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第46巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 仕組の縺糸
01 榛並樹
〔1211〕
02 慰労会
〔1212〕
03 噛言
〔1213〕
04 沸騰
〔1214〕
05 菊の薫
〔1215〕
06 千代心
〔1216〕
07 妻難
〔1217〕
第2篇 狐運怪会
08 黒狐
〔1218〕
09 文明
〔1219〕
10 唖狐外れ
〔1220〕
11 変化神
〔1221〕
12 怪段
〔1222〕
13 通夜話
〔1223〕
第3篇 神明照赫
14 打合せ
〔1224〕
15 黎明
〔1225〕
16 想曖
〔1226〕
17 惟神の道
〔1227〕
18 エンゼル
〔1228〕
第4篇 謎の黄板
19 怪しの森
〔1229〕
20 金の力
〔1230〕
21 民の虎声
〔1231〕
22 五三嵐
〔1232〕
23 黄金華
〔1233〕
余白歌
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第一二章
怪段
(
くわいだん
)
〔一二二二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第46巻 舎身活躍 酉の巻
篇:
第2篇 狐運怪会
よみ(新仮名遣い):
こうんかいかい
章:
第12章 怪段
よみ(新仮名遣い):
かいだん
通し章番号:
1222
口述日:
1922(大正11)年12月15日(旧10月27日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年9月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
万公は後髪を引かれる心地しながら、お菊への愛におぼれて神務を打ち忘れ、木枯らしすさぶ山の尾の上の薄雪を踏みしめながら、駆け落ちの道中歌いだした。
しかしお菊は足早に前を走って行き、万公は息が切れだした。万公はお菊に待ってくれと声をかけ、慌てて走って行くが追いつかない。
実際は万公はとぼけた面をして神社の細い階段を上っては下り、下っては上りを繰り返しているだけだった。お菊とお千代が石段のところに来ると、万公が何かわからぬことをブツブツ言いながら行ったり来たりしているのが見えた。
お菊が万公に呼びかけると、万公は大金を持ってお菊と逃げているつもりになってお菊に返事をした。お菊とお千代は狐につままれたのだろうと万公を笑っている。万公は下を向いて汗をたらたら垂らしながら階段を降って行ってしまった。
魔我彦は狐に膏をしぼられて松彦館を訪ねようと階段を上って行くと、万公が気の抜けた顔をして下ってくるのにばったり出会った。魔我彦に声をかけられてようやく正気に戻った万公は、今度は本物のお菊を狐だと思って掴みかかった。
魔我彦にたしなめられて、万公はお菊と駆け落ちをした気になっていたことを白状し反省した。そこへ五三公、アク、タク、テクの四人が松彦館を訪ねてやってきた。万公は反省の歌を歌い、一同は戒めの歌を交わした。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-03-14 18:14:31
OBC :
rm4612
愛善世界社版:
156頁
八幡書店版:
第8輯 414頁
修補版:
校定版:
164頁
普及版:
64頁
初版:
ページ備考:
001
万公
(
まんこう
)
は
後髪
(
うしろがみ
)
引
(
ひ
)
かるる
心地
(
ここち
)
しながら、
002
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
神務
(
しんむ
)
を
打
(
う
)
ち
忘
(
わす
)
れ、
003
お
菊
(
きく
)
の
愛
(
あい
)
に
溺
(
おぼ
)
れて、
004
金
(
かね
)
と
色
(
いろ
)
との
二道
(
ふたみち
)
かけ、
005
木枯
(
こがらし
)
荒
(
すさ
)
ぶ
高山
(
たかやま
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
の
薄雪
(
うすゆき
)
を
踏
(
ふ
)
みしめながら、
006
お
菊
(
きく
)
のやさしき
後姿
(
うしろすがた
)
を
打
(
う
)
ち
眺
(
なが
)
め、
007
顔
(
かほ
)
の
紐
(
ひも
)
まで
解
(
ほど
)
いて
道々
(
みちみち
)
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
008
万公
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
009
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立
(
た
)
てわける
010
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
011
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
012
