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第66巻(巳の巻)
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第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
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第46巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 仕組の縺糸
01 榛並樹
〔1211〕
02 慰労会
〔1212〕
03 噛言
〔1213〕
04 沸騰
〔1214〕
05 菊の薫
〔1215〕
06 千代心
〔1216〕
07 妻難
〔1217〕
第2篇 狐運怪会
08 黒狐
〔1218〕
09 文明
〔1219〕
10 唖狐外れ
〔1220〕
11 変化神
〔1221〕
12 怪段
〔1222〕
13 通夜話
〔1223〕
第3篇 神明照赫
14 打合せ
〔1224〕
15 黎明
〔1225〕
16 想曖
〔1226〕
17 惟神の道
〔1227〕
18 エンゼル
〔1228〕
第4篇 謎の黄板
19 怪しの森
〔1229〕
20 金の力
〔1230〕
21 民の虎声
〔1231〕
22 五三嵐
〔1232〕
23 黄金華
〔1233〕
余白歌
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第一六章
想曖
(
おもひあひ
)
〔一二二六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第46巻 舎身活躍 酉の巻
篇:
第3篇 神明照赫
よみ(新仮名遣い):
しんめいしょうかく
章:
第16章 想曖
よみ(新仮名遣い):
おもいあい
通し章番号:
1226
口述日:
1922(大正11)年12月16日(旧10月28日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年9月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
お寅は小北山開設以来打って変った活き活きした顔をしながら、身も軽く箒や払いを持って室内の掃除に余念がなかった。そこへ寒そうに袖に手を入れ、失望落胆の極に達した魔我彦が淋しい容貌で入ってきた。
お寅は魔我彦を見て、神を理解せよと諭し、一個の罪人となって謙譲の徳を心につちかい養えば、たちまち天国が開けると説いた。
魔我彦はあくまで、お寅がそんなに元気になったのは蠑螈別と密かに会って、大金を手に入れる約束をしたからだろうと勘繰り、こうなったのも三五教の曲津神が善の仮面をかぶって小北山にやってきたからだとののしった。
魔我彦はあくまで、煩悶苦悩の淵に身を置くことこそ、永遠無窮の歓喜の園を開くのだ、万民を救うために苦悩することに意味があるのだと言い張る。
お寅は自分自身が不幸悲哀の淵に沈んでいて、どうして人が救えるのかと問い、自己を救い了解した上で初めて世を救い道を伝える完全な神力が備わるのだと説いた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-03-16 20:03:12
OBC :
rm4616
愛善世界社版:
202頁
八幡書店版:
第8輯 430頁
修補版:
校定版:
213頁
普及版:
81頁
初版:
ページ備考:
001
お
寅婆
(
とらばあ
)
さまは
小北山
(
こぎたやま
)
開設
(
かいせつ
)
以来
(
いらい
)
の
打
(
う
)
つて
変
(
かは
)
つた
活々
(
いきいき
)
とした
水々
(
みづみづ
)
しい
顔
(
かほ
)
をしながら、
002
身
(
み
)
も
軽々
(
かるがる
)
しく、
003
棕櫚箒
(
しゆろばうき
)
や
采払
(
さいはらひ
)
を
持
(
も
)
ちて、
004
パタパタパタパタ、
005
スースースーと
心
(
こころ
)
の
清潔法
(
せいけつはふ
)
をすませ、
006
室内
(
しつない
)
の
掃除
(
さうぢ
)
に
余念
(
よねん
)
なかつた。
007
そこへ
寒
(
さむ
)
さうに
筒袖
(
つつそで
)
の
中
(
なか
)
へ
手
(
て
)
を
入
(
い
)
れて、
008
フーフーと
冷
(
つめ
)
たい
空気
(
くうき
)
を
吹
(
ふ
)
きながらやつて
来
(
き
)
たのは
魔我彦
(
まがひこ
)
であつた。
009
殆
(
ほとん
)
ど
失望
(
しつばう
)
落胆
(
らくたん
)
の
極
(
きよく
)
に
達
(
たつ
)
し、
010
地獄
(
ぢごく
)
の
底
(
そこ
)
から
捕手
(
とりて
)
の
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たやうな、
011
えも
言
(
い
)
はれぬ
淋
(
さび
)
しい
容貌
(
ようばう
)
を
曝
(
さら
)
け
出
(
だ
)
して
入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
た。
012
お
寅
(
とら
)
『
魔我彦
(
まがひこ
)
さま、
013
一寸
(
ちよつと
)
鏡
(
かがみ
)
を
見
(
み
)
て
御覧
(
ごらん
)
、
014
お
前
(
まへ
)
の
顔
(
かほ
)
は
年
(
とし
)
の
若
(
わか
)
いにも
似
(
に
)
ず
八十爺
(
はちじふぢい
)
さまのやうな
萎
(
しな
)
びやうだよ。
015
チツト
心
(
こころ
)
の
持方
(
もちかた
)
を
変
(
か
)
へなくちや
駄目
(
だめ
)
ですよ』
016
魔我
(
まが
)
『
余
(
あま
)
り
馬鹿
(
ばか
)
らしくて、
017
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
淋
(
さび
)
しくなり、
018
何
(
なん
)
とはなしに
不平
(
ふへい
)
の
雲
(
くも
)
が
襲
(
おそ
)
つて
来
(
き
)
て、
019
地
(
ち
)
の
上
(
うへ
)
に
身
(
み
)
をおく
所
(
ところ
)
もない
様
(
やう
)
な
思
(
おも
)
ひが
致
(
いた
)
します。
020
それにお
寅
(
とら
)
さま、
021
貴女
(
