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第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
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特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第52巻(卯の巻)
序文
総説代用
第1篇 鶴首専念
01 真と偽
〔1337〕
02 哀別の歌
〔1338〕
03 楽屋内
〔1339〕
04 俄狂言
〔1340〕
05 森の怪
〔1341〕
06 梟の笑
〔1342〕
第2篇 文明盲者
07 玉返志
〔1343〕
08 巡拝
〔1344〕
09 黄泉帰
〔1345〕
10 霊界土産
〔1346〕
11 千代の菊
〔1347〕
第3篇 衡平無死
12 盲縞
〔1348〕
13 黒長姫
〔1349〕
14 天賊
〔1350〕
15 千引岩
〔1351〕
16 水車
〔1352〕
17 飴屋
〔1353〕
第4篇 怪妖蟠離
18 臭風
〔1354〕
19 屁口垂
〔1355〕
20 険学
〔1356〕
21 狸妻
〔1357〕
22 空走
〔1358〕
第5篇 洗判無料
23 盲動
〔1359〕
24 応対盗
〔1360〕
25 恋愛観
〔1361〕
26 姑根性
〔1362〕
27 胎蔵
〔1363〕
余白歌
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> 第5篇 洗判無料 > 第25章 恋愛観
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第二五章
恋愛観
(
れんあいくわん
)
〔一三六一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻
篇:
第5篇 洗判無料
よみ(新仮名遣い):
せんばんむりょう
章:
第25章 恋愛観
よみ(新仮名遣い):
れんあいかん
通し章番号:
1361
口述日:
1923(大正12)年02月10日(旧12月25日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年1月28日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高姫は三人の悪人たちが絞られたのを見て痛快となり、ますます調子に乗って石の上に立ち上がり、大道演説を始め出した。
八衢の赤の守衛は、仕事の邪魔になると、高姫の演説をやめさせようと叱りつけた。高姫は自分は日の出神の生き宮だと赤の守衛を叱りかえした。
赤の守衛はとうとう高姫を縛って木に吊るしてしまった。しかし高姫は伊吹戸主を呼んで来いと怒鳴りたてる始末であった。口の減らない高姫に辟易した守衛たちは、門内に入れておとなしくさせることにした。高姫は得意げに大手を振って門の中に入って行った。
その後は、不倫心中をした男女がやってきて、赤と白の守衛の取り調べに対して、当世風の恋愛論を振りかざして、門内に入って行った。赤と白の守衛は現界の乱れを嘆いた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-12-22 19:03:14
OBC :
rm5225
愛善世界社版:
292頁
八幡書店版:
第9輯 484頁
修補版:
校定版:
300頁
普及版:
131頁
初版:
ページ備考:
001
高姫
(
たかひめ
)
は
敬介
(
けいすけ
)
、
002
狂介
(
きやうすけ
)
、
003
悪次郎
(
あくじらう
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
手厳
(
てきび
)
しくコミ
割
(
わ
)
られたのを
見
(
み
)
て
痛快
(
つうくわい
)
措
(
お
)
く
能
(
あた
)
はず、
004
益々
(
ますます
)
調子
(
てうし
)
にのつてロハ
台
(
だい
)
の
上
(
うへ
)
に
登
(
のぼ
)
り、
005
又
(
また
)
もや
大道
(
だいだう
)
演説
(
えんぜつ
)
を
始
(
はじ
)
め
出
(
だ
)
した。
006
高姫
『
皆
(
みな
)
さま、
007
あれをお
聞
(
き
)
きになりましたか。
008
泡沫
(
はうまつ
)
に
等
(
ひと
)
しき
権勢
(
けんせい
)
や、
009
地位
(
ちゐ
)
や、
010
財産
(
ざいさん
)
を
振
(
ふ
)
りまはし、
011
社会
(
しやくわい
)
に
於
(
おい
)
て
乱暴
(
らんばう
)
狼藉
(
ろうぜき
)
を
働
(
はたら
)
いた
偽善者
(
きぜんしや
)
の
末路
(
まつろ
)
は、
012
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りで
厶
(
ござ
)
りませうがな。
013
皆
(
みな
)
さまはここを
現界
(
げんかい
)
と
思
(
おも
)
うてゐますか。
014
ここは
霊界
(
れいかい
)
の
八衢
(
やちまた
)
、
015
善悪
(
ぜんあく
)
を
調
(
しら
