第一八章 神の道行〔一九一二〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻
篇:第4篇 千山万水
よみ(新仮名遣い):せんざんばんすい
章:第18章 神の道行
よみ(新仮名遣い):かみのみちゆき
通し章番号:1912
口述日:1933(昭和8)年11月29日(旧10月12日)
口述場所:水明閣
筆録者:森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年2月3日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:一行は馬上にて歌を歌いながら進んでいく。
先頭の宇礼志穂の神は、真鶴国固成の功績を歌い、今は天地に黒雲かかると聞く西方の国を開くために、万里の駒にまたがり、千里の荒野原を行く、と歌う。また、先遣隊として行った美波志比古の神によって道が踏み固められていることにも言及する。
顕津男の神はしばらく駒を止めて、玉藻山を仰ぎつつ、来し方を顧みる述懐の歌を歌い、これまでの出来事と比女神たちを偲んだ。
四柱の従者神たちはそれぞれ、述懐の歌を歌って続いた。また一同、西方の国に立つ曲神の雲を払わんと、抱負を歌った。
すると顕津男の神は、一人真っ先に進みながら、歌を歌った。従者神たちに頼る自分の心を厳しく自戒し、神業をなすのは他ならぬ自分独りであり、濁った多くの言霊よりも、一つの良き言霊で曲津神を言向け和す、という決意を新たにした。
従者神たちは、自らおごった心がなかったか畏れかしこみ、顕津男の神の言霊の威力への信頼を新たにする述懐の歌を歌った。
顕津男の神を先頭に、一行は大野原を進んで行く。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7518
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 381頁
修補版:
校定版:341頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 宇礼志穂の神は馬上豊に、002顕津男の神の御前に立ちて進ませながら、003御歌詠ませ給ふ。
004『紫微天界の中にして
005𪫧怜に委曲に固まりし
007顕津男の神出でまして
008未だ地稚き国原を
012千代鶴姫の命まで
013生み落しまし漸々に
014玉藻の山を立ち出でて
016西方の国土生まさむと
017出でます今の旅立を
021国土に曲神五月蠅なし
022万の災日に月に
023起ると聞けば主の神は
024瑞の御霊を遣はして
025堅磐常磐の天津国を
026開かせ給ふぞ尊けれ
027道の隈手も恙なく
028万里の駒に跨りて
029胡砂吹く風をあびながら
030縹渺千里の荒野原
031右左に鳴く虫の
033響き渡りて肝向ふ
034心は勇み駒勇み
035出で立つ今日ぞ楽しけれ
036嗚呼惟神々々
037美波志比古神は今何処
039先に立たせる功績は
040今目の前見えにつつ
045嗚呼惟神々々
047今日の御空に雲もなく
049吾等が面をなでて行く
051思へば楽し吾は今
052日南の河の河岸に
053岐美を送りて進むなり
054岐美を送りて進むなり』
055 顕津男の神は暫し駒を止めて、056来し方を顧み給ひつつ、057遠く霞める玉藻山を仰ぎて、058御歌詠ませ給ふ。
059『振返り眺むる空に玉藻山は
060紫雲の衣着けてかすめり
061紫の雲のとばりを引き廻し
062玉野の比女は宮仕へまさむ
063真鶴の山遠みつつ見えねども
064生代の比女は安くいまさむ
065わが道の隈手も恙なかりけり
066主の大神の守らす恵に
067仰ぎ見れば行手遥けし西方の
068国土の御空に黒雲立つも
069日々並べて神生みの神業に仕へ行く
071醜神の醜の災免れつつ
072我は今日まで進み来しはや
073今となりて高日の宮に仕へます
074八柱神の偲ばれにける
075東南の空を眺めて八柱の
076比女神われを偲ぶなるらむ
077一日だも御霊安むるいとまなく
078旅に立つ身は苦しかりけり
079国土を生み神を生まむと出でて来し
080我は世の味つぶさに覚りぬ』
081 宇礼志穂の神は御歌詠ませ給ふ。
082『瑞御霊神の功を今更に
083さとりけるかな大野の旅路に
084四方八方に雲立ちのぼり月も日も