あなた
)
は
今日
(
けふ
)
に
限
(
かぎ
)
つて、
022
大変
(
たいへん
)
水々
(
みづみづ
)
しい
愉快
(
ゆくわい
)
さうな
顔
(
かほ
)
をしてゐるぢやありませぬか。
023
○○
博士
(
はかせ
)
の
若返
(
わかがへ
)
り
法
(
はふ
)
でも
研究
(
けんきう
)
なさつたのですか。
024
但
(
ただ
)
しはニコニコ
雑誌
(
ざつし
)
でも
耽読
(
たんどく
)
されたのですか。
025
大変
(
たいへん
)
な
変
(
かは
)
り
様
(
やう
)
ですワ』
026
お寅
『ニコニコ
雑誌
(
ざつし
)
や
若返
(
わかがへ
)
り
法
(
はふ
)
位
(
ぐらゐ
)
で、
027
さう
俄
(
にはか
)
に
元気
(
げんき
)
が
出
(
で
)
るものですか。
028
そんな
人間
(
にんげん
)
の
頭脳
(
づなう
)
から
捻
(
ひね
)
り
出
(
だ
)
した
厄雑物
(
やくざもの
)
で、
029
何
(
ど
)
うしてこんな
愉快
(
ゆくわい
)
な
気分
(
きぶん
)
になれるものですか』
030
魔我彦
『それなら
何
(
ど
)
うすればよいのです。
031
何
(
なん
)
だかそこら
中
(
ぢう
)
がウヂウヂして
来
(
き
)
て、
032
冬
(
ふゆ
)
の
冷
(
つめ
)
たい
日
(
ひ
)
に
雪隠
(
せつちん
)
の
中
(
なか
)
へ
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
まれたやうな、
033
クソ
面白
(
おもしろ
)
くもない
空気
(
くうき
)
に
襲
(
おそ
)
はれて
仕方
(
しかた
)
がありませぬ』
034
お寅
『お
前
(
まへ
)
さまは
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
して、
035
真
(
しん
)
の
理解
(
りかい
)
がないからだ。
036
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
さへ
理解
(
りかい
)
すれば、
037
すぐに
私
(
わたし
)
のやうに、
038
地獄
(
ぢごく
)
は
忽
(
たちま
)
ち
化
(
くわ
)
して
天国
(
てんごく
)
の
境域
(
きやうゐき
)
に
進
(
すす
)
むことが
出来
(
でき
)
るのだよ』
039
魔我彦
『
神
(
かみ
)
を
理解
(
りかい
)
せよと
云
(
い
)
つたつて、
040
人間
(
にんげん
)
の
知慧
(
ちゑ
)
には
限
(
かぎ
)
りがあります。
041
これだけウラナイの
尊
(
たふと
)
き
教
(
をしへ
)
を
信
(
しん
)
じ
神々
(
かみがみ
)
様
(
さま
)
を
念
(
ねん
)
じながら、
042
狐
(
きつね
)
につままれて
馬鹿
(
ばか
)
を
見
(
み
)
せられるのだから、
043
私
(
わたし
)
は
神
(
かみ
)
の
存在
(
そんざい
)
を
疑
(
うたが
)
ひます』
044
お寅
『
神
(
かみ
)
の
存在
(
そんざい
)
を
認
(
みと
)
めず、
045
神
(
かみ
)
の
救
(
すく
)
ひを
忘
(
わす
)
れた
時
(
とき
)
は
心身
(
しんしん
)
共
(
とも
)
に
衰耗
(
すゐもう
)
廃絶
(
はいぜつ
)
するものだ。
046
そして
神
(
かみ
)
の
愛
(
あい
)
と
神
(
かみ
)
の
信
(
しん
)
とに
直接
(
ちよくせつ
)
触
(
ふ
)
れ、
047
真
(
しん
)
に
理解
(
りかい
)
した
時
(
とき
)
は
忽
(
たちま
)
ち
歓喜
(
くわんき
)
の
夕立
(
ゆふだち
)
、
048
吾
(
わが
)
全身
(
ぜんしん
)
を
浸
(
ひた
)
し、
049
霊肉
(
れいにく
)
共
(
とも
)
に
不老
(
ふらう
)
不死
(
ふし
)
的
(
てき
)
に
栄
(
さか
)
えるものだ。
050
併
(
しか
)
しながらヘグレ
神社
(
じんしや
)
や
種物
(
たねもの
)
神社
(
じんしや
)
では
駄目
(
だめ
)
ですよ。
051
お
前
(
まへ
)
さまもよい
加減
(
かげん
)
に、
052
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
雅号
(
ががう
)
を
返上
(
へんじやう
)
しなさい、
053
そして
一個
(
いつこ
)
の
罪人
(
つみびと
)
とおなりなさい。
054
卑
(
いや
)
しき
一個
(
いつこ
)
の
下僕
(
しもべ
)
となり、
055
乞食
(
こじき
)
の
靴
(
くつ
)
を
取
(
と
)
る
謙譲
(
けんじやう
)
の
徳
(
とく
)
を
心
(
こころ
)
の
畠
(
はたけ
)
に
培
(
つちか
)
ひ
養
(
やしな
)
ひさへすれば、
056
忽
(
たちま
)
ち
天国
(
てんごく
)
は
開
(
ひら
)
けますよ』
057
魔我彦
『それだと
云
(
い
)
つて、
058
今
(
いま
)
まで
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
信仰
(
しんかう
)
して
来
(
き
)
たユラリ
彦様
(
ひこさま
)
やヘグレ
神社
(
じんじや
)
、
059
種物
(
たねもの
)
神社
(
じんじや
)
、
060
大門
(
おほもん
)
神社
(
じんしや
)
の
神々
(
かみがみ
)
様
(
さま
)
を
捨
(
す
)
てる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
061
さうクレクレと
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
空
(
そら
)
の
様
(
やう
)
に
変
(
かは
)
つては、
062
誠
(
まこと
)
が
貫
(
つらぬ
)
けますまい』
063
お寅
『お
前
(
まへ
)
さまは
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
仁慈
(
じんじ
)
を
有難
(
ありがた
)
く
思
(
おも
)
ひませぬか。
064
救世主
(
きうせいしゆ
)
だといふ
事
(
