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第49巻(子の巻)
序文
総説
第1篇 神示の社殿
01 地上天国
〔1275〕
02 大神人
〔1276〕
03 地鎮祭
〔1277〕
04 人情
〔1278〕
05 復命
〔1279〕
第2篇 立春薫香
06 梅の初花
〔1280〕
07 剛胆娘
〔1281〕
08 スマート
〔1282〕
第3篇 暁山の妖雲
09 善幻非志
〔1283〕
10 添書
〔1284〕
11 水呑同志
〔1285〕
12 お客さん
〔1286〕
13 胸の轟
〔1287〕
14 大妨言
〔1288〕
15 彗星
〔1289〕
第4篇 鷹魅糞倒
16 魔法使
〔1290〕
17 五身玉
〔1291〕
18 毒酸
〔1292〕
19 神丹
〔1293〕
20 山彦
〔1294〕
余白歌
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第一五章
彗星
(
すゐせい
)
〔一二八九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第49巻 真善美愛 子の巻
篇:
第3篇 暁山の妖雲
よみ(新仮名遣い):
ぎょうざんのよううん
章:
第15章 彗星
よみ(新仮名遣い):
すいせい
通し章番号:
1289
口述日:
1923(大正12)年01月18日(旧12月2日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年11月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
お寅、魔我彦、ヨルの三人は祠の森で高姫とさんざん争った末、祠の森を立ち出でてイソ館に進んで行った。懐谷の近くまでやってきたときには、すっかり日が暮れた。
南の天を見ると、大彗星が現れているのが見えた。三人は彗星についてあれこれ寸評した。ヨルは彗星が何かの凶兆ではないかという歌を詠んだ。お寅は、何事も神の顕現だとして魔我彦に、宣り直しの歌を歌わせた。
三人は近傍の岩に腰をかけて休息し、高姫との争いや彗星や旅路を読み込んだ述懐の歌を歌った。
三人は休息が終わると、ふたたび険しい坂道を夜中に登りはじめた。登りながら、これまでの経緯やイソ館参拝の思いを込めた宣伝歌を歌った。
上の方から、優しい女の宣伝歌が聞こえてきた。これはイソ館からハルナの都へ悪魔の征討に上る初稚姫であった。三人はこの声に力を得て、蘇った心地で苦しさを忘れて坂道を登って行く。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-06-27 09:05:32
OBC :
rm4915
愛善世界社版:
215頁
八幡書店版:
第9輯 111頁
修補版:
校定版:
221頁
普及版:
101頁
初版:
ページ備考:
001
お
寅
(
とら
)
、
002
魔我彦
(
まがひこ
)
、
003
ヨルの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
高姫
(
たかひめ
)
と
散々
(
さんざん
)
争
(
あらそ
)
ひ、
004
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でイソの
館
(
やかた
)
に
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
005
懐谷
(
ふところだに
)
の
近傍
(
きんばう
)
迄
(
まで
)
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
に
日
(
ひ
)
はずつぽりと
暮
(
く
)
れた。
006
不思議
(
ふしぎ
)
や
南
(
みなみ
)
の
天
(
てん
)
に
当
(
あた
)
つて
大彗星
(
だいすゐせい
)
が
現
(
あら
)
はれて
居
(
ゐ
)
る。
007
ヨルは
空
(
そら
)
打
(
う
)
ち
仰
(
あふ
)
ぎ、
008
ヨル『もしお
寅
(
とら
)
さま、
009
魔我彦
(
まがひこ
)
さま、
010
あれ
御覧
(
ごらん
)
なさい、
011
あの
彗星
(
すゐせい
)
を。
012
ハルナの
都
(
みやこ
)
の
恰度
(
ちやうど
)
上
(
うへ
)
の
方
(
はう
)
に
当
(
あた
)
つて
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
るぢやありませぬか。
013
屹度
(
きつと
)
何
(
なに
)
かの
変事
(
へんじ
)
でせうよ』
014
お
寅
(
とら
)
『ほんに ほんに
不思議
(
ふしぎ
)
な
彗星
(
すゐせい
)
ですこと。
015
