第一三章 鶴の訣別(二)〔一九〇七〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻
篇:第3篇 真鶴の声
よみ(新仮名遣い):まなづるのこえ
章:第13章 鶴の訣別(二)
よみ(新仮名遣い):つるのわかれ
通し章番号:1907
口述日:1933(昭和8)年11月27日(旧10月10日)
口述場所:水明閣
筆録者:森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年2月3日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:玉野比女は、顕津男の神との別れの寂しさを歌い、西へ立つ顕津男の神への気遣いとともに、後を守る自分の決意を述べ、真鶴国固成の偉業をたたえた。
つづいて生代比女は、後に残る別れの悲しさを歌った後、顕津男の神の旅立ちへの思いのたけを歌った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7513
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 353頁
修補版:
校定版:240頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 太元顕津男の神は白駒に跨り、002西方の国土を指して、003御子生みの神業に立たむとし給ふや、004玉野比女の神は御馬の轡を片御手に採り、005片御手に御盃を捧げて訣別を惜しみつつ、006御歌詠ませ給ふ。
007『天晴れ天晴れ岐美は今旅に立たすかも
008玉藻の山の御前に仕へむ吾は淋しも
009惟神神の経綸と思へども
010あまり本意なき今日の訣別よ
011栄え行く国土の秀見つつ出で立たす
012岐美の心を愛しとおもへり
013立ち別れ出で行く岐美を懐かしみ
014燃ゆる心を消すすべもなし
015何事も主の大神の御心と
016思へど苦しき訣別なるかも
017白梅の花白々と匂へども
018岐美なき春は淋しかるらむ
019真清水に心清めて岐美が行く
020道の隈手の幸を祈らむ
021八洲国水火を凝らして国土を生み
022御子生ます岐美の雄々しくもあるか
023若草の妻は彼方此方岐美を待てど
024忘れ給ふな玉野の比女を
025生代比女神は国魂神の御子
026育くみながら岐美慕ひまさむ
027霧立ちて玉藻の山の中腹に
029白雲の向伏す彼方の稚国土に
030立たさむ岐美を思へば悲しも
031千早振る神も諾ひ給ふらむ
033西方の国土は曲神沢ありと
034聞けば一入岐美をあやぶむ
035昼も夜も岐美のみゆきに幸あれと
036吾は祈らむ玉野宮居に
037瑞御霊進まむ道に仇神は
039幾千代の末の末まで岐美の神業
041玉泉滝となる世のためしあり
042再び会はむ日こそ待たれつ
043美しく国土生み御子を生みをへて
044岐美は立たすも西方の国土に
045国土稚く国魂の神稚くして
046旅に立たする岐美ぞ畏き
047主の神の神言畏み片時も
048心ゆるめぬ雄々しき岐美よ
049月も日も岐美の行手を照らしつつ
050貴の神業をたすけ給はむ
051奴羽玉の闇迫るとも月読の
052神は岐美の辺照らし給はむ
053降る雨も雪霜霰も心せよ
054国魂生ます岐美の旅路を
055むつまじく仕へ奉りし瑞御霊に
056今は悲しき訣別となりぬる
057夢うつつ幻のごと思ふかな
059浮雲の空に聳ゆる玉藻山の
060聖所に今日は心しづむも
061縁あらばまた逢ふ事のあらむかと
062頼りなき日を頼りにまつも
063汚れたる心もたねど瑞御霊
064岐美に別るる今日は悲しも
065背に腹は代へられぬ世と覚りつつ
066岐美の旅出を止めたく思ふ
067手を合せ神の御前に祈れども
068岐美の旅立止むる由なき
069懇篤に教へ給ひし言霊の
070光は吾に添はりてあるも
071上もなき生言霊の清しさに
072玉藻の山は高らみにけり
073めきめきと伸び拡ごれる玉藻山も
074汝が言霊の水火のたまもの
075神々は歓ぎ喜び万代の
076端まで岐美が功をあがむ
077選まれて神生みの神業仕へます
078恋ふしき岐美と別るる悲しさ
079畏しや訣別むとして今更に
080恋ふしくなりぬ瑞御霊の岐美を
081心より慕ひ奉りし岐美ゆゑに
082今日の訣別は一入つらし
