第一一章 水呑同志〔一二八五〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第49巻 真善美愛 子の巻
篇:第3篇 暁山の妖雲
よみ(新仮名遣い):ぎょうざんのよううん
章:第11章 水呑同志
よみ(新仮名遣い):すてんどうじ
通し章番号:1285
口述日:1923(大正12)年01月18日(旧12月2日)
口述場所:
筆録者:加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1924(大正13)年11月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:治国別はクルスの森の古い祠傍らにある社務所に陣取り、百日の間講演会を行い、三五教の教理をだいたい教え込み、お寅を第一に宣伝使の候補として斎苑館に向かわせたのであった。
お寅と魔我彦は、宣伝歌を歌いながら進んで行く。二人は河鹿峠の上り口に着いた。谷川にくだって禊をし、天津祝詞を奏上ししばし渓流の絶景を眺めながら道歌を歌った。
河鹿峠の急坂を登りながら、魔我彦はへこたれて苦しさをうったえる歌を歌った。そしてお寅に休息しようと歌いかけた。お寅は魔我彦を励ます歌を歌いながら進んで行った。
二人はようやく祠の森の聖場にたどりついた。お寅と魔我彦は、受付係のヨルに案内されて、社の前に導かれた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2023-06-24 20:31:46
OBC :rm4911
愛善世界社版:151頁
八幡書店版:第9輯 87頁
修補版:
校定版:156頁
普及版:71頁
初版:
ページ備考:
001 治国別は、002クルスの森の古い祠の傍にある社務所に陣取り、003ランチ、004片彦、005ガリヤ、006ケース、007万公、008お寅、009蠑螈別、010お民、011竜公、012松彦などと、013一百日の間講演会を始め、014三五教の教理の大体を吹き込み、015漸くにしてお寅を、016先づ第一着に宣伝使の候補者となし、017添書を認めてイソの館に向はしめた。018お寅は前述の如く、019小北山に立ち寄り、020魔我彦を伴ひ、021宣伝歌を歌ひながら、022河鹿峠を登り往く。
023お寅『朝日は照るとも曇るとも
027誠一つの三五の 028神の光は世を救ふ
029治国別の宣伝使
031百日百夜の其間 032尊き神の御教を
035三五教の宣伝使 036其候補者と定められ
037嬉しき添書を渡されて
039聖地をさして進み往く
042体主霊従のありだけを
043尽し来りし吾身をば
045清き尊き御教を 046治国別の手を通し
047口を通して詳細に
049斯も尊き神恩に 050浴し奉りし吾々は
051骨を粉にし身を砕き 052皇大神の御為に
055春の陽気は立ち上り 056梅の梢に一二輪
057花咲き初めし春の空
059長閑な声に送られて 060進む吾身ぞ楽しけれ
061浮木の森の侠客と 062四辺に聞えし此お寅
063今は全く三五の
066我欲の夢もさめ果てて
067心の底より生れ子の
070神素盞嗚の大御神
072悪に曇りし吾霊を
073研きて神の御柱と
075珍の聖場を遥拝し 076謹み敬ひ願ぎまつる
077河鹿峠は峻しくも 078吹き来る風は寒くとも
079神の慈愛に充されし 080吾身は春の心地して
081心の園に花開き 082小鳥は謡ひ蝶は舞ふ
084小北の山に頑張りて
088魔我彦汝も今よりは
089お寅と共に皇神の 090清き尊き御教を
091心に刻み胸に染め 092誠一つを立て通し
094心も勇み身も勇み
096鬼をも挫ぐ吾思ひ
097力の限り身の極み 098尽さにや止まぬ神の道
099上る吾身ぞ楽しけれ
102と歌ひ乍ら、103お寅は魔我彦を従へ漸く河鹿峠の上り口についた。104谷川の流れは激潭飛沫を飛ばし、105淙々として心胆を洗ふに似たり。106木々の梢は春立ちて芽を膨み、107何とはなしに春陽の気に満たされた。108二人は谷川を下り、109手を洗ひ、110口をそそぎ、111天津祝詞を奏上し、112暫し渓流の絶景を眺めながら、
