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第13巻(子の巻)
モノログ
凡例
総説
第1篇 勝利光栄
01 言霊開
〔527〕
02 波斯の海
〔528〕
03 波の音
〔529〕
04 夢の幕
〔530〕
05 同志打
〔531〕
06 逆転
〔532〕
第2篇 洗礼旅行
07 布留野原
〔533〕
08 醜の窟
〔534〕
09 火の鼠
〔535〕
第3篇 探険奇聞
10 巌窟
〔536〕
11 怪しの女
〔537〕
12 陥穽
〔538〕
13 上天丸
〔539〕
第4篇 奇窟怪巌
14 蛙船
〔540〕
15 蓮花開
〔541〕
16 玉遊
〔542〕
17 臥竜姫
〔543〕
18 石門開
〔544〕
19 馳走の幕
〔545〕
20 宣替
〔546〕
21 本霊
〔547〕
第5篇 膝栗毛
22 高加索詣
〔548〕
23 和解
〔549〕
24 大活躍
〔550〕
信天翁(三)
余白歌
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第一八章
石門開
(
いはとびらき
)
〔五四四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻
篇:
第4篇 奇窟怪巌
よみ(新仮名遣い):
きくつかいがん
章:
第18章 石門開
よみ(新仮名遣い):
いわとびらき
通し章番号:
544
口述日:
1922(大正11)年03月20日(旧02月22日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年10月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一行は、立派な石壁で築かれた館の前にやってきた。音彦は大音声に門を開けと呼ばわるが、何も起こらない。ただ門内よりかすかに琵琶の音が聞こえてくるのみである。
弥次彦と音彦が問答をしていると、門内から大声で一同を誰何する者がある。声は、門を開こう開こうと焦って教えを忘れていた宣伝使たちに注意を促した。
音彦は亀彦、駒彦に促して、慌てて神言を奏上する。すると門は易々と開いた。そこに居た巨大な男は、うわばみの野呂公だった。野呂公は臥竜姫に取り次ぐといって奥に入るが、なかなか戻ってこない。
いぶかる亀彦に、弥次彦は、門は開いたが、まだお前たちの心が開いていないのだ、と説教をする。亀彦が口答えすると、弥次彦と与太彦は一同に気をつけると、赤白の玉になって飛んでいってしまった。
一同はしびれを切らし、館の中にどかどかと進み入った。すると突然、上空が開け、日の出別の乗った天の鳥船が航行しているのが見えた。一同はいつの間にか、野天の野原に出ていた。
そこへ、出雲姫と名乗る三五教の女宣伝使が現れ、日の出別一行が、峠で待っていると言って道案内を始めた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-11-26 18:06:50
OBC :
rm1318
愛善世界社版:
202頁
八幡書店版:
第3輯 104頁
修補版:
校定版:
203頁
普及版:
88頁
初版:
ページ備考:
八幡版「石戸開」、愛世版・校定版「石門開」
001
巌窟内
(
がんくつない
)
に、
002
有
(
あ
)
り
得
(
う
)
べからざるやうな
立派
(
りつぱ
)
な
石壁
(
いしかべ
)
をもつて
囲
(
かこ
)
まれたる
邸宅
(
ていたく
)
の
前
(
まへ
)
に、
003
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
到着
(
たうちやく
)
した。
004
音彦
(
おとひこ
)
『ヨー、
005
立派
(
りつぱ
)
な
構
(
かま
)
へだ、
006
而
(
しか
)
も
堅牢
(
けんらう
)
な
石
(
いし
)
をもつて
城壁
(
じやうへき
)
を
繞
(
めぐ
)
らし、
007
門扉
(
もんぴ
)
迄
(
まで
)
が
石造
(
いしづくり
)
と
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るワイ。
008
これは
容易
(
ようい
)
に
侵入
(
しんにふ
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
なからう、
009
琵琶
(
びは
)
の
音
(
ね
)
の
主
(
ぬし
)
は
てつきり
此処
(
ここ
)
だ。
010
恋女
(
こひをんな
)
の
隠棲
(
いんせい
)
せる
処
(
ところ
)
と
思
(
おも
)
へば
心臓
(
しんざう
)
の
鼓動
(
こどう
)
が
激
(
はげ
)
しくなつたやうだ』
011
亀彦
(
かめひこ