)
べる
所
(
ところ
)
ですよ。
016
お
前
(
まへ
)
さま
等
(
たち
)
も
常平生
(
つねへいぜい
)
から
結構
(
けつこう
)
な
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
現
(
あら
)
はれてウラナイの
道
(
みち
)
を
開
(
ひら
)
き、
017
万民
(
ばんみん
)
を
救
(
すく
)
ふべく
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
口
(
くち
)
を
酸
(
す
)
うしてお
導
(
みちび
)
き
遊
(
あそ
)
ばしたのに……ヘン、
018
あの
気違
(
きちが
)
ひが
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
す、
019
冥土
(
めいど
)
があつて
堪
(
たま
)
らうか、
020
地獄
(
ぢごく
)
極楽
(
ごくらく
)
は
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
厶
(
ござ
)
る……
等
(
など
)
と
高
(
たか
)
を
括
(
くく
)
つて
厶
(
ござ
)
つたが、
021
今
(
いま
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
行
(
い
)
つた
奴
(
やつ
)
の
様
(
やう
)
に、
022
ここで
十分
(
じふぶん
)
に
膏
(
あぶら
)
を
搾
(
しぼ
)
られ、
023
吠面
(
ほえづら
)
をかわかねばなりませぬぞや。
024
それだから
現界
(
げんかい
)
に
於
(
おい
)
て
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
話
(
はなし
)
をよく
聞
(
き
)
きなされと
云
(
い
)
つたのだ。
025
如何
(
どう
)
です、
026
之
(
これ
)
でもお
前
(
まへ
)
さま
等
(
たち
)
は
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
の
演説
(
えんぜつ
)
を
聞
(
き
)
く
気
(
き
)
はありませぬか。
027
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
は
現界
(
げんかい
)
、
028
幽界
(
いうかい
)
、
029
神界
(
しんかい
)
の
救主
(
すくひぬし
)
で
厶
(
ござ
)
るぞや。
030
何程
(
なにほど
)
深
(
ふか
)
い
罪
(
つみ
)
があらうとも、
031
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
さへ
聞
(
き
)
けば、
032
神直日
(
かむなほひ
)
、
033
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
して
助
(
たす
)
けて
上
(
あ
)
げるぞや』
034
赤
(
あか
)
の
守衛
(
しゆゑい
)
は
高姫
(
たかひめ
)
の
手
(
て
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り、
035
赤の守衛
『こりや
高姫
(
たかひめ
)
、
036
帰
(
かへ
)
れといつたら
帰
(
かへ
)
らぬか。
037
大変
(
たいへん
)
邪魔
(
じやま
)
になる。
038
どうしても
聞
(
き
)
かねば、
039
其
(
その
)
方
(
はう
)
を
此
(
この
)
儘
(
まま
)
地獄
(
ぢごく
)
に
堕
(
お
)
とすが
宜
(
い
)
いか』
040
高姫
『ヘン、
041
よう
仰有
(
おつしや
)
いますワイ。
042
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
神界
(
しんかい
)
、
043
現界
(
げんかい
)
、
044
幽界
(
いうかい
)
の
救主
(
すくひぬし
)
なる
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
で
厶
(
ござ
)
りますぞや。
045
余
(
あま
)
り
見違
(
みちが
)
ひをして
貰
(
もら
)
ひますまいカイ。
046
これこれ
皆
(
みな
)
さま、
047
何程
(
なにほど
)
怖
(
こは
)
い
顔
(
かほ
)
して
此
(
この
)
守衛
(
しゆゑい
)
が
睨
(
にら
)
んだ
処
(
ところ
)
で、
048
チツとも
驚
(
おどろ
)
くに
及
(
およ
)
びませぬよ。
049
然
(
しか
)
し
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
らねば
駄目
(
だめ
)
ですよ。
050
おい
赤
(
あか
)
さま、
051
チツとお
前
(
まへ
)
も
高姫
(
たかひめ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
