霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二三章 ()森林(しんりん)〔一九一七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻 篇:第4篇 千山万水 よみ(新仮名遣い):せんざんばんすい
章:第23章 魔の森林 よみ(新仮名遣い):まのしんりん 通し章番号:1917
口述日:1933(昭和8)年11月30日(旧10月13日) 口述場所:水明閣 筆録者:森良仁 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年2月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
スウヤトゴル(=聖なる山)に身を変えて、西方の国土の天地を我が物としようとしていた大曲津見は、顕津男の神を騙って朝香比女の神を騙し、御子生みをなそうと企んでいた。
しかし、本物の顕津男の神が西方の国に間近にやってきたのに驚き恐れ、途中で一行を全滅させようと、部下の邪神を集めて何度も評議をした。
その結果、嘘つきに長けた醜狐を柏木の森に遣わして、妨害計画を与えて実行させたのである。この醜狐は、醜女の神、といった。
醜女の神は柏木の森の手前に姿を隠し、顕津男の神の一行の駒の足許ちかく、かすかな声で、『右に行けば必ず勝つ、中の道を行けば必ず負ける、左に行けば必ず滅びる、主の神の教えであるぞ』と歌っていた。
顕津男の神はこの歌を聞いて微笑みつつ、醜神の罠と見破り、左の道へ進むことを歌う。
従者神たちはそれを聞いて不安に思うが、美波志比古は、スウヤトゴルの手下の曲津神の姦計であろう、と歌って不安を鎮める。
こうして一行は、曲津神が滅びると言った左の道を選んだ。おのおの曲津神に対する決意を歌って勇気をつけつつ、柏木の森を難なく突破し、スウヤトゴル山脈さして悠然と進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-09-11 16:56:16 OBC :rm7523
愛善世界社版: 八幡書店版:第13輯 407頁 修補版: 校定版:439頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 スウヤトゴルに姿(すがた)(へん)じて、002西方(にしかた)国土(くに)天地(てんち)吾物(わがもの)とし、003邪気(じやき)(つつ)()たる大曲津見(おほまがつみ)は、004高地秀(たかちほ)(みや)より(くだ)らせ(たま)朝香(あさか)比女(ひめ)(かみ)を、005(みづか)顕津男(あきつを)(かみ)(しよう)(むか)(まつ)りて、006御子生(みこう)みを()し、007西方(にしかた)国土(くに)完全(くわんぜん)占領(せんりやう)せむものと、008計画(けいくわく)をさをさ(をこた)らざりし(ところ)へ、009真正(しんせい)太元(おほもと)顕津男(あきつを)(かみ)間近(まぢか)(きた)(たま)ひしに(おどろ)き、010途中(とちう)にて(みづ)御霊(みたま)一行(いつかう)全滅(ぜんめつ)せしめむと、011部下(ぶか)邪神(じやしん)(たち)(あつ)めて種々(しゆじゆ)評議(ひやうぎ)結果(けつくわ)012(もつと)狡猾(かうくわつ)にして性質(せいしつ)(わる)く、013(うそ)つき上手(じやうず)で、014自己(じこ)利益(りえき)のみを巧妙(かうめう)(はか)らふ醜狐(しこぎつね)柏木(かしはぎ)(もり)(つか)はし、015種々(しゆじゆ)謀計(ぼうけい)(あた)へて(これ)(あた)らしめて()る。016(この)(きつね)醜女(しこめ)(かみ)といふ。017醜女(しこめ)(かみ)柏木(かしはぎ)(もり)手前(てまへ)姿(すがた)(かく)しながら、018顕津男(あきつを)(かみ)一行(いつかう)(こま)脚許(あしもと)(ちか)く、019(かすか)なる(こゑ)にて、
