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第13巻(子の巻)
モノログ
凡例
総説
第1篇 勝利光栄
01 言霊開
〔527〕
02 波斯の海
〔528〕
03 波の音
〔529〕
04 夢の幕
〔530〕
05 同志打
〔531〕
06 逆転
〔532〕
第2篇 洗礼旅行
07 布留野原
〔533〕
08 醜の窟
〔534〕
09 火の鼠
〔535〕
第3篇 探険奇聞
10 巌窟
〔536〕
11 怪しの女
〔537〕
12 陥穽
〔538〕
13 上天丸
〔539〕
第4篇 奇窟怪巌
14 蛙船
〔540〕
15 蓮花開
〔541〕
16 玉遊
〔542〕
17 臥竜姫
〔543〕
18 石門開
〔544〕
19 馳走の幕
〔545〕
20 宣替
〔546〕
21 本霊
〔547〕
第5篇 膝栗毛
22 高加索詣
〔548〕
23 和解
〔549〕
24 大活躍
〔550〕
信天翁(三)
余白歌
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第二一章
本霊
(
ほんれい
)
〔五四七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻
篇:
第4篇 奇窟怪巌
よみ(新仮名遣い):
きくつかいがん
章:
第21章 本霊
よみ(新仮名遣い):
ほんれい
通し章番号:
547
口述日:
1922(大正11)年03月21日(旧02月23日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年10月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
巨大な火弾は、以前の女神の姿になった。女神は五人の宣伝使の御魂が開けたことを宣言し、フサの都に進むようにと命じた。そして、岩彦は心は固いがまだ開けていないので、よくなごめるように、と諭した。
女神は、自分は木花姫の和魂であると名乗って消えた。
五人は感謝に天津祝詞を唱えていると、気絶していた岩彦が起き出した。岩彦は今の爆発で、五人が死んでしまったと思い、遺体を探し始めた。
しかし髪の毛一本見つからないので、てっきり大蛇が五人を飲んでしまったと早合点して、敵を取ろうといきんでいる。五人の宣伝使が岩彦に話しかけるが、岩彦は大蛇と会話していると思って、けんか腰で応対している。
このとき、闇の中に六個の光の玉が現れた。そして五柱の女神と、一柱の鬼になった。各々名札がついており、女神には五人の宣伝使の名が、鬼には岩彦の名がついていた。
自分自身の副守護神の姿を見て思い知らされ、ようやく鬼を追い払った岩彦は、五人と同じように正しい言葉を使うようになった。すると岩彦の本守護神が立派な神となって現れた。
ここに六人の宣伝使と六柱の本守護神は、宣伝歌を歌った。やがて各自の本守護神は五色の玉となって宣伝使らの頭上に留まった。そして次第に宣伝使の体内にしみこんでしまった。
一行は岩窟を出て、コシの峠を指して進んで行く。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-11-26 18:10:52
OBC :
rm1321
愛善世界社版:
244頁
八幡書店版:
第3輯 119頁
修補版:
校定版:
245頁
普及版:
107頁
初版:
ページ備考:
001
巨大
(
きよだい
)
なる
火弾
(
くわだん
)
爆発
(
ばくはつ
)
すると
見
(
み
)
る
中
(
うち
)
に、
002
忽然
(
こつぜん
)
として
以前
(
いぜん
)
の
女神
(
めがみ
)
の
姿
(
すがた
)
が
現
(
あら
)
はれた。
003
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
思
(
おも
)
はず
平地
(
へいち
)
に
蹲
(
しやが
)
んで
最敬礼
(
さいけいれい
)
を
表
(
へう
)
した。
004
女神
(
めがみ
)
は
声
(
こゑ
)
も
淑
(
しとや
)
かに、
005
女神
『
道
(
みち
)
の
勲
(
いさを
)
も
鷹彦
(
たかひこ
)
や、
006
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
白梅
(
しらうめ
)
の、
007
薫
(
かを
)
り
床
(
ゆか
)
しき
梅彦
(
うめひこ
)
や、
008
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
の
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち、
009
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
矗々
(
すくすく
)
と、
010
進
(
すす
)
む
駒彦
(
こまひこ
)
万代
(
よろづよ
)
の、
011
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
亀彦
(
かめひこ
)
や、
012
言霊
(
ことたま
)
清
(
きよ
)
き
音彦
(
おとひこ
)
よ、
013
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
今
(
いま
)
より
麻柱
(
あななひ
)
の、
014
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
