霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二四章 魔違(まちがひ)〔八九〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第31巻 海洋万里 午の巻 篇:第4篇 言霊将軍 よみ(新仮名遣い):ことたましょうぐん
章:第24章 魔違 よみ(新仮名遣い):まちがい 通し章番号:890
口述日:1922(大正11)年08月20日(旧06月28日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
秋山別は樹下に一夜を明かした。すると下の方から宣伝歌の声が聞こえてきた。見ればモリスが登ってくる。秋山別は小躍りして喜び、モリスが来るのを待っていた。
しかしこれは、昨晩の怪物がモリスの姿に化けていたものであった。秋山別はモリスと思い込んで再会の喜びを表したが、モリスに化けた怪物は持っていた幣のようなものを打ち振った。
すると、小さな玉のようなものが幾百ともなく落下して爆発し、中から小さな紅井姫が何百も現れて秋山別に取り付き、一斉に恨み言を浴びせながら秋山別を引き倒し、乱暴した。秋山別は苦しさに昏倒してしまった。
怪物はそのさまを見てあざ笑うと、昨晩の言霊のお返しだと言ってどこかへ消えてしまった。秋山別は気がついて、あたりを見回している。そこへ宣伝歌の声が聞こえてきた。今度は本物のモリスであった。
モリスは秋山別を見つけて声をかけ、無事を祝すと、自分が試練にあったことを話し始めた。しかし秋山別は先ほどモリスに化けた怪物になぶられたので、警戒して言霊を発射し続けている。
秋山別があまりモリスを怪物ではないかと疑ってかかるので、モリスは刺激してはいけないとそのまま二人で山頂まで登ることとした。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-04-20 17:46:59 OBC :rm3124
愛善世界社版:272頁 八幡書店版:第6輯 143頁 修補版: 校定版:281頁 普及版:128頁 初版: ページ備考:
001 秋山別(あきやまわけ)(この)樹下(じゆか)一夜(いちや)()かす(をり)しも、002(はるか)(かた)より宣伝歌(せんでんか)(こゑ)(きこ)(きた)るにぞ、003秋山別(あきやまわけ)雀躍(こをどり)し、004(あと)ふり(かへ)()()れば、005モリスは只一人(ただひとり)(なに)()采配様(さいはいやう)(もの)(にぎ)り、006(これ)(うち)ふり(うち)ふり此方(こなた)(むか)つて(すす)(きた)る。007秋山別(あきやまわけ)地獄(ぢごく)(かみ)()ひし心地(ここち)にて、008雀躍(こをどり)しつつ()ちゐたりしが、009近寄(ちかよ)つて(きた)るを、010()()()ればモリスにあらで、011夜前(やぜん)化爺(ばけぢぢ)012(からだ)(すこ)(ちい)さくして、013モリスの声色(こはいろ)使(つか)ひながら(きた)れるなりけり。014されど秋山別(あきやまわけ)はモリスとのみ(ふか)(しん)じて(すこ)しも(うたが)はず、015()びつく(やう)に、
016秋山別『ヤア、017モリスどこへ()つて()つたのだい、018随分(ずいぶん)()()びたよ。019夜前(やぜん)夜前(やぜん)とて、020(この)()(した)()()れば、021それはそれは(いや)らしい化爺(ばけぢぢ)()()よつてナ、022流石(さすが)(おれ)荒肝(あらぎも)(つぶ)したよ。023(しか)(おれ)()つときの言霊(ことたま)発射(はつしや)したのに(おどろ)き、024(ちい)さくなつて()げよつた(とき)愉快(ゆくわい)さと()つたら、025()つたものぢやないワ、026アハヽヽヽ』
027 モリスに()えた(をとこ)
028『そうか、029ソリヤ愉快(ゆくわい)だつたネイ。030イヤ気味(きみ)(わる)かつただらうネ。031(しか)今日(けふ)はお(まへ)一番(いちばん)(こわ)(もの)をドツサリ()つて()てやつたから、032マア昨夜(ゆうべ)返礼(へんれい)だ。033ゆつくり(たのし)むがよからうよ』
034()(なが)ら、035(ぬさ)(やう)(もの)左右左(さいうさ)にプツプツプツと()りまはす。036(ちい)さい(たま)(やう)(もの)が、037幾百(いくひやく)ともなく()つる途端(とたん)に、038(いづ)れも(いち)()爆発(ばくはつ)し、039(なか)から桃太郎(ももたらう)(うま)れた(やう)に、040何百(なんびやく)とも()れぬ紅井姫(くれなゐひめ)(あら)はれて、041秋山別(あきやまわけ)前後(ぜんご)左右(さいう)()りつき、
042『コレコレまうし秋山別(あきやまわけ)さまお(まへ)(つれ)ない(ひと)だよ。043()うマア(わたし)見捨(みす)ててこンな所迄(とこまで)()げて()やしやつたは本当(ほんたう)(にく)らしいワ』