020(みぎ)()かば(かなら)()たむ
021(なか)()かば(かなら)()けむ
022(ひだり)()かば(かなら)(ほろ)びむ
023()(かみ)(をしへ)ぞ』
024姿(すがた)(かく)して(うた)つて()る。
025 顕津男(あきつを)(かみ)耳敏(みみざと)くも、026醜女(しこめ)(かみ)(うた)()きて微笑(ほほゑ)みつつ御歌(みうた)()ませ(たま)ふ。
027醜神(しこがみ)(しこ)言葉(ことば)()きにけり
028(ひだり)()くも(われ)(ほろ)びず
029()(ぐり)中津道(なかつみち)をば(われ)()かむ
030(ほろ)びを()らぬ面勝(おもかつ)(かみ)
031(みぎ)()かば()たむといひし(しこ)(こゑ)
032(われ)(たばか)(いつは)(ごと)なり
033この(もり)奥深(おくふか)くしてほの(ぐら)
034(こま)(ひづめ)()(やぶ)りなむ
035(みぎ)()かば(かなら)曲津(まが)(ふか)(わな)
036かかりて百神(ももがみ)(ほろ)ぶなるべし
037いざさらば(ほろ)ぶといひし(ゆんで)(みち)
038(こま)(ひづめ)にかけて(すす)まむ』
039 この御歌(みうた)七柱(ななはしら)供神(ともがみ)(やや)不安(ふあん)面持(おももち)しながら、040各自(おのもおのも)御歌(みうた)()ませ(たま)ふ。
041 美波志(みはし)比古(ひこ)(かみ)御歌(みうた)
042『スウヤトゴル(しこ)曲津(まがつ)先走(さきばし)
043醜女(しこめ)(かみ)謀計(たくみ)なるらむ
044美波志(みはし)比古(ひこ)(われ)(すす)まむ瑞御霊(みづみたま)
045御許(みゆる)しを()(ひだり)(みち)
046わが岐美(きみ)(ひかり)(おそ)れてスウヤトゴルは
047此処(ここ)謀計(たくみ)(わな)(つく)れるか
048スウヤトゴル輩下(てした)(つか)ふる醜狐(しこぎつね)
049この森林(しんりん)(あだ)すると()
050この(もり)(ひら)(わた)りてスウヤトゴルの
051曲津(まが)のすみかに(すす)まむと(おも)
052()(かく)(われ)御前(みさき)(つか)ふべし
053(みづ)御霊(みたま)(つづ)かせ(たま)へ』
054 ()(うた)ひて、055(ひだり)()けば(ほろ)ぶべしとの曲神(まがかみ)言葉(ことば)()みにじりつつ、056(おく)(おく)へと一行(いつかう)八柱(やはしら)馬上(ばじやう)(ゆたか)御歌(みうた)うたひつつ(すす)(たま)ふ。
057 顕津男(あきつを)(かみ)御歌(みうた)
058柏木(かしはぎ)(もり)小暗(をぐら)(しげ)りたれど
059(われ)(おそ)れじ悪魔(まが)のすみかも
060大空(おほぞら)(ふう)じて小暗(をぐら)柏木(かしはぎ)
061(もり)(てら)してわが()かむかな
062スウヤトゴル大曲津見(おほまがつみ)(ひそ)みたる
063(みね)彼方(かなた)(そら)(そび)えつ
064四方(よも)八方(やも)(あや)しき(こゑ)(ひび)()
065われ柏木(かしはぎ)(もり)(ひら)かむ
066曲神(まがかみ)(いきほひ)如何(いか)(つよ)くとも
067生言霊(いくことたま)(ひら)きすすまむ
068愛善(あいぜん)(ひかり)四方(よも)(てら)()
069(われ)(あだ)する曲津(まが)(ほろ)びむ
070醜神(しこがみ)(ほろ)ぶといひし森林(しんりん)
071(ひだり)(みち)伊行(いゆ)くは(たの)しも
072大空(おほぞら)(くも)はちぎれて天津(あまつ)()
073(ひかり)(しづか)にさし()めにけり
074曲神(まがかみ)(くも)(おこ)して御空(みそら)(つつ)
075月日(つきひ)(かげ)をさへぎりて()り』
076 内津(うちつ)豊日(ゆたひ)(かみ)御歌(みうた)