宣
(
の
)
べ
伝
(
つた
)
ふ、
015
いつ
の
御魂
(
みたま
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
016
あゝ
勇
(
いさ
)
ましし
勇
(
いさ
)
ましし、
017
もはや
汝
(
なんぢ
)
が
身魂
(
みたま
)
の
曇
(
くも
)
り、
018
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
りたり
真如
(
しんによ
)
の
日月
(
じつげつ
)
、
019
心
(
こころ
)
の
海
(
うみ
)
に
隈
(
くま
)
なく
照
(
て
)
り
渡
(
わた
)
り、
020
胸
(
むね
)
の
仇浪
(
あだなみ
)
静
(
しづ
)
まりたれば、
021
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
片時
(
かたとき
)
も、
022
疾
(
と
)
く
速
(
すむ
)
やけく、
023
フサの
都
(
みやこ
)
に
出立
(
しゆつたつ
)
せよ、
024
それにしても
岩彦
(
いはひこ
)
が、
025
固
(
かた
)
き
心
(
こころ
)
は
嘉
(
よみ
)
すれど、
026
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
として、
027
今
(
いま
)
少
(
すこ
)
し
足
(
た
)
らはぬ
処
(
ところ
)
あれば、
028
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
五
(
いつ
)
の
御魂
(
みたま
)
は
岩彦
(
いはひこ
)
が、
029
心
(
こころ
)
を
なごめ
、
030
誠
(
まこと
)
に
強
(
つよ
)
き
益良雄
(
ますらを
)
として、
031
立
(
た
)
ち
働
(
はたら
)
かしめよ。
032
斯
(
か
)
く
申
(
まを
)
す
妾
(
わらは
)
は
天教山
(
てんけうざん
)
の
木花姫
(
このはなひめ
)
が
和魂
(
にぎみたま
)
なるぞ、
033
夢々
(
ゆめゆめ
)
疑
(
うたが
)
ふ
事
(
こと
)
なかれ』
034
と
宣
(
せん
)
し
終
(
をは
)
ると
共
(
とも
)
に、
035
女神
(
めがみ
)
の
姿
(
すがた
)
は
火煙
(
くわえん
)
と
消
(
き
)
えにけり。
036
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
に
咽
(
むせ
)
びつつ、
037
嗚呼
(
ああ
)
有難
(
ありがた
)
し
忝
(
かたじけ
)
なし、
038
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
せむと
一同
(
いちどう
)
宣
(
の
)
る
言霊
(
ことたま
)
も
円満
(
ゑんまん
)
清朗
(
せいらう
)
、
039
その
声
(
こゑ
)
はさしもに
広
(
ひろ
)
き
遠
(
とほ
)
き
巌窟
(
がんくつ
)
の
内
(
うち
)
を
隈
(
くま
)
なく
響
(
ひび
)
き
渡
(
わた
)
りける。
040
この
言霊
(
ことたま
)
の
声
(
こゑ
)
に
岩公
(
いはこう
)
はムクムク
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
041
岩彦
『アヽ
大変
(
たいへん
)
だ。
042
エライ
目
(
め
)
に
出会
(
でくわ
)
した。
043
俺
(
おれ
)
のやうな
肝玉
(
きもたま
)
の
太
(
ふと
)
い
宣伝使
(
せんでんし
)
でも
吃驚
(
びつくり
)
して
一
(
いち
)
時
(
じ
)
性念
(
しやうねん
)
を
失
(
うしな
)
つた
位
(
くらゐ
)
であるから、
044
鷹公
(
たかこう
)
、
045
亀公
(
かめこう
)
、
046
駒公
(
こまこう
)
、
047
音
(
おと
)
、
048
梅
(
うめ
)
の
連中
(
れんぢう
)
は
定
(
さだ
)
めて
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
したらう。
049
アヽ
胆
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
すは
俺
(
おれ
)
位
(
くらゐ
)
の
程度
(
ていど
)
の
者
(
もの
)
だ。
050
それ
以下
(
いか
)
の
程度
(
ていど
)
の
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつ
)
は、
051
大方
(
おほかた
)
木葉
(
こつぱ
)
微塵
(
みぢん
)
となつたかも
知
(
し
)
れやしない。
052
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
にしても
可愛
(
かあい
)
い
女房
(
にようばう
)
や
子
(
こ
)
が
国許
(
くにもと
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだから、
053
エヽ
道連
(
みちづれ
)
になつた
好誼
(
よしみ
)
に
骨
(
ほね
)
なと
拾
(
ひろ
)
つて
女房
(
にようばう
)
や
子供
(
