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第69巻(申の巻)
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第71巻(戌の巻)
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第77巻(辰の巻)
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第31巻(午の巻)
序歌
総説
第1篇 千状万態
01 主一無適
〔867〕
02 大地震
〔868〕
03 救世神
〔869〕
04 不知恋
〔870〕
05 秋鹿の叫
〔871〕
06 女弟子
〔872〕
第2篇 紅裙隊
07 妻の選挙
〔873〕
08 人獣
〔874〕
09 誤神託
〔875〕
10 噂の影
〔876〕
11 売言買辞
〔877〕
12 冷い親切
〔878〕
13 姉妹教
〔879〕
第3篇 千里万行
14 樹下の宿
〔880〕
15 丸木橋
〔881〕
16 天狂坊
〔882〕
17 新しき女
〔883〕
18 シーズンの流
〔884〕
19 怪原野
〔885〕
20 脱皮婆
〔886〕
21 白毫の光
〔887〕
第4篇 言霊将軍
22 神の試
〔888〕
23 化老爺
〔889〕
24 魔違
〔890〕
25 会合
〔891〕
余白歌
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第七章
妻
(
つま
)
の
選挙
(
せんきよ
)
〔八七三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第31巻 海洋万里 午の巻
篇:
第2篇 紅裙隊
よみ(新仮名遣い):
こうくんたい
章:
第7章 妻の選挙
よみ(新仮名遣い):
つまのせんきょ
通し章番号:
873
口述日:
1922(大正11)年08月18日(旧06月26日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-03-13 20:01:01
OBC :
rm3107
愛善世界社版:
73頁
八幡書店版:
第6輯 68頁
修補版:
校定版:
75頁
普及版:
33頁
初版:
ページ備考:
001
ヒルの
館
(
やかた
)
にゆくりなく
002
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
りて
諸人
(
もろびと
)
を
003
救
(
すく
)
ひ
助
(
たす
)
けし
国依別
(
くによりわけ
)
は
004
楓別
(
かへでのわけの
)
の
懇篤
(
こんとく
)
なる
005
特別
(
とくべつ
)
待遇
(
たいぐう
)
に
思
(
おも
)
はずも
006
あらぬ
月日
(
つきひ
)
を
送
(
おく
)
りつつ
007
醜
(
しこ
)
の
魔風
(
まかぜ
)
に
襲
(
おそ
)
はれて
008
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
の
執拗
(
しつえう
)
なる
009
恋
(
こひ
)
の
情
(
なさけ
)
の
手
(
て
)
に
囚
(
とら
)
へられ
010
進退
(
しんたい
)
ここに
谷
(
きは
)
まりて
011
苦
(
くるし
)
み
悶
(
もだ
)
ゆる
折柄
(
をりから
)
に
012
アラシカ
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
なる
013
エリナの
尋
(
たづ
)
ね
来
(
きた
)
りしゆ
014
ヤツサモツサの
騒動
(
さうだう
)
も
015
漸
(
やうや
)
く
幕
(
まく
)
を
切上
(
きりあ
)
げて
016
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
やエリナをば
017
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
の
弟子
(
でし
)
となし
018
館
(
やかた
)
の
主
(
あるじ
)
に
慇懃
(
いんぎん
)
に
019
暇
(
いとま
)
を
告
(
つ
)
げて
宣伝歌
(
せんでんか
)
020
歌
(
うた
)
ひて
此処
(
ここ
)
を
立出
(
たちい
)
づる
021
一男
(
いちなん
)
二女
(
にぢよ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
022
ヒルの
都
(
みやこ
)
の
人々
(
ひとびと
)
に
023
行手
(
ゆくて
)
を
塞
(
ふさ
)
がれ
一々
(
いちいち
)
に
024
病
(
や
)
めるを
癒
(
い
)
やし
助
(
たす
)
けつつ
025
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずに
日
(
ひ
)
を
重
(
かさ
)
ね
026
ヒルの
都
(
みやこ
)
を
後
(
あと
)
にして
027
アラシカ
峠
(
たうげ
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
028
心
(
こころ
)
欣々
(
いそいそ
)
着
(
つ
)
きにける。
029
国依別
『サア
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
030
あなたは
始
(
はじ
)
めての
御
(
ご
)
旅行
(
りよかう
)
と
云
(
い
)
ひ、
031
是
(
これ
)
から
先
(
さき
)
は
大変
(
たいへん
)
な
急坂
(
きふはん
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
032
ボツボツとお
登
(
のぼ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
033
国依別
(
くによりわけ
)
もお
附合
(
つきあひ
)
にゆるゆる
登
(
のぼ
)
りませう。
034
男
(
をとこ
)
の
足
(
あし
)
が
先
(
さき
)
へ
行
(
ゆ
)
くと、
035
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずに
早
(
はや
)
くなるものですから、
036
ここは
最
(
もつと
)
も
足
(
あし
)
の
弱
(
よわ
)
い
貴女
(
あなた
)
が
先
(
さき
)
へお
登
(
のぼ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
037
紅井姫
『
足弱
(
あしよわ
)
を
御
(
お
)
連
(
つ
)
れ
下
(
くだ
)
さいまして、
038
さぞ
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
039
あなたの
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
に
甘
(
あま
)
え、
040
駄々
(
だだ
)
を
捏
(
こ
)
ねる
女
(
をんな
)
と
御
(
お
)
さげすみで
御座
