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第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第46巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 仕組の縺糸
01 榛並樹
〔1211〕
02 慰労会
〔1212〕
03 噛言
〔1213〕
04 沸騰
〔1214〕
05 菊の薫
〔1215〕
06 千代心
〔1216〕
07 妻難
〔1217〕
第2篇 狐運怪会
08 黒狐
〔1218〕
09 文明
〔1219〕
10 唖狐外れ
〔1220〕
11 変化神
〔1221〕
12 怪段
〔1222〕
13 通夜話
〔1223〕
第3篇 神明照赫
14 打合せ
〔1224〕
15 黎明
〔1225〕
16 想曖
〔1226〕
17 惟神の道
〔1227〕
18 エンゼル
〔1228〕
第4篇 謎の黄板
19 怪しの森
〔1229〕
20 金の力
〔1230〕
21 民の虎声
〔1231〕
22 五三嵐
〔1232〕
23 黄金華
〔1233〕
余白歌
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> 第1篇 仕組の縺糸 > 第2章 慰労会
<<< 榛並樹
(B)
(N)
噛言 >>>
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第二章
慰労会
(
ゐらうくわい
)
〔一二一二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第46巻 舎身活躍 酉の巻
篇:
第1篇 仕組の縺糸
よみ(新仮名遣い):
しぐみのれんし
章:
第2章 慰労会
よみ(新仮名遣い):
いろうかい
通し章番号:
1212
口述日:
1922(大正11)年12月15日(旧10月27日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年9月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
松彦と松姫は、出て行った四人が早く帰るようにと大広間で祈願をこらしていた。二人が教主館まで帰ってきたところ、一行七人が帰ってきた。
松彦と松姫は別館にて蠑螈別とお民が帰ってくるように祈ろうと言い、一同は慰労会を開いて休むようにと言い残して去って行った。お寅と魔我彦は迷信家のこととて、神への祈願で蠑螈別とお民がすぐに戻ってくるものと信じて、しきりに酒を飲んでいる。万公と五三公は酔って労働や恋愛についての議論を交わした。
お菊と万公が歌をうたい、皆ではやし立てる。五三公は歌を所望され、宣伝歌を歌った。最後は一同が脱線歌を歌いながら、いつのまにか夜を明かしてしまった。数多の参詣者はぞろぞろと大広間を指して参拝する。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-03-08 19:49:17
OBC :
rm4602
愛善世界社版:
22頁
八幡書店版:
第8輯 368頁
修補版:
校定版:
23頁
普及版:
9頁
初版:
ページ備考:
派生
[?]
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:
出口王仁三郎全集 > 第五巻 言霊解・其他 > 【随筆・其他】 > 三つの問題 > 労働問題
出口王仁三郎全集 > 第五巻 言霊解・其他 > 【随筆・其他】 > 三つの問題 > 恋愛問題
001
松彦
(
まつひこ
)
、
002
松姫
(
まつひめ
)
はお
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさま、
003
魔我彦
(
まがひこ
)
、
004
蠑螈別
(
いもりわけ
)
などの
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
れかしと、
005
大広間
(
おほひろま
)
に
於
(
おい
)
て
祈願
(
きぐわん
)
をこらし、
006
教主館
(
けうしゆやかた
)
の
玄関口
(
げんくわんぐち
)
まで
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たところへ、
007
ガヤガヤと
囁
(
ささや
)
きながら
一行
(
いつかう
)
七
(
しち
)
人
(
にん
)
が
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
008
松彦
(
まつひこ
)
『あゝ
五三公
(
いそこう
)
さま、
009
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さまは
如何
(
どう
)
なつたかなア』
010
五三
(
いそ
)
『
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
の
生宮
(
いきみや
)
は
取逃
(
とりにが
)
しましたが、
011
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
奥
(
おく
)
さまの
鈴野姫
(
すずのひめ
)
の
肉宮
(
にくみや
)
を
奉迎
(
ほうげい
)
して
来
(
き
)
ました。
012
将
(
しやう
)
を
射
(
い
)
むと
欲
(
ほつ
)
する
者
(
もの
)
は
先
(
ま
)
づ
其
(
その
)
馬
(
うま
)
を
射
(
い
)
よですから、
013
女偏
(
をんなへん
)
の
馬
(
うま
)
を
引張
(
ひつぱ
)
つて
帰
(
かへ
)
つておけば
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
です、
014
鯨
(
くぢら
)
でも
牝
(
めん
)
を
取
(
と
)
るとキツト
牡
(
をん
)
がとれますからな、
015
それにモ
一
(
ひと
)
つの
副産物
(
ふくさんぶつ
)
は
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
を
拾
(
ひろ
)
うて
参
(
まゐ
)
りました、
016
ハツハツハツハ』
017
松彦
『それは
御
(
お
)
骨折
(
ほねをり
)
でした。
018
サア
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
内
(
うち
)
へお
這入
(
はい
)
りなさいませ』
019
松姫
(
まつひめ
)
『
皆
(
みな
)
さま、
020
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
でしたねえ、
021
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さまとお
民
(
たみ
)
さまは、
022
たうとう
取
(
と
)
り
逃
(
に
)
がしましたかな、
023
残念
(
ざんねん
)
な
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いますね』
