今を去ること三十五万年の昔、波斯の国ウブスナ山脈の山頂に、神素盞嗚大神は神臨し玉ひて、地上の天国を建設し、三五教を開いて数多の宣伝使を養成した。地上の人間に愛善の徳と信真の光を与え、地上天国を建設し、ミロクの世を開こうと御身を地上に降して肉体的活動を続け玉ふた。
このとき、印度の国ハルナの都に八岐大蛇の悪霊に心魂を占領されたバラモン教の神司大黒主は、数多の宣伝使を従えて右手に剣を持ち左手にコーランを携えて、武力をもって無理に大自在天の教えに帰順させつつあった。
バラモン教の教義は生を軽んじ死を重んじ、肉体を苦しめて損ない破り出血させて修業の蘊奥となす暗迷非道の邪教である。
神素盞嗚尊はコーカス山、トルコのエルサレム、自転倒島の綾の聖地や天教山など各地の霊山に霊国を開き、宣伝使を下して救済の任に当たらしめた。
玉国別は大神の命を奉じてハルナの都へ大黒主を言向け和しに行く征途、河鹿峠のけわしい坂道で暴風に吹かれて懐谷に難を避けたところ、山猿の群れに襲われて目に傷を負った(第43巻参照)。祠の森で治国別宣伝使一行と出くわして、目が平癒するまで特別の使命によってここに大神の御舎を建設することになった(第44巻参照)。
玉国別の総監督の元、五十子姫、今子姫、道公、純公、伊太公、イル、イク、サール、ヨル、テルハルおよび晴公、珍彦、静子、楓などの人々は木を伐り土をひきならし、神殿建築の準備を着手し始めた。
このとき、浮木の森に駐屯していたランチ将軍が三五教に帰順して陣営を解散し、そのためこの地域に平和が戻ったため、国人たちは三五教の神の神恩に感じて祠の森の神殿建設に献金したり労働を申し出る者が四方から集り、さびしかった谷合は建造の音、人々の歌や喜びの声に充たされた。
道公は土木監督となり、石搗き歌にこれまでの経緯と、三五教の神の恩を歌いこんだ。バラモン軍からやってきた者たちも、骨身を惜しまず石搗きに活動した。三日三夜を経て基礎工事はまったく完成した。一同は石搗きの祝と神恩への感謝として祝宴を開いた。