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第57巻(申の巻)
序文
総説歌
第1篇 照門山颪
01 大山
〔1451〕
02 煽動
〔1452〕
03 野探
〔1453〕
04 妖子
〔1454〕
05 糞闘
〔1455〕
06 強印
〔1456〕
07 暗闇
〔1457〕
08 愚摺
〔1458〕
第2篇 顕幽両通
09 婆娑
〔1459〕
10 転香
〔1460〕
11 鳥逃し
〔1461〕
12 三狂
〔1462〕
13 悪酔怪
〔1463〕
14 人畜
〔1464〕
15 糸瓜
〔1465〕
16 犬労
〔1466〕
第3篇 天上天下
17 涼窓
〔1467〕
18 翼琴
〔1468〕
19 抱月
〔1469〕
20 犬闘
〔1470〕
21 言触
〔1471〕
22 天葬
〔1472〕
23 薬鑵
〔1473〕
24 空縛
〔1474〕
25 天声
〔1475〕
余白歌
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第五章
糞闘
(
ふんとう
)
〔一四五五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻
篇:
第1篇 照門山颪
よみ(新仮名遣い):
てるもんざんおろし
章:
第5章 糞闘
よみ(新仮名遣い):
ふんとう
通し章番号:
1455
口述日:
1923(大正12)年03月24日(旧02月8日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年5月24日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
館の受付にはエル、オークス、ビルマの三人がたがいに泡沫のような出世話にふけっている。エルは、オークスとビルマが町人たちの財産を盗んで三五教の宣伝使のせいにしていることを知りながら、二人とともにワックスを追い出して、自分たち三人で館の重職を占領しようという話に乗ってきた。
ワックスは三人の話を陰で聞いていて業腹が立ち、大便所に入って長柄杓に汚いものを持ってきて、三人の顔に振りかけた。ワックスは逃げ出すとたんに畳の破れに足を引っかけ、倒れてしまった。倒れた拍子に敷居に鼻を打ち、息をつめて苦しんでいる。
三人は不意に臭いものを顔にかけられて、洗いに行こうと走ったとたんにワックスの体につまづいて倒れてしまった。四人は糞まみれになてひっくり返り、ウンウンとうめいている。
小国姫は物音にこの場に走ってきた。小国姫は悪人たちが糞まみれになって倒れているのを見て、彼らの腹黒さをなじる歌を歌った。ワックスとオークスは小国姫を非難し、互いにいがみあっている。
エキスとヘルマンはこの場にやってきて、小国姫が四人を害しようとしたと非難し、ハルナの都の大黒主に報告すると捨て台詞を吐いて駆け出して行った。
四人はやっとおきあがり体を洗濯すると、今までの喧嘩は横に置き、ふたたび野心を充たすべく秘密相談会を開くことになった。
小国姫は病気の夫を気遣って早々にこの場を立って奥の間に身を隠した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-04-12 12:52:52
OBC :
rm5705
愛善世界社版:
60頁
八幡書店版:
第10輯 280頁
修補版:
校定版:
62頁
普及版:
28頁
初版:
ページ備考:
001
館
(
やかた
)
の
受付
(
うけつけ
)
の
溜
(
たま
)
りにはエル、
002
オークス、
003
ビルマの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
、
004
机
(
つくゑ
)
を
真中
(
まんなか
)
に
置
(
お
)
いて
胡床
(
あぐら
)
をかき
虫
(
むし
)
のよい
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て、
005
互
(
たがひ
)
に
泡沫
(
はうまつ
)
の
如
(
ごと
)
き
出世譚
(
しゆつせばなし
)
を
争
(
あらそ
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
006
エル『おい、
007
オークス、
008
貴様
(
きさま
)
は
門番
(
もんばん
)
の
癖
(
くせ
)
にドカドカと
受付
(
うけつけ
)
の
関所
(
せきしよ
)
を
突破
(
とつぱ
)
して
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
へ
進入
(
しんにふ
)
して
行
(
い
)
つたと
見
(
み
)
えるが、
009
余程
(
よほど
)
奥様
(
おくさま
)
からお
目玉
(
めだま
)
を
喰
(
く
)
つたと
見
(
み
)
え、
010
随分
(
ずいぶん
)
面
(
つら
)
を
膨
(
ふく
)
らしてゐるぢやないか。
011
俺
(
おれ
)
は
梟
(
ふくろふ
)
の
化物
(
ばけもの
)
と
思
(
おも
)
つたよ』
012
オークス『ヘン、
013
門番
(
もんばん
)
門番
(
もんばん
)
て、
014
偉相
(
えらさう
)
に
云
(
い
)
ふない。
015
睾丸潰
(
きんたまつぶ
)
しの
大将
(
たいしやう
)
奴
(
め
)
、
016
俺
(
おれ
)
は
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
門番
(
もんばん
)
オークスとはチト
違
(
ちが
)
ふのだ。
017
これから
此館
(
ここ
)
の
家令職
(
かれいしよく
)
となり、
018
奥住
(
おくずま
)
ひとなつて
オークス
勤
(
づと
)
めをするのだから、
019
何事
(
なにごと
)
も
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
吩咐
(
いひつけ
)
に
服従
(
ふくじゆう
)
するのだぞ。
020
なあビルマ、
021
お
