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第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
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第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
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第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第57巻(申の巻)
序文
総説歌
第1篇 照門山颪
01 大山
〔1451〕
02 煽動
〔1452〕
03 野探
〔1453〕
04 妖子
〔1454〕
05 糞闘
〔1455〕
06 強印
〔1456〕
07 暗闇
〔1457〕
08 愚摺
〔1458〕
第2篇 顕幽両通
09 婆娑
〔1459〕
10 転香
〔1460〕
11 鳥逃し
〔1461〕
12 三狂
〔1462〕
13 悪酔怪
〔1463〕
14 人畜
〔1464〕
15 糸瓜
〔1465〕
16 犬労
〔1466〕
第3篇 天上天下
17 涼窓
〔1467〕
18 翼琴
〔1468〕
19 抱月
〔1469〕
20 犬闘
〔1470〕
21 言触
〔1471〕
22 天葬
〔1472〕
23 薬鑵
〔1473〕
24 空縛
〔1474〕
25 天声
〔1475〕
余白歌
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第一一章
鳥逃
(
とりにが
)
し〔一四六一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第57巻 真善美愛 申の巻
篇:
第2篇 顕幽両通
よみ(新仮名遣い):
けんゆうりょうつう
章:
第11章 鳥逃し
よみ(新仮名遣い):
とりにがし
通し章番号:
1461
口述日:
1923(大正12)年03月25日(旧02月9日)
口述場所:
皆生温泉 浜屋
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年5月24日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高姫は夜叉のように曲冬をおっかけて四つ辻までやってきたが、曲冬は大股に駆けて行ってしまい、高姫も追いつくことはできなかった。高姫はそろそろ、信者候補を逃がしたことをシャルに八つ当たり始めた。高姫とシャルは言い争いになるが、また一人四つ辻にやってくる者がある。高姫は、今度は自分が引っ張り込んでみせると言ってシャルを下がらせた。
向こうからとぼとぼやってくるのは三千彦であった。三千彦は、高姫が東助との昔の縁への執着から道を踏み外し、妖幻坊に魅せられて脱線活動を始めた有様を歌っていたが、遠くであったので、高姫は気が付かなかった。
高姫は三千彦に声をかけた。三千彦は、フサの国のテルモン山館を助けに行く用事があると答えた。三千彦の方が高姫に気が付いて、声をかけた。すると草の中からシャルが顔をだし、三千彦に連れて行ってほしいと頼み込んだ。
シャルは高姫の悪口を言ったので、高姫は胸ぐらをつかんで締め上げようとした。三千彦はみかねて、高姫の頭髪をつかんでその場に引き倒した。シャルは道案内を申し出て、二人はスタスタと行ってしまう。高姫は歯ぎしりしながら恨めし気に見送っていた。
シャルの目には今まで、寒風ふきすさぶ枯れ野が原と見えていたのに、三千彦に遇ってからはそこら一面が春野のようになり、鳥歌い花匂う光景が目に入るようになった。シャルは嬉々として三千彦の後になり先になり、北へ北へと進んで行く。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-01-23 21:22:27
OBC :
rm5711
愛善世界社版:
144頁
八幡書店版:
第10輯 312頁
修補版:
校定版:
151頁
普及版:
69頁
初版:
ページ備考:
001
白髪
(
しらが
)
交
(
まじ
)
りの
藁箒
(
わらばうき
)
のやうな
髪
(
かみ
)
をサンバラに
凩
(
こがらし
)
に
靡
(
なび
)
かせ
乍
(
なが
)
ら
夜叉
(
やしや
)
のやうにペタペタと
大地
(
だいち
)
を
鳴
(
な
)
らせつつ
四辻
(
よつつじ
)
までやつて
来
(
き
)
た。
002
見
(
み
)
れば、
003
最前
(
さいぜん
)
きた
天香教
(
てんかうけう
)
の
曲冬
(
まがふゆ
)
は
尻引
(
しりひつ
)
からげトントンと
大股
(
おほまた
)
に
夜這星
(
よばひぼし
)
のやうに
黒
(
くろ
)
い
褌
(
ふんどし
)
を
引
(
ひ
)
きずり
乍
(
なが
)
ら
走
(
はし
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
004
何程
(
なにほど
)
高姫
(
たかひめ
)
が
呼
(
よ
)
んでも
叫
(
さけ
)
んでも
振
(
ふ
)
り
向
(
む
)
かばこそ、
005
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
す
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
に
高姫
(
たかひめ
)
も
追
(
おひ
)
つく
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
ず
四辻
(
よつつじ
)
に
歯噛
(
はが
)
みをなし
地団駄
(
ぢだんだ
)
を
踏
(
ふ
)
んで、
006
高姫
(
たかひめ
)
『エイ
残念
(
ざんねん
)
やなア、
007
これシャルお
前
(
まへ
)
が
