(たかひこ)(なん)ぢや、151ケ、152ケ、153怪体(けつたい)(やつ)が、154()んで()よつたものだ。155オイ、156ドラ(ごゑ)先生(せんせい)157(おれ)誰人(どなた)心得(こころえ)()る』
158(くら)がりの大声(おほごゑ)
159(化物)『ウラル(けう)腰抜(こしぬけ)野郎(やらう)160よつく()け。161アーメニヤの神都(しんと)(ほとん)零敗(れいはい)()し。162(いま)(わづか)美山彦(みやまひこ)163国照姫(くにてるひめ)曲津見(まがつみ)弧塁(こるゐ)死守(ししゆ)するのみ、164(じつ)(みぢめ)なものだ。165アーメニヤの城壁(じやうへき)所々(ところどころ)くたぶれ()て、166(あな)だらけ、167貴様(きさま)(たち)はコーカス(ざん)(かへ)つて()くつもりであらうが、168コーカス(ざん)は、169もはや三五教(あななひけう)勢力(せいりよく)範囲(はんゐ)()して(しま)つたぞ。170(いま)(うち)改心(かいしん)いたせばよし、171違背(ゐはい)(およ)ばば(なんぢ)生命(いのち)風前(ふうぜん)灯火(ともしび)172また岩彦(いはひこ)のやうな運命(うんめい)(おちい)るぞ。173アハヽヽヽ、174オホヽヽヽ、175ウフヽヽヽ、176イヒヽヽヽ、177エヘヽヽヽ』
178五韻(ごゐん)(はな)れた(つる)のやうな(わら)(ごゑ)(きこ)()たる。
179亀彦(かめひこ)『オイ(みな)(やつ)180これや(ひと)作戦(さくせん)計画(けいくわく)()(なほ)さねばならなくなつたぞ。181新規(しんき)蒔直(まきなほ)し、182吾々(われわれ)兎角(とかく)(ぜん)(しん)じた(こと)飽迄(あくまで)決行(けつかう)せなくてはならないのだ。183どうだ岩公(いはこう)(いま)のバーとケーサンの言葉(ことば)によれば、184どうやら寂滅(じやくめつ)為楽(ゐらく)(うたが)ひなしだ。185吾々(われわれ)(ひと)()()らねばなるまい、186アヽ(こま)つた(こと)だワイ』
187音彦(おとひこ)(なん)だ、188弱々(よわよわ)しい亡国(ばうこく)(てき)哀音(あいおん)()き、189絶望(ぜつばう)(てき)悲調(ひてう)()びたその世迷言(よまひごと)は、190貴様(きさま)宣伝使(せんでんし)天職(てんしよく)(わす)れたのか』
191亀彦(かめひこ)宣伝(せんでん)万化(ばんくわ)192隠顕(いんけん)出没(しゆつぼつ)(きは)まり()きが、193宣伝使(せんでんし)(まさ)(もち)ふべき神秘(しんぴ)だよ。194貴様(きさま)のやうな杓子(しやくし)定規(ぢやうぎ)でこの()(なか)(わた)れるものか。195(がう)()つては(がう)(したが)へ、196(とき)(ちから)には抵抗(ていかう)する(こと)出来(でき)ない。197この(ごろ)(さくら)のシーズンだと()ふのに如何(どう)だ。198(はな)もなければ()(しほ)れ、199山野(さんや)はほとんど(ふゆ)のやうだ。200これも(てん)(とき)だ、201何時(いつ)までも(はる)(はな)()く、202(あき)紅葉(もみぢ)()ると(おも)つて()ると(わけ)(ちが)ふぞ』
203 かく雑談(ざつだん)(ふけ)(をり)しも、204(にはか)クワツ(あか)くなつて()た。205()(にん)(おどろ)いて(そら)見上(みあ)ぐる途端(とたん)に、206アツと一声(ひとこゑ)大地(だいち)()(たふ)れたり。
207 巨大(きよだい)なる(ひか)(もの)(なか)より、208()()はれぬ(おそ)ろしき朱色(しゆいろ)顔色(がんしよく)に、209アーク(とう)のやうに(ひか)つた目玉(めだま)()いた怪物(くわいぶつ)210五六(ごろく)(しやく)もあるやうな(した)(さき)(なん)だか(ひと)(くび)のやうな(もの)()せてペロペロさして()る。211よくよく()れば岩彦(いはひこ)(くび)である。
212梅彦(うめひこ)『アヽ、213岩々(いはいは)214岩公(いはこう)いはされた』