こども
)
に
届
(
とど
)
けてやらねばなるまい。
054
これがせめてものこの
岩
(
いは
)
サンの
親切
(
しんせつ
)
だ。
055
アヽ
五
(
ご
)
人
(
にん
)
のもの
情
(
なさけ
)
ない
事
(
こと
)
になつて
呉
(
く
)
れたなア。
056
何
(
なん
)
だか
真闇
(
まつくら
)
がりで
目
(
め
)
も
碌々
(
ろくろく
)
見
(
み
)
えやしないわ。
057
エヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
058
鷹公
(
たかこう
)
の
骨
(
ほね
)
だか
音公
(
おとこう
)
の
肉
(
にく
)
だか
区別
(
くべつ
)
はつくまいが、
059
何
(
なん
)
でも
女房
(
にようばう
)
や
子
(
こ
)
の
気休
(
きやす
)
めの
為
(
ため
)
に、
060
これが
鷹公
(
たかこう
)
の
骨
(
ほね
)
だ、
061
これや
髪
(
かみ
)
だと
云
(
い
)
つて
慰
(
なぐさ
)
めてやるより
仕方
(
しかた
)
がないワイ。
062
暗
(
くら
)
いと
云
(
い
)
つても、
063
これくらゐ
暗
(
くら
)
い
事
(
こと
)
は
開闢
(
かいびやく
)
以来
(
いらい
)
だ』
064
と
云
(
い
)
ひながら
四
(
よ
)
つ
這
(
ばひ
)
になり、
065
岩彦
(
いはひこ
)
『オイ
鷹公
(
たかこう
)
の
骨
(
ほね
)
ヤーイ、
066
音公
(
おとこう
)
の
腕
(
かいな
)
ヤーイ、
067
俺
(
おれ
)
は
岩公
(
いはこう
)
ぢや、
068
死
(
し
)
んでも
魂魄
(
こんぱく
)
この
世
(
よ
)
に
留
(
とど
)
まつて
居
(
を
)
るだらう、
069
骨
(
ほね
)
の
所在地
(
ありか
)
ぐらゐは
俺
(
おれ
)
に
知
(
し
)
らせやい。
070
アヽコツクリ、
071
コツクリと
何処
(
どこ
)
かへ
散
(
ち
)
つて
了
(
しま
)
つたと
見
(
み
)
える。
072
あまり
無残
(
むざん
)
だ、
073
焼
(
や
)
けても
灰
(
はい
)
なと
残
(
のこ
)
るのだが、
074
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
一本
(
いつぽん
)
落
(
お
)
ちて
居
(
を
)
らぬとは
此奴
(
こいつ
)
はあんまり
残酷
(
ざんこく
)
だ。
075
大方
(
おほかた
)
巌窟
(
いはや
)
の
化物
(
ばけもの
)
が
来
(
き
)
よつて、
076
余
(
あま
)
り
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
くものだから、
077
蟒
(
うはばみ
)
の
奴
(
やつ
)
弱味
(
よわみ
)
につけ
込
(
こ
)
んで
一呑
(
ひとの
)
みに
呑
(
の
)
みよつたに
違
(
ちが
)
ひないワ。
078
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
て、
079
一行
(
いつかう
)
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
080
五
(
ご
)
人
(
にん
)
まで
大蛇
(
をろち
)
に
呑
(
の
)
まれて
俺
(
おれ
)
一人
(
ひとり
)
が
何
(
ど
)
うして
オメ
オメと
生
(
いき
)
て
還
(
かへ
)
られようか。
081
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
てこれから
胆玉
(
きもたま
)
の
太
(
ふと
)
いこの
岩
(
いは
)
サンが、
082
大蛇
(
をろち
)
を
見付
(
みつ
)
けたが
最後
(
さいご
)
、
083
足
(
あし
)
でもグツと
出
(
だ
)
して、
084
オイ
蟒
(
うはばみ
)
の
奴
(
やつ
)
、
085
尻
(
しり
)
から
俺
(
おれ
)
を
呑
(
の
)
めと
言挙
(
ことあ
)
げしてやらう。
086
さうすれば
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
、
087
あの
岩公
(
いはこう
)
は
手強奴
(
てごはいやつ
)
だ、
088
彼奴
(
あいつ
)
だけは
迚
(
とて
)
も
呑
(
の
)
む
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬと
因果腰
(
いんぐわごし
)
を
極
(
き
)
めて
居
(
を
)
つたのに、
089
先方
(
むかう
)
の
方
(
はう
)
から
呑
(
の
)
めと
云
(
い
)
ひよる、
090
五
(
ご
)
人
(
にん
)
呑
(
の
)
むも
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
呑
(
の
)
むも
一
(
いつ
)
しよだ。
091
ヤア
美味
(
うまい
)
々々
(
うまい
)
と
蛇
(
へび
)
が
蛙
(
かへる
)
を
呑
(
の
)
んだやうに、
092
呑
(
の
)
みにかかるだらう。
093
さうしたら
此方
(
こつち
)
の
勝利
(
しようり
)
だ。
094
神妙
(
しんめう
)
