霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 想曖(おもひあひ)〔一二二六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第46巻 舎身活躍 酉の巻 篇:第3篇 神明照赫 よみ(新仮名遣い):しんめいしょうかく
章:第16章 想曖 よみ(新仮名遣い):おもいあい 通し章番号:1226
口述日:1922(大正11)年12月16日(旧10月28日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
お寅は小北山開設以来打って変った活き活きした顔をしながら、身も軽く箒や払いを持って室内の掃除に余念がなかった。そこへ寒そうに袖に手を入れ、失望落胆の極に達した魔我彦が淋しい容貌で入ってきた。
お寅は魔我彦を見て、神を理解せよと諭し、一個の罪人となって謙譲の徳を心につちかい養えば、たちまち天国が開けると説いた。
魔我彦はあくまで、お寅がそんなに元気になったのは蠑螈別と密かに会って、大金を手に入れる約束をしたからだろうと勘繰り、こうなったのも三五教の曲津神が善の仮面をかぶって小北山にやってきたからだとののしった。
魔我彦はあくまで、煩悶苦悩の淵に身を置くことこそ、永遠無窮の歓喜の園を開くのだ、万民を救うために苦悩することに意味があるのだと言い張る。
お寅は自分自身が不幸悲哀の淵に沈んでいて、どうして人が救えるのかと問い、自己を救い了解した上で初めて世を救い道を伝える完全な神力が備わるのだと説いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-03-16 20:03:12 OBC :rm4616
愛善世界社版:202頁 八幡書店版:第8輯 430頁 修補版: 校定版:213頁 普及版:81頁 初版: ページ備考:
001 お寅婆(とらばあ)さまは小北山(こぎたやま)開設(かいせつ)以来(いらい)()つて(かは)つた活々(いきいき)とした水々(みづみづ)しい(かほ)をしながら、002()軽々(かるがる)しく、003棕櫚箒(しゆろばうき)采払(さいはらひ)()ちて、004パタパタパタパタ、005スースースーと(こころ)清潔法(せいけつはふ)をすませ、006室内(しつない)掃除(さうぢ)余念(よねん)なかつた。007そこへ(さむ)さうに筒袖(つつそで)(なか)()()れて、008フーフーと(つめ)たい空気(くうき)()きながらやつて()たのは魔我彦(まがひこ)であつた。009(ほとん)失望(しつばう)落胆(らくたん)(きよく)(たつ)し、010地獄(ぢごく)(そこ)から捕手(とりて)()()たやうな、011えも()はれぬ(さび)しい容貌(ようばう)(さら)()して(はい)つて()た。
012(とら)魔我彦(まがひこ)さま、013一寸(ちよつと)(かがみ)()御覧(ごらん)014(まへ)(かほ)(とし)(わか)いにも()八十爺(はちじふぢい)さまのやうな(しな)びやうだよ。015チツト(こころ)持方(もちかた)()へなくちや駄目(だめ)ですよ』
016魔我(まが)(あま)馬鹿(ばか)らしくて、017()(なか)(さび)しくなり、018(なん)とはなしに不平(ふへい)(くも)(おそ)つて()て、019()(うへ)()をおく(ところ)もない(やう)(おも)ひが(いた)します。020それにお(とら)さま、021貴女(あなた)今日(けふ)(かぎ)つて、022大変(たいへん)水々(みづみづ)しい愉快(ゆくわい)さうな(かほ)をしてゐるぢやありませぬか。023○○博士(はかせ)若返(わかがへ)(はふ)でも研究(けんきう)なさつたのですか。024(ただ)しはニコニコ雑誌(ざつし)でも耽読(たんどく)されたのですか。025大変(たいへん)(かは)(やう)ですワ』
