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第13巻(子の巻)
モノログ
凡例
総説
第1篇 勝利光栄
01 言霊開
〔527〕
02 波斯の海
〔528〕
03 波の音
〔529〕
04 夢の幕
〔530〕
05 同志打
〔531〕
06 逆転
〔532〕
第2篇 洗礼旅行
07 布留野原
〔533〕
08 醜の窟
〔534〕
09 火の鼠
〔535〕
第3篇 探険奇聞
10 巌窟
〔536〕
11 怪しの女
〔537〕
12 陥穽
〔538〕
13 上天丸
〔539〕
第4篇 奇窟怪巌
14 蛙船
〔540〕
15 蓮花開
〔541〕
16 玉遊
〔542〕
17 臥竜姫
〔543〕
18 石門開
〔544〕
19 馳走の幕
〔545〕
20 宣替
〔546〕
21 本霊
〔547〕
第5篇 膝栗毛
22 高加索詣
〔548〕
23 和解
〔549〕
24 大活躍
〔550〕
信天翁(三)
余白歌
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> 第4篇 奇窟怪巌 > 第15章 蓮花開
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第一五章
蓮花開
(
れんくわかい
)
〔五四一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻
篇:
第4篇 奇窟怪巌
よみ(新仮名遣い):
きくつかいがん
章:
第15章 蓮花開
よみ(新仮名遣い):
れんかかい
通し章番号:
541
口述日:
1922(大正11)年03月20日(旧02月22日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年10月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
三人(音彦、亀彦、駒彦)が荒れ野の道を行くと、四五人の荒男が行く手をふさいだ。中でも頭目の男はうわばみの野呂公と名乗った。音彦は、荒男たちの脅しもどこ吹く風で、喧嘩腰に応対している。
しかし不思議にも野呂公を名乗る男は、昨晩三人が大蛙の背に乗って喧嘩していたことを知っていた。そして、自分は昨日の蛙の化身だと言う。
音彦は野呂公の正体を問いただすが、逆に醜の岩窟での修行が足りないと言われてしまう。気がつくと、布留野ケ原の荒野にいたと思った三人は、不思議にも岩窟の中をまださまよっていた。
岩窟の中に丸い光が現れると、そこから美女が現れた。三人は好い気になって、女が差し招くほうに歩を進めていった。岩窟の道はほのかに明るくなってきた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-11-26 18:01:58
OBC :
rm1315
愛善世界社版:
179頁
八幡書店版:
第3輯 95頁
修補版:
校定版:
179頁
普及版:
76頁
初版:
ページ備考:
001
音
(
おと
)
、
002
亀
(
かめ
)
、
003
駒
(
こま
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
004
荒野
(
あれの
)
ケ
原
(
はら
)
を
西北
(
せいほく
)
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
005
傍
(
かたはら
)
の
丈
(
たけ
)
なす
草原
(
くさはら
)
の
中
(
なか
)
より
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でたる
五六
(
ごろく
)
人
(
にん
)
の
怪
(
あや
)
しの
男
(
をとこ
)
、
006
大手
(
おほて
)
を
拡
(
ひろ
)
げて
四方
(
しはう
)
を
取囲
(
とりかこ
)
み、
007
男
『ヤイ、
008
何処
(
いづく
)
の
奴
(
やつ
)
か
知
(
し
)
らぬが、
009
此処
(
ここ
)
を
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
つて
踏
(
ふ
)
ん
迷
(
まよ
)
うて
来
(
き
)
たか、
010
サア
所有物
(
もちもの
)
一切
(
いつさい
)
を
悉皆
(
すつかり
)
此処
(
ここ
)
へ、
011
おつ
放
(
ぽ
)
り
出
(
だ
)
して
赤裸
(
まつぱだか
)
になれ。
012
さうすれば
生命
(
いのち
)
丈
(
だけ
)
は
助
(
たす
)
けてやらう』
013
音彦
(
おとひこ
)
『
何
(
なに
)
吐
(
ぬか
)
しよるのだ、
014
泥棒
(
どろぼう
)
奴
(
め
)
が、
015
情
(
なさけ
)
ない
奴
(
やつ
)
だナア。
016
大
(
おほ
)
きな
図体
(
づうたい
)
をしよつて、
017
人
(
ひと
)
の
物
(
もの
)
を
盗
(
と
)
らねば
生活
(
せいくわつ
)
が
出来
(
でき
)
ないとは、
018
何
(
なん
)
といふ
因果
(
いんぐわ
)
の
生
(
うま
)
れ
付
(
つき