真面目
(
まじめ
)
に
聞
(
き
)
いたら
如何
(
どう
)
だい』
052
赤
(
あか
)
の
守衛
(
しゆゑい
)
は
煩
(
うる
)
さくなつたと
見
(
み
)
え、
053
高姫
(
たかひめ
)
の
手
(
て
)
をグツと
後
(
うしろ
)
へまはし、
054
傍
(
かたはら
)
の
梧桐
(
あをぎり
)
の
木
(
き
)
に
縛
(
しば
)
りつけて
了
(
しま
)
つた。
055
高姫
(
たかひめ
)
は
尚
(
なほ
)
も
屈
(
くつ
)
せず、
056
稍
(
やや
)
怒気
(
どき
)
を
含
(
ふく
)
んだ
声
(
こゑ
)
で、
057
高姫
『こりや、
058
罰当
(
ばちあた
)
り
奴
(
め
)
、
059
三界
(
さんかい
)
の
救主
(
すくひぬし
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
を
何
(
なん
)
と
致
(
いた
)
すか。
060
物
(
もの
)
が
分
(
わか
)
らぬにも
程
(
ほど
)
があるぞよ。
061
もう
斯
(
か
)
うなつて
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
蠅虫
(
はへむし
)
に
話
(
はなし
)
をした
処
(
ところ
)
が
仕方
(
しかた
)
がない。
062
伊吹戸主
(
いぶきどぬし
)
を
呼
(
よ
)
んで
来
(
こ
)
い。
063
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
が
噛
(
か
)
んで
啣
(
くく
)
める
様
(
やう
)
に
誠
(
まこと
)
の
道理
(
だうり
)
を
聞
(
き
)
かしてやらう。
064
さうすればお
前
(
まへ
)
も
初
(
はじ
)
めて
此
(
この
)
生宮
(
いきみや
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
が
分
(
わか
)
り
目
(
め
)
が
覚
(
さ
)
めるだらう』
065
赤の守衛
『エー、
066
仕方
(
しかた
)
がない。
067
白
(
しろ
)
さま、
068
どうか
暫
(
しばら
)
く
門内
(
もんない
)
へ
突
(
つ
)
つこんでおいて
下
(
くだ
)
さい。
069
事務
(
じむ
)
の
邪魔
(
じやま
)
になつて
仕方
(
しかた
)
がありませぬから』
070
高姫
『オホホホホホ、
071
出来
(
でか
)
した
出来
(
でか
)
した、
072
到頭
(
たうとう
)
往生
(
わうじやう
)
致
(
いた
)
したと
見
(
み
)
え、
073
杢助
(
もくすけ
)
さまの
厶
(
ござ
)
る
門内
(
もんない
)
へ
入
(
はい
)
れと
云
(
い
)
ひよつたな。
074
ヤツパリ
高姫
(
たかひめ
)
さまには
敵
(
かな
)
ふまいがな、
075
オホホホホホ』
076
白
(
しろ
)
『さア
高姫
(
たかひめ
)
、
077
縛
(
いましめ
)
をほどいてやるから
門内
(
もんない
)
へ
這入
(
はい
)
れ』
078
高姫
『ハイ、
079
有難
(
ありがた
)
う。
080
順風
(
じゆんぷう
)
に
帆
(
ほ
)
をかけた
様
(
やう
)
なものだ。
081
之
(
これ
)
を
思
(
おも
)
へば
熱心
(
ねつしん
)
と
云
(
い
)
ふものは
偉
(
えら
)
いものだな』
082
赤
(
あか
)
『エー、
083
グヅグヅ
申
(
まを
)
さずとトツトと
這入
(
はい
)
れ』
084
高姫
『ホホホホ、
085
這入
(
はい
)
りますわいな。
086
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
赤
(
あか
)
のお
前
(
まへ
)
さま
等
(
たち
)
の
都合
(
つがふ
)
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るかも
知
(
し
)
れませぬぞや。
087
勿体
(
もつたい
)
なくも
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
を
梧桐
(
あをぎり
)
に
縛
(
しば
)
りつけた
大悪
(
だいあく
)
は、
088
伊吹戸主
(
いぶきどぬし
)
に
会
(
あ
)
うたら
屹度
(
きつと
)
告
(
つ
)
げてやるから、
089
地獄行
(
ぢごくゆき
)
は
覚悟
(
かくご
)
の
前
(
まへ
)
だらう。
090
まア
喜
(
よろこ
)
んで
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
なさい。
091
あの、
092
まア
心配
(
しんぱい
)
さうな
顔
(
かほ
)
ワイノー』
093
白
(
しろ
)
は
優
(
やさ
)
しい
顔
(
かほ
)
に
少
(
すこ
)
しく
怒
(
いか
)
りを
帯
(
お
)
び
声
(
こゑ
)
を
尖
(
とが
)
らして、
