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霊界物語
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第2巻(丑の巻)
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第6巻(巳の巻)
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第11巻(戌の巻)
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第13巻(子の巻)
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第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
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第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
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第31巻(午の巻)
序歌
総説
第1篇 千状万態
01 主一無適
〔867〕
02 大地震
〔868〕
03 救世神
〔869〕
04 不知恋
〔870〕
05 秋鹿の叫
〔871〕
06 女弟子
〔872〕
第2篇 紅裙隊
07 妻の選挙
〔873〕
08 人獣
〔874〕
09 誤神託
〔875〕
10 噂の影
〔876〕
11 売言買辞
〔877〕
12 冷い親切
〔878〕
13 姉妹教
〔879〕
第3篇 千里万行
14 樹下の宿
〔880〕
15 丸木橋
〔881〕
16 天狂坊
〔882〕
17 新しき女
〔883〕
18 シーズンの流
〔884〕
19 怪原野
〔885〕
20 脱皮婆
〔886〕
21 白毫の光
〔887〕
第4篇 言霊将軍
22 神の試
〔888〕
23 化老爺
〔889〕
24 魔違
〔890〕
25 会合
〔891〕
余白歌
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> 第1篇 千状万態 > 第6章 女弟子
<<< 秋鹿の叫
(B)
(N)
妻の選挙 >>>
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第六章
女
(
おんな
)
弟子
(
でし
)
〔八七二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第31巻 海洋万里 午の巻
篇:
第1篇 千状万態
よみ(新仮名遣い):
せんじょうばんたい
章:
第6章 女弟子
よみ(新仮名遣い):
おんなでし
通し章番号:
872
口述日:
1922(大正11)年08月18日(旧06月26日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-03-12 19:56:20
OBC :
rm3106
愛善世界社版:
61頁
八幡書店版:
第6輯 63頁
修補版:
校定版:
64頁
普及版:
27頁
初版:
ページ備考:
001
此
(
この
)
乱痴気
(
らんちき
)
騒
(
さわ
)
ぎの
最中
(
さいちう
)
に、
002
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
としてモリスは
国依別
(
くによりわけ
)
の
居間
(
ゐま
)
を
尋
(
たづ
)
ね、
003
姿
(
すがた
)
の
見
(
み
)
えざるに、
004
的切
(
てつき
)
り
此奴
(
こいつ
)
は
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
の
居間
(
ゐま
)
に
侵入
(
しんにふ
)
し、
005
脂
(
やに
)
下
(
さが
)
つてゐるに
相違
(
さうゐ
)
ないと、
006
エリナを
伴
(
ともな
)
ひ、
007
足音
(
あしおと
)
高
(
たか
)
く、
008
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
009
ガラリと
襖
(
ふすま
)
を
引
(
ひき
)
あけて、
010
モリス
『
国依別
(
くによりわけ
)
様
(
さま
)
、
011
お
前様
(
まへさま
)
の
女房
(
にようばう
)
がはるばる
尋
(
たづ
)
ねてお
出
(
いで
)
になりましたよ。
012
サアどうぞトツクリとお
楽
(
たの
)
しみなさりませ』
013
国依別
『ヤア、
014
エリナ
殿
(
どの
)
か、
015
あなたのお
母
(
か
)
アさまは
何
(
ど
)
うなりましたか。
016
日々
(
にちにち
)
御
(
お
)
案
(
あん
)
じ
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
りました』
017
エリナ
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
018
とうとう
母
(
はは
)
はあの
大地震
(
だいぢしん
)
に
亡
(
な
)
くなつて
仕舞
(
しまひ
)
ました。
019
今
(
いま
)
は、
020
父
(
ちち
)
は
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
021
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
に
囚
(
とら
)
はれ、
022
たよる
所
(
ところ
)
もなき
女
(
をんな
)
の
一人身
(
ひとりみ
)
、
023
あなた
様
(
さま
)
のお
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