)
だ。
019
一体
(
いつたい
)
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
だい』
020
男
(
をとこ
)
『
俺
(
おれ
)
は
蟒
(
うはばみ
)
の
野呂公
(
のろこう
)
さまだい』
021
音彦
(
おとひこ
)
『
道理
(
だうり
)
で、
022
のろ
のろしてけつかるワイ、
023
この
辛
(
から
)
い
時節
(
じせつ
)
に
労働
(
らうどう
)
もせずに、
024
遊
(
あそ
)
んで
食
(
く
)
ふと
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
悪
(
わる
)
い
了見
(
れうけん
)
を
出
(
だ
)
すな』
025
野呂公
(
のろこう
)
『
何
(
なに
)
を
古
(
ふる
)
い
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふのだ。
026
是
(
これ
)
でも
当世向
(
たうせいむき
)
の
新
(
あたら
)
しい
男
(
をとこ
)
だぞ。
027
今
(
いま
)
の
人間
(
にんげん
)
に
泥棒
(
どろばう
)
根性
(
こんじやう
)
の
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
が、
028
一匹
(
いつぴき
)
でも
半匹
(
はんびき
)
でもあるかい、
029
鬼
(
おに
)
と
賊
(
ぞく
)
との
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
030
ナンダ
貴様
(
きさま
)
は、
031
宣伝使
(
せんでんし
)
面
(
づら
)
をしよつて、
032
偽善者
(
きぜんしや
)
の
骨頂
(
こつちやう
)
奴
(
め
)
が。
033
馬
(
うま
)
の
顔
(
かほ
)
にハンモックを
附
(
つ
)
けた
様
(
やう
)
な
長
(
なが
)
いシヤツ
面
(
づら
)
をしよつて………
貴様
(
きさま
)
もやつぱり
顔
(
かほ
)
ばつかりぢやない、
034
手
(
て
)
も
足
(
あし
)
も
長
(
なが
)
い、
035
手長彦
(
てながひこ
)
や
長髄彦
(
ながすねひこ
)
の
眷属
(
けんぞく
)
だらう』
036
音彦
(
おとひこ
)
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しよるのだ、
037
マア
俺
(
おれ
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
を、
038
落着
(
おちつ
)
いて
聴聞
(
ちやうもん
)
しろ』
039
野呂公
(
のろこう
)
『
貴様
(
きさま
)
は、
040
神
(
かみ
)
だとか、
041
道
(
みち
)
だとか、
042
善
(
ぜん
)
だとか、
043
悪
(
あく
)
だとかほざきよつて、
044
世界
(
せかい
)
の
人間
(
にんげん
)
を
圧制
(
あつせい
)
に
廻
(
まは
)
る
宣伝使
(
せんでんし
)
だらう。
045
チツト
頭脳
(
あたま
)
が
古
(
ふる
)
いぞ、
046
是程
(
これほど
)
民衆
(
みんしう
)
運動
(
うんどう
)
の
盛
(
さか
)
んな
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に、
047
守旧
(
しゆきう
)
的
(
てき
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つても、
048
通用
(
つうよう
)
せないぞ。
049
吾々
(
われわれ
)
は、
050
貴様
(
きさま
)
のやうな
奴
(
やつ
)
を、
051
ケープスタンぢやないが、
052
片
(
かた
)
つ
端
(
ぱし
)
から
一所
(
ひととこ
)
へ
巻
(
ま
)
き
寄
(
よ
)
せて、
053
ガタガタと
片付
(
かたづ
)
ける
積
(
つも
)
りだ。
054
通常
(
あたりまへ
)
の
泥棒
(
どろばう
)
だと
思
(
おも
)
ふな。
055
斯
(
か
)
う
見
(
み
)
えても
選
(
せん
)
を
異
(
こと
)
にして
居
(
ゐ
)
るのだぞ』
056
音彦
(
おとひこ
)
『ア、
057
ナント
危
(
あぶ
)
ない
原野
(
げんや
)
だ。
058
全然
(
まるで
)
浮流
(
ふりう
)
水雷
(
すゐらい
)
の
濫設
(
らんせつ
)
した
中
(
なか
)
を、
059
超
(
てう
)
努級艦
(
どきふかん
)
が
航海
(
かうかい
)
してる
様
(
やう
)
なものだ。
060
………ヤイ
浮流
(
ふりう
)
水雷
(
すゐらい
)
!、
061
こちらも
探海船
(
たんかいせん
)
があるぞ。
062
爆発
(
ばくはつ
)
さしてやらうか』
063
野呂公
(
のろこう
)
『ヘン
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しよるのだい。