こと
)
が
理解
(
りかい
)
されませぬか』
065
魔我彦
『
何処迄
(
どこまで
)
も
私
(
わたし
)
は
信
(
しん
)
じられませぬ。
066
お
寅
(
とら
)
さま、
067
よく
考
(
かんが
)
へてごらん、
068
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
を
信
(
しん
)
ずるのならば、
069
別
(
べつ
)
にウラナイ
教
(
けう
)
を
立
(
た
)
てたり、
070
小北山
(
こぎたやま
)
の
神殿
(
しんでん
)
を
造営
(
ざうえい
)
し、
071
一派
(
いつぱ
)
を
立
(
た
)
てる
必要
(
ひつえう
)
はないぢやありませぬか』
072
お寅
『そこが
改心
(
かいしん
)
といふものだ。
073
間違
(
まちが
)
つて
居
(
を
)
つたといふことが
分
(
わか
)
れば、
074
直様
(
すぐさま
)
改
(
あらた
)
めるのが
人間
(
にんげん
)
の
務
(
つと
)
めだ。
075
何程
(
なにほど
)
魔我彦
(
まがひこ
)
さまが
神力
(
しんりき
)
が
強
(
つよ
)
うても、
076
荒金
(
あらがね
)
の
土
(
つち
)
を
主管
(
しゆくわん
)
し
給
(
たま
)
ふ
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
に
比
(
くら
)
べては
大海
(
たいかい
)
の
一滴
(
いつてき
)
、
077
どうして
比較
(
ひかく
)
になりませう。
078
チツと
胸
(
むね
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
てて
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へなさい』
079
魔我彦
『お
寅
(
とら
)
さま、
080
貴女
(
あなた
)
はさう
生々
(
いきいき
)
として
元気
(
げんき
)
さうに
言
(
い
)
つてゐるのは、
081
要
(
えう
)
するに
三万
(
さんまん
)
両
(
りやう
)
のお
土産
(
みやげ
)
を
蠑螈別
(
いもりわけ
)
から
貰
(
もら
)
つたからだらう』
082
お寅
『エヽあた
汚
(
きたな
)
い、
083
お
前
(
まへ
)
さまはそれだから
苦
(
くるし
)
むのだ。
084
吾
(
われ
)
と
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
に
造
(
つく
)
つた
鬼
(
おに
)
に
責
(
せ
)
められてゐるのだよ。
085
物質
(
ぶつしつ
)
的
(
てき
)
の
欲望
(
よくばう
)
なんか
物
(
もの
)
の
数
(
かず
)
でもありませぬワ。
086
それよりも、
087
モツトモツト
尊
(
たふと
)
い
宝
(
たから
)
が、
088
そこら
中
(
ぢう
)
にブラついてゐることをお
悟
(
さと
)
りなさい。
089
夢
(
ゆめ
)
の
中
(
なか
)
で
貰
(
もら
)
つた
三万
(
さんまん
)
両
(
りやう
)
は、
090
物質
(
ぶつしつ
)
的
(
てき
)
の
宝
(
たから
)
としては
使
(
つか
)
へばなくなるものだ。
091
仮令
(
たとへ
)
それが
現実
(
げんじつ
)
の
黄金
(
わうごん
)
にした
所
(
ところ
)
で、
092
一
(
ひと
)
つお
宮
(
みや
)
を
建
(
た
)
てたら、
093
それで
仕舞
(
しまひ
)
ぢやないか。
094
何程
(
なにほど
)
使
(
つか
)
つても
使
(
つか
)
ひ
切
(
き
)
れぬ、
095
使
(
つか
)
へば
使
(
つか
)
ふ
程
(
ほど
)
殖
(
ふ
)
える
無限
(
むげん
)
の
宝
(
たから
)
がおちてゐるのだよ。
096
それを
拾
(
ひろ
)
ふのが
神
(
かみ
)
を
信仰
(
しんかう
)
する
者
(
もの
)
の
余徳
(
よとく
)
だ。
097
その
尊
(
たふと
)
い
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
余光
(
よくわう
)
を
毎日
(
まいにち
)
日日
(
ひにち
)
ふみつけてゐるのだから、
098
駄目
(
だめ
)
だよ。
099
お
金
(
かね
)
で
譬
(
たと
)
へたら、
100
幾
(
いく
)
十万億
(
じふまんおく
)
両
(
りやう
)
とも
知
(
し
)
れぬお
宝
(
たから
)
を、
101
私
(
わたし
)
は
頂戴
(
ちやうだい
)
したのだ、
102
つまり
世界一
(
せかいいち
)
の
富者
(
ふうしや
)
になつたのだ。
103
それだから
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
若
(
わか
)
やいで
活々
(
いきいき
)
としてゐるのだよ』
104
魔我彦
『お
寅
(
とら
)
さま、
105
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
阿呆
(
あはう
)
と
気違
(
きちがひ
)
位
(
ぐらゐ
)
幸福
(
かうふく
)
な
者
(
もの
)
はありませぬネ。
106
お
前
(
まへ
)
さまは
夜前
(
やぜん
)
狐
(
きつね
)
につままれて、
107
三万
(
さんまん
)
両
(
りやう
)
の
金
(
かね
)
を
貰
(
もら
)
つたのでせう。
108
そして
蠑螈別
(
いもりわけ
)
さまとしつぽり
会
(
あ
)
つたのでせう。
109
それから
二世
(
にせ
)
も
三世
(
さんぜ
)
もといふお
目出度
(
めでた
)
い
情約
(
じようやく
)
を
締結
(
ていけつ
)
し、
110
批准
(
ひじゆん
)
交換
(
かうくわん
)
がすんだと
思
(
おも
)
つて
喜
(
よろこ
)
んでゐるのでせう。
111
そんな
泡沫
(
はうまつ
)
に
等
(
ひと
)
しき
喜
(
よろこ
)
びは、
112
霧
(
きり
)
の
如
(
ごと
)
く
煙
(
けむり
)
の
如
(
ごと
)
く、
113
瞬
(
またた
)
く
間
(
うち
)
に
消滅
(
せうめつ
)
して
了
(
しま
