霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 三狂(さんきやう)〔一四六二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻 篇:第2篇 顕幽両通 よみ(新仮名遣い):けんゆうりょうつう
章:第12章 三狂 よみ(新仮名遣い):さんきょう 通し章番号:1462
口述日:1923(大正12)年03月25日(旧02月9日) 口述場所:皆生温泉 浜屋 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年5月24日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
三千彦はシャルと共に小声で宣伝歌を歌いながら八衢街道とは知らず、現界の道路を通過する気分で進んで行く。八衢の関所にさしかかると、赤の守衛が一人の男を調べている。それは鰐口曲冬であった。
仏教は研究してゆくと何もなくなってしまうから止めた、と言う曲冬に対し、赤の守衛は、霊界の消息を洩らした仏教に対して尊敬帰依の心を捨てて研究に走ったために、何も掴めなかったのだと曲冬を叱責している。
赤の守衛の説に納得した曲冬は、それでは一つその方向で研究しなおしてみよう、と言ってさらに諭されている。そして、聖書や三五教も研究したが、何も得るところなく脱会したと答えた。
赤の守衛は、霊界物語の筆録者までやって直接に教示を受けながら何もわからないのは、曲冬の慢心した研究的態度が原因だと指摘した。曲冬は悪びれるところもなく、十分に研究をしなければ、社会に施してよい教えかどうか調べられない、と自説を展開する。
赤の守衛は、ここである一定の時間を経なくては、曲冬のような汚れた魂は天国に行くことができないと伝えた。現世において心にもないことをいい、おべっかを使ったり体をやつしたり種々の外念をすっかり取り外して第二の内部状態に入り、内的生涯の関門を超える必要があると説いた。
内的とは、意志想念のことであり、その意志が善であり真であれば天国へ昇ることができると続けた。内的状態になってからエンゼルの教えを聞いてそれが耳に入るようならば、天国へ行く資格が具備しており、どうしても耳に入らなければ地獄に行く。これが第三状態といって、精霊の去就を決するときだという。
そこへ高姫が追いかけてきてシャルに毒づくと、守衛に対して、この二人は悪人だからこらしめるようにと命令した。赤白の守衛は高姫の屁理屈に辟易し、白の守衛がしゅろ帚ではき出すと、高姫とシャルは逃げて行ってしまった。
赤の守衛は三千彦に、川に悪者に投げ込まれて精霊が霊界に来ているが、霊犬スマートが体を助け上げて介抱している、やがてスマートが迎えに来るから現界に帰るようにと伝えた。そしてテルモン山にはまだ悪人がはびこっているから注意するようにと気を付けた。
三千彦は、高姫は亡くなったはずが霊界で脱線振りを発揮していることを不思議に思い、守衛に尋ねた。守衛は、高姫はまだ現界に寿命が三十年ばかり残っているが、あまり現界で布教の邪魔をするので、時置師神が伊吹戸主大神に願い出て、三年間中有界で修業をさせているのだと答えた。
その間に高姫の肉体は駄目になってしまうので、現界で三年後に亡くなる他の人間の肉体に移して、残りの三十年の寿命を与えるのだと説明した。
三千彦と守衛が話していると、南の方から一頭の猛犬が走ってきて二声三声高く叫んだ。この声にはっと気がつけば、八衢の光景は消え失せて、三千彦はアンブラック川の堤の青芝の上に横たわっていた。スマートは行儀よく側に座ってうれしげに三千彦の顔をながめて尾を振っている。
テルモン山の方を見ると、黒煙もうもうと立ち上り、黒雲のごとく空を封じている。月は黒煙の間に見え隠れし足早に去るごとくに見えている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5712