(
ござ
)
いませうが、
041
私
(
わたし
)
も
斯
(
こ
)
うなつた
以上
(
いじやう
)
は、
042
決
(
けつ
)
して
妙
(
めう
)
な
考
(
かんが
)
へは
起
(
おこ
)
しませぬから、
043
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ』
044
国依別
『
此
(
この
)
坂
(
さか
)
をズツと
登
(
のぼ
)
りつめると、
045
樟
(
くす
)
の
大木
(
たいぼく
)
の
森
(
もり
)
があつて、
046
そこには
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
の
古
(
ふる
)
ぼけた
祠
(
ほこら
)
が
建
(
た
)
つてゐます。
047
どうかそこ
迄
(
まで
)
登
(
のぼ
)
つて
休息
(
きうそく
)
をする
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
しませう』
048
エリナは
言葉
(
ことば
)
やさしく、
049
エリナ
『
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
050
随分
(
ずいぶん
)
険
(
けは
)
しい
坂道
(
さかみち
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
051
私
(
わたし
)
は
何時
(
いつ
)
もここを
通
(
とほ
)
り
慣
(
な
)
れて
居
(
を
)
りますから、
052
左程
(
さほど
)
苦痛
(
くつう
)
には
存
(
ぞん
)
じませぬ。
053
坂
(
さか
)
でさぞ
御
(
お
)
困
(
こま
)
りでせう。
054
後
(
あと
)
からお
腰
(
こし
)
を
押
(
お
)
してあげますから、
055
後
(
うしろ
)
へもたれる
様
(
やう
)
にして
御
(
お
)
登
(
のぼ
)
りなされませ』
056
紅井姫
『ハイ、
057
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
058
今
(
いま
)
の
処
(
ところ
)
ではどうなり
登
(
のぼ
)
れ
相
(
さう
)
に
御座
(
ござ
)
いますから、
059
到底
(
たうてい
)
叶
(
かな
)
はない
様
(
やう
)
になりましたら、
060
どうぞ
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
をお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します』
061
エリナは
気軽相
(
きがるさう
)
に、
062
エリナ
『ハイ、
063
何時
(
いつ
)
でも
押
(
お
)
して
上
(
あ
)
げます。
064
キツと
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますなや』
065
と
路々
(
みちみち
)
いたはり
乍
(
なが
)
ら
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
066
話
(
はなし
)
変
(
かは
)
つて、
067
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
の
祠
(
ほこら
)
の
建
(
た
)
つた
樟
(
くす
)
の
大木
(
たいぼく
)
の
根
(
ね
)
に、
068
ヒソヒソ
話
(
ばなし
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
あり。
069
甲(秋山別)
『オイ、
070
モリス、
071
馬鹿
(
ばか
)
にしよつたぢやないか。
072
今
(
いま
)
となればお
前
(
まへ
)
も
俺
(
おれ
)
も、
073
同病
(
どうびやう
)
相憐
(
あひあは
)
れむ
連中
(
れんちう
)
だから、
074
別
(
べつ
)
に
内訌
(
ないこう
)
の
起
(
おこ
)
る
筈
(
はず
)
もなし、
075
暗中
(
あんちう
)
飛躍
(
ひやく
)
を
試
(
こころ
)
みる
必要
(
ひつえう
)
もなくなつたのだから、
076
どうかして
無念
(
むねん
)
晴
(
ば
)
らしに、
077
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
を
此方
(
こつち
)
の
者
(
もの
)
にしてやらうぢやないか。
078
アタ
阿呆
(
あほ
)
らしい、
079
国依別
(
くによりわけ
)
の
奴
(
やつ
)
が
来
(
き
)
よつた
計
(
ばか
)
りで、
080
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
は
免
(
めん
)
の
字
(
じ
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
し、
081
今
(
いま
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
野良犬
(
のらいぬ
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
だ。
082
犬
(
いぬ
)
も
歩
(
ある
)
けば
棒
(
ぼう
)
に
当
(
あた
)
るといふ
事
(
こと
)
がある。
083
一
(
ひと
)
つ
雪隠
(
せつちん
)
の
火事
(
くわじ
)
ぢやないが
焼糞
(
やけくそ
)
で、
084
ウラル
教
(
けう
)
の
本山
(
ほんざん
)
へでも、
085
甘
(
うま
)
く
這入
(
はい
)
り
込
(
こ
)
み
使
(
つか
)
つて
貰
(
もら
)
はふぢやないか』
086
モリス
『さうだ、
087
貴様
(
きさま
)
も
恋
(
こひ
)
の
仇敵
(
かたき
)
の
国依別
(
くによりわけ
)
に
肝腎
(
かんじん
)
の
目的物
(
もくてきぶつ
)
をぼつたくられ、
088
国依別
(
くによりわけ
)
の
奴
(
やつ
)
、
089
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
を
両手
(
りやうて
)
に
花
(
はな
)
と
云
(
い
)
ふやうな
調子
(
てうし
)
で、
090
大
(
おほ
)
きな
面
(
つら
)
をして
連
(
つ
)
れ
出
(
だ
)
しよつた
時
(
とき
)
のムカついた
事
(
こと
)
、
091
是
(
これ
)
が
何
(
ど
)
うして
睾丸
(
きんたま
)
をさげとる
男子
(
だんし
)
として、
092
看過
(
かんくわ
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ようかい。
093
彼奴
(
きやつ
)
等
(
ら
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
道々
(
みちみち
)
宣伝
(
せんでん
)
し
乍
(
なが
)
らやつて