)
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ほざ
)
くのだ。
012
未通
(
おぼこ
)
息子
(
むすこ
)
か
未通
(
おぼこ
)
娘
(
むすめ
)
のやうに、
013
好
(
い
)
い
年
(
とし
)
をして
心臓
(
しんざう
)
の
鼓動
(
こどう
)
が
激
(
はげ
)
しくなつたもあつたものかい、
014
摺枯
(
すれつから
)
しの
阿婆摺
(
あばずれ
)
男
(
をとこ
)
めが』
015
音彦
(
おとひこ
)
『オイオイ、
016
亀
(
かめ
)
サン、
017
ちつと
場所柄
(
ばしよがら
)
を
考
(
かんが
)
へて
呉
(
く
)
れぬと
困
(
こま
)
るぢやないか、
018
想思
(
さうし
)
の
女
(
をんな
)
の
館
(
やかた
)
の
前
(
まへ
)
に
来
(
き
)
てさう
色男
(
いろをとこ
)
をボロクソに
云
(
い
)
ふものぢやないよ』
019
駒彦
(
こまひこ
)
『アハヽヽ、
020
困
(
こま
)
つたやつだ。
021
又
(
また
)
持病
(
ぢびやう
)
が
再発
(
さいはつ
)
したと
見
(
み
)
えるワイ、
022
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
くやうに
拳骨
(
げんこつ
)
の
頓服剤
(
とんぷくざい
)
でも
盛
(
も
)
つてやらうか』
023
音彦
(
おとひこ
)
『ヤアヤア、
024
石門
(
いしもん
)
をもつて
四辺
(
しへん
)
を
築固
(
つきかた
)
めたるこれの
棲
(
す
)
み
家
(
か
)
、
025
てつき
り
曲津
(
まがつ
)
の
巣窟
(
そうくつ
)
と
覚
(
おぼ
)
えたり。
026
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
027
敬神
(
けいしん
)
愛民
(
あいみん
)
の
大道
(
だいだう
)
を
天下
(
てんか
)
に
宣布
(
せんぷ
)
し、
028
善
(
ぜん
)
を
勧
(
すす
)
め
悪
(
あく
)
を
懲
(
こら
)
す
神司
(
かむつかさ
)
なるぞ。
029
尋
(
たづ
)
ね
問
(
と
)
ふべき
仔細
(
しさい
)
あり、
030
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
門
(
もん
)
開
(
ひら
)
けよ』
031
と
大音声
(
だいおんぜう
)
に
呼
(
よば
)
はつた。
032
門内
(
もんない
)
には
何
(
なん
)
の
応答
(
いらへ
)
もなく
森閑
(
しんかん
)
と
静
(
しづ
)
まり
返
(
かへ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
033
只
(
ただ
)
幽
(
かすか
)
に
琵琶
(
びは
)
の
音
(
ね
)
の
漏
(
も
)
れ
来
(
きた
)
るのみである。
034
弥次彦
(
やじひこ
)
『モシモシ、
035
宣伝使
(
せんでんし
)
さま、
036
この
館
(
やかた
)
の
人間
(
にんげん
)
は、
037
何
(
ど
)
れも
之
(
これ
)
も
皆
(
みな
)
聾神
(
つんぼがみ
)
さまばかりですから
呼
(
よ
)
んだつてあきませぬよ。
038
そこ
は
此
(
この
)
弥次
(
やじ
)
サンでなくては、
039
この
神秘
(
しんぴ
)
の
門扉
(
もんぴ
)
を
開
(
ひら
)
く
事
(
こと
)
は
不可能
(
ふかのう
)
だ』
040
音彦
(
おとひこ
)
『
如何
(
どう
)
して
開
(
ひら
)
くのだ、
041
云
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れないか』
042
弥次彦
(
やじひこ
)
『
最前
(
さいぜん
)
も
云
(
い
)
つた
通
(
とほ
)
り、
043
要領
(
えうりやう
)
を
得
(
え
)
なくては
要領
(
えうりやう
)
を
得
(
え
)
させないのですから』
044
音彦
(
おとひこ
)
『
何
(
なん
)
だか
不得
(
ふとく
)
要領
(
えうりやう
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
だ。
045
金
(
かね
)
でも
呉
(
く
)
れと
云
(
い
)
ふのか』
046
弥次彦
(
やじひこ
)
『マアソンナものかい、
047
お
前
(
まへ
)
さまは
狡
(
ずる
)
い
人
(
ひと
)
だから。
048
要領
(
えうりやう
