霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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総説(そうせつ)代用(だいよう)

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻 篇:前付 よみ(新仮名遣い):
章:総説代用 よみ(新仮名遣い):そうせつだいよう 通し章番号:
口述日:1923(大正12)年01月29日(旧12月13日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年1月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
桃園天皇の御代に、伏見竹田の里北の入り口に、薬師院と銘打った修験者が現れた。祈祷のために訪れた人の身の上を一々的中させるので、それが有難いと信じ込まれて噂が広まり、繁盛したという。
近江の国の百姓直兵衛という者が、年来の眼病で暗室に閉じこもって療養を尽くしたが効験なく、伏見薬師院のことを人づてに聞いて、訪ねることにし、夫婦で旅立った。
伏見の薬師院は群衆が集い、直兵衛夫婦は夕暮れてようやく院主に面会することができた。薬師院は、直兵衛の訴えを聞くと、今夜はここに籠るように勧め、その間に自分が直兵衛の星を見て病を見立てようと答えた。
その夜の八つ時ごろ、院主は白衣で水垢離し、直兵衛夫婦を座らせて祈りだした。やがて曇りがちの空が晴れ渡り、こうこうと星の光まぶしく、北の方から火団が飛んできて地上に墜落した。
直兵衛夫婦は肝をつぶして平伏し様子を見ていると、院主は火団に何事か呪文を唱え、念珠ではっしと撲った。火団は音もなく散乱して消え、中から一羽の白鳩が飛び去った。
院主は威儀を正して直兵衛に向かい、あの火団は汝の属星であり、自分の法力によって降して病の根源を調べた。怪しい光があったので、それを祓い取ったのだ、と告げた。そして薬師夢想の霊薬と称するものを渡し、これを塗れば七日の間に回復するであろうと言い渡した。
直兵衛は喜んで押し頂き、翌朝慇懃に礼を述べて帰国した。しかし眼病は依然として治らなかった。病気は治らなくても、院主の不可思議な法術呼び物となって薬師院は繁盛していたのである。いずれもバラモン教を守護する魔神の所為であることは言うまでもない。
この院主は腕白小僧であったがバラモンの魔神に憑依され、巧みに妖術をもてあそんで一角の祈祷師となり、薬師院快実と名乗って伏見に本拠を構えた。表面には慈悲をまとい、内心は豺狼のごとき野心を蔵し、世の善男善女を欺いたばかりか、禁裏にまで侵入して天下の大事を引き起こそうとしたのである。しかし関白九条直実公のために看破されてついにその身を滅ぼしたという。
邪神は常住不断に妖術または種々の方法手段を講じて天下を乱し、世を暗黒界に落とそうと企みつつあるものである。読者はこの霊界物語を十分に心を潜めて熟読されれば、邪神の悪計姦策がいかなるものか、了知されることであろう。一例を挙げて読者の参考に資することにした次第である。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm520002
愛善世界社版:3頁 八幡書店版:第9輯 379頁 修補版: 校定版:3頁 普及版:1頁 初版: ページ備考:
001 桃園(ももぞの)天皇(てんわう)御宇(ぎよう)002伏見(ふしみ)竹田(たけだ)(さと)(きた)入口(いりぐち)に、003薬師院(やくしゐん)(めい)()つた修験者(しうげんじや)(あら)はれた。004この(もの)奇怪(きくわい)なる(おこな)ひは(はし)なくも人心(じんしん)(おどろ)かし、005遠近(ゑんきん)()(つた)へ、006老若(らうにやく)男女(なんによ)日々(にちにち)門前(もんぜん)群集(ぐんしふ)するもの(きびす)(せつ)して(つね)(いち)をなし、007(あだか)角力場(すまふば)のやうに雑沓(ざつたふ)することとなつた。008その行術(ぎやうじゆつ)といふは七仏(しちぶつ)薬師(やくし)(はふ)(とな)へ、009祈祷者(きたうしや)()(うへ)(かた)ること一々(いちいち)符節(ふせつ)(がつ)する(ごと)くに適中(てきちう)するので、010医薬(いやく)(ととの)はない当時(たうじ)のこととて、011人々(ひとびと)奇異(きい)(おも)ひをなして、012只々(ただただ)有難(ありがた)有難(ありがた)しと(わけ)もなく(しん)じ、013その(うはさ)がそれからそれへと(ひろ)まり()き、014京都(きやうと)からも(さん)()(あひだ)(とほ)しとせず、015徒歩(とぼ)々々(とぼ)竹田(たけだ)(むか)ふもの()きも()らず繁昌(はんじやう)した。