)
ひますよ。
114
其
(
その
)
時
(
とき
)
にアフンとせないやうになさいませや』
115
お寅
『お
前
(
まへ
)
も
狐
(
きつね
)
に
騙
(
だま
)
され、
116
お
民
(
たみ
)
さまと
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つて、
117
二十万
(
にじふまん
)
両
(
りやう
)
の
持参金
(
ぢさんきん
)
と
共
(
とも
)
に
小北山
(
こぎたやま
)
の
教祖
(
けうそ
)
になると
云
(
い
)
つて、
118
顎
(
あご
)
まで
外
(
はづ
)
して
居
(
を
)
つたぢやないか。
119
なぜそんな
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
つたのか、
120
分
(
わか
)
つてゐますか』
121
魔我彦
『
三五教
(
あななひけう
)
の
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
が
善
(
ぜん
)
の
仮面
(
かめん
)
を
被
(
かぶ
)
り、
122
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
もやつて
来
(
き
)
やがつて、
123
いろいろと
奇怪
(
きくわい
)
な
事
(
こと
)
ばかり
致
(
いた
)
し
此
(
この
)
聖場
(
せいぢやう
)
を
蹂躙
(
じうりん
)
せむとして
居
(
ゐ
)
るのですよ。
124
私
(
わたし
)
は
昨日
(
きのふ
)
の
事
(
こと
)
からスツカリ
目
(
め
)
が
覚
(
さ
)
めました。
125
お
前
(
まへ
)
さまはまだ
年
(
とし
)
がよつて
居
(
ゐ
)
るので、
126
精神
(
せいしん
)
上
(
じやう
)
の
欠陥
(
けつかん
)
がヒドイと
見
(
み
)
えて、
127
依然
(
いぜん
)
として
狐
(
きつね
)
につままれ、
128
糞壺
(
くそつぼ
)
へ
投込
(
なげこ
)
まれて
結構
(
けつこう
)
な
温泉
(
をんせん
)
へ
入
(
はい
)
つたと
思
(
おも
)
ひ、
129
牛糞
(
うしぐそ
)
や
馬糞
(
うまぐそ
)
をつきつけられて
結構
(
けつこう
)
な
牡丹餅
(
ぼたもち
)
と
信
(
しん
)
じ、
130
瓦
(
かはら
)
かけを
持
(
も
)
たされて
三万
(
さんまん
)
両
(
りやう
)
の
黄金
(
わうごん
)
だと
思
(
おも
)
つてゐるのだから、
131
本当
(
ほんたう
)
にお
目出度
(
めでた
)
いものだ。
132
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
、
133
お
前
(
まへ
)
さまのやうに
無知識
(
むちしき
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
たら、
134
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
夢現
(
ゆめうつつ
)
で
喜
(
よろこ
)
んで
暮
(
くら
)
せるのだけれど、
135
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
知識
(
ちしき
)
の
光
(
ひかり
)
が
強
(
つよ
)
いものだから、
136
お
前
(
まへ
)
さまのやうな
気
(
き
)
にはなれませぬワイ。
137
鑑別
(
かんべつ
)
だとか、
138
認識
(
にんしき
)
だとか、
139
肯定
(
こうてい
)
だとか、
140
否定
(
ひてい
)
だとか、
141
いろいろの
什器
(
じふき
)
が
心
(
こころ
)
の
宝庫
(
はうこ
)
に
充実
(
じうじつ
)
してるのだから、
142
私
(
わたし
)
の
悲痛
(
ひつう
)
な
思
(
おも
)
ひは、
143
要
(
えう
)
するに
将来
(
しやうらい
)
の
歓喜
(
くわんき
)
の
源泉
(
げんせん
)
となるものだ。
144
お
前
(
まへ
)
さまの
歓喜
(
くわんき
)
は、
145
丁度
(
ちやうど
)
阿片
(
あへん
)
煙草
(
たばこ
)
に
熟睡
(
じゆくすい
)
して
世事
(
せじ
)
万端
(
ばんたん
)
を
忘
(
わす
)
れ、
146
夢
(
ゆめ
)
の
世界
(
せかい
)
に
逍遥
(
せうえう
)
し
恍惚
(
くわうこつ
)
とし
霊肉
(
れいにく
)
を
蕩
(
とろ
)
かしてるやうなものだ。
147
丁度
(
ちやうど
)
田螺
(
たにし
)
の
母親
(
ははおや
)
が、
148
自分
(
じぶん
)
の
生
(
う
)
んだ
沢山
(
たくさん
)
な
子
(
こ
)
に、
149
体
(
からだ
)
を
餌食
(
ゑじき
)
にされ、
150
いつとはなしになめ
尽
(
つく
)
されて、
151
愉快
(
ゆくわい
)
な
気
(
き
)
になつてゐる
間
(
うち
)
に、
152
自分
(
じぶん
)
の
肉体
(
にくたい
)
をスツカリ
食
(
く
)
ひ
殺
(
ころ
)
されてる
様
(
やう
)
な
愉快
(
ゆくわい
)
さだ。
153
コレ
寅
(
とら
)
さま、
154
チツト
気
(
き
)
をつけないと
駄目
(
だめ
)
ですよ。
155
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
悪御霊
(
あくみたま
)
が、
156
全力
(
ぜんりよく
)
をあげて
小北山
(
こぎたやま
)
を
滅亡
(
めつぼう
)
せしめむとして
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
の
画策
(
くわくさく
)
をめぐらしてゐるのだからなア。
157
灯台
(
とうだい
)
下暗
(
もとくら
)
しと
云
(
い
)
ふからは、
158
中々
(
なかなか
)
油断
(
ゆだん
)
がなりませぬぞ。
159
お
前
(
まへ
)
さまがそんな
心
(
こころ
)
で、
160
何
(
ど
)
うして
此
(
この
)
小北山
(
こぎたやま
)
の
本山
(
ほんざん
)
が
立
(
た
)
つて
行
(
ゆ
)
きますか。
161