唯
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
013
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
し
014
身
(
み
)
の
過
(
あやま
)
ちを
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
す
015
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
016
この
万公
(
まんこう
)
が
恋
(
こひ
)
の
暗
(
やみ
)
017
迷
(
まよ
)
うて
脱線
(
だつせん
)
した
事
(
こと
)
を
018
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
らに
平
(
たひ
)
らかに
019
必
(
かなら
)
ず
許
(
ゆる
)
させたまふべし
020
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
をのり
越
(
こ
)
えて
021
治国別
(
はるくにわけ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
022
野中
(
のなか
)
の
森
(
もり
)
迄
(
まで
)
やつて
来
(
き
)
た
023
時
(
とき
)
しもあれや
亀彦
(
かめひこ
)
は
024
弟子
(
でし
)
の
万公
(
まんこう
)
を
振
(
ふ
)
り
捨
(
す
)
てて
025
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
とかくれけり
026
これを
思
(
おも
)
へば
万公
(
まんこう
)
も
027
もはや
御用
(
ごよう
)
が
済
(
す
)
んだのか
028
一本橋
(
いつぽんばし
)
の
袂
(
たもと
)
にて
029
恋
(
こひ
)
しきお
菊
(
きく
)
に
廻
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ
030
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
さまにいろいろと
031
苦
(
にが
)
い
意見
(
いけん
)
を
聞
(
き
)
かされて
032
大分
(
だいぶん
)
心
(
こころ
)
も
改
(
あらた
)
まり
033
松彦
(
まつひこ
)
さまと
諸共
(
もろとも
)
に
034
悪魔
(
あくま
)
の
征途
(
せいと
)
に
上
(
のぼ
)
るべく
035
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
んで
居
(
ゐ
)
たものを
036
どうした
身魂
(
みたま
)
の
因縁
(
いんねん
)
か
037
結
(
むす
)
ぶの
神
(
かみ
)
の
引
(
ひ
)
き
合
(
あは
)
せ
038
いとし
可愛
(
かあい
)
の
愛娘
(
まなむすめ
)
039
お
菊
(
きく
)
に
深
(
ふか
)
く
思
(
おも
)
はれて
040
引
(
ひ
)
くに
引
(
ひ
)
かれぬ
羽目
(
はめ
)
となり
041
心
(
こころ
)
ならずも
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
042
暫
(
しばら
)
く
捨
(
す
)
てて
往
(
ゆ
)
きまする
043
国治立
(
くにはるたちの
)
大御神
(
おほみかみ
)
044
豊国主
(
とよくにぬしの
)
大御神
(
おほみかみ
)
045
三五教
(
あななひけう
)
の
太柱
(
ふとばしら
)
046
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大御神
(
おほみかみ
)
047
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
まぬ
事
(
こと
)
ながら
048
暫
(
しばら
)
くお
暇
(
ひま
)
を
下
(
くだ
)
しやんせ
049
是
(
これ
)
から
二人
(
ふたり
)
は
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
を
050
伝
(
つた
)
ひ
伝
(
つた
)
ひて
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
051
何処
(
いづく
)
の
果
(
はて
)
にか
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
め
052
二人
(
ふたり
)
仲
(
なか
)
よく
世
(
よ
)
を
送
(
おく
)
り
053
さうした
上
(
うへ
)
で
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
054
きつと
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