)
を
得度
(
えた
)
いと
云
(
い
)
へば
大抵
(
たいてい
)
極
(
きま
)
つたものだ。
049
聾
(
つんぼ
)
の
真似
(
まね
)
をして
居
(
ゐ
)
るから、
050
それがホントの
金聾
(
かなつんぼ
)
と
云
(
い
)
ふのだ』
051
音彦
(
おとひこ
)
『あまり
馬鹿
(
ばか
)
らしいから
止
(
や
)
めとかうかい、
052
如何
(
どう
)
なつと
工夫
(
くふう
)
をすれば
開
(
あ
)
くであらう。
053
聾
(
つんぼ
)
の
神
(
かみ
)
と
云
(
い
)
よつたからには、
054
大方
(
おほかた
)
竜神
(
りうじん
)
だらう、
055
聾
(
つんぼ
)
と
云
(
い
)
ふ
字
(
じ
)
は
龍
(
りう
)
の
耳
(
みみ
)
と
書
(
か
)
くから、
056
これや
てつきり
長
(
なが
)
さまに
相違
(
さうゐ
)
はない、
057
ヨシヨシ、
058
かう
分
(
わか
)
つた
以上
(
いじやう
)
は
弥次
(
やじ
)
サンのお
世話
(
せわ
)
にはなりますまい』
059
この
時
(
とき
)
門内
(
もんない
)
より
大声
(
おほごゑ
)
に、
060
(野呂公)
『
吾
(
わが
)
門前
(
もんぜん
)
に
来
(
きた
)
つてブツブツ
囁
(
ささや
)
く
奴
(
やつ
)
は
何者
(
なにもの
)
だ』
061
音彦
(
おとひこ
)
『ヤアその
方
(
はう
)
は、
062
聾神
(
つんぼがみ
)
の
竜神
(
りうじん
)
か、
063
耳
(
みみ
)
が
聞
(
きこ
)
えねば
目
(
め
)
で
聞
(
き
)
け、
064
某
(
それがし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
音彦
(
おとひこ
)
、
065
亀彦
(
かめひこ
)
、
066
駒彦
(
こまひこ
)
の
一行
(
いつかう
)
だ。
067
直
(
ただち
)
に
門戸
(
もんこ
)
を
開
(
ひら
)
いて
吾々
(
われわれ
)
を
歓迎
(
くわんげい
)
致
(
いた
)
せ』
068
門内
(
もんない
)
より、
069
(野呂公)
『アハヽヽヽ、
070
ウラル
教
(
けう
)
のヘボ
宣伝使
(
せんでんし
)
、
071
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
に
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
の
間
(
あひだ
)
宣伝
(
せんでん
)
を
試
(
こころ
)
み、
072
櫛風
(
しつぷう
)
沐雨
(
もくう
)
の
苦心
(
くしん
)
惨憺
(
さんたん
)
的
(
てき
)
活動
(
くわつどう
)
も
残
(
のこ
)
らず
水泡
(
すゐはう
)
に
帰
(
き
)
し、
073
アーメニヤに
向
(
むか
)
つて
心細
(
こころぼそ
)
くも
帰
(
かへ
)
らむとする
途中
(
とちう
)
颶風
(
ぐふう
)
に
遇
(
あ
)
ひ、
074
又
(
また
)
もや
森林
(
しんりん
)
の
中
(
なか
)
に
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かし、
075
肝玉
(
きもたま
)
を
押潰
(
おしつぶ
)
され、
076
しよう
事
(
こと
)
なしに、
077
三五教
(
あななひけう
)
に
帰順
(
きじゆん
)
した、
078
垢
(
あか
)
の
抜
(
ぬ
)
けぬ
宣伝使
(
せんでんし
)
の
音
(
おと
)
、
079
亀
(
かめ
)
、
080
駒
(
こま
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
か。
081
よくも、
082
ノメノメと
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たなア、
083
盲目
(
めくら
)
蛇
(
へび
)
に
怖
(
おぢ
)
ずとは
汝
(
なんぢ
)
の
事
(
こと
)
だ。
084
アハヽヽヽ』
085
音彦
(
おとひこ
)
『エイ、
086
矢釜敷
(
やかまし
)
いワイ。
087
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
かぬか、
088
此
(
この
)
方
(
はう
)
にも
考
(
かんが
)
へがあるぞ』
089
門内
(
もんない
)
より、
090
(野呂公)
『アハヽヽヽ、
091
分
(
わか
)
らぬ
奴
(
やつ
)
だ。
092
神秘
