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第八章 (しこ)(いはや)〔五三四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻 篇:第2篇 洗礼旅行 よみ(新仮名遣い):せんれいりょこう
章:第8章 醜の窟 よみ(新仮名遣い):しこのいわや 通し章番号:534
口述日:1922(大正11)年03月17日(旧02月19日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年10月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
夜が明けて、岩彦は今度こそ我が折れたと鷹彦に認めた。しかし日の出別宣伝使の行動が腑に落ちないと疑問を呈するが、鷹彦は一兵卒に御経綸がわかってたまるか、と諭す。
鷹彦は、腹ごしらえをしてフル野ケ原の醜の窟に巣くう魔神どもを言向け和しに行こう、と提案する。そして、昨日の化け物は、魔神たちの偵察に違いない、と言う。醜の窟には六つの入口があるので、めいめい一人ずつ進んで行くことにした。
一行が原野を進んで行くと、屏風のように長く突き立った岩山が見えてきた。その上には一人の人影が見える。それは日の出別宣伝使であった。日の出別は宣伝歌にて、醜の窟の入口がふさがれていてわからないが、ここを清めて三五教の教えを顕すべし、と歌っていた。
岩彦は昨夜の化け物のことを報告し、自分の言霊で追い払ったかのように吹聴する。しかし日の出別は岩彦が腰を抜かしたことを知っていて、化け物の口真似をして岩彦をからかう。
岩彦は化け物が日の出別に化けているのかと思って疑うが、日の出別は拍手を打って天津祝詞を奏上した。その声は六合に鳴り渡るようで、たちまち雲は晴れて太陽が姿を現した。
疑いは晴れ、一同は岩窟に進み入ることとなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-11-26 16:56:45 OBC :rm1308
愛善世界社版:100頁 八幡書店版:第3輯 67頁 修補版: 校定版:100頁 普及版:42頁 初版: ページ備考:
001 ()(やうや)()(はな)れたと()え、002天津(あまつ)()(かげ)()えねども、003天地(てんち)ホンノリ(あか)るくなつて()た。
004鷹彦(たかひこ)『オイ岩彦(いはひこ)005()うだ、006貴様(きさま)もモウこれで()()れただらうナア』
007岩彦(いはひこ)『ヤー今度(こんど)(かぎ)つて徹底(てつてい)(てき)()()れたよ。008モウ心配(しんぱい)して()れな。009(しか)()出別(でわけ)宣伝使(せんでんし)()うなつたのだらう。010どうも()()ちぬ行動(かうどう)ぢやないか』
011鷹彦(たかひこ)貴様(きさま)()だソンナ(こと)()ふから駄目(だめ)だ。012()うならうと、013()うならうと(かみ)(さま)()経綸(けいりん)が、014吾々(われわれ)(ごと)一兵卒(いつぺいそつ)(わか)つてたまるかい。015()出別(でわけの)(みこと)がフル野ケ原(のがはら)魔神(まがみ)(たひら)げると仰有(おつしや)つた以上(いじやう)は、016屹度(きつと)(さき)()つて(みづ)()らさぬ経綸(けいりん)をしてござるに(ちが)ひないワ。017ソンナ(こと)吾々(われわれ)容喙(ようかい)すべき(ところ)()い。018サアサア(みな)一時(いつとき)用意(ようい)用意(ようい)だ』
019音彦(おとひこ)『ヤア(たか)サン、020()つて(くだ)さい。021(はら)(むし)休戦(きうせん)催促(さいそく)(しき)りに()てゐます』
022鷹彦(たかひこ)『オーさうだつた。023各自(めいめい)(はら)(こしら)へねばならぬ』