あれは
大方
(
おほかた
)
八十
(
はちじふ
)
年
(
ねん
)
に
一度
(
いちど
)
現
(
あら
)
はれると
云
(
い
)
ふ、
016
ハレー
彗星
(
すゐせい
)
ぢやありますまいかな』
017
ヨル『さうでせうよ、
018
何
(
なん
)
でも
天下
(
てんか
)
に
変事
(
へんじ
)
の
起
(
おこ
)
る
前兆
(
しらせ
)
でせう』
019
魔我
(
まが
)
『
何
(
なに
)
、
020
あいつは
高姫星
(
たかひめぼし
)
だ。
021
どこもかも
尻
(
しり
)
で
曇
(
くも
)
らし
廻
(
まは
)
る
妖星
(
えうせい
)
だから、
022
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
星
(
ほし
)
か
知
(
し
)
らないが、
023
魔我彦
(
まがひこ
)
は
是
(
これ
)
を
称
(
しよう
)
して
高姫星
(
たかひめぼし
)
と
云
(
い
)
ひますわ』
024
ヨル『
一
(
ひと
)
つあの
彗星
(
すゐせい
)
について
歌
(
うた
)
を
詠
(
よ
)
んで
見
(
み
)
ませう。
025
地上
(
ちじやう
)
に
充満
(
じゆうまん
)
せる
026
陰鬱
(
いんうつ
)
の
空気
(
くうき
)
は
027
天
(
てん
)
に
上
(
のぼ
)
つて
凝結
(
ぎようけつ
)
し
028
忽
(
たちま
)
ち
彗星
(
すゐせい
)
と
化
(
な
)
つて
029
妖光
(
えうくわう
)
を
放射
(
はうしや
)
し
怪煙
(
くわいえん
)
を
吐
(
は
)
いてゐる。
030
是
(
これ
)
果
(
はた
)
して
何
(
なん
)
の
031
凶兆
(
きようてう
)
だらうか
032
彗星
(
すゐせい
)
の
妖光
(
えうくわう
)
に
毒
(
どく
)
せられて
033
紫微宮
(
しびきう
)
の
色
(
いろ
)
は
034
非常
(
ひじやう
)
に
変
(
かは
)
つてゐる。
035
これを
思
(
おも
)
へば
036
やがて
天下
(
てんか
)
に
037
大難
(
たいなん
)
の
到来
(
たうらい
)
する
前兆
(
ぜんてう
)
ならむ。
038
彼
(
か
)
の
妖星
(
えうせい
)
が
039
やがては
040
紫微宮
(
しびきう
)
中
(
ちう
)
を
犯
(
おか
)
すであらう。
041
その
時
(
とき
)
こそは
042
実
(
じつ
)
に
警戒
(
けいかい
)
を
要
(
えう
)
する
時
(
とき
)
だ
043
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
失脚
(
しつきやく
)
は
044
歴々
(
れきれき
)
として
045
既
(
すで
)
に
已
(
すで
)
に
046
天極
(
てんごく
)
紫微宮
(
しびきう
)
の
中
(
うち
)
に
047
今
(
いま
)
より
048
現
(
あら
)
はれて
居
(
ゐ
)
るやうだ』
049
魔我
(
まが
)
『ハヽヽヽヽ、
050
何
(
なん
)
だか、
051
そんな
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
くと
心
(
こころ
)
が
落付
(
おちつ
)
かぬやうだなア。
052
併
(
しか
)
し
事実
(
じじつ
)
とあれば
仕方
(
しかた
)
がないわ』
053
お
寅
(
とら
)
『
魔我彦
(
まがひこ
)
さま、
054
ヨルさまの
言霊
(
ことたま
)
を
一
(
ひと
)
つ
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
しなさい、
055
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
の
顕現
(
けんげん
)
だからなア』
056
魔我彦
(
まがひこ
)
『
森羅
(
しんら
)
万象
(
ばんしやう
)
は
057
悉
(
ことごと
)
く
主
(
す
)
の
神
(
かみ
)
の
顕現
(
けんげん
)
だ
058
人間
(
にんげん
)
の
身
(
み
)
は
059
主
(
す
)
の
神
(
かみ
)
の
聖霊
(
せいれい
)
と
神格
(
しんかく
)
とを
060
摂受
(
せつじゆ
)
する
時
(
とき
)
061
茲
(
ここ
)
に
初
(
はじ
)
めて
062
万有
(
ばんいう
)
一切
(
いつさい
)
と
063
共通
(
きやうつう
)
し
活躍
(
くわつやく
)
し
得
(
う
)
るものである』
064
ヨル『ヤアこれで
些
(
ち
)
つとばかり
気
(
き
)
がすんだやうだ。
