霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二二章 空走(くうそう)〔一三五八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻 篇:第4篇 怪妖蟠離 よみ(新仮名遣い):かいようばんり
章:第22章 空走 よみ(新仮名遣い):くうそう 通し章番号:1358
口述日:1923(大正12)年02月10日(旧12月25日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年1月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
ガリヤはサベル姫の口に血が付いているのを見てとり、耳に喰いつこうとしたときに腕をグッと握った。するとそれは毛だらけの古狸の手であった。ガリヤは前身の力をぐっと籠めて離さず、懐から取り出した細紐で四足を固くくくって天上裏に吊り下げてしまった。
狸の泣き叫ぶ声を聞いて、高宮彦と高宮姫が部屋にやってきた。ガリヤから化け狸の一件を聞いた高宮彦は、これは自分が手料理すると言ってしばられた狸を持ち去った。これはサベル姫に化けていた部下の幻相坊を助けるためであった。
高宮姫は、サベル姫が狸であったことを知らず、ガリヤの話に驚いていた。それからガリヤは、ケースと初公を助けようと密談の間の外にやってきて、壁に耳を当てて様子を探った。室内にいる初稚姫、宮野姫、ケース、初公は、たがいに取り合いに火花を散らしているようであった。
ケースと初公は、狸に化かされてすっかり現を抜かしている。ガリヤはたまらずドアをこじあけて部屋に押し入った。ケースと初は、狸に耳たぶをむしり取られて血みどろになって倒れている。ガリヤは二匹の狸を追いまわし、一匹を抑えたとたんに腕にかぶりつかれた。ガリヤが放したすきに二匹の狸は姿を隠してしまった。
しばらくすると、宣伝歌の声が涼しく聞こえてきた。猛犬の声もする。あたりを見れば、ガリヤは草ぼうぼうの萱野の真ん中に立っていた。ケース、初は血みどろになって呻いている。
宣伝歌の主は初稚姫であった。妖幻坊、幻魔坊、幻相坊らはスマートの勢いにたまらず、曲輪の術で高宮姫を雲に乗せて、東南の天を指して逃げ帰って行った。
竹藪のなかでは、ランチと片彦が蜘蛛の巣だらけになり青い顔をしてふるえていた。徳公は耳たぶをむしられて野原にのびていた。
ガリヤは初稚姫に助けてもらった感謝の意を述べた。ランチと片彦は、徳公を助けてやってきて、初稚姫に危難を救ってもらったことを涙と共に感謝した。
初稚姫は六人によくよく真理を説き諭した。六人は心を取り直し、祠の森を指して進んで行くことになった。初稚姫は六人を別れ、スマートを従え、宣伝歌を歌いながら西南指して進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-12-19 22:00:46 OBC :rm5222
愛善世界社版:260頁 八幡書店版:第9輯 473頁 修補版: 校定版:269頁 普及版:116頁 初版: ページ備考:
001 ガリヤはサベル(ひめ)口許(くちもと)(あか)生血(いきち)がついてゐるのを()て、002いよいよ此奴(こいつ)不思議(ふしぎ)(やつ)()(そそ)いだ。003サベルはガリヤに(にら)みつけられ、004ビリビリと身慄(みぶる)ひしながら、005(にはか)(わら)(ごゑ)
006サベル姫『ホホホホホ、007あのマア(をとこ)らしいお(かほ)わいの、008なぜ(その)(やう)(わたし)(にら)ましやんすのですか』
009ガリヤ『お(まへ)口許(くちもと)(あか)()がついてるので、010不思議(ふしぎ)だと(おも)つて(のぞ)いたのだ』
011 サベルは(おどろ)いて、012小袖(こそで)(たもと)(くちびる)()き、
013サベル姫『これは(べに)をつけましたの、014(あま)(あわ)てたものですから、015つひ(なが)れまして、016無細工(ぶさいく)(ところ)を、017貴方(あなた)見付(みつ)けられたのですよ。018どうです、019貴方(あなた)はお(いや)ですか』
020ガリヤ(いや)でも(なん)でもありませぬが、021(わたし)(ひと)(みみ)にかぶりついたり、022(だま)にキツスするやうな化女(ばけをんな)(いや)ですよ。023(とく)()うなりましたか、024随分(ずいぶん)満足(まんぞく)して()るでせうな』
025サベル姫『ハイ、026(とく)さまは()(にん)のお(かた)一任(いちにん)しておきました。027(わたし)028本当(ほんたう)にガの()のついた(ひと)()きでたまらないのですよ。029ねえ、030貴方(あなた)031(あま)(にく)うはありますまい』