ひ、
024
お
世話
(
せわ
)
に
預
(
あづか
)
りたいと
存
(
ぞん
)
じまして、
025
茲
(
ここ
)
まで
尋
(
たづ
)
ねて
参
(
まゐ
)
りました。
026
どうぞ
先日
(
せんじつ
)
の
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
をお
叱
(
しか
)
りなく、
027
憐
(
あは
)
れな
妾
(
わたくし
)
、
028
何卒
(
どうぞ
)
お
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいませ』
029
モリスはもどかしげに、
030
モリス
『コレコレ、
031
エリナさま、
032
そんな
他人
(
たにん
)
行儀
(
ぎやうぎ
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふに
及
(
およ
)
ばぬぢやありませぬか。
033
お
前
(
まへ
)
さま……ソレ
私
(
わたし
)
の
前
(
まへ
)
で
雄健
(
をたけ
)
びしたように、
034
ここで
一
(
ひと
)
つ
売
(
う
)
り
出
(
だ
)
さぬかいな。
035
ヤツパリ
可愛
(
かあい
)
い
夫
(
をつと
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
るとグニヤグニヤになつて
了
(
しま
)
ふから
仕方
(
しかた
)
がないワ。
036
女
(
をんな
)
と
云
(
い
)
ふ
者
(
もの
)
は
男
(
をとこ
)
にかけたら
弱
(
よわ
)
い
者
(
もの
)
だなア、
037
アハヽヽヽ』
038
秋山別
(
あきやまわけ
)
は
言
(
ことば
)
も
荒
(
あら
)
らかに、
039
秋山別
『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
病気
(
べうき
)
、
040
今
(
いま
)
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
御
(
ご
)
昏倒
(
こんたう
)
遊
(
あそ
)
ばして
御座
(
ござ
)
る
所
(
ところ
)
だ。
041
何
(
なに
)
を
気楽
(
きらく
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つてゐるのだい』
042
モリス
『ヤア
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
が
御
(
ご
)
病気
(
べうき
)
だなア。
043
コリヤ
大変
(
たいへん
)
だ。
044
ドレドレ、
045
モリスが
介抱
(
かいほう
)
をして
進
(
しん
)
ぜよう。
046
癪気
(
しやくき
)
を
起
(
おこ
)
して
御座
(
ござ
)
るのだらう。
047
こんな
所
(
ところ
)
へ
国依別
(
くによりわけ
)
さまの
奥
(
おく
)
さまがやつて
来
(
き
)
たものだから、
048
益々
(
ますます
)
大変
(
たいへん
)
だ。
049
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
も
結句
(
けつく
)
諦
(
あきら
)
めがついてよからう。
050
サア
一
(
ひと
)
つお
腹
(
なか
)
を
取
(
と
)
つてあげませう……
癪
(
しやく
)
に
嬉
(
うれ
)
しい
男
(
をとこ
)
の
力
(
ちから
)
、
051
身
(
み
)
が
粉
(
こな
)
になるまで
抱
(
だ
)
いて
欲
(
ほ
)
しい……とか
何
(
なん
)
とかヘヽヽ
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がある。
052
国依別
(
くによりわけ
)
さまだと
都合
(
つがふ
)
が
好
(
よ
)
いのだが、
053
生憎
(
あひにく
)
奥
(
おく
)
さまの
御
(
ご
)
臨検
(
りんけん
)
だからさうもならず……
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
054
さぞお
心
(
こころ
)
の
揉
(
も
)
める
事
(
こと
)
でせうなア』
055
とニヤリと
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
056
モリス
『コレコレお
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
057
内事司
(
ないじつかさ
)
のモリスで
御座
(
ござ
)
いますよ。
058
サア
気
(
き
)
をしつかりなさいませ』
059
紅井姫
『エヽ
汚
(
けが
)
らはしい!』
060
と
今迄
(
いままで
)
性念
(
しやうねん
)
を
失
(
うしな
)
つて
居
(
ゐ
)
たと
思
(
おも
)
つた
大病人
(
たいべうにん
)
に、
061
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
横腹
(
よこばら
)
あたりを、
062
肱鉄砲
(
ひぢでつぱう
)
で
打
(
う
)
たれ、
063
肋
(
あばら
)
の
三枚目
(
さんまいめ
)
をしたたかやられて『アツ』と
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
いて
倒
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
つた。
064
国依別
(
くによりわけ
)
は
驚
(
おどろ
)
いて、
065
国依別
『コレコレお
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
066
そりや
余
(
あま
)
り
乱暴
(
らんばう