愛善世界社版:157頁 八幡書店版:第10輯 317頁 修補版: 校定版:165頁 普及版:75頁 初版: ページ備考:
001 三千彦(みちひこ)はシャルと(とも)小声(こごゑ)にて宣伝歌(せんでんか)(うた)(なが)ら、002八衢(やちまた)街道(かいだう)とは()らず現界(げんかい)道路(だうろ)通過(つうくわ)する気分(きぶん)にて(すす)()く。003八衢(やちまた)関所(せきしよ)には(れい)(ごと)赤面(あかづら)004白面(しろづら)二人(ふたり)守衛(しゆゑい)儼然(げんぜん)(ひか)へて()る。005()れば一人(ひとり)(をとこ)赤面(あかづら)守衛(しゆゑい)何事(なにごと)調(しら)べられて()た。
006(あか)『その(はう)姓名(せいめい)(なん)(まを)すか』
007(をとこ)『ハイ、008(わたし)鰐口(わにぐち)曲冬(まがふゆ)(まを)します』
009(あか)(その)(はう)(なに)信仰(しんかう)()つてゐるか』
010曲冬(まがふゆ)『ハイ、011(べつ)にこれと()信仰(しんかう)(ござ)いませぬが、012神儒仏(しんじゆぶつ)三教(さんけう)(すこ)(ばか)(かぢ)つて()ります』
013(あか)(その)(うち)何教(なにけう)一番(いちばん)(まへ)(こころ)(てき)したか、014(いな)徹底(てつてい)して()たと(かんが)へたか』
015曲冬(まがふゆ)『ハイ、016(はじ)めは一生(いつしやう)懸命(けんめい)仏教(ぶつけう)研究(けんきう)(いた)しました。017さうした(ところ)何処(どこ)(ひと)()(とこ)がないので()めまして(ござ)います。018(えう)するに仏教(ぶつけう)百合根(ゆりね)(やう)なもので、019(いち)(まい)々々(いちまい)(かは)()いて(おく)(ふか)(すす)みますと、020(なん)にも()くなつて(しま)ひます、021所謂(いはゆる)仏教(ぶつけう)()だと(おも)ひます。022能書(のうがき)(ばか)沢山(たくさん)(なら)()て、023まるで薬屋(くすりや)広告(くわうこく)()(やう)なものですからな。024売薬(ばいやく)広告(くわうこく)ならば「(この)(くすり)腹痛(はらいたみ)とか、025疝気(せんき)とか、026肺病(はいびやう)(もち)ゆべし。027(また)()何回(なんくわい)服用(ふくよう)とか、028()()めとか、029(みづ)にて()めとか、030食前(しよくぜん)がよいとか、031食後(しよくご)がよいとか、032大人(おとな)ならば何粒(なんつぶ)033小人(せうにん)ならば何粒(なんつぶ)034(なん)(さい)以下(いか)何粒(なんつぶ)」と()叮嚀(ていねい)服用書(ふくようがき)()いて()ますが、035仏教(ぶつけう)経典(きやうてん)(ただ)観音(くわんおん)(ねん)じたら悪事(あくじ)災難(さいなん)(のが)れるとか、036阿弥陀(あみだ)(ねん)じたら極楽(ごくらく)にやると()いてあるのみで、037八万(はちまん)四千(よんせん)経巻(きやうくわん)何処(どこ)にも(その)用法(ようはふ)(しめ)してないので駄目(だめ)だと(おも)ひました』
038(あか)『お(まへ)霊界(れいかい)消息(せうそく)()らしたる仏教(ぶつけう)(たい)尊敬(そんけい)帰依(きえ)(こころ)()て、039なまじひに研究(けんきう)(など)(まを)してかかるから、040(なん)にも(つか)めないのだ。041霊界(れいかい)幽遠(いうゑん)微妙(びめう)なる真理(しんり)物質界(ぶつしつかい)法則(はふそく)基礎(きそ)として幾万(いくまん)(ねん)研究(けんきう)するとも解決(かいけつ)のつく道理(だうり)がない。042(しば)らく理智(りち)()て、043意志(いし)(もつぱ)らとして研究(けんきう)すれば(かみ)(あい)044(ほとけ)(ぜん)045(およ)(しん)(しん)との光明(くわうみやう)がさして()るのだ。046仏教(ぶつけう)がつまらない(など)(かん)ずるのは、047所謂(いはゆる)(まへ)精神(せいしん)がつまらないからだ。048(ほとけ)(きよ)きお姿(すがた)がお(まへ)(くも)つた(かがみ)(うつ)らないからだ』