前
(
まへ
)
がよく
知
(
し
)
つてるだらう』
022
ビルマ『さうだな。
023
マアマア
夢
(
ゆめ
)
の
中
(
なか
)
の
家令
(
かれい
)
位
(
ぐらゐ
)
なものだらうかい。
024
こんな
処
(
ところ
)
で、
025
かれい
、
026
これ
云
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
ると
人
(
ひと
)
に
聞
(
き
)
かれて、
027
サア
今
(
いま
)
と
云
(
い
)
ふ
時
(
とき
)
に
総
(
すべ
)
ての
計劃
(
けいくわく
)
が
画餅
(
ぐわへい
)
に
帰
(
き
)
するかも
知
(
し
)
れないぞ。
028
成功
(
せいこう
)
する
人
(
ひと
)
は
黙
(
だま
)
つて
居
(
ゐ
)
るよ。
029
黙
(
だま
)
つてる
人
(
ひと
)
が
夜光
(
やくわう
)
の
玉
(
たま
)
をとると
云
(
い
)
つてな、
030
何
(
なん
)
でもガラガラ
云
(
い
)
ふものぢやない。
031
沈黙
(
ちんもく
)
が
一等
(
いつとう
)
だ』
032
オークス『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
033
已
(
すで
)
に
已
(
すで
)
に
奥様
(
おくさま
)
から
証言
(
しようげん
)
を
得
(
え
)
て
居
(
ゐ
)
るのだ。
034
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つてもワックスさまを
此館
(
ここ
)
の
主人
(
あるじ
)
となし、
035
デビス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
と
芽出
(
めで
)
たく
合衾
(
がふきん
)
の
式
(
しき
)
を
挙
(
あ
)
げさせ、
036
此
(
この
)
オークスが
家令職
(
かれいしよく
)
となり、
037
妹
(
いもうと
)
のケリナ
姫
(
ひめ
)
が
軈
(
やが
)
て
帰
(
かへ
)
らるると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だから、
038
ケリナ
姫
(
ひめ
)
の
夫
(
をつと
)
となり、
039
教務
(
けうむ
)
、
040
政務
(
せいむ
)
を
刷新
(
さつしん
)
し、
041
綱紀
(
かうき
)
を
振粛
(
しんしゆく
)
し
尭舜
(
げうしゆん
)
の
世
(
よ
)
を
来
(
き
)
たすのだ。
042
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
のやうな
老耄
(
おいぼれ
)
や、
043
狼狽者
(
あわてもの
)
の
睾丸潰
(
きんたまつぶ
)
しの
受付
(
うけつけ
)
では
駄目
(
だめ
)
だからな。
044
エツヘヘヘヘヘ』
045
エル『イツヒヒヒヒヒアイタタタタ
余
(
あんま
)
りしようもない
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
すので、
046
可笑
(
をか
)
しうて
睾丸
(
きんたま
)
に
響
(
ひび
)
いて
睾丸
(
きんたま
)
が
痛
(
いた
)
くて
碌
(
ろく
)
に
笑
(
わら
)
ふことも
出来
(
でき
)
やせないわ。
047
貴様
(
きさま
)
日
(
ひ
)
が
永
(
なが
)
いので、
048
そんな
夢
(
ゆめ
)
でも
見
(
み
)
たのだらう。
049
それよりも
早
(
はや
)
く
門番
(
もんばん
)
を
神妙
(
しんめう
)
に
勤
(
つと
)
めぬかい。
050
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
何時
(
いつ
)
知
(
し
)
れぬ
様
(
やう
)
な
御
(
ご
)
病気
(
びやうき
)
が
起
(
おこ
)
つてるのに、
051
ウカウカして
居
(
ゐ
)
る
時
(
とき
)
ぢやないぞ』
052
オークス『おい、
053
エル、
054
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
已
(
すで
)
に
御
(
ご
)
帰幽
(
きいう
)
になつたと
云
(
い
)
つて
触
(
ふ
)
れて
歩
(
ある
)
いたぢやないか。
055
随分
(
ずいぶん
)
いい
狼狽者
(
あわてもの
)
だな』
056
エル『
定
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
だ。
057
何
(
なん
)
でも
手廻
(
てまは
)
しよくして
置
(
お
)
かねば
間尺
(
ましやく
)
に
合
(
あは
)
ぬぢやないか。
058
病人
(
びやうにん
)
ぢやなくても
年寄
(
としより
)
が
先
(
さき
)
に
死
(
し
)
ぬのは
当然
(
あたりまへ
)
だ。
059
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
生
(
い
)
きて
居
(
ゐ
)
ると
思
(
おも
)
へば
何時
(
なんどき
)
アフンとせなくちやならぬか
分
(
わか
)
らぬから、
060
一寸
(
ちよつと
)
町民
(
ちやうみん
)
の
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
ますために
布令
(
ふれ
)
を
出
(
だ
)
し、
061
予行
(
よかう
)
演習
(
えんしふ
)
をやつたのだ。
062
英雄
(
えいゆう
)
の
心事
(
しんじ
)
が
門番
(
もんばん
)
に
分
(
わか
)
つて
堪
(
たま
)
るかい。
063
エヘン、
064
イヒン、
065
アイタタタタどうも
睾丸
(
きんたま
)
の
奴
(
やつ
)
、