044()つて頬辺(ほほべ)たをピシヤツと(たた)き、045(みみ)(ひつ)かき、046そこら(ぢう)をひねりまはす。047(また)(おな)姿(すがた)(をんな)048秋山別(あきやまわけ)(あし)にしがみつき、
049『お(まへ)本当(ほんたう)(つみ)(ひと)050(わたし)国依別(くによりわけ)さまに、051あれ(だけ)(こひ)して()るのに、052()かぬたらしい、053横恋慕(よこれんぼ)をして、054(いち)()らず()()らずにして(しま)つたぢやないか。055エヽ(こひ)(かたき)ぢや、056秋山別(あきやまわけ)さま!』
057()(なが)ら、058(こぶし)一口(ひとくち)クワツとかぶり()る。059(また)一人(ひとり)(をんな)武者(むしや)()りつき、
060『エヽ残念(ざんねん)々々(ざんねん)061(まへ)(ゆゑ)に、062(わたし)はシーズン(がは)()()げたのだよ。063(かたき)()たずにおくものか!』
064(たぶさ)(つか)み、065無性(むしやう)矢鱈(やたら)(ひき)まはす(その)(いた)さ。066秋山別(あきやまわけ)(こゑ)(かぎ)りに悲鳴(ひめい)をあげ、
067秋山別(いた)(いた)い、068(こら)へてくれ。069モウ是丈(これだけ)(をんな)()めに()うてはやりきれないワ。070(いのち)がなくなる、071どうぞ(たす)けてくれ!』
072()(ごゑ)になつて()ばはつて()る。073数多(あまた)(をんな)(また)もや武者(むしや)ぶりつき、
074(をんな)にかけたら、075(いのち)(なん)にも()らぬと()つたぢやないか。076(まへ)(こころ)()ンだ紅井姫(くれなゐひめ)077サア(いのち)(もら)はう。078(わらは)()にかかつて()ンだら得心(とくしん)でせう。079コレ秋山別(あきやまわけ)さま、080(くろ)色男(いろをとこ)には(うま)れて()ぬものぢやなア。081ホヽヽヽヽ(いた)いか(いた)いか、082チト(いた)いとても辛抱(しんばう)なされ。083可愛(かあい)(をんな)につつかれたり、084()ぶりつかれたり、085(からだ)一面(いちめん)(つね)られるのは、086(をとこ)として天下(てんか)第一(だいいち)光栄(くわうゑい)でせう。087……コレコレ(かふ)(おつ)(へい)(てい)(ぼう)()紅井姫(くれなゐひめ)さま、088()つて(たか)つて(この)(をとこ)(いぢ)めてやらうぢやありませぬか。089あゝ面白(おもしろ)面白(おもしろ)い』
090()(なが)何百(なんびやく)(にん)とも()れぬ(をんな)が、091(かは)(がは)(あたま)(たた)き、092(かみ)をひつたくり、093(はな)()まみ、094(みみ)()つかき、095手足(てあし)にかぢりつく(その)(くる)しさ。096(つひ)秋山別(あきやまわけ)(たま)りかねて、097(その)()昏倒(こんたう)したりける。098モリスに()えた(をとこ)099大口(おほぐち)あけて、
100『アハヽヽヽ、101偉相(えらさう)昨夜(ゆうべ)(おれ)言霊(ことたま)発射(はつしや)し、102(くるし)めよつた(その)返報(へんぱう)がやしぢや。103此奴(こいつ)(なん)にも()(なか)(こわ)いものはないが、104(をんな)一番(いちばん)(こわ)いと(ぬか)しよつたので、105(をんな)仇敵討(かたきうち)をしてやつたのだ。106モウ()うなれば、107(いのち)もあろまい。108ハヽヽヽヽ、109()気味(きみ)だナ。110サア(かへ)らう』
111()ふや(いな)や、112(ふたた)采配(さいはい)(うち)ふれば、113数多(あまた)(をんな)(ゆめ)(ごと)くに()()せ、114怪物(くわいぶつ)(また)何時(いつ)とはなしに(けぶり)(ごと)()えにける。115秋山別(あきやまわけ)はホツと(いき)をつぎ、116馬鹿面(ばかづら)をさらして、117そこらをキヨロキヨロ()まはし()たりしが、118(また)もや宣伝歌(せんでんか)(こゑ)(きこ)()たるにぞ、119秋山別(あきやまわけ)(ふたた)(おどろ)立上(たちあが)り、120よくよく()ればモリスである。121(また)()よつたなア』と()(いか)らし、122臍下(さいか)丹田(たんでん)(いき)をつめ、123双手(もろて)()みモリスに(むか)つて身構(みがま)へなし()たりしが、124樹下(じゆか)近寄(ちかよ)(きた)りしモリスは(この)(さま)()て、
125モリス『ヤア此処(ここ)()つたのかい。126(おれ)やモウ貴様(きさま)何処(どこ)かへ()つて(しま)つたのだと(おも)ひ、127心配(しんぱい)して()たよ。128マア無事(ぶじ)結構(けつこう)だつた。129(しか)(おれ)途中(とちう)(おい)紅井姫(くれなゐひめ)()(ばけ)出会(であ)ひ、130大変(たいへん)()めされて()たよ』