024
万公
(
まんこう
)
側
(
そば
)
から、
025
万公
『
逃
(
に
)
げた
魚
(
うを
)
は
大
(
おほ
)
きいと
云
(
い
)
ひましてな、
026
ヤツパリ
呑舟
(
どんしう
)
の
魚
(
うを
)
は
網
(
あみ
)
を
破
(
やぶ
)
つて
逃
(
に
)
げましたよ。
027
海老
(
えび
)
が
一疋
(
いつぴき
)
と
帆立貝
(
ほたてがひ
)
が
一
(
ひと
)
つ、
028
ゴク
貧弱
(
ひんじやく
)
な
獲物
(
えもの
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
029
これでも
今晩
(
こんばん
)
のお
酒
(
さけ
)
の
肴
(
さかな
)
には
可
(
か
)
なり
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
ふかも
知
(
し
)
れませぬ、
030
エヘヽヽ』
031
松彦
(
まつひこ
)
『ハア、
032
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
結構
(
けつこう
)
だ、
033
之
(
これ
)
から
松姫館
(
まつひめやかた
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にトツクリと
願
(
ねが
)
つて
来
(
く
)
るから、
034
先
(
ま
)
づ
発見祝
(
はつけんいはひ
)
にお
神酒
(
みき
)
でもあがつて
下
(
くだ
)
さい』
035
お
寅
(
とら
)
『どうぞ
蠑螈別
(
いもりわけ
)
が
貴方
(
あなた
)
の
鎮魂
(
ちんこん
)
で、
036
今夜
(
こんや
)
の
中
(
うち
)
にでも
此処
(
ここ
)
へ
引着
(
ひつつ
)
けられて
帰
(
かへ
)
りますやうに
御
(
ご
)
祈願
(
きぐわん
)
して
下
(
くだ
)
さいな、
037
松姫
(
まつひめ
)
様
(
さま
)
も
宜
(
よろ
)
しく
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
038
松姫
(
まつひめ
)
『ハイ、
039
力限
(
ちからかぎ
)
り
願
(
ねが
)
つて
見
(
み
)
ませう』
040
魔我
(
まが
)
『
私
(
わたし
)
もお
民
(
たみ
)
さまが
引着
(
ひきつ
)
けられて
帰
(
かへ
)
るやうに
祈
(
いの
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
041
松姫
(
まつひめ
)
『ハイ、
042
祈
(
いの
)
りませう』
043
万公
(
まんこう
)
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
044
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
と
上義姫
(
じやうぎひめ
)
様
(
さま
)
とのお
祈
(
いの
)
りだから
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だよ、
045
なア
海老
(
えび
)
に
帆立貝
(
ほたてがひ
)
、
046
マア
安心
(
あんしん
)
したがよからうぞ』
047
松彦
(
まつひこ
)
『アハヽヽ、
048
左様
(
さやう
)
なら
皆
(
みな
)
さま、
049
御緩
(
ごゆつく
)
りと
慰労会
(
ゐらうくわい
)
でも
開
(
ひら
)
いて、
050
賑
(
にぎや
)
かうして
下
(
くだ
)
さいませ』
051
松姫
(
まつひめ
)
『どうぞ
十分
(
じふぶん
)
にお
神酒
(
みき
)
を
召
(
め
)
し
上
(
あが
)
りませ、
052
何程
(
なにほど
)
酩酊
(
めいてい
)
しても、
053
鼻
(
はな
)
を
捻
(
ね
)
ぢることだけはなりませぬぞや、
054
ホヽヽヽ』
055
と
云
(
い
)
ひながら、
056
松彦
(
まつひこ
)
、
057
松姫
(
まつひめ
)
は
二百
(
にひやく
)
の
階段
(
かいだん
)
を
足
(
あし
)
で
刻
(
きざ
)
んで
行
(
ゆ
)
く。
058
万公
(
まんこう
)
は
下
(
した
)
から
二人
(
ふたり
)
の
姿
(
すがた
)
を
打仰
(
うちあふ
)
ぎ、
059
万公
『
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
万歳
(
ばんざい
)
、
060
よく
似合
(
にあ
)
ひまつせ。
061
お
浦山吹
(
うらやまぶき
)
さま、
062
アツハヽヽヽ』
063
松彦
(
まつひこ
)
、
064
松姫
(
まつひめ
)
は
後
(
あと
)
振
(
ふ
)
り
向
(
む
)
きもせず、
065
別館
(
べつくわん
)
さして
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
066
一同
(
いちどう
)
は
大広間
(
おほひろま
)
に
参拝
(
さんぱい
)
し、
067
終
(
をは
)
つて
教祖館
(
けうそやかた
)
に
於
(
おい
)
て
慰労
(
ゐらう
)
の
祝宴
(
しゆくえん
)
を
開
(
ひら
)
いた。
068
ソロソロ
酔
(
よひ
)
がまはり
出
(
だ
)
し、
069
すべての
障壁
(
しやうへき
)
を
取
(
と
)
つて
くだらぬ
ことを
喋
(
しやべ
)
り
始
(
はじ
)
めた。
070
お
寅
(
とら
)
も
魔我彦
(
まがひこ
)
も
迷信家
(
めいしんか
)
の
事
(
こと
)
とて、
071
ユラリ
彦
(
ひこ
)
、
072
上義姫
(
じやうぎひめ
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
生宮
(
いきみや
)
が、
073
早
(
はや
)
ければ
夜明
(
よあ
)
け
前
(
まへ
)
、
074
遅
(
おそ
)
くても
明日
(
あす
)
の
昼
(
ひる
)
頃
(
ごろ
)
には、
075
キツト
両人
(
りやうにん
)
の
恋人
(
こひびと
)
を
此処
(
ここ
)
へ
引戻
(
ひきもど
)
してくれるものと
思
(
おも
)
ひ、
076
大船
(
おほぶね
)
に
乗
(
の
)
つたやうな
心持
(
こころもち
)
でニコニコしながら、
077
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
に
土手
(
どて
)
を
切
(
き
)
らして
酒
(
さけ
)
を
飲
(
の
)
んだ。
078
万公
(
まんこう
)
『アヽア、
079
エライ
労働
(
らうどう
)
をやつたものだ。
080
余程
(
よほど
)
報酬
(
ほうしう
)
を
請求
(
せいきう
)
しなくちや、
081
バランスが
取
(
と
)
れない。
082
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