鈍馬
(
とんま
)
だから
折角
(
せつかく
)
出
(
で
)
てきた
鳥
(
とり
)
を
逃
(
に
)
がして
仕舞
(
しま
)
つたのだ。
008
なぜ
知
(
し
)
らぬ
間
(
ま
)
に
綱
(
つな
)
でも
掛
(
か
)
けて
置
(
お
)
かなんだのかい。
009
「
神
(
かみ
)
が
綱
(
つな
)
さへかけて
置
(
お
)
けば
何
(
なに
)
程
(
ほど
)
ヂリヂリ
悶
(
もだ
)
へをしても
離
(
はな
)
さんぞよ」とお
筆
(
ふで
)
に
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
るぢやないか』
010
シャル『
私
(
わたし
)
は
人間
(
にんげん
)
、
011
貴女
(
あなた
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
でせう。
012
人間
(
にんげん
)
が
綱
(
つな
)
かけたつて
何
(
なん
)
になりませう。
013
私
(
わたし
)
に
不足
(
ふそく
)
を
云
(
い
)
ふより、
014
なぜ
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
が
綱
(
つな
)
かけなかつたのですか。
015
その
不足
(
ふそく
)
は
聞
(
き
)
きませぬ』
016
高姫
(
たかひめ
)
『エ、
017
よう
小理窟
(
こりくつ
)
を
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
だなア。
018
なぜ
絶対
(
ぜつたい
)
服従
(
ふくじゆう
)
をせないのだ。
019
一体
(
いつたい
)
妾
(
わし
)
を
誰人
(
どなた
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
ゐ
)
るのだい』
020
シャル『ハイ、
021
誰人
(
どなた
)
さまかと
思
(
おも
)
へば
矢張
(
やつぱり
)
此方
(
こなた
)
さまで
厶
(
ござ
)
いました。
022
此方
(
こなた
)
さまかと
思
(
おも
)
へば
矢張
(
やつぱり
)
高姫
(
たかひめ
)
さま、
023
高姫
(
たかひめ
)
さまかと
思
(
おも
)
へば
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
、
024
さうかと
思
(
おも
)
へば
底津
(
そこつ
)
岩根
(
いはね
)
の
大弥勒
(
おほみろく
)
さま、
025
大弥勒
(
おほみろく
)
様
(
さま
)
かと
思
(
おも
)
へば
第一
(
だいいち
)
霊国
(
れいごく
)
の
天人
(
てんにん
)
様
(
さま
)
、
026
天人
(
てんにん
)
様
(
さま
)
かと
思
(
おも
)
へば
現界
(
げんかい
)
、
027
幽界
(
いうかい
)
、
028
神界
(
しんかい
)
の
救主
(
すくひぬし
)
さま、
029
救主
(
すくひぬし
)
さまかと
思
(
おも
)
へば
杢助
(
もくすけ
)
さまの
奥様
(
おくさま
)
、
030
杢助
(
もくすけ
)
さまの
奥様
(
おくさま
)
かと
思
(
おも
)
へば
常世姫
(
とこよひめ
)
の
御
(
お
)
霊
(
みたま
)
様
(
さま
)
、
031
常世姫
(
とこよひめ
)
のお
霊
(
みたま
)
様
(
さま
)
かと
思
(
おも
)
へば
高宮姫
(
たかみやひめ
)
様
(
さま
)
、
032
高宮姫
(
たかみやひめ
)
様
(
さま
)
かと
思
(
おも
)
へば
定子姫
(
さだこひめ
)
様
(
さま
)
、
033
誰人
(
どなた
)
が
誰人
(
どなた
)
やら、
034
薩張
(
さつぱり
)
見当
(
けんたう
)
がつきませぬワイ。
035
矢張
(
やつぱり
)
此方
(
こなた
)
さまにして
置
(
お
)
きませうかい』
036
高姫
(
たかひめ
)
『エ、
037
仕様
(
しやう
)
もない、
038
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふのだい。
039
沢山
(
たくさん
)
の
名
(
な
)
を
並
(
なら
)
べて、
040
一
(
ひと
)
つ
云
(
い
)
つたらよいぢやないか。
041
繁文
(
はんぶん
)
褥礼
(
じよくれい
)
は
流行
(
はや
)
りませぬぞや。
042
そんな
複雑
(
ふくざつ
)
な
名
(
な
)
を
云
(
い
)
はいでも、
043
もちつと
単純
(
たんじゆん
)
に
生宮
(
いきみや
)
さまとなぜ
云
(
い
)
はんのかい。
044
法性寺
(
ほつしやうじ
)
の
入道
(
にふだう
)
が
運上取
(
うんじやうと
)
りに
来
(
く
)
るぢやないか』
045
シャル『それでもシンプルな
名称
(
めいしよう
)
では、
046
お
前様
(
まへさま
)
のお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りますまい。
047
些
(
ちつ
)
とでも
長
(
なが
)
く
云
(
い
)
ふ
程
(
ほど
)
、
048
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
がよいのですからなア。
049
足曳
(
あしびき
)
の
山鳥
(
やまどり
)
の
尾
(
を
)
のしだり
尾
(
を
)
の
長々
(
ながなが
)
しう
云
(
い
)
ふのが、
050
どこともなしに
価値
(
ねうち
)
があるやうですよ。
051
第一
(
だいいち
)
雅味
(
がみ
)
がありますからなア』
052
高姫
(
たかひめ
)
『エエ、
053