024()ひつつ(かた)きパンを()して、025各自(めいめい)()じり(なが)旅装(りよさう)(ととの)へ、026西北(せいほく)()して、027宣伝歌(せんでんか)(うた)(うた)(すす)()く。
028鷹彦(たかひこ)『サア(これ)からが戦場(せんぢやう)だ。029(いづ)れもしつかり戦闘(せんとう)準備(じゆんび)()りかかれよ。030(おと)名高(なだか)いフル野ケ原(のがはら)(しこ)(いはや)だからのう』
031岩彦(いはひこ)()(いはや)には、032一体(いつたい)ドンナ魔神(まがみ)()るのだ』
033鷹彦(たかひこ)()れは種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)悪魔(あくま)棲息(せいそく)しとるのだ。034夜前(やぜん)斥候隊(せきこうたい)()ただらう』
035岩彦(いはひこ)『ウン()(ばけ)か。036ナーニアンナ(やつ)(くらゐ)()のお(ちや)だ』
037音彦(おとひこ)油断(ゆだん)大敵(たいてき)だ。038小敵(せうてき)たりとも(あなど)るべからず、039大敵(たいてき)たりとも(おそ)るるべからず。040()(のぞ)(へん)(おう)じ、041変幻(へんげん)出没(しゆつぼつ)042進退(しんたい)自由(じいう)大活動(だいくわつどう)吾々(われわれ)開始(かいし)するのだ』
043鷹彦(たかひこ)『アヽ(かみ)(さま)()仕組(しぐ)まれたものだ。044(しこ)(いはや)には六個(ろくこ)入口(いりぐち)がある。045其処(そこ)(ろく)(にん)()ふのだから恰度(ちやうど)都合(つがふ)がよい。046各自(めいめい)()(ひと)(づつ)(あな)担当(たんたう)して進入(しんにふ)するのだナア』
047岩彦(いはひこ)『それは面白(おもしろ)からう、048(おれ)一番槍(いちばんやり)功名(こうみやう)手柄(てがら)049(しか)(なが)肝腎(かんじん)大将(たいしやう)()てゐて()れねば、050(はたら)きごたへが()いやうな()がするぢやないか』
051鷹彦(たかひこ)貴様(きさま)はそれだから()だいかぬのだ。052大将(たいしやう)()()らうが、053()らうまいが、054自分(じぶん)職務(しよくむ)(ちから)一杯(いつぱい)全力(ぜんりよく)傾注(けいちゆう)してやればよいのだ』
055岩彦(いはひこ)『それでも(かげ)(まひ)056(えん)(した)(をど)りになつては骨折(ほねを)甲斐(がひ)()いやうな()がする。057ナア梅公(うめこう)058音公(おとこう)
059音彦(おとひこ)『イヤ吾々(われわれ)はソンナことは(けつ)して(おも)はぬ。060どうせ(ろく)勝利(しようり)()られないのだから。061下手(へた)なことをして()(ところ)大将(たいしやう)()られては(かへ)つて(はづ)かしい。062()(かく)獅子(しし)奮迅(ふんじん)(いきほひ)(もつ)力限(ちからかぎ)りのベストを(つく)し、063(あた)(かぎ)りの奮戦(ふんせん)をやるのだ』
064梅彦(うめひこ)『オイ鷹彦(たかひこ)065()うだ。066(この)(へん)一寸(ちよつと)休息(きうそく)をして各自(めいめい)策戦(さくせん)計画(けいくわく)(さだ)め、067悠乎(ゆつくり)()かうぢやないか。068化物(ばけもの)退治(たいぢ)(よる)(はう)(かへ)つて都合(つがふ)がよいかも()れぬぞ』
069岩彦(いはひこ)『さうだ。070(ひる)化物(ばけもの)()たことが()い。071化物(ばけもの)留守(るす)()つた(ところ)変哲(へんてつ)()いから。072時機(じき)(かんが)へて六方(ろくぱう)から突撃(とつげき)(こころ)みると()ふことにしようかい』
073 一行(いつかう)(ろく)(にん)(かぜ)()かれ(なが)(いきほひ)よく(すす)()く。074前方(ぜんぱう)()れば原野(げんや)中央(ちうあう)屏風(びやうぶ)(ごと)(なが)衝立(つきた)てる岩山(いはやま)あり、075その岩山(いはやま)(いただき)一人(ひとり)人影(ひとかげ)()ちゐる。
