霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サブスクのお知らせ
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一四章 樹下(じゆか)宿(やど)〔八八〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第31巻 海洋万里 午の巻 篇:第3篇 千里万行 よみ(新仮名遣い):せんりばんこう
章:第14章 樹下の宿 よみ(新仮名遣い):じゅかのやど 通し章番号:880
口述日:1922(大正11)年08月19日(旧06月27日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
国依別はキジに安彦という名を与え、マチには宗介という名を与えた。道々二人に教えを伝えながら、ブラジル峠を越えて大平原に出た。国依別と安彦は旅の疲れに寝てしまったが、宗介は何となく寝つけず、聞こえてくる猛獣の声に震えていた。
明け方、猛獣の声が聞こえなくなったが、大木の切り株に二人の男が腰を掛けてひそびそ話にふけっているのが耳に入ってきた。宗介が耳を澄ませて聞き入ると、それは秋山別とモリスだった。
秋山別とモリスは国依別が紅井姫とエリナを連れていると思って、執念深く追ってきていたのであった。二人はこの先の丸木橋に仕掛けをして、国依別を落として亡き者にしようと企んでいた。
宗介はこれを聞いて、国依別に先に知らせるよりも、丸木橋のところで自分が天眼通で彼らの企みを見破ったように見せかければ、国依別も自分を見直すだろう、と我知らず独り言が大きくなった。
安彦は宗介の独り言を聞いてしまい、宗介をからかう。しかし国依別は最初からすべて聞いていた。国依別は、宗介の頼みを聞いて、名を宗彦と改めた。
国依別は、秋山別とモリスの企みを逆手に取って、女の声色を使ってまんまと丸木橋をわたって出し抜いてやろうという。一行は再び眠りについて、夜が明けてから進んで行くことになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-04-07 18:03:59 OBC :rm3114
愛善世界社版:165頁 八幡書店版:第6輯 103頁 修補版: 校定版:169頁 普及版:78頁 初版: ページ備考:
001(なみ)(うか)べる高砂(たかさご)
002ヒルとハルとの国依別(くによりわけ)
003(けは)しき(やま)をよぢ(のぼ)
004安彦(やすひこ)宗介(むねすけ)両人(りやうにん)
005(したが)(のぼ)るブラジルの
006(ほそ)谷間(たにま)打渡(うちわた)
007()()についではるばると
008ハルの原野(げんや)打渉(うちわた)
009アマゾン(がは)森林(しんりん)
010(おも)はず()らず(まよ)()
011鷹依姫(たかよりひめ)一行(いつかう)
012高姫(たかひめ)一行(いつかう)(めぐ)()
013モールバンドの怪獣(くわいじう)
014言向(ことむ)(やは)万民(ばんみん)
015さも(おそ)ろしき災禍(わざはい)
016(のぞ)(きよ)めし物語(ものがたり)
017いよいよ(ここ)()()つる。
018 国依別(くによりわけ)はキジに安彦(やすひこ)といふ()(あた)へ、019マチに宗介(むねすけ)()()(あた)へ、020道々(みちみち)三五(あななひ)(をしへ)()(さと)(なが)ら、021(その)(むかし)淤縢山(おどやま)津見(づみの)(かみ)が、022()(はな)咲耶姫(さくやひめ)化身(けしん)なる蚊々虎(かがとら)通過(つうくわ)したる第8巻第15~16章参照023ブラジル(たうげ)山頂(さんちやう)(いき)(やす)め、024それより大原野(だいげんや)()づる(こと)となつた。