シンプルだの、
054
複雑
(
ふくざつ
)
だの
雅味
(
がみ
)
だのと
何
(
なに
)
をガミガミ
云
(
い
)
ふのだい。
055
そんな
毛唐
(
けたう
)
のやうな
言葉
(
ことば
)
は
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
では
用
(
もち
)
ひませぬぞや』
056
シャル『それでも
貴女
(
あなた
)
時々
(
ときどき
)
英語
(
えいご
)
を
使
(
つか
)
ふぢやありませぬか』
057
高姫
(
たかひめ
)
『あれや
英語
(
えいご
)
ぢやない
神世
(
かみよ
)
の
生粋
(
きつすゐ
)
のお
言葉
(
ことば
)
ぢや、
058
此
(
この
)
忙
(
いそが
)
しいのにさう
長
(
なが
)
く
名
(
な
)
を
云
(
い
)
はれると
余
(
あま
)
り
気分
(
きぶん
)
のよいものぢやない。
059
お
前
(
まへ
)
も
一
(
ひと
)
つ
云
(
い
)
うて
上
(
あ
)
げようか、
060
さうしたら
味
(
あぢ
)
が
分
(
わか
)
るだらう。
061
何処
(
どこ
)
の
奴
(
やつ
)
かと
思
(
おも
)
へば
此処
(
ここ
)
の
奴
(
やつ
)
だ。
062
バラモン
教
(
けう
)
の
旗持
(
はたもち
)
人足
(
にんそく
)
かと
思
(
おも
)
へば
小盗人
(
こぬすと
)
だ。
063
小盗人
(
こぬすと
)
かと
思
(
おも
)
へば
川陥
(
かははまり
)
だ。
064
川陥
(
かははまり
)
かと
思
(
おも
)
へば、
065
死損
(
しにぞこな
)
ひの
八衢
(
やちまた
)
人足
(
にんそく
)
だ。
066
八衢
(
やちまた
)
人足
(
にんそく
)
かと
思
(
おも
)
へば、
067
地獄
(
ぢごく
)
に
籍
(
せき
)
をおいた
亡者
(
まうじや
)
の
魂
(
みたま
)
だ。
068
亡者
(
まうじや
)
の
魂
(
みたま
)
かと
思
(
おも
)
へば
極道
(
ごくだう
)
息子
(
むすこ
)
だ。
069
極道
(
ごくだう
)
息子
(
むすこ
)
かと
思
(
おも
)
へば
腰抜
(
こしぬ
)
けだ。
070
間抜
(
まぬ
)
けに
歯抜
(
はぬ
)
け、
071
魂抜
(
たまぬ
)
け
野郎
(
やらう
)
だ。
072
魂抜
(
たまぬ
)
け
野郎
(
やらう
)
かと
思
(
おも
)
へば
高姫
(
たかひめ
)
の
尻拭
(
しりふ
)
きだ。
073
尻拭
(
しりふ
)
きかと
思
(
おも
)
へば
矢張
(
やつぱり
)
シャルだ。
074
オツホホホホ』
075
シャル『どうも
甚
(
ひど
)
いですな、
076
それ
丈
(
だけ
)
よう
悪口
(
あくこう
)
が
陳列
(
ちんれつ
)
出来
(
でき
)
たものですワイ。
077
矢張
(
やつぱり
)
お
前
(
まへ
)
さまは
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
は
嘘
(
うそ
)
だ、
078
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
容器
(
いれもの
)
でせう』
079
高姫
(
たかひめ
)
『
定
(
きま
)
つた
事
(
こと
)
だよ。
080
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
と
云
(
い
)
ふ
守護神
(
しゆごじん
)
は
初
(
はじ
)
めは
悪
(
あく
)
だつたけれど、
081
今度
(
こんど
)
、
082
高姫
(
たかひめ
)
の
悪
(
あく
)
が
善
(
ぜん
)
に
改心
(
かいしん
)
して、
083
善
(
ぜん
)
に
立
(
た
)
ち
帰
(
かへ
)
つたのだから、
084
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
事
(
こと
)
は
何
(
なん
)
でも
彼
(
か
)
でも
皆
(
みな
)
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
るのだ』
085
シャル『
成程
(
なるほど
)
、
086
どこともなしに
九尾
(
きゆび
)
九尾
(
きゆび
)
して
居
(
ゐ
)
ますワイ。
087
併
(
しか
)
し
貴女
(
あなた
)
は
女
(
をんな
)
だからよもや
キン
毛
(
まう
)
は
厶
(
ござ
)
いますまい』
088
高姫
(
たかひめ
)
『コレお
前
(
まへ
)
は
此処
(
ここ
)
にすつこんで
居
(
ゐ
)
なさい、
089
彼方
(
あつち
)
から
何
(
なん
)
だか
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るやうだ。
090
妾
(
わし
)
が
一
(
ひと
)
つ
説教
(
せつけう
)
を、
091
捉
(
つか
)
まへてするから、
092
お
前
(
まへ
)
は
決
(
けつ
)
して
口出
(
くちだ
)
しをしてはならぬぞや。
093
此
(
この
)
枯草
(
かれくさ
)
の
中
(
なか
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
して
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
なさい。
094
少
(
すこ
)
し
勉強
(
べんきやう
)
せねば
今日
(
けふ
)
のやうに
折角
(
せつかく
)
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
鳥
(
とり
)
を
逃
(
に
)
がしては
何
(
なん
)