064
ベンチレータの
様
(
やう
)
な
鼻
(
はな
)
をしよつて、
065
鼻々
(
はなはな
)
以
(
もつ
)
て
不恰好
(
ぶかつかう
)
千万
(
せんばん
)
な、
066
鼻息
(
はないき
)
ばつかり
荒
(
あら
)
くても、
067
石油
(
せきゆ
)
の
空缶
(
あきくわん
)
ぢやないが、
068
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いても
散
(
ち
)
る
様
(
やう
)
なビクビク
腰
(
ごし
)
で……ナアンだ、
069
蟇
(
ひきがへる
)
に
池
(
いけ
)
の
底
(
そこ
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
まれよつて…………』
070
音彦
(
おとひこ
)
『ナニ、
071
蟇
(
ひきがへる
)
に
抛
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
まれた?、
072
貴様
(
きさま
)
どうして
知
(
し
)
つてるのだ』
073
野呂公
(
のろこう
)
『アハヽヽヽヽ、
074
それだから
貴様
(
きさま
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
零点
(
ゼロ
)
と
云
(
い
)
ふのだ』
075
音彦
(
おとひこ
)
『ソンナら
貴様
(
きさま
)
は
一体
(
いつたい
)
何者
(
なにもの
)
だ』
076
野呂公
(
のろこう
)
『
蟇
(
ひきがへる
)
の
現実化
(
げんじつくわ
)
したのが、
077
蟒
(
うはばみ
)
の
野呂
(
のろ
)
さまだよ』
078
音彦
(
おとひこ
)
『オーさうか、
079
貴様
(
きさま
)
蛙
(
かへる
)
なら、
080
裸体
(
はだか
)
で
暮
(
くら
)
して
居
(
を
)
ればよいのだ。
081
何故
(
なぜ
)
に
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
御
(
お
)
衣服
(
めしもの
)
が
必要
(
ひつえう
)
なのだ、
082
………オイ
亀公
(
かめこう
)
、
083
駒公
(
こまこう
)
、
084
しつかりしよらぬかい。
085
俺
(
おれ
)
ばつかりに
交渉
(
かうせふ
)
させよつて、
086
貴様
(
きさま
)
はそれでいいのか、
087
冷淡
(
れいたん
)
至極
(
しごく
)
な
奴
(
やつ
)
だなア』
088
亀
(
かめ
)
、
089
駒
(
こま
)
『オイ
音
(
おと
)
サン、
090
お
前
(
まへ
)
は
身魂
(
みたま
)
の
因縁
(
いんねん
)
で、
091
難局
(
なんきよく
)
に
当
(
あた
)
らなならぬ
役
(
やく
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るのだよ。
092
吾輩
(
わがはい
)
は、
093
後
(
あと
)
の
烏
(
からす
)
が
先
(
さき
)
になる、
094
先
(
さき
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
されよだ。
095
最後
(
さいご
)
の
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
して、
096
抜群
(
ばつぐん
)
の
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
を
現
(
あら
)
はすのだよ』
097
音彦
(
おとひこ
)
『
二十
(
にじつ
)
世紀
(
せいき
)
の
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
やがる、
098
なまくらな
奴
(
やつ
)
だナ。
099
何時
(
いつ
)
まで
待
(
ま
)
つても、
100
棚
(
たな
)
から
牡丹餅
(
ぼたもち
)
は
落
(
お
)
ちては
来
(
こ
)
ないぞ、
101
天地
(
てんち
)
間
(
かん
)
の
真相
(
しんさう
)
を
能
(
よ
)
く
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
102
霜雪
(
さうせつ
)
を
凌
(
しの
)
いで
苦労
(
くらう
)
をすればこそ、
103
春
(
はる
)
になつて
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
くのだ。
104
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
くから
実
(
み
)
を
結
(
むす
)
ぶのだ。
105
苦労
(
くらう
)
なしに
誠
(
まこと
)
の
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
くと
思
(
おも
)
ふか』
