霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第31巻(午の巻)
序歌
総説
第1篇 千状万態
01 主一無適
〔867〕
02 大地震
〔868〕
03 救世神
〔869〕
04 不知恋
〔870〕
05 秋鹿の叫
〔871〕
06 女弟子
〔872〕
第2篇 紅裙隊
07 妻の選挙
〔873〕
08 人獣
〔874〕
09 誤神託
〔875〕
10 噂の影
〔876〕
11 売言買辞
〔877〕
12 冷い親切
〔878〕
13 姉妹教
〔879〕
第3篇 千里万行
14 樹下の宿
〔880〕
15 丸木橋
〔881〕
16 天狂坊
〔882〕
17 新しき女
〔883〕
18 シーズンの流
〔884〕
19 怪原野
〔885〕
20 脱皮婆
〔886〕
21 白毫の光
〔887〕
第4篇 言霊将軍
22 神の試
〔888〕
23 化老爺
〔889〕
24 魔違
〔890〕
25 会合
〔891〕
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスクのお知らせ
霊界物語
>
第31巻
> 第2篇 紅裙隊 > 第10章 噂の影
<<< 誤神託
(B)
(N)
売言買辞 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第一〇章
噂
(
うはさ
)
の
影
(
かげ
)
〔八七六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第31巻 海洋万里 午の巻
篇:
第2篇 紅裙隊
よみ(新仮名遣い):
こうくんたい
章:
第10章 噂の影
よみ(新仮名遣い):
うわさのかげ
通し章番号:
876
口述日:
1922(大正11)年08月19日(旧06月27日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-03-25 19:37:49
OBC :
rm3110
愛善世界社版:
116頁
八幡書店版:
第6輯 84頁
修補版:
校定版:
119頁
普及版:
53頁
初版:
ページ備考:
001
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
002
教
(
をしへ
)
の
館
(
やかた
)
を
開
(
ひら
)
きつつ
003
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なにサボリ
居
(
ゐ
)
る
004
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
のウラル
教
(
けう
)
005
アナン、ユーズを
始
(
はじ
)
めとし
006
ブール
教主
(
けうしゆ
)
の
目
(
め
)
を
忍
(
しの
)
び
007
葡萄酒
(
ぶだうしゆ
)
の
倉
(
くら
)
を
押開
(
おしあ
)
けて
008
盗
(
ぬす
)
み
出
(
だ
)
したる
豊醇
(
ほうじゆん
)
の
009
甘
(
うま
)
しき
酒
(
さけ
)
に
舌
(
した
)
縺
(
もつ
)
れ
010
二人
(
ふたり
)
は
膝
(
ひざ
)
を
附
(
つ
)
き
合
(
あは
)
せ
011
ヒソヒソ
話
(
ばなし
)
に
耽
(
ふけ
)
りゐる。
012
ユーズは
酔
(
よひ
)
の
廻
(
まは
)
つた
口
(
くち
)
から、
013
ユーズ
『オイ、
014
アナン、
015
アラシカ
山
(
やま
)
の
山麓
(
さんろく
)
エリナの
宅
(
うち
)
へ
往
(
い
)
つた
時
(
とき
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
面白
(
おもしろ
)
かつただらうなア。
016
あの
時
(
とき
)
にあゝ
云
(
い
)
ふ
地震
(
ぢしん
)
さへ
無
(
な
)
ければ、
017
貴様
(
きさま
)
は
甘
(
うま
)
くやつて
居
(
ゐ
)
たのだらうにのウ、
018
惜
(
を
)
しい
事
(
こと
)
をしたものではないか』
019
アナン
『そりや
随分
(
ずいぶん
)
面白
(
おもしろ
)
かつたよ。
020
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
流石
(
さすが
)
はエスの
娘
(
むすめ
)
丈
(
だけ
)
あつて、
021
随分
(
ずいぶん
)
売
(
う
)
り
出
(
だ
)
しよつた
時
(
とき
)
にや、
022
流石
(
さすが
)
のアナンも
一寸
(
ちよつと
)
は
驚
(
おどろ
)
かざるを
得
(
え
)
なかつたよ。
023
併
(
しか
)
し
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
大将
(
たいしやう
)
の
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
と
云
(
い
)
つたら、
024
サツパリなつてゐないぢやないか。
025
何
(
なん
)
とかして
機嫌
(
きげん
)
を
取
(
と
)
る
妙案
(
めうあん
)
はなからうかねい。
026
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つても
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
の
様
(
やう
)
にヒルの
都攻
(
みやこぜ
)
めに
失敗
(
しつぱい
)
し、
027
大将
(
たいしやう