チツトしつかりして
貰
(
もら
)
はないと、
162
淋
(
さび
)
しくてたまらぬぢやありませぬか』
163
お寅
『あゝ
困
(
こま
)
つた
男
(
をとこ
)
だなア、
164
これ
程
(
ほど
)
言
(
い
)
つても
目
(
め
)
が
覚
(
さ
)
めぬのかなア』
165
魔我彦
『あゝ
困
(
こま
)
つた
婆
(
ば
)
アさまだなア、
166
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
思想
(
しさう
)
が
単純
(
たんじゆん
)
だから、
167
私
(
わたし
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が、
168
充分
(
じうぶん
)
魂
(
みたま
)
に
沁
(
し
)
み
込
(
こ
)
まないと
見
(
み
)
えるワイ。
169
女子
(
ぢよし
)
と
小人
(
せうにん
)
は
養
(
やしな
)
ひ
難
(
がた
)
しとは、
170
あゝよく
言
(
い
)
つたものだ』
171
お寅
『
本当
(
ほんたう
)
にお
前
(
まへ
)
と
私
(
わたし
)
と
斯
(
か
)
うして
寝食
(
しんしよく
)
を
共
(
とも
)
にし、
172
口
(
くち
)
の
中
(
なか
)
に
入
(
い
)
れたものでも
食
(
く
)
ひ
合
(
あ
)
ふやうにしてゐる
親
(
した
)
しい
近
(
ちか
)
い
仲
(
なか
)
でも、
173
心
(
こころ
)
は
千
(
せん
)
里
(
り
)
の
距離
(
きより
)
があるのだから、
174
どうしても
容易
(
ようい
)
にバツが
合
(
あ
)
はないのだ。
175
これ
魔我彦
(
まがひこ
)
さま、
176
一
(
ひと
)
つ
直日
(
なほひ
)
の
霊
(
みたま
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し、
177
省
(
かへり
)
みたら
何
(
ど
)
うだい』
178
魔我彦
『あゝお
寅
(
とら
)
さまは、
179
たうとう
地獄
(
ぢごく
)
の
底
(
そこ
)
へ
落
(
お
)
ちて
了
(
しま
)
つたのだなア、
180
本当
(
ほんたう
)
に
可哀
(
かあい
)
さうだ。
181
世界
(
せかい
)
の
人民
(
じんみん
)
も
救
(
すく
)
うてやらねばならないが、
182
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
のお
寅
(
とら
)
さまから
救
(
すく
)
ひ
助
(
たす
)
けておかねば、
183
到底
(
たうてい
)
万民
(
ばんみん
)
を
助
(
たす
)
ける
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない、
184
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
になつて
来
(
き
)
たワイ』
185
お寅
『
魔我彦
(
まがひこ
)
さま、
186
お
前
(
まへ
)
は
救
(
すく
)
はれてゐる
積
(
つもり
)
かい。
187
貴方
(
あなた
)
御
(
ご
)
自身
(
じしん
)
が
真
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
愛
(
あい
)
にふれ、
188
真
(
まこと
)
の
信仰
(
しんかう
)
に
接
(
せつ
)
し、
189
真
(
しん
)
の
神
(
かみ
)
を
理解
(
りかい
)
することが
出来
(
でき
)
て、
190
お
前
(
まへ
)
の
魂
(
みたま
)
も
肉体
(
にくたい
)
も
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
の
歓喜
(
くわんき
)
を
味
(
あぢ
)
はふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ましたか。
191
それから
一
(
ひと
)
つ
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
ひたい』
192
魔我彦
『
始
(
はじめ
)
から
何事
(
なにごと
)
も
都合
(
つがふ
)
よく
行
(
ゆ
)
くものぢやない、
193
私
(
わたし
)
は
今
(
いま
)
煩悶
(
はんもん
)
苦悩
(
くなう
)
の
最中
(
さいちう
)
だよ。
194
本当
(
ほんたう
)
に
此
(
この
)
世
(
よ
)
が
厭
(
いや
)
になることが
幾度
(
いくたび
)
あるか
知
(
し
)
れない。
195
そこを
耐
(
こら
)
へ
忍
(
しの
)
んで
行
(
ゆ
)
きさへすれば、
196
所謂
(
いはゆる
)
天国
(
てんごく
)
の
門
(
もん
)
が
開
(
ひら
)
かれるのだ。
197
人間
(
にんげん
)
は
悲境
(
ひきやう
)
のドン
底
(
ぞこ
)
に
沈
(
しづ
)
んだ
時
(
とき
)
に
於
(
おい
)
て
始
(
はじ
)
めて
幸
(
さいはひ
)
の
種
(
たね
)
を
蒔
(
ま
)
くものだ。
198
幸
(
さいはひ
)
の
時
(
とき
)
、
199
得意
(
とくい
)
満面
(
まんめん
)
の
時
(
とき
)
に
却
(
かへ
)
つて
地獄
(
ぢごく
)
の
種
(
たね
)
を
蒔
(
ま
)
いてゐるのだ。
200
お
前
(
まへ
)
は
曲神
(
まがかみ
)
に
誑惑
(
きやうわく
)
されて
地獄
(
ぢごく
)
に
落
(
お
)
ちながら、
201
まだ
目
(
め
)
が
覚
(
さ
)
めないのだよ、
202
本当
(
ほんたう
)
に
可哀
(
かあい
)
さうなものだなア。
203
此
(
この
)
魔我彦
(
まがひこ
)
は
今
(
いま
)
や
天国
(
てんごく
)
の
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
かむとする
首途
(
かどで
)
にあるのだ。
204
よい
後
(
あと
)
は
悪
(
わる
)
い、
205
悪
(
わる
)
い
後
(
あと
)
はよいと
云
(
い
)
つてなア、
206