066
もの
云
(
い
)
ひやがつて
仕方
(
しかた
)
がないわ』
067
オークス『おい、
068
エル、
069
ここは
一
(
ひと
)
つ
真面目
(
まじめ
)
になつて
聞
(
き
)
いて
呉
(
く
)
れ。
070
本当
(
ほんたう
)
に
俺
(
おれ
)
は
今日
(
けふ
)
から
家令職
(
かれいしよく
)
だぞ。
071
そしてワックス
様
(
さま
)
が
当館
(
たうやかた
)
の
御
(
お
)
世継
(
よつぎ
)
だ。
072
それから
此
(
こ
)
のビルマが
受付
(
うけつけ
)
に
坐
(
すわ
)
り、
073
お
前
(
まへ
)
は
暫
(
しばら
)
く
睾丸
(
きんたま
)
が
癒
(
なほ
)
る
迄
(
まで
)
お
暇
(
ひま
)
を
賜
(
たまは
)
つて
休養
(
きうやう
)
するのだな。
074
俺
(
おれ
)
が
家令
(
かれい
)
になつた
上
(
うへ
)
は、
075
滅多
(
めつた
)
に
受付
(
うけつけ
)
より
下
(
した
)
の
役
(
やく
)
はささぬから、
076
柔順
(
おとな
)
しく
控
(
ひか
)
へたが
宜
(
よ
)
からう』
077
エル『
俺
(
おれ
)
は
死
(
し
)
んでも
受付
(
うけつけ
)
は
止
(
や
)
めぬのだ。
078
何程
(
なにほど
)
貴様
(
きさま
)
が
家令
(
かれい
)
になつた
処
(
ところ
)
で、
079
俺
(
おれ
)
の
受付
(
うけつけ
)
はハルナの
都
(
みやこ
)
の
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
から、
080
命令
(
めいれい
)
を
受
(
う
)
けてゐるのだから、
081
俺
(
おれ
)
の
地位
(
ちゐ
)
を
到底
(
たうてい
)
動
(
うご
)
かすことは
出来
(
でき
)
まい。
082
そんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
はずに
門番
(
もんばん
)
でも
神妙
(
しんめう
)
に
勤
(
つと
)
めたが
宜
(
よ
)
からうぞ』
083
オークス『よし、
084
そんなら
俺
(
おれ
)
が
受付
(
うけつけ
)
を
免職
(
めんしよく
)
させて
見
(
み
)
せよう。
085
貴様
(
きさま
)
は
受付
(
うけつけ
)
であり
乍
(
なが
)
ら
門外
(
もんぐわい
)
へ
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し、
086
死
(
し
)
んでも
厶
(
ござ
)
らぬ
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
をお
逝
(
かく
)
れになつたと
触
(
ふ
)
れ
歩
(
ある
)
き、
087
町内
(
ちやうない
)
を
騒
(
さわ
)
がした
大罪人
(
だいざいにん
)
だ。
088
これを
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
に
上申
(
じやうしん
)
しようものなら、
089
それこそ
免職
(
めんしよく
)
は
宵
(
よひ
)
の
口
(
くち
)
、
090
貴様
(
きさま
)
の
笠
(
かさ
)
の
台
(
だい
)
が
飛
(
と
)
んで
了
(
しま
)
ふのだ。
091
どうだ、
092
それでも
苦
(
くる
)
しうないのか』
093
エル『マママママ
待
(
ま
)
つて
呉
(
く
)
れ。
094
それやさうぢやけれど、
095
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
つたのだ。
096
夢
(
ゆめ
)
でした
事
(
こと
)
は
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか』
097
オークス『
何
(
なに
)
、
098
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
たと、
099
貴様
(
きさま
)
はさうすると
怠慢
(
たいまん
)
の
罪
(
つみ
)
を
免
(
まぬが
)
るる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない。
100
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
平家蟹
(
へいけがに
)
のやうに
目
(
め
)
の
玉
(
たま
)
をツン
出
(
だ
)
して、
101
お
役目
(
やくめ
)
大切
(
たいせつ
)
に
受付
(
うけつけ
)
を
守
(
まも
)
つて
居
(
を
)
らねばならぬ
役目
(
やくめ
)
でありながら、
102
昼
(
ひる
)
の
中
(
うち
)
からサボタージュをやつて
昼寝
(
ひるね
)
をやつて
居
(
を
)
つたのだな。
103
益々
(
ますます
)
怪
(
け
)
しからぬ。
104
おいビルマ、
105
貴様
(
きさま
)
が
証拠人
(
しようこにん
)
だ。
106
ここで
一
(
ひと
)
つ
上申書
(
じやうしんしよ
)
を
書
(
か
)
くから、
107
お
前
(
まへ
)
証拠人
(
しようこにん
)
になつて
呉
(
く
)
れ』
108
ビルマ『そら、
109
俺
(
おれ
)
も
証拠人
(
しようこにん
)
にならぬ
事
(
こと
)
はないが、
110
町
(
ちやう
)
に
事勿
(
ことなか
)
れと
云
(
い
)
つてエルの
事
(
こと
)
を
上申
(
じやうしん
)
すると、
111
それが
一
(
ひと
)
つの
引
(
ひつ
)
かかりとなり、
112
終
(
しまひ
)
には
貴様
(
きさま
)
と
俺
(
おれ
)
との……それ……
窃盗
(
せつたう
)
事件
(
じけん
)
が
発覚
(
はつかく
)