)
が
焦
(
こが
)
れて
居
(
を
)
つた、
028
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
を
生捕
(
いけど
)
つて
帰
(
かへ
)
つて
御
(
お
)
目
(
め
)
にかけないものだから、
029
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
が
悪
(
わる
)
いのだよ』
030
ユーズ
『
馬鹿
(
ばか
)
言
(
い
)
へ、
031
教主
(
けうしゆ
)
に
限
(
かぎ
)
つて、
032
そんな
陽気
(
やうき
)
な
心
(
こころ
)
がないのはこのユーズも
知
(
し
)
つてゐるよ。
033
あれ
丈
(
だけ
)
一心
(
いつしん
)
に
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
事
(
こと
)
計
(
ばか
)
りして
御座
(
ござ
)
るのだもの、
034
……お
前
(
まへ
)
はチト
考
(
かんが
)
へ
違
(
ちが
)
ひをしてゐるナ』
035
アナン
『そこが
思案
(
しあん
)
の
外
(
ほか
)
と
云
(
い
)
ふものだ。
036
お
前
(
まへ
)
も
余程
(
よほど
)
お
目出
(
めで
)
たいねい。
037
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
ヒルの
都攻
(
みやこぜ
)
めに、
038
此
(
この
)
方
(
はう
)
アナンを
御
(
お
)
遣
(
つか
)
はしなさつたのは、
039
アナンをして
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
目的
(
もくてき
)
は
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
を
生捕
(
いけどり
)
にして
帰
(
かへ
)
れ……と
云
(
い
)
ふのが
眼目
(
がんもく
)
だからなア』
040
ユーズ
『
教主
(
けうしゆ
)
が
又
(
また
)
如何
(
どう
)
してヒルの
館
(
やかた
)
の
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
を
知
(
し
)
つてゐるのだ、
041
それが
分
(
わか
)
らぬぢやないか。
042
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
は
所謂
(
いはゆる
)
箱入娘
(
はこいりむすめ
)
で、
043
城外
(
じやうぐわい
)
へ
一歩
(
いつぽ
)
も
踏
(
ふ
)
み
出
(
だ
)
した
事
(
こと
)
がないと
云
(
い
)
ふのぢやないか』
044
アナン
『そこが
其処
(
そこ
)
だで……
遠
(
とほ
)
い
様
(
やう
)
でも
近
(
ちか
)
いは
男
(
をとこ
)
と
女
(
をんな
)
とか
言
(
い
)
つてなア。
045
いつの
間
(
ま
)
にかチヤンと
鋭敏
(
えいびん
)
な
教主
(
けうしゆ
)
の
目
(
め
)
には、
046
遠
(
とほ
)
うの
昔
(
むかし
)
に
止
(
と
)
まつてゐるのだ。
047
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は
幹部
(
かんぶ
)
になつてから、
048
まだ
時日
(
じじつ
)
が
経
(
た
)
たないから、
049
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
は
知
(
し
)
らないが
五六
(
ごろく
)
年前
(
ねんぜん
)
の
事
(
こと
)
だつた。
050
ヒルの
都
(
みやこ
)
の
下手
(
しもて
)
から
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
つて、
051
帆
(
ほ
)
を
順風
(
じゆんぷう
)
に
孕
(
はら
)
ませ、
052
ブールの
教主
(
けうしゆ
)
が
此方
(
こちら
)
へ
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
りの
途中
(
とちう
)
、
053
上
(
かみ
)
からスツと
流
(
なが
)
して
来
(
き
)
た
遊山船
(
いうさんぶね
)
の
中
(
なか
)
に、
054
十四五
(
じふしご
)
の
何
(
なん
)
とも
知
(
し
)
れぬ、
055
天女
(
てんによ
)
の
様
(
やう
)
な
娘
(
むすめ
)
が
乗
(
の
)
つてゐるぢやないか。
056
其
(
その
)
時
(
とき
)
にブールの
教主
(
けうしゆ
)
は
其
(
その
)
女
(
をんな
)
に
見
(
み
)
とれて
船端
(
ふなばた
)
を
踏
(
ふ
)
み
外
(
はづ
)
し
川中
(
かはなか
)
に
陥
(
おちい
)
り、
057
大変
(
たいへん
)
危
(
あぶ
)
ない
事
(
こと
)
があつたのだ。
058
このアナンは
其
(
その
)
時
(
とき
)
お
側
(
そば
)
に
居
(
を
)
つたから、
059
能
(
よ
)
く
知
(
し
)
つてゐるのだ。
060
教主
(
けうしゆ
)
は
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
に
川
(
かは
)
の
中
(
なか
)
から