077(とき)じくに(あや)しき(おと)(きこ)ゆなる
078柏木(かしはぎ)(もり)曲津(まが)のすみかよ
079(いま)とならば(なに)(おそ)れむ瑞御霊(みづみたま)
080(ひかり)岐美(きみ)()れましぬれば
081(ほろ)びなむと醜女(しこめ)(かみ)(さけ)びたる
082道行(みちゆ)(われ)(たの)しかりけり
083(ほろ)ぶべき(みち)(あか)して(すす)()
084(ひかり)岐美(きみ)雄々(をを)しきろかも
085()くならば如何(いか)なる(しこ)のさやるとも
086(なに)(おそ)れむ(みそぎ)せし()
087惟神(かむながら)禊祓(みそぎはら)ひしわれなれば
088(しこ)(をか)さむ(すべ)なかるべし
089わが()かむ(みち)隈手(くまで)(つつが)なく
090(まも)らせ(たま)(すめら)大神(おほかみ)
091()(かみ)のウ(ごゑ)()れし(われ)にして
092醜女(しこめ)言葉(ことば)(うご)くべきやは
093(つち)(わか)西方(にしかた)国土(くに)彼方(あち)此方(こち)
094曲津見(まがつみ)(ひそ)みて(あだ)()すかな
095今日(けふ)よりはこの国原(くにはら)天国(てんごく)
096(あらた)()れし聖所(すがど)なるぞや』
097 大道(おほみち)知男(しりを)(かみ)御歌(みうた)
098惟神(かむながら)大道(おほみち)知男(しりを)(かみ)われは
099(ひだり)(みち)(わざはひ)なしと(おも)
100(みぎ)()けば(わざはひ)せむと醜女神(しこめがみ)
101(ちから)かぎりに(たく)らみ()るも
102この(もり)東西(とうざい)(じふ)()南北(なんぼく)
103三十八(さんじふはち)()曲津(まが)のすみかぞ
104スウヤトゴル輩下(てした)(かみ)大方(おほかた)
105この森林(しんりん)(ひそ)()るとふ
106()(かく)柏木(かしはぎ)(もり)醜神(しこがみ)
107言向和(ことむけやは)せて(すす)みませ岐美(きみ)
108()けど()けど(はて)しも()らぬ森林(しんりん)
109木蔭(こかげ)(わた)(かぜ)(つめ)たき
110曲神(まがかみ)水火(いき)()()りて(かぜ)さへも
111わが()(ほね)()(とほ)すなり
112言霊(ことたま)水火(いき)(てら)してこの(もり)
113(こま)(ひづめ)()みにじり()かむ
114曲神(まがかみ)(しこ)謀計(たくみ)()くまでも
115(ふか)くあれども底力(そこぢから)なし
116表面(うはべ)のみ(つよ)()ゆれど曲神(まがかみ)
117生言霊(いくことたま)にあひて()ゆるも
118言霊(ことたま)(さち)はふ(くに)言霊(ことたま)
119天照(あまて)(くに)(おそ)れなき(くに)
120今日(けふ)までは曲津(まがつ)(かみ)(おそ)はれしが
121(いま)真言(まこと)(ちから)()にけり
122(みそぎ)して(きよ)まりにけるわが(たま)
123昨日(きのふ)()して百倍(ももへ)(つよ)きも』
124 宇志波岐(うしはぎ)(かみ)御歌(みうた)
125『この(あた)宇志波岐(うしはぎ)()れど柏木(かしはぎ)
126(もり)(あし)をば()れし(こと)なし
127今日(けふ)までは(あや)しの(もり)()()きし
128曲津(まが)のすみかを()みて(やぶ)らむ
129心強(こころづよ)くも(ひかり)(かみ)御供(みとも)して
130曲津(まがつ)のこもる(もり)()今日(けふ)
131スウヤトゴル(みね)魔神(まがみ)もこの(もり)
132(ほろ)びを()かば(たちま)()ゆべし
133(はて)しなき小暗(をぐら)(きたな)きこの(もり)
134曲津(まが)のすみかに(ふさ)はしきかな
135百木々(ももきぎ)(なか)()れつつ(おの)(おの)
136邪気(じやき)()()でて()(けが)しつつ
137曲津見(まがつみ)邪気(じやき)(あつま)るこの(もり)