065
一
(
ひと
)
つ
此
(
この
)
辺
(
へん
)
で
暗
(
くら
)
くなつた
序
(
ついで
)
に
休息
(
きうそく
)
しませうか』
066
お
寅
(
とら
)
『
宜敷
(
よろし
)
からう、
067
夜途
(
よみち
)
に
日
(
ひ
)
は
暮
(
く
)
れませぬからなア』
068
と
路傍
(
ろばう
)
の
岩
(
いは
)
に
腰
(
こし
)
打
(
う
)
ちかけ、
069
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
暫
(
しば
)
し
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めた。
070
お
寅
(
とら
)
『
打
(
う
)
ち
仰
(
あふ
)
ぐ
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
に
彗星
(
はうきぼし
)
071
世
(
よ
)
の
塵
(
ちり
)
払
(
はら
)
ふ
仕組
(
しぐみ
)
なるらむ』
072
魔我彦
(
まがひこ
)
『
打
(
う
)
ち
仰
(
あふ
)
ぐ
空高姫
(
そらたかひめ
)
の
彗星
(
はうきぼし
)
073
人
(
ひと
)
をごもくのやうに
掃出
(
はきだ
)
す』
074
ヨル『
夜
(
よる
)
の
空
(
そら
)
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でし
彗星
(
はうきぼし
)
075
空高姫
(
そらたかひめ
)
の
曲
(
まが
)
を
払
(
はら
)
ひつ』
076
お
寅
(
とら
)
『
八十年
(
やそとせ
)
に
一度
(
ひとたび
)
出
(
い
)
づる
彗星
(
はうきぼし
)
077
再
(
ふたた
)
び
見
(
み
)
せよ
吾
(
われ
)
を
守
(
まも
)
りて。
078
大空
(
おほぞら
)
も
漸
(
やうや
)
くハレー
彗星
(
すゐせい
)
の
079
力
(
ちから
)
に
曲
(
まが
)
は
逃
(
に
)
げ
失
(
う
)
するらむ』
080
魔我彦
(
まがひこ
)
『いざさらば
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
を
三人
(
みたり
)
連
(
づ
)
れ
081
イソの
館
(
やかた
)
に
進
(
すす
)
みて
行
(
ゆ
)
かなむ』
082
ヨル『
夜
(
よる
)
の
道
(
みち
)
登
(
のぼ
)
る
吾
(
わが
)
身
(
み
)
は
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
083
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
に
別
(
わか
)
れ
告
(
つ
)
げつつ』
084
斯
(
か
)
く
互
(
たがひ
)
に
歌
(
うた
)
ひ、
085
又
(
また
)
もや
足
(
あし
)
を
早
(
はや
)
めて
急坂
(
きふはん
)
を
攀
(
よ
)
ぢながらお
寅
(
とら
)
は
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
086
お寅
『
治国別
(
はるくにわけ
)
の
取
(
と
)
りなしで
087
イソの
館
(
やかた
)
に
詣
(
まう
)
でむと
088
魔我彦
(
まがひこ
)
さまを
伴
(
ともな
)
ひて
089
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
090
十曜
(
とえう
)
の
御旗
(
みはた
)
ひるがへり
091
高天原
(
たかあまはら
)
に
千木
(
ちぎ
)
高
(
たか
)
く
092
大宮柱
(
おほみやばしら
)
太
(
ふと
)
しきて
093
鎮
(
しづ
)
まり
居
(
ゐ
)
ます
三五
(
あななひ
)
の
094
実
(
げ
)
にも
尊
(
たふと
)
き
大御神
(
おほみかみ
)
095
八尋
(
やひろ
)
の
殿
(
との
)
も
新
(
あたら
)
しく
096
建
(
た
)
て
並
(
なら
)
べられヨルさまが
097
いと
厳
(
いか
)
めしく
受付
(
うけつけ
)
に
098
きちんと
坐
(
すわ
)
り
居
(
ゐ
)
ましけり
099
お
寅
(
とら
)
はすつと
立
(
た
)
ち
寄
(
よ
)
つて
100
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
けば
高姫
(
たかひめ
)
の
101
司
(
つかさ
)
が
居
(
ゐ
)
ますと
悟
(