049曲冬(まがふゆ)『さう(うけたま)はれば、050さうかも()れませぬが、051如何(どう)(わか)(にく)(ござ)います』
052(あか)人間(にんげん)分際(ぶんざい)として(ほとけ)()精神(せいしん)理解(りかい)しようとするのが間違(まちが)ひだ。053(ほとけ)慈悲(じひ)(その)ものだ、054至仁(しじん)至愛(しあい)意味(いみ)(わか)れば一切(いつさい)経文(きやうもん)(わか)つたのだ』
055曲冬(まがふゆ)『ア、056さうで(ござ)いましたか。057それは、058(えら)(かんが)(ちが)ひをして()りました。059(これ)から(ひと)研究(けんきう)をやつて()ませう』
060(あか)駄目(だめ)だ。061(ふた)()には研究(けんきう)々々(けんきう)口癖(くちぐせ)(やう)(まを)すが、062(まへ)()研究(けんきう)(いぬ)(やいと)だ。063ワンワン吠猛(ほえたけ)るばかりが(のう)だ。064()めたら()からう。065左様(さやう)心理(しんり)状態(じやうたい)では到底(たうてい)(ほとけ)御心(みこころ)(さと)(こと)出来(でき)ない。066それから(つぎ)(なに)信仰(しんかう)したのだ』
067曲冬(まがふゆ)『ハイ、068(べつ)信仰(しんかう)(いた)しませぬが、069ヤハリ聖書(せいしよ)研究(けんきう)(いた)しました』
070(あか)旧約(きうやく)か、071新約(しんやく)か』
072曲冬(まがふゆ)勿論(もちろん)旧約(きうやく)(ござ)います』
073(あか)(なに)()(ところ)があつたか』
074曲冬(まがふゆ)『ハイ、075()(ところ)()(ところ)(ござ)いませぬ。076これもヤツパリ(わたし)(しやう)()ひませぬので五里(ごり)霧中(むちゆう)逍遙(さまよ)(ところ)に、077或人(あるひと)(すす)めによつて三五教(あななひけう)(はい)つて、078()なり真面目(まじめ)研究(けんきう)して()(ところ)079どうも変性(へんじやう)女子(によし)言行(げんかう)()()はないので、080弊履(へいり)()つる(ごと)脱会(だつくわい)し、081(いま)懺悔(ざんげ)生活(せいくわつ)(はい)つて()ります』
082(あか)『その(はう)霊界(れいかい)物語(ものがたり)筆写(ひつしや)(まで)やつたぢやないか。083直接(ちよくせつ)教示(けうじ)()(なが)ら、084(わか)らぬとは()ても(こま)つた(めくら)だな。085矢張(やつぱり)研究(けんきう)(てき)態度(たいど)(もつ)てかかつて()るからだ。086結構(けつこう)(かみ)(をしへ)筆写(ひつしや)(なが)ら、087ホンの機械(きかい)使(つか)はれたやうなものだ。088さうして幾分(いくぶん)(しん)ずる(ところ)があつたのか』
089曲冬(まがふゆ)『ハイ、090女子(によし)(はう)幾分(いくぶん)(しん)じて()りましたが、091(しか)しこれは()加減(かげん)なペテンだと(かんが)へて()りました。092それよりも変性(へんじやう)男子(なんし)神諭(しんゆ)(おも)きを()いて()つた(ところ)093(その)原書(げんしよ)()(あんま)文章(ぶんしやう)拙劣(せつれつ)なのに愛想(あいさう)をつかし、094信仰(しんかう)次第(しだい)()げて(しま)ひました』