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
に
苦
(
くるし
)
みをしておけば、
207
永遠
(
ゑいゑん
)
無窮
(
むきう
)
の
歓喜
(
くわんき
)
の
園
(
その
)
を
開
(
ひら
)
く
事
(
こと
)
になるのだ。
208
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
……どうぞお
寅
(
とら
)
さまの
曇
(
くも
)
り
切
(
き
)
つた
魂
(
みたま
)
が
豁然
(
くわつぜん
)
として
開
(
ひら
)
けますやう、
209
魔我彦
(
まがひこ
)
がお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します。
210
ユラリ
彦
(
ひこ
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
211
五六七
(
みろく
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
……』
212
お寅
『コレ
魔我
(
まが
)
さま、
213
ユラリ
彦
(
ひこ
)
さまも、
214
ヘグレ
神社
(
じんじや
)
さまも、
215
モウ
言
(
い
)
つておくれな、
216
私
(
わたし
)
は
本当
(
ほんたう
)
の
信仰
(
しんかう
)
を
握
(
にぎ
)
つたのだから。
217
よく
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい。
218
人間
(
にんげん
)
は
永遠
(
ゑいゑん
)
無窮
(
むきう
)
に
生
(
い
)
き
通
(
とほ
)
しだよ。
219
僅
(
わづ
)
か
二百
(
にひやく
)
年
(
ねん
)
や
三百
(
さんびやく
)
年
(
ねん
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
受得
(
じゆとく
)
する
為
(
ため
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
たのではない。
220
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
に
於
(
おい
)
て
永遠
(
ゑいゑん
)
無窮
(
むきう
)
に
繁
(
しげ
)
り
栄
(
さか
)
え、
221
天国
(
てんごく
)
の
御用
(
ごよう
)
をする
為
(
ため
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
たのだ。
222
吾々
(
われわれ
)
の
意志
(
いし
)
も
観念
(
くわんねん
)
も
記憶
(
きおく
)
も
正
(
ただ
)
しい
知識
(
ちしき
)
も
一切
(
いつさい
)
残
(
のこ
)
らず
高天原
(
たかあまはら
)
の
天国
(
てんごく
)
へ
此
(
この
)
儘
(
まま
)
留存
(
りうぞん
)
して
行
(
ゆ
)
くのだから、
223
現肉体
(
げんにくたい
)
のある
間
(
うち
)
に
歓喜
(
くわんき
)
の
雨
(
あめ
)
にぬれ、
224
此
(
この
)
身
(
み
)
此
(
この
)
儘
(
まま
)
天国
(
てんごく
)
の
住民
(
ぢゆうみん
)
となつておかねば、
225
どうして
死後
(
しご
)
の
生涯
(
しやうがい
)
が
楽
(
たの
)
しく
送
(
おく
)
れませうか。
226
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
神
(
かみ
)
の
造
(
つく
)
り
給
(
たま
)
うたものだから
悩
(
なや
)
み
苦
(
くるし
)
みなどのあるべき
筈
(
はず
)
がない。
227
豁然
(
くわつぜん
)
として
神
(
かみ
)
の
真
(
まこと
)
の
愛
(
あい
)
にふれ、
228
真
(
まこと
)
の
知慧
(
ちゑ
)
にふれ、
229
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
理解
(
りかい
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
たならば、
230
此
(
この
)
世
(
よ
)
此
(
この
)
儘
(
まま
)
最上
(
さいじやう
)
天国
(
てんごく
)
だよ。
231
悲痛
(
ひつう
)
な
思
(
おも
)
ひをしたり
些々
(
ささ
)
たる
欲望
(
よくばう
)
に
心
(
こころ
)
を
悩
(
なや
)
めてゐるのは、
232
所謂
(
いはゆる
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
からなる
地獄道
(
ぢごくだう
)
に
陥没
(
かんぼつ
)
してゐるのだ。
233
お
前
(
まへ
)
さまは
小智
(
せうち
)
小欲
(
せうよく
)
が
勝
(
か
)
つてゐるから、
234
自
(
みづか
)
ら
造
(
つく
)
つた
地獄
(
ぢごく
)
へ
落
(
お
)
ち、
235
自
(
みづか
)
ら
築
(
きづ
)
いた
牢獄
(
らうごく
)
に
呻吟
(
しんぎん
)
してゐるのだ。
236
一
(
いち
)
日
(
にち
)
でも
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
於
(
おい
)
て
歓喜
(
くわんき
)
と
感謝
(
かんしや
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
け、
237
仮令
(
たとへ
)
一息
(
ひといき
)
の
間
(
ま
)
も
悲観
(
ひくわん
)
などしちや
仁慈
(
じんじ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
へ
対
(
たい
)
して
大変
(
たいへん
)
な
罪
(
つみ
)
になりますぞや。
238
人
(
ひと
)
は
心
(
こころ
)
の
持様
(
もちやう
)
一
(
ひと
)
つだよ』
239
魔我彦
『それでも、
240
苦労
(
くらう
)
を
致
(
いた
)
せよ、
241
苦労
(
くらう
)
致
(