106
野呂公
(
のろこう
)
『オイオイ、
107
喧嘩
(
けんくわ
)
の
宿替
(
やどがへ
)
は
困
(
こま
)
るよ。
108
俺
(
おれ
)
をどうするのだ、
109
俺
(
おれ
)
の
方
(
はう
)
から
解決
(
かいけつ
)
をつけぬかい』
110
音彦
(
おとひこ
)
『
八釜敷
(
やかまし
)
い
言
(
い
)
ふない。
111
暫
(
しばら
)
く
中立
(
ちうりつ
)
を
厳守
(
げんしゆ
)
して
居
(
を
)
れ』
112
野呂公
(
のろこう
)
『
俺
(
おれ
)
等
(
ら
)
の
一部隊
(
いちぶたい
)
は
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
だ、
113
貴様
(
きさま
)
の
一行
(
いつかう
)
は
僅
(
わづか
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
、
114
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
裸
(
はだか
)
にした
所
(
ところ
)
で、
115
帯
(
おび
)
に
短
(
みじか
)
し
襷
(
たすき
)
に
長
(
なが
)
し、
116
エー
仕方
(
しかた
)
がない、
117
今回
(
こんくわい
)
に
限
(
かぎ
)
りて、
118
見逃
(
みのが
)
してやらう。
119
以後
(
いご
)
はキツト
心得
(
こころえ
)
て、
120
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
すがよからう。
121
アハヽヽヽヽ』
122
音彦
(
おとひこ
)
『アハヽヽヽ、
123
洒落
(
しやれ
)
やがるない。
124
こちらが
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を、
125
泥棒
(
どろばう
)
の
方
(
はう
)
から
云
(
い
)
つてゐよるワ』
126
野呂公
(
のろこう
)
『
先
(
さき
)
んずれば
人
(
ひと
)
を
制
(
せい
)
す、
127
貴様
(
きさま
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
が
俺
(
おれ
)
に
憑
(
うつ
)
つて
言
(
い
)
つたのだよ』
128
音彦
(
おとひこ
)
『
合点
(
がてん
)
のいかぬ
代者
(
しろもの
)
だ。
129
一体
(
いつたい
)
全体
(
ぜんたい
)
貴様
(
きさま
)
は
何者
(
なにもの
)
だ』
130
野呂公
(
のろこう
)
『ハテ
執拗
(
しつこい
)
い
奴
(
やつ
)
だナ。
131
のろ
は
のろ
ぢや、
132
貴様
(
きさま
)
のやうな
気楽
(
きらく
)
な
奴
(
やつ
)
、
133
世界
(
せかい
)
を
吾物
(
わがもの
)
の
様
(
やう
)
に
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
る
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
的
(
てき
)
人間
(
にんげん
)
をノロウ
のろ
さんだよ』
134
音彦
(
おとひこ
)
『
何
(
なん
)
だかサツパリ
訳
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
になつて
来
(
き
)
た。
135
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
136
仮
(
か
)
りに
俺
(
おれ
)
を
資本家
(
しほんか
)
として、
137
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
を
労働者
(
らうどうしや
)
とし、
138
労資
(
らうし
)
協調
(
けふてう
)
会議
(
くわいぎ
)
でも、
139
この
原野
(
げんや
)
の
中央
(
まんなか
)
で
開
(
ひら
)
いたらどうだ。
140
原野
(
げんや
)
の
案
(
あん
)
だからキツト
原案
(
げんあん
)
通過
(
つうくわ
)
は
請合
(
うけあひ
)
だ、
141
………アーア
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
能
(
よ
)
うしたものだ、
142
日
(
ひ
)
の
出別
(
でわけ
)
さまや、
143
鷹公
(
たかこう
)
、
144
梅公
(
うめこう
)
、
145
岩公
(
いはこう
)
に
棄
(
す
)
てられたと
思
(
おも
)
へば、
146
また
新
(
あたら
)
しい
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
耄碌
(
まうろく
)
連
(
れん
)
が
殖
(
ふ
)
えて
来
(
き
)
た』
147
野呂公
(
のろこう
)
『アハヽヽヽ、
148
