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第70巻(酉の巻)
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特別編 入蒙記
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第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第46巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 仕組の縺糸
01 榛並樹
〔1211〕
02 慰労会
〔1212〕
03 噛言
〔1213〕
04 沸騰
〔1214〕
05 菊の薫
〔1215〕
06 千代心
〔1216〕
07 妻難
〔1217〕
第2篇 狐運怪会
08 黒狐
〔1218〕
09 文明
〔1219〕
10 唖狐外れ
〔1220〕
11 変化神
〔1221〕
12 怪段
〔1222〕
13 通夜話
〔1223〕
第3篇 神明照赫
14 打合せ
〔1224〕
15 黎明
〔1225〕
16 想曖
〔1226〕
17 惟神の道
〔1227〕
18 エンゼル
〔1228〕
第4篇 謎の黄板
19 怪しの森
〔1229〕
20 金の力
〔1230〕
21 民の虎声
〔1231〕
22 五三嵐
〔1232〕
23 黄金華
〔1233〕
余白歌
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第一三章
通夜話
(
つやばなし
)
〔一二二三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第46巻 舎身活躍 酉の巻
篇:
第2篇 狐運怪会
よみ(新仮名遣い):
こうんかいかい
章:
第13章 通夜話
よみ(新仮名遣い):
つやばなし
通し章番号:
1223
口述日:
1922(大正11)年12月15日(旧10月27日)
口述場所:
筆録者:
外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年9月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
大広前に残った数人のウラナイ教の男女が夜更けまで懐旧談にふけっている。一同は大声で他愛もない馬鹿話を夜遅くやっていたので、文助がカンテラを持ってやってきて注意した。
一同はなんやかやとおかしな理屈をつけて、まだ夜更けまで話を続けるつもりだと文助を追い返した。文助は仕方なく、せめて静かに話をしてくれと頼んで戻って行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-03-15 19:33:39
OBC :
rm4613
愛善世界社版:
169頁
八幡書店版:
第8輯 418頁
修補版:
校定版:
178頁
普及版:
67頁
初版:
ページ備考:
001
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
醜狐
(
しこぎつね
)
002
曲鬼
(
まがおに
)
どもの
棲
(
す
)
み
居
(
ゐ
)
たる
003
ウラルの
山
(
やま
)
や
常世国
(
とこよくに
)
004
ロツキー
山
(
ざん
)
に
現
(
あら
)
はれし
005
常世
(
とこよ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
系統
(
けいとう
)
が
006
悪鬼
(
あくき
)
邪神
(
じやしん
)
に
憑依
(
ひようい
)
され
007
ウラルの
道
(
みち
)
やバラモンの
008
教
(
をしへ
)
を
四方
(
よも
)
にひらきつつ
009
天
(
あめ
)
が
下
(
した
)
をば
攪乱
(
かくらん
)
し
010
汚
(
けが
)
し
行
(
ゆ
)
くこそゆゆしけれ
011
国治立
(
くにはるたち
)
の
大神
(
おほかみ
)
は
012
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みも
大八洲
(
おほやしま
)
013
彦
(
ひこ
)
の
命
(
みこと
)
を
始
(
はじ
)
めとし
014
言霊別
(
ことたまわけ
)
や
大足彦
(
おほだるひこ
)
015
神国別
(
かみくにわけ
)
の
四柱
(
よはしら
)
を
016
国魂神
(
くにたまがみ
)
と
任
(
ま
)
け
給
(
たま
)
ひ
017
島
(