来
(
く
)
るのだから、
094
何
(
いづ
)
れ
暇
(
ひま
)
が
要
(
い
)
るに
違
(
ちがひ
)
ない。
095
併
(
しか
)
し
此処
(
ここ
)
へやつて
来
(
き
)
よつた
位
(
くらゐ
)
なら、
096
此
(
この
)
谷底
(
たにそこ
)
へ
国依別
(
くによりわけ
)
を
矢庭
(
やには
)
につき
落
(
おと
)
し、
097
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
を
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
要求
(
えうきう
)
に
応
(
おう
)
じさせ、
098
天下
(
てんか
)
の
色男
(
いろをとこ
)
は
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りだと
云
(
い
)
つて、
099
あンな
絶世
(
ぜつせい
)
のナイスやシヤンと
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
いて、
100
天下
(
てんか
)
の
大道
(
だいだう
)
を
濶歩
(
くわつぽ
)
したら、
101
どうだ。
102
さうなりとせなくては、
103
腹
(
はら
)
の
虫
(
むし
)
が
得心
(
とくしん
)
せぬぢやないか。
104
併
(
しか
)
し
後
(
あと
)
の
喧嘩
(
けんくわ
)
を
先
(
さき
)
にせいと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がある、
105
甘
(
うま
)
く
目的
(
もくてき
)
を
達
(
たつ
)
した
上
(
うへ
)
で、
106
自分
(
じぶん
)
の
女房
(
にようばう
)
に
選定
(
せんてい
)
する
段
(
だん
)
になつてから、
107
選挙
(
せんきよ
)
競争
(
きやうそう
)
でも
起
(
おこ
)
ると
大変
(
たいへん
)
だから、
108
今
(
いま
)
の
中
(
うち
)
に
予選
(
よせん
)
でもやつて
置
(
お
)
かうぢやないか』
109
秋山別
『
予選
(
よせん
)
なンか
俺
(
おれ
)
は
ヨセン
わい、
110
俺
(
おれ
)
は
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
を
女房
(
にようばう
)
にする
特権
(
とくけん
)
が
先天
(
せんてん
)
的
(
てき
)
に
具備
(
ぐび
)
してるのだ。
111
貴様
(
きさま
)
はエリナを
女房
(
にようばう
)
にすれば
良
(
い
)
いよ。
112
彼奴
(
あいつ
)
だつて
満更
(
まんざら
)
捨
(
す
)
てたものぢやないからなア。
113
チツとばかし
日
(
ひ
)
に
焼
(
や
)
けとると
云
(
い
)
ふが、
114
欠点
(
けつてん
)
位
(
くらゐ
)
なものだ。
115
中々
(
なかなか
)
スタイルには
甲乙
(
かふおつ
)
はないからのう、
116
モリス』
117
モリス
『そんならお
前
(
まへ
)
がエリナのレコになつたら
良
(
い
)
いぢやないか。
118
俺
(
おれ
)
はどこ
迄
(
まで
)
も
初心
(
しよしん
)
を
貫徹
(
くわんてつ
)
せなくてはならないのだ。
119
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
を
女房
(
にようばう
)
にせうと
思
(
おも
)
つて、
120
どれ
丈
(
だけ
)
今迄
(
いままで
)
骨
(
ほね
)
を
折
(
を
)
つたか
知
(
し
)
れやしない。
121
永
(
なが
)
らくの
苦心
(
くしん
)
を
水泡
(
すゐほう
)
に
帰
(
き
)
するのは、
122
男子
(
だんし
)
として
忍
(
しの
)
ぶ
可
(
べか
)
らざる
恥辱
(
ちじよく
)
だからなア、
123
秋公
(
あきこう
)
』
124
秋山別
『
俺
(
おれ
)
だつて
貴様
(
きさま
)
以上
(
いじやう
)
に
骨
(
ほね
)
を
折
(
お
)
つたのだよ。
125
そんなお
添物
(
そへもの
)
のエリナを
鼻塞
(
はなふさ
)
ぎか
何
(
な
)
ンぞの
様
(
やう
)
に
差向
(
さしむ
)
けられてたまるものかい。
126
貴様
(
きさま
)
のスタイルにエリナの
方
(
はう
)
が
能
(
よ
)
く
合
(
あ
)
つてゐるワ。
127
烏
(
からす
)
の
夫
(
をつと
)
に
孔雀
(
くじやく
)
の
女房
(
にようばう
)
とは、
128
チツと
無理
(
むり
)
だよ。
129
孔雀
(
くじやく
)
は
孔雀
(
くじやく
)
同志
(
どうし
)
夫婦
(
ふうふ
)
になり、
130
烏
(
からす
)
は
烏
(
からす
)
同志
(
どうし
)
夫婦
(
ふうふ
)
になれば、
131
それこそ
家庭
(
かてい
)
円満
(
ゑんまん
)
福徳
(
ふくとく
)
成就
(
じやうじゆ
)
疑
(
うたが
)
ひなしだ。
132
孔雀
(
くじやく
)
の
俺
(
おれ
)
は
孔雀
(
くじやく
)
の
女房
(
にようばう
)
を
持
(
も
)
つて、
133
孔雀
(
くじやく
)
(
不惜
(
ふじやく
)
)
身命
(
しんめい
)
的
(
てき
)
神界
(
しんかい
)
の
為
(
ため
)
活動
(
くわつどう
)
をするなり、
134
お
前
(
まへ
)
はモリスだから、
135
森
(
もり
)
に
巣
(
す
)
を
作
(
つく
)
るのは
烏
(
からす
)
にきまつてゐる。
136
烏
(
からす
)
の
女房
(
にようばう
)
を
持
(
も
)
つて、
137
オイオイ カカア
嬶村屋
(
かかむらや
)
、
138
腰
(
こし
)
もめ
肩
(
かた
)
打
(
う
)
て、
139
カアカアと
気楽相
(
きらくさう
)
に
簡易
(
かんい
)
生活
(
せいくわつ
)
をやるのも
一寸
(
ちよつと
)
乙
(
おつ
)
だぜ。
140
楽
(
たのし
)
さは
夕顔棚
(
ゆふがほだな
)
の
下涼
(
したすず
)
み
141
とか
云
(
い
)
つて、
142
平民
(
へいみん
)
生活
(
せいくわつ
)
が
最
(
もつと
)
も
理想
(
りさう
)
的
(
てき
)
だ。
143
提灯
(
ちやうちん
)
に
釣鐘
(
つりがね
)
、
144
釣合
(
つりあ
)
はぬやうな
女房
(
にようばう
)
を
持
(
も
)
つたつて、
145
苦
(
くる
)
しい
計
(
ばつか
)
りだよ。
146
第一
(
だいいち
)
教育
(
けういく
)
の
程度
(
ていど
)
と
云
(
い
)
ひ、
147
智識
(
ちしき
)
と
云
(
い
)
ひ、
148
家柄
(
いへがら
)
と
云
(
い
)
ひ、
149
雲泥
(
うんでい
)
の
懸隔
(
けんかく
)
ある
女房
(
にようばう
)
を
持
(
も
)
たうとするのが
第一
(
だいいち
)
謬
(
あやま
)
つた
了見
(
れうけん
)
だ。
150
さうでなくても、
151