076鷹彦(たかひこ)『オイ(みな)(もの)077()(しこ)(いはや)(うへ)(なに)()るか一寸(ちよつと)(のぞ)いて()よ。078あれは夜前(やぜん)姿(すがた)(かく)された()出別(でわけ)宣伝使(せんでんし)間違(まちが)()からう。079吾々(われわれ)()くまでにチヤンと悪魔(あくま)(ふう)じて遁走(とんそう)せないやうな計略(けいりやく)()ゆる。080サアもう大丈夫(だいぢやうぶ)だ。081(いそ)(いそ)げ。082オイ岩公(いはこう)083もうウラル(けう)(おも)()つただらうな』
084岩彦(いはひこ)(おも)()つたも()らぬもあるかい。085テンでウラル(けう)ナンか、086(ゆめ)にも(おも)つたことは()いわ』
087鷹彦(たかひこ)『アハヽヽヽ、088勝手(かつて)(やつ)だ。089マア()うでもよい。090駆歩(かけあし)だ』
091 (いち)()(さん)()(なが)ら、092(しこ)(いはや)()して()けついた。093()出別(でわけ)岩上(がんじやう)()つて(こゑ)(すず)しく宣伝歌(せんでんか)(うた)ひゐる。
094日の出別(かみ)(おもて)(あら)はれて
095(ぜん)(あく)とを立別(たてわ)ける
096(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
097(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
098直日(なほひ)(かみ)分霊(わけみたま)
099(この)()(くも)りを()(はら)
100()()(わけ)宣伝使(せんでんし)
101(あめ)もフル野ケ原(のがはら)()
102(しこ)(いはや)()()れば
103出口(でぐち)入口(いりぐち)(ふさ)がりて
104百草(ももくさ)千草(ちぐさ)生茂(おひしげ)
105何処(いづこ)をそれと白真弓(しらまゆみ)
106射向(いむか)(まと)あら(かぜ)
107()かれて()てる()(いはや)
108(いは)より(かた)鋭心(とごころ)
109誠心(まことごころ)()(おこ)
110フサの天地(てんち)(くも)らせし
111八岐(やまた)大蛇(をろち)分霊(わけみたま)
112(しこ)曲津(まがつ)言霊(ことたま)
113(うづ)気吹(いぶき)(はら)はむと
114()()(ほど)なく鷹彦(たかひこ)
115(いづ)身魂(みたま)あと()(にん)
116(やうや)此処(ここ)(あら)はれて
117(まが)(とりで)()(むか)
118あゝ(いさ)ましや(いさ)ましや
119(かみ)(ちから)(ひら)(ぐち)
120出口(でぐち)入口(いりぐち)わからねど
121(くさ)をわけても(さが)()
122言向(ことむ)(やは)さで()くべきか
123言向(ことむ)(やは)さで()くべきか
124朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
125(つき)()つとも()くるとも
126たとへ大地(だいち)(しづ)むとも
127(かみ)(まか)せし()身体(からだ)
128(かみ)(おん)ため()のために
129()てて甲斐(かひ)あるわが生命(いのち)
130(きた)れよ(きた)れいざ(きた)
131(むらぐも)(しげ)れる(いは)()
132(くま)なく(さぐ)りし(その)(うへ)
133天津(あまつ)祝詞(のりと)太祝詞(ふとのりと)
134(こゑ)高天(たかま)()りつれば
135天津(あまつ)御神(みかみ)久方(ひさかた)
136(あま)岩戸(いはと)押開(おしひら)
137八重雲(やへくも)四方(よも)()きわけて
138(まこと)(ねがひ)(きこ)()
139(くに)御祖(みおや)大御神(おほみかみ)
140国治立(くにはるたち)大神(おほかみ)
141(したが)(たま)百神(ももがみ)
142(やま)()()(かは)()
143伊保理(いほり)をさつと()きわけて