025 国依別(くによりわけ)一行(いつかう)はブラジル(たうげ)山麓(さんろく)にて()()らし、026大木(たいぼく)根元(ねもと)夜露(よつゆ)(しの)一夜(いちや)()かす(こと)となりぬ。
027 国依別(くによりわけ)028安彦(やすひこ)他愛(たあい)もなく(たび)(つか)れに、029よく(ねむ)つて()る。030宗介(むねすけ)(なん)となく、031胸騒(むなさわ)ぎがして、032マンジリとも()せず、033二人(ふたり)(あひだ)(はさ)まつて、034(よこ)たはつて()た。035(たちま)(きこ)ゆる猛獣(まうじう)(こゑ)036(しん)()(こん)()ゆる(ばか)り、037(その)(いや)らしさに宗介(むねすけ)は、038戦慄(せんりつ)()()れず、039安彦(やすひこ)(からだ)にしつかり(くら)()き、040()()くるを一刻(いつこく)(はや)かれと(いの)つて()た。
041 夜明(よあけ)間近(まぢか)くなつたと()え、042猛獣(まうじう)(さけ)(ごゑ)何時(いつ)とはなしに()えて(しま)つた。043折柄(をりから)二人(ふたり)(をとこ)044大木(たいぼく)(かぶ)(こし)をかけ、045ヒソビソ(ばなし)(ふけ)つてゐる。046(おな)一本(いつぽん)大木(たいぼく)(いへど)も、047五十丈(ごじふぢやう)(ばか)1丈=約3mとすると50丈=約150mになる(まは)つた(みき)048一方(いつぱう)(はう)には(さん)(にん)他愛(たあい)なく(よこ)たはつて()るのも、049一方(いつぱう)腰打(こしうち)かけてる二人(ふたり)()には()まらうやうもなかつた。
050 どこともなくヒソビソ(ばなし)(みみ)這入(はい)つて()るので宗介(むねすけ)は、051ソツと(そら)をすかし(なが)ら、052(こゑ)する(はう)近寄(ちかよ)つて(みみ)()てて、053一言(ひとこと)()らさじと()いて()る。
054モリス『オイ(あき)……ここまで(さが)しに()たのだが、055モウ駄目(だめ)だぞ。056日暮(ひぐら)(やま)では、057ハル、058ナイルの両人(りやうにん)()ひまくられ、059様子(やうす)()けば国依別(くによりわけ)今朝(けさ)(ほど)()つたと()ひよつたので、060何人(なんにん)()れかと()いて()れば、061(ゆび)三本(さんぼん)()して()やがつた。062的切(てつき)り、063(じるし)とエ(じるし)()れてノホホンで、064宣伝(せんでん)だし天下(てんか)漫遊(まんいう)すると()(かんが)へだ。065(おれ)(をとこ)意地(いぢ)で、066仮令(たとへ)(いのち)がなくなつても、067彼奴(あいつ)(あと)をつけ(ねら)ひ、068国依別(くによりわけ)(すき)(うかが)ひ、069谷底(たにそこ)へでも()(おと)し、070二人(ふたり)のナイスを此方(こちら)のものにせぬことには、071阿呆(あほ)らしうて、072世間(せけん)顔出(かほだ)しも出来(でき)ぬぢやないか。073最早(もはや)行方(ゆくへ)(わか)らぬと()つて(この)(まま)()寝入(ねい)(わけ)にも()かず、074(なん)とか工夫(くふう)はあるまいかなア、075(あき)さま』
076秋山別『モリ(こう)077(まへ)中々(なかなか)執着心(しふちやくしん)(ふか)いねい。078こんな所迄(ところまで)スタスタと(しり)()けて()るのだから、079こンな連中(れんぢう)(ねら)はれた(をんな)こそ、080(へび)魅入(みい)られた(がま)のやうなものだよ。081本当(ほんたう)(おも)へば(おも)(ほど)082二人(ふたり)(をんな)可哀相(かあいさう)になつて()た。083(おれ)もここまで心猿(しんゑん)意馬(いば)(くる)ひに()かされて、084(きた)るは()たものの、085何時(いつ)()にか、086(こころ)(さる)(おも)ひの(うま)も、087どつかへ、088愛想(あいさう)をつかして、089絶望(ぜつばう)(さけ)び、090(かへ)つて(しま)つたやうな気分(きぶん)になつて()た。091モウ仕方(しかた)がない、092(これ)から(あと)引返(ひきかへ)さうぢやないか』