さと
)
りてゆ
102
如何
(
いか
)
なる
方
(
かた
)
か
知
(
し
)
らねども
103
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
教祖
(
けうそ
)
と
慕
(
した
)
ひたる
104
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
に
105
一目
(
ひとめ
)
会
(
あ
)
はむと
悦
(
よろこ
)
びつ
106
魔我彦
(
まがひこ
)
さまと
諸共
(
もろとも
)
に
107
高姫
(
たかひめ
)
さまに
面会
(
めんくわい
)
し
108
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
託宣
(
たくせん
)
に
109
お
寅
(
とら
)
は
全
(
まつた
)
く
呆
(
あき
)
れ
果
(
は
)
て
110
答
(
こた
)
ふる
言葉
(
ことば
)
も
無
(
な
)
きままに
111
二言
(
ふたこと
)
三言
(
みこと
)
争
(
あらそ
)
ひつ
112
愛想
(
あいさう
)
もこそも
尽
(
つ
)
き
果
(
は
)
てて
113
やつと
館
(
やかた
)
を
飛
(
と
)
び
出
(
いだ
)
し
114
魔我彦
(
まがひこ
)
さまと
逸早
(
いちはや
)
く
115
旅装
(
りよさう
)
を
調
(
ととの
)
へ
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
づる
116
後
(
あと
)
に
続
(
つづ
)
いてヨルさまが
117
追
(
お
)
ひかけ
来
(
きた
)
る
夜
(
よる
)
の
道
(
みち
)
118
茲
(
ここ
)
に
三人
(
みたり
)
の
一行
(
いつかう
)
は
119
雲
(
くも
)
つくばかりの
峻坂
(
しゆんぱん
)
を
120
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
に
助
(
たす
)
けられ
121
登
(
のぼ
)
る
折
(
をり
)
しもあら
不思議
(
ふしぎ
)
122
空
(
そら
)
に
輝
(
かがや
)
く
彗星
(
はうきぼし
)
123
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
の
前兆
(
しるし
)
にや
124
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
は
分
(
わか
)
らねど
125
容易
(
ようい
)
ならざる
此
(
この
)
景色
(
けしき
)
126
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
心
(
こころ
)
を
改
(
あらた
)
めて
127
三五教
(
あななひけう
)
の
大道
(
おほみち
)
に
128
一直線
(
いつちよくせん
)
に
進行
(
しんかう
)
し
129
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
御霊
(
みたま
)
をば
130
みがき
清
(
きよ
)
めて
神
(
かみ
)
のため
131
世人
(
よびと
)
のために
赤心
(
まごころ
)
を
132
尽
(
つ
)
くさむための
宮参詣
(
みやまうで
)
133
イソの
館
(
やかた
)
に
現
(
あ
)
れませる
134
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
135
何卒
(
なにとぞ
)
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
136
心
(
こころ
)
を
憐
(
あは
)
れみたまひつつ
137
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
大神
(
おほかみ
)
の
138
御楯
(
みたて
)
と
仕
(
つか
)
へなさしめよ
139
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
140
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
141
彗星
(
すゐせい
)
空
(
そら
)
より
落
(
お
)
つるとも
142
海
(
うみ
)
はあせなむ
世
(
よ
)
ありとも
143
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りたまひたる
144