095(あか)馬鹿(ばか)だな。096(かみ)(をしへ)文章(ぶんしやう)巧拙(かうせつ)によるものでないぞ。097文章(ぶんしやう)なんかは枝葉(しえう)問題(もんだい)だ、098その言葉(ことば)(なか)包含(はうがん)する密意(みつい)(あぢは)ふのだ。099()はあれども節穴(ふしあな)同然(どうぜん)100(みみ)はあれども木耳(きくらげ)同然(どうぜん)101(した)はあれども(かず)()同然(どうぜん)102(はな)はあれども節瘤(ふしこぶた)同然(どうぜん)103そんな(こと)三五教(あななひけう)()いの、104(わる)いの、105男子(なんし)がどうの、106女子(によし)がどうのと()資格(しかく)があるか。107よくも慢心(まんしん)したものだのう』
108曲冬(まがふゆ)(べつ)慢心(まんしん)はして()りませぬ。109世界(せかい)人間(にんげん)宣伝(せんでん)しようと(おも)へば信仰(しんかう)信仰(しんかう)ですが充分(じうぶん)研究(けんきう)()げ、110これなら社会(しやくわい)(ほどこ)して差支(さしつかへ)ないと()(ところ)まで調(しら)()げねば社会(しやくわい)害毒(がいどく)(なが)しますからな。111()はば社会(しやくわい)(ため)忠実(ちうじつ)なる研究(けんきう)ですよ』
112(あか)『お(まへ)()我執(がしふ)我見(がけん)がとれぬからいけない。113異見(いけん)外道(げだう)114自然(しぜん)外道(げだう)115断見(だんけん)外道(げだう)()ふものだ。116そんな態度(たいど)では何処(どこ)(まで)(かみ)(さま)真理(しんり)(さと)らして(くだ)さらぬぞ。117(かみ)(さま)(おろか)なるもの、118(よわ)きもの、119(ちひ)さきものをして(まこと)(みち)(さと)させ(たま)ふのだ。120(けつ)して研究(けんきう)(てき)態度(たいど)()(やう)慢心者(まんしんもの)には、121密意(みつい)はお(しめ)しなさらぬ。122(まへ)大学(だいがく)卒業(そつげふ)して一廉(ひとかど)学者(がくしや)(つも)りで()るが、123(その)学問(がくもん)八衢(やちまた)地獄(ぢごく)では一文(いちもん)価値(かち)もない。124いや(かへつ)(さまた)げとなり苦悩(くなう)(いん)となるものだ。125(まへ)両親(りやうしん)(こま)つた(こと)をしたものだな』
126曲冬(まがふゆ)『お(まへ)門番(もんばん)(くせ)文士(ぶんし)(むか)つて(えら)さうに()ひますが、127日進(につしん)月歩(げつぽ)文明(ぶんめい)()(なか)(がく)排斥(はいせき)するとは(もつ)ての(ほか)ぢやありませぬか。128国民(こくみん)(のこ)らず無学者(むがくしや)であつたなら(みな)(ほか)文明国(ぶんめいこく)()られて(しま)ふぢやありませぬか。129人文(じんぶん)発達(はつたつ)(はか)り、130国威(こくゐ)宣揚(せんやう)企図(きと)する(ため)には、131どうしても大学(だいがく)程度(ていど)学問(がくもん)がなければ駄目(だめ)ですよ。132(まへ)(たち)(わづ)小学(せうがく)卒業(そつげふ)した(くらゐ)だから世間(せけん)(こと)徹底(てつてい)して()ない。133それだからポリス代用(だいよう)門衛(もんゑい)をして()るのだ。134到底(たうてい)拙者(せつしや)論説(ろんせつ)楯突(たてつ)(こと)出来(でき)ますまい。135何科(なにとが)あつて調(しら)べらるるか()らぬが、136もつと(しつか)りした(わか)(かた)()んで()(くだ)さい。137知識(ちしき)階段(かいだん)(ちが)うてるからお(まへ)さまには(わか)りますまい』