)
ぢやありませぬか?』
067
紅井姫
『
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
068
あなたは
妾
(
わらは
)
を
騙
(
だま
)
しましたねえ。
069
独身
(
どくしん
)
ぢやと
仰有
(
おつしや
)
つたが、
070
現
(
げん
)
に
立派
(
りつぱ
)
な
奥様
(
おくさま
)
が
訪
(
たづ
)
ねて
御座
(
ござ
)
つたぢやありませぬか。
071
エヽ
残念
(
ざんねん
)
ぢや
口惜
(
くちを
)
しい』
072
と
歯切
(
はぎり
)
をかむで
狂
(
くる
)
ひまはる。
073
秋山別
(
あきやまわけ
)
は
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
の
体
(
からだ
)
をグツと
抱
(
かか
)
へ、
074
秋山別
『モシモシ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
075
さう
荒立
(
あらだ
)
ちなさつてはお
体
(
からだ
)
に
障
(
さは
)
ります。
076
どうぞ
気
(
き
)
をお
鎮
(
しづ
)
めなさいませ。
077
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
広
(
ひろ
)
いものです。
078
男
(
をとこ
)
の
数
(
かず
)
も
決
(
けつ
)
して
一人
(
ひとり
)
や
二人
(
ふたり
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いませぬ。
079
そンな
気
(
き
)
の
狭
(
せま
)
い
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るに
及
(
およ
)
びませぬ。
080
あなたに
適当
(
てきたう
)
な
男
(
をとこ
)
が
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
にも
一人
(
ひとり
)
や
半分
(
はんぶん
)
は
居
(
ゐ
)
ますから、
081
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
を
致
(
いた
)
します。
082
どうぞお
鎮
(
しづ
)
まり
下
(
くだ
)
さいませ』
083
紅井姫
『エヽお
前
(
まへ
)
は
秋山別
(
あきやまわけ
)
か、
084
又
(
また
)
しても
又
(
また
)
しても
好
(
す
)
かぬたらしい、
085
震
(
ふる
)
ひが
来
(
く
)
る、
086
退
(
の
)
いてお
呉
(
く
)
れ!』
087
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
088
かよわき
手
(
て
)
に
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
め、
089
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
鼻
(
はな
)
つ
柱
(
ぱしら
)
を
擲
(
なぐ
)
りつける。
090
秋山別
(
あきやまわけ
)
は
不意
(
ふい
)
に
鼻
(
はな
)
つ
柱
(
ぱしら
)
を
打
(
う
)
たれ、
091
目
(
め
)
から
火
(
ひ
)
を
出
(
だ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
092
ヨロヨロヨロとよろめき、
093
モリスの
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
にドスンと
倒
(
たふ
)
れた
機
(
はづ
)
みに
尻
(
しり
)
を
下
(
おろ
)
せば、
094
モリスは
夢中
(
むちう
)
になつて、
095
秋山別
(
あきやまわけ
)
の
睾丸
(
きんたま
)
を
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
握
(
にぎ
)
りしめ、
096
モリス
『コリヤ
国依別
(
くによりわけ
)
、
097
貴様
(
きさま
)
は
女房
(
にようばう
)
のある
身
(
み
)
を
持
(
も
)
ち
乍
(
なが
)
ら、
098
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
規則
(
きそく
)
に
背
(
そむ
)
き、
099
箱入娘
(
はこいりむすめ
)
の
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
を
誑
(
たぶ
)
らかしチヨロまかして、
100
風紀
(
ふうき
)
を
紊
(
みだ
)
す
大罪人
(
だいざいにん
)
、
101
サア
此
(
この
)
玉
(
たま
)
さへ
抜
(
ぬ
)
けば、
102
発情
(
はつじやう
)
は
致
(
いた
)
すまい。
103
モリスが、
104
睾丸
(
きんたま
)
割去術
(
かつきよじゆつ
)
でも
施
(
ほどこ
)
して
去勢
(
きよせい
)
してやらうか』
105
と
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
固
(
かた
)
く
握
(
にぎ
)
りつめる。
106
秋山別
(
あきやまわけ
)
は
真青
(
まつさを
)
になつて『ウーン』と
云
(
い
)
つたきり、
107
ふん
伸
(
の
)
びて
了
(
しま
)
つた。
108
エリナ
姫
(
ひめ
)
は
気
(
き
)
をいらち、
109
エリナ
『モシ
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
110
どうかしてやつて
下
(
くだ
)
さらぬと、