しま
)
の
八十島
(
やそしま
)
八十
(
やそ
)
の
国
(
くに
)
018
隈
(
くま
)
なく
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へども
019
悪魔
(
あくま
)
の
勢
(
いきほひ
)
たけくして
020
刈
(
か
)
り
取
(
と
)
る
草
(
くさ
)
の
其
(
その
)
跡
(
あと
)
に
021
又
(
また
)
もや
芽
(
め
)
を
出
(
だ
)
し
伸
(
の
)
びる
如
(
ごと
)
022
根絶
(
こんぜつ
)
せざるぞ
忌々
(
ゆゆ
)
しけれ
023
バラモン
教
(
けう
)
に
仕
(
つか
)
へたる
024
ウラルの
系統
(
ひつぽう
)
の
高姫
(
たかひめ
)
は
025
三五教
(
あななひけう
)
やウラル
教
(
けう
)
026
三
(
み
)
つの
教
(
をしへ
)
をこきまぜて
027
実
(
げ
)
にも
怪
(
あや
)
しきウラナイの
028
教
(
をしへ
)
の
射場
(
いば
)
をフサの
国
(
くに
)
029
北山村
(
きたやまむら
)
に
建設
(
けんせつ
)
し
030
羽振
(
はぶ
)
りを
利
(
き
)
かして
居
(
ゐ
)
たりしが
031
遂
(
つひ
)
に
我
(
が
)
を
居
(
を
)
り
三五
(
あななひ
)
の
032
教
(
をしへ
)
の
道
(
みち
)
に
帰順
(
きじゆん
)
せし
033
後
(
あと
)
をばついで
蠑螈別
(
いもりわけ
)
034
魔我彦
(
まがひこ
)
二人
(
ふたり
)
が
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
ひ
035
坂照山
(
さかてるやま
)
の
山腹
(
さんぷく
)
を
036
岩
(
いは
)
を
切
(
き
)
りとり
土
(
つち
)
ならし
037
へぐれのへぐれのへぐれ
武者
(
むしや
)
038
へぐれ
神社
(
じんしや
)
といふやうな
039
怪
(
あや
)
しき
社号
(
しやがう
)
をつけながら
040
辺
(
あた
)
りの
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
をば
041
鼠
(
ねづみ
)
が
餅
(
もち
)
をひくやうに
042
チヨビリ チヨビリとつまみとり
043
今
(
いま
)
は
漸
(
やうや
)
く
四五百
(
しごひやく
)
の
044
堅
(
かた
)
き
信者
(
しんじや
)
を
得
(
え
)
てければ
045
茲
(
ここ
)
にいよいよ
宮殿
(
きうでん
)
を
046
営
(
いとな
)
み
仕
(
つか
)
へ
羽振
(
はぶり
)
よく
047
教
(
をしへ
)
を
開
(
ひら
)
きゐたりしが
048
天地
(
てんち
)
を
守
(
まも
)
る
生神
(
いきがみ
)
は
049
何時
(
いつ
)
まで
醜
(
しこ
)
の
曲業
(
まがわざ
)
を
050
許
(
ゆる
)
させ
給
(
たま
)
ふ
事
(
こと
)
やある
051
松彦
(
まつひこ
)
一行
(
いつかう
)
現
(
あら
)
はれて
052
ユラリの
彦
(
ひこ
)
となりすまし
053
別
(
わか
)
れて
程経
(
ほどへ
)
し
吾
(
わが
)
妻
(
つま
)
の
054
松姫
(
まつひめ
)
及
(
およ
)
び
吾
(
わが
)
娘
(
むすめ
)
055
優
(
やさ
)
しきお
千代
(
ちよ
)
にめぐり
合
(
あ
)
ひ
056
一夜
(
いちや
)
をあかす
時
(
とき
)
もあれ
057
神
(
かみ
)
の
神罰
(
しんばつ
)
めぐりきて
058
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ひ
059
お
寅
(
とら
)
と
喧嘩
(
けんくわ
)
をおつ
始
(
ぱじ
)
め
060
土崩
(
どほう
)
瓦解
(
ぐわかい
)
の
運命
(
うんめい
)
を
061
自
(
みづか
)
ら
招
(
まね
)
き
大広木
(
おほひろき
)
062
正宗
(
まさむね
)
さまと
自称
(
じしよう
)
する
063
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
夜
(
よ
)
にまぎれ
064
信者
(
しんじや
)
のお
民
(
たみ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