026お寅『ニコニコ雑誌(ざつし)若返(わかがへ)(はふ)(ぐらゐ)で、027さう(にはか)元気(げんき)()るものですか。028そんな人間(にんげん)頭脳(づなう)から(ひね)()した厄雑物(やくざもの)で、029()うしてこんな愉快(ゆくわい)気分(きぶん)になれるものですか』
030魔我彦『それなら()うすればよいのです。031(なん)だかそこら(ぢう)がウヂウヂして()て、032(ふゆ)(つめ)たい()雪隠(せつちん)(なか)()()まれたやうな、033クソ面白(おもしろ)くもない空気(くうき)(おそ)はれて仕方(しかた)がありませぬ』
034お寅『お(まへ)さまは(かみ)(さま)(たい)して、035(しん)理解(りかい)がないからだ。036(かみ)(さま)さへ理解(りかい)すれば、037すぐに(わたし)のやうに、038地獄(ぢごく)(たちま)(くわ)して天国(てんごく)境域(きやうゐき)(すす)むことが出来(でき)るのだよ』
039魔我彦(かみ)理解(りかい)せよと()つたつて、040人間(にんげん)知慧(ちゑ)には(かぎ)りがあります。041これだけウラナイの(たふと)(をしへ)(しん)神々(かみがみ)(さま)(ねん)じながら、042(きつね)につままれて馬鹿(ばか)()せられるのだから、043(わたし)(かみ)存在(そんざい)(うたが)ひます』
044お寅(かみ)存在(そんざい)(みと)めず、045(かみ)(すく)ひを(わす)れた(とき)心身(しんしん)(とも)衰耗(すゐもう)廃絶(はいぜつ)するものだ。046そして(かみ)(あい)(かみ)(しん)とに直接(ちよくせつ)()れ、047(しん)理解(りかい)した(とき)(たちま)歓喜(くわんき)夕立(ゆふだち)048(わが)全身(ぜんしん)(ひた)し、049霊肉(れいにく)(とも)不老(ふらう)不死(ふし)(てき)(さか)えるものだ。050(しか)しながらヘグレ神社(じんしや)種物(たねもの)神社(じんしや)では駄目(だめ)ですよ。051(まへ)さまもよい加減(かげん)に、052義理(ぎり)天上(てんじやう)()出神(でのかみ)雅号(ががう)返上(へんじやう)しなさい、053そして一個(いつこ)罪人(つみびと)とおなりなさい。054(いや)しき一個(いつこ)下僕(しもべ)となり、055乞食(こじき)(くつ)()謙譲(けんじやう)(とく)(こころ)(はたけ)(つちか)(やしな)ひさへすれば、056(たちま)天国(てんごく)(ひら)けますよ』
057魔我彦『それだと()つて、058(いま)まで一生(いつしやう)懸命(けんめい)信仰(しんかう)して()たユラリ彦様(ひこさま)やヘグレ神社(じんじや)059種物(たねもの)神社(じんじや)060大門(おほもん)神社(じんしや)神々(かみがみ)(さま)()てる(こと)出来(でき)ませぬ。061さうクレクレと(この)(ごろ)(そら)(やう)(かは)つては、062(まこと)(つらぬ)けますまい』
063お寅『お(まへ)さまは(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)(さま)()仁慈(じんじ)有難(ありがた)(おも)ひませぬか。064救世主(きうせいしゆ)だといふ(こと)理解(りかい)されませぬか』
065魔我彦何処迄(どこまで)(わたし)(しん)じられませぬ。066(とら)さま、067よく(かんが)へてごらん、068素盞嗚(すさのをの)(みこと)(しん)ずるのならば、069(べつ)にウラナイ(けう)()てたり、070小北山(こぎたやま)神殿(しんでん)造営(ざうえい)し、071一派(いつぱ)()てる必要(ひつえう)はないぢやありませぬか』