131()くに、132秋山別(あきやまわけ)は、
133秋山別『オツトドツコイ化物(ばけもの)()(その)()()はぬぞ』
134()(なが)ら、135身構(みがまへ)をなし、136両手(もろて)()み、137モリスに(むか)ひ、138『ウーンウーン』と力限(ちからかぎ)りに(うな)()て、139(ひと)(ふた)()()』を一生(いつしやう)懸命(けんめい)繰返(くりかへ)す。140モリスは(なん)(こと)だか合点(がつてん)()かず、
141モリス『オイ秋山別(あきやまわけ)142そら(なん)だイ、143いい加減(かげん)言霊(ことたま)をやめたら如何(どう)だい。144チツとお(まへ)(はな)したい(こと)があるのだから』
145秋山別()かすな()かすな。146言霊(ことたま)をいい加減(かげん)()めと(ぬか)すが、147(これ)()めて(たま)るかい。148益々(ますます)猛烈(まうれつ)発射(はつしや)()てやるぞよ』
149といひ(なが)ら、150(また)もや『(ひと)(ふた)()()』を繰返(くりかへ)した。
151モリス『オイ、152(まへ)()(ちが)うたのぢやないか。153(おれ)(わか)らぬか、154(おれ)はモリスだよ』
155秋山別馬鹿(ばか)にするない。156(また)(をんな)()()して、157(おれ)(せめ)ようと(おも)つたつて、158(その)()にや()らないぞ。159惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)160(ひと)(ふた)()()……』
161(しき)りに(あせ)をたらたら(なが)し、162数歌(かずうた)(とな)へてゐる。163モリスは、
164モリス此奴(こいつ)烈風(れつぷう)にあほられて、165(きも)をつぶし発狂(はつきやう)してゐるのに(ちが)ひない、166(ひと)(みづ)でも(あたま)から、167ぶつ()けてやれば()がつくだろう』
168小声(こごゑ)(ささや)(なが)ら、169秋山別(あきやまわけ)()をグツト(にぎ)り、170無理(むり)矢理(やり)谷川(たにがは)(なが)れの(そば)引張(ひつぱり)()き、171片一方(かたいつぱう)()にて、172頭部(とうぶ)面部(めんぶ)(きら)ひなく、173(しき)りに谷水(たにみづ)をブツ(かけ)るを、174秋山別(あきやまわけ)は、
175秋山別『コリヤ畜生(ちくしやう)176(なに)をしよるのだ。177沢山(たくさん)女責(をんなぜ)めに()はして()いて、178(また)水責(みづぜ)めに(あは)(つも)りか。179ヨシ、180(おれ)にも了見(れうけん)がある。181(いま)返報(へんぱう)がやしをしてやるぞよ。182(おれ)兄弟分(けうだいぶん)のモリスがやがて此処(ここ)へやつて()るから、183()つて()れ、184(かたき)()つてやるワ』
185モリス『オイ秋山別(あきやまわけ)186(しつか)りせぬかい。187(おれ)はモリスだよ。188トツクリと(かほ)()てくれ、189モリスに間違(まちがひ)ないのだから……』
190秋山別(あきやまわけ)(まへ)(くろ)(かほ)をニユツと突出(つきだ)して()せるを、191秋山別(あきやまわけ)はモリスの(かほ)熟視(じゆくし)して、
192秋山別『アハヽヽヽ()()けよつたな。193(まる)でモリスそつくりだ。194夫丈(それだけ)()ける技両(ぎりよう)があれば、195どうだ(ひと)改心(かいしん)して、196(おれ)弟子(でし)になる()はないか』
197モリス(いま)(あらた)めてそんな(こと)()はなくても()いぢやないか。198兄弟(けうだい)同様(どうやう)にしてゐる(なか)だもの。199(まへ)()つて弟子(でし)になれと()ふのなら、200(まへ)()()(まで)なつてやらぬ(こと)はない』
201秋山別『モウ昨夜(ゆうべ)(やう)に、202白髪(はくはつ)老爺(おやぢ)には(ばけ)てくれなよ。203それから、204あれ(だけ)沢山(たくさん)紅井姫(くれなゐひめ)()されると、205(おれ)もお(かど)(ひろ)すぎて、206処置(しよち)(こま)るからなア』
207 モリスは合点(がてん)()かぬ(こと)()(やつ)だと(おも)(なが)ら……チト逆上(ぎやくじやう)して()るのだらう、208(あま)(さか)らつては()くなからう……と(こころ)(なか)(おも)(なが)ら、209よい加減(かげん)にあしらひつつ、210帽子(ぼうし)(だけ)目当(めあ)てに(のぼ)()(こと)とはなりける。
211大正一一・八・二〇 旧六・二八 松村真澄録)
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