するぢやないか。
113
ここはお
互
(
たがひ
)
に
辛抱
(
しんばう
)
したが
宜
(
よ
)
からうぞ』
114
オークス『
何
(
なに
)
、
115
何時
(
いつ
)
俺
(
おれ
)
が
窃盗
(
せつたう
)
した。
116
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふな』
117
ビルマ『セツトウと
云
(
い
)
ふのは
盗人
(
ぬすびと
)
の
事
(
こと
)
ぢやない。
118
去年
(
きよねん
)
の
冬
(
ふゆ
)
、
119
テルモン
山
(
ざん
)
の
谷間
(
たにあひ
)
で
雪
(
ゆき
)
を
固
(
かた
)
めて
洞
(
ほら
)
を
穿
(
うが
)
ち、
120
そこで
遊
(
あそ
)
んだ
事
(
こと
)
があるだらう。
121
それを
雪洞
(
せつとう
)
と
云
(
い
)
ふのだ。
122
それでも
矢張
(
やつぱり
)
サボになるからのう』
123
オークス『
何
(
なに
)
、
124
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
は
門番
(
もんばん
)
だから、
125
立派
(
りつぱ
)
な
門
(
もん
)
を
造
(
つく
)
らうと
思
(
おも
)
つて、
126
雪
(
ゆき
)
で
雛型
(
ひながた
)
を
作
(
つく
)
つて
其
(
その
)
下
(
した
)
を
通
(
とほ
)
つたのだから、
127
云
(
い
)
はば
職務
(
しよくむ
)
に
忠実
(
ちうじつ
)
になるのだ。
128
そんな
事
(
こと
)
が
何
(
なに
)
、
129
罪
(
つみ
)
にならう』
130
と
巧
(
うま
)
く
二人
(
ふたり
)
寄
(
よ
)
つて
窃盗
(
せつたう
)
事件
(
じけん
)
を
誤魔化
(
ごまくわ
)
して
了
(
しま
)
つた。
131
エル『ヒヒヒヒ、
132
アイタタタタ
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
らぬが、
133
二人
(
ふたり
)
とも
云
(
い
)
ひ
滑
(
すべ
)
つた
事
(
こと
)
を
巧
(
うま
)
く
塗
(
ぬ
)
りつけたやうな
気分
(
きぶん
)
がしてならぬわ。
134
此奴
(
こいつ
)
ア
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
れば
何
(
なに
)
かあるに
相違
(
さうゐ
)
ない。
135
香爐
(
かうろ
)
や
金銀
(
きんぎん
)
の
水壺
(
みづつぼ
)
を、
136
あの
騒
(
さわ
)
ぎに
皆
(
みな
)
盗
(
ぬす
)
んで
了
(
しま
)
つたと
云
(
い
)
うてるからにやお
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
が、
137
よもや……ではあるまいかの』
138
オークス『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
139
俺
(
おれ
)
は
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
病気
(
びやうき
)
について、
140
門番
(
もんばん
)
を
休
(
やす
)
んで
今
(
いま
)
の
今
(
いま
)
まで
奥
(
おく
)
で
御用
(
ごよう
)
をして
居
(
を
)
つたのだから、
141
そんな
事
(
こと
)
は
些
(
ちつ
)
とも
知
(
し
)
らないわ。
142
大方
(
おほかた
)
三五教
(
あななひけう
)
の
魔法使
(
まはふつかひ
)
が
持
(
も
)
つて
去
(
い
)
んだのだらう』
143
ビルマ『オイ
両人
(
りやうにん
)
、
144
こんな
話
(
はなし
)
は
止
(
や
)
めにして、
145
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
何時
(
いつ
)
お
国替
(
くにが
)
へになるやら
分
(
わか
)
らぬなり、
146
家令
(
かれい
)
も
亦
(
また
)
何時
(
いつ
)
死
(
し
)
ぬか
知
(
し
)
れぬ
場合
(
ばあひ
)
だ。
147
ここで
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
同盟
(
どうめい
)
して
一
(
ひと
)
つ
出世
(
しゆつせ
)
の
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
かうぢやないか。
148
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
門番
(
もんばん
)
や
受付
(
うけつけ
)
では
面白
(
おもしろ
)
うないからのう。
149
幸
(
さいは
)
ひ
年
(
とし
)
も
若
(
わか
)
し
独身者
(
ひとりもの
)
だから、
150
家令
(
かれい
)
の
息子
(
むすこ
)
のワックスの
馬鹿
(
ばか
)
を
此館
(
ここ
)
の
養子
(
やうし
)
にするのは
勿体
(
もつたい
)
ない。
151
一層
(
いつそ
)
の
事
(
こと
)
、
152
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
で、
153
此館
(
ここ
)
のお
世継
(
よつぎ
)
と、
154
家令
(
かれい
)
と、
155
受付
(
うけつけ
)
兼
(
けん
)
内事頭
(
ないじがしら
)
の
三
(
み
)
つの
役
(
やく
)
を
占領
(
せんりやう
)
する
事
(
こと
)
にしようぢやないか』
156
エル『ウン、
157
そりや
面白
(
おもしろ
)
からう。
158
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