094
白の守衛
『こりや
高姫
(
たかひめ
)
、
095
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があれば
後
(
あと
)
で
云
(
い
)
へ。
096
さア
早
(
はや
)
く
這入
(
はい
)
らないか』
097
高姫
『ホホホホホ、
098
青瓢箪
(
あをぺうたん
)
に
屁
(
へ
)
を
嗅
(
か
)
がしたやうな
営養
(
えいやう
)
不良
(
ふりやう
)
な
顔
(
かほ
)
をして、
099
此
(
この
)
生宮
(
いきみや
)
様
(
さま
)
を「
高姫
(
たかひめ
)
云
(
い
)
ひたい
事
(
こと
)
があるなら
後
(
あと
)
から
云
(
い
)
へ」……
何
(
なに
)
吐
(
ぬか
)
すのだ。
100
チツと
身分
(
みぶん
)
を
考
(
かんが
)
へたら
如何
(
どう
)
だい、
101
オツホン』
102
と
女
(
をんな
)
に
似合
(
にあ
)
はず
大手
(
おほて
)
を
振
(
ふ
)
り、
103
大股
(
おほまた
)
に
歩
(
ある
)
いて
門内
(
もんない
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
104
赤
(
あか
)
は
男女
(
だんぢよ
)
連
(
づ
)
れの
精霊
(
せいれい
)
を
手招
(
てまね
)
きし
住所
(
ぢゆうしよ
)
姓名
(
せいめい
)
を
尋
(
たづ
)
ねかけた。
105
赤の守衛
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
す
姓名
(
せいめい
)
か』
106
女(おつや)
『ハイ、
107
私
(
わたし
)
はおつやと
申
(
まを
)
します』
108
赤の守衛
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
すか』
109
男(呆助)
『ハイ、
110
私
(
わたし
)
は
呆助
(
はうすけ
)
と
申
(
まを
)
します』
111
赤の守衛
『おつや、
112
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
夫
(
をつと
)
のある
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て、
113
此
(
この
)
呆助
(
はうすけ
)
と
私
(
ひそ
)
かに
情
(
じやう
)
を
通
(
つう
)
じ、
114
斯様
(
かやう
)
な
処
(
ところ
)
へやつて
来
(
き
)
たのだな』
115
おつや
『ハイ、
116
理想
(
りさう
)
の
夫
(
をつと
)
がないものですから、
117
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ずこんな
破目
(
はめ
)
になつたのですよ。
118
今日
(
こんにち
)
の
結婚
(
けつこん
)
問題
(
もんだい
)
は
愛
(
あい
)
の
結婚
(
けつこん
)
でなくて
財産
(
ざいさん
)
結婚
(
けつこん
)
、
119
門閥
(
もんばつ
)
結婚
(
けつこん
)
、
120
強迫
(
きやうはく
)
結婚
(
けつこん
)
、
121
強姦
(
がうかん
)
結婚
(
けつこん
)
、
122
往生
(
わうじやう
)
づくめの
無理
(
むり
)
無体
(
むたい
)
の
結婚
(
けつこん
)
を
強
(
し
)
ひる
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
ですから、
123
離婚
(
りこん
)
沙汰
(
ざた
)
が
頻々
(
ひんぴん
)
として
起
(
おこ
)
つてゐます。
124
恋愛
(
れんあい
)
を
無視
(
むし
)
した
因襲
(
いんしふ
)
的
(
てき
)
結婚法
(
けつこんはふ
)
は、
125
斯様
(
かやう
)
な
問題
(
もんだい
)
を
惹起
(
じやくき
)
する
最
(
もつと
)
も
重大
(
ぢうだい
)
なる
原因
(
げんいん
)
の
一
(
ひと
)
つとなるのです。
126
自分
(
じぶん
)
が
好
(
す
)
いて
自分
(
じぶん
)
が
選
(
えら
)
んだ
結婚
(
けつこん
)
関係
(
くわんけい
)
ならば、
127
それが
仮令
(
たとへ
)
うまく
行
(
ゆ
)
かなくても
自分
(
じぶん
)
自身
(
じしん
)
に
其
(
その
)
全責任
(
ぜんせきにん
)
があります。
128
出来得
(
できう
)
るだけの
努力
(
どりよく
)
をして
現在
(
げんざい
)
の
結婚
(
けつこん
)
生活
(
せいくわつ
)
をもつともつと
良
(
よ
)
きものにしなければなりませぬ。
129
最初
(
さいしよ
)
から
自分
(
じぶん
)
以外
(
いぐわい
)
の
者
(
もの
)
が
取計
(
とりはか
)
らつた
結婚
(
けつこん
)
と
云
(
い
)
ふものは、
130
少
(
すこ
)
しも
恋愛味
(
れんあいみ
)
が
存在
(
そんざい
