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第57巻(申の巻)
序文
総説歌
第1篇 照門山颪
01 大山
〔1451〕
02 煽動
〔1452〕
03 野探
〔1453〕
04 妖子
〔1454〕
05 糞闘
〔1455〕
06 強印
〔1456〕
07 暗闇
〔1457〕
08 愚摺
〔1458〕
第2篇 顕幽両通
09 婆娑
〔1459〕
10 転香
〔1460〕
11 鳥逃し
〔1461〕
12 三狂
〔1462〕
13 悪酔怪
〔1463〕
14 人畜
〔1464〕
15 糸瓜
〔1465〕
16 犬労
〔1466〕
第3篇 天上天下
17 涼窓
〔1467〕
18 翼琴
〔1468〕
19 抱月
〔1469〕
20 犬闘
〔1470〕
21 言触
〔1471〕
22 天葬
〔1472〕
23 薬鑵
〔1473〕
24 空縛
〔1474〕
25 天声
〔1475〕
余白歌
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第二一章
言触
(
ことぶれ
)
〔一四七一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻
篇:
第3篇 天上天下
よみ(新仮名遣い):
てんじょうてんか
章:
第21章 言触
よみ(新仮名遣い):
ことぶれ
通し章番号:
1471
口述日:
1923(大正12)年03月26日(旧02月10日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年5月24日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
ワックスが我が家に馳せ帰ると、父のオールスチンはほとんど虫の息となっていた。ワックスは驚き、病床に駆け寄って涙の声でいつになく優しく加減を尋ねたが、オールスチンは瞑目してしまった。
ワックスは看護婦に当たり散らし、出て行くようにと怒鳴りつけた。ワックスは、出て行こうとする看護婦の荷物に難癖をつけて荷物改めをした。すると中から白い煙が音を立てて立ち上がり、中からデビス姫とケリナ姫がニコニコしながら立ち現われた。
ワックスは驚いて腰を抜かし、のどが詰まって震えている。オークスとビルマはその間にソファーを取り除け畳をめくり、オールスチンが隠しておいた金銀の小玉を引っ張り出して、看護婦のトランクに詰めると、倒れているワックスを嘲笑して表に駆け出してしまった。
エルはこの有様を見ると慌てて面に駆け出して、自分が見たことをわけのわからない歌にして歌って、十字街頭で触れ回っている。
親爺がせがれに渡さずに残した金銀は天下の所有品だと触れ回るのを聞いた群衆は、葬式がてら金銀をせしめようとワックスの館に集まってきた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm5721
愛善世界社版:
256頁
八幡書店版:
第10輯 352頁
修補版:
校定版:
266頁
普及版:
120頁
初版:
ページ備考:
001
ワックスは
驚
(
おどろ
)
き
吾
(
わが
)
家
(
や
)
に
馳帰
(
はせかへ
)
り
見
(
み
)
れば
父
(
ちち
)
のオールスチンは
病
(
やまひ
)
益々
(
ますます
)
重
(
おも
)
く、
002
殆
(
ほとん
)
ど
虫
(
むし
)
の
息
(
いき
)
になつて
居
(
ゐ
)
た。
003
流石
(
さすが
)
のワックスも
驚
(
おどろ
)
いて
父
(
ちち
)
の
病床
(
びやうしやう
)
に
駆
(
か
)
け
寄
(
よ
)
り、
004
涙
(
なみだ
)
の
声
(
こゑ
)
を
絞
(
しぼ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
005
ワックス『お
父
(
とう
)
様
(
さま
)
、
006
如何
(
いかが
)
で
厶
(
ござ
)
います。
007
お
苦
(
くる
)
しう
厶
(
ござ
)
いますか』
008
とツヒになく
優
(
やさ
)
しく
尋
(
たづ
)
ねる。
009
オールスチンはクワツと
目
(
め
)
を
瞠
(
みひら
)
き、
010
ニタリと
笑
(
わら
)
つた
儘
(
まま
)
瞑目
(
めいもく
)
して
了
(
しま
)
つた。
011
ワックス『アーア
到頭
(
とうとう
)
大切
(
たいせつ
)
の
大切
(
たいせつ
)
のお
父
(
とう
)
さまはなくなつて
了
(
しま
)
つた。
012
