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第一四章 蛙船(かへるふね)〔五四〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻 篇:第4篇 奇窟怪巌 よみ(新仮名遣い):きくつかいがん
章:第14章 蛙船 よみ(新仮名遣い):かえるふね 通し章番号:540
口述日:1922(大正11)年03月20日(旧02月22日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年10月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高照姫命が鎮まり、三十三相に身を変じて教えを明かすのが醜の巌であった。しかし未だ信仰の弱い音彦、亀彦、駒彦の三人は鳥船に救われたのも束の間、気がつくと身は雨の降る布留野ケ原に放り出されていた。
三人は仕方なくタカオ山脈を越えて徒歩で都に向かおうとするが、夜になってしまう。そして、沼の手前で巨大な大蛙に出くわす。
音彦は呑気にも、乗り物ができたと喜んで蛙に乗る。蛙は人語を話し、この先の行く手をふさいでいる古池を泳いで渡ってあげよう、というが、亀彦と駒彦は気味悪がって乗らない。
大きな古池は断崖に囲まれているが、蛙は音彦を乗せたまま、下に飛び込んだ。音彦は助けを求めるが、亀彦・駒彦は音彦の軽率を責めるばかりで喧嘩している。蛙が仲裁しようとするが、三人は言い争いをやめない。
蛙は向こう岸にさっさと上がって池を越えてしまった。今度は亀彦と駒彦が慌て出すが、よくよく見れば大道が続いていて、苦もなく池の向こう岸に行くことができた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-11-26 18:01:19 OBC :rm1314
愛善世界社版:169頁 八幡書店版:第3輯 92頁 修補版: 校定版:169頁 普及版:72頁 初版: ページ備考:
001(かみ)御稜威(みいづ)高照姫(たかてるひめ)
002(かみ)(みこと)常永(とことは)
003(しづ)まりまして()(はな)
004(ひめ)(みこと)御教(みをしへ)
005三十三(さんじふさん)(さう)()(へん)
006(しこ)(いはや)のそれよりも
007(たま)(いしづゑ)弥堅(いやかた)
008(きづ)(かた)めて(やみ)()
009(かみ)経綸(しぐみ)宝庫(はうこ)
010(ひら)かむとする(とき)もあれ
011八十(やそ)(たけ)びの(つよ)くして
012(みち)にさやりて神言(かみごと)
013一言(ひとこと)さへも磐船(いはふね)
014(くも)(かく)れて(いま)(ただ)
015布留野(ふるの)(はら)深霧(ふかぎり)
016(つつ)まれけるぞ是非(ぜひ)なけれ
017天空(てんくう)(とどろ)(いかづち)
018(むね)()たれて起上(おきあが)
019四辺(あたり)()ればこは如何(いか)
020荒野(あれの)をわたる俄雨(にはかあめ)
021()はびしよ()れの釈迦(しやか)(ざう)
022音彦(おとひこ)『オイ亀公(かめこう)023駒公(こまこう)024()出別(でわけ)宣伝使(せんでんし)(むか)へられ、025九天(きうてん)(うへ)まで(のぼ)りつめて()つた(はず)だのに、026何時(いつ)()にか(また)もや()茫々(ばうばう)たる草原(さうげん)雨風(あめかぜ)(さら)され(ねむ)つてゐたとは、027()(かんが)へても()(おち)ぬぢやないか。028それにしても鷹彦(たかひこ)029岩彦(いはひこ)030梅彦(うめひこ)如何(どう)なつただらう』
031亀彦(かめひこ)自分(じぶん)(こと)自分(じぶん)(わか)らない吾々(われわれ)032他人(ひと)(こと)(かんが)へる余裕(よゆう)があるものか。033これや()うしても腹帯(はらおび)(しめ)ねばなるまい』
034駒彦(こまひこ)吾々(われわれ)(さん)(にん)(あま)鳥船(とりふね)から、035()らぬ()()(おと)されたのだ。036それにしても(あんま)()出別(でわけの)(かみ)莫迦(ばか)にして()るぢやないか。037此処(ここ)はタカオ山脈(さんみやく)手前(てまへ)だ。038()(した)(あた)りを(しこ)巌窟(がんくつ)貫通(くわんつう)して()るのぢやが、039()(そと)()()されて(しま)つては、040最早(もはや)探険(たんけん)(なに)もあつたものぢやない。041エー仕方(しかた)がない、042西北(せいほく)()して(ほし)(ひかり)目標(めあて)(すす)んで()けば、043(つひ)にはフサの(みやこ)()くであらう。044吾々(われわれ)()(あた)りは幼少(ちいさ)(とき)一度(いちど)(とほ)つたことがあるのだから、045(うん)(てん)(まか)して徒歩(てく)ることにしようかい』