085かくろひし国土を照らし行く岐美よ
086百鳥の声は千歳をうたひつつ
087八千草の根に虫鳴き渡る
088若草の萌ゆる大野を進み行く
089岐美の行手に幸あれと思ふ
090もうもうと霧立ち昇る国原を
091照らして出でます岐美の旅はも
092仰ぎ見れば眼くらまむ顕津男の
093神より出づる貴の光は
094御空行く大鳥小鳥悉く
095岐美の御後に従ひ奉るも
096幾千万の鶴は翼を揃へつつ
097岐美がみゆきを送りて舞へるも
098大空は明らみにけり真鶴の
099数多の翼白く光りて』
100 魂機張の神は御歌詠ませ給ふ。
101『駒止めて四方の国形眺むれば
102目路の限りは雲界なりけり
103雲界の中に漂ふ心地して
104岐美の御後に従ひ行くも
105雲の浪立ち騒ぎつつ岐美が行く
106西方の国土は遥けくもあるか
107真鶴は千歳をうたひ駿馬は
108万世いななく今日の旅なり
109岐美が生命幾億万年の末までも
110国土守るべく保たせ給へ
111たまきはる神は守らむ瑞御霊の
112生命を永久に若返らせつつ
113若返り若返りつつ幾億万世の
114岐美は神国の柱とならせよ
115行先に八頭八尾の大蛇神
116岐美が出でまし迎へまちつつ
117この大蛇幾山脈に跨りて
118怪しき水火を四方に放てる
119西方の国土を曇らす大蛇神の
120水火祓はむは言霊の幸なり
121わが力如何で及ばむ大蛇神の
122怪しき水火に立ち向ひなば
123わが岐美の生言霊の御水火には
124醜の大蛇も服従ひ奉らむ
125日南河を前に控へて醜の大蛇は
126山の姿と化りて待たなむ
127山と化り河とも化りて醜神は
129如何ならむ事のありともたまきはる
130岐美の生命は永久に落さじ
131果しなき神業に仕ふる岐美なれば
132醜の大蛇もものの数かは』
133 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。
134『久方の御空は高し地広し
135この中国を行きます岐美はも
136仰ぎ見れば玉藻の山は雲の上に
138玉藻山傾斜面に一処黒き影の
140ちぎれ雲ちぎれぬ雲のはざまより
141玉藻の山の肌は見ゆるも
142玉藻山の貴の姿はくづれつつ
143遠く来にけり大野が原を
144立ち迷ふ霧雲の野を照らしつつ
145出でます岐美の御稜威は高し
146玉藻山立ち出で給ひしわが岐美は
148かくの如畏き岐美と知らずして
149吾は光に包まれにけむ
150今となりてわが目覚めしか瑞御霊の
151強き光を仰ぎぬるかな
152行先に八岐の大蛇すむと聞きて
153わが魂線は立ち勇むなり
154わが岐美の言霊の水火の光にて
155服従ひ奉らむ醜の大蛇は
156山となり又河となり雲となりて
157道にさやらむ醜の大蛇は
158心して行きませわが岐美山も河も
159醜の大蛇の化身なりせば
160行先を醜の大蛇はいろいろに
162河も沼も木草も悉言問ひて
164五月蠅なす醜神等の雄猛びを
165祓ふは岐美の言霊あるのみ
166いすくはし生言霊の御光に
167この地の上の曲津は亡びむ
168天界は言霊の国よ意志の国よ
169想念の国よ果のなき国土
170意志想念曇りて醜の醜神は
171生れ出づると聞くぞ恐ろし
172掛巻も畏き皇大神の
173水火の光を力ともがな
174主の神の依さしの儘に旅立たす
175岐美の行手に功あれかし
176八柱の女神を宮に残し置きて
177御子生みに立たすヒーローの岐美よ』
178 美味素の神は馬上豊に御歌詠ませ給ふ。
179『駒止めて岐美と休らふ大野原に
180吹き渡る風も言霊の水火よ
181心地よくわが面を吹く科戸辺の
182風は正しく神の水火なり
183八千草の蔭に潜みて鳴く虫の
184声も残らず言霊の水火なり
185岐美が功慕ひて玉藻の山鶴は
186翼揃へて見送り来るも
187何処となく白梅香りさやさやに
188音楽響く岐美の旅立ち
189玉藻山西吹く風に梅桜
190清き花弁舞ひ来るかも
191久方の雲井の上にも梅咲くか
192岐美の頭上に花びらの散る
193心地よく澄みきらひたる大空の
194したびを伊行く吾ぞ楽しき
195昼月の光は御空に白々と
196円き姿を浮べ給へり
197昼ながら彼方此方の大空に
198輝き初めぬ大なる星は
199駒止めてゆるゆる憩ひ玉へかし
200この行先に曲津の待てれば
201曲神を言向け和す言霊の