138生言霊(いくことたま)にきよめひらかむ
139この(もり)(しこ)(きつね)()むと()けば
140()()りし(かみ)(いま)までになし
141この(もり)(まよ)()りたる国津(くにつ)(かみ)
142()きて(かへ)りし一柱(ひとはしら)もなし
143瑞御霊(みづみたま)岐美(きみ)(つか)へて(すす)()
144(われ)()邪気(じやき)(おそ)はざりけり
145わが(こま)邪気(じやき)(あつま)森中(もりなか)
146いななきながら(すす)()くかも
147顕津男(あきつを)(かみ)御稜威(みいづ)(おどろ)きて
148(しこ)曲津(まがつ)()()りにけむか
149安々(やすやす)(わた)()くかも()(もり)
150(しげ)みを()けて八柱(やはしら)(かみ)は』
151 臼造男(うすつくりを)(かみ)御歌(みうた)
152岐美(きみ)()かば柏木(かしはぎ)(もり)(あき)らけく
153(ひか)()めたり曲津(まが)何処(いづく)
154(あふ)()ればスウヤトゴルの山脈(やまなみ)
155いやつぎつぎに遠去(とほざ)りにける
156顕津男(あきつを)(かみ)(ひかり)曲津見(まがつみ)
157(おそ)(やま)もて()()ると()
158この(もり)生言霊(いくことたま)(しば)りあれば
159曲津(まが)(うご)かす(あた)はざるべし
160醜女神(しこめがみ)この森林(しんりん)永遠(とことは)
161すまひて国土(くに)(あだ)をなしつつ
162曲津見(まがつみ)輩下(てした)(かみ)八百万(やほよろづ)
163この柏木(かしはぎ)(もり)にひそめる
164曲神(まがかみ)(かず)(かぎ)りを言向(ことむ)けて
165(かみ)聖所(すがど)(きよ)めむとぞ(おも)
166(ほろ)ぶべしと曲津(まがつ)()りし(ゆんで)(みち)
167心安(うらやす)けかり(かみ)(ひかり)
168(つき)()御空(みそら)(くも)押分(おしわ)けて
169柏木(かしはぎ)(もり)(うへ)(かがや)
170(かがや)ける御魂(みたま)々々(みたま)(てら)しつつ
171()()(みち)曲津(まが)姿(かげ)なし
172日南河(ひなたがは)(みそぎ)神事(わざ)功績(いさをし)
173(やす)(わた)らむ柏木(かしはぎ)(もり)
174曲神(まがかみ)姿(かげ)(ひそ)めて(しづか)なり
175(こずゑ)(わた)(かぜ)()のみにて
176迦陵(から)頻伽(びんが)(とき)得顔(えがほ)にうたふなり
177曲津見(まがつみ)(もり)にも天津(あまつ)()()らひて
178百花(ももばな)(つゆ)()びつつ森蔭(もりかげ)
179(えん)(きそ)ひて()()でにける
180花蓆(はなむしろ)()(なら)べたる(ごと)くなり
181わが()(もり)木下蔭(こしたかげ)(みち)
182醜神(しこがみ)のすまへる(もり)(たちま)ちに
183(はな)(にほ)ひつつ小鳥(ことり)はうたひつ
184(むし)()小鳥(ことり)(こゑ)天国(かみくに)
185(はる)をうたふか()(わた)るなり
186()くの(ごと)(はな)()()つる柏木(かしはぎ)
187(もり)曲津(まがつ)のすむと(おも)へず
188岐美(きみ)()(みち)隈手(くまで)曲津(まが)はなし
189(はな)()(にほ)(とり)うたふのみ
190真鶴(まなづる)(くに)より(きた)るか幾千(いくせん)
191(つる)御空(みそら)()()めにけり
192()くならばこの()(もり)天国(かみくに)
193醜女(しこめ)(かみ)()()りにけむ
194(いさ)ましき岐美(きみ)(たび)かも(やま)()
195木草(きぐさ)(はて)までよみがへりつつ
196幾千(いくせん)(つる)()()西方(にしかた)
197国土(くに)万世(よろづよ)うたふなるらむ
198右左(みぎひだり)(みち)(たが)へず(すす)()