)
しませぬ。
131
何
(
いづ
)
れ
合
(
あは
)
せものは
離
(
はな
)
れものだと
云
(
い
)
ふ
流儀
(
りうぎ
)
ですから、
132
離婚
(
りこん
)
の
不祥事
(
ふしやうじ
)
や、
133
他
(
た
)
に
情夫
(
じやうふ
)
を
拵
(
こしら
)
へて
三角
(
さんかく
)
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
る
様
(
やう
)
になるのは
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ませぬ。
134
皆
(
みな
)
社会
(
しやくわい
)
の
制度
(
せいど
)
が
悪
(
わる
)
いのだから、
135
自分
(
じぶん
)
の
意思
(
いし
)
の
合
(
あ
)
うたもの
同志
(
どうし
)
が
結婚
(
けつこん
)
を
自由
(
じいう
)
にしたと
云
(
い
)
つて、
136
お
前
(
まへ
)
さま
等
(
ら
)
にゴテゴテ
言
(
い
)
はれて
堪
(
たま
)
りますか。
137
女
(
をんな
)
は
決
(
けつ
)
して
男
(
をとこ
)
の
玩弄物
(
おもちや
)
ぢやありませぬ。
138
ヤツパリ
一人前
(
いちにんまへ
)
の
人格者
(
じんかくしや
)
である
以上
(
いじやう
)
は
男子
(
だんし
)
の
圧迫
(
あつぱく
)
や
強圧
(
きやうあつ
)
は
許
(
ゆる
)
しませぬ。
139
それだから
無理
(
むり
)
結婚
(
けつこん
)
の
夫
(
をつと
)
を
捨
(
す
)
てて
最愛
(
さいあい
)
の
呆助
(
はうすけ
)
さまと
隠
(
かく
)
れ
忍
(
しの
)
んで、
140
耽美
(
たんび
)
生活
(
せいくわつ
)
を
味
(
あぢ
)
はつてゐたのです。
141
之
(
これ
)
程
(
ほど
)
分
(
わか
)
り
切
(
き
)
つた
道理
(
だうり
)
を
社会
(
しやくわい
)
の
奴
(
やつ
)
は
皆
(
みな
)
盲目
(
めくら
)
だから、
142
嫉妬
(
やきもち
)
半分
(
はんぶん
)
に、
143
あのおつやは
不貞腐
(
ふてくさ
)
れだの、
144
ホームの
破壊者
(
はくわいしや
)
だの、
145
阿婆摺
(
あばずれ
)
女
(
をんな
)
の
張本
(
ちやうほん
)
等
(
など
)
と
下
(
くだ
)
らぬ
事
(
こと
)
を
吐
(
ほざ
)
きやがるので
煩
(
うる
)
さくて
堪
(
たま
)
らず、
146
呆助
(
はうすけ
)
さまと
相談
(
さうだん
)
の
上
(
うへ
)
、
147
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つてライオン
川
(
がは
)
に
投身
(
とうしん
)
し、
148
霊界
(
れいかい
)
に
於
(
おい
)
て
完全
(
くわんぜん
)
なるホームを
作
(
つく
)
り
恋愛味
(
れんあいみ
)
を
味
(
あぢ
)
ははうと
思
(
おも
)
つてやつて
来
(
き
)
た
賢明
(
けんめい
)
な
新
(
あたら
)
しい
女
(
をんな
)
ですよ。
149
コンモンセンスを
欠
(
か
)
いた
社会
(
しやくわい
)
の
馬鹿
(
ばか
)
人間
(
にんげん
)
は、
150
トランセンデンタルな
恋愛
(
れんあい
)
の
権利
(
けんり
)
を
解
(
かい
)
せない
馬鹿者
(
ばかもの
)
ばかりですから、
151
サツパリ
社会
(
しやくわい
)
が
嫌
(
いや
)
になつて
了
(
しま
)
つたのです。
152
想思
(
さうし
)
の
男女
(
だんぢよ
)
をして
自由
(
じいう
)
に
結婚
(
けつこん
)
せしむるのがワイズ・ペアレントフツドでせう。
153
今日
(
こんにち
)
の
親
(
おや
)
と
云
(
い
)
ふものは
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
の
恋愛
(
れんあい
)
までも
抹殺
(
まつさつ
)
しようとするのだから
堪
(
たま
)
らないですよ。
154
吾々
(
われわれ
)
はチヤスティティなラブを
以
(
もつ
)
て
人生
(
じんせい
)
の
最大
(
さいだい
)
要件
(
えうけん
)
と
認
(
みと
)
めてゐるのです。
155
イケ
好
(
す
)
かない
男子
(
だんし
)
と
結婚
(
けつこん
)
する
位
(
くらゐ
)
なら、
156
寧
(
むし
)
ろセリバシイ
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
る
方
(
はう
)
が
何程
(
なにほど
)
ましだか
知
(
し
)
れませぬわ。
157
お
前
(
まへ
)
さまも、
158
未
(
ま
)
だ
年
(
とし
)
がお
若
(
わか
)
いが
屹度
(
きつと
)
妻君
(
さいくん
)
があるでせう。
159
気
(
き
)
に
入
(
い
)
つた
妻君
(
さいくん
)
と
添
(
そ
)
うてゐらつしやいますかな』