アアどうしようかな。
013
おい、
014
オークス、
015
ビルマ、
016
も
一度
(
いちど
)
どうかして
甦
(
よみがへ
)
つて
貰
(
もら
)
ふ
道
(
みち
)
はあるまいかな。
017
コラ
看護婦
(
かんごふ
)
、
018
貴様
(
きさま
)
達
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
も
附
(
つ
)
いて
居
(
を
)
つて
何
(
なに
)
して
居
(
ゐ
)
た。
019
親爺
(
おやぢ
)
が
死
(
し
)
ぬやうな
看護
(
かんご
)
を
頼
(
たの
)
みはせぬぞ、
020
病気
(
びやうき
)
が
癒
(
なほ
)
る
為
(
ため
)
、
021
高
(
たか
)
い
金
(
かね
)
を
出
(
だ
)
して
雇
(
やと
)
うて
居
(
ゐ
)
たのだ。
022
俺
(
おれ
)
の
不在
(
るす
)
の
間
(
ま
)
に
何
(
なに
)
か
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
したのだらう。
023
トツトと
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
け』
024
とソロソロ
地金
(
ぢがね
)
を
出
(
だ
)
しワヤな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
した。
025
看護婦
(
かんごふ
)
は
呆
(
あき
)
れて
返
(
かへ
)
す
言葉
(
ことば
)
もなく、
026
面
(
つら
)
を
膨
(
ふく
)
らし
乍
(
なが
)
ら
自分
(
じぶん
)
の
持物
(
もちもの
)
を
取
(
と
)
りまつべて
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
らうとする。
027
ワックス『コリヤ
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
て、
028
その
荷物
(
にもつ
)
を
税関
(
ぜいくわん
)
で
調
(
しら
)
べてやらう。
029
親爺
(
おやぢ
)
の
小判
(
こばん
)
をソファーの
下
(
した
)
から
引張
(
ひつぱ
)
り
出
(
だ
)
して
詰
(
つ
)
めて
居
(
ゐ
)
るのだらう』
030
看護婦
(
かんごふ
)
『ホホホそんな
安
(
やす
)
い
人間
(
にんげん
)
と
思
(
おも
)
つて
貰
(
もら
)
ひますと
片腹
(
かたはら
)
痛
(
いた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
031
然
(
しか
)
し
此
(
この
)
トランクは
私
(
わたし
)
の
物
(
もの
)
ですから
指一本
(
ゆびいつぽん
)
触
(
さ
)
へるなら
触
(
さ
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい』
032
ワックス『ヨシ、
033
みん
事
(
ごと
)
調
(
しら
)
べてやらう。
034
大泥棒
(
おほどろぼう
)
奴
(
め
)
が』
035
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
二人
(
ふたり
)
の
看護婦
(
かんごふ
)
のトランクを
無理
(
むり
)
に
捻開
(
ねぢあ
)
けた。
036
忽
(
たちま
)
ち
白
(
しろ
)
き
煙
(
けむり
)
シユーシユーと
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
てて
立
(
たち
)
あがり、
037
中
(
なか
)
よりデビス
姫
(
ひめ
)
、
038
ケリナ
姫
(
ひめ
)
の
二人
(
ふたり
)
がニコニコしながら
立
(
た
)
ち
現
(
あら
)
はれた。
039
ワックスはアツと
驚
(
おどろ
)
き
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かし『バ……
化物
(
ばけもの
)
』と
呼
(
よ
)
んだきり、
040
喉
(
のど
)
がつまり
口
(
くち
)
をワナワナさせ
慄
(
ふる
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
041
オークス、
042
ビルマは