いた
)
さねば
誠
(
まこと
)
の
花
(
はな
)
は
咲
(
さ
)
かぬぞよ……と
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
仰有
(
おつしや
)
るぢやありませぬか。
242
世
(
よ
)
の
為
(
ため
)
、
243
人
(
ひと
)
の
為
(
ため
)
、
244
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
に
苦
(
くるし
)
み
且
(
か
)
つ
世
(
よ
)
を
悲
(
かな
)
しむのは
最善
(
さいぜん
)
の
人事
(
じんじ
)
ぢやありませぬか。
245
吾
(
わが
)
身
(
み
)
をすてて
万民
(
ばんみん
)
を
救
(
すく
)
ふといふ
事
(
こと
)
は
善事中
(
ぜんじちう
)
の
善事
(
ぜんじ
)
でせう。
246
それだから
私
(
わたし
)
は
何
(
ど
)
うなつてもいい、
247
人
(
ひと
)
さへ
助
(
たす
)
かれば、
248
それで
人間
(
にんげん
)
の
本分
(
ほんぶん
)
が
尽
(
つく
)
せるもの、
249
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
して
忠実
(
ちうじつ
)
な
御
(
ご
)
奉公
(
ほうこう
)
だと
確
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じてゐるのだ』
250
お寅
『ホツホヽヽヽ、
251
何
(
なん
)
と
分
(
わか
)
らぬ
男
(
をとこ
)
だこと、
252
どうにも
斯
(
か
)
うにも
助
(
たす
)
け
様
(
やう
)
がないワ。
253
お
前
(
まへ
)
さま、
254
自分
(
じぶん
)
が
不幸
(
ふかう
)
悲哀
(
ひあい
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
み、
255
涙
(
なみだ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
りながら、
256
どうして
人
(
ひと
)
が
救
(
すく
)
へると
思
(
おも
)
つてゐますか、
257
先
(
ま
)
づ
自己
(
じこ
)
を
救
(
すく
)
ひ、
258
自己
(
じこ
)
を
了解
(
れうかい
)
した
上
(
うへ
)
で、
259
始
(
はじ
)
めて
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ひ、
260
道
(
みち
)
を
伝
(
つた
)
ふる
完全
(
くわんぜん
)
な
神力
(
しんりき
)
が
備
(
そな
)
はるぢやありませぬか。
261
よう
考
(
かんが
)
へて
御覧
(
ごらん
)
なさい、
262
ここに
一人
(
ひとり
)
の
川
(
かは
)
はまりがある。
263
今
(
いま
)
已
(
すで
)
に
溺
(
おぼ
)
れ
死
(
し
)
せむとしてゐる
所
(
ところ
)
を
人
(
ひと
)
が
通
(
とほ
)
る、
264
モシ
其
(
その
)
人
(
ひと
)
が
盲
(
めくら
)
であつたならば、
265
救
(
すく
)
ひを
求
(
もと
)
むる
声
(
こゑ
)
は
聞
(
きこ
)
えても、
266
決
(
けつ
)
して
救
(
すく
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまい。
267
此
(
この
)
時
(
とき
)
には
水泳
(
すゐえい
)
に
達
(
たつ
)
した
人
(
ひと
)
で、
268
体
(
からだ
)
の
壮健
(
さうけん
)
な、
269
目
(
め
)
の
見
(
み
)
える
人間
(
にんげん
)
でなければ、
270
其
(
その
)
溺没者
(
できぼつしや
)
を
救
(
すく
)
ふといふ
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
不可能
(
ふかのう
)
でせう。
271
それだからお
前
(
まへ
)
さまも、
272
先
(
ま
)
づ
自己
(
じこ
)
を
強
(
つよ
)
くし、
273
自己
(
じこ
)
を
照
(
てら
)
し、
274
自己
(
じこ
)
の
神力
(
しんりき
)
を
十二分
(
じふにぶん
)
に
受
(
う
)
けなくてはなりませぬ。
275
神力
(
しんりき
)
さへ
備
(
そな
)
はらば、
276
自然
(
しぜん
)
に
歓喜
(
くわんき
)
の
悦楽
(
えつらく
)
が
吾
(
わが
)
身辺
(
しんぺん
)
を
襲
(
おそ
)
うて
来
(
く
)
るものだ。
277
私
(
わたし
)
も
夜前
(
やぜん
)
から
神
(
かみ
)
の
慈光
(
じくわう
)
に
照
(
てら
)
されて、
278
悲哀
(
ひあい
)
の
極
(
きよく
)
、
279
遂
(
つひ
)
に
歓楽境
(
くわんらくきやう
)
に
救
(
すく
)
はれたのだ。
280
どうぞして、
281
お
前
(
まへ
)
を
私
(
わたし
)
と
同
(
おな
)
じ
精神
(
せいしん
)
状態
(
じやうたい
)
に
救
(
すく
)
うてやりたいのだが、
282
余
(
あま
)
り
距離
(
きより
)
があるので、
283
可哀
(
かあい
)
さうながら
救
(
すく
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないのかな。
284
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
私
(
わたし
)
も
第一
(
だいいち
)
着手
(
ちやくしゆ
)
としてお
前
(
まへ
)
を
救
(
すく
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないやうで、
285
何
(
ど
)
うして
万民
(
ばんみん
)
を
救
(
すく
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
よう。
286
あゝ
私
(
わたし
)
は、
287
大変
(
たいへん
)
な
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