111
息
(
いき
)
が
止
(
と
)
まりは
致
(
いた
)
しませぬか』
112
国依別
(
くによりわけ
)
は、
113
国依別
『さうですなア』
114
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
115
モリスの
手
(
て
)
を
指
(
ゆび
)
一本
(
いつぽん
)
一本
(
いつぽん
)
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れて
放
(
はな
)
させた。
116
秋山別
(
あきやまわけ
)
は
漸
(
やうや
)
くに
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
き、
117
呆
(
とぼ
)
け
面
(
づら
)
してポカンと
口
(
くち
)
をあけて
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
の
顔
(
かほ
)
を
恨
(
うら
)
めしげに
眺
(
なが
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
118
紅井姫
『あのマア
厭
(
いや
)
な
男
(
をとこ
)
、
119
妾
(
わたし
)
の
顔
(
かほ
)
に
何
(
なん
)
ぞ
付
(
つ
)
いて
居
(
を
)
りますか?』
120
秋山別
『ハイ、
121
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
りませぬが、
122
男
(
をとこ
)
の
顔
(
かほ
)
がひつついてますワイ。
123
それもクの
字
(
じ
)
が
一番
(
いちばん
)
ハツキリ
現
(
あら
)
はれ、
124
つぎにアの
字
(
じ
)
が
現
(
あら
)
はれて
居
(
を
)
りますが、
125
クの
字
(
じ
)
は
段々
(
だんだん
)
と
色
(
いろ
)
が
黒
(
くろ
)
くなり、
126
アの
字
(
じ
)
が
赤
(
あか
)
く
花
(
はな
)
の
様
(
やう
)
に
現
(
あら
)
はれかけました。
127
あのクの
字
(
じ
)
の
黒
(
くろ
)
い
事
(
こと
)
わいの』
128
紅井姫
『
又
(
また
)
しても
厭
(
いや
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
だナ。
129
サア
早
(
はや
)
うあちらへお
行
(
ゆ
)
き!
汚
(
けが
)
らはしい、
130
アリーは
居
(
を
)
らぬか、
131
サールは
何処
(
いづこ
)
ぞ、
132
早
(
はや
)
く
箒
(
はうき
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
てお
呉
(
く
)
れ』
133
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
息
(
いき
)
をこらして
控
(
ひか
)
えてゐた
二人
(
ふたり
)
の
侍女
(
じぢよ
)
は、
134
箒
(
はうき
)
と
塵取
(
ちりとり
)
を
持
(
も
)
つて
現
(
あら
)
はれ、
135
跪
(
ひざまづ
)
いて
姫
(
ひめ
)
の
手
(
て
)
に
渡
(
わた
)
せば、
136
姫
(
ひめ
)
は
手早
(
てばや
)
く
其
(
その
)
箒
(
はうき
)
を
取
(
と
)
り、
137
第一
(
だいいち
)
に
秋山別
(
あきやまわけ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
138
紅井姫
『エヽ
煩雑
(
うるさ
)
い
男
(
をとこ
)
奴
(
め
)
』
139
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
狂人
(
きちがひ
)
の
如
(
ごと
)
く
髪
(
かみ
)
ふり
乱
(
みだ
)
し、
140
目
(
め
)
を
釣
(
つ
)
りあげ
所
(
ところ
)
構
(
かま
)
はず
打据
(
うちす
)
ゑたり。
141
モリスは、
142
モリス
『コレコレ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
143
そンな
乱暴
(
らんばう
)
をなさつては
可
(
い
)
けませぬ』
144
と
立
(
たち
)
あがるを、
145
姫
(
ひめ
)
は、
146
紅井姫
『ナニ
此
(
この
)
睾丸
(
きんたま
)
掴
(
つか
)
み』
147
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
148
又
(
また
)
叩
(
たた
)
きつける。
149
二人
(
ふたり
)
は
流石
(
さすが
)
に
手向
(
てむか
)
ひもならず、
150
コソコソとして
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
に
引下
(
ひきさが
)
り
行
(
ゆ
)
く。
151
紅井姫
『お
前
(
まへ
)
さまは
国依別
(
くによりわけ
)
さまの
御
(
ご
)
家内
(
かない
)
でせう。
152
紅井
(
くれなゐ
)
が
永
(
なが
)
らく
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
になりまして、
153
さぞお
待兼
(
まちかね
)
でしたらう。
154
サア
大事
(
だいじ
)
の
婿
(
むこ
)
さまを
伴
(
つ
)
れて、
155
勝手
(
かつて
)
にお
帰
(
かへ
)
りなさいませ』
156
国依別
『これはしたり
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
157
そりや
大変
(
たいへん
)
な
考
(