138(あか)馬鹿(ばか)()ふな、139此処(ここ)霊界(れいかい)八衢(やちまた)だ。140博士(はかせ)学士(がくし)(みな)()()(ところ)だ。141無学(むがく)でどうして(この)門番(もんばん)(つと)まるか。142(まへ)(たち)自然界(しぜんかい)(くだ)らぬ学説(がくせつ)心身(しんしん)(とろ)かし、143虚偽(きよぎ)(もつ)真理(しんり)となし優勝(いうしよう)劣敗(れつぱい)弱肉(じやくにく)強食(きやうしよく)制度(せいど)(もつ)最善(さいぜん)方法(はうはふ)(かんが)へてる亡者(まうじや)だから到底(たうてい)真理(しんり)蘊奥(うんのう)(わか)らないのだ。144(まへ)のやうなものが霊界(れいかい)()ると(わけ)(わか)らぬ理窟(りくつ)()つて精霊(せいれい)(けが)すから、145ここで現界(げんかい)研究(けんきう)して()(くだ)らぬ学術(がくじゆつ)(みな)剥奪(はくだつ)してやらう』
146曲冬(まがふゆ)『コレ(あか)さま、147(まへ)発狂(はつきやう)してるのか、148(ただし)(さけ)()うて()るのかい。149ここを霊界(れいかい)八衢(やちまた)(など)と、150それは(なに)()ふのかい。151霊界(れいかい)八衢(やちまた)地獄(ぢごく)があつて(たま)りますかい、152人間(にんげん)子孫(しそん)(のこ)して()ねば、153それ(まで)のものだ。154チツト哲学(てつがく)(てき)知識(ちしき)(やしな)うて()きなさい。155社会(しやくわい)落伍者(らくごしや)となつて(つひ)門番(もんばん)(つと)まらなくなりますよ』
156(あか)門番(もんばん)が、157それ(ほど)158(その)(はう)(いや)しいと(おも)ふのか。159便所(べんじよ)掃除(さうぢ)塵捨場(ごみすてば)掃除(さうぢ)如何(どう)だ。160それの(はう)矢張(やつぱり)(たふと)いのか』
161曲冬(まがふゆ)『さうですとも、162大慈(だいじ)大悲(だいひ)(こころ)(もつ)(ひと)(いや)がる(こと)(よろこ)んでするのが、163人間(にんげん)人格(じんかく)向上(かうじやう)する所以(ゆゑん)です。164便所(べんじよ)掃除(さうぢ)する(もの)(ごみ)掃除(さうぢ)する(もの)()ければ、165()(なか)尿糞塵(ししふんぢん)泥濘(でいねい)混濁(こんだく)世界(せかい)となるぢやありませぬか。166それで(わたし)(たち)伊吹戸主(いぶきどぬし)(かみ)(さま)御用(ごよう)をして()るのだ。167(きたな)いものを(うつく)しうする(くらゐ)神聖(しんせい)仕事(しごと)はありますまい。168(わたし)(いや)しい仕事(しごと)とも(きたな)商売(しやうばい)とも(おも)つて()りませぬ』
169(あか)『ア、170さうか、171それではお(まへ)(もつと)(あい)する(ところ)へやつてやらう。172地獄(ぢごく)には塵捨場(ごみすてば)もあれば堆糞(たいふん)(つか)沢山(たくさん)にある。173娑婆(しやば)亡者(まうじや)がやつて()腐肉(ふにく)(はへ)(たか)(やう)(よろこ)んで()いで()る。174現世(げんせ)にある(とき)所主(しよしゆ)(あい)によつて身魂(みたま)相応(さうおう)(ところ)()つたが()からう。175(よる)もなく(ふゆ)もなき天国(てんごく)(おい)て、176(すべ)ての(かみ)御用(ごよう)(つか)へまつり無限(むげん)歓喜(くわんき)(よく)するよりも、177(その)(はう)臭気(しうき)紛々(ふんぷん)たる地獄道(ぢごくだう)()くのが得心(とくしん)だらう。178サア遠慮(ゑんりよ)()らぬ、179トツトと()つたが()からうぞ』
180曲冬(まがふゆ)『はてな、181さうすると此処(ここ)矢張(やつぱり)霊界(れいかい)ですかな』
182(あか)(きま)つた(こと)だ。183霊界(れいかい)現界(げんかい)(わか)らぬ(やう)亡者(まうじや)如何(どう)なるものか。184それだから(こころ)(めくら)()ふのだ』
185曲冬(まがふゆ)(しか)らばどうか天国(てんごく)へやつて(いただ)()いものです』