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
のます
限
(
かぎ
)
り
145
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
を
進
(
すす
)
む
身
(
み
)
は
146
決
(
けつ
)
して
恐
(
おそ
)
るる
事
(
こと
)
あらじ
147
進
(
すす
)
めよ
進
(
すす
)
めいざ
進
(
すす
)
め
148
魔我彦
(
まがひこ
)
、ヨルさま
諸共
(
もろとも
)
に
149
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
風
(
かぜ
)
は
寒
(
さむ
)
くとも
150
山路
(
やまぢ
)
は
峻
(
さか
)
しくあるとても
151
一旦
(
いつたん
)
思
(
おも
)
ひ
立
(
た
)
ちし
身
(
み
)
は
152
如何
(
いか
)
なる
曲
(
まが
)
の
妨
(
さまた
)
げも
153
撓
(
たゆ
)
まず
屈
(
くつ
)
せず
桑
(
くは
)
の
弓
(
ゆみ
)
154
ひきてかへらぬ
吾
(
わが
)
思
(
おも
)
ひ
155
諾
(
うべな
)
ひたまへ
惟神
(
かむながら
)
156
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
157
畏
(
かしこ
)
み
畏
(
かしこ
)
み
願
(
ね
)
ぎまつる』
158
ヨルは
又
(
また
)
歌
(
うた
)
ふ。
159
ヨル
『
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
160
五十子
(
いそこ
)
の
姫
(
ひめ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
161
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
百夜
(
ひやくや
)
の
丹精
(
たんせい
)
を
162
凝
(
こ
)
らして
瑞
(
みづ
)
の
御舎
(
みあらか
)
を
163
造
(
つく
)
りたまひし
雄々
(
をを
)
しさよ
164
心
(
こころ
)
の
清
(
きよ
)
き
宣伝使
(
せんでんし
)
165
斯
(
かか
)
る
尊
(
たふと
)
き
宮
(
みや
)
を
建
(
た
)
て
166
いささか
執着心
(
しふちやくしん
)
もなく
167
遷宮式
(
せんぐうしき
)
を
相済
(
あひす
)
まし
168
直様
(
すぐさま
)
後
(
あと
)
を
珍彦
(
うづひこ
)
や
169
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
一同
(
いちどう
)
に
任
(
まか
)
せつつ
170
出
(
い
)
で
往
(
ゆ
)
き
給
(
たま
)
ふ
雄々
(
をを
)
しさよ
171
楓
(
かへで
)
の
姫
(
ひめ
)
は
忽
(
たちま
)
ちに
172
神人
(
しんじん
)
感応
(
かんおう
)
の
境
(
きやう
)
に
入
(
い
)
り
173
身体
(
からだ
)
をブルブルふるはせて
174
吾
(
われ
)
は
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
なりと
175
言挙
(
ことあ
)
げせしぞ
不思議
(
ふしぎ
)
なれ
176
数多
(
あまた
)
の
信者
(
しんじや
)
が
聞
(
き
)
きつけて
177
蟻
(
あり
)
の
甘
(
あま
)
きにつどふごと
178
岩石
(
がんせき
)
起伏
(
きふく
)
の
山道
(
やまみち
)
を
179
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
が
厭
(
いと
)
ひなく
180
詣
(
まう
)
で
来
(
きた
)
りて
神徳
(
しんとく
)
を
181
摂受
(
せつじゆ
)
し
感謝
(
かんしや
)
にむせぶ
折
(
をり
)
182
高姫司
(
たかひめつかさ
)
が
瓢然
(
へうぜん
)
と
183
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り
奥
(
おく
)
に
入
(
い
)
り
184
楓
(
かへで
)
の
姫
(
ひめ
)
の
神懸
(
かむがか
)
り
185
審判
(
さには
)
をなせば
忽
(
たちま
)
ちに
186
楓
(
かへで
)
の
姫
(
ひめ
)
は
元
(
もと
)
の
如
(
ごと
)
187
普通
(
ふつう
)
の
娘
(
むすめ
)
となりにけり
188
後
(
あと
)
に
高姫
(