盲
(
めくら
)
ばかりの
宣伝使
(
せんでんし
)
だな、
149
俺
(
おれ
)
の
正体
(
しやうたい
)
が
分
(
わか
)
らぬ
様
(
よ
)
な
事
(
こと
)
では、
150
所詮
(
しよせん
)
駄目
(
だめ
)
だ。
151
醜
(
しこ
)
の
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
での
探険
(
たんけん
)
は、
152
到底
(
たうてい
)
不可能
(
ふかのう
)
ぢやワイ』
153
音彦
(
おとひこ
)
『コラ
野呂公
(
のろこう
)
、
154
何
(
いづ
)
れ
貴様
(
きさま
)
は
普通
(
ひととほり
)
の
奴
(
やつ
)
ぢやない、
155
何
(
なん
)
でも
変
(
かは
)
つた
化物
(
ばけもの
)
だらうが、
156
不幸
(
ふかう
)
にして
岩窟
(
いはや
)
の
探険
(
たんけん
)
を
中止
(
ちうし
)
するの
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ざる、
157
不可抗力
(
ふかかうりよく
)
が
加
(
くは
)
はつたものだから、
158
中途
(
ちうと
)
に
計画
(
けいくわく
)
をガラリと
転覆
(
てんぷく
)
させて
了
(
しま
)
つたのだ。
159
帰
(
かへ
)
つて
土産
(
みやげ
)
がないから、
160
貴様
(
きさま
)
化者
(
ばけもの
)
なら
詳
(
くは
)
しいだらう。
161
どうだ、
162
俺
(
おれ
)
に
限
(
かぎ
)
つて
話
(
はな
)
して
呉
(
く
)
れないか』
163
野呂公
(
のろこう
)
『
話
(
はな
)
すとも
話
(
はな
)
すとも、
164
一体
(
いつたい
)
此処
(
ここ
)
は
何処
(
どこ
)
だと
思
(
おも
)
つてるのだい』
165
音彦
(
おとひこ
)
『
定
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
だい、
166
布留野
(
ふるの
)
ケ
原
(
はら
)
のタカオ
山脈
(
さんみやく
)
の
手前
(
てまへ
)
ぢやないか』
167
野呂公
(
のろこう
)
『サア、
168
それだから
馬鹿
(
ばか
)
だよ、
169
此処
(
ここ
)
はやつぱり、
170
醜
(
しこ
)
の
岩窟
(
いはや
)
の
中心点
(
ちうしんてん
)
だぞ』
171
音公
(
おとこう
)
は
眼
(
め
)
を
擦
(
こす
)
り、
172
能
(
よ
)
く
能
(
よ
)
く
四辺
(
あたり
)
を
見
(
み
)
れば、
173
岩窟
(
がんくつ
)
が
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
に
開展
(
かいてん
)
して
居
(
ゐ
)
る。
174
音彦
(
おとひこ
)
『オイ
亀公
(
かめこう
)
、
175
駒公
(
こまこう
)
、
176
貴様
(
きさま
)
どう
見
(
み
)
える』
177
亀彦
(
かめひこ
)
『さうだなア、
178
何
(
なん
)
だか、
179
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
のやうな
気
(
き
)
もするワイ』
180
駒彦
(
こまひこ
)
『ホンに、
181
睡
(
ね
)
とぼけて
居
(
ゐ
)
たらしい、
182
夢
(
ゆめ
)
ではなからうかナア』
183
野呂公
(
のろこう
)
『
左様
(
さやう
)
なら……』
184
と
云
(
い
)
ふかと
見
(
み
)
れば、
185
野呂公
(
のろこう
)
外
(
ほか
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
姿
(
すがた
)
は
消
(
き
)
えて
巌窟
(
がんくつ
)
は
白煙
(
はくえん
)
に
全然
(
すつかり
)
包
(
つつ
)
まれて
了
(
しま
)
つた。
186
忽
(
たちま
)
ちボーとした
円
(
まる
)
い
光
(
ひかり
)
が
現
(
あら
)
はれた。
187
駒彦
(
こまひこ
)
『ヨー
変
(
へん
)
なものが
顕現
(
けんげん
)
したぞ、
188
用心
(
ようじん
)
せよ。
189
是
(
これ
)
から
先
(
さき
)
に、
190
ドンナ
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
が
続出
(
ぞくしゆつ
)
するか
測定
(
そくてい
)
し
難
(
がた
)
い、
191
先
(
ま
)
づ
身魂
(
みたま
)
の
土台
(
どだい
)
をぐらつかせぬ
様
(
やう
)
に、
192
天
(
あめ
)
の
御柱
(
みはしら
)
を
確乎
(
しつかり
)
立
(
た
)
てて
進
(
すす
)
む
事
(
こと
)
にしようかい』
193
音彦
(
おとひこ
)
『
貴様
(
きさま
)
は
神経
(
しんけい
)
過敏
(
くわびん
)
だから、
194
直
(
