家令のオールスチンは群衆に踏み倒されて館にかつぎこまれ、日夜苦悶を続けていた。小国別は仮死状態に陥り、デビスとケリナの二人の娘は帰ってこず、三千彦の行方もわからなくなり、小国姫は悲痛の淵に沈んでいた。
館の中にはオークス、ビルマの二人が切り盛りをしていた。小国姫は二人を招いて相談をした。オークスとビルマは、三千彦をけなし、しきりにワックスを跡取りとするよう小国姫に勧めた。そして自分たちを家令とするよう小国姫に承諾させてしまった。
そこへ小国別の容態が変わったと知らせが来たため、小国姫、オークス、ビルマの三人は急ぎ病床へ向かった。小国別はむっくと起き上がり、三千彦とオールスチンに会いたいと告げた。
オークスは、三千彦は町民の怒りの的となり、オールスチンは踏み倒されて、両人とも頼りにできないため、自分たちが家令に任命されたと小国別に報告した。小国別は、家令職はオールスチンの認可を得た上で、ハルナの都の大黒主の許可を得なければ任命することはできないと叱りつけた。
オークスは、三五教の三千彦を館に引き入れた罪を大黒主に注進すると小国別夫婦を脅しつける。小国別は、このような悪人を決して使ってはならぬと怒気を含んで怒鳴りたてると、昏睡状態に陥った。
小国姫は、小国別の命令だからこれきり館への出入りを禁じるとオークスとビルマに申し渡した。オークスは、小国別夫婦を国敵として訴えると脅し文句を居丈高に述べ立てると、ビルマと共に表に駆けだした。
牛にぶつかって養生していたエルは、ようやく館に戻ってきた。玄関にてふと走り出てくるオークスとビルマに出会った。エルは二人の相好がただ事ならないのに不審を起こして声をかけた。
オークスとビルマは、小国別夫婦に脅迫的に迫ってここまで来たが、うっかり町民に妙なことをしゃべって後の取りまとめに困ってはならないと思っていたので、これ幸いとエルの呼びかけに応じて受付に座り、ひそびそ話にふけった。