113お寅『岩走る此谷水のいさぎよさ
114瑞の御霊もかくやまさなむ。
115吾胸を洗ふが如く覚えけり
116谷川おつる水の響きに』
117魔我彦『この景色見るにつけても思ふかな
118瑞の御霊の雄々しき姿を。
119唯二人小北の山を後にして
120進み来りぬ神のまにまに』
121お寅『河鹿峠はいかに峻しとも
122神を慕ひて往く身ぞ安き。
123獅子熊や虎狼の猛ぶなる
124河鹿の山も神のまにまに。
125登り往く此坂道も何となく
127魔我彦『谷水を掬ぶ心はいそのかみ
128古き神代の思ひせらるる。
129言依別の神の命の落ち入りし
130この谷水を呑むぞ嬉しき。
131言依別天津御国に往かむとて
132掬びたまひしこれの谷水。
133音に聞く河鹿峠の山颪
134吾身の塵を払ふべらなり。
135吹く風は救ひの神のみいきぞと
136思へば嬉し今日の旅路よ』
137お寅『いざさらば水に名残を惜しみつつ
138進みて往かむイソの館へ』
139魔我彦『いそいそとお寅の方に従ひて
140吾も往かなむイソの館へ』
141 斯く歌ひ終り又もや歩を起した。142魔我彦は急坂を登り乍ら歌ひ出したり。
147谷の流れは淙々と
149吾等二人の往手をば 150祝する如く聞え来る
154築きて教を開きたる
155曲つた心の魔我彦も 156小北の山の聖場で
158全く迷ひの雲も晴れ
159三五教に帰順して
163仮令山程ありとても 164仁慈無限の大神は
165直日に見直し聞直し 166救はせ給ふと聞きしより
167創もつ足の吾乍ら 168一切万事神様に
169お凭れ申して進み往く 170大空渡る月影も
171一度は雲に蔽はれて
174四方の山野を照らすごと
175神に目醒めた魔我彦の 176心の空の日月は
180珍の聖地に詣で往く
181吾身の上こそたのしけれ 182朝日は照るとも曇るとも
184仮令大地は沈むとも
185誠の力は世を救ふ 186如何に嶮しき此坂も
187神の守護りのある上は 188如何でか進み得ざらむや
193お寅の方よお前さまは 194何と云つても年寄りだ
195未だ年若い魔我彦が
197お前は平気な顔をして
200是を思へば魔我彦は
204一方は断崕屹立し
205一方は千仭の深い谷 206一足あやまり踏み外し
207肝腎要の生命を
210此世の中に何一つ
212折角人と生れ来て
213尊き神の神業に
216吾一生の不覚なり
218道の隈手も恙なく
220神の御前に願ぎまつる
227神様御守護を願ひます
231 云へばお寅は振り返り、
232お寅『魔我彦さまよ若い身で 233弱音を吹くにも程がある
234左様な事で天地の
237難なく登る此坂が
238夫程お前は苦しいか 239合点の往かぬ事だなア
240お前は矢張り曲神が 241お腹の底に潜伏し
242聖地に往くのを怖がつて
244早く心を取り直し 245副守の奴を逸早く
246体の外に追ひ出して 247至粋至純の霊となり
248此谷川を流れ往く
250瑞の御霊を心から
252天津祝詞を奏上し
255口許りの広い人
256嶮しき坂を登る時や
259二階の階段登るよに
260静に静に往きなさい 261さうする時は如何程に
262嶮しき坂も安々と
265往く旅人の秘訣ぞや
266一里許りも往つたなら 267祠の森の聖場が
268吾等二人を待ち顔に 269清き尊き神司
271もう一息ぢや魔我彦よ
274祠の森の神様に 275お頼み申して登るなら
276如何なる嶮しき山道も 277平野を分けて進むごと
278いと易々と知らぬ間に 279聖地に進み得らるだろ
281神素盞嗚の大御神
282尊き恵を賜はりて 283此魔我彦に力をば
287と歌ひ乍ら辛うじて祠の森の聖場に辿りついた。288此処には数多の老若男女が蝟集し一斉に天津祝詞を奏上する声、289谷の木魂を響かして居る。290お寅は魔我彦と共に受付の係りヨルの案内にて社の前に導かるる事となりける。
291(大正一二・一・一八 旧一一・一二・二 加藤明子録)