に
呑
(
の
)
まれてやつて、
095
這入
(
はいり
)
がけに、
096
頤
(
あご
)
の
片一方
(
かたいつぱう
)
に、
097
この
十握
(
とつか
)
の
劔
(
つるぎ
)
をグツと
引
(
ひ
)
つかけて
両手
(
りやうて
)
で
力
(
ちから
)
一
(
いつ
)
ぱい
柄
(
つか
)
を
握
(
にぎ
)
り、
098
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
がグツと
呑
(
の
)
めばグツと
切
(
き
)
れる。
099
グウグツと
呑
(
の
)
めばグウグツと
切
(
き
)
れる。
100
自業
(
じごう
)
自得
(
じとく
)
、
101
大蛇
(
をろち
)
は
竹
(
たけ
)
を
割
(
わ
)
つたやうに
二
(
ふた
)
つにポカンと
割
(
わ
)
れたが
最後
(
さいご
)
、
102
呑
(
の
)
まれてからまだ
間
(
ま
)
もない
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
103
虫
(
むし
)
の
息
(
いき
)
でウヨウヨとやつて
居
(
ゐ
)
るだらうから、
104
其処
(
そこ
)
へこの
岩
(
いは
)
サンが
恭
(
うやうや
)
しく
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
105
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
言霊
(
ことたま
)
の
水火
(
いき
)
をもつてウンとやつたが
最後
(
さいご
)
息
(
いき
)
吹
(
ふ
)
き
返
(
かへ
)
し、
106
アヽ
誰
(
たれ
)
かと
思
(
おも
)
へば
岩公
(
いはこう
)
サンか、
107
イヤ
岩
(
いは
)
サンか、
108
誠
(
まこと
)
にもつて
有難
(
ありがた
)
い、
109
貴方
(
あなた
)
のお
蔭
(
かげ
)
でこの
弱
(
よわ
)
い
吾々
(
われわれ
)
も
命
(
いのち
)
が
助
(
たす
)
かりましたと
半泣
(
はんな
)
きに
泣
(
な
)
きよつて、
110
手
(
て
)
の
舞
(
ま
)
ひ
足
(
あし
)
の
踏
(
ふ
)
む
処
(
ところ
)
を
知
(
し
)
らずと
云
(
い
)
ふ
歓喜
(
くわんき
)
の
幕
(
まく
)
が
下
(
お
)
りるのだ。
111
可愛
(
かあい
)
い
子
(
こ
)
には
旅
(
たび
)
をさせと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がある。
112
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
皮肉
(
ひにく
)
だな、
113
大蛇
(
をろち
)
の
喉坂峠
(
のどさかたうげ
)
を
旅行
(
りよかう
)
して
痛
(
いた
)
い
味
(
あぢ
)
を
知
(
し
)
り、
114
危険
(
きけん
)
な
関所
(
せきしよ
)
を
越
(
こ
)
えて
初
(
はじ
)
めて
勇壮
(
ゆうさう
)
活溌
(
くわつぱつ
)
なる
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
とならせる
経綸
(
しぐみ
)
だらう。
115
あまり
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
くものだから
屹度
(
きつと
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
試錬
(
しれん
)
に
遇
(
あ
)
うたのだらう、
116
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
を
)
れば
息
(
いき
)
が
止
(
と
)
まるか
知
(
し
)
れない。
117
ヤアヤア
巌窟
(
いはや
)
に
棲
(
す
)
む
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
、
118
五
(
ご
)
人
(
にん
)
喰
(
く
)
ふも
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
喰
(
く
)
ふも
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
だ。
119
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつ
)
は
麦飯
(
むぎめし
)
だ。
120
この
岩
(
いは
)
サンは
名
(
な
)
は
固
(
かた
)
いが
歯当
(
はあた
)
りのよい
味
(
あぢ
)
のよい
鮨米
(
すしまい
)
のやうな
肉着
(
にくつ
)
きだよ。
121
サア
早
(
はや
)
く
尻
(
しり
)
の
方
(
はう
)
から
呑
(
の
)
んだり
呑
(
の
)
んだり』
122
暗
(
くら
)
がりより『アハヽヽヽ、
123
ウフヽヽヽ』
124
岩彦
(
いはひこ
)
『ヤイ
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
、
125
嬉
(
うれ
)
しいか、
126
嬉
(
うれ
)
しさうな