さまだつた
位
(
くらゐ
)
な
報酬
(
ほうしう
)
では、
083
根
(
ね
)
つから
有難
(
ありがた
)
くないからな、
084
夜業
(
やげふ
)
までさされて、
085
幾分
(
いくぶん
)
かの
割増
(
わりまし
)
を
貰
(
もら
)
つたて、
086
やり
切
(
き
)
れないワ』
087
五三
(
いそ
)
『オイ
万公
(
まんこう
)
、
088
労働
(
らうどう
)
は
神聖
(
しんせい
)
だ。
089
俺
(
おれ
)
だつて
労働
(
らうどう
)
は
貴様
(
きさま
)
と
同様
(
どうやう
)
にやつたのだ。
090
労働
(
らうどう
)
の
量
(
りやう
)
に
相当
(
さうたう
)
しただけの
報酬
(
ほうしう
)
を、
091
権利
(
けんり
)
として
要求
(
えうきう
)
するのは
道徳
(
だうとく
)
的
(
てき
)
には
根拠
(
こんきよ
)
のないものだよ。
092
労働
(
らうどう
)
の
報酬
(
ほうしう
)
のみを
以
(
もつ
)
て
当然
(
たうぜん
)
の
権利
(
けんり
)
とみるならば、
093
それこそ
社会
(
しやくわい
)
に
弊害
(
へいがい
)
百出
(
ひやくしゆつ
)
して
世
(
よ
)
を
混乱
(
こんらん
)
に
導
(
みちび
)
くより
仕方
(
しかた
)
がない、
094
老者
(
らうしや
)
、
095
病者
(
びやうしや
)
、
096
小児
(
せうに
)
などは
労働
(
らうどう
)
をせないからパンを
与
(
あた
)
へないと
云
(
い
)
つたら
何
(
ど
)
うするのだ。
097
労働
(
らうどう
)
させて
貰
(
もら
)
ふのもヤツパリ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のおかげだよ。
098
現代
(
げんだい
)
八釜
(
やかま
)
しく
持上
(
もちあが
)
つて
来
(
き
)
た
労働
(
らうどう
)
問題
(
もんだい
)
は、
099
人類
(
じんるゐ
)
の
集団
(
しふだん
)
若
(
も
)
しくは
階級間
(
かいきふかん
)
の
問題
(
もんだい
)
でなくして、
100
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
と
人間
(
にんげん
)
との
問題
(
もんだい
)
だ。
101
吾々
(
われわれ
)
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
又
(
また
)
は
信者
(
しんじや
)
たるものは、
102
如何
(
いか
)
なる
場合
(
ばあひ
)
にも、
103
永遠
(
ゑいゑん
)
の
真理
(
しんり
)
の
上
(
うへ
)
に
立
(
た
)
ち、
104
時代
(
じだい
)
を
超越
(
てうゑつ
)
して
居
(
ゐ
)
なければならない。
105
神聖
(
しんせい
)
な
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
でありながら、
106
労働
(
らうどう
)
問題
(
もんだい
)
を
云々
(
うんぬん
)
するやうな
事
(
こと
)
は、
107
チツと
謹
(
つつし
)
まねばなるまいぞ』
108
万公
『それだとて、
109
労働
(
らうどう
)
は
天
(
てん
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
開拓
(
かいたく
)
するのだ、
110
宣伝使
(
せんでんし
)
だつてヤツパリ
労働者
(
らうどうしや
)
でもあり、
111
又
(
また
)
報酬
(
ほうしう
)
を
要求
(
えうきう
)
する
権利
(
けんり
)
がなくてはヤリ
切
(
き
)
れないぢやないか』
112
五三公
『
宣伝使
(
せんでんし
)
、
113
信者
(
しんじや
)
の
神
(
かみ
)
より
賜
(
たま
)
はる
報酬
(
ほうしう
)
といふものは、
114
信
(
しん
)
と
愛
(
あい
)
と
正
(
ただ
)
しき
理解
(
りかい
)
との
歓喜
(
くわんき
)
の
報酬
(
ほうしう
)
を
即時
(
そくじ
)
に
神
(
かみ
)
から
賜
(
たま
)
はつて
居
(
ゐ
)
るぢやないか。
115
仮令
(
たとへ
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
物貨
(
ぶつくわ
)
生産
(
せいさん
)
の
労働
(
らうどう
)
に
従事
(
じうじ
)
し、
116
相当
(
さうたう
)
の
報酬
(
ほうしう
)
を
得
(
う
)
るのを、
117
今
(
いま
)
の
人間
(
にんげん
)
は
自分
(
じぶん
)
が
儲
(
まう
)
けるのだと
云
(
い
)
つてゐるが、
118
決
(
けつ
)
して
儲
(
まう
)
けるのではない、
119
神
(
かみ
)
から
与
(
あた
)
へられるのだ。
120
おかげを
頂
(
いただ
)
くのだ。
121
自分
(
じぶん
)
が
儲
(
まう
)
けるなンて
思
(
おも
)
つたら
大変
(
たいへん
)
な
間違
(
まちがひ
)
だ。
122
人間
(
にんげん
)
と
云
(
い
)
ふものは
自分
(
じぶん
)
から
生
(
い
)
きるこたア
出来
(
でき
)
ない、
123
許
(
ゆる
)
されて
生
(
い
)
きてゐるのだ。
124
それだから
人
(
ひと
)
はパンのみにて
生
(
い
)
くるものに
非
(
あら
)
ずと
神
(
かみ
)
が
仰有
(
おつしや
)
るのだよ。
125
パン
問題
(
もんだい
)
のみで
人間
(
にんげん
)
の
生活
(
せいくわつ
)
の
解決
(
かいけつ
)
が
付
(
つ
)
くのならば、
126
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
殺風景
(
さつぷうけい
)
な
荒野
(
くわうや
)
のやうなものだ』
127
万公
『
吾々
(
われわれ
)
は、
128
つまり
言
(
い
)
へば
筋肉
(
きんにく
)
労働者
(
らうどうしや
)
だ。
129
ヂツとしてゐて、
130
口
(
くち
)
の
先
(
さき
)
やペンを
使
(
つか
)
つてゐるやうな
屋内
(
をくない
)
労働者
(
らうどうしや
)
とは、
131
苦痛
(
くつう
)
の
点
(
てん
)
に
於
(
おい
)
て
天地
(
てんち
)
霄壌
(
せうじやう
)
の
差
(
さ
)
があるのだからなア』
132
五三公
『そりや
実
(
じつ
)
に
浅見
(
せんけん
)
だ。
133
筋肉
(
きんにく
)
労働者
(
らうどうしや
)
は
人体
(
じんたい
)
自然
(
しぜん
)
の
道理
(
だうり
)
に
従
(
したが
)
つて
活動
(
くわつどう
)
するのだから、
134
仮令
(
たとへ
)
汗
(
あせ
)
を
搾
(
しぼ
)
つても
愉快
(
ゆくわい
)
なものだ、
135
苦
(