男女
(
だんぢよ
)
同権
(
どうけん
)
だとか、
152
女権
(
ぢよけん
)
拡張
(
くわくちやう
)
だとか、
153
新
(
あたら
)
しい
女
(
をんな
)
の
騒
(
さわ
)
ぐ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だから、
154
釣合
(
つりあ
)
うた
女
(
をんな
)
を
持
(
も
)
つが
貴様
(
きさま
)
の
将来
(
しやうらい
)
の
為
(
ため
)
だよ。
155
俺
(
おれ
)
は
親密
(
しんみつ
)
な
友人
(
いうじん
)
として、
156
貴様
(
きさま
)
の
将来
(
しやうらい
)
の
為
(
ため
)
に、
157
熱涙
(
ねつるい
)
を
呑
(
の
)
むで
忠告
(
ちうこく
)
するのだよ、
158
モリ
公
(
こう
)
』
159
モリス
『ヘン、
160
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
仰有
(
おつしや
)
りますワイ。
161
其
(
その
)
手
(
て
)
は
桑名
(
くはな
)
の
焼蛤
(
やきはまぐり
)
だ。
162
蛤
(
はまぐり
)
からでも
蜃気楼
(
しんきろう
)
が
立上
(
たちあが
)
りますよ。
163
お
前
(
まへ
)
こそ
蜃気楼
(
しんきろう
)
的
(
てき
)
空想
(
くうさう
)
を
画
(
えが
)
いて、
164
あンな
高尚
(
かうしやう
)
な
御
(
お
)
姫
(
ひめ
)
さまを
自分
(
じぶん
)
の
女房
(
にようばう
)
にせうなンて、
165
余
(
あま
)
り
懸隔
(
けんかく
)
が
取
(
と
)
れなさ
過
(
す
)
ぎるぢやないか。
166
チツとお
前
(
まへ
)
のサツクと
相談
(
さうだん
)
して
見
(
み
)
い』
167
秋山別
『コリヤ
俺
(
おれ
)
を
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
てゐる。
168
俺
(
おれ
)
は
秋山別
(
あきやまわけ
)
と
云
(
い
)
つて
天孫
(
てんそん
)
人種
(
じんしゆ
)
だぞ。
169
貴様
(
きさま
)
は
土人
(
どじん
)
ぢやないか。
170
チツと
身分
(
みぶん
)
を
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
い』
171
モリス
『
人種
(
じんしゆ
)
無差別
(
むさべつ
)
論
(
ろん
)
の
高潮
(
かうてう
)
した
今日
(
こんにち
)
、
172
時代
(
じだい
)
遅
(
おく
)
れな
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふない。
173
そンなことで、
174
世界
(
せかい
)
同胞
(
どうはう
)
主義
(
しゆぎ
)
が
何時迄
(
いつまで
)
も
成就
(
じやうじゆ
)
すると
思
(
おも
)
ふか。
175
是
(
これ
)
だけ
社会
(
しやくわい
)
は
人種
(
じんしゆ
)
無差別
(
むさべつ
)
論
(
ろん
)
の
盛
(
さかん
)
なのを
貴様
(
きさま
)
は
知
(
し
)
らぬのか。
176
どこ
迄
(
まで
)
も
昔
(
むかし
)
の
家閥
(
かばつ
)
を
振
(
ふ
)
りまはし、
177
貴族面
(
きぞくづら
)
をしやがつて
威張
(
ゐば
)
つたつて、
178
昔
(
むかし
)
なら
通用
(
つうよう
)
するか
知
(
し
)
らぬが、
179
文明
(
ぶんめい
)
開化
(
かいくわ
)
の
今日
(
こんにち
)
は、
180
そンな
古
(
ふる
)
い
頭
(
あたま
)
は
買手
(
かひて
)
がないぞ。
181
文化
(
ぶんくわ
)
生活
(
せいくわつ
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
とるかい、
182
秋公
(
あきこう
)
』
183
秋山別
『ヘン、
184
文化
(
ぶんくわ
)
生活
(
せいくわつ
)
が
聞
(
き
)
いて
呆
(
あき
)
れるワイ。
185
今
(
いま
)
の
奴
(
やつ
)
の
吐
(
ぬか
)
す
文化
(
ぶんくわ
)
生活
(
せいくわつ
)
と
云
(
い
)
ふのは、
186
人
(
ひと
)
の
女房
(
にようばう
)
と
手
(
て
)
を
取
(
と
)
り、
187
キツスをして
妙
(
めう
)
なダンスをやつたり、
188
仕舞
(
しまひ
)
の
果
(
はて
)
にや
役者
(
やくしや
)
の
部屋
(
へや
)
へ
女房
(
にようばう
)
がへたり
込
(
こ
)
ンだり、
189
お
転婆
(
てんば
)
主義
(
しゆぎ
)
を
発揮
(
はつき
)
したり、
190
爺
(
おやぢ
)
はおやぢで
良
(
よ
)
い
気
(
き
)
になり、
191
うちの
女王
(
ぢよわう
)
さまは
余程
(
よほど
)
新
(
あたら
)
しいと
云
(
い
)
つて
喜
(
よろこ
)
ンでる
風俗
(
ふうぞく
)
壊乱
(
くわいらん
)
生活
(
せいくわつ
)
を
云
(
い
)
ふのだらう。
192
そンな
事
(
こと
)
で
如何
(
どう
)
して
社会
(
しやくわい
)
の
秩序
(
ちつじよ
)
が
保
(
たも
)
たれるか。
193
モリス、
194
貴様
(
きさま
)
の
思想
(
しさう
)
は
余程
(
よほど
)
怪
(
あや
)
しいものだなア』
195
モリス
『そんなこたア、
196
如何
(
どう
)
でもよいワ。
197
サアサア、
198
女房
(
にようばう
)
の
選挙
(
せんきよ
)
だ。
199
早
(
はや
)
くやらうぢやないか。
200
貴重
(
きちよう
)
な
一票
(
いつぺう
)
を
何卒
(
なにとぞ
)
入
(
い
)
れて
下
(
くだ
)
さいと
云
(
い
)
つて、
201
戸別
(
こべつ
)
訪問
(
はうもん
)
をする
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
202
被
(
ひ
)
選挙人
(
せんきよにん
)
が
二人
(
ふたり
)
選挙人
(
せんきよにん
)
が
二人
(
ふたり
)
だから、
203
自由
(
じいう
)
選挙
(
せんきよ
)
にしたらどうだ』
204
秋山別
『そンなら
俺
(
おれ
)
は
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
を
秋山別
(
あきやまわけ
)
の
妻
(
つま
)
に
選挙
(
せんきよ
)
する』
205
モリス
『
俺
(
おれ
)
は
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
をモリスの
奥
(
おく
)
さまに
選挙
(
せんきよ
)
する、
206
又
(
また
)
俺
(
おれ
)
の
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
も
同様
(
どうやう
)
、
207
モリスの
妻
(
つま
)
に