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
をしよつて、
127
サア
早
(
はや
)
く
呑
(
の
)
まぬかい』
128
音彦
(
おとひこ
)
『モシモシ
岩
(
いは
)
サン、
129
お
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
きましたか、
130
それは
誠
(
まこと
)
に
結構
(
けつこう
)
でございます』
131
岩彦
(
いはひこ
)
『モシモシ
岩
(
いは
)
サン、
132
お
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
きましたか、
133
結構
(
けつこう
)
だつて、
134
ソンナ
辞令
(
じれい
)
は
後
(
あと
)
にして
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
入
(
い
)
らぬ。
135
結構
(
けつこう
)
だらう。
136
早
(
はや
)
く
呑
(
の
)
んだり
呑
(
の
)
んだり』
137
鷹彦
(
たかひこ
)
『
岩
(
いは
)
サン、
138
結構
(
けつこう
)
は
結構
(
けつこう
)
ですが、
139
貴方
(
あなた
)
はお
考
(
かんが
)
へ
違
(
ちが
)
ひでせう。
140
吾々
(
われわれ
)
はお
案
(
あん
)
じ
下
(
くだ
)
さいますな、
141
助
(
たす
)
かつて
居
(
を
)
りますよ』
142
岩彦
(
いはひこ
)
『
何
(
なん
)
だ、
143
尻
(
けつ
)
も
甲
(
かふ
)
もあつたものかい、
144
足
(
あし
)
から
喰
(
く
)
へ、
145
食料
(
しよくれう
)
に
欠乏
(
けつぼう
)
して
餓死
(
がし
)
に
迫
(
せま
)
つて
居
(
を
)
つた
処
(
ところ
)
、
146
半
(
はん
)
ダースも
人肉
(
じんにく
)
の
温
(
あたた
)
かいのが
来
(
き
)
たものだから、
147
結構
(
けつこう
)
でございますの、
148
吾々
(
われわれ
)
はお
蔭
(
かげ
)
で
助
(
たす
)
かりましたのと、
149
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだい。
150
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
を
)
ると
侶伴
(
つれ
)
の
奴
(
やつ
)
の
息
(
いき
)
が
切
(
き
)
れるワイ、
151
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
要
(
い
)
らぬ
早
(
はや
)
く
呑
(
の
)
まぬかい』
152
亀彦
(
かめひこ
)
『モシモシ
岩
(
いは
)
サン、
153
私
(
わたくし
)
は
亀
(
かめ
)
でございます、
154
何卒
(
どうぞ
)
ご
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さいませ。
155
種々
(
いろいろ
)
のお
心
(
こころ
)
づくし、
156
骨身
(
ほねみ
)
にこたへて
嬉
(
うれ
)
しうございます』
157
岩彦
(
いはひこ
)
『ヤア
貴様
(
きさま
)
は
亀
(
かめ
)
と
云
(
い
)
つたな、
158
狼
(
おほかみ
)
か、
159
骨身
(
ほねみ
)
にこたへるなンて
何
(
なん
)
だい、
160
グツと
一口
(
ひとくち
)
に
呑
(
の
)
まぬかい。
161
バリバリと
骨
(
ほね
)
も
身
(
み
)
も
一緒
(
いつしよ
)
にパクつかれては
此方
(
こちら
)
もちつと
都合
(
つがふ
)
が
悪
(
わる
)
いワイ』
162
この
時
(
とき
)
闇
(
くら
)
がりに、
163
六個
(
ろくこ
)
の
光玉
(
くわうぎよく
)
いづくともなく
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
164
たちまち
五柱
(
いつはしら
)
の
女神
(
めがみ
)
と、
165
一柱
(
ひとはしら
)
の
鬼
(
おに
)
のやうな
顔
(
かほ
)
した
男
(
をとこ
)
とが
現
(
あら
)
はれた。
166
岩公
(
いはこう
)
は
驚
(
おどろ
)
いてこの
姿
(
すがた
)
を
見守
(
みまも
)
りゐる。
167
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
女神
(
めがみ
)
には
一々
(
いちいち
)
名札
(
なふだ
)
がついて
居
(
ゐ
)
る。
168
見
(
み
)
れば
鷹彦
(
たかひこ
)
の
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
、
169
梅彦
(
うめひこ
)
、
170
音彦
(
おとひこ
)
、
171
亀彦
(
かめひこ
)
、
172
駒彦
(
こまひこ
)
の
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
の
名札
(
なふだ
)
をぶら
下
(
さ
)
げて
居
(
ゐ
)
る。
173
一方
(
いつぱう
)
の
鬼
(
おに
)
の
名
(
な
)
はと
見
(
み
)