065
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
遠
(
とほ
)
く
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りぬ
066
お
寅
(
とら
)
は
後
(
あと
)
に
地団駄
(
ぢだんだ
)
を
067
ふんで
無情
(
むじやう
)
を
怒
(
いか
)
りつつ
068
後
(
あと
)
追
(
お
)
つかけて
行
(
い
)
て
見
(
み
)
れば
069
榛
(
はん
)
の
根元
(
ねもと
)
に
結
(
ゆは
)
へたる
070
綱
(
つな
)
に
足
(
あし
)
をばひつかけて
071
もろくも
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
転倒
(
てんたう
)
し
072
神楽鼻
(
かぐらばな
)
をば
打砕
(
うちくだ
)
き
073
ウンウンウンとうなり
居
(
ゐ
)
る
074
そこへ
又
(
また
)
もや
魔我彦
(
まがひこ
)
が
075
お
寅
(
とら
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひかけて
076
力限
(
ちからかぎ
)
りにかけ
来
(
きた
)
り
077
お
寅
(
とら
)
の
体
(
からだ
)
につまづいて
078
ウンとばかりに
転倒
(
てんたう
)
し
079
膝
(
ひざ
)
の
頭
(
かしら
)
をすりむいて
080
苦
(
くる
)
しみ
悶
(
もだ
)
えゐたる
折
(
をり
)
081
五三公
(
いそこう
)
、
万公
(
まんこう
)
他
(
ほか
)
三人
(
みたり
)
082
後
(
あと
)
追
(
お
)
つかけて
出
(
い
)
で
来
(
きた
)
り
083
二人
(
ふたり
)
を
助
(
たす
)
けて
小北山
(
こぎたやま
)
084
教祖館
(
けうそやかた
)
に
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
り
085
ヤツと
安心
(
あんしん
)
する
間
(
ま
)
なく
086
いろいろ
雑多
(
ざつた
)
の
奇怪事
(
きくわいじ
)
が
087
次
(
つぎ
)
から
次
(
つぎ
)
へと
突発
(
とつぱつ
)
し
088
ウラナイ
教
(
けう
)
の
内面
(
ないめん
)
は
089
麻
(
あさ
)
の
如
(
ごと
)
くに
乱
(
みだ
)
れける
090
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
091
一度
(
いちど
)
は
曲
(
まが
)
は
栄
(
さか
)
ゆとも
092
誠
(
まこと
)
の
神力
(
しんりき
)
なき
故
(
ゆゑ
)
に
093
脆
(
もろ
)
くも
自
(
みづか
)
ら
破
(
やぶ
)
れけり
094
これぞ
全
(
まつた
)
く
神界
(
しんかい
)
の
095
犯
(
をか
)
し
方
(
がた
)
なき
御
(
おん
)
稜威
(
みいづ
)
096
発露
(
はつろ
)
し
給
(
たま
)
ひし
証
(
しるし
)
なり
097
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
098
如何
(
いか
)
なる
曲
(
まが
)
も
天地
(
あめつち
)
の
099
神
(
かみ
)
の
眼
(
まなこ
)
は
濁
(
にご
)
し
得
(
え
)
ず
100
自
(
みづか
)
らつくりし
其
(
その
)
穴
(
あな
)
に
101
陥
(
おちい
)
り
自滅
(
じめつ
)
を
招
(
まね
)
くもの
102
ただウラナイの
道
(
みち
)
のみか
103
世
(
よ
)
のことごとは
一
(
いつ
)
として
104
悪
(
あく
)
のほろびぬものはなし
105
之
(
これ
)
を
思
(
おも
)
へば
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
は
106
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つを
立
(
た
)
て
通
(
とほ
)
し
107
撓
(
たゆ
)
まず
屈
(
くつ
)
せず
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
も
108
真理
(