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
にソファーを
取
(
と
)
り
除
(
の
)
け、
043
畳
(
たたみ
)
をめくり、
044
オールスチンの
隠
(
かく
)
して
置
(
お
)
いた
金銀
(
きんぎん
)
の
小玉
(
こだま
)
を
引張
(
ひつぱり
)
出
(
だ
)
し、
045
看護婦
(
かんごふ
)
のトランクに
詰
(
つ
)
め
込
(
こ
)
み、
046
倒
(
たふ
)
れて
居
(
ゐ
)
るワックスの
前
(
まへ
)
に
見
(
み
)
せびらかし、
047
オークス『もし、
048
ワックス
様
(
さま
)
、
049
これ
丈
(
だけ
)
の
戦利品
(
せんりひん
)
が
厶
(
ござ
)
いましたよ。
050
後
(
あと
)
にはもう
一
(
ひと
)
つも
残
(
のこ
)
つて
居
(
を
)
りませぬ。
051
ビルマと
両人
(
りやうにん
)
が
有難
(
ありがた
)
く
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
します。
052
お
前
(
まへ
)
さまはお
化
(
ばけ
)
の
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
と
仲良
(
なかよ
)
う
暮
(
くら
)
しなさい。
053
お
前
(
まへ
)
さまの
腰
(
こし
)
は
三日
(
みつか
)
や
四日
(
よつか
)
にや
立
(
た
)
ちますまいから、
054
これから
両人
(
りやうにん
)
が
聖地
(
せいち
)
を
逐電
(
ちくでん
)
致
(
いた
)
し、
055
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
行
(
い
)
つて
栄耀
(
えいえう
)
栄華
(
えいぐわ
)
に
暮
(
くら
)
します、
056
アバよ、
057
ウツフフフフフフ』
058
と
腮
(
あご
)
をしやくり
嘲笑
(
てうせう
)
しながらスタスタと
表
(
おもて
)
へ
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
す。
059
二人
(
ふたり
)
の
看護婦
(
かんごふ
)
の
姿
(
すがた
)
は
何処
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
つたか
皆目
(
かいもく
)
見
(
み
)
えなかつた。
060
ワックスは
無念
(
むねん
)
をこらへ
歯切
(
はぎ
)
りを
噛
(
か
)
んで
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
く
二人
(
ふたり
)
の
後
(
あと
)
を
怨
(
うら
)
めしげに
見送
(
みおく
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
061
狼狽者
(
あわてもの
)
のエルはトランクの
中
(
なか
)
から
美人
(
びじん
)
が
出
(
で
)
たのと、
062
オールスチンの
絶命
(
ことぎ
)
れたのを
見
(
み
)
て
逸早
(
いちはや
)
く
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し、
063
再
(
ふたた
)
び
十字
(
じふじ
)
街頭
(
がいとう
)
に
立
(
た
)
ち
現
(
あら
)
はれ、
064
大音声
(
だいおんじやう
)
を
張
(
は
)
り
上
(
あ
)
げて
言触
(
ことぶれ
)
を
始
(
はじ
)
め
出
(
だ
)
した。
065
エル『ドンドコ ドンドコ ドンドコドン
066
ヤア
大変
(
たいへん
)
ぢやア
大変
(
たいへん
)
ぢやア
067
天
(
てん
)
が
地
(
ち
)
となり
地
(
ち
)
が
天
(
てん
)
となる
068
ドンドコ ドンドコ ドンドコドン
069
ワックスさまの
親爺
(
おやぢ
)
さま
070
神
(
かみ
)
の
館
(
やかた
)
の
家老職
(
からうしよく
)
071
オールスチンが
命
(
めい
)
尽
(
つ
)
きて
072
極楽
(
ごくらく
)
参
(
まゐ
)
りを
致
(
いた
)
したぞ
073
ドンドコ ドンドコ ドンドコドン
074
皆
(
みな
)
さま
早
(
はや
)
う
駆
(
か
)
けつけて
075
葬式