奥
(
おく
)
さまが
諾
(
うん
)
と
云
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れるだらうかな』
159
オークス『そこはそれ、
160
弱味
(
よわみ
)
につけ
込
(
こ
)
む
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
さまだ。
161
此
(
この
)
尊
(
たふと
)
い
霊地
(
れいち
)
に
三五教
(
あななひけう
)
の
魔法使
(
まはふつかひ
)
をソツと
引張
(
ひつぱ
)
り
込
(
こ
)
んだと
云
(
い
)
ふ、
162
奥
(
おく
)
さまに
弱点
(
じやくてん
)
があるのだから、
163
屹度
(
きつと
)
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
意見
(
いけん
)
を
採用
(
さいよう
)
するにきまつてる。
164
若
(
も
)
し
採用
(
さいよう
)
せなけりや
身
(
み
)
の
破滅
(
はめつ
)
だからな』
165
エル『
成程
(
なるほど
)
、
166
そりや
妙案
(
めうあん
)
だ。
167
そんなら
俺
(
おれ
)
が
此館
(
ここ
)
の
養子
(
やうし
)
になるから、
168
貴様
(
きさま
)
等
(
たち
)
両人
(
りやうにん
)
は
家令
(
かれい
)
並
(
なら
)
びに
内事係
(
ないじがかり
)
兼
(
けん
)
受付
(
うけつけ
)
としてやらう。
169
門番
(
もんばん
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として
異数
(
いすう
)
の
抜擢
(
ばつてき
)
だらう』
170
オークス『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
171
俺
(
おれ
)
はデビス
姫
(
ひめ
)
さまの
夫
(
をつと
)
となり
当家
(
たうけ
)
のお
世継
(
よつぎ
)
だ。
172
お
前
(
まへ
)
等
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
は
籤
(
くじ
)
でもして
家令
(
かれい
)
と
受付
(
うけつけ
)
とをやつたが
宜
(
よ
)
からう。
173
家令職
(
かれいしよく
)
と
受付
(
うけつけ
)
とは
大変
(
たいへん
)
な
段階
(
だんかい
)
がある。
174
若
(
もし
)
受付
(
うけつけ
)
となつたものは、
175
妹
(
いもうと
)
さまが
帰
(
かへ
)
られたら
受付
(
うけつけ
)
の
女房
(
にようばう
)
にする。
176
お
世継
(
よつぎ
)
はどうしても
姉
(
あね
)
さまの
婿
(
むこ
)
に
限
(
かぎ
)
つてる。
177
家令
(
かれい
)
は
役柄
(
やくがら
)
が
上
(
うへ
)
だから
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
を
貰
(
もら
)
はずに
辛抱
(
しんばう
)
するのだ。
178
さうすりや
不公平
(
ふこうへい
)
が
無
(
な
)
いだらう』
179
エル『
時
(
とき
)
に
綿屋
(
わたや
)
の
老爺
(
おやぢ
)
の
話
(
はなし
)
に
聞
(
き
)
けば、
180
高倉
(
たかくら
)
とか、
181
旭
(
あさひ
)
とか
云
(
い
)
ふ
三五教
(
あななひけう
)
の
化狐
(
ばけきつね
)
が、
182
二人
(
ふたり
)
の
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
化
(
ば
)
けて
狸坊主
(
たぬきばうず
)
と
一緒
(
いつしよ
)
にパインの
森
(
もり
)
で
捉
(
つか
)
まへられたと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だが、
183
実際
(
じつさい
)
そんな
事
(
こと
)
があるだらうか。
184
俺
(
おれ
)
や
不思議
(
ふしぎ
)
で
堪
(
たま
)
らぬのだ。
185
中
(
なか
)
にはコソコソ
話
(
はなし
)
をしてる
奴
(
やつ
)
があつて、
186
あれは
狐
(
きつね
)
ぢやない
本真物
(
ほんまもの
)
の
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
つてるものもあるが、
187
あれが
本真物
(
ほんまもの
)
ならばワックスが
匿
(
かく
)
しよつた
岩窟
(
いはや
)
に
助
(
たす
)
けに
行
(
い
)
つて、
188
姫
(
ひめ
)
さまの
恋
(
こひ
)
を
独占
(
どくせん
)
するのも
一興
(
いつきよう
)
だがな』
189
オークス『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
190
彼奴
(
あいつ
)
は
狐
(
きつね
)
にきまつてる。
191
犬
(
いぬ
)
に
噛
(
か
)
まれよつて
首筋
(
くびすぢ
)
や
耳
(
みみ
)
を
噛
(
か
)
まれたり、
192
狸坊主
(
たぬきばうず
)
迄
(
まで
)
が
首筋
(
くびすぢ
)
を
噛
(
か
)
まれたと
云
(
い
)
つて、
193
紫
(
むらさき
)
になつてはれ
上
(
あが
)
つて
居
(
を
)
つた、
194
何
(
なん
)
ぼ
本真物
(
ほんまもの
)
でも、
195
あの
御
(
ご
)
面相
(
めんさう
)
では
御免
(
ごめん
)
だ』
196
ビルマ『おい、
197
エル、
198
貴様
(
きさま
)
は
睾丸
(
きんたま
)
を
潰
(
つぶ
)
されて
綿屋
(
わたや
)
の
離室
(
はなれ
)
にスツ
込
(