215音彦(おとひこ)『ヤア、216モシモシ(あか)(かほ)(しろ)目玉(めだま)サン、217それや(あんま)胴欲(どうよく)だ。218その(くび)岩彦(いはひこ)(くび)ぢやないか、219あまりだよ』
220化物(ばけもの)(あま)退屈(たいくつ)なのでア(くび)()たのだよ。221人肉(じんにく)(あたたか)(やつ)()()いと(おも)つて()たら、222此処(ここ)(よつ)(いつ)(ごろ)ついて()るワイ、223ヤア(うま)(うま)い、224天道(てんだう)(ひと)(ころ)さず、225化物(ばけもの)(ひと)()ふ、226美味(うま)さうな(やつ)()たものだワイ。227アハヽヽ、228イヒヽヽ、229ウフヽヽ、230エヘヽヽ、231オホヽヽ』
232鷹彦(たかひこ)『コラ、233バヽバケモノ、234了見(れうけん)せないぞ。235(いま)()つて()れ、236(おれ)がウラル(けう)宣伝歌(せんでんか)(うた)つてやるわ』
237化物(ばけもの)『ウラル(けう)宣伝歌(せんでんか)()かして(もら)うと気分(きぶん)()くなつて、238益々(ますます)貴様(きさま)()()()くなつて()る。239()はれぬ(まへ)にこの()(うた)(をさ)め、240(ひと)(うた)つて()れまいか』
241鷹彦(たかひこ)『ヨー、242此奴(こいつ)零敗(れいはい)大当違(おほあてちが)ひだ。243ソンナラ三五教(あななひけう)宣伝歌(せんでんか)(うた)はう』
244化物(ばけもの)『ウン、245そいつは(こま)る。246しかし貴様(きさま)はウラル(けう)だ。247三五教(あななひけう)宣伝歌(せんでんか)()らう(はず)()い。248マアマア大丈夫(だいぢやうぶ)だ。249(うた)ふなら(うた)つて()よ、250アハヽヽ、251イヒヽヽ、252ウフヽヽ』
253鷹彦(たかひこ)(なに)()かしよるのだ。254不完全(ふくわんぜん)奇数(きすう)(てき)馬鹿(ばか)(わら)ひをしよつて、255(おれ)宣伝歌(せんでんか)()いて(きも)(つぶ)すな。256オイ梅公(うめこう)257音公(おとこう)258亀公(かめこう)259駒公(こまこう)260(たか)サンと一緒(いつしよ)宣伝歌(せんでんか)(うた)ふのだ。261サア今度(こんど)三五教(あななひけう)宣伝歌(せんでんか)だぞ』
262亀彦(かめひこ)三五教(あななひけう)一向(いつかう)不案内(ふあんない)だ。263まして宣伝歌(せんでんか)なぞはサツパリ(わか)らないよ』
264鷹彦(たかひこ)貴様(きさま)はウラル(けう)宣伝使(せんでんし)であつて不心得(ふこころえ)(やつ)だ。265三五教(あななひけう)征服(せいふく)しようと(おも)へば、266(てき)(すべ)ての教理(けうり)()()んで()いて、267ウラル(けう)との優劣(いうれつ)判断(はんだん)し、268ウラル(けう)三五教(あななひけう)と、269どの(へん)(まさ)つて()ると()(てん)宣伝(せんでん)するのが、270宣伝使(せんでんし)(やく)ぢやないか。271(おれ)はウラル(けう)だから三五教(あななひけう)教理(けうり)研究(けんきう)するのも(けが)らはしいと()ふやうな(こと)で、272どうして(てき)(むか)つて勝利(しようり)()(こと)出来(でき)ようか、273エヽ仕方(しかた)がないデモ宣伝使(せんでんし)ばかりだナア。274サアこの(たか)サンが(にはか)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)宙返(ちうがへ)飛行(ひかう)をやつて御覧(ごらん)()れる。275化物(ばけもの)(やつ)276(いま)くたばるか、277くたばらぬか、278(ため)して()るのだ。279もし三五教(あななひけう)宣伝歌(せんでんか)化物(ばけもの)(ほろ)びたら矢張(やつぱ)三五教(あななひけう)(えら)いのだから、280そこで貴様(きさま)(たち)決心(けつしん)するのだぞ。281サア(おれ)宣伝歌(せんでんか)()いて()ろ』
282()ひながら(あや)しき化物(ばけもの)(かほ)をグツと(にら)()け、