しんり
)
のためには
奮進
(
ふんしん
)
し
109
一歩
(
いつぽ
)
も
退
(
しりぞ
)
く
事
(
こと
)
勿
(
なか
)
れ
110
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
111
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ。
112
大広前
(
おほひろまへ
)
に
残
(
のこ
)
つた
数人
(
すうにん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
は
夜
(
よ
)
の
更
(
ふ
)
ける
頃
(
ころ
)
まで、
113
いろいろと
懐旧談
(
くわいきうだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる。
114
甲
(
かふ
)
『これお
徳
(
とく
)
さま、
115
お
前
(
まへ
)
さまは
花依姫
(
はなよりひめ
)
の
命
(
みこと
)
さまぢやないかい』
116
トク『どうだか、
117
しつかり
知
(
し
)
りませぬけれど、
118
教祖
(
けうそ
)
さまがさう
仰有
(
おつしや
)
るのだから、
119
マアそれにしときまほかいなア』
120
源公
(
げんこう
)
『アハヽヽヽ、
121
お
徳
(
とく
)
さまもよつぽどお
目出度
(
めでた
)
いなア。
122
鼻売姫
(
はなうりひめ
)
なんて、
123
一
(
ひと
)
つよりない
鼻
(
はな
)
を
売
(
う
)
つたら、
124
後
(
あと
)
は
何
(
ど
)
うするつもりだ』
125
トク
『サア
一
(
ひと
)
つの
鼻
(
はな
)
を
売
(
う
)
るまでには
中々
(
なかなか
)
苦労
(
くらう
)
が
要
(
い
)
りますよ。
126
男
(
をとこ
)
の
百
(
ひやく
)
人
(
にん
)
や
二百
(
にひやく
)
人
(
にん
)
は
今迄
(
いままで
)
迷
(
まよ
)
はして
来
(
き
)
たけれど、
127
まだ
鼻
(
はな
)
が
落
(
お
)
ちるとこまで
行
(
ゆ
)
きませぬからなア、
128
此
(
この
)
鼻
(
はな
)
をソツクリと
売
(
う
)
つて
了
(
しま
)
ふ
迄
(
まで
)
には
三百
(
さんびやく
)
人
(
にん
)
や
五百
(
ごひやく
)
人
(
にん
)
は
手玉
(
てだま
)
にとつても
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ですよ。
129
せめて
千
(
せん
)
人
(
にん
)
のお
客
(
きやく
)
をとつたら
鼻
(
はな
)
を
売
(
う
)
つて
了
(
しま
)
つても
得心
(
とくしん
)
ですわ』
130
源公
『サウするとおトクさま、
131
お
前
(
まへ
)
は
今
(
いま
)
まで
売女
(
ばいた
)
をやつてゐたのだなア』
132
トク
『コレも
悪神
(
あくがみ
)
さまの
御用
(
ごよう
)
だからなア、
133
仕方
(
しかた
)
がないのよ。
134
併
(
しか
)
しモウ
妾
(
わたし
)
も
改心
(
かいしん
)
したのだから、
135
誰
(
たれ
)
か
一人
(
ひとり
)
にきめておかうかと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るのよ』
136
源公
『
四辻
(
よつつじ
)
の
小便桶
(
せうべんたご
)
見
(
み
)
たよなナイスを、
137
誰
(
たれ
)
が
真面目
(
まじめ
)
に
女房
(
にようばう
)
にするものがあらうカイ。
138
両屏風
(
りやうびやうぶ
)
の
姉
(
ねえ
)
さまだからなア』
139
トク
『おかまいツ、
140
放
(
ほ
)
つといて
下
(
くだ
)
さい、
141
自由
(
じいう
)
の
権
(
けん
)
ですわ。
142
源
(
げん
)
さま、
143
お
前
(
まへ
)
は
奥
(
おく
)
さまを
何
(
ど
)
うしたのだイ』
144
源公
『かもて
呉
(
く
)
れなイ、
145
放
(
ほ
)
つといて
貰
(
もら
)
ひませうカイ。
146
滅多
(
めつた
)
にお
前
(
まへ
)
の
婿
(
むこ
)
にはなる
気遣
(
きづか
)
ひはないからなア』
147
トク
『ホヽヽヽヽ、
148
お
かん
さまにはほつとけぼりをくはされ、
149
自分
(
じぶん
)