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げられ、
061
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だとも
何
(
なん
)
とも
言
(
い
)
はずに……あの
綺麗
(
きれい
)
な
娘
(
むすめ
)
は、
062
一体
(
いつたい
)
何処
(
どこ
)
の
者
(
もの
)
だ……と
意味
(
いみ
)
ありげに
御
(
お
)
尋
(
たづ
)
ねになつた
其
(
その
)
時
(
とき
)
に、
063
俺
(
おれ
)
は
教主
(
けうしゆ
)
に
向
(
むか
)
つて……あの
女
(
をんな
)
はヒルの
都
(
みやこ
)
の
神館
(
かむやかた
)
紅葉彦
(
もみぢひこの
)
命
(
みこと
)
の
娘
(
むすめ
)
で
御座
(
ござ
)
います……と
云
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
、
064
直
(
ただち
)
にグンニヤリとうな
垂
(
だ
)
れ、
065
それは
実
(
じつ
)
に
失望
(
しつばう
)
落胆
(
らくたん
)
の
体
(
てい
)
だつたよ。
066
其
(
その
)
後
(
ご
)
と
云
(
い
)
ふものは、
067
如何
(
どう
)
したものか、
068
何程
(
なにほど
)
よい
縁
(
えん
)
があつても、
069
教主
(
けうしゆ
)
は
皆
(
みな
)
撥
(
は
)
ねつけて
了
(
しま
)
ひ、
070
元気
(
げんき
)
盛
(
ざか
)
りの
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て、
071
今
(
いま
)
に
独身
(
どくしん
)
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
けて
御座
(
ござ
)
るのも、
072
そこには
一
(
ひと
)
つの
思惑
(
おもわく
)
があつての
事
(
こと
)
だよ。
073
何
(
なん
)
とかしてあの
女
(
をんな
)
を
引張
(
ひつぱり
)
込
(
こ
)
み、
074
教主
(
けうしゆ
)
の
奥
(
おく
)
さまにしたいものだ。
075
さうすれば
何時
(
いつ
)
もニコニコで
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
が
能
(
よ
)
いのだけれど、
076
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
様
(
やう
)
な
六
(
む
)
つかしい
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
せられると、
077
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
本当
(
ほんたう
)
に
堪
(
たま
)
らないワ』
078
ユーズ
『ユーズは
今
(
いま
)
が
初耳
(
はつみみ
)
だよ。
079
そんな
事
(
こと
)
で
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
が
直
(
なほ
)
るのなれば、
080
何
(
なん
)
とか
一
(
ひと
)
つ
献身
(
けんしん
)
的
(
てき
)
活動
(
くわつどう
)
を
続
(
つづ
)
けて、
081
成功
(
せいこう
)
させたいものだなア。
082
そンな
秘密
(
ひみつ
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
つて、
083
何故
(
なぜ
)
今迄
(
いままで
)
智謀
(
ちぼう
)
絶倫
(
ぜつりん
)
のユーズに
知
(
し
)
らさなかつたのだい。
084
どないでもユーズの
利
(
き
)
くユーズさまだから、
085
遠
(
とほ
)
うの
昔
(
むかし
)
に、
086
俺
(
おれ
)
が
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
れば、
087
成功
(
せいこう
)
して
居
(
ゐ
)
るのだがなア』
088
アナン
『ユーズ、
089
お
前
(
まへ
)
は
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
うた
時
(
とき
)
許
(
ばか
)
り、
090
無茶
(
むちや
)
苦茶
(
くちや
)
に
強
(
つよ
)
いが、
091
酔
(
ゑい
)
が
醒
(
さ
)
めると、
092
サツパリ
大水
(
おほみづ
)
が
引
(
ひ
)
いた
跡
(
あと
)
の
様
(
やう
)
に、
093
臆病
(
おくびやう
)
になり、
094
シヨビンとして
縮
(
ちぢ
)
こまつて
居
(
ゐ
)
るのだから、
095
当
(
あて
)
にならないよ』
096
ユーズ
『ナアニ、
097
そんな
事
(
こと
)
に
掛
(
かけ
)
たら、
098
得手
(
えて
)
に
帆
(
ほ
)
のユーズだよ。
099
キツと
成功
(
せいこう
)
させて
見
(
み
)
せる』
100
アナン
『それならお
前
(
まへ
)
、
101
是
(
これ
)
からヒルの
都
(
みやこ
)
へ
乗込
(
のりこ
)
むで、
102
何
(
なん
)
とか
計略
(
けいりやく
)
を
以
(
もつ
)
て
引張
(
ひつぱり
)
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