144()祈言(ねぎごと)(ことごと)
145(きこ)()すらむ三五(あななひ)
146(かみ)(をしへ)(くま)()
147(ひか)(かがや)くフル野原(のはら)
148(はら)(きよ)めむ曲津霊(まがつひ)
149(しこ)曲業(まがわざ)逸早(いちはや)
150(なれ)(こころ)真寸鏡(ますかがみ)
151(てら)して(しこ)正体(しやうたい)
152(あら)はす(とき)(きた)りけり
153(あら)はす(とき)(きた)りけり
154あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
155御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
156(こゑ)(すず)しく(うた)(きよう)じつつありけり。157鷹彦(たかひこ)一行(いつかう)(やうや)くにして(この)()安着(あんちやく)したり。
158岩彦(いはひこ)『ホー貴使(あなた)()出別(でわけ)宣伝使(せんでんし)(さま)159夜前(やぜん)大変(たいへん)にお(さき)()無礼(ぶれい)(いた)しました』
160日の出別『イヤ()無礼(ぶれい)はお(たが)ひだ。161昨夜(さくや)(べつ)(かは)つたことはなかつたかな』
162岩彦(いはひこ)『ヤー(べつ)(たい)したことはありませぬ。163曲津(まがつ)(かみ)斥候隊(せきこうたい)一寸(ちよつと)やつて()て、164岩彦(いはひこ)言霊(ことたま)気吹(いぶき)()()らされ、165(ねずみ)のやうに(ちひ)さくなつて狐鼠(こそ)々々(こそ)()えて(しま)つたのですよ。166イヤモウ悪神(あくがみ)()ふものは(よわ)いものです』
167()出別(でわけ)『それは結構(けつこう)だつた。168(しか)一寸(ちよつと)(こし)()いたでせう』
169岩彦(いはひこ)『ヤー此奴(こいつ)(へん)だ。170()出別(でわけ)()せかけて昨夜(ゆふべ)化助(ばけすけ)()が、171(また)此処(ここ)作戦(さくせん)をやつて()るのぢやなからうか。172ハテナ合点(がてん)()かぬ(こと)もあればあるものだ。173オイこらお(ばけ)174馬鹿(ばか)にするない。175貴様(きさま)()出別(でわけの)(みこと)()けて()よるが、176()()()はぬぞ。177化物(ばけもの)証拠(しようこ)には昨夜(ゆふべ)(おれ)(こし)をぬかしたことを()つて()つたぢやないか。178本当(ほんたう)()出別(でわけ)吾々(われわれ)置去(おきざ)りにして、179(さき)御免(ごめん)とも(なん)とも()はずに、180ドロンと(その)()から消滅(せうめつ)して(しま)つたのだ。181大体(だいたい)()出別(でわけ)からして怪体(けつたい)代物(しろもの)だが、182彼奴(あいつ)貴様(きさま)のやうに()けないから安心(あんしん)だ。183コラ夜前(やぜん)()けの同類(どうるゐ)184夜前(やぜん)夜分(やぶん)だつたから一寸(ちよつと)ねむた()相手(あひて)になつてやつたのだが、185今日(けふ)真剣(しんけん)だぞ。186じたばた(いた)してもモウ(かな)はぬ百年目(ひやくねんめ)187サア尋常(じんじやう)(かぶと)()ぐか、188返答(へんたふ)如何(どう)ぢや』
189()出別(でわけ)『キヤツハヽヽヽ』
190 岩彦(いはひこ)はトンと(こし)(おろ)して、
191岩彦『キヤツキヤツ、192キヤツハヽヽとは、193そりや(なに)()かす。194合点(がてん)()かぬ脱線(だつせん)だらけの(わら)(ごゑ)をしよつて、195キヤツハヽヽヽキユツフヽヽのとは(なに)(ざま)だ。196奴畜生(どちくしやう)()けた証拠(しるし)には、197拗音(ようおん)鼻音(びおん)使用(しよう)してゐるぢやないか』
198()出別(でわけ)『アハヽヽヽ、199()出別(でわけ)(なに)()かすと()ふが、200さう()ふお(まへ)(こし)ヌかす』
