第一六章 鶴の訣別(五)〔一九一〇〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻
篇:第3篇 真鶴の声
よみ(新仮名遣い):まなづるのこえ
章:第16章 鶴の訣別(五)
よみ(新仮名遣い):つるのわかれ
通し章番号:1910
口述日:1933(昭和8)年11月27日(旧10月10日)
口述場所:水明閣
筆録者:林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年2月3日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:顕津男の神が玉藻山を去りつつあるとき、玉野比女は寂しさに耐えかねて、玉野宮の大前にうずくまって神言を奏上し、静かに歌を歌った。
その歌は、顕津男の神を慕い、その姿を偲ぶ述懐の歌であった。また、自分は八十比女の一人でありながら、御子神を授かったのは生代比女だったことを悔やみ、ねたみの心が湧いてくるのをどうともしようがなくなってきた。
すると、玉藻山の松の枝を左右に揺らし、二柱の神が玉野宮居に天から下ってきた。
二柱の神は、それぞれ魂結(たまゆい)の神、中津柱の神と名乗り、主の神の言により、玉野比女を助けるために降ってきた、と明かす。
玉野比女は二神の降臨に驚きかつ喜び、また神に仕える身でありながら、神前に繰言を述べた自分を恥じた。
魂結の神は、玉野比女の真鶴国の将来を愁う真心が天に通じたのであり、自分は玉野宮に仕えて玉野比女を助けるために、主神より下されたのだ、と歌う。
中津柱の神は、顕津男の神の願いを主の神が容れて、自分は下ったのだ、と歌った。また、国魂の神は生代比女の御子なのではなく、八十比女である玉野比女の御子であると心得るよう諭した。
中津柱の神は、真鶴国を廻って神業の継続を助けよう、と歌い、遠見男の神が国事の全ての司であり、玉野宮居の司は玉野比女である、と役割を明らかにする。
そして、自分は真鶴国を隅々まで廻り、国の詳細が固まったならば天へ帰る、と自分の役割を明らかにした。
最後に、主の神の神言によって、魂結の神とともに、幾億万の年月を経てようやく「皇国」・「大やまとの国」として固めるというのがこれからの神業である、と結んだ。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7516
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 370頁
修補版:
校定版:303頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 ここに顕津男の神は、002その神業の成れるを機会に、003諸神におくられて玉藻山をしづしづ下り給ひければ、004玉野比女の神は淋しさに堪へかねて、005玉野宮の大前に蹲まりつつ神言を奏上し終りて、006静に御歌詠ませ給ふ。
007『顕津男の神は国土生み御子生みの
008神業終りて帰りましける
009神の世を固めむとして出でましし
010瑞の御霊の後姿なつかしも
011冴え渡る月日の光も何処となく
013高地秀の山より下りし瑞御霊
014その御姿は雄々しかりける
015南の国土を固めむと出でましし
016岐美は今なし白梅は散る
017春の陽は静に更けて夏草の
018萌ゆる玉藻の山の淋しさ
019圓屋比古の神は三笠の山の根に
020帰らせ給ひていよよ淋しも
021八洲国ことごとめぐり神生ます
023わが岐美と名乗る言葉も口ごもり
024ただ一言の名乗りさへせず
025いすくはし神の姿の目に浮きて
027岐美の姿玉藻の山に現れしより
028早も百日を過ぎにけらしな
029白梅の花にも似たる粧ひを
030持たせる岐美は懐かしきかも
031主の神の誓ひは重しさりながら
032気永く待ちて年さびにける
033西東南や北とめぐらして
035日を重ね月をけみしてわが岐美は
036四方の国々めぐりますかも
037右り左契りなけれどわが岐美の
038御姿思へば恋ふしかりける
039水火と水火合せて御子をたしたしに
040生まむ術なきわが身を悲しむ
041いろいろに花は匂へど白梅の
042薫り床しも主の種宿せば
043梅は散り桜は散りて夏の日も
044いや深み草深くなりぬる
045奇びなる縁の綱にからまれて
046背とし名のれど水火あはざりき
047主の神はわれをたすけむ司神
048天降らせ給ふと聞くぞ嬉しき
049独りのみ只独りのみ清庭に
050神世を祈れどうら淋しもよ
051月と日と二つ並べる世の中に
053奴婆玉の闇は迫りぬわが心