199今日(けふ)旅路(たびぢ)(やす)けかりけり
200(みぎ)()かば醜女(しこめ)(かみ)謀計(たくらみ)
201()ちて(われ)はも(くる)しみにけむ
202曲神(まがかみ)(たくみ)(うら)をかきながら
203岐美(きみ)雄々(をを)しく()でまししはや
204(われ)(また)(ひかり)岐美(きみ)御恵(みめぐみ)
205(こころ)(やす)けく()(もり)()くも
206処々(ところどころ)清水(しみづ)(たた)ふる(いづみ)ありて
207天津(あまつ)()(かげ)(うか)べて()むも
208この清水(しみづ)今日(けふ)()までも(にご)らひしを
209生言霊(いくことたま)(よみがへ)りたるよ
210()くならば()(むす)ぶとも(けが)れまじ
211(なが)生命(いのち)(かて)ともならむか』
212 内容居(うちいるゐ)(かみ)御歌(みうた)
213月読(つきよみ)(かみ)御霊(みたま)(したが)ひて
214(こころ)(やす)けく()(もり)()くも
215大曲津見(おほまがつみ)(しこ)のすみかのこの(もり)
216岐美(きみ)のみゆきに(きよ)まりしはや
217曲津見(まがつみ)(おそ)れをなしてスウヤトゴルの
218(やま)もろともに遠去(とほざ)りにける
219醜狐(しこぎつね)数多(あまた)()むてふこの(もり)
220月日(つきひ)(かがや)神園(みその)となりしはや
221()(かぜ)(すが)しく()えて(ひか)るなり
222木々(きぎ)(こずゑ)千代(ちよ)ささやきつ
223大空(おほぞら)(つつ)みし(しこ)黒雲(くろくも)
224()りて(あと)なく月日(つきひ)()らふ
225()くならば()(つち)(わか)西方(にしかた)
226国土(くに)(さか)えむ草木(くさき)()えむ
227天津(あまつ)醜女(しこめ)(かみ)何処(いづく)()(はて)
228()()りにけむ姿(かげ)だにもなし
229次々(つぎつぎ)岐美(きみ)(ひかり)(かがや)きて
230(しこ)魔神(まがみ)(かく)()もなし
231(あま)(かけ)(つち)(くぐ)りて()ぐるとも
232如何(いか)でのがれむ(かみ)(まなこ)
233西方(にしかた)(わか)国原(くにはら)にやうやうと
234あらはれましぬ(ひかり)岐美(きみ)
235この国土(くに)八十(やそ)比女神(ひめがみ)のいまさずば
236(こと)(みだ)れし曲津(まが)のすみかよ
237曲神(まがかみ)八十(やそ)比女神(ひめがみ)のいまさぬを
238よき機会(しほ)として雄猛(をたけ)(くる)ふも
239()(かみ)()さし(たま)ひし八十(やそ)比女(ひめ)
240(かみ)御稜威(みいづ)国土(くに)(しづ)めよ
241この国土(くに)八十(やそ)比女(ひめ)一柱(ひとり)ましまさば
242()くも曲津(まがつ)(たけ)ばざりしを
243(やうや)くに(ひかり)(かみ)()でましを
244(あふ)ぎて国原(くにはら)よみがへりつつ
245()(かみ)神言(みこと)(かしこ)国原(くにはら)
246(めぐ)れど曲津(まが)(ほろ)びざりける
247八十日(やそか)()はあれども今日(けふ)生日(いくひ)こそ
248国土(くに)(はじ)めの吉日(よきひ)なるかも
249濛々(もうもう)黒雲(くろくも)()ちて(ひる)もなほ
250小暗(をぐら)国土(くに)(てら)(たま)ひぬ
251わが岐美(きみ)(いづ)御水火(みいき)大空(おほぞら)
252(つつ)みし(くも)()()せにけり
253黒雲(くろくも)(むらさき)(くも)(へん)じつつ
254この国原(くにはら)はあらたに(うま)れむ
255八雲(やくも)()黒雲(くろくも)()ちたつ西方(にしかた)
256国土(くに)(てら)して(ひか)岐美(きみ)はも
257()()ちし(ひかり)岐美(きみ)()れましぬ
258(かみ)(いの)りし(いさを)なるらむ
259今日(けふ)よりは国津神(くにつかみ)(たち)(みちび)きて