ぢき
)
にさう
云
(
い
)
ふ
深案
(
ふかあん
)
じをするのだ、
195
何事
(
なにごと
)
も
惟神
(
かむながら
)
だ、
196
刹那心
(
せつなしん
)
だ。
197
行
(
ゆ
)
く
所
(
ところ
)
まで
行
(
ゆ
)
かねば
分
(
わか
)
るものぢやない。
198
取越
(
とりこし
)
苦労
(
ぐらう
)
は
禁物
(
きんもつ
)
だ』
199
駒彦
(
こまひこ
)
『ヤアヤアあれを
見
(
み
)
よ、
200
何
(
なん
)
だか
彼
(
あ
)
の
玉
(
たま
)
の
中
(
なか
)
には、
201
綺麗
(
きれい
)
な
顔
(
かほ
)
が
見
(
み
)
えるぢやないか、
202
全然
(
まるで
)
木花姫
(
このはなひめ
)
の
様
(
やう
)
な
御
(
ご
)
面相
(
めんさう
)
だぞ』
203
音彦
(
おとひこ
)
『ヨー、
204
本当
(
ほんたう
)
に、
205
容色
(
ようしよく
)
端麗
(
たんれい
)
、
206
桜花
(
あうくわ
)
爛漫
(
らんまん
)
たるが
如
(
ごと
)
しだ。
207
最前
(
さいぜん
)
出現
(
しゆつげん
)
した
野呂公
(
のろこう
)
に
比
(
くら
)
ぶれば
何
(
なん
)
となく
気持
(
きもち
)
が
良
(
い
)
いワ』
208
美女
(
びぢよ
)
の
影
(
かげ
)
は
瞬
(
またた
)
く
間
(
うち
)
に、
209
全身
(
ぜんしん
)
を
露
(
あら
)
はし、
210
手招
(
てまね
)
きし
乍
(
なが
)
ら、
211
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
一瞥
(
いちべつ
)
して、
212
足早
(
あしばや
)
に
何処
(
いづく
)
ともなく
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
く。
213
音彦
(
おとひこ
)
『ヤア、
214
此奴
(
こいつ
)
は
素的
(
すてき
)
だ。
215
白煙
(
はくえん
)
に
包
(
つつ
)
まれて、
216
たうとう
姿
(
すがた
)
を
見失
(
みうしな
)
つたが、
217
吾々
(
われわれ
)
はどうでも
其
(
その
)
踪跡
(
そうせき
)
を
探索
(
たんさく
)
し、
218
モ
一度
(
いちど
)
面会
(
めんくわい
)
して、
219
事
(
こと
)
の
実否
(
じつぴ
)
を
糺
(
ただ
)
したいものだ』
220
亀彦
(
かめひこ
)
『
美人
(
びじん
)
だと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
ると、
221
当
(
あて
)
が
違
(
ちが
)
つて、
222
四
(
よ
)
つ
目
(
め
)
小僧
(
こぞう
)
のお
化
(
ばけ
)
かも
知
(
し
)
れぬぞ。
223
そこになつてから……ヤアやつぱり
是
(
これ
)
は
別嬪
(
べつぴん
)
ではナイスなんて
云
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
で、
224
ガブリとやられてからはどうも
仕方
(
しかた
)
がない。
225
慎重
(
しんちよう
)
の
態度
(
たいど
)
を
以
(
もつ
)
て
漸進
(
ぜんしん
)
的
(
てき
)
に
進
(
すす
)
む
事
(
こと
)
だ。
226
サアサア
足許
(
あしもと
)
に
注意
(
ちうい
)
し、
227
この
処
(
ところ
)
徐行
(
じよかう
)
区域
(
くゐき
)
だ』
228
音彦
(
おとひこ
)
『それでも
吾輩
(
わがはい
)
に
向
(
むか
)
つて
手招
(
てまね
)
きをし、
229
あの
美
(
うつく
)
しい
柳
(
やなぎ
)
の
眉
(
まゆ
)
の
涼
(
すず
)
しき
電波
(
でんぱ
)
を
送
(
おく
)
つた
時
(
とき
)
は、
230
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
電気
(
でんき
)
に
打
(
う
)
たれた
様
(
やう
)
な
恍惚
(
くわうこつ
)
たる
次第
(
しだい
)
なりけりだ。
231
阿片
(
あへん
)
煙草
(
たばこ
)
に
熟酔
(
じゆくすゐ
)
した
時
(
とき
)
の
様
(
やう
)
な
気分
(
きぶん
)
に
襲
(
おそ
)
はれたよ』
232
亀彦
(
かめひこ
)
『
電波
(
でんぱ
)
といふ
事
(
こと
)
があるかい、
233
秋波
(
しうは
)
の
間違
(
まちがひ
)
だらう』
234
音彦
(
おとひこ
)
『
秋波
(
しうは
)
と
云
(
い
)
ふのは、
235
それは
古
(
ふる
)
い
奴
(
やつ
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
236
二十一
(
にじふいつ
)
世紀
(
せいき
)
の
人間
(
にんげん
)
は
気
(
き
)
が
早
(
はや