にもならぬからなア。
095
サア
早
(
はや
)
く
引込
(
ひつこ
)
んだり
引込
(
ひつこ
)
んだり』
096
シャル『それでは
暫
(
しばら
)
く
螽斯
(
きりぎりす
)
ぢやないが
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
に
引込
(
ひつこ
)
みます。
097
長話
(
ながばなし
)
はおいて
下
(
くだ
)
さい、
098
足
(
あし
)
が
痺
(
しび
)
れますからなア』
099
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
100
ガサガサと
萱草
(
かやくさ
)
の
中
(
なか
)
に
潜
(
もぐ
)
り
込
(
こ
)
んだ。
101
幽
(
かす
)
かな
声
(
こゑ
)
で
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
がやつて
来
(
く
)
る。
102
三千彦
(
みちひこ
)
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
103
善神
(
ぜんしん
)
邪神
(
じやしん
)
を
立
(
た
)
て
別
(
わ
)
ける
104
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
105
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
106
唯
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
107
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
す
108
三五教
(
あななひけう
)
の
神館
(
かむやかた
)
109
総務
(
そうむ
)
の
司
(
つかさ
)
と
仕
(
つか
)
へたる
110
東野別
(
あづまのわけ
)
を
慕
(
した
)
ひつつ
111
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて
112
恋
(
こひ
)
に
狂
(
くる
)
うた
高姫
(
たかひめ
)
が
113
恥
(
はぢ
)
も
人情
(
にんじやう
)
も
知
(
し
)
らばこそ
114
眼
(
まなこ
)
は
暗
(
くら
)
み
耳
(
みみ
)
は
聾
(
し
)
え
115
恋
(
こひ
)
の
悪魔
(
あくま
)
に
囚
(
とら
)
はれて
116
所
(
ところ
)
もあらうに
聖場
(
せいぢやう
)
で
117
あらむ
限
(
かぎ
)
りの
醜態
(
しうたい
)
を
118
暴露
(
ばくろ
)
せしこそ
果敢
(
はか
)
なけれ
119
心
(
こころ
)
乱
(
みだ
)
れし
高姫
(
たかひめ
)
は
120
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
に
誑
(
たばか
)
られ
121
泣
(
な
)
く
泣
(
な
)
く
館
(
やかた
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて
122
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
急坂
(
きふはん
)
を
123
風
(
かぜ
)
に
裾
(
すそ
)
をば
煽
(
あふ
)
られつ
124
太股
(
ふともも
)
迄
(
まで
)
も
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
して
125
スタスタ
下
(
くだ
)
るスタイルは
126
地獄
(
ぢごく
)
の
町
(
まち
)
を
通
(
かよ
)
ひ
居
(
ゐ
)
る
127
夜叉
(
やしや
)
の
如
(
ごと
)
くに
見
(
み
)
えにける
128
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
に
立
(
た
)
ち
寄
(
よ
)
りて
129
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
曲者
(
まがもの
)
に
130
霊
(
たま
)
をぬかれて
愚
(
ぐ
)
にかへり
131
所在
(
あらゆる
)
醜態
(
しうたい
)
演出
(
えんしゆつ
)
し
132
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
杢助
(
もくすけ
)
と
133
手
(
て
)
に
手
(
て
)
をとつて
小北山
(
こぎたやま
)
134
聖場
(
せいぢやう
)
に
横柄面
(
わうへいづら
)
さげて
135
詣
(
まう
)
でたところ
月
(
つき
)
の
宮
(
みや
)
136
扉
(
とびら
)
の
中
(
なか
)
より
迸
(
ほとばし
)
る
137
その
霊光
(
れいくわう
)
に
肝
(
きも
)
つぶし
138
命
(
いのち
)
辛々
(
からがら
)
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く
139
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
に
立
(
た
)
ち
寄
(
よ
)
りて
140
狐
(
きつね
)
狸
(
たぬき
)
に
誑
(
たばか
)
られ
141
初稚姫
(
はつわかひめ
)
やスマートの
142
生言霊
(
いくことたま
)
に
怖
(
お
)
ぢ
恐
(
おそ
)
れ
143
妖幻坊
(
えうげんばう
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
144