れば、
174
こは
抑
(
そも
)
如何
(
いか
)
に、
175
一層
(
いつそう
)
広
(
ひろ
)
く
長
(
なが
)
き
名札
(
なふだ
)
にグシヤグシヤと
文字
(
もじ
)
が
現
(
あら
)
はれて
居
(
ゐ
)
る。
176
よくよく
見
(
み
)
れば、
177
『この
鬼
(
おに
)
は
岩彦
(
いはひこ
)
の
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
なり、
178
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
は
岩彦
(
いはひこ
)
の
驕慢
(
けうまん
)
不遜
(
ふそん
)
にして
慢心
(
まんしん
)
強
(
つよ
)
き
為
(
ため
)
に、
179
未
(
いま
)
だ
顕現
(
けんげん
)
する
事
(
こと
)
能
(
あた
)
はず。
180
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
改心
(
かいしん
)
の
上
(
うへ
)
、
181
かかる
醜
(
みにく
)
き
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
に
退却
(
たいきやく
)
を
命
(
めい
)
ずべし。
182
野立彦
(
のだちひこの
)
命
(
みこと
)
の
命
(
めい
)
に
依
(
よ
)
り、
183
木花姫
(
このはなひめ
)
これを
記
(
しる
)
す』
184
と
現
(
あら
)
はれて
居
(
ゐ
)
る。
185
岩彦
(
いはひこ
)
『ヤア
大変
(
たいへん
)
だ。
186
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
何
(
なん
)
だ。
187
俄
(
にはか
)
に
女
(
をんな
)
見
(
み
)
たやうな
優
(
やさ
)
しい
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ひよると
思
(
おも
)
つたら、
188
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
もアンナ
綺麗
(
きれい
)
な
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
が
現
(
あら
)
はれたからだな。
189
しかしながら
岩
(
いは
)
サンはどこまでも
岩
(
いは
)
サンだ。
190
アンナ
女々
(
めめ
)
しい
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
よりも、
191
仁王
(
にわう
)
様
(
さん
)
の
様
(
やう
)
な
鬼面
(
おにづら
)
をした
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
に
守護
(
しゆご
)
して
貰
(
もら
)
ふ
方
(
はう
)
が
悪魔
(
あくま
)
征伐
(
せいばつ
)
にはもつて
来
(
こ
)
いだ。
192
未
(
ま
)
だ
未
(
ま
)
だ
武装
(
ぶさう
)
撤回
(
てつくわい
)
は
出来
(
でき
)
ない。
193
ヤア
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
、
194
明日
(
あす
)
から
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
までお
前
(
まへ
)
が
俺
(
おれ
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
守護
(
しゆご
)
するのだよ、
195
一厘
(
いちりん
)
と
云
(
い
)
ふところになつてから
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
の
女神
(
めがみ
)
になればよいのだ。
196
何
(
なん
)
だ
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
奴
(
め
)
、
197
目的
(
もくてき
)
の
半途
(
はんと
)
にして
最早
(
もはや
)
一角
(
ひとかど
)
の
神業
(
しんげふ
)
奉仕
(
ほうし
)
をしたやうに、
198
泰然
(
たいぜん
)
と
澄
(
す
)
まし
切
(
き
)
つて
居
(
ゐ
)
よる。
199
これからが
肝腎
(
かんじん
)
要
(
かなめ
)
の
正念場
(
しやうねんば
)
だぞ。
200
エヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
201
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
確
(
しつか
)
り
頼
(
たの
)
む』
202
鬼
(
おに
)
『
俺
(
おれ
)
は、
203
お
前
(
まへ
)
の
買
(
か
)
ひ
被
(
かぶ
)
つて
居
(
ゐ
)
るやうな
鬼
(
おに
)
ぢやない。
204
鬼
(
おに
)
みそだよ。
205
一
(
ひと
)
つの
火
(
ひ
)
の
玉
(
たま
)
にも
雷
(
かみなり
)
にも
胆
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