たら
如何
(
どう
)
だい』
103
ユーズ
『このユーズの
俺
(
おれ
)
にはナ、
104
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
吾
(
わが
)
方寸
(
はうすん
)
にありだ。
105
今日
(
けふ
)
は
前祝
(
まへいはひ
)
として、
106
十分
(
じふぶん
)
にブール
酒
(
ざけ
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
し、
107
いよいよ
明日
(
あす
)
から
活動
(
くわつどう
)
の
幕
(
まく
)
を
切
(
き
)
つておろすから、
108
甘
(
うま
)
く
往
(
い
)
つたら
拍手
(
はくしゆ
)
喝采
(
かつさい
)
を
願
(
ねが
)
ひまーすだ。
109
アツハヽヽヽ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い』
110
アナン
『
併
(
しか
)
しユーズ、
111
お
前
(
まへ
)
、
112
暫
(
しばら
)
くヒルの
都行
(
みやこゆき
)
は
見合
(
みあは
)
して、
113
ここに
居
(
を
)
つて
呉
(
く
)
れねばならない
事
(
こと
)
がある』
114
ユーズ
『ユーズに
見合
(
みあは
)
せとは、
115
そりや
又
(
また
)
如何
(
どう
)
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
だい』
116
アナン
『お
前
(
まへ
)
も
知
(
し
)
つてゐる
通
(
とほ
)
り、
117
国依別
(
くによりわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
使
(
つか
)
はしたキジ、
118
マチの
両人
(
りやうにん
)
、
119
あゝして
何時迄
(
いつまで
)
も
陥穽
(
おとしあな
)
へほり
込
(
こ
)
み、
120
毎日
(
まいにち
)
腐
(
くさ
)
つた
梨
(
なし
)
や
蜜柑
(
みかん
)
の
二
(
ふた
)
つや
三
(
みつ
)
つ
放
(
はう
)
り
込
(
こ
)
みて、
121
生命
(
いのち
)
をつながせ、
122
虐待
(
ぎやくたい
)
して
帰
(
かへ
)
してやらぬものだから、
123
国依別
(
くによりわけ
)
も
今頃
(
いまごろ
)
は
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
へ
遣
(
つか
)
はした
両人
(
りやうにん
)
は
今
(
いま
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
ない、
124
どうして
居
(
ゐ
)
るのだらう。
125
まさかあれ
丈
(
だけ
)
の
熱心
(
ねつしん
)
だから、
126
よもやウラル
教
(
けう
)
に
逆転
(
ぎやくてん
)
してゐるのでもあるまい、
127
大方
(
おほかた
)
陥穽
(
おとしあな
)
へでも
落
(
おと
)
されて
苦
(
くるし
)
みて
居
(
ゐ
)
るに
違
(
ちがひ
)
ない。
128
一
(
ひと
)
つ
実地
(
じつち
)
探険
(
たんけん
)
と
出掛
(
でかけ
)
ようか……などと
云
(
い
)
つて、
129
のしのしとやつて
来
(
き
)
ようものなら、
130
それこそ
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
の
地震
(
ぢしん
)
ぢやないが、
131
此
(
この
)
霊場
(
れいぢやう
)
は
地異
(
ちい
)
天変
(
てんぺん
)
の
大惨事
(
だいさんじ
)
が
突発
(
とつぱつ
)
するのだ。
132
アナンはそれが
第一
(
だいいち
)
気
(
き
)
に
掛
(
かか
)
つてならないのだ。
133
何
(
なん
)
とか
国依別
(
くによりわけ
)
がやつて
来
(
き
)
よつたら、
134
今迄
(
いままで
)
とは
態度
(
たいど
)
を
一変
(
いつぺん
)
し、
135
最善
(
さいぜん
)
の
方法
(
はうはふ
)
を
講
(
かう
)
じて
見
(
み
)
ねばなるまいぞ』
136
ユーズ
『さうだなア、
137
今度
(
こんど
)
はユーズを
利
(
き
)
かし、
138
此方
(
こちら
)
から
極下
(
ごくした
)
に
出
(
で
)
て、
139
御
(
お
)
客
(
きやく
)
さま
扱
(
あつかひ
)
にし、
140
国依別
(
くによりわけ
)
を
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
得心
(
とくしん
)
させ、
141
さうして
都合
(
つがふ
)
好
(
よ
)
くば、
142
ウラル
教
(
けう
)
の
副教主
(
ふくけうしゆ
)
に
推薦
(
すいせん
)
してやつたら、
143
何程
(
なにほど
)
頑固
(
ぐわんこ
)
な
彼奴
(
あいつ
)
だつて、
144
今日
(
こんにち
)
の
普通
(
ふつう
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
から
比
(
くら
)
べて
見
(
み
)
れば、
145
其
(
その
)
地位
(
ちゐ
)
名望
(
めいばう
)
に
於
(
おい
)
て
雲泥
(
うんでい
)
の
相違
(
さうゐ
)
だから、
146
喜
(
よろこ