055再びは会はむ術なきわが心に
057結比合の神はあれども年さびし
059豊なる岐美のよそほひ見送りて
061浮雲の流るる見つつ思ふかな
062わが行く道のはかなかる世を
063玉野丘は瑞の御霊の言霊に
065景色よき玉藻の山の眺めさへ
067背の岐美は今やいづくぞ大野原
069天地にひとりの岐美を慕ひつつ
070長の訣別を生きて見るかも
071虫の音もいとど悲しく聞ゆなり
072わが目の涙かわき果てずて
073隔てなき岐美の心を悟りつも
075愚なるわが魂線をたしなめて
076笑顔に迎へし時のくるしさ
077生代比女の神は国魂神の御子
078安々生ませ給ひけるはや
079生代比女若しなかりせば真鶴の
080国魂神は生れざるべし
081生代比女神の功を喜びつ
082何かうらめし心の湧くも
083恐ろしきものは恋かも心かも
085わが心乱れけむかも生代比女の
086貴の功をうらやましみおもふ
087背の岐美と水火を合せて生みませる
088千代鶴姫の命めぐしも
089わが腹に宿らす御子にあらねども
090わが子となりし国魂神はや
091国魂の御子の生ひたつあしたまで
092生代の比女は育くみ給はむ
093生代比女国魂神の乳母神と
095常磐樹の松の心を持ちながら
097長閑なる春の心も恋ゆゑに
098曇ると思へば恥づかしのわれよ
099愛しさと恋ふしさまさり背の岐美の
100御前にふるふ言の葉うたてき
101百千々に砕く心を語らはむ
103主の神にいらへむ言葉なきままに
104われは許しぬ恋の仇神を
105起きて見つ寝て思ひつつ御子のなき
106われを悲しむ玉藻の山に』
107 斯く歌ひ給ふ折しも、108玉藻山の常磐の松の梢を前後左右にさゆらせつつ、109雲路を別けて玉野宮居の清庭に、110二柱の神悠然として天降りまし、111玉野比女の神の御側近く立たせ給ひつつ御歌詠ませ給ふ。
112『われこそは主の大神の神言もて
113ここに降りし魂結の神
114中津柱神は天降りぬ主の神の
115神言畏み汝たすけむと』
116 玉野比女の神は、117且つ喜び且つ驚きつつ、118謹みて二柱の神に向ひ御歌詠ませ給ふ。
119『朝夕のわが願ぎ言の叶ひしか
120尊き神の現れませしはや
121中津柱神の天降りしと聞くからに
123魂結の神のこの地に天降りまさば
124わが神業も易く成るべし
125背の岐美の旅に立たせる淋しさに
126われは神前に繰言宣りぬ
127二柱神の神言の耳に入らば
128吾は消えなむ思ひするかも
131今更にわが身恥づかしくなりにけり
132神に仕ふる身ながらにして』
133 ここに魂結の神は御歌詠ませ給ふ。
134『真鶴の国漸くになりたれば
136玉野比女心安けくおはしませ
137汝の真心天にかよへり
138主の神は汝が真心をさとりまし
140真鶴の国は広けし遠見男の
141神一人して如何で治め得む
142今日よりは玉野宮居の清庭に
143仕へて汝を補けまつらむ
144有難き神世となりけり主の神の
145折々天降らす玉藻の神山』
146 中津柱の神は御歌詠ませ給ふ。
147『真鶴の広国原の中津柱
148神と現れわれ天降りけり
149主の神の厳の言霊畏みて
151顕津男の神のまことの願ぎ言を
152主の大神は許し給ひぬ
153顕津男の神の御水火の正しさに
154われ紫微宮ゆ天降りたり
155新しく造り固めし真鶴の
156国土の木草の稚々しもよ
157主の神の神言守りて気永くも
158待たせる玉野の比女のかしこさ
159国魂の神生れませり生代比女の
160御子には非ず汝が御子なり
161汝が腹ゆ生れます御子と諾なひて
162めぐしみ給へ国魂の御子を
163今日よりは真鶴国を経巡りて
164汝が神業をあななひまつらむ
165遠見男の神は総ての司ぞや
166玉野宮居の司は汝ぞや
167永久に玉野宮居に仕へまして
168国魂神を守らせたまへ
169三笠山真鶴山と経巡りて
171真鶴の国原詳細に固まらば
172われは帰らむ天津高宮へ
173顕津男の神に代りてわれは今
174国土固めむと降りつるはや
175多々久美の神はあちこち経巡りて
177多々久美の神の功に真鶴の
178国土すみずみまでひらかれて行く。
185生れましける千代八千代
186栄ゆる神世は真鶴の
187千歳の齢と諸共に
188月日と共に動かざれ
189国の宮居の清庭は
190雲井の上にいや高く
192光を四方に照らすなり
193われは主の神神言もて
195魂結の神と諸共に
197守り守りて主の神の
198栄を委曲に開くべし
202今日の神業の尊さよ
203今日の神業の畏さよ
205言霊御稜威尊けれ』
206(昭和八・一一・二七 旧一〇・一〇 於水明閣 林弥生謹録)