くる
)
しいと
云
(
い
)
つても
宵
(
よひ
)
の
口
(
くち
)
だよ。
136
ペンを
持
(
も
)
つて
著述
(
ちよじゆつ
)
をしたり、
137
椅子
(
いす
)
に
掛
(
かか
)
つて
調査
(
てうさ
)
などをやつたりしてゐる
者
(
もの
)
の
労働
(
らうどう
)
の
苦
(
くる
)
しみと
云
(
い
)
つたら、
138
筋肉
(
きんにく
)
労働者
(
らうどうしや
)
の
夢想
(
むさう
)
だも
及
(
およ
)
ばざる
所
(
ところ
)
だ。
139
凡
(
すべ
)
て
人間
(
にんげん
)
と
云
(
い
)
ふものは
人
(
ひと
)
のやつてゐる
事
(
こと
)
が
善
(
よ
)
く
見
(
み
)
えるものでなア、
140
誰
(
たれ
)
だつて
其
(
その
)
局
(
きよく
)
に
当
(
あた
)
つてみよ、
141
随分
(
ずゐぶん
)
苦
(
くる
)
しいものだよ。
142
上
(
うへ
)
になる
程
(
ほど
)
責任
(
せきにん
)
も
重
(
おも
)
く、
143
単純
(
たんじゆん
)
な
筋肉
(
きんにく
)
労働者
(
らうどうしや
)
の
比
(
ひ
)
ではない。
144
俺
(
わし
)
も
一度
(
いちど
)
は
青表紙
(
あをべうし
)
と
首
(
くび
)
つぴきをして、
145
沢山
(
たくさん
)
の
参考書
(
さんかうしよ
)
をあさり、
146
著述
(
ちよじゆつ
)
に
従事
(
じゆうじ
)
したこともある。
147
又
(
また
)
土工
(
どこう
)
にもなり、
148
百姓
(
ひやくしやう
)
にもなり、
149
車力
(
しやりき
)
にもなつたが、
150
ヤツパリ
筆
(
ふで
)
を
持
(
も
)
つ
御用
(
ごよう
)
が
一番
(
いちばん
)
楽
(
らく
)
さうに
見
(
み
)
えて
一番
(
いちばん
)
苦
(
くる
)
しかつたよ。
151
霊界
(
れいかい
)
物語
(
ものがたり
)
の
口述者
(
こうじゆつしや
)
だつて
筆記者
(
ひつきしや
)
だつて
苦
(
くる
)
しいものだ。
152
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさまの
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
つかけ、
153
息切
(
いきぎ
)
れするやうな
苦
(
くる
)
しい
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
つたと
云
(
い
)
つても、
154
体
(
からだ
)
を
休
(
やす
)
め
酒
(
さけ
)
の
一杯
(
いつぱい
)
も
飲
(
の
)
めば、
155
それで
済
(
す
)
んで
了
(
しま
)
ふものだ。
156
著述家
(
ちよじゆつか
)
なンかになつてみよ、
157
一
(
いつ
)
分間
(
ぷんかん
)
だつて
心
(
こころ
)
のゆるむ
隙
(
ひま
)
はない、
158
夢
(
ゆめ
)
にだつて
忘
(
わす
)
れることが
出来
(
でき
)
ない
程
(
ほど
)
、
159
心身
(
しんしん
)
を
疲労
(
ひらう
)
させるのだ。
160
マアそんな
小六
(
こむづ
)
かしい
話
(
はなし
)
は
打切
(
うちき
)
りにして、
161
今日
(
けふ
)
は
気楽
(
きらく
)
にお
神酒
(
みき
)
を
頂
(
いただ
)
き、
162
又
(
また
)
明朝
(
あす
)
の
新
(
あたら
)
しいお
日様
(
ひさま
)
を
拝
(
をが
)
むことにしようぢやないか。
163
なアお
寅
(
とら
)
さま、
164
魔我
(
まが
)
さま、
165
一
(
ひと
)
つやりませうか、
166
どうぞ
一杯
(
いつぱい
)
注
(
つ
)
いで
下
(
くだ
)
さいな』
167
お
寅
(
とら
)
『
婆
(
ばば
)
アでお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りますまいが、
168
御免
(
ごめん
)
を
蒙
(
かうむ
)
りませう』
169
とニコニコしながら
五三公
(
いそこう
)
に
盃
(
さかづき
)
を
渡
(
わた
)
し、
170
燗徳利
(
かんどくり
)
からドブドブと
注
(
つ
)
いだ。
171
かくして
盃
(
さかづき
)
はクルクルまはり、
172
宴
(
えん
)
ますます
酣
(
たけなは
)
となつて
来
(
き
)
た。
173
万公
(
まんこう
)
は
思
(
おも
)
ひの
外
(
ほか
)
酔
(
よ
)
ひつぶれ、
174
独舞台
(
ひとりぶたい
)
の
様
(
やう
)
になつて
言霊
(
ことたま
)
を
発射
(
はつしや
)
し
出
(
だ
)
した。
175
万公
『
随分
(
ずゐぶん
)
何
(
なん
)
だなア、
176
雀
(
すずめ
)
百
(
ひやく
)
までとか
云
(
い
)
つて、
177
年
(
とし
)
がよつても
恋愛
(
れんあい
)
といふものは
下火
(
したび
)
にならないものと
見
(
み
)
えるな、
178
エヽン、
179
現
(
げん
)
にお
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさまだつてさうぢやないか、
180
俺
(
おれ
)
やどうも
此
(
この
)
問題
(
もんだい
)
の
解決
(
かいけつ
)
にや、
181
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
が
迷
(
まよ
)
つてゐるのだ』
182
五三
(
いそ
)
『
恋愛
(
れんあい
)
は
神聖
(
しんせい
)
だ、
183
宗教
(
しうけう
)
的
(
てき
)
信仰
(
しんかう
)
と
正
(
ただ
)
しき
恋愛
(
れんあい
)
とは、
184
人間
(
にんげん
)
の
霊魂
(
れいこん
)
を
優美
(
いうび
)
に
向上
(
かうじやう
)
させるものだよ。
185
正
(
ただ
)
しき
信仰
(
しんかう
)
と
完全
(
くわんぜん
)
な
恋愛
(
れんあい
)
は
人間
(
にんげん
)
の
心霊
(
しんれい
)
を
発育
(
はついく
)
せしめ、
186
永遠
(
ゑいゑん
)
無窮
(
むきう
)
の
生命
(
せいめい
)
を
与
(
あた
)
ふるものだ。
187
併
(
しか
)
し
現代
(
げんだい
)
科学者
(
くわがくしや
)
のいふやうな
浅薄
(
せんぱく
)
な
恋愛観
(
れんあいくわん
)
では
駄目
(
だめ
)
だ。
188
凡
(
すべ
)
て
恋愛
(
れんあい
)
といふものは
性欲
(
せいよく
)
から
分科
(
ぶんくわ
)
したものだ。
189
そして
性欲
(
せいよく
)
の
中
(
うち
)
に
可能性
(
かのうせい
)
の
形
(
かたち
)
に
於
(
おい
)
て
始
(
はじ
)
めて
含蓄
(
がんちく
)
されてるのが
恋愛
(
れんあい
)
だ。
190