)
び
応
(
おう
)
ずるに
違
(
ちが
)
ひないワ。
147
ウラル
教
(
けう
)
も
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
様
(
やう
)
に
秋風
(
あきかぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いて、
148
日
(
ひ
)
に
日
(
ひ
)
に
寂寥
(
せきれう
)
の
空気
(
くうき
)
に
包
(
つつ
)
まれて
居
(
ゐ
)
る
際
(
さい
)
だから、
149
敵
(
てき
)
を
以
(
もつ
)
て
敵
(
てき
)
を
制
(
せい
)
する
筆法
(
ひつぱふ
)
で、
150
あゝ
云
(
い
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な
男
(
をとこ
)
を、
151
此方
(
こつち
)
の
味方
(
みかた
)
に
取
(
と
)
り
込
(
こ
)
みたならば、
152
ウラル
教
(
けう
)
も
再
(
ふたた
)
び
勢力
(
せいりよく
)
を
盛返
(
もりかへ
)
し、
153
昔
(
むかし
)
の
様
(
やう
)
に
立派
(
りつぱ
)
な
教団
(
けうだん
)
になるであらうと
思
(
おも
)
ふが、
154
お
前
(
まへ
)
は
如何
(
どう
)
考
(
かんが
)
へるか』
155
アナン
『それもさうだ。
156
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
157
ユーズの
言
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りにさう
甘
(
うま
)
く
着々
(
ちやくちやく
)
と
此
(
この
)
事業
(
じげふ
)
が
進行
(
しんかう
)
するだらうかなア』
158
ユーズ
『
決
(
けつ
)
してアナンどの、
159
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
だよ』
160
と
話
(
はな
)
してゐる
時
(
とき
)
しも、
161
門番
(
もんばん
)
のハル、
162
ナイルの
両人
(
りやうにん
)
慌
(
あはた
)
だしく
駆
(
か
)
け
来
(
きた
)
り、
163
164
ハル
『ハルが
申上
(
まをしあ
)
げます。
165
只今
(
ただいま
)
国依別
(
くによりわけ
)
が
岩戸
(
いはと
)
の
口
(
くち
)
迄
(
まで
)
参
(
まゐ
)
りまして、
166
それはそれは
美
(
うつく
)
しい
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
とかエリナとか
云
(
い
)
つて、
167
二人
(
ふたり
)
の
素的
(
すてき
)
な
女
(
をんな
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
168
早
(
はや
)
く
幹部
(
かんぶ
)
の
誰
(
たれ
)
かに
会
(
あ
)
はして
呉
(
く
)
れよと
云
(
い
)
つて、
169
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
帰
(
かへ
)
りませぬ。
170
如何
(
いかが
)
取計
(
とりはか
)
つたら
宜
(
よろ
)
しう
御座
(
ござ
)
いませうかなア』
171
アナンはハツと
驚
(
おどろ
)
き
乍
(
なが
)
ら、
172
稍
(
やや
)
声
(
こゑ
)
を
震
(
ふる
)
はせて、
173
アナン
『ナヽ
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
す。
174
クヽ
国依別
(
くによりわけ
)
が
来
(
き
)
たと
申
(
まを
)
すか』
175
ユーズ
『
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
、
176
エリナの
両人
(
りやうにん
)
がお
見
(
み
)
えになつたと
云
(
い
)
ふのか。
177
そりや
人違
(
ひとちがひ
)
ではあろまいな。
178
チツトばかり、
179
ユーズも
心配
(
しんぱい
)
だからのウ』
180
ハル
『エヽ
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
してハルの
言葉
(
ことば
)
に
間違
(
まちがひ
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
181
三倉山
(
みくらやま
)
の
谷間
(
たにあひ
)
で
見
(
み
)
た
宣伝使
(
せんでんし
)
です。
182
そして
一人
(
ひとり
)
はエリナに
間違
(
まちがひ
)
御座
(
ござ
)
いませぬ。
183
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
方
(
かた
)
は
是迄
(
これまで
)
に
会
(
あ
)
つた
事
(
こと
)
がないから、
184
真偽
(
しんぎ
)
は
分
(
わか
)
りませぬが、
185
随分
(
ずいぶん
)
綺麗
(
きれい
)
な
女
(
をんな
)
です。
186
此
(
この
)
岩館
(
いはやかた
)
でも
一目
(
ひとめ
)
睨
(
にら
)
みたら、
187
ガチヤガチヤと
砕
(
くだ
)
いて
了
(
しま
)
ひさうな
目付