(
しんぴ
)
の
門
(
もん
)
は
汝
(
なんぢ
)
自
(
みづか
)
ら
汝
(
なんぢ
)
の
力
(
ちから
)
をもつて
開
(
ひら
)
くべきものだ。
093
少
(
すこ
)
しの
労
(
らう
)
を
惜
(
をし
)
み、
094
他人
(
たにん
)
に
開門
(
かいもん
)
させむとは
狡猾
(
かうくわつ
)
至極
(
しごく
)
の
汝
(
なんぢ
)
の
挙動
(
ふるまひ
)
、
095
神秘
(
しんぴ
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
持
(
も
)
ち
忘
(
わす
)
れたか』
096
音彦
(
おとひこ
)
『ヤア、
097
此奴
(
こいつ
)
中々
(
なかなか
)
洒落
(
しやれ
)
た
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふワイ、
098
オヽさうだ。
099
これ
位
(
くらゐ
)
の
石門
(
せきもん
)
が
開
(
ひら
)
けないやうな
事
(
こと
)
で、
100
どうして
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
開
(
びら
)
きの
神業
(
しんげふ
)
が
勤
(
つと
)
まらうか、
101
さうだ、
102
さうだ。
103
余
(
あま
)
り
開門
(
かいもん
)
ばかりに
精神
(
せいしん
)
を
傾注
(
けいちゆう
)
して
肝腎
(
かんじん
)
の
神言
(
かみごと
)
を
忘
(
わす
)
れて
居
(
ゐ
)
た。
104
ヤア
尤
(
もつと
)
も
千万
(
せんばん
)
なお
言葉
(
ことば
)
だ。
105
サア
亀公
(
かめこう
)
、
106
駒公
(
こまこう
)
、
107
神言
(
かみごと
)
だ』
108
と
云
(
い
)
ひながら
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
する。
109
祝詞
(
のりと
)
が
終
(
をは
)
ると
共
(
とも
)
に、
110
さしも
堅牢
(
けんらう
)
なる
石門
(
せきもん
)
は
音
(
おと
)
もなく
易々
(
やすやす
)
と
左右
(
さいう
)
に
開
(
ひら
)
いた。
111
音彦
(
おとひこ
)
『アヽ
祝詞
(
のりと
)
の
通
(
とほ
)
りだ。
112
如此
(
かく
)
宣
(
の
)
らば、
113
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
は
天
(
あま
)
の
磐戸
(
いはと
)
を
推披
(
おしひら
)
きて、
114
天
(
あめ
)
の
八重雲
(
やへくも
)
を
伊頭
(
いづ
)
の
千別
(
ちわき
)
に
千別
(
ちわき
)
て
所聞召
(
きこしめ
)
さむ、
115
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
は
高山
(
たかやま
)
の
末
(
すゑ
)
短山
(
ひきやま
)
の
末
(
すゑ
)
に
上
(
のぼ
)
り
坐
(
まし
)
て、
116
高山
(
たかやま
)
の
伊保理
(
いほり
)
短山
(
ひきやま
)
の
伊保理
(
いほり
)
を
掻分
(
かきわけ
)
て
所聞召
(
きこしめ
)
さむと
云
(
い
)
ふ
神言
(
かみごと
)
の
実現
(
じつげん
)
だ。
117
サアこれで
一切
(
いつさい
)
の
秘訣
(
ひけつ
)
を
悟
(
さと
)
つた。
118
一
(
いち
)
にも
祝詞
(
のりと
)
、
119
二
(
に
)
にも
祝詞
(
のりと
)
だ。
120
なア
亀
(
かめ
)
サン、
121
駒
(
こま
)
サン』
122
亀
(
かめ
)
、
123
駒
(
こま
)
無言
(
むごん
)
の
儘
(
まま
)
俯向
(
うつむ
)
く。
124
音彦
(
おとひこ
)
は
門内
(
もんない
)
に
佇
(
たたず
)
む
大男
(
おほをとこ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
125
音彦
(
おとひこ
)
『ヤアお
前
(
まへ
)
は
夢
(
ゆめ
)
にみた
蠎
(
うはばみ
)
の
野呂公
(
のろこう
)
ぢやないか、
126
どうして
此処
(
ここ
)
に
居
(
ゐ
)
たのだ』
127
野呂公
(
のろこう
)
『
夢
(
ゆめ
)
と
云
(
い
)
へば
夢
(
ゆめ
)
、
128
現
(
うつつ
)
と
云
(
い
)
へば
現
(
うつつ
)
、
129
どうせ
今
(
いま
)
の
人間