016その(ころ)017近江国(あふみのくに)志賀郡(しがぐん)石田村(いしだむら)百姓(ひやくしやう)直兵衛(なほべゑ)()(をとこ)が、018年来(ねんらい)眼病(がんびやう)左眼(さがん)()()で、019光明(くわうみやう)世界(せかい)から見放(みはな)されたかの(やう)に、020(ただ)一人(ひとり)暗室(あんしつ)()(こも)り、021療養(れうやう)()(つく)して()たが、022(ひと)(すす)めで美濃国(みののくに)間島(まじま)名高(なだか)眼科医(がんくわい)治療(ちれう)()けたけれど(さら)効験(かうけん)なく、023家内(かない)愁嘆(しうたん)のみか、024親戚(しんせき)(もの)()(どく)(おも)ひ、025各地(かくち)神社(じんじや)仏閣(ぶつかく)祈祷(きたう)などしたが一向(いつかう)(かう)()えない。026この(とき)(ある)(もの)から伏見(ふしみ)薬師院(やくしゐん)(こと)(かた)()かされた。027直兵衛(なほべゑ)(こころ)(よろこ)びつつ、028わが多年(たねん)眼病(がんびやう)(なや)まされ、029()(つき)(いた)(くは)はり、030(やみ)から(やみ)へと(なが)年月(としつき)(くら)して()たので、031所詮(しよせん)(たす)かるまいとは(おも)へど、032()(その)薬師院(やくしゐん)とやらへ(まゐ)り、033()(なほ)らぬとあらば(いよいよ)それ(まで)(あきら)め、034()して罪障(ざいしやう)消滅(せうめつ)(はか)らむと、035(なみだ)(なが)(あは)れげに(かた)らひながら妻子(さいし)(とも)(たび)用意(ようい)(ととの)へた。036(には)はまだ薄暗(うすぐら)(あかつき)(ひかり)()びて(むら)立出(たちい)で、037途中(とちう)輿(こし)(やと)ひ、038(つゆ)(ふか)草路(くさみち)()()け、039(くさむら)にすだく(むし)()()きながら、040(いそ)ぎに(いそ)いで伏見(ふしみ)薬師院(やくしゐん)()き、041一刻(いつこく)(はや)院主(ゐんしゆ)面会(めんくわい)せむとしたが、042()()れない(ほど)群集(ぐんしふ)(さまた)げられて、043(しばら)台所(だいどころ)差控(さしひか)へてゐた。044(その)()(はや)夕映(ゆふばえ)して(やま)彼方(あなた)(いろど)()めた(ころ)045(さすが)(せは)しかつた参詣人(さんけいにん)次第(しだい)(さん)じたので、046直兵衛(なほべゑ)左眼(さがん)(おさ)へて(おそ)(おそ)院主(ゐんしゆ)(まへ)(すす)み、
047(わたし)近江国(あふみのくに)石田(いしだ)(ざい)百姓(ひやくしやう)直兵衛(なほべゑ)といふもので、048当年(たうねん)三十七(さんじふしち)(さい)になるのですが、049(いま)から六年前(ろくねんぜん)050不図(ふと)したことより左眼(さがん)()み、051朝夕(あさゆふ)(いた)みは(はげ)しくなり()し、052(この)(ごろ)(この)(やう)眼球(めだま)()()し、053(かぜ)(あた)(こと)もなりませぬ。054何卒(どうぞ)()しき()祈祷(きたう)()(ねが)(まを)したい。055(しか)しこの()(もと)のものになるやうとは(ねが)ひませぬ。056せめて(いた)みだけなりと()まる(やう)にお(ねが)(いた)したく、057(まか)()でました』
058潜々(さめざめ)(なみだ)(なが)して(たの)()んだ。059院主(ゐんしゆ)始終(しじう)()きながら、
060如何(いか)さまそれは難儀(なんぎ)なことであろう。061今宵(こよひ)此処(ここ)(こも)らつしやい。062(われ)不思議(ふしぎ)行術(ぎやうじゆつ)がある。063(なんぢ)(ほし)()て、064その(やまひ)(なほ)るか(なほ)らぬかを(こた)へて()げよう』
065()はれて、066直兵衛(なほべゑ)夫婦(ふうふ)はその(まま)院内(いんない)一泊(いつぱく)することとなつた。067その()()(どき)(おぼ)しき(とき)068院主(ゐんしゆ)白衣姿(びやくえすがた)井戸側(ゐどばた)()つて幾度(いくたび)(みづ)()びて(のち)069仏前(ぶつぜん)灯明(とうみやう)(とも)しつつ、070夫婦(ふうふ)(もの)縁側(えんがは)跪坐(きざ)させ()き、071呪文(じゆもん)(たか)らかに念珠(ねんじゆ)爪繰(つまぐ)り、072(てん)一方(いつぱう)(あふ)いで(しき)りに(いの)()した。073やがて(いま)(まで)雲脚(くもあし)()はしく(くも)()ちの(そら)(ぬぐ)ふが(ごと)()(わた)り、074煌々(かうかう)たる(ほし)(ひか)(まぶ)しく、075一陣(いちぢん)(かぜ)襟元(えりもと)(おそ)うたかと(おも)(をり)しも、076(きた)(はう)から一団(いちだん)火光(くわくわう)飛来(ひらい)して地上(ちじやう)墜落(つゐらく)し、077その(おと)(あだか)雷霆(らいてい)のそれの(ごと)くであつた。