(
めつき
)
をして
居
(
を
)
りますよ。
188
……ナア、
189
ナイル、
190
随分
(
ずゐぶん
)
別嬪
(
べつぴん
)
だつたなア』
191
ナイル
『
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
、
192
決
(
けつ
)
してナイルの
眼
(
め
)
では
間違
(
まちがひ
)
はなからうと
思
(
おも
)
ひます。
193
何
(
なん
)
とか
返事
(
へんじ
)
をせなくてはなりませぬが、
194
如何
(
どう
)
致
(
いた
)
しませう』
195
との
尋
(
たづ
)
ねにアナンは、
196
アナン
『
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
て、
197
考
(
かんが
)
へがあるから』
198
と
俯
(
うつ
)
むき、
199
ユーズと
共
(
とも
)
に
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み、
200
考
(
かんが
)
へ
込
(
こ
)
むでゐる。
201
其
(
その
)
間
(
ま
)
にハル、
202
ナイルの
両人
(
りやうにん
)
は
逸早
(
いちはや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
り、
203
表口
(
おもてぐち
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
204
国依別
(
くによりわけ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
205
両人
(
りやうにん
)
口
(
くち
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
206
ハル、ナイル
『オイ、
207
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
て、
208
此方
(
こつち
)
にも
考
(
かんが
)
へがあるから……とアナン、
209
ユーズの
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
が
仰
(
あふ
)
せになりましたぞ』
210
国依別
『なに、
211
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
て、
212
こつちに
考
(
かんが
)
へがあるから……とは
怪
(
け
)
しからぬ。
213
よし
其方
(
そつち
)
がさうなら
此方
(
こちら
)
にも
考
(
かんが
)
へがある……サア
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
214
エリナさま、
215
私
(
わたし
)
に
従
(
つ
)
いてお
出
(
い
)
でなさいませ』
216
と
窟内
(
くつない
)
に
踏
(
ふ
)
み
込
(
こ
)
まうとする。
217
ハル、
218
ナイルの
両人
(
りやうにん
)
は
大手
(
おほて
)
を
拡
(
ひろ
)
げて、
219
ハル、ナイル
『マアマア
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
220
タヽ
大変
(
たいへん
)
で
御座
(
ござ
)
います。
221
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
て、
222
此方
(
こつち
)
にも
考
(
かんが
)
へがある……と
二人
(
ふたり
)
の
大将
(
たいしやう
)
が
仰有
(
おつしや
)
つたのだから、
223
さう
勝手
(
かつて
)
に
押入
(
おしい
)
つて
貰
(
もら
)
ひますと、
224
あとで
私
(
わたし
)
が
如何
(
どん
)
な
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はされるかも
分
(
わか
)
りませぬ。
225
一寸
(
ちよつと
)
奥
(
おく
)
から
返事
(
へんじ
)
がある
迄
(
まで
)
、
226
暫
(
しばら
)
く
其処
(
そこ
)
に
休
(
やす
)
みてゐて
下
(
くだ
)
さいませ』
227
国依別
『あゝ
仕方
(
しかた
)
がない、
228
国依別
(
くによりわけ
)
暫
(
しばら
)
く
茲
(
ここ
)
に
休息
(
きうそく
)
がてら
待
(
ま
)
つて
遣
(
つか
)
はす、
229
早
(
はや
)
く
返答
(
へんたふ
)
を
致
(
いた
)
す
様
(
やう
)
に、
230
奥
(
おく
)
へマ
一度
(
いちど
)
伺
(
うかが
)
つて
来
(
こ
)
い』
231
ハル
小声
(
こごゑ
)
で、
232
ハル
『
始
(
はじ
)
めて
来
(
き
)
よつて、
233
偉相
(
えらさう
)
に、
234
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
を
奴扱
(
やつこあつかひ
)
にしよるワイ。
235
えゝ
怪体
(
けたい
)
の
悪
(
わる
)
い……』
236
と
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら、
237
再
(
ふたた
)
びアナン、
238
ユーズの
居間
(
ゐま
)
へ
走
(
はし
)
り
入
(
い
)
つた。
239
二人
(
ふたり