283鷹彦(かみ)(おもて)(あら)はれて お(ぜん)(はし)とを立別(たてわ)ける
284 この()(なか)化物(ばけもの)が あつて(たま)るかシヅの(もり)
285 (しづか)になれよ(しづか)になれよ 三五教(あななひけう)宣伝歌(せんでんか)
286 宣伝(せんでん)万化(ばんくわ)曲津見(まがつみ)の (むか)ふを()つて()(まは)
287 梅彦(うめひこ)288亀彦(かめひこ)289駒彦(こまひこ)や おとなしうない音彦(おとひこ)
290 (あたま)目蒐(めが)けて()ひつけよ』
291音、292亀『コラコラ鷹公(たかこう)293(なに)()かしよるのだ。294貴様(きさま)極端(きよくたん)個人(こじん)主義(しゆぎ)だなア。295一連(いちれん)托生(たくしやう)296無我(むが)平等(びやうどう)のウラル(けう)297オツトどつこい三五教(あななひけう)精神(せいしん)()つて()るか』
298鷹彦(たかひこ)『アハヽヽヽ、299馬鹿(ばか)(やつ)だなア、300(おれ)一体(いつたい)(だれ)だと(かんが)へて()る。301抑々(そもそも)アーメニヤを出立(しゆつたつ)するその(とき)より、302(われ)三五教(あななひけう)鷹彦(たかひこ)()ふサルジニヤの(ひと)(じま)()つた宣伝使(せんでんし)だ。303(ねこ)(かぶ)つてウラル(けう)這入(はい)り、304貴様(きさま)()()(にん)(なか)(くは)はりて竜宮(りうぐう)(ひと)(じま)(わた)り、305飯依彦(いひよりひこ)以心(いしん)伝心(でんしん)(てき)作戦(さくせん)計画(けいくわく)をやつて()るのも()がつかず、306(あく)(たくみ)注意(ちうい)周到(しうたう)にして(みづ)()らさぬやうに()えるが、307肝腎(かんじん)身魂(みたま)執着(しふちやく)があるから足許(あしもと)真暗(まつくら)がり、308この(たか)サンの化物(ばけもの)()()かなかつたのだよ。309アハヽヽヽ、310オホヽヽヽ、311イヒヽヽヽ、312ウフヽヽヽ、313エヘヽヽヽ』
314梅、315駒『(なん)だ、316貴様(きさま)までが(にはか)化物(ばけもの)後継(あとつぎ)をしよつて、317(あたま)(うへ)からと(した)からと、318化物(ばけもの)包囲(はうゐ)攻撃(こうげき)をやられて(たま)つたものぢやないワイ』
319 (あたま)化物(ばけもの)320(おほ)きな(した)()して、
321化物『アハヽヽー、322イヒヽヽー』
323亀、324音『ヤア、325(また)やりよつた。326上下(じやうげ)挟撃(けふげき)327えらい(てき)術策(じゆつさく)(おちい)つたものだワイ』
328 (あたま)化物(ばけもの)
329化物(ばけもの)『オホヽヽー』
330(わら)つた途端(とたん)に、331(した)(さき)からつるつると空中(くうちう)滑走(くわつそう)をしながら()(にん)(まへ)着陸(ちやくりく)した(をとこ)がある。
332一同(いちどう)『ヤア(いは)333(いは)334岩彦(いはひこ)か、335貴様(きさま)一体(いつたい)どうして()たのだ。336化物(ばけもの)(のど)から()()よつて、337(まる)で、338(あめ)(なか)からお()ヤンと金太(きんた)サンが()んで()たやうな曲芸(きよくげい)だ。339(たれ)にソンナ手品(てじな)(をし)へて(もら)ひよつたのだい』
340岩彦(いはひこ)『オイ(みな)(やつ)341よい加減(かげん)()()まさぬかい。342(なに)をウンウンと(うな)つて()るのだ、343此処(ここ)はシヅの(もり)だぞ、344(しづか)にせないと化物(ばけもの)()ると()(こと)だよ』
345一同(いちどう)『ムニヤ ムニヤ、346アーアー(こは)かつた、347エライ(ゆめ)()たワイ』
348岩彦(いはひこ)『アハヽヽヽ』
349大正一一・三・一六 旧二・一八 加藤明子録)
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