たかひめ
)
傲然
(
がうぜん
)
と
189
奥
(
おく
)
に
居坐
(
ゐすわ
)
り
吾
(
われ
)
こそは
190
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
191
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
は
高姫
(
たかひめ
)
の
192
此
(
この
)
生宮
(
いきみや
)
が
守護
(
しゆごう
)
する
193
なぞとそろそろ
威張
(
ゐば
)
り
出
(
だ
)
し
194
金釘流
(
かなくぎりう
)
の
筆先
(
ふでさき
)
を
195
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
迄
(
まで
)
書
(
か
)
きつづけ
196
是
(
これ
)
が
誠
(
まこと
)
の
神勅
(
しんちよく
)
と
197
宣言
(
せんげん
)
なして
吾々
(
われわれ
)
に
198
拝読
(
はいどく
)
強
(
し
)
ふる
苦
(
くる
)
しさよ
199
いやいや
乍
(
なが
)
ら
吾々
(
われわれ
)
は
200
全
(
まつた
)
く
神
(
かみ
)
のお
示
(
しめ
)
しと
201
頭
(
あたま
)
を
押
(
おさ
)
へて
読
(
よ
)
みゆけば
202
脱線
(
だつせん
)
だらけの
世迷言
(
よまひごと
)
203
聞
(
き
)
くに
耐
(
た
)
へない
事
(
こと
)
ばかり
204
余
(
あま
)
り
合点
(
がてん
)
がゆかぬ
故
(
ゆゑ
)
205
イソの
館
(
やかた
)
に
参詣
(
まゐまう
)
で
206
審判
(
さには
)
を
乞
(
こ
)
はむと
思
(
おも
)
ふうち
207
高姫
(
たかひめ
)
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
心
(
こころ
)
をば
208
探
(
さぐ
)
りしものかイソ
館
(
やかた
)
209
御霊
(
みたま
)
の
研
(
みが
)
けるそれ
迄
(
まで
)
は
210
決
(
けつ
)
して
参拝
(
さんぱい
)
ならぬぞと
211
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
にせき
留
(
とめ
)
る
212
合点
(
がてん
)
がゆかぬと
思
(
おも
)
ふ
折
(
をり
)
213
三五教
(
あななひけう
)
のお
寅
(
とら
)
さま
214
思
(
おも
)
はず
茲
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれて
215
高姫
(
たかひめ
)
さまとのかけあひに
216
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
素性
(
すじやう
)
まで
217
魔我彦
(
まがひこ
)
さまの
口
(
くち
)
をもて
218
素
(
す
)
つ
破
(
ぱ
)
ぬかれし
可笑
(
をか
)
しさよ
219
ヨルも
漸
(
やうや
)
く
胸
(
むね
)
晴
(
は
)
れて
220
高姫司
(
たかひめつかさ
)
の
化
(
ばけ
)
の
皮
(
かは
)
221
剥
(
む
)
いてやらうと
決心
(
けつしん
)
し
222
お
二人
(
ふたり
)
さまに
従
(
したが
)
つて
223
イソの
館
(
やかた
)
に
参詣
(
まゐまう
)
で
224
御霊
(
みたま
)
を
研
(
みが
)
き
神徳
(
しんとく
)
を
225
腕
(
うで
)
もたわわに
蒙
(
かうむ
)
りて
226
此
(
この
)
黒白
(
こくびやく
)
を
明
(
あきら
)
かに
227
示
(
しめ
)
さむものと
思
(
おも
)
ひ
立
(
た
)
ち
228
漸
(
やうや
)
くここに
来
(
きた
)
りけり
229
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
230
産土山
(
うぶすなやま
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
231
ヨルが
心
(
こころ
)
を
憐
(
あは
)
れみて
232
御霊
(
みたま
)
の
恩頼
(
ふゆ
)
を
賜
(
たま
)
へかし
233
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
234
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
235
バラモン
教
(
けう
)
をあきらめて
236