202水火を固めて用意せむかな
203地稚き八雲立ちたつ国原は
204醜の魔神の棲所なりけり
205月も日も照男の神の治めます
206西方の国土は未だ地稚し
207地稚き西方の国土の彼方此方に
208湧き立つ雲は魔神を隠せる
209日南河越ゆれば最早西方の
210曲津の棲む国常闇の国土よ
211いざさらば轡を並べて進むべし
212岐美の光に包まれにつつ』
213 顕津男の神は駒に鞭うち、214宇礼志穂の神を後方に廻らせ、215真先に進ませながら、216御歌詠ませ給ふ。
217『国魂神生む我なれば御供神
218如何で頼らむ独神進まばや
219大勢の力を借らむをぢなさを
220恥ぢらひ我は前に進まむ
221我は只一人進まむ百神よ
222心に任せて従ふもよし
223言霊の水火の力を学ぶべく
224従ひ来るも我さまたげじ
225森羅万象は言霊の水火に生れたる
226思へば何かわれ恐れめや
227我も亦言霊の水火を照らしつつ
228醜の曲霊を言向け和さむ
229濁りたる数の言霊放つより
230良き言霊の一つが強し
231禊して清め澄ませし言霊に
232我は和めむ醜の魔神を
233百神の厚き心は思ひやれど
234我は国土生みよ一人進まむ』
235 斯く歌ひ終り、236駒の蹄の音カツカツと嘶き高く勇ましく、237鈴の音もさやさやに、238若草もゆる大野原を前に立たせ進ませ給ふ。239四柱の神は恐る恐る御後方に従ひながら続かせ給ふ。
240 宇礼志穂の神の御歌。
241『知らず識らず心傲りてわが岐美の
242前に立ちたる心を悔ゆるも
243愚なる吾にもあるか吾が岐美の
244光も知らず前に立ちける
245百神の言霊よりもわが岐美の
246生言霊は輝くものを
247言霊の水火完からずして吾は今
248御前に仕へし愚さを悔ゆ
249真鶴の国は広けし言霊の
250水火を清めて仕へ奉らばや
251わが岐美の尊き光みながらに
252気付かざりしよ愚なる吾は
253山も野も木草もすべて言霊の
254水火に生ると始めて覚りぬ
255千代鶴姫命も岐美の清らけき
256水火に生れますを思へば畏し
257わが岐美の生ませ給ひし真鶴の
258国土を汚すと思へば恐ろし
259わが御魂濁らひあれば言霊の
261今日よりは禊の神事を励みつつ
262心みがきて言霊生かさむ』
263 魂機張の神の御歌。
264『思ひきや瑞の御霊のわが岐美は
265水火の光の神にますとは
266わが岐美の雄健び言葉聞きしより
268天地の神の御用に仕へしと
269誇り居たりし心の恥づかし
270天地の神の御用に使はれ居ながらも
271知らず識らずに心傲りぬ
272主の神の恵によりて朝夕を
273神に仕ふるわが身なりしよ
274果しなき生命の種を抱へつつ
275言霊の岐美を覚らざりける
276永久の生命保ちて瑞御霊
277国魂生まさむ万世までも
278恥づかしく吾なりにけり知らず識らず
279心傲りて光を忘れし』
280 結比合の神の御歌。
281『駒の背に跨り御供に仕へ行く
282今日のわが身は楽しかりけり
283天も地も澄みきらひたる国原を
284鶴に送られ虫に迎へられつ
285真鶴の幾千万の翼に送られて
286国土生みの供に仕ふる嬉しさ
287わが為を思はず国の御為に
288尽すは善とわれは思へり
289わが為を思ひて国を次にする
290心は正しく悪なりにけり
291善悪の差別を立てて今日よりは
292神の御供につかへ奉らむ
293よしやよし荒野の果に倒るとも
294神国の為には厭はざるべし
295国土を生み御子生みませるわが岐美の
296御供に仕ふるは清き御魂なるべきを
297わが魂はひたに曇れば言霊の
298水火も濁りて恥づかしきかも
299わが岐美の神宣なければ今日よりは
300曲津に向ひて言霊宣らじ』
301 美味素の神の御歌。
302『天地の中に抱かれ進み行く
303岐美の御供は畏かりけり
304西方の国土ははろけし八雲立つ
305雲井の空も濁らひて居り
306曇りたる西方の国土を照らします
307岐美の功の大さを思ふ
308わが岐美は言霊神にましましぬ
309出で行く先に輝き給へば
310天地の水火を合せて進み行く
311岐美の旅路にさやる神なし』
312 神々は各自述懐歌をうたひながら、313果しも知らぬ大野原を、314顕津男の神の御後方に従ひ心いそいそ進ませ給ふぞ畏けれ。
315(昭和八・一一・二九 旧一〇・一二 於水明閣 森良仁謹録)