160
赤の守衛
『こりやこりや
女
(
をんな
)
、
161
こんな
処
(
ところ
)
で
変愛論
(
れんあいろん
)
をふりかざす
処
(
ところ
)
ぢやないぞ。
162
之
(
これ
)
から
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
罪悪
(
ざいあく
)
を
調
(
しら
)
べるのだ』
163
おつや
『
高竹寺
(
かうちくじ
)
女学校
(
ぢよがくかう
)
の
卒業生
(
そつげふせい
)
で、
164
天才
(
てんさい
)
の
誉
(
ほまれ
)
をとつたおつやで
厶
(
ござ
)
ります。
165
天才
(
てんさい
)
と
秀才
(
しうさい
)
を
兼
(
か
)
ねた
新
(
あたら
)
しい
女
(
をんな
)
だから、
166
到底
(
たうてい
)
お
前
(
まへ
)
さまの
頭
(
あたま
)
へは
入
(
はい
)
りますまい。
167
ホーム・ウエーゼリ・ゼヤリーベの
分
(
わか
)
らない、
168
世
(
よ
)
に
遅
(
おく
)
れた
人間
(
にんげん
)
にはテンで
話
(
はなし
)
にはなりませぬワ。
169
ラブ・イズ・ベストを
以
(
もつ
)
て
吾々
(
われわれ
)
目覚
(
めざ
)
めた
婦人
(
ふじん
)
は
大理想
(
だいりさう
)
としてゐるのですよ。
170
何
(
なん
)
とまア
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かない
顔
(
かほ
)
して
居
(
を
)
りますね、
171
ホホホホホ』
172
赤の守衛
『
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
女性
(
ぢよせい
)
には
冥官
(
めいくわん
)
も
実
(
じつ
)
に
往生
(
わうじやう
)
だ。
173
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
174
其
(
その
)
方
(
はう
)
のメモアルを
調
(
しら
)
べてやるから
此方
(
こちら
)
へ
来
(
こ
)
い。
175
高等
(
かうとう
)
女学校
(
ぢよがくかう
)
を
高竹寺
(
かうちくじ
)
女学校
(
ぢよがくかう
)
とは
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふか』
176
おつや
『
妾
(
わたし
)
の
行状
(
ぎやうじやう
)
を
調
(
しら
)
べるとは、
177
そいつは
面白
(
おもしろ
)
い。
178
純潔
(
じゆんけつ
)
な
婦人
(
ふじん
)
ですよ。
179
サンナム・ボーナムの
行
(
おこな
)
ひを
尽
(
つく
)
して
来
(
き
)
た
才媛
(
さいえん
)
ですから、
180
旧道徳
(
きうだうとく
)
の
古
(
ふる
)
い
頭
(
あたま
)
で
御覧
(
ごらん
)
になれば
罪悪
(
ざいあく
)
かは
知
(
し
)
りませぬが、
181
恋
(
こひ
)
に
目覚
(
めざ
)
めたニユー・スピリツトを
有
(
いう
)
する
妾
(
わたし
)
の
主義
(
しゆぎ
)
は、
182
世
(
よ
)
に
遅
(
おく
)
れた、
183
失敬
(
しつけい
)
ながらお
前
(
まへ
)
さまでは
分
(
わか
)
りますまい。
184
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
人間
(
にんげん
)
の
世界
(
せかい
)
ではラ・ヴイ・セクシユエルと
云
(
い
)
つて
性的
(
せいてき
)
生活
(
せいくわつ
)
を
以
(
もつ
)
て
第一
(
だいいち
)
とするのですから、
185
此
(
この
)
位
(
くらゐ
)
最善
(
さいぜん
)
の
方法
(
はうはふ
)
はありますまい。
186
無理解
(
むりかい
)
な
親
(
おや
)
に
虐
(
しひた
)
げられて、
187
良心
(
りやうしん
)
を
枉
(
ま
)
げ
結婚
(
けつこん
)
した
夫婦
(
ふうふ
)
は、
188
云
(
い
)
はば
罪悪
(
ざいあく
)
の
最
(
さい
)
なるものと
思
(
おも
)
ひます。
189
愛
(
あい
)
なき
結婚
(
けつこん
)
を
強
(
し
)
ひられて、
190
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで、
191
夫婦
(
ふうふ
)
がアンタゴーニズムの
悲劇
(
ひげき
)
を
演
(
えん
)
じて
居
(
ゐ
)
るよりも、
192
想思
(
さうし
)
の
男女
(
だんぢよ
)
が
互
(
たがひ
)
にホーリ・グレールを
傾
(
かたむ
)
けて
天国
(
てんごく
)
の
法悦
(
ほふえつ
)
に
酔
(
よ
)
ふのが
最
(
もつと
)
も
賢明
(
けんめい
)
な
覚
(
さ
)
めた
婦人
(
ふじん
)
のやり
方
(
かた
)
です。
193
お
前
(
まへ
)
さまは
到底
(
たうてい
)
吾々
(
われわれ
)
を
審判
(
しんぱん