かんが
)
へ
違
(
ちが
)
ひ、
158
此
(
この
)
方
(
かた
)
はアラシカ
山
(
やま
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
御座
(
ござ
)
るウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
エスと
云
(
い
)
ふ
方
(
かた
)
の
娘
(
むすめ
)
さまで
御座
(
ござ
)
いますよ。
159
フトした
事
(
こと
)
から
途中
(
とちう
)
にお
目
(
め
)
にかかり、
160
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
になりましたもの、
161
独身
(
どくしん
)
主義
(
しゆぎ
)
の
国依別
(
くによりわけ
)
に、
162
女房
(
にようばう
)
があつて
堪
(
たま
)
りますか』
163
紅井姫
『あなたは
世界
(
せかい
)
を
股
(
また
)
にかけて
御
(
お
)
歩
(
ある
)
き
遊
(
あそ
)
ばす
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
164
うち
見
(
み
)
る
島
(
しま
)
の
先々
(
さきざき
)
、
165
掻
(
か
)
き
見
(
み
)
る
磯
(
いそ
)
の
先
(
さき
)
おちず、
166
若草
(
わかぐさ
)
の
妻
(
つま
)
を
至
(
いた
)
る
所
(
ところ
)
にお
持
(
も
)
ち
遊
(
あそ
)
ばし、
167
神生
(
かみう
)
み、
168
御子生
(
みこう
)
みを
遊
(
あそ
)
ばす
丈
(
だけ
)
あつて、
169
随分
(
ずいぶん
)
巧
(
たくみ
)
に
言霊
(
ことたま
)
をお
使
(
つか
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばします。
170
妾
(
わらは
)
も
最早
(
もはや
)
観念
(
かんねん
)
致
(
いた
)
しました。
171
妾
(
わらは
)
の
恋
(
こひ
)
は
真剣
(
しんけん
)
で
御座
(
ござ
)
ります。
172
つまり
九寸
(
くすん
)
五分
(
ごぶ
)
式
(
しき
)
の
猛烈
(
まうれつ
)
な
恋
(
こひ
)
なれば、
173
最早
(
もはや
)
あなたに
見放
(
みはな
)
された
上
(
うへ
)
は、
174
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
生
(
い
)
きて
何
(
なに
)
の
楽
(
たのし
)
みも
御座
(
ござ
)
いませぬ。
175
恋
(
こひ
)
の
病
(
やまひ
)
に
悩
(
なや
)
み
一生
(
いつしやう
)
苦
(
くるし
)
むよりも、
176
一層
(
いつそう
)
此
(
この
)
場
(
ば
)
であなたのお
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
で
自害
(
じがい
)
して
相果
(
あひは
)
てまする。
177
愚
(
おろか
)
な
女
(
をんな
)
と
一口
(
ひとくち
)
にお
笑
(
わら
)
ひ
下
(
くだ
)
さいますれば、
178
それを
冥途
(
めいど
)
の
土産
(
みやげ
)
に
嬉
(
うれ
)
しう
帰幽
(
きいう
)
致
(
いた
)
します』
179
と
隠
(
かく
)
し
持
(
も
)
つたる
短刀
(
たんたう
)
を
閃
(
ひらめ
)
かし、
180
ガハと
喉
(
のど
)
につき
立
(
た
)
てむとするにぞ、
181
国依別
(
くによりわけ
)
は
打
(
う
)
ち
驚
(
おどろ
)
き、
182
直
(
ただち
)
に
飛
(
と
)
びつき、
183
姫
(
ひめ
)
の
手
(
て
)
を
打叩
(
うちたた
)
きし
其
(
その
)
途端
(
とたん
)
に
短刀
(
たんたう
)
はバラリと
前
(
まへ
)
におちぬ。
184
国依別
(
くによりわけ
)
は
手早
(
てばや
)
く
短刀
(
たんたう
)
を
拾
(
ひろ
)
ひあげ、
185
熱涙
(
ねつるゐ
)
を
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら、
186
国依別
『あゝ
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
て
来
(
き
)
たものだワイ。
187
これと
云
(
い
)
ふのも、
188
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
に
女泣
(
をんなな
)
かせや、
189
御家
(
ごけ
)
倒
(
だを
)
し、
190
家潰
(
いへつぶ
)
しを
数限
(
かずかぎ
)
りなくやつて
来
(
き
)
た
其
(
その
)
酬
(
むく
)
ゐだらう……モシモシお
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
191
私
(
わたし
)
は
今
(
いま
)
こそ
斯
(
こ
)
ンな
殊勝
(
しゆしよう
)
らしい
顔
(
かほ
)
をして
宣伝使
(
せんでんし
)
になつて
居
(
を
)
りますが、
192
私
(
わたし
)
の
素性
(
すじやう
)
を
洗
(
あら
)
つたら
如何
(
いか
)
な
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
でも
愛想
(
あいさう
)
をつかされるでせう。
193
随分
(
ずいぶん
)
と
女
(
をんな
)
を
泣
(
な
)
かして
来
(
き
)
た
代物
(
しろもの
)
ですよ。
194
こンな
男
(
をとこ
)
に
心中立
(
しんぢうだて
)
をしたつて
直
(
すぐ
)
に