072お寅『そこが改心(かいしん)といふものだ。073間違(まちが)つて()つたといふことが(わか)れば、074直様(すぐさま)(あらた)めるのが人間(にんげん)(つと)めだ。075何程(なにほど)魔我彦(まがひこ)さまが神力(しんりき)(つよ)うても、076荒金(あらがね)(つち)主管(しゆくわん)(たま)(みづ)御霊(みたま)()神徳(しんとく)(くら)べては大海(たいかい)一滴(いつてき)077どうして比較(ひかく)になりませう。078チツと(むね)()()てて()(かんが)へなさい』
079魔我彦『お(とら)さま、080貴女(あなた)はさう生々(いきいき)として元気(げんき)さうに()つてゐるのは、081(えう)するに三万(さんまん)(りやう)のお土産(みやげ)蠑螈別(いもりわけ)から(もら)つたからだらう』
082お寅『エヽあた(きたな)い、083(まへ)さまはそれだから(くるし)むのだ。084(われ)(わが)(こころ)(つく)つた(おに)()められてゐるのだよ。085物質(ぶつしつ)(てき)欲望(よくばう)なんか(もの)(かず)でもありませぬワ。086それよりも、087モツトモツト(たふと)(たから)が、088そこら(ぢう)にブラついてゐることをお(さと)りなさい。089(ゆめ)(なか)(もら)つた三万(さんまん)(りやう)は、090物質(ぶつしつ)(てき)(たから)としては使(つか)へばなくなるものだ。091仮令(たとへ)それが現実(げんじつ)黄金(わうごん)にした(ところ)で、092(ひと)つお(みや)()てたら、093それで仕舞(しまひ)ぢやないか。094何程(なにほど)使(つか)つても使(つか)()れぬ、095使(つか)へば使(つか)(ほど)()える無限(むげん)(たから)がおちてゐるのだよ。096それを(ひろ)ふのが(かみ)信仰(しんかう)する(もの)余徳(よとく)だ。097その(たふと)(かみ)()余光(よくわう)毎日(まいにち)日日(ひにち)ふみつけてゐるのだから、098駄目(だめ)だよ。099(かね)(たと)へたら、100(いく)十万億(じふまんおく)(りやう)とも()れぬお(たから)を、101(わたし)頂戴(ちやうだい)したのだ、102つまり世界一(せかいいち)富者(ふうしや)になつたのだ。103それだから(この)(とほ)(わか)やいで活々(いきいき)としてゐるのだよ』
104魔我彦『お(とら)さま、105()(なか)阿呆(あはう)気違(きちがひ)(ぐらゐ)幸福(かうふく)(もの)はありませぬネ。106(まへ)さまは夜前(やぜん)(きつね)につままれて、107三万(さんまん)(りやう)(かね)(もら)つたのでせう。108そして蠑螈別(いもりわけ)さまとしつぽり()つたのでせう。109それから二世(にせ)三世(さんぜ)もといふお目出度(めでた)情約(じようやく)締結(ていけつ)し、110批准(ひじゆん)交換(かうくわん)がすんだと(おも)つて(よろこ)んでゐるのでせう。111そんな泡沫(はうまつ)(ひと)しき(よろこ)びは、112(きり)(ごと)(けむり)(ごと)く、113(またた)(うち)消滅(せうめつ)して(しま)ひますよ。114(その)(とき)にアフンとせないやうになさいませや』
115お寅『お(まへ)(きつね)(だま)され、116(たみ)さまと()()()つて、117二十万(にじふまん)(りやう)持参金(ぢさんきん)(とも)小北山(こぎたやま)教祖(けうそ)になると()つて、118(あご)まで(はづ)して()つたぢやないか。119なぜそんな()()つたのか、120(わか)つてゐますか』