032()ひながら、033ガリヤの(みみ)()ひつかうとした。034ガリヤはサベルの(うで)をグツと(にぎ)つてみれば、035象牙(ざうげ)細工(ざいく)のやうな(ひか)つた(うで)()えてゐたのは、036()だらけの古狸(ふるだぬき)()であつた。037ガリヤは全身(ぜんしん)(ちから)()めてグツと(にぎ)り、038チツとも(はな)さぬ。039サベルは(たちま)正体(しやうたい)(あら)はし、040古狸(ふるだぬき)となつてヂタバタ(からだ)をもがいてゐる。041ガリヤは(ただち)(ふところ)より細紐(ほそひも)取出(とりだ)し、042()(あし)(かた)(くく)つて、043天井裏(てんじやううら)()()げて(しま)つた。044そしてケース、045(はつ)両人(りやうにん)此処(ここ)引寄(ひきよ)せて、046()()ましてやらうとの(かんが)へであつた。047(たぬき)一生(いつしやう)懸命(けんめい)悲鳴(ひめい)をあげて()(さけ)ぶ。048(この)(こゑ)(おどろ)いてやつて()たのは、049妖幻坊(えうげんばう)高姫(たかひめ)二人(ふたり)であつた。
050妖幻(えうげん)『ヤア、051ガリヤさま、052コリヤ(なん)ですか、053えらいものが()()りましたな』
054ガリヤ『ハイ、055狸汁(たぬきじる)でも(こしら)へて一杯(いつぱい)やつたら、056随分(ずいぶん)(うま)いことでせう。057サベル(ひめ)なんて、058うまく()けよつて、059吾々(われわれ)(みみ)()()らうと(いた)した曲者(くせもの)ですよ。060ここに沢山(たくさん)ゐる美人(びじん)(みな)(たぬき)ばかりでせう。061どの(をんな)もどの(をんな)も、062一斉(いつせい)(みみ)(うご)いてるぢやありませぬか。063ヤ、064(まへ)さまも(みみ)(うご)きますね』
065妖幻坊『アハハハハ、066何分(なにぶん)空気(くうき)動揺(どうえう)(はげ)しい(ところ)ですから、067身体(しんたい)末端(まつたん)(かぜ)()られて(うご)くのでせう。068(しか)しながら(この)(たぬき)(わたし)手料理(てれうり)(いた)しますから、069(まか)(くだ)さい』
070()ひながら(たぬき)()げて(つぎ)()()かうとする。071高宮姫(たかみやひめ)吃驚(びつくり)して、072一言(ひとこと)()はず……あのサベル(ひめ)(たぬき)であつたか、073(なん)とマア油断(ゆだん)のならぬものだなア……と(ひそ)かに(した)()いてゐた。074高宮彦(たかみやひこ)無理(むり)無体(むたい)古狸(ふるだぬき)引抱(ひつかか)自分(じぶん)居間(ゐま)姿(すがた)(かく)した。075これは(つな)(ほど)いてやつて自分(じぶん)家来(けらい)(たす)ける(ため)である。076サベルに()けてゐたのは幻相坊(げんさうばう)であつた。077それからガリヤはケース、078初公(はつこう)密談(みつだん)居間(ゐま)()つて様子(やうす)(さぐ)らうと、079跫蛩音(あしおと)(しの)ばせ(かべ)(みみ)()てて()いてゐると、080()(にん)男女(だんぢよ)金切声(かなきりごゑ)()して、081(あま)つたるい言葉(ことば)つきで(なに)意茶(いちや)ついてゐるやうである。082室内(しつない)()(にん)はガリヤが(そと)()つて様子(やうす)()いてることは(ゆめ)にも()らず、083(うつつ)をぬかして、084(をんな)取合(とりあひ)085(をとこ)取合(とりあひ)火花(ひばな)()らして(まさ)(たたか)(たけなは)なる(とき)であつた。086天下(てんか)分目(わけめ)関ケ原(せきがはら)087天王山(てんのうざん)晴戦(はれいくさ)(いま)瞬間(しゆんかん)(せま)れりといふ調子(てうし)で、088あらゆるベストを(つく)し、089夢中(むちう)になつてゐる。
090初稚姫(実は古狸)初稚姫(はつわかひめ)のあたえは、091(なん)()つてもケースさまが()きです。092そして(はつ)さまもヤツパリ()きですワ』
093ケース『エヘヘヘヘ、094オイ初公(はつこう)095どうだ、096ヤツパリ、097ケースのものだらう。098貴様(きさま)宮野姫(みやのひめ)辛抱(しんばう)せい』
099馬鹿(ばか)()ふな、100(おれ)(はつ)から初稚姫(はつわかひめ)さまにきめてあるのだ。101宮野姫(みやのひめ)さまはお(まへ)のものだよ』
102ケース(なん)()つてもケースの(つま)初稚姫(はつわかひめ)さまだよ』