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
り
給
(
たま
)
うた
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が、
191
人間
(
にんげん
)
の
生命
(
せいめい
)
に
性欲
(
せいよく
)
を
与
(
あた
)
へ
給
(
たま
)
うた
時
(
とき
)
から、
192
恋愛
(
れんあい
)
といふものを
含蓄
(
がんちく
)
させておかれたのだ。
193
信仰
(
しんかう
)
と
恋愛
(
れんあい
)
は
歓喜
(
くわんき
)
の
源泉
(
げんせん
)
だ。
194
歓喜
(
くわんき
)
といふものは
心霊
(
しんれい
)
を
永遠
(
ゑいゑん
)
に
保存
(
ほぞん
)
し、
195
且
(
かつ
)
心霊
(
しんれい
)
の
優美
(
いうび
)
完全
(
くわんぜん
)
なる
活躍
(
くわつやく
)
を
起
(
おこ
)
さしむるものだ』
196
万公
『
成程
(
なるほど
)
、
197
それだから
今晩
(
こんばん
)
の
大活躍
(
だいくわつやく
)
も、
198
ハアそこから
起
(
おこ
)
つたのだな。
199
さう
聞
(
き
)
けば、
200
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさまの
鈴野姫
(
すずのひめ
)
様
(
さま
)
が
御
(
ご
)
活躍
(
くわつやく
)
遊
(
あそ
)
ばしたのも、
201
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
さまが、
202
舎身
(
しやしん
)
的
(
てき
)
活動
(
くわつどう
)
の
理由
(
りいう
)
も
解決
(
かいけつ
)
がついて
来
(
き
)
た。
203
五三公
(
いそこう
)
さまのやうに、
204
さう
綿密
(
めんみつ
)
に
云
(
い
)
つてくれると、
205
俺
(
おれ
)
も
恋愛
(
れんあい
)
に
対
(
たい
)
しての
煩悶
(
はんもん
)
を
綺麗
(
きれい
)
サツパリ
排除
(
はいじよ
)
することが
出来
(
でき
)
たやうだ』
206
タク『ハヽヽヽヽ、
207
恋愛
(
れんあい
)
の
煩悶
(
はんもん
)
だなンて、
208
そんな
面
(
つら
)
でよくいへたものだ。
209
チツとお
前
(
まへ
)
の
顔
(
かほ
)
と
相談
(
さうだん
)
してみよ、
210
エヽン』
211
アク『お
菊
(
きく
)
さまの
様
(
やう
)
なナイスと
結婚
(
けつこん
)
させてもよい
様
(
やう
)
な
口吻
(
くちぶり
)
を、
212
お
寅
(
とら
)
さまが
洩
(
も
)
らしたものだから、
213
俄
(
にはか
)
に
色気
(
いろけ
)
づきよつて、
214
変
(
へん
)
な
気
(
き
)
になつたのだから、
215
正
(
ただ
)
しからざる
恋愛
(
れんあい
)
の
煩悶
(
はんもん
)
に
襲
(
おそ
)
はれよつたのだ、
216
アハヽヽヽ』
217
五三
(
いそ
)
『こんな
七六ケ
(
しちむつか
)
しい
問答
(
もんだふ
)
はやめて、
218
今晩
(
こんばん
)
は
盛
(
さかん
)
にやらうぢやないか』
219
お
寅
(
とら
)
『サ
皆
(
みな
)
さま、
220
今日
(
けふ
)
は
十分
(
じふぶん
)
に
酔
(
よ
)
うて
下
(
くだ
)
さい、
221
メツタに
鼻
(
はな
)
はつまみませぬからなア』
222
とお
寅
(
とら
)
も
今日
(
けふ
)
は
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
うてか、
223
主人
(
しゆじん
)
気取
(
きどり
)
になつて
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
酒
(
さけ
)
をあふり
出
(
だ
)
した。
224
だんだんと
酔
(
よひ
)
がまはつて
来
(
き
)
た。
225
万公
(
まんこう
)
『オイお
菊
(
きく
)
さま、
226
恋愛
(
れんあい
)
は
先
(
ま
)
づ
打切
(
うちき
)
りとして、
227
一
(
ひと
)
つ
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
に
歌
(
うた
)
をうたひ、
228
舞
(
ま
)
うて
見
(
み
)
せて
貰
(
もら
)
へまいかいな』
229
お
菊
(
きく
)
『
万公
(
まんこう
)
さまのために
歌
(
うた
)
ふのは
一寸
(
ちよつと
)
考
(
かんが
)
へさして
下
(
くだ
)
さい、
230
皆
(
みな
)
さまの
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
ならば
歌
(
うた
)
つても
宜
(
よろ
)
しい』
231
お
菊
(
きく
)
は
立上
(
たちあが
)
り、
232
扇
(
あふぎ
)
を
拡
(
ひろ
)
げて
自
(
みづか
)
ら
歌
(
うた
)
ひ
自
(
みづか
)
ら
舞
(
ま
)
ふ。
233
一同
(
いちどう
)
は
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つて
囃
(
はや
)
す。
234
お菊
『
小北
(
こぎた
)
の
山
(
やま
)
の
神床
(
かむどこ
)
で
235
花
(
はな
)
のお
菊
(
きく
)
が
酌
(
しやく
)
をする
236
酒
(
さけ
)
より
肴
(
さかな
)
よりお
菊
(
きく
)
さまが
237
万公
(
まんこう
)
さまの
目
(
め
)
についた
238
ホヽヽヽヽ』
239
万公
(
まんこう
)
『コリヤお
菊
(
きく
)
、
240
馬鹿
(
ばか
)
にするない、
241
目
(
め
)
についたのは
俺
(
おれ
)
ばかりでない。
242
すぐに
俺
(
おれ
)
を
向
(
むか
)
ふにまはし
挑戦
(
てうせん
)
的
(
てき
)
態度
(
たいど
)
を
取
(
と
)
るのだな』
243
タク『ヤツパリ
万公
(
まんこう
)
さまが
気
(
き
)
にかかると
見
(
み
)
えて、
244
乙姫
(
おとひめ
)
さまが
挑戦
(
てうせん
)
遊
(
あそ
)
ばすのだよ、
245
何事
(
なにごと
)
も
善意
(
ぜんい
)
に
解
(
かい
)
するのだな』
246
万公
(
まんこう
)
『アハヽヽヽ』
247
お
菊
(
きく
)
は
又
(
また
)
歌
(
うた
)
ふ。
248
お菊
『
目
(
め
)
につかば、
249
つれて
厶
(
ござ
)
れよ
海
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
、
250
竜宮
(
りうぐう
)
の
海
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
までも』
251
アク『
妙々
(
めうめう
)
、
252