(
さうしき
)
万端
(
ばんたん
)
手伝
(
てつだ
)
うて
076
野辺
(
のべ
)
の
送
(
おく
)
りをするが
宜
(
よ
)
い
077
悪酔怪
(
あくすゐくわい
)
の
会長
(
くわいちやう
)
さま
078
ワックスさまは
腰
(
こし
)
抜
(
ぬ
)
かし
079
アフンとばかり
口
(
くち
)
開
(
あ
)
けて
080
もの
をも
言
(
い
)
はず
倒
(
たふ
)
れてる
081
ドンドコ ドンドコ ドンドコドン
082
それにまだまだ
不思議
(
ふしぎ
)
なは
083
二人
(
ふたり
)
の
看護婦
(
かんごふ
)
忽
(
たちま
)
ちに
084
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せた
085
不思議
(
ふしぎ
)
と
思
(
おも
)
ふ
最中
(
さいちう
)
に
086
ワックスさまがパツと
開
(
あ
)
けた
087
トランクの
中
(
なか
)
からシユーシユーと
088
白
(
しろ
)
い
煙
(
けぶり
)
が
立
(
た
)
ち
昇
(
のぼ
)
り
089
ドンドコ ドンドコ ドンドコドン
090
あらマア
不思議
(
ふしぎ
)
摩訶
(
まか
)
不思議
(
ふしぎ
)
091
神
(
かみ
)
の
館
(
やかた
)
にあれませる
092
デビスの
姫
(
ひめ
)
やケリナ
姫
(
ひめ
)
093
ニコニコし
乍
(
なが
)
ら
現
(
あら
)
はれた
094
ドンドコ ドンドコ ドンドコドン
095
これもヤツパリ
三五
(
あななひ
)
の
096
魔法使
(
まはふづかひ
)
の
仕業
(
しわざ
)
だと
097
思
(
おも
)
へば
俄
(
にはか
)
に
怖
(
こは
)
くなり
098
家令
(
かれい
)
の
死
(
し
)
んだ
報告
(
はうこく
)
や
099
ワックスさまの
腰
(
こし
)
抜
(
ぬ
)
かし
100
お
化女
(
ばけをんな
)
の
出現
(
しゆつげん
)
を
101
報告
(
はうこく
)
がてらにやつて
来
(
き
)
た
102
ドンドコ ドンドコ ドンドコドン
103
今度
(
こんど
)
は
嘘
(
うそ
)
では
無
(
な
)
い
程
(
ほど
)
に
104
本真
(
ほんま
)
に
本真
(
ほんま
)
に
死
(
し
)
んだのだ
105
ソファーの
下
(
した
)
にドツサリと
106
金
(
きん
)
と
銀
(
ぎん
)
との
小玉
(
こだま
)
奴
(
め
)
が
107
目玉
(
めだま
)
を
剥
(
む
)
いて
唸
(
うな
)
つてる
108
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れるなら
今
(
いま
)
だぞや
109
凡
(
すべ
)
て
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
財産
(
ざいさん
)
は
110
人一代
(
ひといちだい
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ
111
親爺
(
おやぢ
)
が
悴
(
せがれ
)
に
渡
(
わた
)
さずに
112
残
(
のこ
)
して
死
(
し
)
んだ
宝
(
たから
)
なら
113
誰
(
たれ
)
が
拾
(
ひろ
)
うても
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
114
これは
天下
(
てんか
)
の
所有品
(
しよいうひん
)
115
お
金
(
かね
)
の
欲
(
ほ
)
しい
代物
(
しろもの
)
は
116
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
飛
(
と
)
んで
出
(
で
)
て
117
思
(
おも
)
ふ
存分
(
ぞんぶん
)
引掴
(
ひつつか
)
み
118
栄耀
(
えいえう
)
栄華
(
えいぐわ
)
に
暮
(
く
)
らさんせ
119
ドンドコ ドンドコ ドンドコドン
120
執念
(
しふねん
)
かかつた
金銀
(
きんぎん
)
を
121
俺
(
おれ
)
は
拾
(
ひろ
)
はうと
思
(
おも
)
はない
122
さはさり
乍
(
なが
)
ら
黄金
(
わうごん
)
が
123
もの
云
(
い
)
ふ
時節
(
じせつ
)
だ
皆
(
みな
)
さまよ
124
ドンドコ ドンドコ ドンドコドン
125
強欲爺
(
がうよくぢぢ