)
は
互
(
たがひ
)
に
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み、
240
差俯
(
さしうつ
)
むいて
途方
(
とはう
)
に
暮
(
く
)
れ
乍
(
なが
)
ら、
241
一寸
(
ちよつと
)
顔
(
かほ
)
をあげて
見
(
み
)
ると、
242
最前
(
さいぜん
)
使
(
つかい
)
に
来
(
き
)
た
両人
(
りやうにん
)
は
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
其処
(
そこ
)
に
居
(
ゐ
)
ないので、
243
アナンは
顔色
(
かほいろ
)
を
変
(
か
)
へて、
244
アナン
『あゝ
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
、
245
どこへ
行
(
ゆ
)
きよつたのかなア。
246
まだ
返事
(
へんじ
)
を
聞
(
き
)
かない
中
(
うち
)
から
飛出
(
とびだ
)
したのではあるまいか。
247
災
(
わざはい
)
は
下
(
しも
)
からと
云
(
い
)
つて、
248
せうもない
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひよると、
249
後
(
あと
)
が
面倒
(
めんだう
)
になつて
纒
(
まと
)
まりがつかなくなる。
250
折角
(
せつかく
)
の
神謀
(
しんぼう
)
鬼策
(
きさく
)
が
駄目
(
だめ
)
になつた
例
(
ため
)
しもある
慣
(
なら
)
ひだ。
251
えゝ
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
だナア』
252
と
両人
(
りやうにん
)
は
顔
(
かほ
)
見合
(
みあは
)
して
呟
(
つぶや
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
253
其処
(
そこ
)
へ
慌
(
あはた
)
だしくハル、
254
ナイルの
両人
(
りやうにん
)
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
255
ハル、ナイル
『
申上
(
まをしあ
)
げます。
256
大変
(
たいへん
)
に
剛情
(
がうじやう
)
な
奴
(
やつ
)
で、
257
無理
(
むり
)
に
押入
(
おしい
)
らうと
致
(
いた
)
しますので、
258
あなたの
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
の
通
(
とほ
)
り……オイ
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
て、
259
此方
(
こつち
)
にも
一
(
ひと
)
つ
考
(
かんが
)
へがあるから……とかましてやりましたら、
260
国依別
(
くによりわけ
)
の
奴
(
やつ
)
……ナニ
猪口才
(
ちよこざい
)
な、
261
そちらに
考
(
かんが
)
へがあれば
此方
(
こちら
)
にも
考
(
かんが
)
へがある……とエラさうな
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つてましたぜ。
262
御
(
ご
)
用心
(
ようじん
)
なさらぬと、
263
あンな
強
(
つよ
)
い
奴
(
やつ
)
が
現
(
あら
)
はれた
以上
(
いじやう
)
は
大変
(
たいへん
)
ですぞ』
264
アナン
『オイ、
265
ハル、
266
ナイルの
両人
(
りやうにん
)
、
267
誰
(
たれ
)
がそンな
事
(
こと
)
を
国依別
(
くによりわけ
)
に
申
(
もう
)
せと
云
(
い
)
つたか、
268
いつ
又
(
また
)
此
(
この
)
方
(
はう
)
が
左様
(
さやう
)
な
言葉
(
ことば
)
を
出
(
だ
)
したか』
269
ハル
『モシ、
270
アナン
様
(
さま
)
、
271
モウ
御
(
お
)
忘
(
わす
)
れになりましたか。
272
あなた
確
(
たしか
)
に……ここにナイルも
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
りましたが、
273
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
て、
274
此方
(
こつち
)
にも
思案
(
かんがへ
)
があるからと
云
(
い
)
つたぢやありませぬか。
275
今更
(
いまさら
)
言
(
い
)
はぬと
仰有
(
おつしや
)
つても、
276
そンな
無理
(
むり
)
は
何程
(
なにほど
)
上役
(
うはやく
)
でも
通
(
とほ
)
りませぬぞや』
277
アナン
『それは
其
(
その
)
方
(
はう
)
に
対
(
たい
)
して、
278
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
て……と
云
(
い
)
つたのだ』
279
ハル
『さうでせう、
280
私
(
わたし
)
に
仰有
(
おつしや
)
つたから、
281
即
(
すなは
)
ち
私
(
わたし
)
があなたの
代理
(
だいり
)
となつて、
282
国依別
(
くによりわけ
)
に
一言
(
ひとこと
)
の
間違
(
まちがひ
)
もない
様
(
やう
)
に
伝
(
つた
)
へたのです。
283