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
253
お
菊
(
きく
)
さまに
限
(
かぎ
)
る。
254
モ
一
(
ひと
)
つ
願
(
ねが
)
ひます』
255
お
菊
(
きく
)
『エヽヽー
今日
(
けふ
)
の
日
(
ひ
)
もエヽヽー
256
くれーたアれど くれーたアれど
257
エヽヤのサ、
258
エヽーエヽー
259
わがア
殿
(
との
)
はア
260
ヤーレ、
261
マーだ
見
(
み
)
えぬ
262
ハーレヤーレエーヤのサアヽヽ
263
オホヽヽヽ、
264
大
(
おほ
)
きに
不調法
(
ぶてうはふ
)
、
265
これで
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りませう』
266
万公
(
まんこう
)
『
万万万
(
まんまんまん
)
、
267
モ
一
(
ひと
)
つ
所望
(
しよもう
)
だ。
268
こんな
所
(
ところ
)
でやめられてたまるかい』
269
お
菊
(
きく
)
『
万
(
まん
)
さま、
270
お
前
(
まへ
)
さまも
男
(
をとこ
)
ぢやないか、
271
返報
(
へんぱう
)
がへしといふ
事
(
こと
)
をようせないやうな
者
(
もの
)
は、
272
男
(
をとこ
)
ぢやありませぬよ。
273
何
(
なん
)
でもいいから
一
(
ひと
)
つ
歌
(
うた
)
つて
御覧
(
ごらん
)
、
274
さうすりや
又
(
また
)
私
(
わたし
)
も
取
(
と
)
つときを
放
(
はふ
)
り
出
(
だ
)
しますから……』
275
万公
(
まんこう
)
『エヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
276
女王
(
ぢよわう
)
さまの
御
(
ご
)
託宣
(
たくせん
)
だ』
277
と
云
(
い
)
ひながら
立上
(
たちあが
)
り、
278
万公
『あそばむ
為
(
ため
)
とて
生
(
うま
)
れけむ
279
いたづらせむとて
生
(
うま
)
れけむ
280
あそ……ぶ
子供
(
こども
)
の
声
(
こゑ
)
聞
(
き
)
けば
281
吾
(
わが
)
身
(
み
)
さへこーそゆるがるれ
282
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
…………だ、アハヽヽヽ』
283
一同
(
いちどう
)
『ウツフツフヽヽ』
284
万公
(
まんこう
)
『
花
(
はな
)
の
盛
(
さか
)
り……が
再
(
ふたた
)
びあらうか
285
枯木
(
かれき
)
に
花
(
はな
)
は
咲
(
さ
)
きはせぬ
286
ドツコイシヨ ドツコイシヨ……だ
287
竜宮
(
りうぐう
)
は
近
(
ちか
)
いな
近
(
ちか
)
いな
288
乙姫
(
おとひめ
)
さまが
鼓
(
つづみ
)
うつ
289
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
るぢやないか
290
其
(
その
)
又
(
また
)
鼓
(
つづみ
)
を
何
(
なん
)
とうつ
291
とどろ とどろと
六
(
む
)
つにうつ……
292
サアこれで
満期
(
まんき
)
免除
(
めんぢよ
)
を
願
(
ねが
)
ひたい、
293
サア
乙姫
(
おとひめ
)
さまの
番
(
ばん
)
だ』
294
お
菊
(
きく
)
『
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
、
295
二
(
に
)
枚
(
まい
)
』
296
万公
『コリヤコリヤ、
297
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
二
(
に
)
枚
(
まい
)
はモウこりこりだ、
298
もつと
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
はぬかい』
299
お菊
『ホツホヽヽヽ
300
岩屋
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
で
蛸
(
たこ
)
踊
(
をど
)
り
301
珊瑚
(
さんご
)
の
島
(
しま
)
では
亀
(
かめ
)
歌
(
うた
)
ふ
302
竜宮
(
りうぐう
)
の
波
(
なみ
)
のはざまにて
303
お
菊
(
きく
)
乙女
(
をとめ
)
が
黄金
(
こがね
)
まく
304
其
(
その
)
又
(
また
)
黄金
(
こがね
)
を
何
(
なん
)
とまく
305
万公
(
まんこう
)
さまにやろと
言
(
い
)
うてまく
306
ホツホヽヽ』
307
アク『オイ
中下
(
ちうげ
)
先生
(
せんせい
)
、
308
得意
(
とくい
)
の
程
(
ほど
)
、
309
お
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
します。
310
モシ
涎
(
よだれ
)
がこぼれますよ、
311
オホヽヽ』
312
一同
(
いちどう
)
『ワハツハヽヽ』
313
万公
(
まんこう
)
『エヘヽヽ、
314
皆
(
みな
)
よつてかかつて、
315
此
(
この
)
万更
(
まんざら
)
でもない
万
(
まん
)
さまを
馬鹿
(
ばか
)
にしよる、
316
併
(
しか
)
し
随分
(
ずゐぶん
)
持
(
も
)
てたものだなア、
317
オツホヽヽヽ、
318
ウツフヽヽヽ』
319
タク『お
菊
(
きく
)
乙姫
(
おとひめ
)
さま、
320
モ
一
(
ひと
)
つ
願
(
ねが
)
ひます、
321
余
(
あま
)
り
万公
(
まんこう
)
に
揶揄
(
からか
)
つて
貰
(
もら
)
ふと、
322
後
(
あと
)
の
始末
(
しまつ
)
に
困
(
こま
)
りますからな、
323
そこはよく
取捨
(
しゆしや
)
按配
(
あんぱい
)
して
歌
(
うた
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
324
何
(
なん
)
なら
私
(
わたし
)
の
事
(
こと
)
も
一
(
ひと
)
つ、
325
歌
(
うた
)
つて
貰
(
もら
)
ひたいものだな』
326
お
菊
(
きく
)
『これこれもうしタクさまえ
327
私
(
わし
)
に
会
(
あ
)
ひたくば
河鹿
(
かじか
)
の
流
(
なが
)
れ
328
おやなぎ
小柳
(
こやなぎ
)
蛇籠
(
じやかご
)
のあひの
329
小砂利
(
こじやり
)
交
(
まじ
)
りの
荒砂
(
あらすな
)
つかみ
330
背戸
(
せど
)
の
小窓
(
こまど
)
にバラバラと
331
投
(
な
)
げておくれよ
小雨
(
さめ
)
ふると
332
思
(
おも
)
うて
私
(
わたし
)
は
出
(
で
)
て
会
(
あ
)
はう
333
もしも
万
(
まん
)
さまであつたなら
334
雨戸
(
あまど
)
をピツシヤリ
閉
(
し
)
め
立