こ
)
んで
居
(
を
)
り
乍
(
なが
)
ら、
199
どうしてそんな
事
(
こと
)
が
目
(
め
)
に
着
(
つ
)
いたのだ。
200
チツト
可笑
(
をか
)
しいぢやないか』
201
エル『
何
(
なに
)
、
202
俺
(
おれ
)
だつて
女
(
をんな
)
と
聞
(
き
)
いちやジツとして
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
れないので、
203
「ワツシヨワツシヨ」と
門前
(
かどさき
)
を
担
(
かつ
)
いで
行
(
ゆ
)
くのを、
204
門口
(
かどぐち
)
に
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し、
205
トツクリ
見
(
み
)
た
所
(
ところ
)
が
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
るが、
206
何
(
なん
)
となしに
険相
(
けんさう
)
な
顔
(
かほ
)
して
居
(
ゐ
)
るので、
207
狐
(
きつね
)
のお
化
(
ば
)
けかと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たのだ。
208
どうも
人間
(
にんげん
)
の
目
(
め
)
で
真偽
(
しんぎ
)
は
分
(
わか
)
らぬが、
209
マア
百
(
ひやく
)
人
(
にん
)
の
者
(
もの
)
が
七十
(
しちじふ
)
人
(
にん
)
迄
(
まで
)
がお
化
(
ば
)
けと
云
(
い
)
ふのだから、
210
大勢
(
おほぜい
)
の
目
(
め
)
の
方
(
はう
)
が
本当
(
ほんたう
)
だらうかい』
211
オークス『サア、
212
無駄話
(
むだばなし
)
はどうでも
宜
(
よ
)
いが、
213
手
(
て
)
つ
取
(
と
)
り
早
(
ばや
)
く
約束
(
やくそく
)
を
定
(
き
)
めて
置
(
お
)
かうぢやないか。
214
俺
(
おれ
)
は
此館
(
ここ
)
の
御
(
ご
)
養子
(
やうし
)
にきめて
置
(
お
)
いて、
215
家令職
(
かれいしよく
)
と
受付
(
うけつけ
)
との、
216
これから
約束
(
やくそく
)
だ。
217
どうぢや
家令職
(
かれいしよく
)
になれば
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
はもらへぬなり、
218
低
(
ひく
)
い
役
(
やく
)
の
受付
(
うけつけ
)
になればケリナ
姫
(
ひめ
)
を
女房
(
にようばう
)
に
貰
(
もら
)
へるのだ。
219
位
(
くらゐ
)
をとるか、
220
色
(
いろ
)
をとるか、
221
と
云
(
い
)
ふ
処
(
ところ
)
だ』
222
ビルマ『そんなら
俺
(
おれ
)
は
受付
(
うけつけ
)
になるわ』
223
エル『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
224
受付
(
うけつけ
)
は
俺
(
おれ
)
の
持前
(
もちまへ
)
だ。
225
天下
(
てんか
)
御免
(
ごめん
)
の
受付
(
うけつけ
)
だ。
226
受付
(
うけつけ
)
は
俺
(
おれ
)
にきまつてる。
227
ヘン
済
(
す
)
みませぬな』
228
オークス『オイ、
229
両人
(
りやうにん
)
、
230
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は
実際
(
じつさい
)
生
(
い
)
きて
厶
(
ござ
)
るか
厶
(
ござ
)
らぬか
分
(
わか
)
らぬのだ。
231
万一
(
まんいち
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
生
(
い
)
きて
厶
(
ござ
)
らぬとすれば
矢張
(
やつぱり
)
家令
(
かれい
)
になつた
方
(
はう
)
が
得
(
とく
)
だぞ』
232
エル『そんなら、
233
思
(
おも
)
ひきつて
俺
(
おれ
)
は
家令
(
かれい
)
になるわ。
234
ビルマ、
235
お
前
(
まへ
)
、
236
受付
(
うけつけ
)
になつて
呉
(
く
)
れ』
237
ビルマ『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな、
238
誰
(
たれ
)
が
受付
(
うけつけ
)
なんかするものかい。
239
適材
(
てきざい
)
適所
(
てきしよ
)
と
云
(
い
)
つて、
240
此館
(
ここ
)
の
家令
(
かれい
)
は
貴様
(
きさま
)
のやうな
狼狽者
(
あわてもの
)
では
到底
(
たうてい
)
勤
(
つと
)
まりつこはない。
241
ビルマに
限
(
かぎ
)
つてるワイ』
242
エル『
然
(
しか
)
し、
243
さうするとワックスさまのやり
場
(
ば
)
が
無
(
な
)
いぢやないか』
244
オークス『
何
(
なに
)
、
245
ワックスなんか、
246
彼奴
(
あいつ
)
の
悪事
(
あくじ
)
を
素破抜
(
すつぱぬ
)
いてやれば、
247
文句
(
もんく
)
なしに
命
(
いのち
)
惜
(
を
)
しさに
逃
(
に
)
ぐるにきまつてる。
248
三
(
さん
)
人
(
にん
)
でさへも
配置
(
はいち
)
に
困
(
こま
)
つてるのに、
249
彼奴
(
あいつ
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
堪
(
たま
)
らうかい。
250
彼奴
(
あいつ
)
は
勘定外
(
かんぢやうぐわい
)
だ。
251
彼奴
(
あいつ
)
の
老爺
(
おやぢ
)
も
近々
(
ちかぢか
)
に
死
(
し
)
んで
了
(
しま
)
ふから、