それが
何処
(
どこ
)
が
悪
(
わる
)
う
御座
(
ござ
)
いますか』
284
ユーズ
『あゝ
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
だなア。
285
モウ
斯
(
か
)
うなつちや
仕方
(
しかた
)
がない。
286
……アナンさま、
287
肝玉
(
きもだま
)
を
放
(
はう
)
り
出
(
だ
)
して、
288
あなたとユーズの
二人
(
ふたり
)
が
国依別
(
くによりわけ
)
の
前
(
まへ
)
に
十分
(
じふぶん
)
に
慇懃
(
いんぎん
)
な
詞
(
ことば
)
を
使
(
つか
)
つて、
289
言向和
(
ことむけやは
)
し、
290
怒
(
おこ
)
らさない
様
(
やう
)
にして、
291
甘
(
うま
)
く
行
(
ゆ
)
けばウラル
教
(
けう
)
の
副教主
(
ふくけうしゆ
)
に
祭
(
まつ
)
り
上
(
あ
)
げ、
292
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
は
教主
(
けうしゆ
)
の
奥方
(
おくがた
)
となし、
293
エリナは
私
(
わたし
)
の
奥方
(
おくがた
)
と
決定
(
きめ
)
ておいて、
294
腹帯
(
はらおび
)
を
締
(
し
)
めて
一
(
ひと
)
つ
円滑
(
ゑんくわつ
)
に
舌剣
(
ぜつけん
)
を
揮
(
ふる
)
ふて
見
(
み
)
ようぢやありませぬか。
295
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
の
舌
(
した
)
の
使
(
つか
)
ひやうに
依
(
よ
)
つて、
296
平和
(
へいわ
)
の
女神
(
めがみ
)
ともなり、
297
戦争
(
せんそう
)
の
魔神
(
まがみ
)
ともなるのだから、
298
十分
(
じふぶん
)
に
巧妙
(
かうめう
)
な
辞令
(
じれい
)
を
用
(
もち
)
ゐ、
299
三五教
(
あななひけう
)
ぢやないが
善言
(
ぜんげん
)
美詞
(
びし
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
以
(
もつ
)
て、
300
敵
(
てき
)
を
悦服
(
えつぷく
)
させると
云
(
い
)
ふ
手段
(
しゆだん
)
に
出
(
で
)
ようぢやありませぬか』
301
アナン
『それは
至極
(
しごく
)
妙案
(
めうあん
)
でせう。
302
併
(
しか
)
しそれに
先立
(
さきだ
)
ち、
303
ブールの
教主
(
けうしゆ
)
に
申上
(
まをしあ
)
げておかなくてはなりますまい。
304
あなた
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが、
305
其
(
その
)
任
(
にん
)
に
当
(
あた
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
306
私
(
わたし
)
は
是
(
これ
)
から
表口
(
おもてぐち
)
に
往
(
い
)
て
国依別
(
くによりわけ
)
に
都合
(
つがふ
)
よく
胡麻
(
ごま
)
をすつて
来
(
き
)
ますから……』
307
と
俄
(
にはか
)
に
吾
(
わ
)
れ、
308
俺
(
おれ
)
の
辞
(
ことば
)
を
改
(
あらた
)
め、
309
美
(
うつく
)
しい
言葉
(
ことば
)
を
使
(
つか
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
310
ユーズは
教主
(
けうしゆ
)
の
居間
(
ゐま
)
へ、
311
アナンは
入口
(
いりぐち
)
へと
持場
(
もちば
)
を
定
(
さだ
)
めて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
312
ハル、
313
ナイルの
二人
(
ふたり
)
はアナンの
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
ち、
314
ハル、ナイル
『サアサア
一寸先
(
いつすんさき
)
は
如何
(
どう
)
なる
事
(
こと
)
やら、
315
暗
(
やみ
)
か
月夜
(
つきよ
)
か
鼈
(
すつぽん
)
か、
316
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
て
来
(
き
)
た』
317
と
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら、
318
入口
(
いりぐち
)
指
(
さ
)
して
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
しにける。
319
(
大正一一・八・一九
旧六・二七
松村真澄
録)
320
(昭和九・一二・一七 王仁校正)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 誤神託
(B)
(N)
売言買辞 >>>
霊界物語
>
第31巻
> 第2篇 紅裙隊 > 第10章 噂の影
Tweet
ロシアのプーチン大統領が霊界物語に予言されていた!?<絶賛発売中>
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【10 噂の影|第31巻(午の巻)|霊界物語/rm3110】
合言葉「みろく」を入力して下さい→