093モリス勝手(かつて)にせい、094(おれ)何処迄(どこまで)もやり()げるのだ。095(をとこ)がのめのめとどの(つら)さげて、096国許(くにもと)(かへ)(こと)出来(でき)ようかい』
097秋山別(しか)何程(なにほど)二人(ふたり)(をんな)懸想(けさう)して()つても、098国依別(くによりわけ)()以上(いじやう)駄目(だめ)ぢやないか。099彼奴(あいつ)如何(どう)かして……』
100()(なが)小声(こごゑ)(なに)(みみ)のはたで(やや)(しば)(ささや)いて()る。101宗介(むねすけ)()うしても(その)(こゑ)(あま)(ひく)いので(きこ)えなかつた。
102モリス『……此処(ここ)(いち)()(ばか)(さき)()くと、103丸木橋(まるきばし)がある。104相当(さうたう)(ふか)谷川(たにがは)で、105そこへ()ちようものなら、106どんな(ふと)(をとこ)でも五体(ごたい)がメチヤメチヤになつて(しま)ふと()(こと)だから、107(いま)(うち)(さき)(まは)つて、108(その)(はし)のつつぱりを()り、109国依別(くによりわけ)一足(ひとあし)(また)げるや(いな)や、110バサツと()ちる(やう)工夫(くふう)をせうぢやないか。111藤蔓(ふぢつる)(なん)かで、112(はし)一方(いつぱう)(くく)つておき、113国依別(くによりわけ)(また)げるや(いな)や、114谷底(たにそこ)(かく)れて()つて、115(その)(つな)()くのだ。116さうすると、117ズヽヽヽズドン、118ウン、119キヤア……とそれつきり、120(あは)れなりける次第(しだい)なりけりだ。121さうせうぢやないか』
122秋山別『それ(ほど)(ほね)()つたつて、123国依別(くによりわけ)(とほ)つた(あと)だつたら、124骨折損(ほねをりぞん)草臥儲(くたびれまう)けになつて(しま)うぢやないか』
125モリス『ナアニ、126大丈夫(だいぢやうぶ)だよ。127半日(はんにち)(くらゐ)(さき)()たと()つても、128(むか)うは足弱(あしよわ)(をんな)()れてるんだし、129此方(こちら)健脚家(けんきやくか)(ばか)りのお(そろひ)だから、130キツと(おれ)(はう)(さき)()つにきまつてる。131彼奴(あいつ)はまだ二三(にさん)()(くらゐ)(あと)(をんな)意茶(いちや)ついて()よるに(ちが)ひない。132サア(はや)()かぬと、133()ひつかれると大変(たいへん)だぞ。134作業(さげふ)()まぬ(うち)()よつたら(なん)にもならぬからなア。135もしも(をんな)(わた)りよつたら、136(だま)つて(わた)してやるのだ。137国依別(くによりわけ)(あし)二歩(ふたあし)三歩(みあし)かけよつたが最後(さいご)()()()ツで引張(ひつぱ)るのだ。138(なん)(あき)さま、139妙案(めうあん)だらう』御校正本・愛世版では「もしも女が渡りよつたら」以降を秋山別のセリフにしているが、それでは会話がおかしくなる。作戦を練っているのがモリスで、それに否定的なのが秋山別である。校定版ではそれを考慮して、区切り位置を「一人の女が」に変えたようである。また「何とモリ公」を「何と秋さま」に変えている。霊界物語ネットでも読者の混乱を避けるため、校定版と同じように修正した。
140秋山別一人(ひとり)(をんな)(さき)()ち、141国依別(くによりわけ)(なか)()ち、142(また)一人(ひとり)(をんな)(あと)にあり、143(いち)()単縦陣(たんじうぢん)(つく)つて(わた)りよつたら、144()うするのだ。145それこそ(あぶ)(はち)()らずの草臥(くたびれ)もうけになつて(しま)うぢやないか』