186(あか)『マアここで(ある)一定(いつてい)時間(じかん)()なくては、187(まへ)(やう)(けが)れた(たましひ)(すぐ)天国(てんごく)にやる(こと)出来(でき)ない。188()外部(ぐわいぶ)(てき)要素(えうそ)をスツカリ()らなくてはならぬ。189現世(げんせ)(おい)(こころ)にもない(こと)()つたり、190阿諛(おべつか)使(つか)つたり、191(からだ)(やつ)したり、192種々(いろいろ)とやつて()(その)外念(ぐわいねん)をスツカリ()(はづ)し、193第二(だいに)内部(ないぶ)状態(じやうたい)()り、194内的(ないてき)生涯(しやうがい)関門(くわんもん)()えるのだ。195内的(ないてき)とは意志(いし)想念(さうねん)だ。196(はた)してその意志(いし)(ぜん)であり(しん)であらば天国(てんごく)(のぼ)(こと)出来(でき)るであらう。197(しか)(なが)内的(ないてき)状態(じやうたい)になつてからエンゼルの(をしへ)()き、198(その)(をしへ)(みみ)這入(はい)(やう)ならば天国(てんごく)()資格(しかく)具備(ぐび)してるなり、199如何(どう)しても(みみ)這入(はい)らねば地獄(ぢごく)()きだ。200(これ)第三(だいさん)状態(じやうたい)()つて精霊(せいれい)去就(きよしう)(けつ)する(とき)だ』
201曲冬(まがふゆ)『ヘー、202随分(ずいぶん)(むつかし)いものですな。203矢張(やつぱり)天国(てんごく)地獄(ぢごく)もあるものですかな』
204 ()(はな)(ところ)高姫(たかひめ)皺嗄声(しわがれごゑ)()()(なが)ら、
205高姫(たかひめ)『オーイ、206三千彦(みちひこ)207シャル、208()つた()つた。209()()(こと)がある』
210天塩(てしほ)昆布(こぶ)(やう)になつた(おび)引摺(ひきず)(なが)(はし)(きた)り、
211高姫(たかひめ)『こら、212シャル、213(おん)()らず()214(わし)(この)三千彦(みちひこ)極道(ごくだう)引倒(ひきたふ)され、215(くる)しんでゐる()悪口(あくこう)をついて()げて()たぢやないか。216コレコレお役人(やくにん)さま、217此奴(こいつ)悪党者(あくたうもの)(ござ)います。218義理(ぎり)天上(てんじやう)直接(ちよくせつ)成敗(せいばい)する(ところ)なれど神界(しんかい)御用(ごよう)(いそが)しいから、219(まへ)さまに(まか)すから(きび)しく(あぶら)をとつてやつて(くだ)さいや』
220(あか)『ヤ、221(まへ)高姫(たかひめ)ぢやないか。222霊界(れいかい)()(まで)(はし)やいで()るのか。223モウいい加減(かげん)外部(ぐわいぶ)(てき)状態(じやうたい)から(はな)れたら如何(どう)だ。224(いち)(ねん)にもなるのに(なん)渋太(しぶと)(やつ)だな』
225高姫(たかひめ)『ヘン、226よう仰有(おつしや)りますワイ。227(いち)(ねん)にならうと()(ねん)にならうとお(かま)御免(ごめん)だ。228いつやらも杢助(もくすけ)さまを(かく)しやがつて、229量見(れうけん)せぬのだが(なに)()つても大慈(だいじ)大悲(だいひ)大弥勒(おほみろく)さまの生宮(いきみや)だから、230大目(おほめ)()()るのだ。231グヅグヅ(まを)すと(この)生宮(いきみや)承知(しようち)(いた)さんぞや』
232(あか)(しろ)さま、233(この)()アさまは、234邪魔(じやま)になつて仕方(しかた)がないから何処(どこ)かへ()()して(くだ)さい』
235高姫(たかひめ)『ヘン、236邪魔(じやま)になりますかな。237そりや、238さうでせう。239(まこと)(かみ)言葉(ことば)悪人(あくにん)(みみ)には、240きつう(こた)へませう。241()(どく)(さま)(なが)(この)生宮(いきみや)世界(せかい)万民(ばんみん)救済(きうさい)(ため)242チツトお(みみ)(いた)うても()()()はして(もら)ひませう。243弥勒(みろく)(さま)因縁(いんねん)()つて()ますか、244一厘(いちりん)仕組(しぐみ)(わか)りますか、245エー、246よもや(わか)りますまい。247ヘン、248一厘(いちりん)仕組(しぐみ)(わか)らぬ(くせ)(えら)さうに()ふものぢやないわ』