121魔我彦三五教(あななひけう)曲津(まがつ)(かみ)(ぜん)仮面(かめん)(かぶ)り、122(ろく)(にん)もやつて()やがつて、123いろいろと奇怪(きくわい)(こと)ばかり(いた)(この)聖場(せいぢやう)蹂躙(じうりん)せむとして()るのですよ。124(わたし)昨日(きのふ)(こと)からスツカリ()()めました。125(まへ)さまはまだ(とし)がよつて()るので、126精神(せいしん)(じやう)欠陥(けつかん)がヒドイと()えて、127依然(いぜん)として(きつね)につままれ、128糞壺(くそつぼ)投込(なげこ)まれて結構(けつこう)温泉(をんせん)(はい)つたと(おも)ひ、129牛糞(うしぐそ)馬糞(うまぐそ)をつきつけられて結構(けつこう)牡丹餅(ぼたもち)(しん)じ、130(かはら)かけを()たされて三万(さんまん)(りやう)黄金(わうごん)だと(おも)つてゐるのだから、131本当(ほんたう)にお目出度(めでた)いものだ。132一層(いつそう)(こと)133(まへ)さまのやうに無知識(むちしき)(うま)れて()たら、134(この)()夢現(ゆめうつつ)(よろこ)んで(くら)せるのだけれど、135(なん)()つても知識(ちしき)(ひかり)(つよ)いものだから、136(まへ)さまのやうな()にはなれませぬワイ。137鑑別(かんべつ)だとか、138認識(にんしき)だとか、139肯定(こうてい)だとか、140否定(ひてい)だとか、141いろいろの什器(じふき)(こころ)宝庫(はうこ)充実(じうじつ)してるのだから、142(わたし)悲痛(ひつう)(おも)ひは、143(えう)するに将来(しやうらい)歓喜(くわんき)源泉(げんせん)となるものだ。144(まへ)さまの歓喜(くわんき)は、145丁度(ちやうど)阿片(あへん)煙草(たばこ)熟睡(じゆくすい)して世事(せじ)万端(ばんたん)(わす)れ、146(ゆめ)世界(せかい)逍遥(せうえう)恍惚(くわうこつ)とし霊肉(れいにく)(とろ)かしてるやうなものだ。147丁度(ちやうど)田螺(たにし)母親(ははおや)が、148自分(じぶん)()んだ沢山(たくさん)()に、149(からだ)餌食(ゑじき)にされ、150いつとはなしになめ(つく)されて、151愉快(ゆくわい)()になつてゐる(うち)に、152自分(じぶん)肉体(にくたい)をスツカリ()(ころ)されてる(やう)愉快(ゆくわい)さだ。153コレ(とら)さま、154チツト()をつけないと駄目(だめ)ですよ。155変性(へんじやう)女子(によし)悪御霊(あくみたま)が、156全力(ぜんりよく)をあげて小北山(こぎたやま)滅亡(めつぼう)せしめむとして千変(せんぺん)万化(ばんくわ)画策(くわくさく)をめぐらしてゐるのだからなア。157灯台(とうだい)下暗(もとくら)しと()ふからは、158中々(なかなか)油断(ゆだん)がなりませぬぞ。159(まへ)さまがそんな(こころ)で、160()うして(この)小北山(こぎたやま)本山(ほんざん)()つて()きますか。161チツトしつかりして(もら)はないと、162(さび)しくてたまらぬぢやありませぬか』
163お寅『あゝ(こま)つた(をとこ)だなア、164これ(ほど)()つても()()めぬのかなア』
165魔我彦『あゝ(こま)つた()アさまだなア、166(なん)()つても思想(しさう)単純(たんじゆん)だから、167(わたし)()(こと)が、168充分(じうぶん)(みたま)()()まないと()えるワイ。169女子(ぢよし)小人(せうにん)(やしな)(がた)しとは、170あゝよく()つたものだ』
171お寅本当(ほんたう)にお(まへ)(わたし)()うして寝食(しんしよく)(とも)にし、172(くち)(なか)()れたものでも()()ふやうにしてゐる(した)しい(ちか)(なか)でも、173(こころ)(せん)()距離(きより)があるのだから、174どうしても容易(ようい)にバツが()はないのだ。175これ魔我彦(まがひこ)さま、176(ひと)直日(なほひ)(みたま)見直(みなほ)聞直(ききなほ)し、177(かへり)みたら()うだい』
178魔我彦『あゝお(とら)さまは、179たうとう地獄(ぢごく)(そこ)()ちて(しま)つたのだなア、180本当(ほんたう)可哀(かあい)さうだ。181世界(せかい)人民(じんみん)(すく)うてやらねばならないが、182肝腎要(かんじんかなめ)のお(とら)さまから(すく)(たす)けておかねば、183到底(たうてい)万民(ばんみん)(たす)ける(こと)出来(でき)ない、184(こま)つた(こと)になつて()たワイ』