)
するだけの
権能
(
けんのう
)
はありませぬよ。
194
何卒
(
どうぞ
)
もう
此
(
この
)
問題
(
もんだい
)
には
此
(
この
)
上
(
うへ
)
クエーストして
下
(
くだ
)
さるな』
195
赤
(
あか
)
はあまりの
事
(
こと
)
に
呆
(
あき
)
れ
果
(
は
)
て、
196
呆助
(
はうすけ
)
の
方
(
はう
)
に
言葉
(
ことば
)
を
向
(
む
)
けた。
197
赤の守衛
『おい
呆助
(
はうすけ
)
、
198
お
前
(
まへ
)
は
此
(
この
)
おつやを
真
(
しん
)
から
愛
(
あい
)
してゐるのか』
199
呆助
『ハイ、
200
私
(
わたくし
)
はおつやの
意見
(
いけん
)
に
共鳴
(
きようめい
)
して
居
(
を
)
ります。
201
よく
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい。
202
恋愛
(
れんあい
)
と
云
(
い
)
ふものは
至高
(
しかう
)
至上
(
しじやう
)
のものでせう。
203
恋愛
(
れんあい
)
至上
(
しじやう
)
の
思想
(
しさう
)
があつて
茲
(
ここ
)
に
初
(
はじ
)
めて
一夫
(
いつぷ
)
一婦
(
いつぷ
)
の
制度
(
せいど
)
に
的確
(
てきかく
)
なる
精神
(
せいしん
)
的
(
てき
)
、
204
道徳
(
だうとく
)
的
(
てき
)
、
205
合理
(
がふり
)
的
(
てき
)
基礎
(
きそ
)
を
与
(
あた
)
ふる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るのです。
206
それ
以外
(
いぐわい
)
の
一夫
(
いつぷ
)
一婦
(
いつぷ
)
論
(
ろん
)
は、
207
所謂
(
いはゆる
)
偽善説
(
ぎぜんせつ
)
に
非
(
あら
)
ざれば、
208
単
(
たん
)
なる
便宜
(
べんぎ
)
的
(
てき
)
、
209
因襲
(
いんしふ
)
的
(
てき
)
、
210
実理
(
じつり
)
的
(
てき
)
の
御
(
ご
)
都合主義
(
つがふしゆぎ
)
か、
211
又
(
また
)
は
形式
(
けいしき
)
主義
(
しゆぎ
)
たるものに
過
(
す
)
ぎませぬ。
212
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
きは
少
(
すくな
)
くとも
人間
(
にんげん
)
として
第二義
(
だいにぎ
)
的
(
てき
)
の
考察
(
かうさつ
)
として
取扱
(
とりあつか
)
はるべき
問題
(
もんだい
)
となると
思
(
おも
)
ひます。
213
至上
(
しじやう
)
至高
(
しかう
)
の
性的
(
せいてき
)
道徳
(
だうとく
)
としての
恋愛
(
れんあい
)
は
二
(
ふた
)
つの
人格
(
じんかく
)
の
全的
(
ぜんてき
)
結合
(
けつがふ
)
なるが
故
(
ゆゑ
)
に、
214
そこに
一夫
(
いつぷ
)
一婦
(
いつぷ
)
の
原則
(
げんそく
)
が
確認
(
かくにん
)
されたとすれば、
215
必然
(
ひつぜん
)
的
(
てき
)
に
之
(
これ
)
と
相即
(
さうそく
)
不離
(
ふり
)
の
関係
(
くわんけい
)
をなして
生
(
しやう
)
ずるものは
所謂
(
いはゆる
)
貞操
(
ていさう
)
観念
(
くわんねん
)
でせう。
216
男女
(
だんぢよ
)
が
互
(
たがひ
)
に
貞操
(
ていさう
)
を
厳守
(
げんしゆ
)
し
格守
(
かくしゆ
)
する
事
(
こと
)
によつてのみ、
217
此
(
この
)
一夫
(
いつぷ
)
一婦
(
いつぷ
)
が
完全
(
くわんぜん
)
に
実現
(
じつげん
)
せられ
得
(
う
)
るものです。
218
故
(
ゆゑ
)
に
貞操
(
ていさう
)
は
恋愛
(
れんあい
)
の
神聖
(
しんせい
)
なる
擁護者
(
ようごしや
)
たると
共
(
とも
)
に、
219
又
(
また
)
真
(
しん
)
の
恋愛
(
れんあい
)
は
必
(
かなら
)
ず
貞操
(
ていさう
)
が
伴
(
ともな
)
ふものです』
220
赤の守衛
『
随分
(
ずいぶん
)
猛烈
(
まうれつ
)
な
恋愛
(
れんあい
)
関係
(
くわんけい
)
だのう。
221
嫉妬
(
やきもち
)
や
悋気
(
りんき
)
が
随分
(
ずいぶん
)
花
(
はな
)
を
咲
(
さ
)
かしただらうのう』
222
呆助
『
世間
(
せけん
)
的
(
てき
)
物質
(
ぶつしつ
)
的
(
てき
)
の
欲望
(
よくばう
)
に
煩
(
わづら
)
はされてゐない
純真
(
じゆんしん
)
の
恋愛
(
れんあい
)
の
場合
(
ばあひ
)
に
於
(
おい
)
ては、
223
嫉妬
(
しつと
)
なるものは
必
(
かなら
)
ずしも
悪徳
(
あくとく
)
として
非難
(
ひなん
)
せらるべきものでなく、
224
寧
(
むし
)
ろ
双方
(
さうはう
)
の
純潔