放
(
ほ
)
かされ、
195
蛸
(
たこ
)
の
揚壺
(
あげつぼ
)
を
喰
(
く
)
はされますよ。
196
どうぞこンな
男
(
をとこ
)
の
事
(
こと
)
は
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
197
紅井姫
『
自分
(
じぶん
)
の
事
(
こと
)
を
自分
(
じぶん
)
で
悪
(
わる
)
く
仰有
(
おつしや
)
る、
198
其
(
その
)
正直
(
しやうぢき
)
なお
心
(
こころ
)
が
妾
(
わらは
)
には
震
(
ふる
)
ひつく
程
(
ほど
)
好
(
すき
)
で
御座
(
ござ
)
います。
199
果
(
はた
)
して
此
(
この
)
エリナ
様
(
さま
)
があなたの
女房
(
にようばう
)
でないのならば、
200
是非
(
ぜひ
)
茲
(
ここ
)
に
御
(
ご
)
逗留
(
とうりう
)
遊
(
あそ
)
ばして、
201
妾
(
わらは
)
に
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
教
(
をしへ
)
を
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さいませ。
202
お
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬ
者
(
もの
)
を
無理
(
むり
)
に
女房
(
にようばう
)
にして
下
(
くだ
)
さいとは
申
(
まを
)
しませぬ。
203
お
側
(
そば
)
においてさへ
頂
(
いただ
)
けば、
204
それで
満足
(
まんぞく
)
致
(
いた
)
しますから……』
205
国依別
『それは
困
(
こま
)
りましたねい。
206
どうしても
私
(
わたし
)
は
急
(
きふ
)
にここを
立
(
た
)
たねばなりませぬから、
207
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のお
側
(
そば
)
において
頂
(
いただ
)
く
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
ませぬ。
208
どうぞ
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
209
紅井姫
『そんなら、
210
あなたのお
弟子
(
でし
)
として、
211
どンな
所
(
ところ
)
でも
厭
(
いと
)
ひませぬからお
伴
(
つ
)
れ
下
(
くだ
)
さいませ。
212
お
願
(
ねがひ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
213
エリナ
『どうぞこのエリナもお
弟子
(
でし
)
として、
214
あなたのお
出
(
い
)
で
遊
(
あそ
)
ばす
所
(
ところ
)
へお
伴
(
つ
)
れ
下
(
くだ
)
さいませ。
215
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに
洗濯
(
せんだく
)
や
針仕事
(
はりしごと
)
は
十分
(
じふぶん
)
致
(
いた
)
しまして、
216
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
が
授
(
さづ
)
かつたら
宣伝
(
せんでん
)
も
致
(
いた
)
します』
217
国依別
『あゝ
仕方
(
しかた
)
がありませぬ。
218
それならお
二人共
(
ふたりとも
)
、
219
一所
(
いつしよ
)
に
参
(
まゐ
)
りませう。
220
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
様
(
さま
)
、
221
貴女
(
あなた
)
は
楓別
(
かへでわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
のお
許
(
ゆる
)
しを
受
(
う
)
けなくてはなりますまい。
222
お
許
(
ゆる
)
しさへあれば、
223
何時
(
いつ
)
でもお
伴
(
とも
)
を
致
(
いた
)
しませう』
224
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
は、
225
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』と
機嫌顔
(
きげんがほ
)
。
226
是
(
これ
)
より
国依別
(
くによりわけ
)
は
楓別
(
かえでわけの
)
命
(
みこと
)
に
暇
(
いとま
)
を
告
(
つ
)
げ、
227
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
228
神館
(
かむやかた
)
を
後
(
あと
)
に
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
229
エス、
230
キジ、
231
マチの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
生命
(
いのち
)
を
救
(
すく
)
ふべく
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
けぬ
中
(
うち
)
より
準備
(
したく
)
為
(
な
)
し、
232
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
指
(
さ
)
して
男女
(
だんぢよ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
233
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