(
た
)
てて
335
長持
(
ながもち
)
の
底
(
そこ
)
にてふるうてゐる
336
好
(
す
)
きと
嫌
(
きら
)
ひはこんなもの
337
ヨイトサア ヨイトサア
338
エヽエエー、
339
はれやーれエイヤのサ………
340
モウこれで
品切
(
しなぎれ
)
となりました。
341
又
(
また
)
製造
(
せいざう
)
が
出来
(
でき
)
ましたら、
342
皆
(
みな
)
さまの
前
(
まへ
)
に
陳列
(
ちんれつ
)
致
(
いた
)
します、
343
ホヽヽヽ』
344
五三
(
いそ
)
『ヤア
有難
(
ありがた
)
い』
345
お
菊
(
きく
)
『
先生
(
せんせい
)
、
346
貴方
(
あなた
)
も
一
(
ひと
)
つ
願
(
ねが
)
ひます。
347
貰
(
もら
)
ひずては
不道徳
(
ふだうとく
)
ですよ、
348
ねえ
皆
(
みな
)
さま』
349
五三
(
いそ
)
『わたしは
生
(
うま
)
れつきの
無粋漢
(
ぶすゐかん
)
だ。
350
面白
(
おもしろ
)
い
歌
(
うた
)
はうたへない、
351
宣伝使
(
せんでんし
)
としての
相当
(
さうたう
)
な
歌
(
うた
)
を
歌
(
うた
)
つてみませう、
352
折角
(
せつかく
)
の
酒
(
さけ
)
の
興
(
きよう
)
がさめるかも
知
(
し
)
れませぬが、
353
やはらかい
所
(
ところ
)
へ
堅
(
かた
)
いのが
這入
(
はい
)
るのも、
354
調和
(
てうわ
)
が
取
(
と
)
れてよいかも
知
(
し
)
れませぬ』
355
万公
(
まんこう
)
『
何
(
なん
)
と
乙姫
(
おとひめ
)
様
(
さま
)
の
前
(
まへ
)
ぢやと
思
(
おも
)
つて、
356
シカツウ
仰有
(
おつしや
)
るワイ、
357
イヒヽヽヽ、
358
サ
早
(
はや
)
く
所望
(
しよもう
)
だ
所望
(
しよもう
)
だ』
359
五三
(
いそ
)
『
天地
(
てんち
)
を
造
(
つく
)
り
給
(
たま
)
ひたる
360
神
(
かみ
)
は
常住
(
じやうぢう
)
にましませど
361
お
姿
(
すがた
)
見
(
み
)
えぬぞ
果敢
(
はか
)
なけれ
362
人
(
ひと
)
のおとせぬ
暁
(
あかつき
)
に
363
仄
(
ほの
)
かに
夢
(
ゆめ
)
にみえ
給
(
たま
)
ふ
364
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
365
神
(
かみ
)
の
姿
(
すがた
)
ぞ
尊
(
たふと
)
けれ
366
○
367
祝詞
(
のりと
)
の
力
(
ちから
)
は
春
(
はる
)
の
水
(
みづ
)
368
罪障
(
ざいしやう
)
氷
(
こほり
)
と
解
(
と
)
けぬれば
369
万法
(
まんぽふ
)
空寂
(
くうじやく
)
の
波
(
なみ
)
立
(
た
)
ちて
370
真如
(
しんによ
)
の
岸
(
きし
)
にぞ
打寄
(
うちよ
)
する
371
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
372
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
373
万公
(
まんこう
)
『
何
(
なん
)
と
時
(
とき
)
と
場所
(
ばしよ
)
を
考
(
かんが
)
へない
結構
(
けつこう
)
のやうな、
374
結構
(
けつこう
)
でないやうな
歌
(
うた
)
だなア』
375
お
寅
(
とら
)
『
何
(
なん
)
だか
先生
(
せんせい
)
の
歌
(
うた
)
を
聞
(
き
)
きますと、
376
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
がシーンとして
来
(
き
)
ました。
377
ヤツパリ
万
(
まん
)
さまの
歌
(
うた
)
とは
大変
(
たいへん
)
に
品格
(
ひんかく
)
が
違
(
ちが
)
ひますなア、
378
心
(
こころ
)
の
色
(
いろ
)
が
言葉
(
ことば
)
に
出
(
で
)
るとか
云
(
い
)
つて、
379
大
(
たい
)
したものですワ。
380
何
(
なん
)
とはなしに
爽快
(
さうくわい
)
の
気分
(
きぶん
)
が
漂
(
ただよ
)
ひました』
381
万公
(
まんこう
)
『モシ
先生
(
せんせい
)
、
382
お
目出度
(
めでた
)
う。
383
お
寅
(
とら
)
さまは
余程
(
よほど
)
思召
(
おぼしめし
)
があると
見
(
み
)
えますよ。
384
オホヽヽヽ、
385
色男
(
いろをとこ
)
といふものは
変
(
かは
)
つたものだな。
386
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
昔
(
むかし
)
の
別嬪
(
べつぴん
)
だからなア、
387
イヒヽヽヽ』
388
魔我
(
まが
)
『コレ
万
(
まん
)
さま、
389
そんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
つては
失礼
(
しつれい
)
ぢやありませぬか』
390
万公
(
まんこう
)
『そら
失恋
(
しつれん
)
です。
391
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つてもお
菊
(
きく
)
さまにエツパツパをやられた
立派
(
りつぱ
)
な
御
(
ご
)
人格者
(
じんかくしや
)
と、
392
お
民
(
たみ
)
さまに
肱鉄
(
ひぢてつ
)
を
喰
(
くら
)
つた、
393
どこやらの
哥兄
(
にい
)
さまと、
394
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さまにエツパツパのパアで
置去
(
おきざ
)
りにされた、
395
昔
(
むかし
)
の
別嬪
(
べつぴん
)
さまと、
396
三組
(
みくみ
)
揃
(
そろ
)
うた
失恋
(
しつれん
)
会議
(
くわいぎ
)
だから、
397
チツとは
失恋
(
しつれん
)
な
事
(
こと
)
も
仰有
(
おつしや
)
りませうかい。
398
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
同情
(
どうじやう
)
致
(
いた
)
します。
399
同病
(
どうびやう
)
相憐
(
あひあは
)
れむ
同情
(
どうじやう
)
ヨシノリさまだ。
400
柔道
(
じうだう
)
行成
(
ゆきなり
)
次第
(
しだい
)
に
打
(
う
)
つちやつておく
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
きますまい。
401
あゝ
不義理
(
ふぎり
)
の
天上日
(
てんじやうひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
に
対
(