が
使
(
つか
)
うて
居
(
を
)
つた
僕
(
しもべ
)
と
手
(
て
)
に
手
(
て
)
をとつて
駆落
(
かけおち
)
され、
150
後
(
のち
)
にシヨンボリと
力
(
ちから
)
をおとして
十日
(
とをか
)
許
(
ばか
)
りも
泣
(
な
)
きくらし、
151
それから
弁当
(
べんたう
)
持
(
も
)
ちで
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
許
(
ばか
)
り
山
(
やま
)
の
神
(
かみ
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
さが
)
しなさつたぢやないか。
152
それでもカラツキシ
御
(
お
)
行方
(
ゆくへ
)
がわからぬのだから、
153
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なものぢや。
154
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
嬶
(
かかあ
)
に
置去
(
おきざ
)
りにせられた
男
(
をとこ
)
の
代名詞
(
だいめいし
)
をサツパリ
源助
(
げんすけ
)
と
言
(
い
)
ひますぞや、
155
オホヽヽヽ』
156
源公
『アーねぶたい、
157
ドレもう
寝
(
ね
)
ようかい。
158
アタ
面白
(
おもしろ
)
うもない。
159
鰯
(
いわし
)
のどうけん
壺
(
つぼ
)
をかきまぜたよな
匂
(
にほ
)
ひのする
女
(
をんな
)
にひやかされとつても、
160
根
(
ね
)
つから
気
(
き
)
が
利
(
き
)
かないからなア』
161
トク
『
源
(
げん
)
さま、
162
一寸
(
ちよつと
)
お
待
(
ま
)
ち、
163
だまつて
聞
(
き
)
いてをれば、
164
妾
(
わたし
)
を
屏風
(
びやうぶ
)
だとか、
165
鰯
(
いわし
)
のどうけん
壺
(
つぼ
)
だとか、
166
余
(
あま
)
りぢやないカイ。
167
それだからお
前
(
まへ
)
は
源助
(
げんすけ
)
といふのだよ。
168
ゴンボ
先生
(
せんせい
)
はゴンボらしくして
居
(
を
)
りさへすれば、
169
こんな
恥
(
はぢ
)
はさらさいでもよいのだけれど、
170
あまり
口
(
くち
)
がすぎるものだから、
171
到頭
(
とうとう
)
すつぽりぬかれるのだよ』
172
源公
『
帆立貝
(
ほたてがひ
)
の
虐使
(
ぎやくし
)
に
堪
(
た
)
ふべく
焼酎
(
せうちう
)
をふいてふいて
吹
(
ふ
)
きさがすものだから、
173
堤防
(
ていばう
)
も
何
(
なん
)
にも
硬
(
こは
)
ばつてゐるぢやないか』
174
トク
『
大
(
おほ
)
きに
憚
(
はばか
)
りさま、
175
お
前
(
まへ
)
のお
世話
(
せわ
)
になろといふのでなし、
176
お
気
(
き
)
をもませましてすみませぬなア』
177
初公
(
はつこう
)
『
時
(
とき
)
にお
徳
(
とく
)
さま、
178
あの
鉄灯籠
(
かなどうろう
)
は
何
(
ど
)
うなつたのだ』
179
トク『ハア、
180
鉄灯籠
(
かなどうろう
)
かいなア。
181
灯籠
(
とうろう
)
だけは
最早
(
もはや
)
出来
(
でき
)
て
来
(
き
)
たのだから、
182
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
早
(
はや
)
く
奉納
(
ほうなふ
)
したいと
思
(
おも
)
つてゐるのだけれど、
183
まだ
蝋燭
(
らふそく
)
が
揃
(
そろ
)
はぬので
躊躇
(
ちうちよ
)
してゐるのよ。
184
何処
(
どこ
)
ぞ
一本
(
いつぽん
)
でもいいから、
185
売
(
う
)
つとる
所
(
ところ
)
はないのだろかね』
186
初公
(
はつこう
)
『
一本
(
いつぽん
)
でいいのか、
187
それなら
源
(
げん
)
さまに
頼
(
たの
)
んで
見
(
み
)
なさい。
188
何時
(
いつ
)
も
一本
(
いつぽん
)
持
(
も
)
つてゐると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だよ』
189
源公
(
げんこう
)
『
馬鹿
(
ばか
)
にするなイ。
190
お
徳
(
とく
)
さまの
土器