(
にんげん
)
は
誰
(
たれ
)
も
彼
(
かれ
)
も
夢
(
ゆめ
)
の
浮世
(
うきよ
)
に
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
るのだ。
130
確
(
しつか
)
りした
奴
(
やつ
)
は
目薬
(
めぐすり
)
にする
程
(
ほど
)
もあるものぢやない。
131
それでも
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だと
思
(
おも
)
へば
仏壇
(
ぶつだん
)
の
底
(
そこ
)
ぬけぢやないが、
132
悲
(
かな
)
しうて
目
(
め
)
から
阿弥陀
(
あみだ
)
が
落
(
お
)
ちるワイ、
133
アハヽヽヽ』
134
音彦
(
おとひこ
)
『
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
135
臥竜姫
(
ぐわりようひめ
)
に
先刻
(
せんこく
)
お
目
(
め
)
にかかつた
色男
(
いろをとこ
)
の
音彦
(
おとひこ
)
サンが
御
(
ご
)
来臨
(
らいりん
)
ぢやと、
136
報告
(
はうこく
)
して
呉
(
く
)
れ』
137
野呂公
(
のろこう
)
『エヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
138
今
(
いま
)
直
(
すぐ
)
に
申上
(
まをしあげ
)
て
来
(
く
)
るから、
139
御
(
ご
)
返事
(
へんじ
)
のある
迄
(
まで
)
は
此処
(
ここ
)
に
神妙
(
しんめう
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
140
一寸
(
ちよつと
)
でも
許
(
ゆる
)
しの
無
(
な
)
いに
此方
(
こつち
)
に
這入
(
はい
)
つてはいかないぞ』
141
と
云
(
い
)
ひながら
野呂公
(
のろこう
)
は
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
142
亀彦
(
かめひこ
)
『
野呂公
(
のろこう
)
の
奴
(
やつ
)
いつ
迄
(
まで
)
かかつて
居
(
ゐ
)
るのだらう。
143
何
(
なに
)
ほど
奥
(
おく
)
が
深
(
ふか
)
いと
云
(
い
)
つても
知
(
し
)
れたものだが、
144
随分
(
ずゐぶん
)
じらし
よるぢやないか。
145
ヤア
弥次彦
(
やじひこ
)
、
146
与太彦
(
よたひこ
)
大
(
おほい
)
に
憚
(
はばか
)
りさまだつた。
147
お
蔭
(
かげ
)
で
門
(
もん
)
はお
手
(
て
)
のもので
開
(
ひら
)
きました』
148
弥次彦
(
やじひこ
)
『
門
(
もん
)
は
開
(
ひら
)
いても、
149
開
(
ひら
)
かぬのはお
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
だ。
150
可憐
(
かわい
)
さうなものだよ』
151
亀彦
(
かめひこ
)
『
無形
(
むけい
)
的
(
てき
)
精神
(
せいしん
)
の
門戸
(
もんこ
)
が
開
(
ひら
)
けたか、
152
開
(
ひら
)
けぬか、
153
ソンナ
事
(
こと
)
がどうして
観測
(
くわんそく
)
出来
(
でき
)
るか、
154
精神
(
せいしん
)
上
(
じやう
)
の
事
(
こと
)
が、
155
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
的
(
てき
)
人物
(
じんぶつ
)
に
分
(
わか
)
つて
耐
(
たま
)
らうかい。
156
二言目
(
ふたことめ
)
には
要領
(
えうりやう
)
だとか、
157
何
(
なん
)
とか
云
(
い
)
つて
手
(
て
)
を
出
(
だ
)
し、
158
物質欲
(
ぶつしつよく
)
に
憂身
(
うきみ
)
を
窶
(
やつ
)
す
代物
(
しろもの
)
に
吾々
(
われわれ
)
の
思想
(
しさう
)
上
(
じやう
)
の
明暗
(
めいあん
)
が
分
(
わか
)
らう
筈
(
はず
)
がない。
159
余計
(
よけい
)
な
無駄口
(
むだぐち
)
を
叩
(
たた
)
くな』
160
弥次彦
(
やじひこ
)
『アハヽヽヽ、
161
さつぱり
分
(
わか
)
らぬ
宣伝使
(
せんでんし
)
だ。
162
弥次彦
(
やじひこ
)
、
163
与太彦
(
よたひこ
)
の
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