たい
)
し、
402
軽業師
(
かるわざし
)
玉乗姫
(
たまのりひめ
)
が、
403
あらう
事
(
こと
)
かあるまい
事
(
こと
)
か、
404
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
さまをくはへて
走
(
はし
)
るといふのだから、
405
困
(
こま
)
つたものだい。
406
イヒヽヽヽ』
407
魔我
(
まが
)
『
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
さまに
玉則姫
(
たまのりひめ
)
408
かつさらはれて
玉
(
たま
)
なしの
魔我
(
まが
)
。
409
鈴野姫
(
すずのひめ
)
ガチヤ ガチヤ ガチヤと
鳴
(
な
)
り
渡
(
わた
)
り
410
後
(
あと
)
追
(
お
)
つかけて
行
(
ゆ
)
くぞ
可笑
(
をか
)
しき。
411
打倒
(
うちたふ
)
れ
鼻
(
はな
)
打
(
う
)
ち
砕
(
くだ
)
く
鈴野姫
(
すずのひめ
)
412
われて
飛出
(
とびだ
)
す
玉
(
たま
)
は
何処
(
いづこ
)
ぞ。
413
地上姫
(
ちじやうひめ
)
恋
(
こひ
)
の
願
(
ねがひ
)
お
菊
(
きく
)
と
思
(
おも
)
へば
414
固
(
かた
)
い
約束
(
やくそく
)
たがやし
大神
(
だいじん
)
。
415
面白
(
おもしろ
)
い
其
(
その
)
面付
(
かほつき
)
は
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
416
万
(
まん
)
さま
寅
(
とら
)
さま
思
(
おも
)
ひやります』
417
万公
(
まんこう
)
『コラ
魔我
(
まが
)
よ
此
(
この
)
万
(
まん
)
さまを
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
ふ
418
恋
(
こひ
)
にかけたら
世界
(
せかい
)
一
(
いち
)
人
(
にん
)
』
419
魔我
(
まが
)
『
万
(
まん
)
人
(
にん
)
を
口説
(
くど
)
いて
一人
(
ひとり
)
出来
(
でき
)
ぬ
奴
(
やつ
)
420
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
に
只
(
ただ
)
の
一
(
いち
)
人
(
にん
)
。
421
ウフヽヽヽうろたへ
騒
(
さわ
)
ぎ
暗
(
やみ
)
の
夜
(
よる
)
の
422
お
菊
(
きく
)
幽霊
(
いうれい
)
に
肝
(
きも
)
つぶす
哉
(
かな
)
』
423
万公
(
まんこう
)
『
自分
(
じぶん
)
のみ
二世
(
にせ
)
の
妻
(
つま
)
よと
思
(
おも
)
ひしに
424
玉
(
たま
)
乗
(
の
)
りそこね
落
(
お
)
つる
魔我彦
(
まがひこ
)
。
425
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
さまに
金
(
かね
)
とられ
426
後
(
あと
)
追
(
お
)
つかけて
鼻
(
はな
)
をとられつ。
427
お
寅
(
とら
)
さま
何
(
いづ
)
れおとらぬ
恋衣
(
こひごろも
)
428
破
(
やぶ
)
れて
今日
(
けふ
)
は
縫
(
ぬ
)
ふすべもなし』
429
お
寅
(
とら
)
『
喧
(
やかま
)
しい
腰
(
こし
)
の
曲
(
まが
)
つた
魔我彦
(
まがひこ
)
が
430
恋
(
こひ
)
を
語
(
かた
)
らふ
資格
(
しかく
)
あるべき。
431
片思
(
かたおも
)
ひ
固
(
かた
)
く
思
(
おも
)
うてゐたものを
432
玉
(
たま
)
乗
(
の
)
りそこねヒメ(
悲鳴
(
ひめい
)
)をあげつつ』
433
万公
(
まんこう
)
『
万
(
まん
)
これで
失恋党
(
しつれんたう
)
の
酒
(
さか
)
もりも
434
一寸
(
ちよつと
)
済
(
す
)
みけり
後
(
あと
)
は
無礼講
(
ぶれいかう
)
』
435
アク『
見渡
(
みわた
)
せば
女男
(
をんなをとこ
)
の
好
(
す
)
きこのむ
436
面
(
つら
)
した
奴
(
やつ
)
は
一人
(
ひとり
)
だもなし。
437
其
(
その
)
中
(
なか
)
でアクのぬけたるアクさまは
438
中立
(
ちうりつ
)
地帯
(
ちたい
)
で
安全
(
あんぜん
)
なもの』
439
タク『タクさんにお
宮
(
みや
)
に
神
(
かみ
)
はありながら
440
此
(
この
)
騒
(
さわ
)
ぎをば
他所
(
よそ
)
に
見
(
み
)
るかな。
441
此
(
この
)
神
(
かみ
)
は
夫婦
(
ふうふ
)
喧嘩
(
げんくわ
)
の
災
(
わざはひ
)
を
442
守
(
まも
)
り
給
(
たま
)
へる
不義理
(
ふぎり
)
天上
(
てんじやう
)
』
443
テク『
魔我彦
(
まがひこ
)
の
顔
(
かほ
)
は
青森
(
あをもり
)
白木
(
しらき
)
上
(
じやう
)
444
蠑螈
(
いもり
)
の
別
(
わけ
)
に
横領姫
(
わうりやうひめ
)
されて』
445
魔我
(
まが
)
『
花依
(
はなより
)
の
姫
(
ひめ
)
ではなくて
鼻打
(
はなうち
)
の
446
婆姫
(
ばばひめ
)
さまとなりにける
哉
(
かな
)
。
447
花依姫
(
はなよりひめ
)
身魂
(
みたま
)
変化
(
へんげ
)
て
猿彦姫
(
さるひこひめ
)
448
赤恥柿
(
あかはぢかき
)
のみのる
姫
(
ひめ
)
かな』
449
お
寅
(
とら
)
『
金竜姫
(
きんりうひめ
)
取
(
と
)
られて
難儀
(
なんぎ
)
に
大足姫
(
おほだるひめ
)
450
正宗
(
まさむね
)
さまは
常世姫
(
とこよひめ
)
へ
逃
(
に
)
げたか』
451
魔我
(
まが
)
『ユラリ
彦
(
ひこ
)
、
上義
(
じやうぎ
)
の
姫
(
ひめ
)
は
今頃
(
いまごろ
)
は
452
さぞ
睦
(
むつま
)
じくおはしますらむ』
453
かく
互
(
たがひ
)
に
脱線歌
(
だつせんか
)
を
歌
(
うた
)
ひつつ、
454
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら、
455
カラリと
夜
(
よ
)
を
明
(
あ
)
かして
了
(
しま
)
つた。
456
数多
(
あまた
)
の
参詣者
(
さんけいしや
)
はゾロゾロと
大広前
(
おほひろまへ
)
指
(
さ
)
して
参拝
(
さんぱい
)
する、
457
下駄
(
げた
)
の
足音
(
あしおと
)
が
乱雑
(
らんざつ
)
的
(
てき
)
に
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
458
(
大正一一・一二・一五
旧一〇・二七
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