(
かわらけ
)
に
油
(
あぶら
)
を
注
(
さ
)
して
奉納
(
ほうなふ
)
したらそれでいいのだ。
191
アハヽヽヽ、
192
アー
眠
(
ねぶ
)
たい、
193
初
(
はつ
)
、
194
トク、
195
マアゆつくり
話
(
はなし
)
でもしたがよからう、
196
左様
(
さやう
)
なら』
197
初公
(
はつこう
)
『ヤア、
198
これは
遠方
(
ゑんぱう
)
の
所
(
ところ
)
御
(
ご
)
労足
(
らうそく
)
で
厶
(
ござ
)
いました』
199
源公
(
げんこう
)
は、
200
源公
『エー
八釜
(
やかま
)
しワイ』
201
と
云
(
い
)
ひすて、
202
自分
(
じぶん
)
の
宿舎
(
しゆくしや
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
203
初公
(
はつこう
)
『お
徳
(
とく
)
さま、
204
お
前
(
まへ
)
一体
(
いつたい
)
この
先
(
さき
)
何
(
ど
)
うするつもりだ。
205
何処迄
(
どこまで
)
も
後家
(
ごけ
)
を
立通
(
たてとほ
)
すつもりカイ、
206
好
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
婿
(
むこ
)
を
定
(
き
)
めぬと
年
(
とし
)
がよつたら
困
(
こま
)
るぢやないか』
207
トク『
何
(
なに
)
ほど
婿
(
むこ
)
をきめよと
云
(
い
)
つたつて、
208
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
に
妾
(
わたし
)
の
夫
(
をつと
)
になるやうな
男
(
をとこ
)
がないぢやないか』
209
初公
『
馬鹿
(
ばか
)
いふない。
210
これだけ
沢山
(
たくさん
)
な
鰥
(
やもめ
)
がそこら
中
(
ぢう
)
にあるぢやないか。
211
どれなつとお
望
(
のぞ
)
み
次第
(
しだい
)
願
(
ねがひ
)
をかけて
見
(
み
)
たらどうだい』
212
トク
『
妾
(
わたし
)
も
今迄
(
いままで
)
どれだけ
探
(
さが
)
したのか
知
(
し
)
れないが、
213
まだ
一人
(
ひとり
)
だつてありはしないわ』
214
初公
『お
前
(
まへ
)
の
気
(
き
)
に
入
(
い
)
る
夫
(
をつと
)
といふのは
一体
(
いつたい
)
どんな
男
(
をとこ
)
だ。
215
聞
(
き
)
かしてくれ。
216
さうすりや
私
(
わたし
)
も
世間
(
せけん
)
を
歩
(
ある
)
くから
考
(
かんが
)
へておかぬものでもない』
217
トク
『
初
(
はつ
)
さま
駄目
(
だめ
)
だよ。
218
今
(
いま
)
の
男
(
をとこ
)
に
碌
(
ろく
)
な
奴
(
やつ
)
はありやしないよ。
219
私
(
わたし
)
の
理想
(
りさう
)
の
夫
(
をつと
)
はマア、
220
ザツとこんなものだ。
221
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
三日月
(
みかづき
)
眉毛
(
まゆげ
)
の
男
(
をとこ
)
、
222
其
(
その
)
次
(
つぎ
)
に
黒目勝
(
くろめがち
)
な
目許
(
めもと
)
の
涼
(
すず
)
しい、
223
何
(
なん
)
とも
言
(
い
)
へぬ
優味
(
やさしみ
)
のある
目
(
め
)
で、
224
鼻
(
はな
)
は
高
(
たか
)
からず
低
(
ひく
)
からず、
225
小鼻
(
こばな
)
の
出
(
で
)
ない
鼻筋
(
はなすぢ
)
のよく
通
(
とほ
)
つた
口許
(
くちもと
)
は
尋常
(
じんじやう
)
で、
226
八
(
はち
)
の
字
(
じ
)
髯
(
ひげ
)
がピンと
生
(
は
)
え、
227
耳
(
みみ
)
たぶの
豊
(
ゆたか
)
な、
228
額口
(
ひたひぐち
)
のあまり
狭
(
せま
)
くない
広
(
ひろ
)
くない、
229
色白
(
いろじろ
)
で、
230
而
(
しか
)
も
体
(
からだ
)
は
中肉
(
ちうにく
)
中背
(
ちうぜい
)
で、
231
而
(
さう
)
して
仕事
(
しごと
)
は
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
迄
(
まで
)
よく