心
(
こころ
)
も
暗
(
くら
)
き
黒雲
(
くろくも
)
に
145
乗
(
の
)
りて
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
すその
途端
(
とたん
)
146
如何
(
いかが
)
はしけむ
中空
(
ちうくう
)
より
147
真逆
(
まつさか
)
様
(
さま
)
に
顛落
(
てんらく
)
し
148
行方
(
ゆくへ
)
不明
(
ふめい
)
となりにけり
149
嘸
(
さぞ
)
今頃
(
いまごろ
)
は
高姫
(
たかひめ
)
は
150
此
(
この
)
世
(
よ
)
にありて
尽
(
つく
)
したる
151
驕傲
(
けうがう
)
尊大
(
そんだい
)
脱線
(
だつせん
)
の
152
道
(
みち
)
を
辿
(
たど
)
りて
中有界
(
ちううかい
)
153
どこかの
野辺
(
のべ
)
に
潜伏
(
せんぷく
)
し
154
道
(
みち
)
行
(
ゆ
)
く
精霊
(
せいれい
)
に
相対
(
あひたい
)
し
155
支離
(
しり
)
滅裂
(
めつれつ
)
の
教理
(
けうり
)
をば
156
吹
(
ふ
)
き
立
(
た
)
て
居
(
ゐ
)
るに
違
(
ちが
)
ひない
157
吾
(
われ
)
は
三千彦
(
みちひこ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
158
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
師
(
し
)
の
君
(
きみ
)
と
159
別
(
わか
)
れて
一人
(
ひとり
)
テルモンの
160
神
(
かみ
)
の
館
(
やかた
)
に
立
(
た
)
ち
向
(
むか
)
ひ
161
悪人輩
(
あくにんばら
)
の
企
(
たく
)
みをば
162
暴露
(
ばくろ
)
し
館
(
やかた
)
の
難儀
(
なんぎ
)
をば
163
助
(
たす
)
けむために
来
(
きた
)
りけり
164
此処
(
ここ
)
はいづくぞフサの
国
(
くに
)
165
アンブラック
川
(
がは
)
の
片傍
(
かたほとり
)
166
草
(
くさ
)
茫々
(
ばうばう
)
と
生
(
は
)
え
茂
(
しげ
)
る
167
青野
(
あをの
)
ケ
原
(
はら
)
と
覚
(
おぼ
)
えたり
168
小鳥
(
ことり
)
は
唄
(
うた
)
ひ
花
(
はな
)
匂
(
にほ
)
ひ
169
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
も
目
(
ま
)
の
当
(
あた
)
り
170
実
(
げ
)
にも
愉快
(
ゆくわい
)
の
心地
(
ここち
)
する
171
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
172
神
(
かみ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
幸
(
さち
)
はひて
173
テルモン
山
(
ざん
)
の
神館
(
かむやかた
)
174
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
しませ
175
神
(
かみ
)
のみ
前
(
まへ
)
に
願
(
ね
)
ぎまつる』
176
と
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
らやつて
来
(
く
)
る。
177
高姫
(
たかひめ
)
は
余
(
あま
)
り
遠
(
とほ
)
くて
自分
(
じぶん
)
の
事
(
こと
)
を
歌
(
うた
)
つて
居
(
を
)
るのは
気
(
き
)
がつかなかつたが、
178
小鳥
(
ことり
)
は
唄
(
うた
)
ひ
花
(
はな
)
匂
(
にほ
)
ひ、
179
青野
(
あをの
)
ケ
原
(
はら
)
で
云々
(
うんぬん
)
と
云
(
い
)
ふ
一句
(
いつく
)
を
聞
(
き
)
いて、
180
高姫
(
たかひめ
)
『これだけ
霜
(
しも
)
に
痛
(
いた
)
んだ
枯野
(
かれの
)
ケ
原
(
はら
)
を、
181
鳥
(
とり
)
が
唄
(
うた
)
ふの
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
くのと
云
(
い
)
ふのは
狂人
(
きちがひ
)
ではあるまいかな、
182
うつかり
相手
(
あひて
)
になつて
先方
(
せんぱう
)
が
狂人
(
きちがひ
)
だつたら
仕末
(
しまつ
)
がつかない。
183
茲
(
ここ
)
は
一
(
ひと
)
つ
柔
(
やんわ
)
り
出
(
で
)
て
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よう』
184
と
四辻
(
よつつじ
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
185
三千彦
(
みちひこ
)
は
漸
(
やうや
)
く
此処
(
ここ
)
に
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
り
高姫
(
たかひめ
)
を
見
(
み
)
て、
186
よう
似
(
に
)
た
顔
(
かほ
)
だとは
思
(
おも
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
187
自分
(
じぶん
)
も
八衢
(
やちまた
)
に
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るとは
気
(
き
)
がつかず、
188
三千彦
(
みちひこ
)
『モシ
一寸
(
ちよつと