)
いから、
237
電波
(
でんぱ
)
は
一秒
(
いちべう
)
時間
(
じかん
)
に
地球
(
ちきう
)
を
七回
(
しちくわい
)
半
(
はん
)
すると
云
(
い
)
ふ
速力
(
そくりよく
)
で、
238
以心
(
いしん
)
電心
(
でんしん
)
「ネー
音
(
おと
)
サン」とも
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
はずに
往
(
い
)
つた
時
(
とき
)
の
容子
(
ようす
)
と
云
(
い
)
つたら、
239
有
(
あ
)
つたものぢやない。
240
あの
涼
(
すず
)
しい
眼
(
め
)
をジヤイロコンパスの
様
(
やう
)
にクルクルと
廻
(
まは
)
して、
241
目
(
め
)
は
口程
(
くちほど
)
に
物
(
もの
)
を
言
(
い
)
ひ……とか
云
(
い
)
つて、
242
二十
(
にじつ
)
世紀
(
せいき
)
の
人間
(
にんげん
)
の
様
(
やう
)
に、
243
口
(
くち
)
で
物言
(
ものい
)
ふ
様
(
やう
)
な
古
(
ふる
)
めかしい
事
(
こと
)
はやらない、
244
流石
(
さすが
)
は
文明
(
ぶんめい
)
的
(
てき
)
だ。
245
一
(
いつ
)
分間
(
ぷんかん
)
に
八千
(
はつせん
)
回転
(
くわいてん
)
といふ
恋
(
こひ
)
の
速力
(
そくりよく
)
だから、
246
最
(
もつと
)
も
破天荒
(
はてんくわう
)
のレコード
破
(
やぶ
)
り……アーア
色男
(
いろをとこ
)
になると
煩
(
うる
)
さいものだワイ』
247
駒彦
(
こまひこ
)
『アハヽヽヽ、
248
何
(
なに
)
寝言
(
ねごと
)
を
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ、
249
頭
(
あたま
)
から
冷水
(
ひやみづ
)
でも
被
(
かぶ
)
せてやらうか、
250
チト
春先
(
はるさき
)
でボヤボヤするものだから、
251
逆上
(
ぎやくじやう
)
して
居
(
ゐ
)
よるのだナ』
252
音彦
(
おとひこ
)
『それでも、
253
事実
(
じじつ
)
は
事実
(
じじつ
)
だから、
254
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ぬぢやないか。
255
恋
(
こひ
)
に
苦労
(
くらう
)
した
事
(
こと
)
のない
貴様
(
きさま
)
は、
256
門外漢
(
もんぐわいかん
)
だ、
257
マア
黙
(
だま
)
つて
居
(
ゐ
)
るがよからう。
258
近代
(
きんだい
)
思潮
(
してう
)
に
触
(
ふ
)
れない、
259
旧
(
きう
)
思想
(
しさう
)
人間
(
にんげん
)
に、
260
恋
(
こひ
)
が
語
(
かた
)
れるものかい。
261
恋
(
こひ
)
には
上下
(
じやうげ
)
貧富
(
ひんぷ
)
美醜
(
びしう
)
善悪
(
ぜんあく
)
の
区別
(
くべつ
)
がないものだ、
262
エツヘン』
263
亀彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ、
264
コンナ
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
魔窟
(
まくつ
)
へ
入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
て、
265
ソンナ
能
(
よ
)
い
気
(
き
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つてる
所
(
ところ
)
ぢやあるまいぞ。
266
寸善
(
すんぜん
)
尺魔
(
しやくま
)
だ、
267
何
(
なに
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るか
知
(
し
)
れやしない。
268
チツトたしなんだが
宜
(
よ
)
からう』
269
音彦
(
おとひこ
)
『アー、
270
何
(
なん
)
だか
没分暁漢
(
わからずや
)
ばかりと
旅行
(
りよかう
)
して
居
(
ゐ
)
ると、
271
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
くなつて、
272
頭
(
あたま
)
に
脚気
(
かつけ
)
が
起
(
おこ
)
り、
273
足
(
あし
)
に
血
(
ち
)
の
道
(
みち
)
が
起
(
おこ
)
つて
来
(
き
)
て、
274
足
(
あし
)
は
頭痛
(
づつう
)
がする、
275
頭
(
あたま
)
は
腹痛
(
ふくつう
)
がする、
276
実
(
じつ
)
に
不快
(
ふくわい
)
千万
(
せんばん
)
だ。
277
マアマア
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
酒
(
さけ
)
と
女
(