します
055
今
(
いま
)
暫
(
しばら
)
くは
是非
(
ぜひ
)
なしと
056
何卒
(
なにとぞ
)
見直
(
みなほ
)
し
下
(
くだ
)
さつて
057
恋
(
こひ
)
を
許
(
ゆる
)
させたまへかし
058
まだ
十七
(
じふしち
)
の
愛娘
(
まなむすめ
)
059
肩揚
(
かたあげ
)
さへも
取
(
と
)
れぬよな
060
あれ
程
(
ほど
)
可愛
(
かあい
)
い
女
(
をんな
)
をば
061
何程
(
なにほど
)
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
ぢやとて
062
これが
見捨
(
みす
)
ててやれませうか
063
夫婦
(
ふうふ
)
となるも
前世
(
さきのよ
)
の
064
深
(
ふか
)
い
縁
(
えにし
)
でありませう
065
お
菊
(
きく
)
の
姉
(
あね
)
も
中々
(
なかなか
)
に
066
人
(
ひと
)
に
勝
(
すぐ
)
れた
器量
(
きりやう
)
もの
067
ほんとに
惜
(
を
)
しい
事
(
こと
)
をした
068
そのお
里
(
さと
)
にも
弥勝
(
いやまさ
)
り
069
鈴
(
すず
)
のやうなる
丸
(
まる
)
い
目
(
め
)
に
070
花
(
はな
)
のやうなる
唇
(
くちびる
)
で
071
ニツと
笑
(
わら
)
うた
其
(
その
)
時
(
とき
)
は
072
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずに
魂
(
たましひ
)
が
073
中空
(
ちうくう
)
に
飛
(
と
)
んで
往
(
ゆ
)
くやうだ
074
エヘヽヽヘツヘ
何
(
なん
)
とまア
075
面工
(
めんく
)
のよい
事
(
こと
)
出来
(
でき
)
たのか
076
矢張
(
やつぱ
)
り
身魂
(
みたま
)
がよい
故
(
ゆゑ
)
に
077
心
(
こころ
)
の
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
き
初
(
そ
)
めて
078
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
めが
降
(
ふ
)
つて
来
(
き
)
て
079
二人
(
ふたり
)
の
仲
(
なか
)
をば
円満
(
ゑんまん
)
に
080
神聖
(
しんせい
)
な
恋
(
こひ
)
を
完全
(
くわんぜん
)
に
081
お
守
(
まも
)
りなさるに
違
(
ちが
)
ひない
082
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
俺
(
おれ
)
のよな
083
幸福者
(
しあはせもの
)
が
世
(
よ
)
にあろか
084
これこれお
菊
(
きく
)
ちよつと
待
(
ま
)
て
085
お
前
(
まへ
)
は
子供
(
こども
)
に
似合
(
にあ
)
はない
086
随分
(
ずゐぶん
)
早
(
はや
)
い
足
(
あし
)
だなア
087
道
(
みち
)
もないよな
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
を
088
さう
安々
(
やすやす
)
と
歩
(
ある
)
くのは
089
矢張
(
やは
)
り
結
(
むす
)
ぶの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
090
お
前
(
まへ
)
の
体
(
からだ
)
を
委曲
(
まつぶさ
)
に
091
お
守
(
まも
)
りなさるに
違
(
ちが
)
ひない
092
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つて
呉
(
く
)
れぬかい
093
俺
(
おい
)
等
(
ら
)
は
呼吸
(
いき
)
が
切
(
き
)
れさうだ』
094
待
(
ま
)
てよ
待
(
ま
)
てよと
呼
(
よ
)
ばはれば
095
お
菊
(
きく
)
は
後
(
うしろ
)
を
振
(
ふ
)
り
向
(
む
)
いて
096
お菊
『これ
万
(
まん
)
さま
焦
(
じれ
)
つたい
097
今
(
いま
)
暫
(
しばら
)
くは
身
(
み
)
の
限
(
かぎ
)
り
098
足
(
あし
)
の
続
(
つづ
)
かむ
其
(
その
)
限
(
かぎ
)
り
099
走
(
はし
)
つて
往
(
ゆ
)
かねばなりませぬ
100
もしも
追手
(
おつて
)
に
見
(
み
)
つけられ
101
捕
(
とら
)
はれようものならば
102
それこそ
甚
(
ひど
)
い
事
(
こと
)
になる
103
大泥棒
(
おほどろばう
)
の
駆落
(
かけおち
)
奴
(
め
)
104
此
(
この
)
儘
(
まま
)
許
(
ゆる
)
しは
致
(
いた
)
さぬと
105
蠑螈別
(
いもりわけ
)
が
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