252
さうすりや
門番
(
もんばん
)
の
端
(
はし
)
にでも
使
(
つか
)
つてやるのだな。
253
エツヘヘヘヘヘヘ』
254
斯
(
か
)
く
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
話
(
はなし
)
に
身
(
み
)
が
入
(
い
)
つて
大声
(
おほごゑ
)
で
囀
(
さへづ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
255
最前
(
さいぜん
)
からワックスは
壁
(
かべ
)
に
耳
(
みみ
)
をあてて
体
(
からだ
)
を
隠
(
かく
)
し、
256
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
たが
業
(
ごふ
)
が
湧
(
わ
)
いて
堪
(
たま
)
らぬので、
257
ソツと
大便所
(
だいべんじよ
)
に
入
(
い
)
り
長柄杓
(
ながびしやく
)
に
汚
(
きたな
)
いものを
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
て、
258
自分
(
じぶん
)
の
顔
(
かほ
)
を
隠
(
かく
)
し
乍
(
なが
)
ら
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれ、
259
バツと
顔
(
かほ
)
にふりかけ、
260
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
す
途端
(
とたん
)
に
畳
(
たたみ
)
の
破
(
やぶ
)
れに
足
(
あし
)
を
引
(
ひ
)
つかけ、
261
スツテンドウと
倒
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
つた。
262
倒
(
たふ
)
れた
拍子
(
ひやうし
)
に
間
(
ま
)
と
間
(
ま
)
を
隔
(
へだ
)
てた
閾
(
しきゐ
)
に
高
(
たか
)
い
鼻
(
はな
)
を
打
(
う
)
ち、
263
ウンと
息
(
いき
)
をつめ、
264
ビクともせず
苦
(
くる
)
しんで
居
(
ゐ
)
る。
265
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
不意
(
ふい
)
に
臭
(
くさ
)
い
物
(
もの
)
を
顔
(
かほ
)
一面
(
いちめん
)
にかけられ、
266
顔
(
かほ
)
をハンカチーフにて
抑
(
おさ
)
へ
乍
(
なが
)
ら、
267
炊事場
(
すゐじば
)
の
方
(
はう
)
へ
洗
(
あら
)
ひに
行
(
ゆ
)
かうと
走
(
はし
)
つた
途端
(
とたん
)
に、
268
ワックスの
体
(
からだ
)
に
躓
(
つまづ
)
きバタリと
倒
(
たふ
)
れた。
269
次
(
つぎ
)
から
次
(
つぎ
)
から
四
(
よ
)
人
(
にん
)
が
糞
(
くそ
)
まぶれになつて
引
(
ひ
)
つくり
覆
(
かへ
)
り、
270
ウンウン
唸
(
うめ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
271
此
(
この
)
物音
(
ものおと
)
に
小国姫
(
をくにひめ
)
は
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り
見
(
み
)
れば、
272
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
臭
(
くさ
)
い
香
(
にほひ
)
がプンプンと
鼻
(
はな
)
をつく。
273
姫
(
ひめ
)
は
鼻
(
はな
)
を
抓
(
つま
)
み
乍
(
なが
)
ら
近寄
(
ちかよ
)
り
見
(
み
)
れば、
274
糞
(
くそ
)
まぶれの
長柄杓
(
ながびしやく
)
が
一本
(
いつぽん
)
と、
275
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
が
糞
(
くそ
)
まぶれになつて、
276
其処
(
そこ
)
へ
倒
(
たふ
)
れ
居
(
ゐ
)
たり。
277
小国姫
(
をくにひめ
)
『
糞度胸
(
くそどきよう
)
据
(
す
)
ゑた
男
(
をとこ
)
が
糞
(
くそ
)
まぶれ
278
足
(
あし
)
躓
(
つまづ
)
いて
苦楚
(
くそ
)
を
嘗
(
な
)
めけり。
279
婆
(
ばば
)
の
身
(
み
)
も
糞
(
くそ
)
にまぶれた
糞奴
(
くそやつこ
)
280
臭
(
くさ
)
い
奴
(
やつ
)
には
呆
(
あき
)
れ
果
(
は
)
てたり。
281
物臭
(
ものくさ
)
い
企
(
たく
)
み
致
(
いた
)
した
天罰
(
てんばつ
)
で
282
男
(
をとこ
)
が
癪
(
しやく
)
で
倒
(
たふ
)
れしならむ。
283
オークスの
心
(
こころ
)
汚
(
きたな
)
き
門番
(
もんばん
)
が
284
今日
(
けふ
)
は
大糞
(
おほくそ
)
被
(
かぶ
)
りけるかな。
285
睾丸
(
きんたま
)
を
牛
(
うし
)
に
踏
(
ふ
)
まれて
又
(
また
)
ここで
286
糞
(
くそ
)
被
(
かぶ
)
せられ
吠
(
ほ
)
エル
馬鹿者
(
ばかもの
)
。
287
ワックスか
又
(
また
)
は
糞
(
くそ
)
かは
知
(
し
)
らねども
288
どちらにしても
臭
(
くさ
)
い
奴
(
やつ
)
かな』
289
ワックス『
糞奴
(
くそやつこ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
揃
(
そろ
)
ふ
其
(
その
)
中
(
なか
)
へ
290
糞
(
くそ
)
まぶしたり
糞婆
(
くそばば
)
の
家
(
いへ
)
