第一五章 鶴の訣別(四)〔一九〇九〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第75巻 天祥地瑞 寅の巻
篇:第3篇 真鶴の声
よみ(新仮名遣い):まなづるのこえ
章:第15章 鶴の訣別(四)
よみ(新仮名遣い):つるのわかれ
通し章番号:1909
口述日:1933(昭和8)年11月27日(旧10月10日)
口述場所:水明閣
筆録者:内崎照代
校正日:
校正場所:
初版発行日:1934(昭和9)年2月3日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:続いて、魂機張の神、結比合の神、美味素の神が述懐の歌を歌った。皆が歌い終わると顕津男の神は馬上から諸神への返答歌を歌った。そこには、諸神への感謝と、たとえ自分は去っても、霊線(たましひ)はここにあって真鶴国を助ける、とあった。また、国事補佐の任にあたる玉野比女には、宮居に仕える神と、補佐神とを降すので安心するように、と諭した。
歌い終わると、顕津男の神は諸神に名残を惜しみつつ、駒に鞭を打って玉藻山を静かに下っていった。
諸神は国境まで見送った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm7515
愛善世界社版:
八幡書店版:第13輯 363頁
修補版:
校定版:277頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001 魂機張の神は名残の御歌詠ませ給ふ。
002『はろばろも御供に仕へ今ここに
003瑞の御霊と別るる惜しさよ
004あきたらず吾は思ふも岐美に仕へて
005楽しかりしを今日別るとは
006斯くあるはかねて覚りつ今更に
007名残惜しくも別れがてに居る
008栄えます岐美の御姿伏し拝み
009別るる今日の名残惜しけれ
010立ち別れ神の御為め国の為め
011今日より淋しく仕へむと思ふ
012嘆かじと思ひ諦め居る身にも
014はしけやし岐美の御姿今日よりは
016真鶴の国の生ひ先おもひつつ
017岐美なき神世をかなしみ思ふ
018八洲国生言霊の幸ひて
019岐美の行手の安くあれかし
020玉藻山後に別れて旅立たす
021岐美を一入かなしみ思ふ
022幾千代を経るとも吾は忘れまじ
023ゆたけき岐美に抱かれし日を
024岐美まさぬ真鶴の国の山河は
025草木の端までしをれこそすれ
026白雲も今日ははばかり山裾に
027まよひて岐美のみゆきを送るも
028八千草の色も変りて見ゆるかな
029瑞の御霊の旅ゆかす今日は
030西方の国ははろけし岐美が行く
031道の隈手も恙なかれと思ふ
032久方の天津高宮ゆ降りましし
033岐美は今日より御姿見えずも
034水清き千条の滝もとどろきを
035をさめて岐美を送るがに思ふ
036五百鳴の鈴打ち振りて神も駒も
037岐美のみゆきを送る今日なり
038いさぎよき岐美の姿を背に乗せて
039天の駿馬勇みいななく
040現世の総てのものを生みまして
041国土つくりをへし岐美は畏し
042国原は未だ稚けれど岐美が行く
043蹄のあとは花咲きみのらむ
044進み行く駒の蹄の音清く
045鳴り響くらむ貴の言霊は
046白雲の帳を開けて月読は
047淡き姿をあらはし給へり
048月読の御霊に生れし岐美なれば
049奴羽玉の世は永久になからむ
050ふみてゆく稚国原の百千草
051花をかざして岐美を待つらむ
052むしむして生ひ栄えたる足引の
053山野の木草もしをれ顔なる
054縁ある人に別れて旅立たす
055岐美の心の雄々しさを思ふ
056産玉の神に貴御子任せつつ
057安く行きませ顕津男の神
058草も木も葉末の色を変じつつ
059嘆くが如し岐美の出で立ちを
060すずやかに尾の上を渡る松風の
061音に鳴きたつ田鶴の数々
062清庭に家鶏鳥なきて白梅の
063花はこぼれぬ春の山風に
064朝に夕に仕へ奉りしわが岐美に