て
106
どんな
事
(
こと
)
をなさるやら
107
分
(
わか
)
つたものぢやありませぬ
108
それが
私
(
わたし
)
は
気
(
き
)
にかかる
109
もう
一息
(
ひといき
)
ぢや
万
(
まん
)
さまよ
110
サアサア
早
(
はや
)
う
往
(
ゆ
)
きませう』
111
言葉
(
ことば
)
を
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
しつつ
112
小松
(
こまつ
)
茂
(
しげ
)
れる
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
を
113
見
(
み
)
えつかくれつ
走
(
はし
)
り
往
(
ゆ
)
く
114
万公
(
まんこう
)
は
息
(
いき
)
を
喘
(
はづ
)
まして
115
万公
『おいおい
待
(
ま
)
つたお
菊
(
きく
)
さま
116
それ
程
(
ほど
)
早
(
はや
)
く
走
(
はし
)
るなよ
117
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えずなつたなら
118
この
深山
(
しんざん
)
で
何
(
なん
)
とする
119
お
前
(
まへ
)
と
俺
(
おれ
)
と
唯
(
ただ
)
二人
(
ふたり
)
120
外
(
ほか
)
に
力
(
ちから
)
になるものは
121
猫
(
ねこ
)
の
子
(
こ
)
一匹
(
いつぴき
)
居
(
を
)
らぬぞや
122
まアまア
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
しやんせ
123
アイタヽタツタ
躓
(
つまづ
)
いた
124
途
(
みち
)
なき
処
(
ところ
)
をスタスタと
125
ようまアそれだけ
走
(
はし
)
られる
126
遉
(
さすが
)
の
万公
(
まんこう
)
も
舌
(
した
)
を
巻
(
ま
)
き
127
尾
(
を
)
を
巻
(
ま
)
き
降参
(
かうさん
)
せにやならぬ
128
そりや
其
(
その
)
筈
(
はず
)
ぢや
誰
(
たれ
)
だとて
129
大胆
(
だいたん
)
至極
(
しごく
)
な
事
(
こと
)
をして
130
何
(
ど
)
うしてゆつくり
歩
(
ある
)
かれよか
131
これから
肝玉
(
きもだま
)
放
(
はふ
)
り
出
(
だ
)
して
132
もう
一気張
(
ひときば
)
りお
菊
(
きく
)
さまの
133
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
うて
往
(
い
)
つて
見
(
み
)
よう
134
何
(
なん
)
とはなしに
呼吸
(
こきふ
)
めが
135
苦
(
くる
)
しくなつて
来
(
き
)
たわいな
136
此処
(
ここ
)
で
一服
(
いつぷく
)
しよぢやないか
137
これだけ
逃
(
に
)
げて
来
(
き
)
た
上
(
うへ
)
は
138
よもや
追手
(
おつて
)
もかかるまい
139
アイタヽタツタ
目
(
め
)
をついた
140
松葉
(
まつば
)
の
奴
(
やつ
)
めが
出
(
で
)
しやばつて
141
大事
(
だいじ
)
な
大事
(
だいじ
)
な
眼
(
まなこ
)
をば
142
遠慮
(
ゑんりよ
)
もなしに
突
(
つ
)
きよつた
143
こりやこりやお
菊
(
きく
)
どこへ
往
(
い
)
つた
144
子供
(
こども
)
の
癖
(
くせ
)
にとんとんと
145
はぐれて
仕舞
(
しま
)
つたら
何
(
なん
)
とする
146
向
(
むか
)
ふ
見
(
み
)
ずにも
程
(
ほど
)
がある
147
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
し
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
し』
148
と
云
(
い
)
ひながら、
149
呆
(
とぼ
)
けたやうな
面
(
つら
)
をして
細
(
ほそ
)
い
階段
(
かいだん
)
を
登
(
のぼ
)
つては
下
(
くだ
)
り、
150
下
(
くだ
)
つては
登
(
のぼ
)
り、
151
何
(
なに
)
か
口
(
くち
)
をもがもがと
動
(
うご
)
かして
幾度
(
いくど
)
となく
上下
(
じやうげ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
152
お
菊
(
きく
)
とお
千代
(
ちよ
)
は
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
きながら
石段
(
いしだん
)
の
所
(
ところ
)
まで
下
(
お
)
りて
来
(
き
)
た。
153
見
(
み
)
れば
万公
(
まんこう
)
が
何
(
なに
)
かブツブツ
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
呟
(