249(あか)(しろ)さま、250(はや)何処(どこ)かへやつて(くだ)さい』
251(しろ)『コレコレ高姫(たかひめ)さま、252ここは八衢(やちまた)だからお(まへ)(はや)何処(どこ)かへ()つて(くだ)さい。253職務(しよくむ)邪魔(じやま)になりますからな』
254高姫(たかひめ)『コウリヤ白狐(しろぎつね)255(まへ)赤狐(あかぎつね)()(こと)()いて(この)()出神(でのかみ)放出(ほりだ)さうとするのか。256ハテ(わる)量見(れうけん)だぞえ。257よう(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。258天地(てんち)(あひだ)何一(なにひと)弥勒(みろく)(さま)のお(かま)ひなさらぬ(ところ)はないぞえ。259(つち)とお(みづ)とお()御恩(ごおん)()つてますか。260その(もと)(つか)んだ底津(そこつ)岩根(いはね)大弥勒(おほみろく)さまを(なん)心得(こころえ)(ござ)る。261()ても()ても(めくら)(ほど)(こま)つた(もの)()いワイ。262最前(さいぜん)から怪体(けたい)(をとこ)()つて()ると(おも)つたが、263(まへ)はアブナイ(けう)菊石彦(みつちやひこ)だな。264(さき)(ほど)(おほ)きに(はばか)りさま、265ヨー()(たふ)して(くだ)さつた。266コレコレ(あか)(しろ)267()出神(でのかみ)吩咐(いひつ)ける。268(この)菊石彦(みつちやひこ)(この)生宮(いきみや)引倒(ひきたふ)した悪人(あくにん)だから(ひと)つきつい制敗(せいばい)()はしなさい。269屹度(きつと)申付(まをしつ)けて()きますぞや』
270 (しろ)守衛(しゆゑい)()むを()ず、271棕櫚箒(しゆろばうき)(もつ)てシャル、272高姫(たかひめ)両人(りやうにん)(むか)つて掃出(はきだ)した。273二人(ふたり)(おどろ)いて(くも)(かすみ)(みなみ)()して()げて()く。
274三千彦(みちひこ)『モシ、275門番(もんばん)(さま)276ここは実際(じつさい)霊界(れいかい)(ござ)いますか』
277(あか)『ハイ、278さうです。279貴方(あなた)はアンブラック(がは)悪者(わるもの)(しば)られ()()まれなさつた一刹那(いちせつな)280気絶(きぜつ)なさつた(ため)281精霊(せいれい)此処(ここ)遊行(いうかう)して()たのですよ。282(かみ)化身(けしん)のスマートと()義犬(ぎけん)矢場(やには)(かは)()()み、283貴方(あなた)死骸(しがい)(くわ)へて(つつみ)引上(ひきあ)げ、284(いましめ)()いて(いま)一生(いつしやう)懸命(けんめい)貴方(あなた)肉体(にくたい)(たい)介抱(かいはう)をして()ります。285(やが)てスマートが(むか)へに()るでせうから一緒(いつしよ)にお(かへ)りなさい。286まだ此処(ここ)()(とき)ではありませぬ。287そしてテルモン(ざん)悪者(わるもの)跳梁(はびこ)つて()ますから充分(じうぶん)注意(ちうい)して(のぞ)まねばなりますまい』
288三千彦(みちひこ)『さう(うけたまは)らば(かす)かに記憶(きおく)(うか)んで()ます。289矢張(やつぱり)(わたし)溺死(できし)したのですかいな。290霊界(れいかい)()(ところ)現界(げんかい)(すこ)しも(たが)はない(ところ)ですな。291(ひと)不思議(ふしぎ)なのは、292あの高姫(たかひめ)さまは(いのち)がなくなつたと()いて()りましたのに随分(ずいぶん)えらい脱線振(だつせんぶ)り、293あの(かた)矢張(やつぱり)霊界(れいかい)()られるのですかな』