三五教
(
あななひけう
)
の
御教
(
みをしへ
)
に
237
帰順
(
きじゆん
)
しまつりし
其
(
その
)
上
(
うへ
)
は
238
如何
(
いか
)
でか
心
(
こころ
)
の
変
(
かは
)
るべき
239
恵
(
めぐ
)
ませ
給
(
たま
)
へ
大御神
(
おほみかみ
)
240
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
の
受付
(
うけつけ
)
に
241
仕
(
つか
)
へまつりしヨル
公
(
こう
)
が
242
赤心
(
まごころ
)
籠
(
こ
)
めて
願
(
ね
)
ぎまつる
243
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
244
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
ましませよ』
245
魔我彦
(
まがひこ
)
は
又
(
また
)
歌
(
うた
)
ふ。
246
魔我彦
『
北山村
(
きたやまむら
)
を
出
(
い
)
でしより
247
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
義理
(
ぎり
)
天上
(
てんじやう
)
248
ウラナイ
教
(
けう
)
を
開
(
ひら
)
きたる
249
高姫
(
たかひめ
)
さまはいづくぞと
250
心
(
こころ
)
にかけて
探
(
さが
)
すうち
251
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
ではからずも
252
久方振
(
ひさかたぶ
)
りにて
廻
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ
253
我情
(
がじやう
)
我慢
(
がまん
)
の
高姫
(
たかひめ
)
が
254
心
(
こころ
)
に
再
(
ふたた
)
び
仰天
(
ぎやうてん
)
し
255
遉
(
さすが
)
の
魔我彦
(
まがひこ
)
呆
(
あき
)
れ
果
(
は
)
て
256
話
(
はなし
)
にならぬ
有様
(
ありさま
)
に
257
お
寅
(
とら
)
婆
(
ば
)
さまと
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
いて
258
長居
(
ながゐ
)
は
恐
(
おそ
)
れと
館
(
やかた
)
をば
259
後
(
あと
)
に
見捨
(
みす
)
ててヨルさまと
260
峻
(
さか
)
しき
坂路
(
さかみち
)
攀
(
よ
)
ぢ
登
(
のぼ
)
り
261
やつと
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
来
(
きた
)
りけり
262
かうなる
上
(
うへ
)
は
高姫
(
たかひめ
)
も
263
よもや
追
(
おつ
)
かけ
来
(
きた
)
るまい
264
何卒
(
なにとぞ
)
無事
(
ぶじ
)
に
産土
(
うぶすな
)
の
265
イソの
館
(
やかた
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
へ
266
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
三人
(
みたり
)
をすくすくと
267
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
268
神
(
かみ
)
かけ
念
(
ねん
)
じ
奉
(
たてまつ
)
る
269
もしも
高姫
(
たかひめ
)
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひ
270
髪
(
かみ
)
ふり
乱
(
みだ
)
し
夜叉
(
やしや
)
のごと
271
来
(
きた
)
るも
測
(
はか
)
り
知
(
し
)
られない
272
その
時
(
とき
)
こそは
大空
(
おほぞら
)
に
273
横
(
よこ
)
たはりたる
彗星
(
はうきぼし
)
274
これをば
矢庭
(
やには
)
にひつ
掴
(
つか
)
み
275
朽木
(
くちき
)
に
上
(
のぼ
)
る
蟻
(
あり
)
の
群
(
むれ
)
276
手箒
(
てばうき
)
もちて
落
(
おと
)
すよに
277
払
(
はら
)
へばそれですむ
事
(
こと
)
だ
278
高姫
(
たかひめ
)
たとへ
大空
(
おほぞら
)
を
279
伊馳
(
いかけ
)
り
地
(
つち
)
を
潜
(
くぐ
)
るとも
280
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