つぶや
)
きながら、
154
石段
(
いしだん
)
をトントントンと
下
(
くだ
)
つたり
上
(
のぼ
)
つたりして
居
(
ゐ
)
る。
155
お
菊
(
きく
)
『お
千代
(
ちよ
)
さま、
156
あの
万公
(
まんこう
)
さまを
御覧
(
ごらん
)
、
157
間抜
(
まぬ
)
けた
顔
(
かほ
)
して、
158
お
千度
(
せんど
)
をして
居
(
ゐ
)
るぢやありませぬか、
159
何
(
なん
)
で
又
(
また
)
あんな
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
をするのでせうなア』
160
千代
(
ちよ
)
『
万公
(
まんこう
)
さまが、
161
狐
(
きつね
)
に
撮
(
つま
)
まれて
居
(
ゐ
)
るのでせうよ。
162
随分
(
ずゐぶん
)
小北山
(
こぎたやま
)
には
古狐
(
ふるぎつね
)
の
穴
(
あな
)
が
沢山
(
たんと
)
ありますからなア』
163
お菊
『
一
(
ひと
)
つ
背中
(
せなか
)
でも
叩
(
たた
)
いて
気
(
き
)
をつけてやりませうか』
164
お千代
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
「オイ」と
云
(
い
)
つて
見
(
み
)
なさい。
165
そしたら
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
くかも
知
(
し
)
れませぬぜ』
166
お
菊
(
きく
)
は
登
(
のぼ
)
つて
来
(
く
)
る
階段
(
かいだん
)
の
上
(
うへ
)
に
立
(
た
)
ち
一間
(
いつけん
)
程
(
ほど
)
前
(
まへ
)
から、
167
お菊
『オイ
万公
(
まんこう
)
さま、
168
確
(
しつか
)
りせぬかいな』
169
と
声
(
こゑ
)
をかけた。
170
万公
(
まんこう
)
は
矢庭
(
やには
)
に
口
(
くち
)
重
(
おも
)
たげに、
171
万公
『オーイお
菊
(
きく
)
、
172
さう
走
(
はし
)
つては
追付
(
おつつ
)
かれない。
173
二十七万
(
にじふしちまん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
を
落
(
おと
)
しては
大変
(
たいへん
)
だぞ。
174
まアちつと
待
(
ま
)
つてはどうだ。
175
もう
此処
(
ここ
)
まで
逃
(
に
)
げて
来
(
き
)
たら
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ぢや』
176
お菊
『ホヽヽヽ
好
(
す
)
かぬたらしい。
177
万公
(
まんこう
)
さまは
私
(
わたし
)
と
駆落
(
かけおち
)
をして
居
(
ゐ
)
る
夢
(
ゆめ
)
でも
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
るのだらうか、
178
なアお
千代
(
ちよ
)
さま』
179
お千代
『きつとさうですよ、
180
あの
顔
(
かほ
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさい。
181
あれは
狐
(
きつね
)
に
撮
(
つま
)
まれて
居
(
ゐ
)
るのですよ。
182
さうして
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
るのですよ。
183
困
(
こま
)
つた
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かない
男
(
をとこ
)
ですなア』
184
万公
(
まんこう
)
は
又
(
また
)
下
(
した
)
を
向
(
む
)
いてトントントンと
汗
(
あせ
)
をタラタラ
流
(
なが
)
しながら
下
(
くだ
)
つて
往
(
ゆ
)
く。
185
魔我彦
(
まがひこ
)
が
散々
(
さんざん
)
狐
(
きつね
)
に
膏
(
あぶら
)
を
取
(
と
)
られ、
186
松彦館
(
まつひこやかた
)
を
訪
(
たづ
)
ねむと
階段
(
かいだん
)
を
上
(
のぼ
)
り
往
(
ゆ
)
くと、
187
万公
(
まんこう
)
が
気
(
き
)
のぬけたやうな
顔
(
かほ
)
して
下
(
お
)
りて
来
(
く
)
るのにベツタリと
出会
(
であ
)
つた。
188
魔我彦
(
まがひこ
)
は、
189
魔我彦
『ハヽ
此奴
(
こいつ
)
も
悪
(
わる
)
い
狐
(
きつね
)
にやられよつたのぢやな。
190
俺
(
おれ
)
ばかりかと
思
(
おも
)
へば、
191
伴侶
(
つれ
)
もあるワイ。
192
こいつは
大方
(
おほかた
)
、
193
お
菊
(
きく
)
と
駆落
(
かけおち
)
でもして
居
(
ゐ
)
る
積
(
つも
)
りで
撮
(
つま
)
まれて
居
(
ゐ
)
るのだらう、
194
オイ
万公
(
まんこう