で』
291
小国姫
(
をくにひめ
)
『ワックスよ、
吾
(
われ
)
に
向
(
むか
)
つて
糞婆
(
くそばば
)
と
292
云
(
い
)
つた
言葉
(
ことば
)
を
忘
(
わす
)
れずに
居
(
ゐ
)
よ。
293
いろいろと
臭
(
くさ
)
い
思案
(
しあん
)
を
廻
(
めぐ
)
らして
294
糞
(
くそ
)
を
嘗
(
な
)
めたる
今
(
いま
)
の
天罰
(
てんばつ
)
』
295
オークス『テルモンの
館
(
やかた
)
の
家令
(
かれい
)
となる
身
(
み
)
には
296
糞
(
くそ
)
の
苦労
(
くらう
)
も
何
(
なん
)
のものかは』
297
小国姫
(
をくにひめ
)
『いろいろと
臭
(
くさ
)
い
奴
(
やつ
)
めが
寄
(
よ
)
り
合
(
あ
)
うて
298
これの
館
(
やかた
)
に
糞
(
くそ
)
まき
散
(
ち
)
らす。
299
これよりはハルナの
都
(
みやこ
)
の
神柱
(
かむばしら
)
300
大黒主
(
おほくろぬし
)
に
申上
(
まをしあ
)
げなむ。
301
何事
(
なにごと
)
も
皆
(
みな
)
三千彦
(
みちひこ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
302
諭
(
さと
)
し
玉
(
たま
)
ひぬ
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
が
企
(
たく
)
みを。
303
人
(
ひと
)
の
家
(
いへ
)
の
悩
(
なや
)
みにつけ
込
(
こ
)
み
糞思案
(
くそじあん
)
304
廻
(
めぐ
)
らし
吾
(
わが
)
身
(
み
)
を
捨
(
す
)
つる
馬鹿者
(
ばかもの
)
』
305
オークス『
三千彦
(
みちひこ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
魔法使
(
まはふつかひ
)
306
詳
(
つぶ
)
さに
告
(
つ
)
げむ
大黒主
(
おほくろぬし
)
へ。
307
大黒主
(
おほくろぬし
)
此
(
この
)
有様
(
ありさま
)
を
聞
(
き
)
きまさば
308
小国姫
(
をくにのひめ
)
の
身
(
み
)
の
終
(
をは
)
りぞや』
309
かかる
処
(
ところ
)
へエキス、
310
ヘルマンの
両人
(
りやうにん
)
は
慌
(
あわただ
)
しく
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
311
プンプン
嗅
(
にほ
)
ふ
臭気
(
しうき
)
に
鼻
(
はな
)
を
抓
(
つま
)
み
乍
(
なが
)
ら、
312
エキス『モシ
奥様
(
おくさま
)
、
313
ワックス
其
(
その
)
他
(
た
)
の
連中
(
れんぢう
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
314
貴女
(
あなた
)
は
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
者
(
もの
)
に
陰謀
(
いんぼう
)
露顕
(
ろけん
)
を
恐
(
おそ
)
れて
糞
(
くそ
)
を
浴
(
あ
)
びせ
打
(
う
)
ち
倒
(
たふ
)
し、
315
命
(
いのち
)
をとらうとなさつたのですか、
316
こりや
怪
(
け
)
しからぬ。
317
モウ
斯
(
か
)
うなつては
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
だとて
容赦
(
ようしや
)
は
致
(
いた
)
しませぬぞ。
318
さあワックスさま
確
(
しつか
)
りなさいませ。
319
之
(
これ
)
からハルナの
都
(
みやこ
)
へ
早馬使
(
はやうまづかひ
)
を
立
(
た
)
て
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
の
敵
(
かたき
)
を
討
(
う
)
つて
上
(
あ
)
げませう』
320
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
尻
(
しり
)
ひつからげ、
321
エキス、
322
ヘルマン
両人
(
りやうにん
)
は
表門
(
おもてもん
)
さして
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
したり。
323
四
(
よ
)
人
(
にん
)
はヤツと
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
324
互
(
たがひ
)
に
体
(
からだ
)
の
洗濯
(
せんたく
)
を
終
(
をは
)
り、
325
一間
(
ひとま
)
に
入
(
い
)
つて
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
喧嘩
(
けんくわ
)
は
暫
(
しばら
)
く
横
(
よこ
)
に
置
(
お
)
き、
326
再
(
ふたた
)
び
野心
(
やしん
)
を
充
(
みた
)
すべく
秘密
(
ひみつ
)
相談会
(
さうだんくわい
)
を
開
(
ひら
)
く
事
(
こと
)
となつた。
327
小国姫
(
をくにひめ
)
は
夫
(
をつと
)
の
病気
(
びやうき
)
を
気遣
(
きづか
)
ひ
匆々
(
さうさう
)
に
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
つて
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
しけり。
328
(
大正一二・三・二四
旧二・八
於皆生温泉浜屋
北村隆光
録)
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