)
お
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
しますが、
189
波斯
(
フサ
)
の
国
(
くに
)
のテルモン
山
(
ざん
)
は、
190
何方
(
どちら
)
の
方面
(
はうめん
)
に
当
(
あた
)
りますかな』
191
高姫
(
たかひめ
)
『ヘイ、
192
あのテルモン
山
(
ざん
)
で
厶
(
ござ
)
いますか、
193
此処
(
ここ
)
は
浮木
(
うきき
)
の
森
(
もり
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
194
まだ
随分
(
ずいぶん
)
遠
(
とほ
)
いと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
います。
195
そして
貴方
(
あなた
)
、
196
テルモン
山
(
ざん
)
へ
何
(
なに
)
御用
(
ごよう
)
があつてお
出
(
いで
)
になりますか』
197
三千彦
(
みちひこ
)
『ハイ、
198
私
(
わたし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
199
テルモン
山
(
ざん
)
の
館
(
やかた
)
には
大騒動
(
おほさうどう
)
が
起
(
おこ
)
つて
居
(
を
)
りますので、
200
お
助
(
たす
)
け
申
(
まをし
)
度
(
た
)
いと
思
(
おも
)
つて
心
(
こころ
)
を
配
(
くば
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
201
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
202
どう
道
(
みち
)
を
踏
(
ふ
)
み
迷
(
まよ
)
うたか
知
(
し
)
らないが、
203
こんな
所
(
ところ
)
へ
来
(
き
)
たのですよ』
204
高姫
(
たかひめ
)
『
貴方
(
あなた
)
は
三五教
(
あななひけう
)
で
厶
(
ござ
)
いますか、
205
それはそれは
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
いますな。
206
併
(
しか
)
しテルモン
山
(
ざん
)
にはバラモン
教
(
けう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
祭
(
まつ
)
つてあるでは
厶
(
ござ
)
いませぬか』
207
三千彦
(
みちひこ
)
『ハイ、
208
さうです』
209
高姫
(
たかひめ
)
『テルモン
山
(
ざん
)
、
210
……テルモン
山
(
ざん
)
はバラモン
教
(
けう
)
の、
211
それバラモン
教
(
けう
)
の
神館
(
かむやかた
)
でせう。
212
そして
小国別
(
をくにわけ
)
と
云
(
い
)
ふ、
213
酢
(
す
)
でも
蒟蒻
(
こんにやく
)
でもいかぬ、
214
梃
(
てこ
)
でも
棒
(
ぼう
)
でも
槍
(
やり
)
でも
鉄砲
(
てつぽう
)
でもいかぬと
云
(
い
)
ふ、
215
誠
(
まこと
)
に
早
(
はや
)
狂暴
(
きやうばう
)
無頼
(
ぶらい
)
な、
216
狂暴
(
きやうばう
)
無頼
(
ぶらい
)
な、
217
神司
(
かむつかさ
)
が
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
るぢやありませぬか。
218
そんな
者
(
もの
)
をお
前
(
まへ
)
、
219
そんな
者
(
もの
)
をお
前
(
まへ
)
はどうしてお
前
(
まへ
)
は
助
(
たす
)
けに
又
(
また
)
、
220
どうして
助
(
たす
)
けに
行
(
ゆ
)
くのですかい』
[
※
この高姫のセリフの中に「バラモン教の、それバラモン教の」とか「誠に早狂暴無頼な、狂暴無頼な」「そんな者をお前、そんな者をお前は」など、文言がダブっている箇所があるが、戦前の版や、戦後の校定版や愛世版でもみなそのようになっている。王仁三郎の意図的なものか、校正ミスなのかは不明。
]
221
三千彦
(
みちひこ
)
『ハイ、
222
つひ
行
(
ゆき
)
がかりで
後
(
あと
)
へ
引
(
ひ
)
くにも
引
(
ひ
)
かれぬ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
たのです。
223
貴女
(
あなた
)
は
失礼
(
しつれい
)
ですが、
224
高姫
(
たかひめ
)
さまぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
225
お
帰幽
(
くにがへ
)
になつたと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
ましたが、
226
矢張
(
やつぱり
)
御
(
ご
)
壮健
(
さうけん
)
でウラナイ
教
(
けう
)
をお
開
(
ひら
)
きで
厶
(
ござ
)
いますか』
227
高姫
(
たかひめ
)
『ハイ、
228
そんな
噂
(
うはさ
)
が
厶
(
ござ
)
いますかな、
229
高姫
(
たかひめ
)
はこんなに
丈夫
(
ぢやうぶ
)
でビチビチして
居
(
ゐ
)
ますから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さい。
230
これから
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
説教
(
せつけう
)
を
致
(
いた
)
しますから、
231
一寸
(
ちよつと
)
立寄
(
たちよ
)
つて
下
(