066久方の天にかへらす瑞御霊の
067神の功をわれ祈るなり』
068 結比合の神は御歌詠ませ給ふ。
069『あはれあはれ瑞の御霊は今日の日を
070限りとなして旅に立たすか
071かけまくも畏き神の出でましを
072われは謹み寿ぎ奉るも
073さまざまの悩みに堪へて真鶴の
074国土をつくりし岐美ぞ畏き
075霊線の力のあらむその限り
076つくして神国を生ませし岐美はも
077泣かむとも止むる術はなかりけり
078ただ勇ましく岐美を送らな
079花匂ふ弥生の春も更けにつつ
080岐美に別るる神山淋しも
081迦陵頻伽の声はかすみて聞ゆなり
082松吹く風もしのばひにつつ
083山の上のこれの聖所に永久の
084別れを告ぐる今日ぞかなしき
085まだ稚き千代鶴姫の生ひ先きを
086われは守らむ心安かれ
087いきいきて生きの果なき天界に
088いや栄えまさむ千代鶴の命は
089岐美行かば真鶴の国は淋しからむ
090ただ生れし御子を力とたのむも
091白妙の薄衣に朝夕包まれて
092命は日々に生ひ立ちまさむ
093千代鶴姫命の生ひ立ちを村肝の
094心にかけず旅に立ちませ
095吾も亦西方の国の境まで
096駒をうたせて従ひ奉らむ
097西方の国の境に日南河
098広く流ると吾聞きしはや
099滔々と流るる水瀬打ち渡り
100山越え野越え行きます岐美はも
101水火と水火稜威に結びし駒なれば
102日南の河瀬も安く渡らむ
103いすくはし天の白駒に鞭うちて
104渡らむ其の日の雄姿を思ふ
105魚族も水の面に浮きて岐美が駒を
106迎へ奉らむ日南の河に
107国見すれば西方の国土雲の奥に
109澄みきらひ澄みきらひたる大空は
111月も日も光冴えつつ玉藻山を
112下らす岐美の御尾前照らせり
113奴婆玉の闇を晴らして進みます
114岐美は光の神にぞありける
115葭葦の生ふる国原踏み別けて
116進まむ道に恙あらすな
117虫の音も道の左右に冴えにつつ
118岐美のみゆきを寿ぎ奉らむ
119行きゆきて日南の河の河岸に
120立たさむ日こそ待たれけるかも
121浮雲のあそべる彼方の大空の
122下びに横たふ日南河はも
123億万年の末まで国土を固めむと
124心をくだき給ふ岐美はも
125八雲立つ紫微天界は皇神国の
127主の神は億万年の末までも
128永遠無窮に主の国守りますらむ
129滔々と流るる日南の河の瀬を
131よき事に曲事いつく神世なれば
132心しづかに岐美進みませよ
133森羅万象の稚き国原永久に
134固めて生かす岐美の旅はや
135ふくれふくれ拡ごり果しなき国土を
136固むる岐美の神業かしこし
137目路の限り八雲たちたち曲神は
138果なき国にむらがると聞く
139永久の礎固むる国土生みの
140神業仕ふる苦しかる岐美よ
141かかる世に生れあひたる嬉しさは
142国土生みの神業に仕ふる吾なり
143雄々しくもあれます岐美の御姿を
144今日より拝まむ術なき神山よ
145越国の果まで岐美の御功は
146かがやき渡らふ月日とともに
147上も下も右も左も打ち揃ひ
148うら安国をひらかす岐美はも
149永久の生言霊の生命もて
150百の神たち守らす岐美なり
151野も山も今日はことさら明るかり
152岐美の旅立ち守らす月日に
153万世のほまれとならむ瑞御霊の
154今日の苦しき心づかひは
155百鳥の声勇ましくなりにけり
156岐美の出でましを諦めにけむ
157夜昼の差別もしらに進みます
158岐美の功は世の鏡なる
159音にきく天津高宮の荘厳さを
161天と地の水火をつばらに結び合せ
162あれますかもよ瑞の御霊は』
163 美味素の神は御歌詠ませ給ふ。
164『うまし国元津神国を生みをへて
165出でます岐美を止むる術なき
166諦めてみむと思へど堪へやらぬ
167今日の出で立ち吾はかなしも
168輝ける岐美の面は曇らひぬ
169今あらためて繰言宣らじ
170玉野宮に常永に仕ふる玉野比女の
172久方の御空は清く冴えにつつ