(
じゆんけつ
)
を
保
(
たも
)
たむとする
貞操
(
ていさう
)
観念
(
くわんねん
)
の
副作用
(
ふくさよう
)
とも
見
(
み
)
られるのです。
225
悋気
(
りんき
)
をせない
女
(
をんな
)
は
明
(
あきら
)
かに
不貞
(
ふてい
)
の
女
(
をんな
)
である
場合
(
ばあひ
)
が
最
(
もつと
)
も
多
(
おほ
)
いものです。
226
それ
故
(
ゆゑ
)
吾々
(
われわれ
)
は
悋気
(
りんき
)
もしたり、
227
イチヤついてもみたり、
228
低気圧
(
ていきあつ
)
が
両人
(
りやうにん
)
の
間
(
あひだ
)
に
起
(
おこ
)
つたりする
事
(
こと
)
は、
229
幾度
(
いくたび
)
か
出現
(
しゆつげん
)
しますが、
230
之
(
これ
)
が
所謂
(
いはゆる
)
貞操
(
ていさう
)
観念
(
くわんねん
)
の
濃厚
(
のうこう
)
なる
証拠
(
しようこ
)
であらうと
思
(
おも
)
ひます、
231
エヘヘヘヘヘ』
232
赤の守衛
『アーア、
233
サツパリ
煙
(
けむり
)
に
捲
(
ま
)
かれて
了
(
しま
)
つた。
234
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
、
235
お
目出度
(
めでた
)
う。
236
此
(
この
)
先
(
さき
)
はどうなるか
知
(
し
)
りませぬが、
237
先
(
ま
)
づ
伊吹戸主
(
いぶきどぬしの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
で
諄々
(
じゆんじゆん
)
と
恋愛
(
れんあい
)
神聖論
(
しんせいろん
)
でもまくし
立
(
た
)
てなさるが
宜
(
よろ
)
しからう。
238
併
(
しか
)
しおつやの
夫
(
をつと
)
は
昨日
(
さくじつ
)
ここを
通過
(
つうくわ
)
したから、
239
嘸
(
さぞ
)
今頃
(
いまごろ
)
は
伊吹戸主
(
いぶきどぬしの
)
神
(
かみ
)
の
前
(
まへ
)
でお
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
の
現界
(
げんかい
)
に
於
(
お
)
ける
一切
(
いつさい
)
の
行動
(
かうどう
)
を
陳述
(
ちんじゆつ
)
したであらう。
240
さア
早
(
はや
)
く
通
(
とほ
)
りなさい』
241
おつや
『ハイ、
242
下
(
くだ
)
らぬ
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
しまして
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬ。
243
併
(
しか
)
しながら
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
の
結合力
(
けつがふりよく
)
は
極
(
きは
)
めて
硬固
(
かうこ
)
なもので
厶
(
ござ
)
りますから、
244
仮令
(
たとへ
)
地獄
(
ぢごく
)
の
底
(
そこ
)
へ
落
(
おと
)
されても
滅多
(
めつた
)
に
分離
(
ぶんり
)
などは
致
(
いた
)
しませぬワ』
245
赤の守衛
『エー、
246
八釜
(
やかま
)
しい。
247
そんな
問題
(
もんだい
)
は
審判廷
(
しんぱんてい
)
で
喋々
(
てふてふ
)
とまくし
立
(
た
)
てたが
宜
(
よ
)
からう。
248
早
(
はや
)
く
通
(
とほ
)
れ』
249
と
一喝
(
いつかつ
)
した。
250
二人
(
ふたり
)
は
睦
(
むつま
)
じさうに
手
(
て
)
を
曳
(
ひ
)
きながら、
251
いそいそとして
門
(
もん
)
を
潜
(
くぐ
)
り
入
(
い
)
る。
252
白の守衛
『
何
(
なん
)
とまア
脱線
(
だつせん
)
した
女
(
をんな
)
が
来
(
き
)
たものだなア。
253
赤
(
あか
)
さま、
254
之
(
これ
)
からチツと
方針
(
はうしん
)
を
変
(
か
)
へなくちやなりますまいぞや』
255
赤の守衛
『
如何
(
いか
)
にも
白
(
しろ
)
さま、
256
非常
(
ひじやう
)
に
現界
(
げんかい
)
には
魔風
(
まかぜ
)
恋風
(
こひかぜ
)
が
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
んでゐると
見
(
み
)
えますな。
257
之
(
これ
)
では
到底
(
たうてい
)
社会
(
しやくわい
)
の
秩序
(
ちつじよ
)
は
保
(
たも
)
たれますまい。
258
ああ
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だなア』
259
(
大正一二・二・一〇
旧一一・一二・二五
北村隆光
録)
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