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
を
選挙
(
せんきよ
)
する、
208
モウ
一票
(
いつぺう
)
は
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
も
同様
(
どうやう
)
だ。
209
サア
三票
(
さんぺう
)
と
一票
(
いつぺう
)
だ。
210
お
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
乍
(
なが
)
ら、
211
当選
(
たうせん
)
の
栄
(
えい
)
を
得
(
え
)
まして
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
212
あなたは
運動
(
うんどう
)
が
足
(
た
)
らないから、
213
とうとう
次点者
(
じてんしや
)
になりましたねい。
214
どうで
秋山別
(
あきやまわけ
)
だから、
215
先方
(
せんぱう
)
が
アキ
が
来
(
き
)
ました、
216
イ
ヤマ
ア、
217
別
(
わか
)
れて
下
(
くだ
)
さい
秋山別
(
あきやまわけ
)
さま……なンとか
云
(
い
)
つて、
218
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
つて
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
だ。
219
アハヽヽヽ』
220
秋山別
(
あきやまわけ
)
は
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
て『ナアニ』と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
221
モリスの
横
(
よこ
)
つ
面
(
つら
)
を
鬼
(
おに
)
の
蕨
(
わらび
)
をふり
上
(
あ
)
げて、
222
首
(
くび
)
も
飛
(
と
)
べよと
計
(
ばか
)
り
擲
(
なぐ
)
りつくれば、
223
モリスは、
224
モリス
『ナアに
喧嘩
(
けんくわ
)
か、
225
喧嘩
(
けんくわ
)
なら
俺
(
おれ
)
も
負
(
まけ
)
はせぬぞ』
226
と
鉄拳
(
てつけん
)
をふつて
飛
(
と
)
びかかり、
227
遂
(
つひ
)
には
組
(
く
)
ンづ
組
(
く
)
まれつ、
228
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
格闘
(
かくとう
)
を
始
(
はじ
)
め、
229
夕暮
(
ゆふぐ
)
れの
帳
(
とばり
)
のさがる
迄
(
まで
)
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
血
(
ち
)
みどろになつて
掴
(
つか
)
み
合
(
あ
)
ひ
居
(
ゐ
)
る。
230
その
所
(
ところ
)
へ
悠々
(
いういう
)
として
一男
(
いちなん
)
二女
(
にぢよ
)
は
登
(
のぼ
)
り
来
(
き
)
たり、
231
国依別
『アヽ、
232
此処
(
ここ
)
が
印象
(
いんしやう
)
の
深
(
ふか
)
い
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
の
祀
(
まつ
)
られた
楠
(
くす
)
の
森
(
もり
)
の
祠
(
ほこら
)
だ。
233
大分
(
だいぶ
)
に
皆
(
みな
)
さま
足
(
あし
)
も
疲労
(
くたびれ
)
たでせう。
234
一
(
ひと
)
つ
立寄
(
たちよ
)
つて
休息
(
きうそく
)
せうぢやありませぬか。
235
都合
(
つがふ
)
に
依
(
よ
)
れば、
236
此
(
この
)
森
(
もり
)
で
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かし、
237
新
(
あたら
)
しい
日輪
(
にちりん
)
様
(
さま
)
の
光
(
ひか
)
りを
浴
(
あ
)
びて
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
に
立向
(
たちむか
)
ふことに
致
(
いた
)
しませうよ』
238
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
国依別
(
くによりわけ
)
は
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて、
239
森蔭
(
もりかげ
)
に
進
(
すす
)
む。
240
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
も、
241
同
(
おな
)
じく
森蔭
(
もりかげ
)
に
静
(
しづ
)
かに
身
(
み
)
を
横
(
よこた
)
へて、
242
疲労
(
くたびれ
)
た
足
(
あし
)
をさすつてゐる。
243
何
(
なん
)
だか
暗
(
くら
)
がりでシツカリとは
分
(
わか
)
らぬが、
244
二
(
ふた
)
つの
黒
(
くろ
)
い
影
(
かげ
)
が『フーフー』と
息
(
いき
)
を
喘
(
はず
)
ませ、
245
上
(
うへ
)
になり
下
(
した
)
になり
転
(
ころ
)
げて
居
(
ゐ
)
る。
246
国依別
(
くによりわけ
)
は、
247
国依別
『ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
な
者
(
もの
)
が
居
(
ゐ
)
るワイ。
248
山犬
(
やまいぬ
)
の
子
(
こ
)
でも
ざれ
よつて
居
(
を
)
るのではあるまいか』
249
と
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせ、
250
側近
(
そばちか
)
く
寄
(
よ
)
つて
暗
(
やみ
)
にすかし
見
(
み
)
れば、
251
どうやら
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
が
喧嘩
(
けんくわ
)
をして
居
(
ゐ
)
るらしい。
252
国依別
(
くによりわけ
)
は……
此奴
(
こいつ
)
一
(
ひと
)
つおどかして、
253
此
(
この
)
喧嘩
(
けんくわ
)
を
止
(
や
)
めさしてやらう……と
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
でうち
諾
(
うな
)
づき、
254
俄
(
にはか
)
に
作
(
つく
)
り
声
(
ごゑ
)
、
255
落雷
(
らくらい
)
の
様
(
やう
)
な
大声
(
おほごゑ
)
で、
256
国依別
『
此
(
この
)
方
(
はう
)
は、
257
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
の
祠
(
ほこら
)
に
守護
(
しゆご
)
致
(
いた
)
す
大天狗
(
だいてんぐ
)
であるぞよ!