働
(
はたら
)
き、
232
夜分
(
やぶん
)
は
女房
(
にようばう
)
の
守
(
もり
)
をしてくれ、
233
糞
(
くそ
)
や
小便
(
せうべん
)
は
肥料
(
こやし
)
になるから
些
(
ちつと
)
でも
余計
(
よけい
)
垂
(
た
)
れて、
234
味
(
あぢ
)
ないものを
些
(
ちつ
)
と
食
(
く
)
ひ、
235
うまいものは
女房
(
にようばう
)
に
沢山
(
たくさん
)
食
(
く
)
はし、
236
さうして
心意気
(
こころいき
)
のよい
人
(
ひと
)
で
一言
(
ひとこと
)
も
女房
(
にようばう
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
反
(
そむ
)
かず、
237
外
(
ほか
)
の
女
(
をんな
)
に
心
(
こころ
)
を
移
(
うつ
)
さない、
238
一寸
(
ちよつと
)
も
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
ずに、
239
女房
(
にようばう
)
と
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
顔
(
かほ
)
見合
(
みあは
)
して
暮
(
くら
)
す
職業
(
しよくげう
)
を
持
(
も
)
つてゐる
人
(
ひと
)
で、
240
手先
(
てさき
)
の
器用
(
きよう
)
な、
241
世界
(
せかい
)
に
名
(
な
)
の
出
(
で
)
た
男
(
をとこ
)
でないと、
242
おトクさまの
気
(
き
)
には
入
(
い
)
らぬのだよ。
243
馬
(
うま
)
は
馬連
(
うまづれ
)
、
244
牛
(
うし
)
は
牛連
(
うしづれ
)
といふ
事
(
こと
)
があるからなア、
245
あまり
完全
(
くわんぜん
)
に
生
(
うま
)
れすぎたものだから
相手
(
あひて
)
がなくて
困
(
こま
)
つてゐるのよ。
246
何処
(
どこ
)
か
一所
(
ひとところ
)
でもよいから
不完全
(
ふくわんぜん
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
こ
)
なかつたのだらうと、
247
それが
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
して
恨
(
うら
)
めしい
位
(
くらゐ
)
だ。
248
アーア、
249
いい
女
(
をんな
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
く
)
るのも
迷惑
(
めいわく
)
なものだ』
250
初公
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しやがるのダイ。
251
オタンチン
奴
(
め
)
が、
252
貴様
(
きさま
)
はそんな
事
(
こと
)
を
望
(
のぞ
)
んで
待
(
ま
)
つてゐたとて、
253
仮令
(
たとへ
)
千万
(
せんまん
)
年
(
ねん
)
経
(
た
)
つても
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
気遣
(
きづか
)
ひはないぞ。
254
自惚
(
うぬぼ
)
れも
好
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
にしとつたがよからう。
255
お
前
(
まへ
)
の
完全
(
くわんぜん
)
なといふのは
頭
(
あたま
)
の
禿
(
はげ
)
と、
256
出歯
(
でつぱ
)
と、
257
獅子鼻
(
ししばな
)
と、
258
鰐口
(
わにぐち
)
とで、
259
しかもトベラで
両屏風
(
りやうびやうぶ
)
と
来
(
き
)
てゐるのだから
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
だ。
260
ようマアそんな
高望
(
たかのぞ
)
みが
出来
(
でき
)
たものだなア』
261
トク
『ナアニ
何時
(
いつ
)
か
小説
(
せうせつ
)
を
読
(
よ
)
んだら、
262
そんな
事
(
こと
)
が
書
(
か
)
いてあつたのだ。
263
その
話
(
はなし
)
をしとるのよ、
264
オホヽヽヽ』
265
初公
『コラおトクさま、
266