主
(
あるじ
)
と
現
(
あ
)
れませる
281
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
にや
叶
(
かな
)
ふまい
282
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
三人
(
みたり
)
は
赤心
(
まごころ
)
を
283
一
(
ひと
)
つになして
何処
(
どこ
)
迄
(
まで
)
も
284
百
(
もも
)
の
妨
(
さまた
)
げ
打
(
う
)
ち
破
(
やぶ
)
り
285
初志
(
しよし
)
を
貫徹
(
くわんてつ
)
致
(
いた
)
さねば
286
男
(
をとこ
)
の
顔
(
かほ
)
が
立
(
た
)
ちませぬ
287
男勝
(
をとこまさ
)
りのお
寅
(
とら
)
さま
288
どうぞ
確
(
しつか
)
り
頼
(
たの
)
みます
289
此処
(
ここ
)
は
名
(
な
)
に
負
(
お
)
ふ
魔
(
ま
)
の
峠
(
たうげ
)
290
山猿
(
やまざる
)
共
(
ども
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
291
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でて
人
(
ひと
)
の
目
(
め
)
を
292
引
(
ひ
)
つ
掻
(
か
)
きやぶると
聞
(
き
)
きました
293
神力
(
しんりき
)
無双
(
むさう
)
の
玉国
(
たまくに
)
の
294
別
(
わけ
)
の
命
(
みこと
)
の
御
(
おん
)
目
(
め
)
をば
295
創
(
きづ
)
つけまつる
悪
(
わる
)
い
猿
(
さる
)
296
いつ
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
すか
分
(
わか
)
らない
297
危険
(
きけん
)
区域
(
くゐき
)
と
聞
(
き
)
くからは
298
唯
(
ただ
)
一心
(
いつしん
)
に
神言
(
かみごと
)
や
299
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
300
此
(
この
)
坂道
(
さかみち
)
を
登
(
のぼ
)
りませう
301
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
302
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
ましませよ』
303
と
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
304
さしも
嶮
(
けは
)
しき
夜
(
よる
)
の
坂道
(
さかみち
)
、
305
一歩
(
いつぽ
)
一歩
(
いつぽ
)
心
(
こころ
)
を
配
(
くば
)
り
祝詞
(
のりと
)
くづしの
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
306
汗
(
あせ
)
を
垂
(
た
)
らして
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
307
上
(
うへ
)
の
方
(
はう
)
より
柔
(
やさ
)
しき
女
(
をんな
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
308
これはイソの
館
(
やかた
)
よりハルナの
都
(
みやこ
)
を
指
(
さ
)
して
悪魔
(
あくま
)
の
征討
(
せいたう
)
に
上
(
のぼ
)
る
女
(
をんな
)
宣伝使
(
せんでんし
)
、
309
豪胆
(
がうたん
)
不敵
(
ふてき
)
の
初稚姫
(
はつわかひめ
)
であつた。
310
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
力
(
ちから
)
を
得
(
え
)
て
殆
(
ほとん
)
ど
蘇
(
よみが
)
へりたる
如
(
ごと
)
き
心地
(
ここち
)
しつつ
苦
(
くる
)
しさを
忘
(
わす
)
れて
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
311
(
大正一二・一・一八
旧一一・一二・二
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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