103宮野姫(実は古狸)(わたし)(たれ)(なん)()つても、104ケースさまが()きですよ。105そして(はつ)さまも、106ヤツパリ()きですワ、107宮野(みやの)二人(ふたり)(をつと)()ちますワ』
108初稚姫(実は古狸)初稚(はつわか)二人(ふたり)とも(をつと)()ちますワ』
109ケース(なん)と、110色男(いろをとこ)(うま)れて()ると(くる)しいものだなア。111(なん)でこんな()(をとこ)に、112(おや)(やつ)113()みやがつたのだらう。114チツと()迷惑(めいわく)(かんが)へて製造(せいざう)すると()いのだけれどなア。115有難(ありがた)迷惑(めいわく)だ』
116調子(てうし)()りケースは自惚(うぬぼ)れてゐる。117ガリヤはたまらなくなつて、118無理(むり)にドアを()しあけ、119飛込(とびこ)んで()ると、120ケース、121(はつ)両人(りやうにん)は、122古狸(ふるだぬき)(みみ)たぶをスツカリむしり()られ、123()みどろになつて(たふ)れてゐる。124古狸(ふるだぬき)()()(うしな)ひ、125(ねづみ)のやうに(へや)(すみ)をクルクルと()(まは)る。126ガリヤは(やうや)くにして一匹(いつぴき)(たぬき)(おさ)へた一刹那(いつせつな)127()(うで)にかぶり()かれ……「アイタタ」と()つて(はな)した途端(とたん)に、128二匹(にひき)古狸(ふるだぬき)一生(いつしやう)懸命(けんめい)姿(すがた)(かく)して(しま)つた。129(しばら)くすると宣伝歌(せんでんか)(こゑ)(すず)しく(きこ)えて()た。
130『ウー ワンワン』
131猛犬(まうけん)(こゑ)132四辺(あたり)()れば、133ガリヤは(くさ)奔々(ばうばう)たる萱野(かやの)真中(まんなか)()つてゐた。134そして、135ケース、136(はつ)両人(りやうにん)(かほ)一面(いちめん)(どろ)まぶれとなり、137(みみ)たぶを半分(はんぶん)ばかり()()られ、138()みどろになつて(うめ)いてゐる。139宣伝歌(せんでんか)(ぬし)(しん)初稚姫(はつわかひめ)であつた。140そして愛犬(あいけん)スマートは前後(ぜんご)左右(さいう)()(まは)り、141古狸(ふるだぬき)()()け、142()(ころ)(その)(いきほ)ひに、143流石(さすが)妖幻坊(えうげんばう)幻魔坊(げんまばう)144幻相坊(げんさうばう)もゐたたまらず、145曲輪(まがわ)(じゆつ)(もつ)て、146高宮姫(たかみやひめ)(くも)()せ、147空中(くうちう)赤茶色(あかちやいろ)(ふと)()をチラチラ()せながら、148東南(とうなん)(てん)()して(かへ)つて()く。149竹藪(たけやぶ)(なか)には蜘蛛(くも)()だらけになつて、150ランチ、151片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)(あを)(つら)して(ふる)うてゐた。152徳公(とくこう)(みみ)たぶをむしられ、153(だい)()になつて、154シクシク(ばら)にふん()びて()た。
155 初稚姫(はつわかひめ)はガリヤに(むか)ひ、
156初稚姫貴方(あなた)三五教(あななひけう)信者(しんじや)ぢやありませぬか』
157ガリヤ『ヤ、158もう面目(めんぼく)次第(しだい)(ござ)いませぬ。159(たぬき)巣窟(さうくつ)()りながら、160(ひと)(しら)べてやらうと(おも)ひ、161ここまでやつて(まゐ)り、162反対(あべこべ)にしてやられました。163貴女(あなた)(しん)初稚姫(はつわかひめ)(さま)(ござ)いますか。164貴女(あなた)()神力(しんりき)()りまして、165吾々(われわれ)一同(いちどう)()()めました。166有難(ありがた)(ござ)います』
167感謝(かんしや)してゐる。168そこへランチ、169片彦(かたひこ)両将軍(りやうしやうぐん)徳公(とくこう)(たす)けて()(きた)り、170初稚姫(はつわかひめ)(まへ)危難(きなん)(すく)はれしことを(なみだ)(とも)感謝(かんしや)し、171これより(こころ)取直(とりなほ)し、172(ほこら)(もり)()して(すす)()くこととなつた。173初稚姫(はつわかひめ)(ろく)(にん)(もの)によくよく真理(しんり)()(さと)し、174スマートを(したが)へて、175宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら西南(せいなん)()して(わか)()く。
176大正一二・二・一〇 旧一一・一二・二五 松村真澄録)
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