185お寅魔我彦(まがひこ)さま、186(まへ)(すく)はれてゐる(つもり)かい。187貴方(あなた)()自身(じしん)(まこと)(かみ)(あい)にふれ、188(まこと)信仰(しんかう)(せつ)し、189(しん)(かみ)理解(りかい)することが出来(でき)て、190(まへ)(みたま)肉体(にくたい)天国(てんごく)浄土(じやうど)歓喜(くわんき)(あぢ)はふ(こと)出来(でき)ましたか。191それから(ひと)()かして(もら)ひたい』
192魔我彦(はじめ)から何事(なにごと)都合(つがふ)よく()くものぢやない、193(わたし)(いま)煩悶(はんもん)苦悩(くなう)最中(さいちう)だよ。194本当(ほんたう)(この)()(いや)になることが幾度(いくたび)あるか()れない。195そこを(こら)(しの)んで()きさへすれば、196所謂(いはゆる)天国(てんごく)(もん)(ひら)かれるのだ。197人間(にんげん)悲境(ひきやう)のドン(ぞこ)(しづ)んだ(とき)(おい)(はじ)めて(さいはひ)(たね)()くものだ。198(さいはひ)(とき)199得意(とくい)満面(まんめん)(とき)(かへ)つて地獄(ぢごく)(たね)()いてゐるのだ。200(まへ)曲神(まがかみ)誑惑(きやうわく)されて地獄(ぢごく)()ちながら、201まだ()()めないのだよ、202本当(ほんたう)可哀(かあい)さうなものだなア。203(この)魔我彦(まがひこ)(いま)天国(てんごく)(もん)(ひら)かむとする首途(かどで)にあるのだ。204よい(あと)(わる)い、205(わる)(あと)はよいと()つてなア、206(いま)(うち)(くるし)みをしておけば、207永遠(ゑいゑん)無窮(むきう)歓喜(くわんき)(その)(ひら)(こと)になるのだ。208あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)……どうぞお(とら)さまの(くも)()つた(みたま)豁然(くわつぜん)として(ひら)けますやう、209魔我彦(まがひこ)がお(ねが)(いた)します。210ユラリ(ひこ)大神(おほかみ)(さま)211五六七(みろく)成就(じやうじゆ)大神(おほかみ)(さま)……』
212お寅『コレ魔我(まが)さま、213ユラリ(ひこ)さまも、214ヘグレ神社(じんじや)さまも、215モウ()つておくれな、216(わたし)本当(ほんたう)信仰(しんかう)(にぎ)つたのだから。217よく(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。218人間(にんげん)永遠(ゑいゑん)無窮(むきう)()(とほ)しだよ。219(わづ)二百(にひやく)(ねん)三百(さんびやく)(ねん)肉体(にくたい)受得(じゆとく)する(ため)(うま)れて()たのではない。220天国(てんごく)浄土(じやうど)(おい)永遠(ゑいゑん)無窮(むきう)(しげ)(さか)え、221天国(てんごく)御用(ごよう)をする(ため)(うま)れて()たのだ。222吾々(われわれ)意志(いし)観念(くわんねん)記憶(きおく)(ただ)しい知識(ちしき)一切(いつさい)(のこ)らず高天原(たかあまはら)天国(てんごく)(この)(まま)留存(りうぞん)して()くのだから、223現肉体(げんにくたい)のある(うち)歓喜(くわんき)(あめ)にぬれ、224(この)()(この)(まま)天国(てんごく)住民(ぢゆうみん)となつておかねば、225どうして死後(しご)生涯(しやうがい)(たの)しく(おく)れませうか。226(この)()(なか)(かみ)(つく)(たま)うたものだから(なや)(くるし)みなどのあるべき(はず)がない。