046音彦(おとひこ)『タカオ山脈(さんみやく)(ちか)くになると大変(たいへん)(おほ)きな蟇蛙(ひきがへる)()ると()ふことだ。047(なん)だか(あし)草臥(くたび)れたし、048(かへる)出居(でを)つたら飛行機(ひかうき)(かは)りに、049それにでも()つてアーメニヤ方面(はうめん)()して、050かへる()ふことにしようかな』
051亀彦(かめひこ)『ヤー大変(たいへん)だ。052音公(おとこう)053駒公(こまこう)054向方(むかう)()よ、055夜目(よめ)確乎(しつかり)とはわからぬが、056(なん)でも(ぬま)か、057(いけ)のやうなものがあつて吾々(われわれ)進路(しんろ)拘塞(こうそく)してゐるやうに()ゆるぢやないか』
058駒彦(こまひこ)『マア()(ところ)まで行進(かうしん)(つづ)けるのだナア』
059 一行(いつかう)仄暗(ほのぐら)原野(げんや)(あし)(まか)せて、060西北(せいほく)()して(すす)()く。
061音彦(おとひこ)『ヤー(めう)()(ごゑ)がするぞ。062大方(おほかた)(れい)先生(せんせい)()たのだらう』
063()つて()(ところ)(うし)のやうな蟇蛙(ひきがへる)064ノサリノサリと()()一行(いつかう)(まへ)(ふさ)がり、065斗箕(とみの)のやうな(くち)()けてパクついて()る。
066音彦(おとひこ)『ヨー天道(てんだう)(ひと)(ころ)さずぢや。067()乗物(のりもの)出来(でき)た。068鳥船(とりふね)から蛙船(かへるぶね)()(かへ)ると()洒落(しやれ)だ。069(この)(ふね)はモーかへる心配(しんぱい)()らない。070(はじめ)からかへるだから』
071亀彦(かめひこ)『この()原野(げんや)には(なに)(ばけ)()るか(わか)つたものぢやない、072()神言(かみごと)奏上(そうじやう)して正体(しやうたい)(あら)はし、073(はた)して(しん)(かへる)先生(せんせい)なれば()つてもよからうが、074(また)しても蛙然(あぜん)とするやうなことが()いやうに注意(ちうい)せねばいかないぞ』
075音彦(おとひこ)『ナニ(かま)ふものか。076(うま)には()つて()よ、077(かへる)には(またが)つて()いだ』
078()(なが)ら、079音公(おとこう)(かへる)(せな)にヒラリと()()り、
080音彦(おとひこ)『ヤア大変(たいへん)乗心地(のりごこち)がよい。081(かめ)082(こま)083貴様(きさま)()()つたら()うだい』
084亀、駒吾々(われわれ)経験(けいけん)()いから、085マア(しば)らく執行(しつかう)猶予(いうよ)をして(もら)はうかい』
086音彦(おとひこ)()(よわ)(やつ)だな。087それでは(おと)サンが()(さき)失敬(しつけい)(いた)しませう。088オイ(かはず)先生(せんせい)089音彦(おとひこ)だというても、090おとしちやいかぬよ。091おとさぬやうにして大切(たいせつ)のたくるのだ。092(かはず)行列(ぎやうれつ)(むか)()ずと()ふことがあるから、093充分(じうぶん)注意(ちうい)して()つて()(たま)へ。094賃銭(ちんせん)(また)追加(つゐか)をするから』
095大蛙(おほがへる)『ハイハイ承知(しようち)(いた)しました。096吾々(われわれ)背中(せなか)()つて()れば、097()ながらにして故郷(ふるさと)かへるだ。098のんこ洒蛙(しやあー)つく洒蛙(しやあー)々々(しやあー)(ぜん)鼻唄(はなうた)でも(うた)つて(この)(かう)(にぎは)して(くだ)さい。099()出別(でわけの)(みこと)には()てられても、100(また)(この)(とほ)(たす)ける(かみ)(あら)はれるものだ。101()てる(かみ)もあれば(ひろ)(かへる)もあるアハヽヽヽ』
102(かへる)(くち)から欠伸(あくび)(とも)に、103ノサリノサリと(すす)()く。
