小国別の神館は、家令オールスチンの帰幽の知らせを聞いて、三千彦を祭主として一同大神殿に集まり、盛大な帰幽奉告祭を執り行っていた。
そこへハルナの都の大黒主の使者として、ニコラス宣伝使が従者たちと数十人の兵卒を引き連れてやってきた。祭典が終わって戻ってきた一同の前に、ニコラスは長剣を佩いたまま現れ、テルモン山神館に三五教の宣伝使を引き入れた罪を問うた。
小国姫は事情を説明したが、ニコラスは三五教の宣伝使は直ちに召し捕らなければならないと言い渡した。三千彦と求道居士は自ら名乗りを上げて現れた。デビス姫とケリナ姫は、それぞれ三五教宣伝使の妻だとして名乗りを上げた。
ニコラスは従者に目配せして四人を縛りあげ、門前の広場に杭を打って繋げ、数十人の兵卒に見張らせておいた。小国姫悲観して自害しようとしたが、スマートが駆けてきて阻止した。
すると隣室より、神の恵みに抱かれた自分の身体を縛る方法はない、という三千彦の歌が聞こえてきた。ニコラスは不審の念を抱き、小国姫が三五教の魔法を使ったと思い、従者に下知して小国姫を縛らせようとした。
隣室から涼しい声で天の数歌が聞こえてくる。小国姫の肉体からたちまち金色の光が放射し、ニコラスをはじめ六人の従者たちは目がくらんで座敷の真中に倒れてしまった。三千彦、求道居士、デビス姫、ケリナ姫の四人はにこにこしながら、ゆうゆうとして隣室から現れてきた。
驚く小国姫に、三千彦は誠ひとつの肉体には刃は立たず、縛っても縛ることはできないと安堵させた。ニコラスは起き上がり、四人を今度は針金で縛って再び広場に繋いだ。ニコラスは戻ってくると、今度は小国姫とヘルも縛って広場に連れて行った。