をんな
)
だ、
278
女
(
をんな
)
の
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つてる
間
(
ま
)
にでも、
279
コンパスが
進
(
すす
)
むのだ。
280
長
(
なが
)
い
道中
(
だうちう
)
に、
281
堅苦
(
かたぐる
)
しい
事
(
こと
)
ばかり
言
(
い
)
つて
居
(
を
)
つて、
282
御用
(
ごよう
)
が
勤
(
つと
)
まるかい』
283
亀彦
(
かめひこ
)
『
苟
(
いやし
)
くも
宣伝使
(
せんでんし
)
たる
者
(
もの
)
は、
284
女
(
をんな
)
だの、
285
酒
(
さけ
)
だのと
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
286
仮
(
か
)
りにも
口
(
くち
)
にすべきものでない、
287
穢
(
けが
)
らはしいワイ。
288
モチツト
真面目
(
まじめ
)
にならないか、
289
世間
(
せけん
)
の
奴
(
やつ
)
に
誤解
(
ごかい
)
される
虞
(
おそれ
)
があるぞ』
290
音彦
(
おとひこ
)
『それは
杞憂
(
きいう
)
だ。
291
寛厳
(
くわんげん
)
宜
(
よろ
)
しきを
得
(
え
)
、
292
伸縮
(
しんしゆく
)
自在
(
じざい
)
、
293
変幻
(
へんげん
)
出没
(
しゆつぼつ
)
極
(
きは
)
まりなくして、
294
始
(
はじ
)
めて
神業
(
しんげふ
)
が
完成
(
くわんせい
)
するのだ。
295
路端
(
みちばた
)
に
涎掛
(
よだれかけ
)
を
何十
(
なんじふ
)
枚
(
まい
)
も
首
(
くび
)
に
掛
(
かけ
)
て
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
な、
296
無情
(
むじやう
)
無血漢
(
むけつかん
)
では、
297
混濁
(
こんだく
)
せる
社会
(
しやくわい
)
の
人心
(
じんしん
)
を
救済
(
きうさい
)
する
事
(
こと
)
は、
298
到底
(
たうてい
)
不可能
(
ふかのう
)
だ。
299
操縦
(
さうじう
)
与奪
(
よだつ
)
其
(
その
)
権
(
けん
)
我
(
われ
)
に
有
(
あ
)
りと
云
(
い
)
ふ
態度
(
たいど
)
を
以
(
もつ
)
て、
300
衆生
(
しゆじやう
)
を
済度
(
さいど
)
するのが、
301
三五教
(
あななひけう
)
の
御
(
ご
)
主意
(
しゆい
)
だ。
302
枯木
(
こぼく
)
寒巌
(
かんがん
)
に
凭
(
よ
)
る、
303
三冬
(
さんとう
)
暖気
(
だんき
)
無
(
な
)
しと
言
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な、
304
偽善
(
ぎぜん
)
的
(
てき
)
頑迷
(
ぐわんめい
)
不霊
(
ふれい
)
の
有苗輩
(
いうべうはい
)
では、
305
どうして
完全
(
くわんぜん
)
に
神業
(
しんげふ
)
が
勤
(
つと
)
まると
思
(
おも
)
ふか。
306
貴様
(
きさま
)
の
堅
(
かた
)
い
亀
(
かめ
)
の
甲
(
かふ
)
をもぎ
取
(
と
)
つて、
307
少
(
すこ
)
しく
軟化
(
なんくわ
)
せなくつては、
308
勤
(
つと
)
まりつこはないぞ。
309
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
の
宣伝
(
せんでん
)
の
様
(
やう
)
な
失敗
(
しつぱい
)
だらけに
終
(
をは
)
らねばなるまい』
310
この
時
(
とき
)
白煙
(
はくえん
)
は
俄
(
にはか
)
に
消散
(
せうさん
)
し、
311
広
(
ひろ
)
き
隧道
(
すゐだう
)
内
(
ない
)
は、
312
又
(
また
)
もや
明
(
あか
)
るくなつて
来
(
き
)
た。
313
音彦
(
おとひこ
)
『ヤア、
314
女
(
をんな
)
ならでは
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
けぬ
国
(
くに
)
、
315
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
も、
316
音
(
おと
)
サンの
言霊
(
ことたま
)
で、
317
サラリと
開
(
ひら
)
いた、
318
開
(
ひら
)
いた
開
(
ひら
)
いた
菜
(
な
)
の
花
(
はな
)
が
開
(
ひら
)
いた、
319
蓮草
(
はす
)
の
花
(
はな
)
も
開
(
ひら
)
いた、
320
天明
(
てんめい
)
開天
(
かいてん
)
だ、
321
アハヽヽヽ』
322
(
大正一一・三・二〇
旧二・二二
松村真澄
録)
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