104亀彦(かめひこ)『ヤア、105音公(おとこう)(やつ)106うまいことをしよつた。107オイオイ(かはず)サン。108一寸(ちよつと)()つた一寸(ちよつと)()つた。109音公(おとこう)ばつかり(さき)()つたところで、110吾々(われわれ)二人(ふたり)()いて()かねば、111ナンニもなりはしない。112()せるのが(いや)ならモツト徐々(そろそろ)(ある)いて()れないか』
113大蛙(おほがへる)『この(さき)には大変(たいへん)(ひろ)古池(ふるいけ)がございます。114其処(そこ)(わた)つてから、115あなた(がた)()せて()げませうかい』
116駒彦(こまひこ)『ヤーその(いけ)(わた)るために(かへる)行列(ぎやうれつ)(むか)()ずだから、117みづ(うへ)(ふね)(かは)りになつて(もら)()いのだ』
118音彦(おとひこ)(かめ)(いけ)(なか)得意(とくい)だらう。119駒公(こまこう)水馬(すゐば)()つて(みづ)(なか)上手(じやうず)(ちが)()い。120(みづ)(なか)(こま)るのは(おと)サンばかりだ。121古池(ふるいけ)(かはず)()()(みづ)(おと)サンといふことを、122()つてゐるかい』
123亀彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、124うまいことを()ひよる、125ナア駒公(こまこう)126屹度(きつと)彼奴(あいつ)失策(しくじ)つて巌窟(がんくつ)(なか)(かめ)サンのやうな()()はねばよいがな』
127 (かはず)一生(いつしやう)懸命(けんめい)そく()して一足飛(いつそくと)びにホイホイと()(はじ)めた。128(たちま)ちドブンと水煙(みづけむり)()つた。
129亀彦(かめひこ)『ヤア蟇蛙(ひきがへる)(やつ)130到頭(たうとう)(くらやみ)(いけ)()()んで(しま)ひよつた。131(おも)つたよりは(ふか)(いけ)だ。132(この)(いけ)周囲(まはり)(くさ)ばつかりかと(おも)へば、133断巌(だんがん)絶壁(ぜつぺき)(かこ)まれてゐる。134音公(おとこう)(やつ)(かはず)(とも)沈没(ちんぼつ)()つたな』
135駒彦(こまひこ)『オーイオーイ、136音公(おとこう)ヤーイ』
137亀彦(かめひこ)『オイ音公(おとこう)138()(いけ)(そこ)沈澱(ちんでん)するのは(はや)いぞ』
139 (かはず)音公(おとこう)()せたまま水面(すゐめん)にポカリと()(あが)つた。
140亀彦(かめひこ)『ヤー音公(おとこう)141醜態(ざま)()やがれ。142それだから(かはず)行列(ぎやうれつ)(むか)()ずと()ふのだ。143モー()うなつては高処(たかみ)から見物(けんぶつ)だ』
144音彦(おとひこ)危急(ききふ)存亡(そんばう)一命(いちめい)にもかかはる(この)場合(ばあひ)に、145(なに)安閑(あんかん)として()るのか、146(はや)くデレツクでも用意(ようい)して(おと)サン(かへる)サンを()()げぬかい』
147駒彦(こまひこ)『デレツクとは(なん)だい。148グレンのことだらう。149此処(ここ)陸上(りくじやう)だぞ。150陸上(りくじやう)()れるのはグレンだ。151グレンと(おと)()ててひつくりかへる()(あは)れさ。152()なつとグレングレンと()いて()れ。153さうすれば何時(いつ)()にか、154よい(かぜ)()くだらう』
155音彦(おとひこ)『ソンナ議論(ぎろん)如何(どう)でも()い。156デレツクであらうが、157グレンであらうが()(ところ)(あら)ずだ。158貴様(きさま)もよつぽど融通(ゆうづう)()かぬ(やつ)だ』
159亀彦(かめひこ)(ところ)(かは)れば(しな)(かは)る、160()(いへ)(かは)れば(ふう)(かは)る、161(かか)(かは)れば(かほ)(かは)る。162浪速(なには)(あし)伊勢(いせ)浜荻(はまをぎ)163貴様(きさま)のやうに八釜敷(やかましう)(さへづ)百千鳥(ももちどり)(みやこ)()けば(すゐ)(かは)つて都鳥(みやこどり)164マア悠々(ゆつくり)(かはず)()遊山(ゆさん)でもしたらよからう。165吾々(われわれ)もこれからお(まへ)沈澱(ちんでん)するまで、166悠々(いういう)休息(きうそく)でもして、167それから起重機(きぢゆうき)措置(そち)して(たす)けてやると()いけれど、168生憎(あひにく)便利(べんり)(わる)くつて仕方(しかた)()い。169マアマア(かへる)(とも)にグレンとやるのぢやな』