201岩彦(いはひこ)()かすない()かすない、202(だま)つて()れば(なに)()かすかわかつたものぢやない。203ヤイ一同(いちどう)(もの)204ぬかるな。205此奴(こいつ)変智(へんち)奇珍(きちん)だぞ』
206鷹彦(たかひこ)『アハヽヽヽ、207オイこら岩公(いはこう)208貴様(きさま)はよつぽど瓢六玉(へうろくだま)だ。209()立派(りつぱ)()出別(でわけの)(みこと)(さま)化物(ばけもの)()ゆるのか』
210岩彦(いはひこ)()えいでかい。211(きま)つた巾着(きんちやく)212()げたお豆腐(とうふ)213(なに)ほど(おれ)をおどかさうと(おも)つたつて豆腐(とうふ)(かすがい)214(ぬか)(くぎ)だ。215坊主(ばうず)鉢巻(はちまき)でチツトもこたへないのだ。216(おれ)(いは)より(かた)(いは)サンだ。217化物(ばけもの)百匹(ひやつぴき)千匹(せんびき)(くらゐ)(むれ)をなして押寄(おしよ)(きた)るとも(なに)のものかは。218ウラル(けう)のオツトドツコイ三五教(あななひけう)(まこと)(かみ)言霊(ことたま)気吹(いぶき)()り、219気吹(いぶき)(はら)(たま)(きよ)(たま)へと(まを)すことの(よし)天津(あまつ)(かみ)国津(くにつ)(かみ)八百万(やほよろづ)(かみ)(たち)(とも)小男鹿(さをしか)耳振(みみふ)()(きこ)()せと、220(かしこ)(かしこ)(まを)す。221ポンポンだ』
222()出別(でわけ)『アハヽヽヽ、223相変(あひかは)らず面白(おもしろ)(やつ)だ。224オイ岩彦(いはひこ)225本当(ほんたう)だ、226本物(ほんもの)だ。227()出別(でわけ)間違(まちが)ひは()いぞ。228安心(あんしん)せい』
229岩彦(いはひこ)『サーその弁解(べんかい)()()はぬ。230(なん)でも(うそ)()(やつ)はうまい(こと)弁解(べんかい)をするものだ』
231音彦(おとひこ)『オイオイ、232貴様(きさま)(うたが)ひが深過(ふかす)ぎるぢやないか。233さう(ふか)はまりしては(もの)がさつさと片付(かたづ)いて()かぬ。234後家(ごけ)(ばあ)サンの宿換(やどが)へのやうに(なん)でも手軽(てがる)片付(かたづ)けるものだよ』
235梅彦(うめひこ)『ヤー昨日(きのふ)()今日(けふ)といひだ』
236駒彦(こまひこ)本当(ほんたう)皆目(かいもく)一体(いつたい)全体(ぜんたい)(わけ)がわからぬやうになつて()た。237化物(ばけもの)退治(たいぢ)にやつて()(なん)だか化物(ばけもの)玩弄(おもちや)になつてゐるやうな()がする、238(また)(ゆめ)ではあるまいか』
239鷹彦(たかひこ)夢々(ゆめゆめ)(うたが)(なか)れ。240(ゆめ)ではないぞ、241(うつつ)ではないぞ』
242岩彦(いはひこ)『イヨー此奴(こいつ)(また)(あや)しくなつて()たぞ。243矢張(やつぱり)フル野ケ原(のがはら)(しこ)(いはや)(しき)だ』
244 ()出別(でわけ)拍手(かしはで)()(こゑ)(すず)しく天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)する。245()(こゑ)天地(てんち)六合(りくがふ)()(わた)るが(ごと)く、246(たちま)(くも)()(やぶ)れて()大神(おほかみ)西天(せいてん)温顔(をんがん)(あら)はし、247一行(いつかう)(まよ)ひの(くも)をさらりと()(たま)ひける。
248 ここに岩彦(いはひこ)以下(いか)宣伝使(せんでんし)(はじ)めて真正(しんせい)()出別(でわけの)(みこと)なることを確認(かくにん)し、249いよいよ黄昏(たそがれ)()してこの岩窟(がんくつ)進入(しんにふ)することとなりにける。
250大正一一・三・一七 旧二・一九 外山豊二録)
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