)
、
195
何
(
なに
)
をグヅグヅして
居
(
ゐ
)
るのだ、
196
何
(
なに
)
を
喋
(
しやべ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ』
197
と
云
(
い
)
ひながら、
198
力
(
ちから
)
をこめて
背
(
せな
)
を
三
(
みつ
)
つ
四
(
よ
)
つ
打
(
う
)
ち
叩
(
たた
)
く
途端
(
とたん
)
に
万公
(
まんこう
)
は
気
(
き
)
がつき、
199
万公
『アヽ
一体
(
いつたい
)
此処
(
ここ
)
は
何処
(
どこ
)
だ、
200
お
菊
(
きく
)
は
何処
(
どこ
)
へ
往
(
い
)
つたのだ、
201
オーイ、
202
お
菊
(
きく
)
ヤーイ、
203
オーイ』
204
魔我
(
まが
)
『アハヽヽヽ、
205
これ
万
(
まん
)
、
206
確
(
しつか
)
りして
呉
(
く
)
れい、
207
最前
(
さいぜん
)
から
随分
(
ずゐぶん
)
ここを
上
(
あが
)
つたり
下
(
くだ
)
つたりして
居
(
ゐ
)
たさうだが、
208
大方
(
おほかた
)
狐
(
きつね
)
に
撮
(
つま
)
まれたのだらう。
209
余
(
あま
)
りお
菊
(
きく
)
を
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るから、
210
こんな
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
ふのだよ』
211
万公
(
まんこう
)
『ここは
一体
(
いつたい
)
何処
(
どこ
)
だと
云
(
い
)
ふのだ』
212
魔我彦
『
分
(
わか
)
らぬ
奴
(
やつ
)
だなア、
213
小北山
(
こぎたやま
)
の
階段
(
かいだん
)
だ。
214
目
(
め
)
を
閉
(
ふさ
)
いどつては
分
(
わか
)
らぬぢやないか。
215
何
(
なん
)
だい、
216
大
(
おほ
)
きな
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
けやがつて』
217
万公
『エヽ
馬鹿
(
ばか
)
にしやがつた。
218
余
(
あま
)
りド
狐
(
ぎつね
)
の
悪口
(
わるくち
)
を
言
(
い
)
つたものだから、
219
奴
(
やつこ
)
さん
仕返
(
しかへ
)
しをしやがつたな』
220
魔我彦
『アハヽヽヽ、
221
俺
(
おれ
)
の
二代目
(
にだいめ
)
が
出来
(
でき
)
たわい、
222
ウフヽヽヽ』
223
お
菊
(
きく
)
は
傍
(
そば
)
に
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
224
お菊
『これ
万
(
まん
)
さま、
225
お
前
(
まへ
)
最前
(
さいぜん
)
からここに
何
(
なに
)
して
居
(
ゐ
)
るの』
226
万公
(
まんこう
)
はお
菊
(
きく
)
の
首筋
(
くびすぢ
)
グツと
握
(
にぎ
)
り、
227
万公
『これド
狐
(
ぎつね
)
、
228
何
(
なん
)
で
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にしやがるのだ。
229
サアもう
了簡
(
れうけん
)
せぬぞ、
230
覚悟
(
かくご
)
せい』
231
お
菊
(
きく
)
『
万
(
まん
)
さま
恐
(
こは
)
い、
232
魔我
(
まが
)
さま
助
(
たす
)
けてえ』
233
魔我
(
まが
)
『こりやこりや
万公
(
まんこう
)
、
234
狐
(
きつね
)
の
化
(
ば
)
けたお
菊
(
きく
)
と、
235
本物
(
ほんもの
)
のお
菊
(
きく
)
とごつちやにしては
困
(
こま
)
るぢやないか、
236
ちつと
確
(
しつか
)
りさらさぬかい』
237
万公
(
まんこう
)
『ウンさうだつたか、
238
そりや
済
(
す
)
まぬ
事
(
こと
)
をした。
239
神
(
かみ
)
さまは
恐
(
こは
)
いものぢや、
240
もう
斯
(
か
)
うなつては
白状
(
はくじやう
)
するが、
241
実
(
じつ
)
はお
菊
(
きく
)
と
駆落
(
かけおち
)
をした
積
(
つも
)
りだつた。
242
矢張
(
やつぱ
)
り
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
気
(
き
)
を
引
(
ひ
)
かれたのかなア』
243
斯
(
か
)
く
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
へ、
244
五三公
(
いそこう
)
、
245
アク、
246
タク、
247
テク
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
松彦館
(
まつひこやかた
)
を
訪
(
たづ
)
ねむと
階段
(
かいだん
)
の
下
(
した