くだ
)
さいますまいか』
232
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
からシャルは
顔
(
かほ
)
を
出
(
だ
)
し、
233
シャル『
駄目
(
だめ
)
だ
駄目
(
だめ
)
だ』
234
と
云
(
い
)
つては
顔
(
かほ
)
を
隠
(
かく
)
す。
235
三千彦
(
みちひこ
)
『モシ
高姫
(
たかひめ
)
さま、
236
貴方
(
あなた
)
の
後
(
うしろ
)
からデクの
坊
(
ばう
)
のやうな
者
(
もの
)
が
変現
(
へんげん
)
出没
(
しゆつぼつ
)
して
居
(
ゐ
)
ますが、
237
あれは
何
(
なん
)
ですか』
238
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
から、
239
シャル『
三千彦
(
みちひこ
)
さま
私
(
わたし
)
も
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
240
と
云
(
い
)
ふ。
241
三千彦
(
みちひこ
)
『ハテナ、
242
何
(
なん
)
だか
妙
(
めう
)
なものが
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
から
私
(
わたし
)
の
名
(
な
)
を
呼
(
よ
)
んで
居
(
ゐ
)
るやうです』
243
高姫
(
たかひめ
)
『イエ、
244
あれは
九官鳥
(
きうくわんてう
)
ですよ。
245
此
(
こ
)
の
原野
(
げんや
)
には
鸚鵡
(
あうむ
)
や
九官鳥
(
きうくわんてう
)
が
棲
(
す
)
んで
居
(
ゐ
)
ますからチヨコチヨコああ
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふのです』
246
三千彦
(
みちひこ
)
『ヘエ
妙
(
めう
)
ですなア。
247
此
(
この
)
九官鳥
(
きうくわんてう
)
は
人間
(
にんげん
)
の
姿
(
すがた
)
をして
居
(
を
)
るぢやありませぬか』
248
高姫
(
たかひめ
)
『そりやさうでせうとも、
249
化物
(
ばけもの
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
ですもの。
250
岩根
(
いはね
)
木根
(
きね
)
立草
(
たちくさ
)
の
片葉
(
かきは
)
迄
(
まで
)
も
言問
(
ことと
)
ふ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
ですから、
251
些
(
ちつ
)
とは
変化
(
へぐれ
)
て
出
(
で
)
るのでせう。
252
それだから
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
水晶
(
すいしやう
)
の
世
(
よ
)
に
立直
(
たてなほ
)
さうと
思
(
おも
)
うて、
253
高姫
(
たかひめ
)
の
肉宮
(
にくみや
)
を
借
(
か
)
り、
254
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
遊
(
あそ
)
ばすのです』
255
三千彦
(
みちひこ
)
『
成程
(
なるほど
)
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
もあるものです』
256
草
(
くさ
)
の
中
(
なか
)
から、
257
シャル『
変化
(
へぐれ
)
の
変化
(
へぐれ
)
の
変化
(
へぐれ
)
武者
(
むしや
)
、
258
変化
(
へぐれ
)
神社
(
じんしや
)
の
高姫
(
たかひめ
)
さま、
259
変化
(
へぐれ
)
の
変化
(
へぐれ
)
の
変化
(
へぐれ
)
武者
(
むしや
)
、
260
変化
(
へぐれ
)
神社
(
じんしや
)
のシャルさま、
261
ウツポツポー、
262
ホーツク、
263
ホーツクホーホー、
264
ホホホホー、
265
ホーホケキヨ ホーホケキヨ、
266
ケキヨ ケキヨ、
267
ニヤーン、
268
モウー、
269
ヒンヒンヒン、
270
ワンワンワン、
271
ウーウーウー、
272
キヤツ キヤツ キヤツ、
273
チウチウチウ、
274
キユツ キユツ キユツ、
275
ウツポツポ、
276
アハハハハハ』
277
三千彦
(
みちひこ
)
『
何
(
なん
)
とマア
変化
(
へぐ
)
れるものですなア、
278
こんな
所
(
ところ
)
に
居
(
を
)
ると
何
(
なに
)
が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るか
知
(
し
)
れませぬ。
279
左様
(
さやう
)
なら
御免
(
ごめん
)
を
蒙
(
かうむ
)
ります』
280
とスタスタ
立
(
た
)
つて
行
(
ゆ
)
かうとする。
281
高姫
(
たかひめ
)
は
大手
(
おほで
)
を
拡
(
ひろ
)
げて、
282
高姫
(
たかひめ
)
『
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つた、
283
此
(
この
)
関所
(
せきしよ
)
は
容易
(
ようい
)
に
潜
(
くぐ
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬぞや、
284
潜
(
くぐ
)
り
度
(
た
)
くば
高姫
(
たかひめ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
一応
(
いちおう
)
腹
(
はら
)
へ
確
(
しつか
)
りと
締
(
し
)