260(みそぎ)神事(わざ)()()かすべし
261四方(よも)八方(やも)(くも)(きり)とに(つつ)まれて
262月光(つきかげ)さへも()国土(くに)なりけり
263(あふ)()れば天津(あまつ)()(かげ)(つき)(かげ)
264御空(みそら)(あを)(かがや)(たま)ひぬ
265(そら)(あを)(つち)(みどり)木草(きぐさ)()ひて
266(うま)れし国土(くに)神国(みくに)なるかも
267高照(たかてる)(やま)(ひがし)(そび)えつつ
268(むらさき)(くも)わき()つが()
269今日(けふ)までは高照山(たかてるやま)頂上(いただき)
270(くも)(つつ)まれ()えずありしよ』
271 初産霊(はつむすび)(かみ)御歌(みうた)
272駿馬(はやこま)(いなな)(つよ)御空(みそら)にも
273(つる)()()()(わた)今日(けふ)
274この国土(くに)(はじ)めて()たる日月(じつげつ)
275(かげ)のさやけさに(わが)(たま)()くるも
276黒雲(くろくも)(そら)(とざ)され国津(くにつ)(かみ)
277(はじ)めて(をが)月日(つきひ)なりけり
278真鶴(まなづる)(そら)()ひつつ(うた)ひつつ
279岩戸(いはと)(ひら)けし国土(くに)(いは)ふも
280大空(おほぞら)十重(とへ)二十重(はたへ)(つつ)みたる
281(くも)()()きて御空(みそら)(たか)しも
282碧々(あをあを)(そこ)ひも()らぬ(そら)(うみ)
283(しづか)(わた)らす月舟(つきふね)(かげ)
284(うれ)しさは(なに)(たと)へむ百千花(ももちばな)
285()(にほ)ひたる(あたら)しき国土(くに)
286(やま)()百花(ももばな)千花(ちばな)()()ちて
287()()(かぜ)(かむば)しき国土(くに)
288 愛見男(なるみを)(かみ)御歌(みうた)
289天国(かみくに)()愛見男(なるみを)神柱(みはしら)
290国土(くに)はさやけく(くも)()れにつつ
291瑞御霊(みづみたま)(ひかり)岐美(きみ)()でましに
292(あたら)しき国土(くに)(うま)れたるかも
293スウヤトゴル曲津見(まがつみ)(ひそ)山脈(やまなみ)
294(いま)(かぎ)りに(とほ)ざかりつつ
295曲神(まがかみ)言向(ことむ)(やは)西方(にしかた)
296国土(くに)月日(つきひ)永久(とは)(をが)まむ
297(くさ)()小鳥(ことり)(むし)今日(けふ)よりは
298岐美(きみ)御稜威(みいづ)をうたひ(まつ)らむ
299有難(ありがた)()(きた)りけり瑞御霊(みづみたま)
300(ひかり)岐美(きみ)御稜威(みいづ)あふれて
301雲霧(くもきり)四方(よも)()()(かぜ)()えて
302木草(きぐさ)生育(そだち)(とぼ)しき国土(くに)なりし
303永遠(とことは)(ひかり)岐美(きみ)言霊(ことたま)
304この稚国土(わかぐに)はよみがへるべし
305西方(にしかた)国土(くに)には八十(やそ)比女神(ひめがみ)()さず
306曲津見(まがつみ)処得顔(ところえがほ)(たけ)びし
307待佗(まちわ)びし(ひかり)岐美(きみ)国土造(くにつく)
308(よろこ)(むか)へむ国津神(くにつかみ)(たち)は』
309 ()神々(かみがみ)各自(おのもおのも)生言霊(いくことたま)御歌(みうた)うたひつつ、310曲神(まがかみ)()めるてふ、311柏木(かしはぎ)(もり)(なん)(なや)みもなく突破(とつぱ)し、312スウヤトゴル山脈(さんみやく)さして、313(こま)(くつわ)(なら)悠然(いうぜん)として(すす)(たま)ふぞ(かしこ)(きは)みなりけり。
314昭和八・一一・三〇 旧一〇・一三 於水明閣 森良仁謹録)
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