)
までやつて
来
(
き
)
た。
248
魔我彦
(
まがひこ
)
は
直
(
ただち
)
に、
249
魔我彦
『
小北山
(
こぎたやま
)
醜
(
しこ
)
の
狐
(
きつね
)
にだまされて
250
この
階段
(
かいだん
)
を
上
(
のほ
)
りつ
下
(
くだ
)
りつ。
251
お
菊
(
きく
)
さまと
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
きあうて
駆落
(
かけおち
)
を
252
してる
覚悟
(
かくご
)
で
同
(
おな
)
じとこゆく』
253
五三
(
いそ
)
『お
寅
(
とら
)
さま
魔我彦
(
まがひこ
)
さまをたばかりし
254
醜
(
しこ
)
の
狐
(
きつね
)
の
仕業
(
しわざ
)
なるらむ』
255
万公
(
まんこう
)
『
二十
(
にじふ
)
あまり
七万
(
しちまん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
もつて
256
駆落
(
かけおち
)
せしと
思
(
おも
)
ひけるかな』
257
アク『
馬鹿
(
ばか
)
だなアお
菊
(
きく
)
にうつつ
抜
(
ぬ
)
かしよつて
258
狐
(
きつね
)
にまでも
騙
(
だま
)
されてけり』
259
万公
(
まんこう
)
『
木石
(
ぼくせき
)
にあらぬ
身
(
み
)
なれば
俺
(
おれ
)
だとて
260
女
(
をんな
)
に
心
(
こころ
)
動
(
うご
)
かざらめや』
261
タク『
女
(
をんな
)
なら
是非
(
ぜひ
)
はなけれどド
狐
(
ぎつね
)
に
262
まゆ
毛
(
げ
)
よまれて
馬鹿
(
ばか
)
を
見
(
み
)
るかな』
263
万公
(
まんこう
)
『
俺
(
おれ
)
だとて
狐
(
きつね
)
位
(
くらゐ
)
にやだまされぬ
264
つもりぢやけれどまんが
悪
(
わる
)
うて』
265
タク『
慢心
(
まんしん
)
が
頂上
(
ちやうじやう
)
までも
登
(
のぼ
)
りつめ
266
この
浅猿
(
あさま
)
しき
態
(
ざま
)
となりぬる』
267
万公
(
まんこう
)
『
狐
(
きつね
)
まで
化
(
ば
)
けて
惚
(
ほ
)
れよる
俺
(
おれ
)
の
顔
(
かほ
)
は
268
どこかに
柔和
(
やさ
)
しいとこあるだらう』
269
テク『テクテクと
二百
(
にひやく
)
の
階段
(
かいだん
)
下
(
お
)
り
上
(
のぼ
)
り
270
騙
(
だま
)
されきつた
馬鹿者
(
ばかもの
)
あはれ』
271
万公
(
まんこう
)
『ここは
又
(
また
)
高天
(
たかま
)
に
登
(
のぼ
)
る
階段
(
かいだん
)
だ
272
何
(
なに
)
も
知
(
し
)
らずにゴテゴテ
云
(
い
)
ふな。
273
狐
(
きつね
)
にもせめて
一度
(
いちど
)
は
撮
(
つま
)
まれて
274
見
(
み
)
ねば
社会
(
しやくわい
)
の
事
(
こと
)
は
分
(
わか
)
らぬ』
275
五三
(
いそ
)
『
村肝
(
むらきも
)
の
心
(
こころ
)
に
迷
(
まよ
)
ひある
時
(
とき
)
は
276
醜
(
しこ
)
の
曲津
(
まがつ
)
の
誘
(
さそ
)
ふものなり。
277
万公
(
まんこう
)
さま
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
を
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
せ
278
狐
(
きつね
)
のやつにもてあそばれて。
279
如何
(
いか
)
にして
神
(
かみ
)
の
御業
(
みわざ
)
がつとまろか
280
ほうけ
男
(
をとこ
)
を
伴
(
ともな
)
ひし
身
(
み
)
は』
281
万公
(
まんこう
)
『
恥
(
はづ
)
かしや
恋
(
こひ
)
の
狐
(
きつね
)
にたばかられ
282
思
(
おも
)
はぬ
醜態
(
しこざま
)
現
(
あら
)
はれにけり。
283
大神
(
おほかみ
)
の
道
(
みち
)
おろそかにした
罪
(
つみ
)
は
284
今
(
いま
)
目
(
ま
)
のあたり
現
(
あら
)
はれてけり』
285
(
大正一一・一二・一五
旧一〇・二七
加藤明子
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【霊界物語ネット】
『
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飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
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霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
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