294(あか)『まだ現界(げんかい)三十(さんじふ)(ねん)(ばか)生命(せいめい)(のこ)つて()りますが(あんま)現界(げんかい)邪魔(じやま)をするので、295時置師(ときおかしの)(かみ)(さま)がお(いで)になり、296伊吹戸主(いぶきどぬし)大神(おほかみ)にお(ねが)(あそ)ばして、297(さん)(ねん)(あひだ)中有界(ちううかい)(はな)つてあるので(ござ)います。298(さん)(ねん)すれば屹度(きつと)(ほか)肉体(にくたい)(かか)つて(ふたた)現界(げんかい)活動(くわつどう)するでせう。299(いま)精神(せいしん)現界(げんかい)()かれちや、300やりきれませぬから、301あと()(ねん)(あひだ)充分(じうぶん)修業(しうげふ)をさして現界(げんかい)(かへ)(つも)りです』
302三千彦(みちひこ)成程(なるほど)303(なに)から(なに)まで、304(かみ)(さま)のなさる(こと)はよく()(わた)つたものですな。305(しか)(なが)(さん)(ねん)(のち)には高姫(たかひめ)肉体(にくたい)最早(もはや)駄目(だめ)でせう』
306(あか)(さん)(ねん)(のち)生命(いのち)()きて霊界(れいかい)()肉体(にくたい)がありますから、307(その)肉体(にくたい)高姫(たかひめ)精霊(せいれい)宿(やど)らせ、308(のこ)三十(さんじふ)(ねん)現界(げんかい)活動(くわつどう)させる手筈(てはず)となつて()ります』
309三千彦(みちひこ)『ア、310さうですか。311三年先(さんねんさき)になれば(たれ)かの肉体(にくたい)(うつ)つて脱線(だつせん)(てき)布教(ふけう)をやるのですな、312(こま)つたものですな』
313(あか)『もう(すで)(いち)(ねん)経過(けいくわ)したのだから、314(あと)()(ねん)ですよ。315あの我執(がしふ)我見(がけん)(この)()(ねん)(あひだ)(なん)とか改良(かいりやう)せねばならぬのですから、316霊界(れいかい)(おい)ても大変(たいへん)手古摺(てこず)つて()ます。317(いま)岩山(いはやま)(ふもと)(ちひ)さき(いへ)()てて一人暮(ひとりぐら)しをして()ますが、318マア一人(ひとり)(くら)して()れば(あま)(がい)がないから大神(おほかみ)(さま)大目(おほめ)()(ござ)るのですよ。319エンゼルが()つても()らず(ぐち)(ばか)りたたいて、320受付(うけつ)けぬから(こま)つたものです。321人間(にんげん)精霊(せいれい)も、322あれ()我執(がしふ)(かた)まつて(しま)つては仕方(しかた)()いものですワイ』
323 ()(はな)(とき)しも(みなみ)(はう)より(ちう)()んで(はし)()一頭(いつとう)猛犬(まうけん)324『ウーウー、325ウワツ ウワツ』と二声(ふたこゑ)三声(みこゑ)(たか)(さけ)んだ。326(この)(こゑ)にハツと()がつき四辺(あたり)()れば(いま)(まで)八衢(やちまた)光景(くわうけい)(かげ)もなく()()せ、327アンブラック(がは)(どて)青芝(あをしば)(うへ)(よこ)たはつて()た。328(そば)には猛犬(まうけん)スマートが行儀(ぎやうぎ)よく(すわ)つて(うれ)しげに三千彦(みちひこ)(かほ)(なが)()()つて()る。329テルモン(ざん)(はう)(なが)むれば黒煙(こくえん)濛々(もうもう)として()(のぼ)黒雲(くろくも)(ごと)(そら)(ふう)じて()る。330(つき)黒煙(こくえん)(あひだ)隠顕(いんけん)出没(しゆつぼつ)しつつ足早(あしばや)(はし)(ごと)()えて()る。
331大正一二・三・二五 旧二・九 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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