す
柔
(
やさ
)
しい
鬼
(
おに
)
だ。
206
姿
(
すがた
)
はかう
強
(
つよ
)
さうに
怖
(
こは
)
さうに
見
(
み
)
えても、
207
肝腎
(
かんじん
)
の
魂
(
たましひ
)
は
味噌
(
みそ
)
のやうなものだよ。
208
アンアンアン、
209
オイオイオイ、
210
ウンウンウン、
211
エンエンエン、
212
インインイン』
213
岩彦
(
いはひこ
)
『
何
(
なん
)
だ、
214
不整頓
(
ふせいとん
)
な
言霊
(
ことたま
)
の
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
を
出
(
だ
)
しよつて、
215
俺
(
おれ
)
はソンナ
弱
(
よわ
)
い
守護神
(
しゆごじん
)
と
違
(
ちが
)
ふぞ。
216
貴様
(
きさま
)
大方
(
おほかた
)
偽神
(
にせがみ
)
だらう』
217
鬼
(
おに
)
『それでも、
218
お
前
(
まへ
)
の
模型
(
もけい
)
だから
仕方
(
しかた
)
がないわ。
219
空威張
(
からいば
)
りの
上手
(
じやうづ
)
な、
220
胆玉
(
きもだま
)
の
据
(
す
)
わらぬ、
221
見
(
み
)
かけ
倒
(
たふ
)
しの
ガラクタ
鬼
(
おに
)
だよ』
222
岩彦
(
いはひこ
)
『さう
云
(
い
)
へば、
223
何処
(
どこ
)
かの
端
(
はし
)
が
些
(
ちつ
)
と
似
(
に
)
とるやうな、
224
矢張
(
やつぱり
)
さうかいなア。
225
ヤア
本当
(
ほんたう
)
にこれから
強
(
つよ
)
くなる。
226
貴様
(
きさま
)
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
暇
(
ひま
)
を
遣
(
つか
)
はす
程
(
ほど
)
に、
227
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
岩
(
いは
)
サンの
肉体
(
にくたい
)
に
踏
(
ふ
)
み
迷
(
まよ
)
つて
戻
(
もど
)
つて
来
(
く
)
るな。
228
門火
(
かどび
)
を
焚
(
た
)
いて
送
(
おく
)
つてやるのが
本当
(
ほんたう
)
なれど、
229
生憎
(
あひにく
)
焚物
(
たきもの
)
もなし、
230
不本意
(
ふほんい
)
だが
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
帰
(
かへ
)
つて
仕舞
(
しま
)
へ』
231
鬼
(
おに
)
『ハイハイ、
232
何
(
なに
)
しにマゴマゴとして
居
(
を
)
りませう。
233
疾
(
と
)
うの
昔
(
むかし
)
から
帰
(
かへ
)
り
度
(
た
)
くて
帰
(
かへ
)
り
度
(
た
)
くて
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
けれども、
234
お
前
(
まへ
)
の
執着心
(
しふちやくしん
)
が
私
(
わし
)
を
今
(
いま
)
まで
鉄
(
かね
)
の
鎖
(
くさり
)
で
縛
(
しば
)
つて
何
(
ど
)
うしても
斯
(
か
)
うしても
解放
(
かいはう
)
してくれないのだ。
235
左様
(
さやう
)
ならこれでお
暇
(
ひま
)
を
致
(
いた
)
しませう、
236
アリヨウス』
237
岩彦
(
いはひこ
)
『アーア、
238
これでこの
岩公
(
いはこう
)
も
何
(
なん
)
だか
其辺
(
そこら
)
が
明
(
あ
)
かるくなつたやうな
心持
(
こころもち
)
が
致
(
いた
)
しました。
239
モシモシ
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
240
ご
苦労
(
くらう
)
でございました。
241
サアサアこれから
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
のお
伴
(
とも
)
して、
242
タカオ
山脈
(
さんみやく
)
のコシの
峠
(
たうげ
)
の
麓
(
ふもと
)
を
指
(
さ
)
して
参
(
まゐ
)
りませう。
243
イヤもう
私
(
わたくし
)
の
鬼
(
おに
)
を
逐出
(
おひだ
)
す
為
(
ため
)
にいかいご
苦労
(
くらう
)
をかけました』
244
一同
(
いちどう
)
『アハヽヽヽ
岩
(
いは
)
サンお
目出度
(
めでた
)
う、
245
あれをご
覧
(
らん
)
なさいませ、
246
鬼
(
おに
)
の
帰
(
かへ
)
りた
後
(
あと
)
に、
247
あのやうな
立派
(
りつぱ
)
な
守護神
(
しゆごじん
)
が
顕現
(
けんげん
)
されました』
248
岩彦
(
いはひこ
)
『ヤア、
249
本当
(
ほんたう
)
にこれはこれは、
250
マア
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な、
251
お
岩彦
(
いはひこ
)
の
御
(
おん
)
御
(
ご
)
守護神
(
しゆごじん
)
様
(
さま
)
だこと、
252
マアマア、
253
よくもよくも
御
(
おん
)