146モリス『そこは(また)(その)(とき)(かぜ)()くぢやないか。147仮令(たとへ)落込(おちこ)ンだ(ところ)で、148チツと(くらゐ)怪我(けが)をしても、149(さん)(にん)(さん)(にん)(なが)()()づかひはないワ。150そこで国依別(くによりわけ)()をまかす、151()らぬ(かほ)して()つとけばそれで仕舞(しまひ)だ。152二人(ふたり)(をんな)には(みづ)()ませ、153介抱(かいほう)し……コレコレ(たび)()女中(ぢよちう)……とか(なん)とか()つて(たす)けてやる。154さうすれば紅井姫(くれなゐひめ)が、155(おれ)(たち)(いのち)親様(おやさま)()つて、156秋波(しうは)(おく)つてクレナイ(こと)もあるまいぞ。157(げん)国依別(くによりわけ)がラバーされたのも大地震(だいぢしん)(とき)(たす)けてやつたのが原因(げんいん)ぢやからのウ』
158秋山別『それもさうだなア。159サア(はや)()つて準備(じゆんび)()りかからうかい。160グヅグヅして()ると六菖(ろくしやう)十菊(じつきく)161(あと)(まつ)りで、162(なん)にもならないワ。163(いち)164()165(さん)!』
166と、167(ほそ)谷路(たにみち)を、168(あや)しげにすかし(なが)ら、169進ンで()く。
170 宗介(むねすけ)二人(ふたり)()つた(あと)で、
171宗介(なん)だか(おれ)今夜(こんや)(かぎ)つて()られないと(おも)へば、172秋山別(あきやまわけ)173モリスの両人(りやうにん)174あンな(わる)(こと)(たく)ンでゐやがるのだなア。175それも天罰(てんばつ)(おれ)(たち)(きこ)えるやうにすつかり(しやべ)つて()きよつた。176(かみ)(さま)(かれ)()両人(りやうにん)がこンな計画(けいくわく)をして()るからと、177(おれ)(れい)をかけ、178ねかさなかつたのだナ。179(なん)(かみ)(さま)(めぐみ)はどこからどこ(まで)行届(ゆきとど)いたものだ。180(たれ)()るまいと(おも)つて、181(わる)(こと)(たく)むと、182何事(なにごと)(この)(とほ)りだ。183(てん)()()()()れも()る、184宗介(むねすけ)(まで)()ると()ふのだから、185(こわ)いものだなア。186ドレドレ(この)秘密(ひみつ)()()つて手柄話(てがらばなし)国依別(くによりわけ)(さま)報告(はうこく)せうかなア……イヤイヤ()()てさう(はや)()ふと値打(ねうち)がない。187(はし)(つめ)まで()つた(ところ)で、188国依別(くによりわけ)さまが(あし)をかけようとなさつたら……モシ()()ちなさい、189(わたくし)天眼通(てんがんつう)()れば、190(この)(はし)浮橋(うきはし)ですから険呑(けんのん)です。191(あき)192モリの二人(ふたり)(つな)引張(ひつぱ)つて()りますから……と抱止(だきと)めるのだ。193さうすると国依別(くによりわけ)さまも(よろこ)びて、194宗介(むねすけ)()へて(くだ)さつた()(また)195(むかし)()宗彦(むねひこ)さまと()へて(くだ)さるかも()れぬ。196おゝさうだ()はぬが(はな)だ』
197調子(てうし)()つて、198何時(いつ)()にやら、199(たか)(こゑ)(さへづ)つて()る。200安彦(やすひこ)()をさまして、
201安彦『オイ宗介(むねすけ)202貴様(きさま)(うま)(こと)(かんが)へて()よるなア』
203 宗介(むねすけ)小声(こごゑ)になつて、
204宗介『オイ、205(まへ)()いたのか。206大将(たいしやう)内証(ないしよう)だから(その)(つも)りで()つて()れよ』
207 安彦(やすひこ)殊更(ことさら)(おほ)きな(こゑ)で、