170大蛙(おほがへる)『モシモシ(かめ)よ、171(かめ)サンよ。172(こま)よ、173(こま)サンよ。174くだらぬ喧嘩(けんくわ)()はずと大人(おとな)しく、175友達(ともだち)甲斐(がひ)(たす)けて()げて(くだ)さいや』
176亀彦(かめひこ)『サテモ気楽(きらく)(やつ)だナア。177奈落(ならく)(そこ)()()んで(をど)つて()(やつ)があるものかい。178音公(おとこう)貴様(きさま)今迄(いままで)罪悪(ざいあく)決算期(けつさんき)()たのだ。179何事(なにごと)因縁(いんねん)づくぢやと(あきら)めたがよからう。180()(つら)時節(じせつ)やすい賃銀(ちんぎん)(たれ)就業(しうげふ)するものがあるか。181()労働(らうどう)争議(さうぎ)解決(かいけつ)がつく(まで)182ゆつくりと()つてゐるがよからう』
183音彦(おとひこ)『オイオイ蛙公(かはずこう)184モーアンナ(やつ)相手(あひて)になつたところが、185解決(かいけつ)のつく(はず)はない。186(うへ)()つて()(やつ)(いけ)(そこ)(おち)(くる)しんで()人間(にんげん)とだから、187到底(たうてい)(うへ)(やつ)()(とほ)乱暴(らんばう)だから、188百姓(ひやくしやう)蛙切(かはずき)りぢやないが、189(かはず)(おと)サンとが悠然(ゆつくり)協議(けふぎ)(ひら)いて、190労働(らうどう)同盟(どうめい)でもやつて(みづか)活路(くわつろ)(もと)めるより仕方(しかた)()いわ、191(かめ)192(こま)193(おほ)きに(はばか)りさまだ。194モー貴様(きさま)()()厄介(やくかい)にはならぬ。195自由(じいう)行動(かうどう)()るから、196さう(おも)へ』
197(かめ)198(こま)『アハヽヽヽ、199(つよ)(もの)(がち)()(なか)だ、200(うへ)から(した)()ちるのは一足跳(いつそくと)びに容易(ようい)だが(した)から(うへ)(あが)るのは大変(たいへん)だぞ。201(あが)れるなら自由(じいう)(あが)つて()よ』
202大蛙(おほがへる)美事(みごと)(あが)つて()せう。203アフンとするな』
204()(なが)(ひろ)水面(すゐめん)浮游(ふいう)し、205ある上陸(じやうりく)地点(ちてん)(もと)めてガサガサと無事(ぶじ)()(あが)つた。
206亀彦(かめひこ)『ヤー(おと)(やつ)207到頭(たうとう)無事(ぶじ)着陸(ちやくりく)しよつた。208オイ(こま)サン、209吾々(われわれ)()うして(この)古池(ふるいけ)(わた)つたらよからうな』
210駒彦(こまひこ)『アーさうだつたな。211(わた)るには(こは)し、212(わた)らねば女房(にようばう)(くに)へは(かへ)れないといふ場面(ばめん)だ。213オイ(おと)サン、214(むか)ひに(きた)(むか)ひに(きた)り』
215 (おと)()()き、216(した)()(なが)ら、
217音彦『アカと()へ、218アカと()つたら(むか)ひに()つてやる』
219亀彦(かめひこ)『エー仕方(しかた)()い。220莫迦(ばか)にしよる。221これだからアカの他人(たにん)水臭(みづくさ)いと()ふのだ。222仕方(しかた)()い。223()(はら)()へられぬ。224()はうかい』
225駒彦(こまひこ)『アカ』
226亀彦(かめひこ)『アカ』
227音彦(おとひこ)両手(りやうて)(ゆび)(まぶた)(おさ)(なが)ら)『ベー』
228駒彦(こまひこ)大方(おほかた)コンナことだと(おも)つて()つた。229アカの()(ぞん)をしたワイ。230これがアカの(わか)れと()ふのだ。231モー仕方(しかた)がない、232予定(よてい)退却(たいきやく)だ』
233音彦(おとひこ)『オイオイ貴様(きさま)(はや)()んかい。234ソンナ(ところ)何時(いつ)まで愚図(ぐづ)々々(ぐづ)してゐるのだ』
235駒彦(こまひこ)『ヤーナアンだ。236坦々(たんたん)たる大道(だいだう)(つう)じてゐるぢやないか』
237亀彦(かめひこ)『ヤー布留野(ふるの)(はら)のコンコンさまだな。238アハヽヽヽ』
239大正一一・三・二〇 旧二・二二 外山豊二録)
240(昭和一〇・三・二八 於吉野丸船室 王仁校正)
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