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
下
(
くだ
)
さいました。
254
お
有難
(
ありがた
)
うございます』
255
守護神
(
しゆごじん
)
『
岩
(
いは
)
サン
分
(
わか
)
りましたか、
256
ようマア
鬼
(
おに
)
を
去
(
いな
)
して
下
(
くだ
)
さいました。
257
私
(
わたくし
)
も
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
が
開
(
ひら
)
けたやうな
心持
(
こころもち
)
が
致
(
いた
)
します。
258
サアサアこれから
貴方
(
あなた
)
と
私
(
わたくし
)
と
霊肉
(
れいにく
)
一致
(
いつち
)
して
膠
(
にかは
)
の
如
(
ごと
)
く
漆
(
うるし
)
の
如
(
ごと
)
く
密着
(
みつちやく
)
不離
(
ふり
)
の
身魂
(
みたま
)
となつて、
259
岩戸
(
いはと
)
開
(
びら
)
きの
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
さして
頂
(
いただ
)
きませう』
260
岩彦
(
いはひこ
)
『これはこれは
畏
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
つたるご
挨拶
(
あいさつ
)
、
261
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
様
(
さま
)
のご
迷惑
(
めいわく
)
になる
事
(
こと
)
ばかり、
262
我
(
が
)
を
張
(
は
)
り
詰
(
つめ
)
て
致
(
いた
)
して
来
(
き
)
ました。
263
どうぞこれからは
比翼
(
ひよく
)
連理
(
れんり
)
偕老
(
かいらう
)
同穴
(
どうけつ
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
のやうになつて、
264
二世
(
にせ
)
も
三世
(
さんせ
)
も、
265
後
(
さき
)
の
世
(
よ
)
かけてご
提携
(
ていけい
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
266
ここに
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
と、
267
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
巌窟
(
がんくつ
)
の
広場
(
ひろば
)
を
指
(
さ
)
し、
268
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
ち
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
高唱
(
かうしやう
)
し、
269
春
(
はる
)
の
野
(
の
)
の
花
(
はな
)
に
蝶
(
てふ
)
の
狂
(
くる
)
ふが
如
(
ごと
)
く、
270
大地
(
だいち
)
を
踏
(
ふ
)
み
轟
(
とどろ
)
かし、
271
一同
『
開
(
ひら
)
いた
開
(
ひら
)
いた
菜
(
な
)
の
花
(
はな
)
が
開
(
ひら
)
いた
272
蓮
(
はす
)
の
花
(
はな
)
が
開
(
ひら
)
いた
273
心
(
こころ
)
の
花
(
はな
)
も
開
(
ひら
)
いた
274
身魂
(
みたま
)
のもつれも
開
(
ひら
)
いた
275
開
(
ひら
)
いた
開
(
ひら
)
いた
276
常夜
(
とこよ
)
の
闇
(
やみ
)
となり
果
(
は
)
てし
277
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
もサラリと
開
(
ひら
)
いた』
278
各自
(
かくじ
)
の
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
はやがて、
279
得
(
え
)
も
云
(
い
)
はれぬ
五色
(
ごしき
)
の
玉
(
たま
)
となつて
各自
(
かくじ
)
の
頭上
(
づじやう
)
に
留
(
と
)
まつた。
280
玉
(
たま
)
は
頭脳
(
づなう
)
に
吸収
(
きふしう
)
さるる
如
(
ごと
)
く、
281
追々
(
おひおひ
)
その
容積
(
ようせき
)
を
減
(
げん
)
じ、
282
遂
(
つひ
)
には
宣伝使
(
せんでんし
)
の
体内
(
たいない
)
に
残
(
のこ
)
らず
浸
(
し
)
み
込
(
こ
)
んで
仕舞
(
しま
)
つた。
283
これより
一行
(
いつかう
)
はこの
巌窟
(
がんくつ
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
いで
)
て、
284
原野
(
げんや
)
を
渡
(
わた
)
り、
285
コシの
峠
(
たうげ
)
を
指
(
さ
)
して
勇
(
いさ
)
ましく
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
286
(
大正一一・三・二一
旧二・二三
加藤明子
録)
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