083いざさらば神酒きこしめせ永久の
084訣別の涙ささげ奉らむ
085常永に忘れ給ひそ御盃に
086漂ふ神酒はわが涙ぞと
087この神酒を半ば飲ませて其半ば
088吾に賜はれ恋ふしきの岐美
089一夜の水火の契は交はさずも
090われは正しく汝が妻ぞや
091茂久栄に栄えましませ万世の
092終なき神世の果つる時まで
093世を固め国土を治むる神業の
094一方ならぬ岐美の旅はも
095太元の顕津男の神瑞御霊
096御名は心の永久の光よ』
097 生代比女の神は、098訣別を惜みて御歌詠ませ給ふ。
099『可惜も岐美ははろばろ今日の日を
100限りに訣別れて旅に立たすも
101悲しきは今日の訣別よ真鶴の
102声もさびしく梢に鳴けり
103冴え渡る御空はひたに曇らひつ
104岐美が訣別を惜むがにみゆ
105たらちねの母はあれども父のなき
106千代鶴姫の命愛しも
107涙もて別るる岐美の御姿を
108永久に偲びて吾は泣くなり
109果しなき荒野が原を旅立たす
110雄々しき岐美を思ひて涙す
111まめやかに生き栄えつつ国土生みの
112神業いそしみ栄えませ岐美
113八洲国国土のことごと御子生みて
114主の大神に報い給はれ
115若草の妻は彼方此方岐美行かす
116吉日待ちつつ指折らすらむ
117いすくはし岐美の姿は永久に
119岐美坐さぬ真鶴山に淋しくも
120鎮まり御子を吾は育てむ
121白駒の嘶きさへも今日の日は
122別れ惜むか悲しげなりけり
123千早振る神の神国を固めむと
124岐美は朝夕心なやますも
125和衣の綾の薄衣まとひつつ
126風に吹かるる岐美ぞいたまし
127昼夜の差別もわかずなりにけり
128訣別の涙に目はくもらひつ
129瑞御霊今日の訣別を思召し
130思ひ起せよ生代の比女を
131五百鳴の鈴打ち振りて瑞御霊
132今日の旅立ち送りまつらむ
133いざさらば踊り奉らむみそなはせ
134生言霊の鈴の音の冴えを』
135 斯く歌ひ給ひて、136生代比女の神は左手に鈴を持ち右手に榊葉を振り翳しながら、137しとやかに歌ひ踊り舞ひ、138瑞の御霊の旅立ちを慰め給ふ。
139『美しの国土は生れし美しの
140岐美は今日を旅立ち給ふ
141国魂の神を生みをへ国魂の
142又神生まむと出で立つ岐美はも
143澄みきらふ御空も今日は曇りたり
145月も日も隠るるまでに包みたる
146御空の雲はわが思ひかも
147奴羽玉の心は闇にあらねども
148今日の訣別にふさがりにけり
149吹く風も力なきまで弱りたり
150岐美の旅だち惜しむなるらむ
151生れ逢ひてかかる悲しき日に逢ふも
152神の御為と思ひて慰む
155憂きことの次ぎ次ぎ重なる神世なれや
156紫微天界の貴の真秀良場にも
157天地の縁の糸にむすばれて
158瑞の御霊の御子生みにける
159怪しき心永久に持たねど汝が岐美に
160訣別る思へば涙あふるる
161せきあへぬ涙とどめて雄々しくも
162旅立つ岐美を送る今日かな
163手も足も動かぬまでにゆるぎたり
164訣別るる今日を力おとしつ
165ねもごろなる言霊の水火凝り凝りて
166国魂神はうまらに生れましぬ
167隔てなき水火と水火との結び合せも
168今日を終りと思へば悲しも
169目に涙あらはさじものと思へども
171笑顔して訣別るる岐美の心根を
172思へば一入悲しかりけり
173永久の訣別と思へば悲しもよ
174千代鶴姫を抱へしわが身は
175大野原駒に跨り出で立たす
176岐美のみゆきに御幸あれかし
177越国の果に居ますも時折は
178千代鶴姫をかへりみましませ
179そよと吹く風の響も心して
180岐美の言霊とうかがひ奉らむ
181遠き近き差別なけれど別れ行く
182岐美の御姿悲しかりけり
183野に山に百花千花匂へども
184岐美なき春は楽しくもなし
185ほのぼのとあらはれ初めし真鶴の
186山の尾の上は空に霞めり
187もろもろの生命を生ます言霊の
188岐美に別るる今日とはなりぬ
189世の中に斯かる悲しき例ありと
191大方の春はふけつつ白梅の
192花も今日より散り初めにけり
193晴れし空に雷轟く心地して
195果しなき思ひ抱きて旅立たす
196岐美のうしろで送る悲しさ
197駿馬の脚許遅くあれかしと
198思ふもわが身の誠なりけり
199束の間も止まりませと祈るかな
200われ愚なる恋心より』
201(昭和八・一一・二七 旧一〇・一〇 於水明閣 森良仁謹録)