)
の
葬礼
(
さうれい
)
を
126
表
(
おもて
)
にかこつけドシドシと
127
遠慮
(
ゑんりよ
)
会釈
(
ゑしやく
)
も
要
(
い
)
らぬ
故
(
ゆゑ
)
128
押
(
お
)
しかけ
行
(
ゆ
)
きて
宝
(
たから
)
をば
129
各自
(
めんめ
)
にせしめた
方
(
はう
)
がよい
130
ワックスさまの
腰抜
(
こしぬ
)
けが
131
もとへ
戻
(
もど
)
らぬ
其
(
その
)
先
(
さき
)
に
132
早
(
はや
)
く
行
(
い
)
つたら
行
(
ゆ
)
き
得
(
どく
)
ぢや
133
一歩先
(
ひとあしさき
)
へ
行
(
ゆ
)
く
者
(
もの
)
が
134
どうしてもお
神徳
(
かげ
)
が
多
(
おほ
)
いぞや
135
ドンドコ ドンドコ ドンドコドン
136
ア、エーエエエ エーエエエ
137
扨
(
さ
)
ても
果敢
(
はか
)
ない
人間
(
にんげん
)
の
命
(
いのち
)
138
欲
(
よく
)
の
皮
(
かは
)
をば
引張
(
ひつぱ
)
つて
139
小国別
(
をくにのわけ
)
のお
館
(
やかた
)
の
140
家令
(
かれい
)
の
勤
(
つと
)
めチヨコ チヨコと
141
上前
(
うはまへ
)
はねて
貯
(
た
)
め
置
(
お
)
いた
142
罪
(
つみ
)
と
穢
(
けがれ
)
の
凝固
(
かたま
)
つた
143
金
(
きん
)
と
銀
(
ぎん
)
とを
沢山
(
たくさん
)
に
144
残
(
のこ
)
して
死
(
し
)
んだ
気味
(
きみ
)
の
良
(
よ
)
さ
145
悪
(
あく
)
はどうしても
長
(
なが
)
つづき
146
致
(
いた
)
さぬものだと
今更
(
いまさら
)
に
147
此
(
この
)
エルさまは
悟
(
さと
)
りました
148
オールスチンの
親爺
(
おやぢ
)
奴
(
め
)
が
149
何時
(
いつ
)
も
偉
(
えら
)
さうに
俺様
(
おれさま
)
を
150
エルよエルよと
呼
(
よ
)
び
棄
(
す
)
てに
151
こき
使
(
つか
)
ひやがつた
其
(
その
)
酬
(
むく
)
い
152
今
(
いま
)
目
(
ま
)
のあたり
面白
(
おもしろ
)
や
153
ドンドコ ドンドコ ドンドコドン
154
人
(
ひと
)
はどうしても
生前
(
せいぜん
)
に
155
善
(
ぜん
)
を
行
(
おこな
)
ひ
施
(
ほどこ
)
しを
156
やつて
置
(
お
)
かねば
詰
(
つま
)
らない
157
今度
(
こんど
)
の
家令
(
かれい
)
が
好
(
よ
)
い
手本
(
てほん
)
158
皆
(
みな
)
さま
確
(
しつか
)
りなさいませ
159
ドンドコ ドンドコ ドンドコドン
160
サアサア
私
(
わたし
)
が
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
161
皆
(
みな
)
さま
跟
(
つ
)
いて
厶
(
ござ
)
いませ
162
ドンドコ ドンドコ ドンドコドン』
163
と
豆太鼓
(
まめだいこ
)
を
叩
(
たた
)
き
乍
(
なが
)
ら
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
した。
164
欲
(
よく
)
に
目
(
め
)
の
無
(
な
)
い
群衆
(
ぐんしう
)
は
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
金銀
(
きんぎん
)
の
小玉
(
こだま
)
を
一
(
ひと
)
つなりとも
拾得
(
しふとく
)
し、
165
其
(
その
)
葬式
(
さうしき
)
に
加
(
くは
)
はり、
166
故人
(
こじん
)
の
霊
(
れい
)
を
慰
(
なぐさ
)
めむものと、
167
蒸
(
む
)
し
暑
(
あつ
)
い
夏
(
なつ
)
の
日
(
ひ
)
を
欲
(
よく
)
の
皮
(
かは
)
を
引張
(
ひつぱ
)
つて、
168
汗
(
あせ
)
をタラタラ
絞
(
しぼ
)
り
乍
(
なが
)
ら
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
く。
169
(
大正一二・三・二六
旧二・一〇
於皆生温泉浜屋
北村隆光
録)
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