試験
(
しけん
)
をうけてるやうだ。
288
魔我彦
(
まがひこ
)
峠
(
たうげ
)
を
突破
(
とつぱ
)
するのは
中々
(
なかなか
)
容易
(
ようい
)
ぢやないワイ。
289
あゝ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
290
あなたの
御
(
ご
)
慈光
(
じくわう
)
に
依
(
よ
)
つて、
291
私
(
わたし
)
に
誠
(
まこと
)
の
光
(
ひかり
)
と
誠
(
まこと
)
の
愛
(
あい
)
をお
与
(
あた
)
へ
下
(
くだ
)
さいまして、
292
魔我彦
(
まがひこ
)
が
心
(
こころ
)
に
潜
(
ひそ
)
む
曲
(
まが
)
を
照
(
てら
)
し、
293
どうぞ
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
へ
霊肉
(
れいにく
)
共
(
とも
)
に
導
(
みちび
)
かして
下
(
くだ
)
さいませ。
294
偏
(
ひとへ
)
に
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
恩寵
(
おんちやう
)
を
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
申上
(
まをしあ
)
げ
奉
(
たてまつ
)
ります』
295
魔我彦
『あゝあ、
296
どうしても
駄目
(
だめ
)
だなア、
297
可哀
(
かあい
)
さうなものだ。
298
私
(
わたし
)
も
此
(
この
)
お
寅
(
とら
)
さまを
第一
(
だいいち
)
着手
(
ちやくしゆ
)
として
救
(
すく
)
はなくちや
到底
(
たうてい
)
万民
(
ばんみん
)
を
救
(
すく
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬであらう。
299
どうぞユラリ
彦
(
ひこ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
300
ヘグレ
神社
(
じんじや
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
301
あなたの
栄光
(
えいくわう
)
と
権威
(
けんゐ
)
と
慈愛
(
じあい
)
とに
依
(
よ
)
りまして、
302
可憐
(
かれん
)
なるお
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
アさま、
303
魔我彦
(
まがひこ
)
が
最
(
もつと
)
も
敬愛
(
けいあい
)
する
此
(
この
)
老婦人
(
らうふじん
)
の
心
(
こころ
)
に
一道
(
いちだう
)
の
光明
(
くわうみやう
)
を
与
(
あた
)
へ
下
(
くだ
)
さいまして、
304
あなたをよく
信
(
しん
)
じ、
305
あなたを
理解
(
りかい
)
し、
306
あなたの
愛
(
あい
)
を
徹底
(
てつてい
)
的
(
てき
)
に
悟
(
さと
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ますやうに、
307
特別
(
とくべつ
)
の
御
(
ご
)
恩寵
(
おんちやう
)
を
此
(
この
)
老婦人
(
らうふじん
)
の
上
(
うへ
)
に
垂
(
た
)
れさせ
給
(
たま
)
はむ
事
(
こと
)
を、
308
偏
(
ひとへ
)
に
希
(
こひねが
)
ひ
上
(
あ
)
げ
奉
(
たてまつ
)
ります。
309
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
、
310
末代
(
まつだい
)
日
(
ひ
)
の
王天
(
わうてん
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
311
五六七
(
みろく
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
312
旭
(
あさひ
)
の
豊栄昇
(
とよさかのぼ
)
り
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
313
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
、
314
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
様
(
さま
)
、
315
大将軍
(
だいしやうぐん
)
様
(
さま
)
、
316
常世姫
(
とこよひめ
)
様
(
さま
)
、
317
偏
(
ひとへ
)
にお
願
(
ねが
)
ひ
申上
(
まをしあ
)
げ
奉
(
たてまつ
)
ります』
318
お寅
『コレ
魔我彦
(
まがひこ
)
さま、
319
モウ
其
(
その
)
神名
(
しんめい
)
は
私
(
わたし
)
の
前
(
まへ
)
で
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さるなといふに、
320
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
人
(
ひと
)
だなア、
321
どしても
目
(
め
)
が
覚
(
さ
)
めぬのかいなア、
322
あゝ
何
(
ど
)
うしたらよからうぞ、
323
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
、
324
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
……』
325
魔我彦
『あゝ
何
(
ど
)
うしたら、
326
お
寅
(
とら
)
さまの
迷
(
まよ
)
ひを
解
(
と
)
く
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るだらう、
327
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
328
(
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