227豁然(くわつぜん)として(かみ)(まこと)(あい)にふれ、228(まこと)知慧(ちゑ)にふれ、229(かみ)(さま)理解(りかい)する(こと)出来(でき)たならば、230(この)()(この)(まま)最上(さいじやう)天国(てんごく)だよ。231悲痛(ひつう)(おも)ひをしたり些々(ささ)たる欲望(よくばう)(こころ)(なや)めてゐるのは、232所謂(いはゆる)(この)()からなる地獄道(ぢごくだう)陥没(かんぼつ)してゐるのだ。233(まへ)さまは小智(せうち)小欲(せうよく)()つてゐるから、234(みづか)(つく)つた地獄(ぢごく)()ち、235(みづか)(きづ)いた牢獄(らうごく)呻吟(しんぎん)してゐるのだ。236(いち)(にち)でも(この)()(おい)歓喜(くわんき)感謝(かんしや)生活(せいくわつ)(つづ)け、237仮令(たとへ)一息(ひといき)()悲観(ひくわん)などしちや仁慈(じんじ)(かみ)(さま)(たい)して大変(たいへん)(つみ)になりますぞや。238(ひと)(こころ)持様(もちやう)(ひと)つだよ』
239魔我彦『それでも、240苦労(くらう)(いた)せよ、241苦労(くらう)(いた)さねば(まこと)(はな)()かぬぞよ……と(かみ)(さま)仰有(おつしや)るぢやありませぬか。242()(ため)243(ひと)(ため)244(みち)(ため)(くるし)()()(かな)しむのは最善(さいぜん)人事(じんじ)ぢやありませぬか。245(わが)()をすてて万民(ばんみん)(すく)ふといふ(こと)善事中(ぜんじちう)善事(ぜんじ)でせう。246それだから(わたし)()うなつてもいい、247(ひと)さへ(たす)かれば、248それで人間(にんげん)本分(ほんぶん)(つく)せるもの、249(かみ)(さま)(たい)して忠実(ちうじつ)()奉公(ほうこう)だと(かた)(しん)じてゐるのだ』
250お寅『ホツホヽヽヽ、251(なん)(わか)らぬ(をとこ)だこと、252どうにも()うにも(たす)(やう)がないワ。253(まへ)さま、254自分(じぶん)不幸(ふかう)悲哀(ひあい)(ふち)(しづ)み、255(なみだ)生活(せいくわつ)(おく)りながら、256どうして(ひと)(すく)へると(おも)つてゐますか、257()自己(じこ)(すく)ひ、258自己(じこ)了解(れうかい)した(うへ)で、259(はじ)めて()(すく)ひ、260(みち)(つた)ふる完全(くわんぜん)神力(しんりき)(そな)はるぢやありませぬか。261よう(かんが)へて御覧(ごらん)なさい、262ここに一人(ひとり)(かは)はまりがある。263(いま)(すで)(おぼ)()せむとしてゐる(ところ)(ひと)(とほ)る、264モシ(その)(ひと)(めくら)であつたならば、265(すく)ひを(もと)むる(こゑ)(きこ)えても、266(けつ)して(すく)(こと)出来(でき)ますまい。267(この)(とき)には水泳(すゐえい)(たつ)した(ひと)で、268(からだ)壮健(さうけん)な、269()()える人間(にんげん)でなければ、270(その)溺没者(できぼつしや)(すく)ふといふ(こと)到底(たうてい)不可能(ふかのう)でせう。271それだからお(まへ)さまも、272()自己(じこ)(つよ)くし、273自己(じこ)(てら)し、274自己(じこ)神力(しんりき)十二分(じふにぶん)()けなくてはなりませぬ。275神力(しんりき)さへ(そな)はらば、276自然(しぜん)歓喜(くわんき)悦楽(えつらく)(わが)身辺(しんぺん)(おそ)うて()るものだ。277(わたし)夜前(やぜん)から(かみ)慈光(じくわう)(てら)されて、278悲哀(ひあい)(きよく)279(つひ)歓楽境(くわんらくきやう)(すく)はれたのだ。