めこんで
行
(
ゆ
)
きなさい、
285
後
(
あと
)
で
後悔
(
こうくわい
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ますぞや』
286
三千彦
(
みちひこ
)
『ヤ
有難
(
ありがた
)
う。
287
併
(
しか
)
し
私
(
わたし
)
は
少
(
すこ
)
し
急
(
いそ
)
ぎますから
今度
(
こんど
)
又
(
また
)
悠
(
ゆつ
)
くり
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
きませう』
288
シャル『モシモシ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
289
こんな
婆
(
ばば
)
に
相手
(
あひて
)
にならず、
290
トツトと
行
(
ゆ
)
きなさいませ。
291
さうして
私
(
わたし
)
も
何卒
(
どうぞ
)
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
292
我
(
が
)
の
強
(
つよ
)
い
仕方
(
しかた
)
のない
婆
(
ば
)
さまですよ』
293
三千彦
(
みちひこ
)
『アアお
前
(
まへ
)
が
九官鳥
(
きうくわんてう
)
だつたか、
294
そんな
所
(
ところ
)
に
何
(
なに
)
をして
居
(
ゐ
)
るのだ』
295
シャル『ハイ、
296
鷹
(
たか
)
の
命令
(
めいれい
)
によつて
九官鳥
(
きうくわんてう
)
此処
(
ここ
)
に
新聞
(
しんぶん
)
の
きうかん
(休刊)して
居
(
ゐ
)
ました』
297
高姫
(
たかひめ
)
『こりやシャル、
298
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
すか。
299
もう
了見
(
れうけん
)
せぬぞや』
300
とグツと
胸倉
(
むなぐら
)
を
取
(
と
)
り、
301
喉元
(
のどもと
)
をグウグウ
押
(
おさ
)
へつける。
302
シャルは
目
(
め
)
を
白黒
(
しろくろ
)
させながら
苦
(
くる
)
しさに
手足
(
てあし
)
をバタバタと
藻掻
(
もが
)
いて
居
(
を
)
る。
303
三千彦
(
みちひこ
)
は
見
(
み
)
るに
見兼
(
みか
)
ね、
304
高姫
(
たかひめ
)
の
頭髪
(
とうはつ
)
をグツと
握
(
にぎ
)
つて
引
(
ひ
)
き
倒
(
たふ
)
した。
305
同時
(
どうじ
)
にシャルは
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
306
シャル『モシ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
307
サ
早
(
はや
)
く
参
(
まゐ
)
りませう。
308
私
(
わたし
)
が
何処
(
どこ
)
へでも
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
します。
309
こんな
婆
(
ばば
)
に
相手
(
あひて
)
になつて
居
(
ゐ
)
ては
耐
(
たま
)
りませぬからなア』
310
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
311
スタスタと
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
す。
312
三千彦
(
みちひこ
)
は、
313
『
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
左様
(
さやう
)
なら、
314
悠
(
ゆつ
)
くり
草
(
くさ
)
の
褥
(
しとね
)
で
一休
(
ひとやす
)
みなさいませ』
315
と
青草
(
あをくさ
)
茂
(
しげ
)
る
田圃道
(
たんぼみち
)
をスタスタと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
316
高姫
(
たかひめ
)
は
歯
(
は
)
ぎしりし
乍
(
なが
)
ら
恨
(
うら
)
めし
気
(
げ
)
に
二人
(
ふたり
)
の
姿
(
すがた
)
を
見送
(
みおく
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
317
シャルの
目
(
め
)
には
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
寒風
(
かんぷう
)
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
む
枯野
(
かれの
)
ケ
原
(
はら
)
と
見
(
み
)
えて
居
(
ゐ
)
たのに、
318
三千彦
(
みちひこ
)
に
遇
(
あ
)
うてから
其処
(
そこ
)
等
(
ら
)
一面
(
いちめん
)
が
春野
(
はるの
)
のやうになり、
319
鳥
(
とり
)
唄
(
うた
)
ひ、
320
花
(
はな
)
匂
(
にほ
)
ふ
光景
(
くわうけい
)
が
目
(
め
)
に
入
(
い
)
るやうになつた。
321
シャルは
嬉々
(
きき
)
として
三千彦
(
みちひこ
)
の
後
(
あと
)
になり
先
(
さき
)
になり、
322
北
(
きた
)
へ
北
(
きた
)
へと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
323
(
大正一二・三・二五
旧二・九
於皆生温泉浜屋
加藤明子
録)
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