173岐美の出でまし清しみ送るも
174玉の緒の命の限り仕へむと
175思ひし岐美は今やたたすも
176永き世の末の末まで真心を
177捧げて仕へむと思ひたりしよ
178春たちて夏は漸く来向へど
180西方の国土の境に横はる
181日南の河まで送り奉らむ
182松を吹く風の響も静なり
183岐美の出でまし松も惜しむか
184四方八方にふさがる雲霧吹き払ひ
185月日照らして出でます岐美はも
186若草の妻のみことを後におきて
187旅に立たさむ岐美を偲ぶも
188五百鈴の音は冴えにつつ駿馬は
189早たたむとや勇み出でけり
190きぎす啼くこの高山の頂上に
192白雲のたなびく遠き国原に
193出でます岐美に別るる惜しさよ
194わが力とみに落ちたる心地して
195岐美を送らむ国境まで
196西方の国土は曲神沢ありと
198滝津瀬の水の流れはさかしとも
199おそれ給はじ御稜威の岐美は
200幾千代の末の末まで神々の
201かたらひ草とならむ今日の日は
202生みの子のいや次ぎ次ぎに至るまで
203かたり伝へむ今日の別れを
204奇びなる生言霊の幸ひに
205真鶴の国土はうまらになりぬ
206澄みきらふ瑞の言霊幸ひて
207真鶴の国土は固まりにけり
208罪穢れかげだにもなきわが岐美の
209行く先き先きにさやるものなし
210天と地の水火と水火とに温めて
211瑞の御霊は御子を生ませり
212二柱水火を合せて国魂の
213神を生ませしことの尊さ
214紫の雲は次ぎ次ぎ重りて
215玉藻の山を包まひにけり
216夢なれや瑞の御霊の現れましし
217日より百日の日はたちにけり
218美しき山となりけり玉野湖の
219底はかわきて傾斜面となりぬ
220斯の如尊き言霊もたす岐美の
221功は天界の宝なりけり
222葭葦を踏み別け進ますわが岐美の
223旅はまさしく幸多からむ
224吾も亦ウの言霊に生れ出でて
225瑞の御霊に仕へ奉りし
226天地の生みの司と任けられし
227瑞の御霊の功美はし
228瑞御霊七十五声の言霊に
229真鶴国土を生みましにけり
230地稚くふくれ上りし真鶴の
231国土はやうやく固まり初めたり
232目に見えぬ国土の果まで言霊の
233幸にうるほふ神世は尊き
234神々はゑらぎ楽しみ真鶴の
235国土の千歳を祝ふなるらむ
236斯くまでも固め給ひし真鶴の
237国土汚さじと吾は仕へむ
238惜しむとも詮術なけれ主の神の
239御旨にしたがひたたす岐美なり
240木も草も瑞の御霊の現れし日ゆ
241光を増して栄え初めけり
242栄えゆく神世寿ぐか真鶴も
244今ははや迦陵頻伽も真鶴も
245家鶏鳥の鳴く音も冴え渡りけり
246百鳥も岐美の出で立ちあきらめて
248遠き近き国土のことごと守ります
250長閑なる春の終りを旅立たす
251岐美の行手に匂へ百花
252万世のほまれなりけり玉藻山の
253今日の別れは国土生みの為と
254百鳥は千歳を歌ひ百千草は
255神世寿ぎて風にそよげる
256国土生みの神業の御供仕へつつ
257今日は悲しき別れするかも
258大空の雲かき別けて天津陽は
259岐美が行手を照らさせ給へる』
260 顕津男の神は、261馬上より諸神に向ひ御歌詠ませ給ふ。
262『百神の心かしこしわれは今
263今日の門出にかたじけなみ思ふ
264わが姿ここに見えねど霊線は
265永久に鎮めて国土を守らむ
266玉野宮に朝な夕なに仕へ奉る
268玉野比女心安かれ汝が為に
270 斯く歌ひ終り、271諸神に名残を惜しみつつ駒に鞭うち、272玉藻山の傾斜面を右に左に折れ曲りて静に下らせ給ふ。273百神は各自国境まで御供に仕へむとして駒にまたがり、274御尾前に仕へ給ふ。275さり乍ら国中比古の神は生代比女の神を守りつつ、276千代鶴姫の神を育くまむと駿馬に跨りかへらせ給ひ、277玉野比女の神は玉藻山に残りて、278大宮に親しく仕へ給ふぞ畏けれ。
279(昭和八・一一・二七 旧一〇・一〇 於水明閣 内崎照代謹録)