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にすない、
267
エー』
268
トク
『
馬鹿
(
ばか
)
にしよたつて
馬鹿
(
ばか
)
の
骨頂
(
こつちやう
)
に
達
(
たつ
)
した
男
(
をとこ
)
を、
269
どうして
馬鹿
(
ばか
)
にする
余地
(
よち
)
がありますかいなア。
270
お
前
(
まへ
)
も
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
だなア』
271
斯
(
か
)
く
他愛
(
たあい
)
なき
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる
所
(
ところ
)
へ、
272
カンテラに
火
(
ひ
)
をとぼし、
273
恭
(
うやうや
)
しくやつて
来
(
き
)
たのは
受付
(
うけつけ
)
の
文助
(
ぶんすけ
)
さまであつた。
274
文助
(
ぶんすけ
)
『これこれ
皆
(
みな
)
さま、
275
此
(
この
)
夜更
(
よふけ
)
まで
何
(
なに
)
をしやべつて
厶
(
ござ
)
るのだ。
276
一寸
(
ちよつと
)
も
寝
(
ね
)
られはせぬがなア。
277
サア
早
(
はや
)
くお
寝間
(
ねま
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
休
(
やす
)
んで
下
(
くだ
)
さい、
278
皆
(
みな
)
が
迷惑
(
めいわく
)
だからなア』
279
初公
(
はつこう
)
『ハイ、
280
一緒
(
いつしよ
)
に
寝
(
ね
)
ると
御
(
ご
)
迷惑
(
めいわく
)
だと
思
(
おも
)
つて、
281
実
(
じつ
)
は
此処
(
ここ
)
に
御
(
お
)
通夜
(
つや
)
をさして
頂
(
いただ
)
くつもりで
居
(
を
)
りますのだ』
282
文助
『
何故
(
なにゆゑ
)
又
(
また
)
そんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふのですか』
283
初公
『なんといつても
牡丹餅
(
ぼたもち
)
ひぜん
だから、
284
寝
(
ね
)
さしてくれませぬワイ。
285
それだから、
286
遠慮
(
ゑんりよ
)
して
此処
(
ここ
)
に
徳義
(
とくぎ
)
を
守
(
まも
)
つて
居
(
ゐ
)
るのですよ』
287
文助
『ソレは
感心
(
かんしん
)
だ。
288
併
(
しか
)
しお
徳
(
とく
)
さまは
休
(
やす
)
んだら
好
(
い
)
いぢやないか』
289
トク『ハイ、
290
一緒
(
いつしよ
)
に
休
(
やす
)
みたいのだけれど、
291
皆
(
みな
)
の
連中
(
れんちう
)
さまが、
292
妾
(
わたし
)
が
側
(
そば
)
へ
行
(
ゆ
)
くと
麝香
(
じやかう
)
の
匂
(
にほ
)
ひがして
鼻
(
はな
)
が
曲
(
まが
)
るとか
云
(
い
)
つて、
293
ワイワイ
仰有
(
おつしや
)
るものだから、
294
遠慮
(
ゑんりよ
)
して
此処
(
ここ
)
に
夜伽
(
よとぎ
)
をして
居
(
を
)
りますのですよ』
295
文助
(
ぶんすけ
)
『アーそれはどうも
仕方
(
しかた
)
がない。
296
それなら
成
(
な
)
る
可
(
べ
)
くおとなしうしてゐて
下
(
くだ
)
さい。
297
受付
(
うけつけ
)
までお
前
(
まへ
)
さま
等
(
ら
)
の
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
が
筒
(
つつ
)
ぬけ
になつて、
298
寝
(
ね
)
られなくつて
困
(
こま
)
るからなア。
299
私
(
わたし
)
は
朝
(
あさ
)
早
(
はや
)
うから
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
れ
一杯
(
いつぱい
)
まで
受付
(
うけつけ
)
の
御用
(
ごよう
)
を
勤
(
つと
)
めねばならぬのだから、
300
何卒
(
どうぞ
)
静
(
しづ
)
かにして
下
(
くだ
)
さい』
301
初公
(
はつこう
)
『ハイ
畏
(
かしこ
)
まりました、
302
左様
(
さやう
)
なら』
303
(
大正一一・一二・一五
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