280どうぞして、281(まへ)(わたし)(おな)精神(せいしん)状態(じやうたい)(すく)うてやりたいのだが、282(あま)距離(きより)があるので、283可哀(かあい)さうながら(すく)(こと)出来(でき)ないのかな。284(しか)(なが)(わたし)第一(だいいち)着手(ちやくしゆ)としてお(まへ)(すく)(こと)出来(でき)ないやうで、285()うして万民(ばんみん)(すく)(こと)出来(でき)よう。286あゝ(わたし)は、287大変(たいへん)(かみ)(さま)から試験(しけん)をうけてるやうだ。288魔我彦(まがひこ)(たうげ)突破(とつぱ)するのは中々(なかなか)容易(ようい)ぢやないワイ。289あゝ(かみ)(さま)290あなたの()慈光(じくわう)()つて、291(わたし)(まこと)(ひかり)(まこと)(あい)をお(あた)(くだ)さいまして、292魔我彦(まがひこ)(こころ)(ひそ)(まが)(てら)し、293どうぞ天国(てんごく)浄土(じやうど)霊肉(れいにく)(とも)(みちび)かして(くだ)さいませ。294(ひとへ)(かみ)()恩寵(おんちやう)()(ねが)申上(まをしあ)(たてまつ)ります』
295魔我彦『あゝあ、296どうしても駄目(だめ)だなア、297可哀(かあい)さうなものだ。298(わたし)(この)(とら)さまを第一(だいいち)着手(ちやくしゆ)として(すく)はなくちや到底(たうてい)万民(ばんみん)(すく)(こと)出来(でき)ぬであらう。299どうぞユラリ(ひこ)(かみ)(さま)300ヘグレ神社(じんじや)大神(おほかみ)(さま)301あなたの栄光(えいくわう)権威(けんゐ)慈愛(じあい)とに()りまして、302可憐(かれん)なるお(とら)()アさま、303魔我彦(まがひこ)(もつと)敬愛(けいあい)する(この)老婦人(らうふじん)(こころ)一道(いちだう)光明(くわうみやう)(あた)(くだ)さいまして、304あなたをよく(しん)じ、305あなたを理解(りかい)し、306あなたの(あい)徹底(てつてい)(てき)(さと)(こと)出来(でき)ますやうに、307特別(とくべつ)()恩寵(おんちやう)(この)老婦人(らうふじん)(うへ)()れさせ(たま)はむ(こと)を、308(ひとへ)(こひねが)()(たてまつ)ります。309あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)310末代(まつだい)()王天(わうてん)(かみ)(さま)311五六七(みろく)成就(じやうじゆ)大神(おほかみ)(さま)312(あさひ)豊栄昇(とよさかのぼ)(ひめ)(さま)313義理(ぎり)天上(てんじやう)()出神(でのかみ)(さま)314大広木(おほひろき)正宗(まさむね)(さま)315大将軍(だいしやうぐん)(さま)316常世姫(とこよひめ)(さま)317(ひとへ)にお(ねが)申上(まをしあ)(たてまつ)ります』
318お寅『コレ魔我彦(まがひこ)さま、319モウ(その)神名(しんめい)(わたし)(まへ)()つて(くだ)さるなといふに、320(わけ)(わか)らぬ(ひと)だなア、321どしても()()めぬのかいなア、322あゝ()うしたらよからうぞ、323惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)324国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)(さま)……』
325魔我彦『あゝ()うしたら、326(とら)さまの(まよ)ひを()(こと)出来(でき)るだらう、327あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
328大正一一・一二・一六 旧一〇・二八 松村真澄録)
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