汝
(
なんぢ
)
不届
(
ふとど
)
き
千万
(
せんばん
)
にも
此
(
この
)
霊場
(
れいぢやう
)
に
来
(
きた
)
り、
258
喧嘩
(
けんくわ
)
を
致
(
いた
)
すとは
怪
(
け
)
しからぬ
奴
(
やつ
)
……
待
(
ま
)
て、
259
今
(
いま
)
此
(
この
)
大天狗
(
だいてんぐ
)
が
其方
(
そのはう
)
等
(
ら
)
二人共
(
ふたりとも
)
、
260
股
(
また
)
から
引裂
(
ひきさ
)
いて、
261
楠木
(
くすのき
)
の
枝
(
えだ
)
にかけ、
262
烏
(
からす
)
にこつかしてやらうぞ!』
263
と
呶
(
ど
)
なりつくれば、
264
二人
(
ふたり
)
は
思
(
おも
)
はぬ
天狗
(
てんぐ
)
と
聞
(
き
)
いてパツと
左右
(
さいう
)
に
離
(
はな
)
れ、
265
大地
(
だいち
)
に
傷
(
きず
)
だらけの
手
(
て
)
を
仕
(
つか
)
へ、
266
血
(
ち
)
だらけの
顔
(
かほ
)
を
俯
(
うつ
)
むけ
乍
(
なが
)
ら、
267
秋山別
『ハイ、
268
私
(
わたくし
)
は
秋山別
(
あきやまわけ
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
269
一方
(
いつぱう
)
の
男
(
をとこ
)
はモリスと
申
(
まを
)
す
悪戯者
(
いたづらもの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
270
女房
(
にようばう
)
の
選挙
(
せんきよ
)
に
付
(
つ
)
きまして、
271
激烈
(
げきれつ
)
なる
運動
(
うんどう
)
を
開始
(
かいし
)
致
(
いた
)
しまして、
272
遂
(
つひ
)
には
血
(
ち
)
を
見
(
み
)
る
所
(
ところ
)
まで
参
(
まゐ
)
りました。
273
今後
(
こんご
)
は
心得
(
こころえ
)
ますから、
274
どうぞ
股
(
また
)
から
引裂
(
ひきさ
)
くの
丈
(
だけ
)
は
御
(
ご
)
勘弁
(
かんべん
)
を
願
(
ねが
)
ひます』
275
モリス
『
大天狗
(
だいてんぐ
)
様
(
さま
)
、
276
どうか、
277
秋山別
(
あきやまわけ
)
を
能
(
よ
)
く
御
(
お
)
戒
(
いまし
)
め
下
(
くだ
)
さいまして、
278
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
を
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
り、
279
此
(
この
)
モリスの
女房
(
にようばう
)
に
首尾
(
しゆび
)
よく
渡
(
わた
)
します
様
(
やう
)
にして
下
(
くだ
)
さいませ、
280
これが
一生
(
いつしやう
)
の
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
281
それが
叶
(
かな
)
はぬ
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
なれば
仮令
(
たとへ
)
引裂
(
ひきさ
)
かれても
構
(
かま
)
ひませぬ。
282
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
生
(
いき
)
てる
甲斐
(
かひ
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ。
283
秋山別
(
あきやまわけ
)
にはエリナを
女房
(
にようばう
)
にしてやつて
下
(
くだ
)
さいますれば、
284
三
(
み
)
つ
口
(
ぐち
)
に
新粉
(
しんこ
)
、
285
四
(
よ
)
つ
口
(
ぐち
)
に
羊羹
(
やうかん
)
で、
286
本当
(
ほんたう
)
に
都合
(
つがふ
)
の
良
(
よ
)
い
縁
(
えん
)
で
御座
(
ござ
)
います』
287
秋山別
『どうぞ、
288
私
(
わたくし
)
に
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
を
御
(
お
)
授
(
さづ
)
け
下
(
くだ
)
さいませ。
289
モリスはエリナで
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
います。
290
さうして
下
(
くだ
)
さいますれば、
291
天下
(
てんか
)
は
太平
(
たいへい
)
、
292
無事
(
ぶじ
)
長久
(
ちやうきう
)
疑
(
うたがひ
)
なしで
御座
(
ござ
)
います』
293
国依別
(
くによりわけ
)
は
可笑
(
をか
)
しさを
怺
(
こら
)
へて、
294
国依別
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
申
(
まを
)
す
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
、
295
エリナの
両人
(
りやうにん
)
はどこに
居
(
を
)
るか』
296
秋山別
(
あきやまわけ
)
は
声
(
こゑ
)
を
震
(
ふる
)
はせ
乍
(
なが
)
ら、
297
秋山別
『ハイ、
298
三五教
(
あななひけう
)
の
馬鹿
(
ばか
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
女殺
(
をんなごろ
)
しの
後家倒
(
ごけだを
)
し、
299
家破
(
いへやぶ
)
りの
国依別
(
くによりわけ
)
と
云
(
い
)
ふ、
300
それはそれは
酢
(
す
)
でも
蒟蒻
(
こんにやく
)
でもいかぬ
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
301
其奴
(
そいつ
)
が
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
を、
302
アタ
欲
(
よく
)
どしい、
303
ひつさらへて、
304
ヒルの
都
(
みやこ
)
の
神館
(
かむやかた
)
を
出立
(
しゆつたつ
)
いたし、
305
天下
(
てんか
)
の
色男
(
いろをとこ
)
はこンなものだい、
306
両手
(
りやうて
)
に
花
(
はな
)
とは
此
(
この
)
事
(
こと
)
だ、
307
二
(
に
)
人
(
にん
)
の
妻
(
つま
)
に
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
かれ
黄金
(
こがね
)
の
橋
(
はし
)
を
渡
(
わた
)
るとは、
308
俺
(
おれ
)
の
事
(
こと
)
だと
言
(
い
)
はぬ
計
(
ばか
)
りに、
309
そこらうろつき
乍
(
なが
)
ら、
310
やがてここへ
登
(
のぼ
)
つて
来
(
く
)
るでせう。
311
どうぞ
天狗
(
てんぐ
)
さま、
312
国依別
(
くによりわけ
)
をグツとさらへて
楠
(
くすのき
)
の
上
(
うへ