078夫婦(ふうふ)(きも)(つぶ)()はそも如何(いか)に、079さても不可思議(ふかしぎ)なる現象(げんしやう)よと戦慄(をのの)きつつ縁板(えんいた)(うへ)平伏(へいふく)して()る。080院主(ゐんしゆ)はその(とき)()火団(くわだん)(むか)ひ、081何事(なにごと)(しばら)呪文(じゆもん)(とな)へ、082念珠(ねんじゆ)()げて発矢(はつし)(なぐ)ると、083(その)火団(くわだん)(おと)もなく散乱(さんらん)して()()せ、084(なか)から一羽(いちは)白鳩(しろはと)鼓翼(はばた)きして()()つた。085院主(ゐんしゆ)はやがて威儀(ゐぎ)(ただ)直兵衛(なほべゑ)(むか)ひ、
086(なんぢ)最前(さいぜん)より一箇(いつこ)火光団(くわくわうだん)()たであらう、087あれこそ(なんぢ)属星(ぞくせい)ぢや。088(いま)わが法力(ほふりき)()つて、089(なんぢ)属星(ぞくせい)(くだ)して(やまひ)根元(こんげん)調(しら)べしに、090如何(いか)にも(その)(ほし)には(あや)しき(ひかり)があつたから、091その(ひかり)(はら)()つてやつたのだ。092()ならずして(なんぢ)眼病(がんびやう)全快(ぜんくわい)するであらう。093(これ)(すなは)七仏(しちぶつ)薬師(やくし)加持(かぢ)奇瑞(きずゐ)ぢや。094(ただ)しここに薬師(やくし)夢想(むさう)霊薬(れいやく)がある。095(これ)一二服(いちにふく)(あた)へるから、096この(くすり)(いち)(にち)二回(にくわい)づつ左眼(さがん)()れば、097七日(なぬか)(あひだ)には大方(おほかた)不思議(ふしぎ)のことがあるだらう』
098(みぎ)(くすり)()つて(あた)へた。099直兵衛(なほべゑ)(よろこ)びは一方(ひとかた)ならず、100幾度(いくたび)押戴(おしいただ)いて(をさ)め、101翌朝(よくてう)慇懃(いんぎん)(れい)()べて帰国(きこく)した。102(しか)しその眼病(がんびやう)依然(いぜん)として(なほ)らなかつたけれども、103院主(ゐんしゆ)不可思議(ふかしぎ)なる法術(はふじゆつ)()びものとなつて薬師院(やくしゐん)非常(ひじやう)繁昌(はんじやう)した。104(いづ)れもバラモン(けう)守護(しゆご)せる魔神(まがみ)所為(しよゐ)なることは()ふまでもないことである。105この院主(ゐんしゆ)幼名(えうめい)佐吉(さきち)といふ小賢(こざか)しい腕白(わんぱく)小僧(こぞう)であつたが、106バラモンの魔神(まがみ)憑依(ひようい)され、107(たくみ)妖術(えうじゆつ)(もてあそ)びて一角(いつかど)祈祷師(きたうし)となり(おほ)せた(のち)108伏見(ふしみ)竹田(たけだ)(さと)本陣(ほんぢん)(かま)へて、109薬師院(やくしゐん)快実(くわいじつ)名乗(なの)り、110表面(へうめん)には慈悲(じひ)忍辱(にんにく)(ころも)(よそほ)ひ、111その内心(ないしん)豺狼(さいらう)(ごと)野心(やしん)(ざう)し、112()善男(ぜんなん)善女(ぜんによ)(あざむ)きしのみか、113(かしこ)くも禁裡(きんり)にまで侵入(しんにふ)して天下(てんか)大事(だいじ)()(おこ)さむとし、114(から)うじて九条(くでう)関白(くわんばく)直実公(なほざねこう)のために看破(かんぱ)せられ、115(つひ)にその()(ほろぼ)したるは(かく)れたる史実(しじつ)である。116邪神(じやしん)常住(じやうぢゆう)不断(ふだん)妖術(えうじゆつ)(また)種々(いろいろ)方法(はうはふ)手段(しゆだん)(かう)じて、117天下(てんか)(みだ)()暗黒界(あんこくかい)(おと)さむと(たく)みつつあるものである。118読者(どくしや)(この)霊界(れいかい)物語(ものがたり)充分(じうぶん)(こころ)(ひそ)めて熟読(じゆくどく)せらるれば、119今日(こんにち)(まで)口述(こうじゆつ)せし五十二(ごじふに)(くわん)物語中(ものがたりちう)(おい)て、120邪神(じやしん)悪計(あくけい)奸策(かんさく)如何(いか)なるものかを了知(れうち)さるる(こと)でありませう。121五十二(ごじふに)(くわん)口述(こうじゆつ)終了(しうれう)(さい)し、122一例(いちれい)()げて読者(どくしや)参考(さんかう)()する(こと)(いた)しました。
123   大正十二年二月十日 旧十一年十二月廿五日
124於教主殿   王仁識
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