208安彦一本橋(いつぽんばし)をどうしたと()ふのだい』
209宗介(やかま)しう()はずに(やす)まぬか。210(あき)211モリの両人(りやうにん)が、212今頃(いまごろ)にや丸木橋(まるきばし)をおとす作業中(さげふちう)だ。213面白(おもしろ)いぢやないか』
214安彦宣伝使(せんでんし)(さま)215あなた御存(ごぞん)じですか』
216国依別(はじめ)からスツカリ()いて()る。217宗彦(むねひこ)()()()へてやらうか』
218宗介『イヤもう有難(ありがた)御座(ござ)います。219どうぞ(よろ)しうお(たの)(まを)します』
220国依別『そんなら、221一段(いちだん)(くらゐ)()げて、222只今(ただいま)から宗彦(むねひこ)()(あた)へる』
223宗彦(宗介)『アヽ(なん)とも()(れい)申様(まをしやう)御座(ござ)いませぬ……オイ安彦(やすひこ)どうだい、224只今(ただいま)から、225(まへ)(おれ)同役(どうやく)だ。226(あま)偉相(えらさう)(おとうと)(あつか)ひには出来(でき)ないぞ』
227安彦(おれ)(ひこ)(もら)つてから三日(みつか)になる。228貴様(きさま)(いま)(もら)つた(ところ)ぢやないか。229双児(ふたご)(うま)れても兄弟(けうだい)区別(くべつ)がつくのだ。230(げん)三日(みつか)(ちが)ひがあるのだから、231ヤツパリ(おとうと)だよ』
232宗彦『エヽ仕方(しかた)がないなア。233ぢやドツと譲歩(じやうほ)して表面(へうめん)だけ(おとうと)になつておかうかい。234(その)(かは)(あに)(あに)(だけ)甲斐性(かひしやう)がなくてはならず、235(おとうと)可愛(かあい)がつて大切(たいせつ)にせねばならぬ責任(せきにん)がある。236(おとうと)(よわ)つて()れば、237()()いてやつて(いた)はり(また)()うてやらなきや、238兄貴(あにき)値打(ねうち)がないからなア』
239国依別『コラコラ(やかま)しう()はずに(やす)まぬか。240まだ夜明(よあけ)にチツと()もある。241ゆつくり(ここ)(やす)ンで、242()()けてからボツボツ()くのだ。243(いづ)彼奴(あいつ)両人(りやうにん)谷底(たにそこ)()(しげ)みに(かく)れて()るに(ちが)ひないから、244(まへ)()両人(りやうにん)(をんな)声色(こはいろ)使(つか)つて()くのだよ。245さうして(さん)(にん)(とも)(うま)く、246(わた)つて(しま)うのだよ』
247宗彦二人(ふたり)(をんな)(さん)(にん)声色(こはいろ)とは、248チツと(へん)ぢや御座(ござ)りませぬか』
249国依別『そこは二人(ふたり)になるのだ。250国依別(くによりわけ)紅井姫(くれなゐひめ)声色(こはいろ)使(つか)ひ、251安彦(やすひこ)(おとうと)宗彦(むねひこ)背中(せなか)()ひ、252さうしてエリナの声色(こはいろ)になつて、253(わた)りさへすれば大丈夫(だいぢやうぶ)だ。254(わた)つて(しま)つてから、255各自(めいめい)(をとこ)(こゑ)大笑(おほわら)ひをし、256ビツクリさしてやるのだ』
257安彦国依別(くによりわけ)さま、258あなたは真面目(まじめ)宣伝使(せんでんし)()ず、259随分(ずいぶん)悪戯(いたづら)()(すき)ですなア。260こんな(をとこ)を、261(わたし)だつて背中(せなか)()うて一本橋(いつぽんばし)(わた)られませうかなア』
262国依別『あの(やう)(わる)(こと)(たく)(やつ)には、263此方(こちら)(ひと)つからかつてやる(くらゐ)()いぢやないか。264まさか(ちが)へば生命(いのち)()られる(ところ)ぢやから……そしてお(まへ)宗彦(むねひこ)背中(せなか)(くく)りつけ、265もしも(あやま)つて()ちた(ところ)で、266国依別(くによりわけ)(おい)ては、267(いた)(こと)もなければ(かゆ)(こと)もないのだ、268アハヽヽヽヽ』