)
へ
連
(
つ
)
れて
上
(
あが
)
り、
313
股
(
また
)
から
引裂
(
ひきさ
)
いてやつて
下
(
くだ
)
されませ、
314
これが
一生
(
いつしやう
)
の
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひで
御座
(
ござ
)
います』
315
国依別
『
其
(
その
)
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
と
云
(
い
)
ふのは、
316
其
(
その
)
方
(
はう
)
に
対
(
たい
)
して
恋慕
(
れんぼ
)
の
心
(
こころ
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
る
女
(
をんな
)
であるか』
317
秋山別
『ハイ、
318
何分
(
なにぶん
)
おボコ
娘
(
むすめ
)
の
事
(
こと
)
とて、
319
ハツキリとは
申
(
まを
)
しませぬが、
320
大抵
(
たいてい
)
意思
(
いし
)
を
忖度
(
そんたく
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ます。
321
キツと
私
(
わたくし
)
に
恋着
(
れんちやく
)
して
居
(
ゐ
)
るに
相違
(
さうゐ
)
ありませぬ、
322
一寸
(
ちよつと
)
触
(
さわ
)
つてもピンとはねたり、
323
三番叟
(
さんばさう
)
の
様
(
やう
)
に、
324
あゝイヤイヤイヤと
肱
(
ひぢ
)
を
振
(
ふ
)
りますが、
325
私
(
わたくし
)
も
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
に
覚
(
おぼ
)
えが
御座
(
ござ
)
います。
326
好
(
すき
)
な
人
(
ひと
)
に
袖
(
そで
)
でも
引
(
ひ
)
つぱられると、
327
恥
(
はづ
)
かしくなつて、
328
一旦
(
いつたん
)
は
厭
(
いや
)
相
(
さう
)
に
見
(
み
)
せて
撥
(
はね
)
まはし、
329
後
(
あと
)
からあゝあンな
事
(
こと
)
をせなかつたら
良
(
よ
)
かつたに……と
惜
(
をし
)
がつたことも
御座
(
ござ
)
いますれば、
330
秋山別
(
あきやまわけ
)
には
十分
(
じふぶん
)
に
脈
(
みやく
)
は
御座
(
ござ
)
います』
331
モリス
『モシ
天狗
(
てんぐ
)
様
(
さま
)
、
332
秋山別
(
あきやまわけ
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
333
アリヤ
違
(
ちが
)
ひます。
334
自分
(
じぶん
)
一人
(
ひとり
)
きめてゐるので
御座
(
ござ
)
いますから
堪
(
たま
)
りませぬワ。
335
鮑
(
あはび
)
の
貝
(
かひ
)
の
片思
(
かたおも
)
ひ、
336
長持
(
ながもち
)
の
蓋
(
ふた
)
で
此方
(
こちら
)
があいても
向方
(
むかふ
)
が
根
(
ね
)
つからあきませぬワイ。
337
併
(
しか
)
しエリナなれば、
338
どうにか
斯
(
こ
)
うにか、
339
天狗
(
てんぐ
)
様
(
さま
)
が
御
(
ご
)
紹介
(
せうかい
)
下
(
くだ
)
さいましたなれば、
340
女房
(
にようばう
)
に
厭々
(
いやいや
)
なるでせう。
341
どうぞ
神聖
(
しんせい
)
な
一票
(
いつぺう
)
を、
342
天狗
(
てんぐ
)
様
(
さま
)
、
343
此
(
この
)
モリスにお
与
(
あた
)
へ
下
(
くだ
)
さいませ』
344
国依別
『さうして
国依別
(
くによりわけ
)
を
亡
(
な
)
き
者
(
もの
)
に
致
(
いた
)
して
呉
(
く
)
れいと
申
(
まを
)
すのか』
345
モリス
『ハイ、
346
天則
(
てんそく
)
違反
(
ゐはん
)
の
男
(
をとこ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
347
鶏
(
にはとり
)
か
何
(
なに
)
かの
様
(
やう
)
に
三羽番
(
さんばつが
)
ひで
天下
(
てんか
)
をうろつきますると、
348
第一
(
だいいち
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
教
(
をしへ
)
の
名
(
な
)
を
汚
(
けが
)
します。
349
教
(
をしへ
)
の
為
(
ため
)
にも、
350
秩序
(
ちつじよ
)
維持
(
ゐぢ
)
の
上
(
うへ
)
にも、
351
最
(
もつと
)
も
必要
(
ひつえう
)
な
事
(
こと
)
だとモリスは
信
(
しん
)
じます』
352
国依別
『それなら、
353
此
(
この
)
天狗
(
てんぐ
)
が
許
(
ゆる
)
して
遣
(
つか
)
はすによつて、
354
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
坂
(
さか
)
を
下
(
くだ
)
つて
行
(
ゆ
)
け。
355
一足
(
ひとあし
)
でも
先
(
さき
)
に
掴
(
つか
)
まへた
者
(
もの
)
の
女房
(
にようばう
)
にしてやらう。
356
大天狗
(
だいてんぐ
)
が
是
(
これ
)
から
守護
(
しゆご
)
を
致
(
いた
)
して、
357
掴
(
つか
)
まへた
者
(
もの
)
の
女房
(
にようばう
)
に
喜
(
よろこ
)
びてなるやうに
守
(
まも
)
つてやらうぞ。
358
今
(
いま
)
三人
(
さんにん
)
連
(
づ
)
れにて
此
(
この
)
坂
(
さか
)
の
三合目
(
さんがふめ
)
あたり
迄
(
まで
)
登
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
る
程
(
ほど
)
に、
359
サア
早
(
はや
)
く
行
(
ゆ
)
け、
360
早
(
はや
)
い
者
(
もの
)
勝
(
が
)
ちだ。
361
マラソン
競争
(
きやうそう
)
を
致
(
いた
)
して
決勝点
(
けつしようてん
)
を
取
(
と
)
つた
者
(
もの
)
に
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
を
くれない
事
(
こと
)
ないくれてやる。
362
次点者
(
じてんしや
)
にはエリナ
姫
(
ひめ
)
を
与
(
あた
)
へてやる、
363
一
(
いち
)
二
(
に
)
三
(
さん
)
、
364
ソラ
行
(
ゆ
)
け……』
365
モリス、秋山別
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う』
366
と
二人
(
ふたり
)
は
真暗
(
まつくら
)
がりの
中
(
なか
)
を、
367
石
(
いし
)
ころをころがした
様
(
やう
)
にガラガラと
音
(
おと
)
をさせて
坂道
(
さかみち
)
を
韋駄天
(
ゐだてん
)
走
(
ばし
)
りに
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
368
国依別
『アハヽヽヽ
何
(
なん
)
と
面白
(
おもしろ
)
い
余興
(
よきよう
)
を、
369
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
見
(
み
)
せて
頂
(
いただ
)
いたものだ。
370
……モシ
御
(
お
)
二人
(
ふたり
)
さま、
371
どうでしたなア』
372
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
はおづおづし
乍
(
なが
)
ら、
373
紅井姫
『ハイどうも
恐
(
おそ
)
ろしうて、
374
胸騒
(
むなさわ
)
ぎが
致
(
いた
)
しましたワ。
375
マアマア
天狗
(
てんぐ
)
様
(
さま
)
が
現
(
あら
)
はれて、
376
甘
(
うま
)
く
追
(
お
)
ひ
帰
(
かへ
)
して
下
(
くだ
)
さいまして、
377
こんな
有難
(
ありがた
)
い
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ、
378
国依別
(
くによりわけ
)
さま、
379
あなたはどうおなりやしたかと
思
(
おも
)
うて
心配
(
しんぱい
)
でしたワ。
380
どうも
御座
(
ござ
)
りませぬでしたか』
381
エリナ
『ホヽヽヽヽ、
382
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
383
アリヤ
天狗
(
てんぐ
)
ぢや
御座
(
ござ
)
いませぬよ。
384
国依別
(
くによりわけ
)
さまがあンな
声
(
こゑ
)
をお
使
(
つか
)
ひになつて、
385
甘
(
うま
)
く
二人
(
ふたり
)
をまかれたのですよ。
386
私
(
わたくし
)
は
余
(
あま
)
り
可笑
(
おか
)
しうて
臍
(
へそ
)
がお
茶
(
ちや
)
を
沸
(
わ
)
かしかけましたワ』
387
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
不思議
(
ふしぎ
)
相
(
さう
)
な
声
(
こゑ
)
で、
388
紅井姫
『あゝさう、
389
して
又
(
また
)
エリナさま、
390
お
腹
(
なか
)
に
土瓶
(
どびん
)
でも
乗
(
の
)
せてゐらしたの……』
391
国依別
『アハヽヽヽ、
392
流石
(
さすが
)
はヤツパリ
深窓
(
しんそう
)
に
育
(
そだ
)
つたお
姫
(
ひめ
)
さまだワイ。
393
紅井姫
(
くれなゐひめ
)
様
(
さま
)
、
394
皆
(
みな
)
うそですよ、
395
余
(
あま
)
り
可笑
(
おか
)
しいから、
396
一
(
ひと
)
つ
大天狗
(
だいてんぐ
)
の
声色
(
こわいろ
)
を
使
(
つか
)
つておどし、
397
まいてやつたのですよ、
398
アハヽヽヽ』
399
紅井姫
『どうもあなたはお
人
(
ひと
)
が
悪
(
わる
)
いですな。
400
そんな
嘘
(
うそ
)
を
言
(
い
)
つても
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
咎
(
とが
)
めは
御座
(
ござ
)
いませぬか』
401
国依別
『
人
(
ひと
)
は
見
(
み
)
かけによらぬ
者
(
もの
)
、
402
今迄
(
いままで
)
正直
(
しやうぢき
)
な
国依別
(
くによりわけ
)
と
思
(
おも
)
つてゐられた
貴女
(
あなた
)
は、
403
さぞお
驚
(
おどろ
)
きになつたでせう。
404
酢
(
す
)
でも
蒟蒻
(
こんにやく
)
でも、
405
挺
(
てこ
)
でも
棒
(
ぼう
)
でも
喰
(
く
)
へぬ、
406
スレツカラシの
国依別
(
くによりわけ
)
ですからなア、
407
アハヽヽヽ』
408
紅井姫
『あなた、
409
蒟蒻
(
こんにやく
)
やお
酢
(
す
)
、
410
デコ
芋
(
いも
)
、
411
棒芋
(
ぼういも
)
などは
御
(
お
)
嫌
(
きら
)
ひで
御座
(
ござ
)
いますか。
412
私
(
わたし
)
は
蒟蒻
(
こんにやく
)
にお
芋
(
いも
)
は
大
(
だい
)
の
好物
(
かうぶつ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
413
国依別
『アハヽヽヽ、
414
どこまでも
可愛
(
かあい
)
らしい
御
(
お
)
姫
(
ひめ
)
さまだなア』
415
エリナ
『ホヽヽヽヽ、
416
お
優
(
やさ
)
しいお
方
(
かた
)
、
417
私
(
わたし
)
も
姫
(
ひめ
)
さまの
様
(
やう
)
な
産
(
うぶ
)
な
心
(
こころ
)
になつて
見
(
み
)
とう
御座
(
ござ
)
いますワ』
418
国依別
『もしも
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
が
後戻
(
あともど
)
りをして
来
(
く
)
ると、
419
又
(
また
)
天狗
(
てんぐ
)
が
一骨
(
ひとほね
)
折
(
を
)
らねばならぬし、
420
うるさいですから、
421
ここを
立去
(
たちさ
)
つて、
422
モ
少
(
すこ
)
し
往
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
で、
423
適当
(
てきたう
)
な
場所
(
ばしよ
)
を
考
(
かんが
)
へて
休息
(
きうそく
)
することに
致
(
いた
)
しませう。
424
エリナさま、
425
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
気
(
き
)
をつけて、
426
足許
(
あしもと
)
の
辷
(
すべ
)
らない
様
(
やう
)
に
手
(
て
)
を
曳
(
ひ
)
いて
上
(
あ
)
げて
下
(
くだ
)
さいナ』
427
エリナ
『サアお
姫
(
ひめ
)
さま
参
(
まゐ
)
りませう』
428
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
雲
(
くも
)
の
綻
(
ほころ
)
びより、
429
所々
(
ところどころ
)
に
星
(
ほし
)
の
見
(
み
)
えてゐる
暗
(
やみ
)
の
空
(
そら
)
をスタスタと
頂上
(
ちやうじやう
)
目
(
め
)
がけて
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
430
流石
(
さすが
)
の
高山
(
かうざん
)
、
431
夜嵐
(
よあらし
)
ザワザワとあたりの
木
(
き
)
の
枝
(
えだ
)
をゆすり、
432
何
(
なん
)
とはなしに、
433
そこら
中
(
ぢう
)
が
物凄
(
ものすご
)
く
感
(
かん
)
じられける。
434
(
大正一一・八・一八
旧六・二六
松村真澄
録)
435
(昭和九・一二・一七 王仁校正)
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