さまは
如何
(
いか
)
なるお
方
(
かた
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
ゐ
)
るか。
164
後
(
あと
)
で
吃驚
(
びつくり
)
して
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
くなよ』
165
と
云
(
い
)
ひながら、
166
忽
(
たちま
)
ち
赤白
(
あかしろ
)
の
二
(
ふた
)
つの
玉
(
たま
)
となつてブーンと
唸
(
うな
)
りをたてて
何処
(
どこ
)
ともなくかけ
去
(
さ
)
つた。
167
音彦
(
おとひこ
)
『ヤア
何
(
なん
)
だ。
168
彼奴
(
あいつ
)
は
唯
(
ただ
)
の
代物
(
しろもの
)
では
無
(
な
)
かつたやうだ。
169
それにしても
野呂公
(
のろこう
)
の
奴
(
やつ
)
、
170
何時迄
(
いつまで
)
のろ
のろと
埒
(
らち
)
の
明
(
あ
)
かぬ
事
(
こと
)
だらう、
171
アーア
何事
(
なにごと
)
も
自分
(
じぶん
)
がやらねば
人頼
(
ひとだよ
)
りにしては
埒
(
らち
)
が
明
(
あ
)
かぬものだ。
172
オイ
亀公
(
かめこう
)
、
173
駒公
(
こまこう
)
、
174
何
(
なに
)
も
躊躇
(
ちうちよ
)
逡巡
(
しゆんじゆん
)
するに
及
(
およ
)
ばない。
175
此方
(
こちら
)
から
出
(
で
)
かけて
行
(
い
)
かうぢやないか。
176
如何
(
いか
)
なる
秘密
(
ひみつ
)
が
包蔵
(
はうざう
)
されてあるか
知
(
し
)
れないから、
177
十分
(
じふぶん
)
気
(
き
)
をつけて
進
(
すす
)
む
事
(
こと
)
にしよう。
178
この
臥竜姫
(
ぐわりようひめ
)
の
正体
(
しやうたい
)
を
見届
(
みとど
)
けた
者
(
もの
)
が、
179
金鵄
(
きんし
)
勲章
(
くんしやう
)
功一級
(
こういつきふ
)
、
180
勲一等
(
くんいつとう
)
だ。
181
サアサア
構
(
かま
)
ふ
事
(
こと
)
はない、
182
前進
(
ぜんしん
)
々々
(
ぜんしん
)
、
183
突喊
(
とつかん
)
々々
(
とつかん
)
』
184
と、
185
足
(
あし
)
を
揃
(
そろ
)
へて
玄関
(
げんくわん
)
目蒐
(
めが
)
けて
掛登
(
かけのぼ
)
つた。
186
目
(
め
)
も
届
(
とど
)
かぬばかりの
長
(
なが
)
い
廊下
(
らうか
)
を
九十九
(
つづら
)
折
(
をれ
)
に
曲
(
まが
)
りながら、
187
足音
(
あしおと
)
荒
(
あら
)
くドンドンと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
188
音彦
(
おとひこ
)
『ヤア
何
(
なん
)
だ、
189
誰
(
たれ
)
も
居
(
ゐ
)
ないぢやないか、
190
ピタツと
岩
(
いは
)
に
行
(
ゆ
)
き
詰
(
つま
)
つて
了
(
しま
)
つた。
191
マアマア
此処
(
ここ
)
に
寛
(
ゆつ
)
くり
気
(
き
)
を
落
(
おち
)
つけて
第二
(
だいに
)
の
策戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
に
移
(
うつ
)
らうぢやないか』
192
音
(
おと
)
(
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
いで)
193
音彦
『ヤア
巌窟
(
がんくつ
)
に
似合
(
にあは
)
ぬ
非常
(
ひじやう
)
に
高
(
たか
)
い
天井
(
てんじやう
)
だ。
194
ヤアヤア
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
天
(
あま
)
の
鳥船
(
とりふね
)
に
乗
(
の
)
つて
推進機
(
すゐしんき
)
の
音
(
おと
)
高
(
たか
)
く、
195
航空
(
かうくう
)
して
居
(
ゐ
)
るぢやないか』
196
この
時
(
とき
)
前方
(
ぜんぱう
)
より
柔
(
やさ
)
しき
女
(
をんな
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
聞
(
きこ
)
え
来
(
き
)
たる。
197
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤア
駒公
(
こまこう
)
、
198
これや
大変
(
たいへん
)
だ、
199
野天
(
のてん
)
ぢやないか』
200
駒彦
(
こまひこ
)
『ホンニホンニ、
201
路傍
(
ろばう
)
の
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
だ。
202
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
事
(
こと
)
だなア』
203
女
(
をんな
)
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
204
チヨクチヨクと
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
前
(
まへ
)
に
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
り、
205
女
(
をんな
)
『ヤア
貴方
(
あなた
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
いますか、
206
只今
(
ただいま
)
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
が
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
男女
(
なんによ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
と
共
(
とも
)
に、
207
コシの
峠
(
たうげ
)
の
麓
(
ふもと
)
に
馬
(
うま
)
の
用意
(
ようい
)
をしてお
待
(
ま
)
ち
受
(
う
)
けです』
208
音彦
(
おとひこ
)
『ヤアこれは
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ、
209
テツキリ
巌窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
だと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たのに、
210
果
(
はて
)
しもなき
荒野原
(
あれのはら
)
。
211
さう
云
(
い
)
ふ
貴女
(
あなた
)
は
何
(
いづ
)
れの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
か』
212
女
(
をんな
)
『ハイ、
213
私
(
わたくし
)
は
聖地
(
せいち
)
エルサレムの
者
(
もの
)
で、
214
黄金山
(
わうごんざん
)
の
埴安彦
(
はにやすひこ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
ふる
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
出雲姫
(
いづもひめ
)
と
申
(
まを
)
すもの、
215
長途
(
ちやうと
)
の
宣伝
(
せんでん
)
ご
苦労
(
くらう
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
216
サアどうぞ
妾
(
わらは
)
に
随
(
つい
)
て
此方
(
こちら
)
へお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいまし、
217
寛
(
ゆつ
)
くり
休息
(
きうそく
)
の
上
(
うへ
)
海山
(
うみやま
)
のお
話
(
はなし
)
を
交換
(
かうくわん
)
いたしませう。
218
左様
(
さやう
)
ならばお
先
(
さき
)
に
失礼
(
しつれい
)
』
219
と
云
(
い
)
ひながら
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
草
(
くさ
)
生茂
(
おひしげ
)
る
野路
(
のぢ
)
をトボトボと
歩
(
あゆ
)
み
行
(
ゆ
)
く。
220
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はその
後
(
あと
)
について
怪訝
(
くわいが
)
の
念
(
ねん
)
に
駆
(
か
)
られつつ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
221
(
大正一一・三・二〇
旧二・二二
加藤明子
録)
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