269 安彦(やすひこ)(くび)(かたむ)け、270国依別(くによりわけ)(かほ)見詰(みつ)(なが)ら、
271安彦『ヘーン、272(なん)とマア水臭(みづくさ)()(かた)ですなア』
273宗彦(いづ)れ、274谷川(たにかは)(わた)谷水(たにみづ)(なか)へおちるのだもの。275ちつたア、276水臭(みづくさ)からうかい。277谷底(たにそこ)には(みづ)御霊(みたま)()つて()つて、278はまつた(ところ)で、279()()けて(たす)けて(くだ)さるから大丈夫(だいぢやうぶ)だよ。280そんな取越(とりこし)苦労(くらう)はするものぢやないよ。281あゝ()(どほ)しい(こと)だ。282宣伝使(せんでんし)(さま)モウそろそろ()かけたら如何(どう)でせう』
283国依別(いま)二人(ふたり)()つたばかしぢやないか。284あの(ふか)谷川(たにがは)橋杭(はしくひ)()つたり、285(つる)をつけて()()用意(ようい)するのは、286一時(ひととき)二時(ふたとき)猶予(いうよ)出来(でき)るものぢやない。287(ここ)でゆつくりしてアフンとさしてやる(はう)面白(おもしろ)いぢやないか。288(べつ)半日(はんにち)(くらゐ)(おく)れたつて、289遅刻(ちこく)罰金(ばつきん)()られるのでもなし、290マア(さき)(たのし)ンで、291ゆつくり(やす)ンで()かう』
292()(なが)ら、293大木(たいぼく)()(まくら)()(しま)つた。
294安彦(なん)宣伝使(せんでんし)()ふものは大胆(だいたん)(もの)ぢやないか、295ナア宗彦(むねひこ)296現在(げんざい)(かたき)落橋(らくけう)準備(じゆんび)をやつてゐるのに、297平気(へいき)であの(とほ)り、298(よこ)になるが(はや)いか高鼾(たかいびき)をかいて()(しま)はれた。299(おれ)(たち)はまだ執着心(しふちやくしん)(はな)れぬので、300(いのち)()しくて、301(てき)(まへ)殺人(さつじん)準備(じゆんび)をやつて()ると(おも)へば、302どこともなしに心気(しんき)興奮(こうふん)して()られないがなア』
303宗彦国依別(くによりわけ)さまと安物(やすもの)安彦(やすひこ)(くら)べやうとするから、304そンな疑問(ぎもん)(おこ)るのだよ。305活神(いきがみ)さまと製糞器(せいふんき)とは(おな)(やう)にはいかぬワイ』
306安彦(おれ)製糞器(せいふんき)なら、307(まへ)製糞器(せいふんき)ぢやないか』
308宗彦『お(まへ)製糞器(せいふんき)だよ、309この宗彦(むねひこ)糞造器(ふんざうき)だ。310(おな)意味(いみ)(やう)だが、311そこに一寸(ちよつと)(ちが)(わけ)があるのだ。312アハヽヽヽ』
313(わら)(なが)ら、314大木(たいぼく)周囲(まわり)をクルクルと(めぐ)りつつ夜明(よあけ)()(こと)にした。315(やうや)くにして、316(ひがし)(しら)()し、317百鳥(ももとり)(こゑ)318あたりの森林(しんりん)より、319かしましく(きこ)()たる。320青葉(あをば)(わた)(あした)(かぜ)は、321()()はれぬ涼味(りやうみ)()しげもなく、322(さん)(にん)(むか)つて()きつける。323いよいよ一行(いつかう)(さん)(にん)足仕度(あしじたく)をなし、324(たに)細路(ほそみち)(つた)ひ、325丸木橋(まるきばし)(むか)(すす)()(こと)とはなりにける。
326大正一一・八・一九 旧六・二七 松村真澄録)
目で読むのに疲れたら耳で聴こう!霊界物語の朗読ユーチューブ
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki